JP4132261B2 - 熱可塑性ポリエステル樹脂用架橋剤およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂に適した架橋剤、ならびに熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋方法に関し、また無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を配合した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。さらに、本発明は無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋され、かつ発泡成形された熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性、透明性、耐候安定性、絶縁性などに優れているため、これ迄にボトル、繊維、フィルムなど広範囲の用途に利用されており、現在もさらに様々な用途開発が進められている。その新たな用途の一つとして発泡成形体が取り上げられ、食品容器、包装材、建材用途などへの展開が試みられている。
【0003】
一般に熱可塑性ポリエステル樹脂は溶融粘度が低いため、発泡成形時に発泡用ガスの離脱が起こり、微細な気泡が均一に分散した発泡成形体を製造することは難しい。そこで樹脂の溶融粘度を高め、発泡成形を可能にするための増粘方法が検討され、その一つとして熱可塑性ポリエステル樹脂のポリマー鎖を架橋し、ポリエステル樹脂の分子量を増大させる効果のある架橋剤を添加する方法が試みられている。
【0004】
例えば、多価エポキシドとアルカリ金属やアルカリ土類金属のカルボン酸塩または炭酸塩を用いる方法が特開昭53―24364号公報に、また多価エポキシドとモンタンワックス塩またはモンタンワックスエステル塩とを混合する方法が特開昭54―50568号公報に提案されている。しかし、これらの方法は、架橋反応の進行に伴い粘度が急速に増大するが、その後急速に粘度が低下する傾向にあるので、最適粘度を得ることはむずかしいと指摘されている。
【0005】
また、ジグリシジルエステルを用いる方法が特公昭61―48409号公報に、さらに多官能ジグリシジルエステルと多官能カルボン酸無水物とを組み合わせて用いる方法が特開昭59―210955号公報に提案されている。しかし、これらの方法で熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋処理と成形操作とを長時間継続すると、成形品が黒く着色してくる現象がみられる。
【0006】
本発明者らもエポキシ樹脂を増粘剤として用いる方法を試みたが、架橋反応が遅いため造粒時のストランド状態が時間とともに変化すること、架橋反応の進行に伴うエポキシドの濃度変化に起因する粘度変化が急激であること、エポキシド自身が互いに反応する性質があるためロングラン性に問題がある等が判明し、多価エポキシドを用いる方法では満足できる結果は得られていない。
【0007】
その他に、無水ピロメリット酸に代表される分子内に少なくとも二つの酸無水物基を有する化合物の使用が、特公平5―15736号公報に提案されている。この方法によると、熱可塑性ポリエステル樹脂のポリマー鎖が持つ末端水酸基による酸無水物基への求核付加反応、またはポリエステル樹脂のポリマー鎖にあるエステル結合と酸無水物基のエステル交換反応が進み、その結果架橋反応が起こる。しかし、酸無水物基の4つのカルボニル基がすべて熱可塑性ポリエステルポリマー鎖とエステル結合を形成した場合でも、4つのポリマー鎖が架橋されるにとどまるため、十分な溶融粘度を得るには酸無水物の添加量を増やす必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の第一の目的は、熱可塑性ポリステル樹脂に対して、従来知られている架橋剤とは異なる、別の化学構造を有する架橋剤を提供することである。第二の目的は、それを熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋反応に適用した時に、急激な粘度変化、着色、および架橋剤自身が互いに反応することに起因するロングラン性の不調等を来さないことである。そして第三の目的は、実際に熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡成形に用いた時に、急激な粘度変化を起こさず安定した増粘効果を発現すること、成形物表面の状態に経時変化が起きないこと、さらに長時間の運転中に成形物に着色を生じず、微細な気泡が均一に分散した成形体が製造可能なことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは前記課題を解決するために、架橋剤に適した化合物を探索した結果、本発明に係わる架橋剤を見出した。即ち、本発明に係わる熱可塑性ポリエステル樹脂用の架橋剤は、下記一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物である。
【化5】
式中、R1およびR2は 水素原子またはメチル基を示す。本発明では、無水トリメリット酸基が開環したトリメリット酸基も含まれる。
【0010】
本発明はまた、前記の一般式で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって熱可塑性ポリエステル樹脂を架橋する方法、およびこの化合物と熱可塑性ポリエステル樹脂とを含む組成物である。
【0011】
さらに本発明は、ポリエチレンテレフタレートで代表される熱可塑性ポリエステル樹脂が、前記一般式[1]で表される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋され、かつ発泡成形によって形成されたポリエステル樹脂成形体である。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係わる熱可塑性ポリエステル樹脂用の架橋剤、およびそれを用いた熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋方法、樹脂組成物、およびそれを用いた成形体について詳細に説明する。
【0013】
無水トリメリット酸化合物
本発明に係わる架橋剤は、下記の一般式[1]で表され、無水トリメリット酸アクリロキシアルキルエステル類化合物および無水トリメリット酸メタクリロキシアルキルエステル類化合物の両者を包含する。
【化6】
式中、R1は水素またはメチル基を示し、この化合物がアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体であることを示している。 また、一般式[1]の末端にある無水トリメリット酸基は、開環してトリメリット酸基になっていてもよい。
【0014】
一般式[1]で示される無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物の具体例を下記の図1に示した。
【図1】
【0015】
図1に示された化合物は、(1)が4−(アクリロキシエチル)トリメリット酸無水物、(2)が4−(メタクリロキシエチル)トリメリット酸無水物、(3)が4−(2−アクリロキシ−1−メチルエチル)トリメリット酸無水物、(4)が4−(2−メタクリロキシ−1−メチルエチル)トリメリット酸無水物であり、いずれもポリエステル樹脂の架橋剤として使用することができる。これらの中でも特に、4−(アクリロキシエチル)トリメリット酸無水物および4−(2−アクリロキシ−1−メチルエチル)トリメリット酸無水物の使用が好ましい。
【0016】
前記の化合物は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルメタクリレートと無水トリメリット酸とをそれぞれ各種脱水剤の共存下で反応させる方法でエステル化し、製造することができる。この脱水反応に使用して好適な脱水剤としては、2−ハロピリジニウム塩−アミンやジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N'−カルボニルジイミダゾール、無水トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0017】
また、無水トリメリット酸の反応性誘導体、例えば酸ハロゲン化物やエステルを対応する前記のヒドロキシアクリレートまたはメタクリレート化合物と反応させることによっても製造することができる。無水トリメリット酸の酸ハロゲン化物は、例えば無水トリメリット酸と塩化チオニル、三塩化リン、三臭化リンなど各種ハロゲン化試薬との反応で合成することができる。
【0018】
ヒドロキシアクリレートまたはメタクリレートと無水トリメリット酸との反応、または無水トリメリット酸の反応性誘導体との反応は、それぞれの反応試薬を通常モル比約1:1の割合で供給し、溶媒中で、温度0〜50℃、圧力 常圧〜10atmの条件下で行われる。
【0019】
反応溶媒としては、ハロゲン化炭化水素系、芳香族炭化水素系、エステル系、エーテル系、ケトン系、ニトリル系などの溶媒から原料の溶解度や反応条件に応じて適宜選択して用いることができ、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリルなどを例示することができる。
【0020】
架橋剤、架橋方法、樹脂組成物
これまでに説明した無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は熱可塑性ポリエステル樹脂の架橋剤として好適に使用することができる。ここで熱可塑性ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重縮合により得られる熱可塑性の線状ポリエステルである。
【0021】
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などが例示され、これらのジカルボン酸は1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
またジオール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、4,4−ビス( β−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、ジエチレングリコールなどが例示され、これらのジオール成分は1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
熱可塑性ポリエステル樹脂の好適な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。さらにこれらポリエステル樹脂の混合物、またはこれらポリエステル樹脂を50重量%以上含む変性樹脂でもよい。さらに、一度使用したポリエステル樹脂のリサイクル品であってもよい。
【0024】
架橋方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂と無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシエステルとをポリエステル樹脂の溶融条件下で混合させることによって進行させることができる。配合に際して、架橋剤としての無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシエステルを熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、通常0.001〜20重量部、好ましくは0.01重量部〜10重量部、より好ましくは0.05重量部〜1重量部の割合で添加、樹脂組成物とする。この配合割合の範囲内であれば、架橋ないし後述する発泡成形の工程において適度な粘性を示すと共に、最終成形体を着色させるおそれは少ない。
【0025】
さらに本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂を無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシエステルの存在下で架橋させる際に、少量のラジカル開始剤の併存下で行うと、より効果的に架橋反応を促進させることができ、そのような架橋方法も本発明の範囲内である。ラジカル開始剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、通常0.0001〜1重量部、好ましくは0.001重量部〜0.1重量部の割合で用いられる。
【0026】
使用可能なラジカル開始剤としては特に限定されず、アゾ化合物、過酸化物、ヒドロペルオキシドなどを用いることができる。その一例として、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、α、α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、メタクロロ過安息香酸などを挙げることができる。これらは単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよく、また必要に応じてラジカル開始剤の分解を促進する鉄などの金属類を添加してもよい。
【0027】
なお、熱可塑性ポリエステル樹脂にこの架橋剤、および必要に応じてラジカル開始剤を添加して配合物を調製する方法として、タンブラーやヘンシェルミキサー等を用いた一般のドライブレンド法によって行うことができる。
【0028】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂への配合操作において、架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤を溶媒に溶解させ、熱可塑性ポリエステル樹脂と混合した後、風乾または減圧下で溶媒を留去することにより混合させることもできる。この時の溶媒としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、架橋剤およびラジカル開始剤の分解ないし反応を引き起こさないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、アセトンなどのハロゲン化炭化水素系、エステル系、エーテル系、ケトン系などが挙げられる。
【0029】
無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって、熱可塑性ポリエステル樹脂を架橋させる時には、熱可塑性ポリエステル樹脂の融点よりも高い温度、即ちポリエステル樹脂の溶融条件下で、例えば100〜350℃、好ましくは150〜300℃の温度で混合することにより行うことができる。混合操作は、一軸または二軸の押出機を用いて混練条件下で行うことが望ましい。無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、1種単独で使用しても、或いは2種以上を組み合わせて使用してもよいし、さらに他の架橋剤と併用して使用することもできる。
【0030】
架橋操作において、使用する熱可塑性ポリエステル樹脂の一部を用いて、或いは熱可塑性ポリエステル樹脂と相溶性のある別の樹脂、例えばポリエチレンを用いて、架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤とを前述した方法で混合し、あらかじめマスターバッチを製造しておくこともできる。その後残余の熱可塑性ポリエステル樹脂と混合し、この段階で架橋反応を進めればよい。また、マスターバッチの製造段階では架橋剤のみを配合し、その後の希釈混合段階でラジカル開始剤を加える方法でもよい。
【0031】
無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物による熱可塑性ポリエステル樹脂との架橋反応は、次の機構によって進行するものと推測している。即ち、無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物は、その分子内に重合性ビニル基であるアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、また熱可塑性ポリエステル樹脂のポリマー鎖末端にある水酸基と反応性のある酸無水物基とを合わせ持っている。従って、無水トリメリット酸エステル化合物と熱可塑性ポリエステル樹脂との加熱混練り条件下で、この化合物の酸無水物基と反応した熱可塑性ポリエステル樹脂のポリマー鎖が、この化合物のアクリロイル基またはメタクリロイル基の重合により成長したポリマー鎖によって連結され、ポリエステル樹脂の架橋反応が進行するものと考えている。このことから、本発明に係わる架橋剤は、末端水酸基を有する多くの熱可塑性ポリエステル樹脂に対して、容易に架橋反応を進行させられると考えている。
【0032】
ポリエステル樹脂成形体
本発明のポリエステル樹脂成形体は、熱可塑性ポリエステル樹脂が本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物によって架橋構造をとっていると共に、発泡剤を伴った発泡成形によって微細な気泡が均一に分散し、かつ所望の形状に賦形されている。
【0033】
この成形体の製造方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂に架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤をブレンドして組成物を調製する工程、この組成物を溶融混練りする工程、およびこの溶融混合物を発泡成形させて所望の形状に賦形する工程からなっている。溶融混合物を調製するまでの工程は、前述した通りであるが、ここまでの工程の一部を、また工程の全部を次に述べる発泡成形工程で使用する押出機を用いて、発泡成形工程と共に一段で行うこともできる。
【0034】
発泡成形工程では、まず溶融混合物を押出発泡成形機へ供給し、そして押出機に液体状ないし気体状の発泡剤を圧入し、両者を十分に溶解混合した後、押出機先端のダイから大気中へ押出し、発泡成形体が製造される。この際、発泡剤は通常押出機のシリンダー中央部に設けられたベント部から圧入され、溶融樹脂へ溶解混合される。
【0035】
熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡成形体は、また別の方法によっても製造することができる。例えば熱可塑性ポリエステル樹脂および発泡剤を押出発泡成形機のホッパーに供給し、一方、押出機シリンダーに設けた供給口から本発明の架橋剤および必要に応じてラジカル開始剤を供給し、溶融下に押出して発泡成形する方法である。また、熱可塑性ポリエステル樹脂、架橋剤、発泡剤、必要に応じてラジカル開始剤を均一混合した後、押出機に供給し、一段で発泡成形する方法も可能である。
【0036】
熱可塑性ポリエステル樹脂と架橋剤を溶融混合する際、水分は熱可塑性ポリエステル樹脂の加水分解を引き起こす原因になるため、上記のいずれの方法で溶融混合する場合においても、水分量を可能な限り低く抑えることが必要であり、材料に含まれる水分量を100ppm以下に抑制することが望ましい。そのために使用する熱可塑性ポリエステル樹脂は、除湿乾燥機等によって、60〜180℃、および−20℃以下の露点の条件下であらかじめ乾燥しておく方法が好ましく採用されている。
【0037】
使用される発泡剤としては、不活性ガス、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。具体的には、炭酸ガス、窒素、ヘリウム、メタン、エタン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソぺンタン、ノルマルヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロプロパン、シクロペンタン、1、1―ジメチルシクロプロパン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、エチルシクロブタン、1,1,2−トリメチルシクロプロパン、ベンゼン等を挙げることができる。
【0038】
また、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエチレン、ジクロロテトラフルオロエチレン、ジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなども例示することができる。
これらの中でも成形時の安全性を考慮すると、炭酸ガス、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスが発泡剤として好ましい。
【0039】
発泡剤の添加量は、熱可塑性ポリエステル樹脂と架橋剤を含む溶融混合物の合計量に対して0.05〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%である。発泡剤の量がこの範囲にあると、均一微細な気泡を有する発泡成形体が得られる。
【0040】
発泡成形に際して、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、核剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、その他の添加剤を任意に添加、混合させることができる。
【0041】
押出発泡成形において、押出機先端に取り付けたダイの形状によって、シート状、フィラメント状、異形状等の発泡成形体を得ることができ、架橋剤、ラジカル開始剤および発泡剤の添加量を調節することによって、また押出し条件を調整することによって発泡倍率を任意に変えることができる。発泡倍率は、用途によって異なるが、通常2〜8倍の範囲で変えることができる。このようにして製造された発泡成形体は、柔軟でかつ適度な機械特性を有し、また耐熱性、耐薬品性を備えていることから、包装材分野や建築材分野等の各種用途に使用することができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例にもとづいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
〈実施例1〜3〉
前記の図1(1)〜(3)で表される無水トリメリット酸アクリロキシアルキルエステル化合物または無水トリメリット酸メタクリロキシアルキルエステル化合物25mgをアセトン2mlに溶解し、外径18mmで容量30mlのリム付き試験管中に入れた。そこへさらにペレット状ポリエチレンテレフタレート樹脂5gを加え、混合した後、減圧下にアセトンを留去し乾燥して評価用サンプルを調製した。
【0043】
このポリエチレンテレフタレート樹脂および無水トリメリット酸エステルの混合物を含む試験管を水平より5度傾斜した状態で、アルゴン雰囲気下、290℃に保ち、5分間静置した。引き続き290℃に保ったまま、試験管を毎分10回の速度で15分間回転させることにより混合物を溶融混合した後、回転を止め静置した状態で、溶融混合物が所定の距離を移動するのに要した時間を測定した。その結果を表1に移動時間(分/cm)として示した。
【0044】
さらに、この評価実験により得られたポリエチレンテレフタレート樹脂について、その数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、結果を表1に併せて示した。
【0045】
【表1】
【0046】
〈比較例1〉
無水トリメリット酸エステルを添加することなく、ペレット状ポリエチレンテレフタレート樹脂5gのみを使用した他は実施例1と同様の操作を繰り返し、評価用サンプルを得た。そして、実施例1と同じ評価試験を行い、その結果を表1に示した。
【0047】
〈比較例2〉
実施例1で使用した無水トリメリット酸エステルの代わりに無水ピロメリット酸25mgを用いた以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、評価用のサンプルを得た。溶融混合物の移動時間を測定し、その結果を表1に併せて示した。
【0048】
この表1において、溶融PET樹脂の移動時間で示した数値は、その値が大きいほど溶融粘度が高いことを意味している。表1は、架橋剤の種類を変えたときの移動時間を無添加時の移動速度と比較して示しており、本発明に係わる架橋剤が無添加時と比べて溶融粘度が高まり、架橋剤としての増粘効果の高いことを意味している。また、無水ピロメリット酸を架橋剤として使用した場合と比較して、高い溶融粘度が得られることを示している。
【0049】
〈実施例4〉
ポリエチレンテレフタレート(三井化学株式会社製、商品名J120、極限粘度0.73(dl/g))99.49部を160℃で4時間乾燥し、これに4−(アクリロキシエチル)トリメリット酸無水物0.5重量部、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロペニル)ベンゼン(日本油脂株式会社製、商品名パーブチルP)0.01部、および脱水アセトン10重量部を混合し、その後室温、窒素気流下で乾燥させた。
【0050】
得られた混合物を45mmφの二軸押出機のホッパーに供給し、炭酸ガスを圧入しつつ次の条件で押出発泡成形を行って、厚さ3mmの発泡シートを成形した
その結果、成形されたシートは、発泡セル径が微少で、セルが均一に分散した発泡体であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を溶融状態にある熱可塑性ポリエステル樹脂と混合すると、ポリエステル樹脂の架橋剤として作用し、ポリエステル樹脂の溶融粘度を上昇させ、成形加工性を向上させる。この際、ラジカル開始剤と組み合わせて使用すると、低濃度でも架橋反応が進行し、かつポリエステル樹脂成形品を着色させるおそれがない。
【0052】
本発明に係わる無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物を架橋剤として使用し、熱可塑性ポリエステル樹脂のペレタイズ、押出成形、さらに発泡成形へと適用すると、この架橋剤による増粘効果によって、ポリエステル樹脂成形時の急激な粘度変化を避けることができ、安定した成形機の運転を長時間継続して続けていくことができる。
【0053】
また、長時間継続された押出発泡成形によって製造された発泡成形体は、着色することがほとんどなく、微細な気泡が均一に分散した良好な状態で製造されるので、包装材、建築材等の分野で好適に使用することができる。
Claims (9)
- 一般式[1]における無水トリメリット酸基がトリメリット酸基であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用架橋剤。
- 一般式[1]で示される化合物が、4−アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、または4−(2−アクリロキシ−1−メチルエチル)トリメリット酸無水物であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用架橋剤。
- 熱可塑性ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項4記載のポリエステル樹脂成形体。
- 無水トリメリット酸(メタ)アクリロキシアルキルエステル化合物が、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部当たり0.001〜20重量部配合されることを特徴とする請求項6記載のポリエステル樹脂の架橋方法。
- ラジカル開始剤の共存下で行うことを特徴とする請求項6記載のポリエステル樹脂の架橋方法。
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