JP4165967B2 - 無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物からなる架橋剤、その組成物、架橋方法および成形体 - Google Patents

無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物からなる架橋剤、その組成物、架橋方法および成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
発明は無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂に適した架橋剤ならびに熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋方法に関し、また無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を配合した熱可塑性ポリエステル樹脂の組成物に関する。さらに、本発明は無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋され、かつ発泡成形されてなる熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性、透明性、耐候安定性、絶縁性などに優れているため、これ迄にボトル、繊維、フィルムなど広範な用途に利用されており、現在もさらに様々な用途開発が進められている。その新たな用途の一つとして発泡成形体が取り上げられ、食品容器、包装材、建材用途などへの展開が試みられている。
【0003】
一般に熱可塑性ポリエステル樹脂は溶融粘度が低いため、発泡成形時に発泡用ガスの離脱が起こり、微細な気泡が均一に分散した発泡成形体を製造することは難しい。そこで樹脂の溶融粘度を高めて、発泡成形を容易にするための増粘方法が検討されている。その一処方として、熱可塑性ポリエステル樹脂にある架橋剤を添加し、その結果ポリマー鎖を架橋し、ポリエステル樹脂の分子量を増大させる方法が試みられている。
【0004】
例えば、多価エポキシドとアルカリ金属やアルカリ土類金属のカルボン酸塩または炭酸塩を用いる方法が特開昭53―24364号公報に、また多価エポキシドとモンタンワックス塩またはモンタンワックスエステル塩とを混合する方法が特開昭54―50568号公報に提案されている。しかし、これらの方法は、架橋反応の進行に伴い粘度が急速に増大するが、その後急速に粘度が低下する傾向にあるので、最適粘度を得ることはむずかしいと指摘されている。
【0005】
また、ジグリシジルエステルを用いる方法が特公昭61―48409号公報に、また多官能ジグリシジルエステルと多官能カルボン酸無水物とを組み合わせて用いる方法が特開昭59―210955号公報に提案されている。しかし、これらの方法で熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋処理と成形操作とを長時間継続すると、成形品が黒く着色してくる現象がみられる。
【0006】
本発明者らもエポキシ樹脂を増粘剤として用いる方法を試みたが、架橋反応が遅いため造粒時のストランド状態が時間と共に変化すること、架橋反応の進行に伴うエポキシドの濃度変化に起因する粘度変化が急激であること、エポキシド自身が互いに反応する性質があるためロングラン性に問題があること等が判明し、多価エポキシドを用いる方法では満足できる結果は得られていない。
【0007】
その他に、無水ピロメリット酸に代表される分子内に少なくとも二つの酸無水物基を有する化合物の使用が、特公平5―15736号公報に提案されている。この方法によると、熱可塑性ポリエステル樹脂のポリマー鎖の持つ末端水酸基による酸無水物基への求核付加反応、またはポリエステル樹脂のポリマー鎖にあるエステル結合と酸無水物基のエステル交換反応が進み、その結果架橋反応が起こる。しかし、酸無水物基の4つのカルボニル基がすべて熱可塑性ポリエステルポリマー鎖とエステル結合を形成した場合でも、4つのポリマー鎖が架橋されるにとどまるため、十分な溶融粘度を得るには酸無水物の添加量を多くする必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の第一の目的は、従来知られている架橋剤とは異なる、別の化学構造を有する架橋剤を提供することである。第二の目的は、それを熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋反応に適用した時に、急激な粘度変化、着色、および架橋剤自身が互いに反応することに起因するロングラン性の不足等をきたさないことである。そして第三の目的は、実際に熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡成形に用いた時に、急激な粘度変化を起こさず安定した増粘効果を発現すること、成形物表面の状態に経時変化が起きないこと、さらに長時間の運転中に成形物に着色を生じず、微細な気泡が均一に分散した成形体が製造可能なことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは前記課題を解決するために、架橋剤に適した化合物を鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明に係わる化合物は、下記一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物に関する。本発明では、無水トリメリット酸基が開環したトリメリト酸基も含まれる。
【0010】
【化6】
Figure 0004165967
【0011】
式中、R1は水素またはメチル基を示し、
2、R3、R5、R6は水素または炭素数5以下のアルキル基を示し、そして、R2、R3、R5およびR6は同一でも異なっていてもよく、
4は炭素数が10以下の直鎖または分岐状のアルキレン基、または
シクロヘキシレン基を示す。
【0012】
本発明はまた、熱可塑性ポリエステル樹脂用の架橋剤として使用可能な、前記の一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物であり、それを用いた架橋方法、および熱可塑性ポリエステル樹脂との組成物に関する。
【0013】
さらに本発明は、ポリエチレンテレフタレートで代表される熱可塑性ポリエステル樹脂が、前記一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋され、かつ発泡成形によって形成されたポリエステル樹脂成形体に関する。
【0014】
【発明の具体的説明】
次に、本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物、それを用いた熱可塑性ポリエステル樹脂用の架橋剤、架橋方法、樹脂組成物、およびそれを用いた熱可塑性ポリエステル樹脂発泡成形体について詳細に説明する。
【0015】
無水トリメリット酸化合物
本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、次に示す一般式[1]で表され、無水トリメリット酸アクリロキシアルキルエステル類化合物および無水トリメリット酸メタクリロキシアルキルエステル類化合物の両者を意味する。
【0016】
【化7】
Figure 0004165967
【0017】
式中、R1は水素またはメチル基を示し、この化合物がアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体であることを示している。
2、R3、R5、R6は水素または炭素数5以下のアルキル基を示し、各々同一でも異なっていてもよく、ここでその代表例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができる。
【0018】
4は炭素数が10以下の直鎖または分岐状のアルキレン基、またはシクロヘキシレン基を示す。そのアルキレン基の代表例としては、−(CH2)−、−(CH2) 2−、−(CH2)3−、−(CH2) 4−、−(CH2) 5−、−(CH2) 6−、−(CH2) 10−、−CH2CH(CH3) CH2−、−C(CH3) 2−、−C(C25) 2−、−C(C49) 2−などを例示することができる。また、ここで主鎖にあるその内の一つのメチレン基がシクロヘキシレン基で置換されていてもよく、代表例として、−CH2−Cy−CH2−(Cyはシクロヘキシレン基を示す)を挙げることができる。
【0019】
また、一般式[1]の末端にある無水トリメリット酸基は、開環してトリメリット酸基になっていてもよい。
本発明における一般式[1]で示される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物の具体例として、表1および表2に示された化合物(1)〜(24)を挙げることができる。表1および表2において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基をそれぞれ示している。
【0020】
【表1】
Figure 0004165967
【0021】
【表2】
Figure 0004165967
【0022】
これらの化合物の中で、特に後述する熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋剤として適している化合物を挙げると、次の通りである。
1)4−(3−アクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット
酸無水物 (表1の(1)化合物)
2)4−(3−メタクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリッ
ト酸無水物 (表1の(2)化合物)
3)4−(3−アクリロキシ−1−メチルプロピル)トリメリット酸無水
物 (表1の(9)化合物)
4)4−(5−アクリロキシ−3−メチルペンチル)トリメリット酸無水
物 (表2の(13)化合物)
5)4−(6−アクリロキシヘキシル)トリメリット酸無水物
(表2の(21)化合物)
6)4−[(4−アクリロキシメチルシクロヘキシル)メチル]トリメリ
ット酸無水物 (表2の(23)化合物)
【0023】
本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、次に述べる方法によって合成し、製造することができる。即ち、対応するジオールと、対応するアクリル酸またはメタクリル酸、および無水トリメリット酸とをそれぞれ各種脱水剤の共存下に段階的に脱水反応を行わせて合成する方法である。例えば、第一段階としてアクリル酸またはメタクリル酸とジオールとを反応させ、第二段階として前記の生成物と無水トリメリット酸とを反応させる方法である。この脱水反応に使用して好適な脱水剤としては、2−ハロピリジニウム塩−アミンやジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、無水トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0024】
また別の方法として、そのカルボン酸の反応性誘導体、例えば酸ハロゲン化物やエステルと対応するジオールとを反応させることにより製造される。ここでアクリル酸またはメタクリル酸、および無水トリメリット酸の酸ハロゲン化物としては、例えばそのカルボン酸と塩化チオニル、三塩化リン、三臭化リンなどの各種ハロゲン化試薬との反応で得られる酸ハロゲン化物を挙げることができる。
【0025】
用いられるジオールの例として、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、 1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。
【0026】
前記のジオールと、アクリル酸またはメタクリル酸、および無水トリメリット酸との反応またはそのカルボン酸の反応性誘導体との反応は、それぞれの反応試薬を通常モル比約1:1:1の割合で供給し、溶媒中で、温度0〜50℃、圧力常圧〜10気圧の条件下で行われる。この際、反応の促進に使用される試剤、例えば脱水剤として2−ハロピリジニウム塩−アミン、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、無水トリフルオロ酢酸などを挙げることができる。
【0027】
反応溶媒としては、ハロゲン化炭化水素系、芳香族炭化水素系、エステル系、エーテル系、ケトン系、ニトリル系などの溶媒から原料の溶解度や反応条件に応じて適宜選択して用いることができ、例えばジクロロメタン、クロロホルム、 1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリルなどを例示することができる。
【0028】
このようにして製造された無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、後述する熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋剤として使用できる他、この化合物の持つビニル基のラジカル重合性、および無水カルボン酸基の反応性を利用して合成樹脂、ゴム、塗料、その他工業用途における重合性モノマーとしてあるいは改質剤、添加剤として使用することができる。
【0029】
架橋剤、架橋方法および樹脂組成物
本発明において、無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋剤として好適に使用することができる。ここで熱可塑性ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重縮合により得られる熱可塑性線状ポリエステルを意味する。
【0030】
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などが例示され、これらのジカルボン酸は1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
またジオール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、4,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、ジエチレングリコールなどが例示され、これらのジオール成分は1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
熱可塑性ポリエステル樹脂の好適な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。さらにこれらポリエステル樹脂の混合物、またはこれらポリエステル樹脂を50重量%以上の量を含む変性樹脂でもよい。さらに、一旦使用した樹脂のリサイクル品であってもよい。
【0033】
架橋方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂と本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物とをポリエステル樹脂の溶融条件下で混合させることによって進行させることができる。配合に際して、架橋剤としての前記化合物を熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、通常0.001〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05重量部〜1重量部の割合で添加し、樹脂組成物とする。この配合割合の範囲内にあれば、架橋ないし後述する発泡成形の工程において熱可塑性ポリエステル樹脂は適度な粘性を示すと共に、最終成形体を着色させるおそれは少ない。
【0034】
さらに本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂を無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物の存在下で架橋させる際、少量のラジカル開始剤の共存下で行うとより効果的に架橋反応を促進させることができ、そのような架橋方法も本発明の範囲内である。また、ラジカル開始剤を含む樹脂組成物も本発明の範囲内である。ラジカル開始剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、通常0.0001〜1重量部、好ましくは0.001重量部〜0.1重量部の割合で用いられる。
【0035】
使用可能なラジカル開始剤としては特に限定されず、アゾ化合物、過酸化物、ヒドロペルオキシドなどを用いることができる。その一例として、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、α、α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、メタクロロ過安息香酸などを挙げることができる。これらは単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよく、また必要に応じてラジカル開始剤の分解を促進する鉄などの金属類を添加してもよい。
【0036】
熱可塑性ポリエステル樹脂にこの架橋剤、および必要に応じてラジカル開始剤を添加して配合物を調製する方法には、タンブラーやヘンシェルミキサー等を用いた一般のドライブレンド法によって行うことができる。
【0037】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂への配合操作において、架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤を溶媒に溶解させ、熱可塑性ポリエステル樹脂と混合した後、風乾または減圧下で溶媒を留去することにより混合させることもできる。この時の溶媒としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、架橋剤およびラジカル開始剤の分解ないし反応を引き起こさないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、アセトンなどのハロゲン化炭化水素系、エステル系、エーテル系、ケトン系などの溶剤が挙げられる。
【0038】
本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋剤として使用し、熱可塑性ポリエステル樹脂を架橋させる時には、熱可塑性ポリエステル樹脂の融点よりも高い温度、即ちポリエステル樹脂の溶融条件下で、例えば100〜350℃、好ましくは150〜300℃の温度で加熱、混合することにより行うことができる。ここで混合操作は、一軸または二軸の押出機を用いて混練り条件下で行うことが好ましい。無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、1種単独で使用しても、或いは2種以上を組み合わせて使用してもよいし、さらに他の架橋剤と併用して使用することもできる。
【0039】
前記の配合物を調製してポリエステル樹脂を架橋させる方法において、使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の一部を用いて、或いは熱可塑性ポリエステル樹脂と相溶性のある別の樹脂、例えばポリエチレンを用いて、架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤とを前述した方法で混合し、あらかじめマスターバッチとしておくこともできる。その後残余の熱可塑性ポリエステル樹脂と混合し、この段階で架橋反応を進めればよい。また、マスターバッチの製造段階では架橋剤のみを配合し、その後の希釈混合段階でラジカル開始剤を加える方法でもよい。
【0040】
本発明における無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物による熱可塑性ポリエステル樹脂との架橋反応は、次の機構によって進行するものと推測している。即ち、無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、その分子内に重合性ビニル基であるアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、また熱可塑性ポリエステル樹脂ポリマー鎖の末端にある水酸基と反応性のある酸無水物基とを合わせ持っている。従って、本化合物と熱可塑性ポリエステル樹脂との加熱混練り条件下で、本化合物の酸無水物基と反応した熱可塑性ポリエステル樹脂のポリマー鎖が、本化合物のアクリロイル基またはメタクリロイル基の重合により成長したポリマー鎖によって連結され、ポリエステル樹脂の架橋反応が進行するものと考えている。このことから、本発明に係わる架橋剤は、末端水酸基を有する多くの熱可塑性ポリエステル樹脂に対して、容易に架橋反応を進行させられると考えている。
【0041】
ポリエステル樹脂成形体
本発明に係わるポリエステル樹脂成形体は、熱可塑性ポリエステル樹脂が同様に本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋構造をとっていると共に、発泡剤を伴った発泡成形によって微細な気泡が均一に分散し、かつ所望の形状に賦形されている。
【0042】
この成形体の製造方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂に架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤をブレンドして組成物を調製する工程、この組成物を溶融混練りする工程、およびこの溶融混合物を発泡成形させて所望の形状に形成する工程からなっている。
【0043】
熱可塑性ポリエステル樹脂、架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤を含む組成物を調製し、この組成物から溶融混合物を調製する工程は、前述した通りである。なお、ここまでの工程の一部を、また工程の全部を次に述べる発泡成形工程で使用する押出機を用いて、発泡成形工程と共に一段で行うこともできる。
【0044】
発泡成形工程では、まず溶融混合物を押出発泡成形機へ供給し、そして押出機に液体状ないし気体状の発泡剤を圧入し、両者を十分に混合した後、押出機先端のダイから大気中へ押出し、発泡成形体が製造される。この際、発泡剤は通常押出機のシリンダー中央部に設けられたベント部から圧入され、溶融樹脂に溶解混合される。
【0045】
熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡成形体は、また別の方法によっても製造することができる。例えば熱可塑性ポリエステル樹脂および発泡剤を押出発泡成形機のホッパーに供給し、一方、押出機シリンダーに設けた供給口から本発明に係わる架橋剤およびラジカル開始剤を供給し、溶融下に押出して発泡成形する方法である。また、熱可塑性ポリエステル樹脂、架橋剤、発泡剤、必要に応じてラジカル開始剤を均一混合した後、押出機に供給し、一段で発泡成形する方法も可能である。
【0046】
本発明の方法において熱可塑性ポリエステル樹脂と架橋剤を溶融混合する際、水分は熱可塑性ポリエステル樹脂の加水分解を引き起こす原因になるため、上記のいずれの方法で溶融混合する場合においても、水分量を可能な限り低く抑えることが必要であり、材料に含まれる水分量を100ppm以下に抑制することが望ましい。そのために使用する熱可塑性ポリエステル樹脂は、除湿乾燥機等によって、60〜180℃、および/または−20℃以下の露点の条件下であらかじめ乾燥しておく方法が通常とられる。
【0047】
使用される発泡剤としては、不活性ガス、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、炭酸ガス、窒素、ヘリウム、メタン、エタン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソぺンタン、ノルマルヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロプロパン、シクロペンタン、1,1−ジメチルシクロプロパン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、エチルシクロブタン、1,1,2−トリメチルシクロプロパン、ベンゼン等を挙げることができる。
【0048】
また、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエチレン、ジクロロテトラフルオロエチレン、ジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなども例示することができる。
これらの中でも、成形時の安全性を考慮すると、炭酸ガス、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスが発泡剤として好ましい。
【0049】
発泡剤の添加割合は、熱可塑性ポリエステル樹脂と架橋剤とを含む溶融混合物の合計量に対して0.05〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。発泡剤の量がこの範囲内にあると、均一微細な気泡を有する発泡成形体が得られる。
【0050】
また、発泡成形に際して、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、核剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、その他の添加剤を任意に添加、混合させることができる。
【0051】
押出発泡成形において、押出機先端に取り付けたダイの形状によって、シート状、フィラメント状、異形状等の発泡成形体を得ることができ、架橋剤、ラジカル開始剤および発泡剤の添加量を調節することによって、また押出し条件を調整することによって発泡倍率を任意に変えることができる。発泡倍率は、用途によって異なるが、通常2〜8倍の範囲で変えることができる。このようにして製造された発泡成形体は、柔軟で優れた機械的特性を有し、また耐熱性、耐薬品性を備えていることから、包装材分野や建築材分野等で好適に使用することができる。
【0052】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例を通して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
〈実施例1〉
4−(3−アクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物の製造: (表1の(1)の化合物)
2、2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(115g)およびトリエチルアミン(78ml)のジクロロメタン溶液(800ml)を氷冷し、そこへアクリル酸クロリド(50g)のジクロロメタン(200ml)溶液を3時間かけて滴下し、引き続き氷冷下で2時間攪拌し、さらに室温で12時間攪拌して反応を行った。
【0054】
反応終了後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液、蒸留水および飽和食塩水で洗浄し、その後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この有機層から減圧下で溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、その後ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製することにより3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアクリレート(46g)を得た。
【0055】
次に3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアクリレート(40g)およびピリジン(24ml)のジクロロメタン溶液(600ml)を氷冷し、そこへ無水トリメリット酸クロリド(59g)のジクロロメタン溶液(600ml)を2時間かけて滴下し、引き続き氷冷下で2時間攪拌し、さらに室温で12時間攪拌を続けて反応を行った。
【0056】
反応終了後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液および飽和食塩水で洗浄し、そして有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層から減圧下で溶媒を留去したのち、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、淡黄色油状生成物(73g)を得た。
【0057】
生成物を1H−NMRおよびIRによって分析した結果、生成物が4−(3−アクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物であることを確認した。
【0058】
分析結果: 図1にNMRチャートを示す。
【図1】
Figure 0004165967
【0059】
(1)1H−NMR(ppm):
8.62(1H,s)、8.55(1H,dd,J1=7.92Hz,
2=1.32Hz)、8.13(1H,d,J=7.92Hz)、
6.39(1H,d,J=17.31Hz)、6.15(1H,dd,
1=17.31Hz、 J2=10.39Hz)、5.85(1H,d,
J=10.39Hz)、4.26(2H,s)、4.10(2H,s)、
1.13(6H,s)
(2)IR(cm-1):2970、1859、1784、1723
【0060】
〈実施例2〉
4−(3−メタクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物の製造: (表1の(2)の化合物)
2、2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(58g)およびトリエチルアミン(78ml)のジクロロメタン溶液(200ml)を氷冷し、ここへメタクリル酸クロリド(58g)のジクロロメタン(200ml)溶液を3時間かけて滴下し、引き続き氷冷下で2時間攪拌を続行し、さらに室温で12時間攪拌して反応を行った。
【0061】
反応終了後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液、蒸留水および飽和食塩水で洗浄し、その後有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層から減圧下で溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、その後ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート(44g)を得た。
【0062】
得られた3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート(40g)およびピリジン(24ml)のジクロロメタン溶液(600ml)を氷冷し、そこへ無水トリメリット酸クロリド(59g)のジクロロメタン溶液(600ml)を2時間かけて滴下し、引き続き氷冷下で2時間攪拌し、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0063】
反応終了後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液および飽和食塩水で洗浄し、さらに有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を減圧下で溶媒留去した後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、淡黄色油状生成物(64g)を得た。生成物を1H−NMRおよびIRで分析することにより、4−(3−メタクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物であることを確認した。
【0064】
分析結果: 図2にNMRチャートを示す。
(1)1H−NMR(ppm):
8.62(1H,s)、8.55(1H,dd,J1=7.91Hz,
2=1.32Hz)、8.14(1H,d,J=7.91Hz)、
6.12(1H,s)、5.59 (1H,t,J=1.65Hz)、
4.27(2H,s)、4.08(2H,s)、1.95(3H,dd,
1=1.65Hz,J2=0.99Hz)、1.14(6H,s)
(2)IR(cm-1):2966,1857,1784,1723
【0065】
【図2】
Figure 0004165967
【0066】
〈実施例3〉
4−(3−アクリロキシ−1−メチルプロピル)トリメリット酸無水物の製造:
(表1の(9)の化合物)
1,3−ブタンジオール(50g)およびトリエチルアミン(78ml)のジクロロメタン溶液(800ml)に、氷冷下、アクリル酸クロリッド(50g)のジクロロメタン(200ml)溶液を3時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0067】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液、蒸留水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、その後ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、3−ヒドロキシ−3−メチルプロピルアクリレート(35g)を得た。
【0068】
3−ヒドロキシ−3−メチルプロピルアクリレート(33g)およびピリジン(24ml)のジクロロメタン溶液(600ml)に、氷冷下、無水トリメリット酸クロリッド(59g)のジクロロメタン溶液(600ml)を2時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0069】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、4−(3−アクリロキシ−1−メチルプロピル)トリメリット酸無水物(淡黄色油状生成物58g)を得た。
【0070】
分析結果:図3にNMRチャートを示す。
【図3】
Figure 0004165967
【0071】
(1)1H−NMR(ppm):
8.62(1H,s)、8.55(1H,dd),8.10(1H,d),
6.40(1H,d)、6.05 (1H,dd)、5.80(1H,d)
5.37(1H,m)、4.29(2H,m)、2.16(2H,m)、
1.46(3H,d)
(2)IR(cm-1):2960,1851,1781,1718
【0072】
〈実施例4〉
4−(5−アクリロキシ−3−メチルペンチル)トリメリット酸無水物の製造:
(表2の(13)の化合物)
3−メチル−1,5−ペンタンジオール(66g)およびトリエチルアミン(78ml)のジクロロメタン溶液(800ml)に、氷冷下、アクリル酸クロリッド(50g)のジクロロメタン(200ml)溶液を3時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0073】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液、蒸留水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、その後ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、5−ヒドロキシ−3−メチルペンチルアクリレート(43g)を得た。
【0074】
5−ヒドロキシ−3−メチルペンチルアクリレート(40g)およびピリジン(24ml)のジクロロメタン溶液(600ml)に、氷冷下、無水トリメリット酸クロリッド(59g)のジクロロメタン溶液(600ml)を2時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0075】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、4−(5−アクリロキシ−3−メチルペンチル)トリメリット酸無水物(淡黄色油状生成物64g)を得た。
【0076】
分析結果: 図4にNMRチャートを示す。
(1)1H−NMR(ppm):
8.60(1H,s)、8.55(1H,dd),8.10(1H,d),
6.40(1H,d)、6.15 (1H,dd)、5.80(1H,d)
4.40(2H,m)、4.25(2H,m)、1.55−1.90(5
H,m)、1.05(3H,d)
(2)IR(cm-1):2958,1852,1784,1722
【0077】
【図4】
Figure 0004165967
【0078】
〈実施例5〉
4−(6−アクリロキシヘキシル)トリメリット酸無水物の製造:
(表2の(21)の化合物)
1,6−ヘキサンジオール(66g)およびトリエチルアミン(78ml)のジクロロメタン溶液(800ml)に、氷冷下、アクリル酸クロリッド(50g)のジクロロメタン(200ml)溶液を3時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0079】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液、蒸留水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、その後ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート(41g)を得た。
【0080】
6−ヒドロキシヘキシルアクリレート(40g)およびピリジン(24ml)のジクロロメタン溶液(600ml)に、氷冷下、無水トリメリット酸クロリッド(59g)のジクロロメタン溶液(600ml)を2時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0081】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、4−(6−アクリロキシヘキシル)トリメリット酸無水物(淡黄色油状生成物64g)を得た。
【0082】
分析結果: 図5にNMRチャートを示す。
(1)1H−NMR(ppm):
8.65(1H,s)、8.58(1H,dd),8.12(1H,d),
6.42(1H,d)、6.12 (1H,dd)、5.83(1H,d)
4.10−4.45(4H,m)、1.46−1.71(8H,m)
(2)IR(cm-1):2950,1855,1784,1723
【0083】
【図5】
Figure 0004165967
【0084】
〈実施例6〉
4−[(4−アクリロキシメチルシクロヘキシル)メチル]トリメリット酸無水物の製造: (表2の(23)の化合物)
シクロヘキサンジメタノール(80g)およびトリエチルアミン(78ml)のジクロロメタン溶液(800ml)に、氷冷下、アクリル酸クロリッド(50g)のジクロロメタン(200ml)溶液を3時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0085】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液、蒸留水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1、その後ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート(44g)を得た。
【0086】
(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート(40g)およびピリジン(21ml)のジクロロメタン溶液(600ml)に、氷冷下、無水トリメリット酸クロリッド(51g)のジクロロメタン溶液(600ml)を2時間かけて滴下し、氷冷下で2時間攪拌を続け、さらに室温で12時間攪拌して反応させた。
【0087】
その後、反応混合物を0.1M−塩酸水溶液および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、4−[(4−アクリロキシメチルシクロヘキシル)メチル]トリメリット酸無水物(淡黄色油状生成物64g)を得た。
【0088】
分析結果:
(1)1H−NMR(ppm):
8.65(1H,s)、8.55(1H,dd),8.12(1H,d),
6.40(1H,d)、6.15 (1H,dd)、5.82(1H,d)
3.90−4.30(4H,m)、1.46−1.92(10H,m)
(2)IR(cm-1):2926,1856,1784,1727
【0089】
〈実施例7〉
実施例1で合成したエステル25mgをアセトン2mlに溶解し、外径18mmで30ml容量のリム付き試験管中でペレット状ポリエチレンテレフタレート樹脂5gと混合し、その後、減圧下にアセトンを留去し乾燥することにより評価用サンプルを作成した。
【0090】
このポリエチレンテレフタレート樹脂およびエステルの混合物を含む試験管を水平より5度傾斜した状態で、アルゴン雰囲気下、290℃に保ち、5分間静置した。引き続き290℃に保ったまま、試験管を毎分10回の速度で15分間回転させることにより混合物を溶融混合した後、回転を止め静置した状態で、溶融混合物が所定の距離を移動するのに要した時間を測定した。その結果を表3に移動時間(分/cm)として示した。
【0091】
さらに、この評価実験により得られたポリエチレンテレフタレート樹脂について、その数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し、結果を表3に併せて示した。
【0092】
〈実施例8〜12〉
実施例7で使用したエステルの代わりに実施例3〜6で合成したエステルを用い、それ以外の操作は実施例7と同様に行って、溶融混合物の移動時間を測定し、表3にその結果を示した。
【0093】
〈比較例1〉
ペレット状ポリエチレンテレフタレート樹脂5gを外径18mm容量30mlのリム付き試験管に入れ、この試験管を水平より5度傾斜した状態でアルゴン雰囲気下、290℃に保ち5分間静置した。引き続き290℃に保ったまま、試験管を毎分10回の速度で15分間回転させることによりポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融させた。回転を止め静置した状態で、溶融混合物が所定の距離を移動するのに要した時間を測定し、表3にその結果を示した。
【0094】
〈比較例2〉
実施例7で使用したエステルの代わりに無水トリメリット酸4−(2−メタクリロキシエチル)エステルを用い、それ以外は実施例7と同様の方法で操作して溶融混合物の移動時間を測定し、その結果を表3に示した。
【0095】
〈比較例3〉
実施例7で使用したエステルの代わりに無水トリメリット酸4−(2−アクリロキシ−1−メチルエチル)エステルを用い、それ以外は実施例7と同様の方法で操作して溶融混合物の移動時間を測定し、その結果を表3に示した。
【0096】
〈比較例4〉
実施例7で使用したエステルの代わりに無水ピロメリット酸25mgを用い、それ以外は実施例7と同様の方法で操作して溶融混合物の移動時間を測定し、その結果を表3に示した。
【0097】
〈実施例13〉
ポリエチレンテレフタレート(三井化学株式会社製、商品名J120,極限粘度0.73(dl/g))を160℃で4時間真空乾燥し、それを99.49重量部とり、これに4−(3−アクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物0.5重量部、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロペニル)ベンゼン(日本油脂株式会社製、商品名パーブチルP)0.01重量部、および脱水アセトン10重量部を混合した後、室温、窒素気流下で乾燥させた。
【0098】
得られた混合物を45mmφの二軸押出機のホッパーに供給し、一方シリンダーのベント口より炭酸ガスを圧入し、次の条件で発泡成形し、厚さ3mmの発泡シートを製造した。
発泡成形条件;
・押出機ダイ部の設定温度:270℃
・スクリュー回転数 :100rpm
・炭酸ガス注入圧力 :4MPa
・押出量 :6 kg/時間
その結果、発泡倍率8倍で、発泡セルが微細でかつ均一に分散した発泡体が得られた。
【0099】
【表3】
Figure 0004165967
【0100】
この表3において、溶融PET樹脂の移動時間で示した数値は、その値が大きいほど溶融粘度が高いことを意味している。表3では、エステルの種類を変えたときの移動時間を無添加時の移動速度と比較して示しており、本発明に係わるエステルが無添加時と比べて溶融粘度が高まり、架橋剤としての増粘効果の高いことがわかる。また、類似した化学構造を有する無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステルと比べても増粘効果は高く、さらに従来知られていた架橋剤である無水ピロメリット酸よりも増粘効果の高いことが評価できる。
【0101】
【発明の効果】
本発明が提供する化合物は簡単な合成ルートで製造することができる。そしてこの化合物を溶融状態にある熱可塑性ポリエステル樹脂と混合すると、ポリエステル樹脂の架橋剤として作用し、ポリエステル樹脂の溶融粘度が上昇し、成形加工を容易にする。この際、ラジカル開始剤と組み合わせて使用すると、その無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物の濃度が低くても架橋反応が進行し、かつポリエステル樹脂成形品をほとんど着色させるおそれがない。
【0102】
本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を架橋剤として使用し、熱可塑性ポリエステル樹脂のペレタイズ、押出成形、さらに発泡成形へと適用すると、この化合物による増粘効果によって、ポリエステル樹脂成形時の急激な粘度変化を避けることができ、成形機の運転を安定した状態で長時間継続して続けていくことができる。
【0103】
また、長時間継続された押出発泡成形によって製造された発泡成形体は、着色することがほとんどなく、微細な気泡が均一に分散した良好な状態で製造されるので、包装材、建築材等の広い分野で使用することができる。

Claims (8)

  1. 下記一般式[ ]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂用架橋剤。
    Figure 0004165967
    式中、Rは水素またはメチル基を示し、
    、R、R、Rは水素または炭素数5以下のアルキル基を示し、
    、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、
    は炭素数が10以下の直鎖または分岐状のアルキレン基、またはシクロヘキシレン基を示す。
  2. 前記の一般式 [ ] で示される化合物が、4−(3−アクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物、4−(3−メタクリロキシ−2,2−ジメチルプロピル)トリメリット酸無水物、4−(3−アクリロキシ−1−メチルプロピル)トリメリット酸無水物、4−(5−アクリロキシ−3−メチルペンチル)トリメリット酸無水物、4−(6−アクリロキシヘキシル)トリメリット酸無水物、4−[(4−アクリロキシメチルシクロヘキシル)メチル]トリメリット酸無水物からなる群から選ばれるいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用架橋剤。
  3. 熱可塑性ポリエステル樹脂が、下記一般式[ ]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋され、かつ発泡成形されてなることを特徴とするポリエステル樹脂成形体。
    Figure 0004165967
    式中、Rは水素またはメチル基を示し、
    、R、R、Rは水素または炭素数5以下のアルキル基を示し、
    、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、
    は炭素数が10以下の直鎖または分岐状のアルキレン基、またはシクロヘキシレン基を示す。
  4. 前記の熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項に記載のポリエステル成形体。
  5. 熱可塑性ポリエステル樹脂に下記一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を配合し、ポリエステル樹脂の溶融条件下で混合することを特徴とするポリエステル樹脂の架橋方法。
    Figure 0004165967
    式中、Rは水素またはメチル基を示し、
    、R、R、Rは水素または炭素数5以下のアルキル基を示し、
    、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、
    は炭素数が10以下の直鎖または分岐状のアルキレン基、またはシクロヘキシレン基を示す。
  6. 前記の無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物が、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部当たり0.001〜20重量部配合されることを特徴とする請求項に記載のポリエステル樹脂の架橋方法。
  7. 前記の混合が、ラジカル開始剤の共存下で行なわれることを特徴とする請求項5または6に記載のポリエステル樹脂の架橋方法。
  8. 熱可塑性ポリエステル樹脂に下記一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を配合してなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
    Figure 0004165967
    式中、Rは水素またはメチル基を示し、
    、R、R、Rは水素または炭素数5以下のアルキル基を示し、
    、R、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、
    は炭素数が10以下の直鎖または分岐状のアルキレン基、またはシクロヘキシレン基を示す。
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