JP3938453B2 - ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体およびその製造方法 - Google Patents

ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比較的分子量の低い直鎖状のポリエステル樹脂とカルボン酸基を含有するポリオレフィンとを少量の結合剤と微量の触媒を使用して結合反応させ、物性の改良されたポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、透明ガラス質のポリエステル樹脂の耐衝撃性と脆性を改良するためと、白色結晶性のポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィンの剛性と硬さを改良するためと、ポリエステルとポリオレフィンとの相溶性と混合性を改良するために、ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体の製造方法を提供することに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルの中でも、直鎖状飽和ポリエステル、例えば、芳香族系ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(ペットまたはPET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等(以下、PET系ポリエステルとも称する)は優れた物性を有し、繊維、フィルム、ボトル等として広範囲に使用されており、また高性能樹脂材料として自動車、機械部品、電気・電子材料、建材、容器、各種工業用品等の分野にも広く活用されている。他方、脂肪族系ポリエステルとしてポリカプロラクトン、ポリエチレン・サクシネート、ポリブチレン・サクシネート、ポリブチレン・サクシネート・アジペート、ポリ乳酸は、近年に生分解性プラスチックとして活用され始めている。
【0003】
近年、省資源と環境保全の観点から、工場生産工程や一般消費市場から回収された使用済みプラスチック製品の再利用の必要性が世界的に認識され、ポリエステルについても、特に、使用済みペットのボトル、フィルム等は大量の回収再利用が積極的に進められている。このようなポリエステルは、成形加工の熱履歴を経ることによって大幅な分子量低下が起こりやすく、分子末端の遊離カルボキシル基数が増大する傾向が強いことが実用上問題であり、回収品の再利用技術の開発の障害になっていた。使用済みの回収したポリエステルは新品チップに比較して分子量が低下し、例えば大量に派生する回収ペットボトルのフレーク(破砕物)の分子量はほぼ半減している。従ってこれをベース樹脂として再利用すると成形加工性が悪く、成形体が脆くて耐衝撃性も劣り、元のペットボトルの品質にはならない。その結果、低分子量でも成形できる繊維と低品質シート等にしかならず、再利用の用途は狭い範囲に限定されていた。
一方、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィンは、フイルム、シート、容器等に大量に使用されているが、剛性と硬さが硬質塩ビやペット樹脂やポリスチレンに比較すると遥かに劣ることが知られている。
【0004】
これらの問題を解決する方法の一つとしては、分子量を回復および増大させる方法、即ちPET系ポリエステルに関しては、固層重合で分子量を回復させる方法、鎖延長剤(結合剤)とポリエステル末端基を反応させて分子量を増大させる方法、機械的特性を補うためエラストマー等の他の樹脂を添加する方法などが知られている。
分子量を増大させる為の鎖延長剤(結合剤)としては、イソシアナート、オキサゾリン、エポキシ、アジリジン、カルボジイミド等の結合手または官能基を有する化合物を使用することが提案されている。しかしながら、反応性、耐熱性、安定性等からの制約が強く、実用性があるものは限定される。これらの中でもエポキシ化合物は、比較的有用であり、モノエポキシ化合物を配合したもの(特開昭57−161124号公報)、ジエポキシ化合物を配合したもの(特開平7−166419号公報、特公昭48−25074号公報、特公昭60−35944号公報等)があるが、反応速度、ゲル生成、溶融粘度、相溶性、熱安定性、成型品の物性等に問題が多々あり、実用化は困難であった。
【0005】
一方、回収されたPET系ポリエステルを2官能性のエポキシ樹脂および立体障害性ヒドロキシフェニルアルキルホスホン酸エステルと溶融混合してポリエステルの分子量を増大させる方法が提案されている(特表平8−508776号公報)。この方法は比較的反応速度が早いが、使用する立体障害性ヒドロキシフェニルアルキルホスホン酸エステルは高価であり、低コストの回収循環費用が要求される業界においては実用性に問題がある。また、本発明者らが先に提案した中分子量のPET系ポリエステルを2官能性と多官能性のエポキシ化合物および特定の触媒と溶融混合および結合反応させる方法(PCT WO98/44019)は、該ポリエステルの分子量および溶融張力を増大させるが、成形加工品の耐衝撃性や低温脆性の改善には不充分である。
【0006】
また、PET系ポリエステルにゴム、エラストマー、柔らかいメタロセン系ポリエチレン等を配合する方法も提案されているが、それらの場合、相溶性、耐熱性、弾性率、ペレットの乾燥性等に難点があった。他方、ポリエチレンやポリプロピレンにPET系ポリエステルを配合する方法も提案されているが、決定的に混合性、相溶性が悪く、実用化できていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、比較的分子量の低い直鎖状のポリエステル樹脂とカルボン酸基を含有するポリオレフィンとを少量の結合剤と微量の触媒を使用して結合反応させ、物性の改良されたポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体の製造方法を提供することを目的とする。さらに詳しくは、本発明は、透明ガラス質のポリエステル樹脂の耐衝撃性と脆性を改良するためと、白色結晶性のポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィンの剛性と硬さを改良するためと、ポリエステルとポリオレフィンの相溶性と混合性を改良するために、ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、比較的分子量の低い直鎖状のポリエステル樹脂とカルボン酸基を含有するポリオレフィンとを少量の結合剤と微量の触媒を使用して結合反応させ、物性の改良されたポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体の製造方法を工業的に有利に達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の発明事項を提供するものである。
(1)(a)直鎖状飽和ポリエステル95〜5重量部、(b)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン5〜95重量部、(c)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を前記の(a)と(b)の合計の0.1〜10重量部、(d)結合反応触媒として有機酸の金属塩を前記の(a)と(b)の合計の0.01〜5重量部から構成される混合物を、予め該ポリエステル・ポリオレフィンの融点以上の温度で加熱することによって、溶融粘度を増加させてJIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)を50g/10分以下にしたポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
(2)直鎖状飽和ポリエステル(a)が、固有粘度0.50〜0.90dl/gのポリエチレンテレフタレート系芳香族ポリエステルであることを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
(3)直鎖状飽和ポリエステル(a)が、回収されたポリエチレンテレフタレート系の芳香族ポリエステル成形品再循環物であることを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
(4)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン(b)が、無水マレイン酸またはカルボン酸基を含有するエチレン系単量体が共重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、それらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
(5)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物(c)が、脂肪族系のエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、脂環式系の水素化ビスフエノールA・ジグリシジルエーテルおよび芳香族系のビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル初期縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
(6)結合剤として分子内に平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物(c)が、脂防族系のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル、グリセリン・トリグリシジルエーテル、ヘテロ環式のトリグリシジルイソシアヌレートおよび芳香族系のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
(7)(a)直鎖状飽和ポリエステル95〜5重量部、(b)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン5〜95重量部、(c)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.1〜5重量部、(d)結合反応触媒として有機酸の金属塩を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.01〜1重量部から構成される混合物を予め該ポリエステル・ポリオレフィンの融点以上の温度で加熱することによって、溶融粘度を増加させてJIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)を50g/10分以下のペレットにして後に、化学発泡剤または炭酸ガスと共に熔融混合してテイ型ダイスから押出して発泡させることを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の発泡体の製造方法。
(8)未乾燥の(a)直鎖状飽和ポリエステル95〜5重量部をその融点以上の温度で溶融させるとともに2.6×10Pa以下に脱気・脱水し、(b)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン5〜95重量部、(c)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を前記の(a)と(b)の合計の0.1〜5重量部、(d)結合反応触媒として有機酸の金属塩を前記の(a)と(b)の合計の0.01〜1重量部から構成される混合物を該ポリエステルの融点以上の温度で加熱することによって、JIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレート(MFR)を50g/10分以下にすることを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において原料プレポリマーとしての(a)成分の直鎖状飽和ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とから合成されるものである。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフエニルジカルボン酸、ジフエニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフエニルエーテルジカルボン酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらの中で、芳香族系ジカルボン酸、特にテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が、特に好ましい。他方、開環重合の脂肪族系ポリエステル用原料として、カプロラクトン、乳酸二量体等を挙げることができる。
【0011】
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等を挙げることができる。これらの中で、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、α−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸等を挙げることができる。
【0012】
直鎖状飽和ポリエステルの具体例としては、PET系芳香族ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、あるいはそれらの共重合体が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート(PET)が、世界的に大量生産されており、本発明のプレポリマーとして特に好ましい。一方、将来性のある生分解性プラスチックとしての脂肪族ポリエステルとしては、ポリカプロラクトン、ポリエチレン・サクシネート、ポリブチレン・サクシネート、ポリブチレン・サクシネート・アジペート、ポリ乳酸が挙げられる。ポリ乳酸が、透明性ガラス質樹脂であり、本発明のプレポリマーとして好ましい。
【0013】
本発明のプレポリマーとして使用する直鎖状飽和ポリエステルとしてのPET系芳香族ポリエステルは、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール(1:1)混合溶媒に溶解して25℃で測定した固有粘度(IV値)が0.50dl/g以上(これは、JIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が約210g/10分以下に相当する。以下に同じ。)であることが好ましく、0.60dl/g以上(MFRが約130g/10分以下)であることがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g未満であると、本発明によっても高分子量化と高溶融粘度化が困難であり、得られるポリエステルーポリエチレン・ブロック共重合体が必ずしも優れた成形加工性および物性を与えることができない恐れがある。固有粘度の上限は、特に制限されないが、通常0.90dl/g(MFRが約25g/10分以上)、好ましくは0.80dl/g(MFRが約45g/10分以上)である。
【0014】
現実には、大量に収集・回収されるPET系芳香族ポリエステルのペット・ボトルのフレークまたはペレットをプレポリマーとして使用することが多い。通常は、PETボトルが有している固有粘度が比較的に高いので、回収品の固有粘度も高く、一般には0.60〜0.80dl/g(MFRが130〜45g/10分)、特に0.65〜0.75dl/g(MFRが100〜55g/10分)である。他方、脂肪族系ポリエステルの固有粘度もこれらに準ずるが、一般的にはかなり上方にシフトする傾向がある。
回収されるペット成形品を利用する場合、その成形品の形態は、繊維、フィルム、ボトルあるいは他の成形物のいずれであってもよく、またペット中には、他のポリマー、例えばポリオレフイン、ポリアクリル酸エステルなどを少割合含有していても差し支えない。また充填剤、顔料、染料などの添加剤を少量含有したものでもよい。特に、ペット・ボトルは、大量に回収され再循環使用されるための社会的環境が整備されつつあり、その上ペット・ボトルは再利用に適したほぼ均一な組成であるので、本発明の原料の直鎖状飽和ポリエステルとして好適である。一般に、回収ペット・ボトルのフレークは、20kg入り紙袋品と500kg入りフレコン品で供給されるが、通常含有水分は3,000〜6,000ppm(0.3〜0.6重量%)程度である。
【0015】
本発明の(b)成分の分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィンは、無水マレイン酸またはカルボン酸基を含有するエチレン系単量体が共重合されたポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリプロピレンおよびそれらの混合物である。また、ポリエチレンまたはポリプロピレンに無水マレイン酸と有機過酸化物とを添加して加熱反応処理によりカルボン酸基が導入されたポリオレフィンを使用することが出来る。また、エチレン・アルキルアクリレート共重合体の部分鹸化物を使用することが出来る。
例えば、市販品の一例として日本ポリオレフィン(株)のポリエチレン、アルキルアクリレートおよび無水マレイン酸等の共重合体(レクスパールETシリーズ:190℃のMFR8〜80g/10分、融点70〜98℃、アルキルアクリレートの含有量数j〜数十重量%、無水マレイン酸の含有量数重量%)を使用することが出来る。また、同社のポリオレフィン・無水マレイン酸グラフト共重合体のアドテックスシリーズ:PPタイプ(230℃のMFR2〜25g/10分、融点145〜162℃)、HDタイプ(190℃のMFR0.2〜0.5g/10分、融点130〜135℃)、LDPEタイプ(190℃のMFR1.0〜11g/10分、融点102〜106℃)、LLDPEタイプ(190℃のMFR1.0〜5.5g/10分、融点110〜122℃)およびEVAタイプ(190℃のMFR2.8 g/10分、融点102℃)を使用することが出来る。
【0016】
本発明の(c)成分の結合剤は、分子内に2個および場合により平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物である。
通常、分子内に平均2個のエポキシ基を有する化合物の例としては、脂肪族系のポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、また脂環式系の水素化ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、水素化イソフタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシ・シクロヘキシル・メチル−3,4−エポキシ・シクロヘキサン・カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ・シクロヘキシル)アジペートまたヘテロ環式系のジグリシジル・ヒダントイン、ジグリシジル・オキシアルキル・ヒダントイン、また芳香族系のビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフエノールA・ジグリシジルエーテルの初期縮合物、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル・アニリン等を挙げることができる。
【0017】
分子内に平均3個のエポキシ基を有する化合物の例としては、脂肪族系のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル、またヘテロ環式系のトリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジル・ヒダントイン、また芳香族系のトリグリシジル・パラ−またはメタ−アミノフエノール等を挙げることができる。
分子内に平均4個のエポキシ基を有する化合物の例としては、テトラグリシジル・ベンジルエタン、ソルビトール・テトラグリシジルエーテル、テトラグリシジル・ジアミノフエニールメタン、テトラグリシジル・ビスアミノメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
分子内に平均2.1個以上から数個の中間的個数のエポキシ基を有する化合物としては、フェノール・ノボラック・エポキシ樹脂およびクレゾール・ノボラック・エポキシ樹脂等を挙げることができる。その一例としてダウケミカル社から分子内のエポキシ基が、平均して約2.2、3.6、3.8および5.5個のものが上市されており、これらを使用することができる。
【0018】
本発明の(c)成分のエポキシ基含有化合物の配合量は、(a)成分の直鎖状飽和ポリエステルと(b)成分の分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィンとの合計量100重量部に対して0.1〜5重量部である。特に、0.3〜2重量部であることが好ましい。0.1重量部未満では両者の結合効果が不十分で、分子量と溶融粘度が上がらず、MFRが所望の50g/10分以下にならない。一方、5重量部を越えるとゲルが生成したり、或いは可塑化効果で成形品の基本物性や機械的特性や弾性率が低下したりする。一般的には、(c)成分のエポキシ樹脂の種類、特に分子量によってその配合量は異なる。
例えば、低分子量でエポキシ当量100〜200g/eqのエポキシ樹脂を使用して固有粘度が0.90dl/gと高い直鎖状飽和ポリエステルと反応させる場合には、0.1重量部の配合量でも可能である。他方、高分子量でエポキシ当量約2000g/eqのエポキシ樹脂を使用して固有粘度が0.50dl/gと低い直鎖状飽和ポリエステルと反応させる場合には、5重量部程度の配合量が必要である。
【0019】
本発明の第一の特徴は、比較的分子量の低い直鎖状のポリエステル樹脂とカルボン酸基を含有するポリオレフィンとを少量の結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物と微量の触媒を使用して化学結合させ図1の▲4▼と▲5▼に示される構造で、かつ成形加工性と物性の改良されたポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体を実現することにある。即ち、本発明は、透明ガラス質のポリエステル樹脂の耐衝撃性と脆性を改良するためと、白色結晶性のポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィンの剛性と硬さを改良するためと、ポリエステルとポリオレフィンの相溶性と混合性を改良するために、ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体を実現することにある。
本発明の第二の特徴は、特に結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%に、平均2.1個以上好ましくは3個のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を使用することによって、直鎖状飽和ポリエステルの分子量を増大させると共に、図1の▲6▼と▲7▼に示される構造で、直鎖状飽和ポリエステルまたはポリオレフィンの長鎖分岐を導入して、インフレーション法フイルム成形、ダイレクト・ブロー・ボトル成形、高発泡成形等に不可欠な高溶融粘度と高スウェルを持つPET系ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂の製造と成形加工を実現することにある。
【0020】
本発明によるブロック共重合体の生成反応は、下記(1)式のカルボン酸基とエポキシ基との触媒存在下の加熱溶融による結合反応によるものである。即ち、エポキシ環がカルボン酸基で開き、水酸基が副生するので、本発明によるブロック共重合体は、ヒドロキシ・エチル・エステル結合を含有するものである。
Figure 0003938453
ここで、Xはポリエステル残基、Rはエポキシ化合物残基、Yはポリオレフィン残基である。
本発明によれば、2個および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物の種類の選択および使用量を増やすことにより、長鎖分岐度、分子量、溶融粘度およびスウェル等を、インフレーション法フイルム成形、ダイレクト・ブロー・ボトル成形、高発泡成形等に必要な程度に制御することができる。本発明のポリエステルーポリオレフィンブロック共重合体は、図1に示されるように長鎖分岐が導入されるために分子鎖の「からみあい」が充分起こるので、MFRが比較的大きい20〜50g/10分の範囲においてもスウェルあるいは溶融粘度を加成自由に大きく出来る。
2個のエポキシ基を有する化合物と平均2.1個以上のエポキシ基を有する化合物の配合割合は0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の範囲内で適宜選択することができる。平均2.1個以上のエポキシ基を有する化合物の比率が増大するにつれて、スウェルと溶融粘度が増大することにより、インフレーション法フイルム成形、ダイレクト・ブロー・ボトル成形が容易になり、特に発泡成形の場合には低発泡倍率から高発泡倍率の発泡体を自由に製造することができる。
【0021】
本発明における(d)成分としての結合反応触媒は、(1)アルカリ金属のカルボン酸塩、(2)アルカリ土類金属のカルボン酸塩、(3)アルミニウム、亜鉛またはマンガンのカルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一種類以上を含有する触媒である。
前記触媒は、金属のカルボン酸塩のタイプとそれ以外のタイプに分けられる。カルボン酸の金属塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのようなアルカリ土類金属;アルミニウム、亜鉛およびマンガンが例示される。
これら金属と塩を形成するカルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびその他の多価カルボン酸のいずれでもよく、さらにフィッシャー・トロフィッシュ法レゾール合成ワックス、ポリオレフィン酸化分解物、アイオノマーなどのワックス状やポリマー状カルボン酸であってもよく、その炭素数も特に制限されない。しかしカルボン酸の炭素数は1以上であればよく、得られた高重合度ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の成形時の核形成剤として成形加工性の改善に影響を与える。すなわち中級および高級のカルボン酸、特に中級および高級脂肪酸の金属塩を触媒として使用した場合、インフレーション法フイルム成形のバブル形成を容易にすると共にフイルムを柔軟化し、また発泡成形体を細かな気泡を持つ製品に改良する。
【0022】
本発明における好ましい結合反応触媒は、カルボン酸のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩である。特に好ましいのは、これらのステアリン酸塩であり、更にそれらの混合物であり、これらは特に安全性が極めて高い。他の好ましい結合反応触媒は、カルボン酸のマンガン塩であり、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基とエポキシ環の反応触媒としての作用が速い。このマンガン塩としては、有機カルボン酸の塩が好ましく、具体的には炭素数1〜20個の、特に1〜10個の脂肪族カルボン酸、炭素数3〜12個の脂環族カルボン酸あるいは炭素数7〜20個の芳香族カルボン酸のマンガン塩が好適である。塩を形成するカルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、アジピン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、モンタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、フタル酸などが挙げられる。更に好ましい例としては、酢酸第1マンガン、酢酸第1マンガン無水物、酢酸第1マンガン4水塩、酢酸第2マンガン等を挙げることができる。
【0023】
この結合反応触媒としてのカルボン酸のナトリウム塩、カルシウム塩およびマンガン塩等を含めて、その配合量は、(a)成分の直鎖状飽和ポリエステルと(b)成分のポリオレフィンの合計量100重量部に対して0.01〜1重量部である。特に、0.05〜0.5重量部であることが好ましい。0.01重量部未満では触媒効果が小さく、結合反応が未達となってブロック共重合体が生成しないことがある。1重量部を超えると局部反応によるゲル生成や溶融粘度の急上昇による押出成形機内のトラブルなどが生じる。好ましい配合量の例は、ステアリン酸カルシウム0.10重量部とステアリン酸ナトリウム0.05〜0.1重量部の混合物、ステアリン酸カルシウム0.10重量部とステアリン酸リチウム0.05〜0.1重量部の混合物またはステアリン酸カルシウム0.10重量部と酢酸マンガン0.05〜0.1重量部の混合物などである。
【0024】
(d)成分の結合反応触媒に必要に応じて添加できる助触媒、結晶化核剤、結晶化促進剤として、例えば塩化リチウム、ヨウ化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属等のハロゲン化物や炭酸塩、重炭酸塩、トリブチルホスフイン、トリオクチルホスフイン、トリフエニルホスフイン等のアリールまたはアルキル置換ホスフイン、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の飽和脂肪酸やクロトン酸、オレイン酸、エライジン酸等の不飽和脂肪酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、前記(a)成分のポリエステル、(b)成分のポリオレフィン、(c)成分のエポキシ基含有化合物および(d)成分のカルボン酸の金属塩以外に、結晶核形成剤または充填材として、タルク、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カオリン、アルミナ、水酸化アルミ等、また補強材としてガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ウイスカー等、また顔料としてカーボンブラック、酸化アンチモン、二硫化モリブデン、酸化チタン等、その他また着色剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調節剤、帯電防止剤、導電剤、流動性付与剤、離型材、他の架橋剤、他の樹脂類等を必要に応じて配合してもよい。
【0026】
例えば、酸化防止剤としては、p−t−ブチルヒドロキシトルエン、p−t−ブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤等、熱安滋剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等、紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフエニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−トキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフエノン等、帯電防止剤としては、N,Nービス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルフオネート等、難燃剤として、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスー(2,3−ジクロロブロビル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等を挙げることができる。
【0027】
次に、本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体を製造する方法について説明する。(a)成分の直鎖状飽和ポリエステルは、通常の新品樹脂、回収したPETボトルのフレーク、粒状物、粉末、チップ、溶融物等の任意の形状のものが使用し得る。乾燥は、一般的には、主成分のポリエステル・プレポリマーを除湿空気、熱風または加熱窒素で110〜160℃の温度で数時間ないし十数時間乾燥する方が好ましい結果を与える。また(b)成分のポリオレフィンも約100℃前後の温度で数時間乾燥する方が好ましい。各成分をヘンシエルミキサー等の混合機で混和させてから、例えば押出ペレタイザーまたは直接に成形加工機に供給する。加熱溶融する温度は、ポリエステルの融点以上で350℃以下であることが反応制御の観点から望ましい。特に、300℃以下が好ましく、350℃を越えると特にポリエステルの変色や熱分解が生じるおそれがある。各成分は同時に混合する方法以外に、(a)成分のポリエステルと(b)成分のポリオレフィンを予め混合し、その後、任意の工程で(c)成分のエポキシ化合物と(d)成分の触媒を添加することも可能である。また、(a)成分と(b)成分と(d)成分を先に混合し、その後、任意の工程で(c)成分を添加することも可能である。
【0028】
加熱溶融する反応装置としては、単軸押出機、二軸押出機、それらの組合せの二段式押出機、ニーダー・ルーダーおよびポリエステル樹脂の重縮合の製造に使用される二軸反応装置等を使用することができる。本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体を製造する高温反応法は、特に押出機中で短時間でおこなうので、押出反応機のL/Dは、10以上が必要であり、30〜50程度であることが好ましく、特に38〜43程度が好ましい。
本発明によれば、反応装置の性能にもよるが、一般に短い時間、例えば、30秒〜60分、好ましくは1分〜30分、特に好ましくは1.5分〜15分の時間で、直鎖状飽和ポリエステルとカルボン酸基を持つポリオレフィンの結合反応が起こり、生成物のカルボキシル基量が減少する。これは、結合触媒がポリエステルとポリオレフィンのカルボキシル基とエポキシ環の結合反応に対して促進作用を有し、多官能エポキシ成分によりカルボキシル基を有するポリエステルとポリオレフィンの分子が化学的に連結されるために、ポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の分子鎖が延長したり、分岐したりして高分子量となり、同時にカルボキシル基量が減少するためと推定される。
ポリエステルとポリオレフィンに結合触媒のみを添加して加熱溶融した場合は、分子量の上昇に伴うMFRの低下とカルボキシル基の減少は認められない。ポリエステルとポリオレフィンに多官能エポキシ成分のみを添加して加熱溶融した場合は、反応速度が遅いために短時間に分子量を上昇させたりMFRを低下させることは困難である。本発明の(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の四成分が同時に共存した場合にのみ顕著に分子量の上昇に伴うMFRの低下と溶融粘度とスウェルの上昇が認められる。
【0029】
一般に、ポリエステルはその融点以上の温度にて、自己が含有する微量水分でそのエステル結合が容易に加水分解してカルボキシル基と水酸基を発生させる。特に、二軸押出機の中の様に剪断力がかかる条件では、加水分解し易い。従って、上記の反応装置では、一般に回収ペットボトルフレークまたは新品のポリエステル樹脂を予め110〜140℃で熱風乾燥して水分量100〜200ppmに下げたもの、および除湿空気で乾燥して水分量を50ppm以下に下げたものを使用するのが好ましい。ポリエステル樹脂は、通常空気中の湿度を吸着して環境湿度に応じて3,500〜6,000ppm(0.35〜0.60重量%)の水分を含んでおり、上記のような乾燥処理を行うことにより、本発明の目的を達成することができる。
未乾燥のままで回収ペットボトルフレークまたは新品のポリエステル樹脂を原料として使用する場合には、ポリエステル樹脂が溶融した直後に、真空度を好ましくは2.6×10Pa以下、特に好ましくは6.6×10Pa以下に下げて、水分を真空脱気によって除去することにより達成することができる。
【0030】
本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の有望用途の一つが発泡成形体である。本発明に用いる揮発性発泡剤は、プロパン、ブタン、ベンタン、イソブタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ブタジエン等の脂肪族炭化水素類、さらには、メチルクロライド、メチレンクロライド、ジクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンおよびHCFC−22、HCFC−123、HCFC141b、HCFC142b、HFC134a、HFC−152a、FC−14、FC−116等の代替フロン等、ハロゲン化炭化水素類、あるいは、炭酸ガスや窒素、アルゴン、圧縮空気、等の不活性ガスである。
これらの揮発性発泡剤の中で、不活性ガス(具体的には炭酸ガス、窒素ガス、アルゴン)や圧縮空気等は、炭化水素ガスやハロゲン化炭化水素に比べ地球温暖化係数が小さく、オゾン層破壊の問題もない。今後の地球環境保護意識の高まり、特に地球温暖化係数、オゾン層保護の観点から考えると不活性ガスは環境に対して優しい発泡剤であり好適である。
更に不活性ガスの中では、一般に樹脂に対する溶解度係数が一番高い炭酸ガスがより好ましく、成形物の発泡倍率等によっては窒素ガスでもよい。
このような揮発性発泡剤を用いて発泡成形体を製造するには、本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体を主成分とする組成物を押出機で溶融、混練しながら揮発性発泡剤を注入したり、該組成物に揮発性発泡剤を含浸させたものを押出機から大気中に押し出すことによって、発泡倍率が1.2〜100倍である発泡成形体を製造することができる。
【0031】
発泡倍率が1.2倍未満では、発泡成形体としての特徴が生じないし、発泡倍率が100倍を超えると、気泡が連続化し、表面の凹凸が大きくなり実用的な発泡成形体となり得ない。混練温度は、揮発性発泡剤を含むポリエステル組成物の見かけ融点以上の温度であることが必要であり、約200℃〜350℃、さらに好ましくは、220℃〜300℃である。混練温度が200℃未満では粘度が高すぎ混練が困難であり、300℃を越えるとポリエステル樹脂が劣化してしまうことがある。
不活性ガスを発泡剤として用いた場合は、炭化水素系及びハロゲン化炭化水素系発泡剤に比べ、樹脂中への発泡剤の溶解度、気泡成長中の気泡からのガスの散逸が大きいため、高倍率化が難しい。そのため、高発泡倍率を狙うためには、発泡剤と混練されたポリエステル樹脂を加圧し樹脂中に炭酸ガスを十分に溶解させるとともに冷却する事が有効な手段となる。
【0032】
加圧、冷却させる具体的な手法としては、例えば混練押し出し機から供給される樹脂をスタティックミキサーを配置した直長管に樹脂をフィードし、直長管の長さおよびスタティックミキサーのエレメント数を調整することにより、樹脂の滞留時間および冷却能力を調整する方法、冷却能力を持つ押し出し機をもう一台設け充分滞留時間を取る方法などがあげられるが、混練押し出し機の直後にギヤポンプを設けこれにより昇圧した後に、前述冷却ゾーンへ該ポリエステル樹脂をフィードする方法がより好ましい。
樹脂中に炭酸ガスを十分に溶解させるためには、冷却ゾーン入り口での樹脂圧力を5MPa以上とすることが好ましい。発泡倍率15倍以上の高発泡成形体を得るためには、樹脂圧力を10MPa以上、さらには20MPaとすることが好ましい。樹脂圧力が5MPa未満では、発泡剤である炭酸ガスが十分に樹脂中に溶解しないため、気泡が粗大な低倍率の発泡成形体しか得られない。一方、押出機を含む樹脂加工機の設計耐圧は通常50MPaであり、これを超えると危険を伴う。安全面を考慮すると、45MPa以下であることが好ましい。しかし、成形機械設計を変更した場合には、当然ながら、50MPaを越えてもかまわない。
冷却ゾーンでの樹脂の温度プロファイルは、混練ゾーン出口での樹脂温度から後段の押出ダイ出口の樹脂温度まで、なだらかにほぼ一定の割合で変化するように設定することが好ましい。さらに、押出ダイの入口までに目的の樹脂温度に冷却し、ダイ内では樹脂温度を一定に保つように設定することがより好ましい。
更に、不活性ガスを十分に溶解させたポリエステル樹脂を押出ダイへフィードし、樹脂をダイ出口から大気中へ解放することにより気泡を成長させて発泡成形体を成形するが、できるだけダイ出口近傍まで前述の圧力を維持することがより好ましい。
【0033】
本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の有望用途の他の一つが、インフレーション法フイルム、ティダイ法シート・ボードの発泡成形体である。この用途において使用される高温加熱分解型発泡剤は、有機系及び無機系の各種加熱分解型発泡剤である。
有機系発泡剤としては、例えばpートルエンスルホニルセミカルバジッド(分解温度 220〜235℃)、ニトログアニジン(235〜240℃)、オキザリルヒドラジド(230〜250℃)、5−フエニルテトラゾール(約210〜250℃)、ヒドラゾジカルボニルアミド(240〜260℃)、トリヒドラジノトリアジン(260〜270℃)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(約260〜300℃)等である。
無機系発泡剤としては、例えばバリウムアゾジカルボキシレート(240〜250℃)、ストロンチウムアゾジカルボキシレート、ストロンチウムカリウムアソジカルボキシレート、水酸化アルミニウム(230〜260℃)、水酸化マグネシウム(300〜400℃)等である。これらの高温加熱分解型発泡剤は、PET系ポリエステルよりも融点の低い樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、脂肪族ポリエステル(PCL、PBSU、PLA)等をベースレジンとして、含有率10〜20%のマスターバッチの形でも使用できる。
【0034】
この化学発泡成形体の発泡倍率は、通常1.2〜20倍である。発泡倍率が1.2〜20倍の、このような高分子量・低MFR、高溶融張力、高スウェルのポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体からなる発泡成形体は、ブロック共重合体100重量部に対して加熱分解型発泡剤の純品またはマスターバッチで0.5〜10重量部(発泡剤の有効含有量換算として)を混合しつつ、または混合した後、発泡剤の分解温度以上に加熱することによって製造することができる。発泡倍率が1.2倍未満では、発泡成形体としての特徴が生じず、発泡倍率が20倍を超えると、気泡が連続化し表面の凹凸が大きくなり、実用的な発泡成形体となり得ない。
化学発泡剤を分散させるための混練方法は、公知のいかなる方法でも実施できるが、好ましくはニーダー、ロールまたは押出機を用いる方がよい。
【0035】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
直鎖状飽和ポリエステル、カルボン酸基を持つポリオレフィンまたはブロック共重合体について、固有粘度(IV値)、MFR(メルトフローレート)、スウェル(膨潤度)、分子量、および溶融粘度を評価した。それらの評価方法は以下の通りである。
(1)固有粘度
直鎖状飽和ポリエステルについては、1,1,2,2ーテトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し、キャノンフエンスケ粘度計で25℃にて測定した。
(2)MFR
JIS K7210の条件20に従い、温度280℃、荷重2.16kgの条件で測定した。その他、ポリエチレンは190℃、ポリプロピレンは230℃で測定されている。。
(3)スウェル
MFR用のメルトインデクサーを用い、温度280℃、荷重2.16kgの条件で垂れ流し、サンプルが2.0cm垂れたところでカットし、下端から5.0mmのところの直径を測定し、下記の計算式により算出した。なお、上記直径は数回測定され、その平均値が採用された。また、下記式の数値「2.095」は、MFR用メルトインデクサーのノズル径である。
スウェル(%)=[(直径の平均値−2.095)/2.095]×100
【0036】
(4)分子量
ポリエステルについたは、GPC法により下記の条件で測定した。
(本体)昭和電工社製 SYSTEM−21
(カラム)Shodex KF−606M(2本)(サンプル、リファレンス側とも)・溶剤:ヘキサフロロイソプロピルアルコール、・カラム温度:40℃、
・注入量:20μl、流量:0.6ml/分、・ポリマー濃度:0.15重量%(検出器)Shodex RI−74
(分子量換算スタンダード)PMMA:Shodex M−75
(5)機械的物性の測定
ポリマーをプレス成形機にて、280℃・3分間予熱、60気圧30秒加圧、水冷の条件で厚さ約1mmと約3mmのプレス板にした。引張試験は、JIS K7113に従い、厚さ約1mmのプレス板を2号ダンベルで打ち抜き、島津製作所のオートグラフDSS2000を使用し、引張速度200mm/分で行った。アイゾット衝撃試験は、JIS K7110に従い、厚さ約3mmのプレス板を2号標片に加工し、ノッチ付きについて行なった。
(6)溶融粘度
スウェーデン国REOLOGICA社製DynAlyser DAR−100を使用し、2cm角×厚さ2mmの試験片を窒素雰囲気下280℃でホットプレート間のねじり振動を加えることにより測定した。
【0037】
[高含量PET系ブロック共重合体(A)を、エポキシ基が2個の化合物70重量%およびエポキシ基が3個の化合物30重量%からなる結合剤を加えて製造し、プレスシートに成形した場合]
(実施例1)
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、固有粘度0.775dl/g、融点250℃、重量平均分子量Mw3.32万、数平均分子量Mn1.28万、Mw/Mn=2.6)を120℃で約12時間熱風乾燥した500g(100重量部、MFR61g/10分)と市販品のエチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸三元共重合体(メチルアクリレート10重量%、無水マレイン酸2.5重量%、MFR8g/10分、融点98℃、重量平均分子量Mw8.8万、数平均分子量Mn2.5万、Mw/Mn=3.2)250g(50重量部)に、結合剤として2官能エポキシ化合物であるエチレングリコール・ジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)のエポライト40E、エポキシ当量135g/eq、淡黄色液体)3.5g(0.70重量部)に、3官能のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(共栄社化学(株)のエポライト100MF 、エポキシ当量150g/eq、淡黄色液体)1.5g(0.3重量部)を併用し、かつ結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム徴粉1g(0.20重量部)とステアリン酸リチウム徴粉1g(0.20重量部)を窒素雰囲気下にてヘンシエルミキサーで2分間混合した。
このフレーク混合物(A1)を、(株)栗本鉄工所製のS1 KRCニーダー(口径25mm二軸、L/D=10.2)を使用し、280℃の設定温度で回転数82rpmにて混練しながら反応させ、ストランドを口径3mmのノズルから押出して、水冷して回転カッターでペレット化した。110℃で12時間熱風乾燥し、防湿袋に収納した。初期のペレットを捨てて得られた高含量PET系ブロック共重合体(A)は、真珠調白色ペレットは、収量が464gあり、MFRが0.32(JIS規定の6分後)、0.36(8分後)、0.38(10分後)、0.28(12分後)g/10分であって、これらデータは安定していた。JIS規定の6分後のスウェルは、約67%であった。製造経過と結果を表1と図2に示した。高含量PET系ブロック共重合体(A)は、高溶融張力PET(比較例1)、原料の回収PETフレーク(比較例2)とポリエチレン共重合体(比較例3)および両原料の等量ブレンド(比較例4)のいずれに比べてもMFRが大幅に降下し、分子量が大幅に上昇し、結合反応が進行したことを示した。
上記のブロック共重合体(A)を、280℃の設定温度のプレス成形機で厚さ約1mmと約3mmのシートに成形した。これにより、引張試験とアイゾット衝撃試験を行い、結果を表2に示した。アイゾット衝撃値は、原料の回収PETフレーク(比較例2)に比べて、4.7倍も改善された。
【0038】
[等量PET−PE・ブロック共重合体(B)を、エポキシ基が2個の化合物70重量%およびエポキシ基が3個の化合物30重量%からなる結合剤を加えて製造し、プレスシートに成形した場合]
(実施例2)
実施例1とほぼ同様な操作にて、ポリエステルとポリエチレンの比率を50対50の等量にして加熱溶融による結合反応を行った。
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、固有粘度0.775dl/g)を120℃で約12時間熱風乾燥した500g(100重量部、MFR61g/10分)と市販品のエチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸三元共重合体(メチルアクリレート10重量%、無水マレイン酸2.5重量%、MFR8g/10分、融点98℃)500g(100重量部)に、結合剤として2官能エポキシ化合物であるエチレングリコール・ジグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト40E、エポキシ当量135g/eq、淡黄色液体)3.5g(0.70重量部)に、3官能のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト100MF 、エポキシ当量150g/eq、淡黄色液体)1.5g(0.3重量部)を併用し、かつ結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム徴粉1g(0.20重量部)とステアリン酸リチウム徴粉1g(0.20重量部)を窒素雰囲気下ヘンシエルミキサーで2分間混合した。
このフレーク混合物(B1)を、(株)栗本鉄工所製のS1 KRCニーダー(口径25mm二軸、L/D=10.2)を使用し、280℃の設定温度で回転数82rpmにて混練しながら反応させ、ストランドを口径3mmのノズルから押出して、水冷して回転カッターでペレット化した。110℃で12時間熱風乾燥し、防湿袋に収納した。初期のペレットを捨てて得られたは、純白色ペレットの収量が768gであり、MFRが0.32(JIS規定の6分後)、0.36(8分後)、0.38(10分後)、0.28(12分後)g/10分であって、これらデータは安定していた。JIS規定の6分後のスウェルは、約90%であった。製造経過と結果を表1と図2に示した。等量PET−PEブロック共重合体(B)は、高溶融張力PET(比較例1)、原料の回収PETフレーク(比較例2)とポリエチレン共重合体(比較例3)および両原料の等量ブレンド(比較例4)のいずれに比べてもMFRが大幅に降下しているので、分子量が大幅に上昇して結合反応が進行したことを示した。
上記のブロック共重合体(B)を、280℃の設定温度のプレス成形機で厚さ約1mmと約3mmのシートに成形した。これにより、引張試験とアイゾット衝撃試験を行い、結果を表2に示した。アイゾット衝撃値は、原料の回収PETフレーク(比較例2)に比べて、17倍以上も改善された。
【0039】
[高含量PEブロック共重合体(C)を、エポキシ基が2個の化合物70重量%およびエポキシ基が3個の化合物30重量%からなる結合剤を加えて製造し、プレスシートに成形した場合]
(実施例3)
実施例1とほぼ同様な操作にて、ポリエステルとポリエチレンの比率を50対100に逆転して行った。
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、固有粘度0.775dl/g)を120℃で約12時間熱風乾燥した250g(50重量部、MFR61g/10分)と市販品のエチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸三元共重合体(メチルアクリレート10重量%、無水マレイン酸2.5重量%、MFR8g/10分、融点250g98℃)500g(100重量部)に、結合剤として2官能エポキシ化合物であるエチレングリコール・ジグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト40E、エポキシ当量135g/eq、淡黄色液体)3.5g(0.70重量部)に、3官能のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト100MF 、エポキシ当量150g/eq、淡黄色液体)1.5g(0.3重量部)を併用し、かつ結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム徴粉1g(0.20重量部)とステアリン酸リチウム徴粉1g(0.20重量部)を窒素雰囲気下ヘンシエルミキサーで2分間混合した。
このフレーク混合物(C1)を、(株)栗本鉄工所製のS1 KRCニーダー(口径25mm二軸、L/D=10.2)を使用し、280℃の設定温度で回転数82rpmにて混練しながら反応させ、ストランドを口径3mmのノズルから押出して、水冷して回転カッターでペレット化した。110℃で12時間熱風乾燥し、防湿袋に収納した。初期のペレットを捨てて得られた白色ペレットの収量が570gであり、MFRが0.32(JIS規定の6分後)、0.36(8分後)、0.38(10分後)、0.28(12分後)g/10分であって、これらデータは安定していた。JIS規定の6分後のスウェルは、約90%であった。製造経過と結果を表1と図2に示した。等量PET−PEブロック共重合体(C)は、高溶融張力PET(比較例1)、原料の回収PETフレーク(比較例2)とポリエチレン共重合体(比較例3)および両原料の等量ブレンド(比較例4)のいずれに比べてもMFRが大幅に降下しているので、分子量が大幅に上昇して結合反応が進行したことを示した。
上記のブロック共重合体(C)を、280℃の設定温度のプレス成形機で厚さ約1mmと約3mmのシートに成形した。これにより、引張試験とアイゾット衝撃試験を行い、結果を表2に示した。アイゾット衝撃値は、原料の回収PETフレーク(比較例2)に比べて、約15倍以上も改善された。
【0040】
(比較例1) [高溶融張力PETの製造]
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品)は、固有粘度0.775dl/g、重量平均分子量Mw33,200、数平均分子量Mn12,800、分子量分布Mw/Mn=2.6であり、また120℃で約12時間熱風乾燥後は、MFR61g/10分、スウェル−18%であった。この熱風乾燥した樹脂500g(100重量部)に、実施例1と同様ではあるがポリオレフィン分を若干減量して、結合剤として2官能エポキシ化合物であるエチレングリコール・ジグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト40E)2.45g(0.47重量部)に、3官能のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト100MF)1.0g(0.20重量部)を併用し、かつ結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム徴粉0.625g(0.125重量部)とステアリン酸リチウム徴粉0.625g(0.125重量部)を加え、窒素雰囲気下にてヘンシエルミキサーで2分間混合した。実施例1と同一条件の加熱溶融操作を行って、微黄色透明ペレットを430g得た。この高溶融張力PETは、MFR29.2g/10分で、若干脆いガラス質透明樹脂であった。
【0041】
(比較例2) [PETボトルの回収品]
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク、地方自治体から回収PETボトルを粉砕、選別、アルカリ等洗浄、風乾した透明破砕物である。それは、固有粘度0.775dl/g、重量平均分子量Mw33,200、数平均分子量Mn12,800、分子量分布Mw/Mn=2.6であり、また120℃で約12時間熱風乾燥後は、MFR61g/10分、スウェル−18%であった。
実施例1と同一条件の加熱溶融操作を行って、フレーク300gから245gを得た淡黄色透明ペレットは、MFR59.7g/10分であり、操作前と殆ど変化しなかった。表2に引張試験の結果を示したが、ガラス質樹脂のため引張強度と伸びは大きかった。アイゾット衝撃値は3.0Kgf/cmと小さかった。
【0042】
(比較例3) [PE共重合体]
市販品のエチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸三元共重合体は、成分含有量がエチレン87.5重量%、メチルアクリレート10重量%および無水マレイン酸2.5重量%であり、またMFR(190℃)8g/10分、重量平均分子量Mw8.8万、数平均分子量Mn2.5万、Mw/Mn=3.2および融点98℃である。
実施例1と同一条件の加熱溶融操作を行って、原料ペレット350gから306gを得た淡黄色半透明ペレットは、MFR(280℃)109g/10分と大きかった。表2に引張試験の結果を示したが、低密度ポリエチレン系樹脂のため引張強度は小さいが伸びは大きかった。アイゾット衝撃値は50Kgf/cm以上(破断しない)と大きかった。
【0043】
(比較例4) [PETボトル回収品/PE共重合体ブレンド]
実施例2に準じた操作にて、ポリエステルとポリエチレンの比率を50対50の等量にして加熱溶融によるブレンドを行った。
よのペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品、固有粘度0.775dl/g)を120℃で約12時間熱風乾燥した200g(100重量部、MFR61g/10分)と市販品のエチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸三元共重合体(メチルアクリレート10重量%、無水マレイン酸2.5重量%、MFR8g/10分、融点98℃)200g(100重量部)に、結合剤と結合反応触媒を加えないで、窒素雰囲気下にてヘンシエルミキサーで2分間混合した。
このフレーク・ペレット混合物を、(株)栗本鉄工所製のS1 KRCニーダー(口径25mm二軸、L/D=10.2)を使用し、280℃の設定温度で回転数82rpmにて混練しながら反応させ、ストランドを口径3mmのノズルから押出して、水冷して回転カッターでペレット化した。110℃で12時間熱風乾燥し、防湿袋に収納した。初期のペレットを捨てて得られたは、純白色ペレットの収量が354gであり、MFRが93.0g/10分(JIS規定の6分後、B法)と大きかった。
製造経過と結果を表1と図2に示した。等量PET−PEとMFRが大幅に降下している等量PET−PEブロック共重合体(B、実施例1)とは、基本的に異なることをしめしている。
【0044】
(実施例4)
[等量PET−PP・ブロック共重合体(D)を、エポキシ基が2個の化合物70重量%およびエポキシ基が3個の化合物30重量%からなる結合剤を加えて製造し、プレスシートに成形した場合]
(実施例2)
実施例1とほぼ同様な操作にて、ポリエステルとポリプロレンの比率を50対50の等量にして加熱溶融による結合反応を行った。
ウイズペットボトルリサイクル(株)のクリアフレーク(PETボトルの回収品)を120℃で約12時間熱風乾燥した500g(100重量部、MFR52.1g/10分)と市販品のポリプロレン・無水マレイングラフト共重合体(無水マレイン酸約0.7重量%、MFR(190℃)3.0g/10分、MFR(230℃)14.4g/10分、融点150℃)500g(100重量部)に、結合剤として2官能エポキシ化合物であるエチレングリコール・ジグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト40E)2.45g(0.49重量部)に、3官能のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(共栄社化学のエポライト100MF)1.05g(0.21重量部)を併用し、かつ結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム徴粉0.5g(0.10重量部)と酢酸第一マンガン四水塩の徴粉1g(0.20重量部)を窒素雰囲気下にてヘンシエルミキサーで2分間混合した。
このフレーク混合物(D1)を、(株)栗本鉄工所製のS1 KRCニーダー(口径25mm二軸、L/D=10.2)を使用し、280℃の設定温度で回転数82rpmにて混練しながら反応させ、ストランドを口径3mmのノズルから押出して、水冷して回転カッターでペレット化した。これを4回くり返した。110℃で12時間熱風乾燥し、防湿袋に収納した。初期のペレットを捨てて得られた淡黄白色ペレットの収量が3.6Kgであり、MFRが21.2g/10分(JIS規定の6分後)であった。
この等量PET−PP・ブロック共重合体(D)は、270℃の設定温度の単軸押出機に連結した200mm巾ダイスからチルロールを経由して、厚み0.5mmのシートを成形することが出来た。
【0045】
【表1】
Figure 0003938453
【0046】
【表2】
Figure 0003938453
【0047】
【発明の効果】
本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体の樹脂およびその成形体は、ペット樹脂とポリオレフィンの物性上のが弱点改良されいるので、幅広い用途が期待できる。その成形体は、耐熱性、引張り強さなどの機械的強度に優れており、食品容器、包装材、緩衝材、断熱材、包装材、仕切り板、ボードなどとして日用品、土木建築、電子電機、自動車車両、梱包等の分野に有用である。また、大量に発生する回収PETボトルをプレポリマーとして大量かつ有効に利用できるので、社会的に有益である。更に、使用後に焼却処理したとしてもポリエチレンやポリプロピレンと比較して燃焼発熱量が低く、焼却炉を損傷することが少なく、有毒ガスの発生もない。
【0048】
【図面の簡単な説明】
【図1】原料樹脂と本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の骨格構造を示す図である。
▲1▼は原料のポリエステル樹脂(回収または新品のペット、線状構造体)、
▲2▼は原料のカルボン酸基を1個持つポリオレフィン(線状構造体)、
▲3▼は原料の無水マレイン酸基を2個持つポリオレフィン(線状構造体)、
▲4▼は2官能の結合剤で▲1▼と▲2▼を結合したブロック共重合体(長鎖分岐構造体)、
▲5▼は2官能の結合剤で▲1▼と▲3▼を結合したブロック共重合体(長鎖分岐構造体)、
▲6▼は3官能の結合剤で▲1▼と▲2▼を結合した高含量PET−PE・ブロック共重合体(長鎖分岐構造体)、
▲7▼は3官能の結合剤で▲1▼と▲2▼を結合したPET−高含量PE・ブロック共重合体(長鎖分岐構造体)の例をそれぞれ示す。
また、三角印は結合剤のエポキシ環の位置ををモデル的に示す。
【図2】本発明のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂と比較例について、原料樹脂と配合組成(横軸)とMFRのデータ(縦軸)を示す。図中の丸印はブロック共重合体、四角印は原料樹脂、×印はブレンド、また数字は実施例と比較例の番号を示す。

Claims (8)

  1. (a)直鎖状飽和ポリエステル95〜5重量部、(b)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン5〜95重量部、(c)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.1〜5重量部、(d)結合反応触媒として有機酸の金属塩を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.01〜1重量部から構成される混合物を、予め該ポリエステル・ポリオレフィンの融点以上の温度で加熱することによって、溶融粘度を増加させてJIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)を50g/10分以下にしたポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
  2. 直鎖状飽和ポリエステル(a)が、固有粘度0.50〜0.90dl/gのポリエチレンテレフタレート系芳香族ポリエステルであることを特徴とする、請求項1項に記載のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
  3. 直鎖状飽和ポリエステル(a)が、回収されたポリエチレンテレフタレート系の芳香族ポリエステル成形品再循環物であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
  4. 分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン(b)が、無水マレイン酸またはカルボン酸基を含有するエチレン系単量体が共重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、それらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
  5. 結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物(c)が、脂肪族系のエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサメチレングリコール・ジグリシジルエーテル、脂環式系の水素化ビスフエノールA・ジグリシジルエーテルおよび芳香族系のビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル初期縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
  6. 結合剤として分子内に平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物(c)が、脂防族系のトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル、グリセリン・トリグリシジルエーテル、ヘテロ環式のトリグリシジルイソシアヌレートおよび芳香族系のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
  7. (a)直鎖状飽和ポリエステル95〜5重量部、(b)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン5〜95重量部、(c)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.1〜5重量部、(d)結合反応触媒として有機酸の金属塩を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.01〜1重量部から構成される混合物を予め該ポリエステル・ポリオレフィンの融点以上の温度で加熱することによって、溶融粘度を増加させてJIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)を50g/10分以下のペレットにして後に、化学発泡剤または炭酸ガスと共に熔融混合してテイ型ダイスから押出して発泡させることを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の発泡体の製造方法。
  8. 未乾燥の(a)直鎖状飽和ポリエステル95〜5重量部をその融点以上の温度で溶融させるとともに2.6×10Pa以下に脱気・脱水し、(b)分子内に1個以上のカルボン酸基を含有するポリオレフィン5〜95重量部、(c)結合剤として分子内に2個のエポキシ基を含有する化合物0〜100重量%および平均2.1個以上のエポキシ基を含有する化合物100〜0重量%の混合物を前記の(a)と(b)の合計量100重量部の0.1〜5重量部、(d)結合反応触媒として有機酸の金属塩を前記の(a)と(b)の合計の0.01〜1重量部から構成される混合物を該ポリエステルの融点以上の温度で加熱することによって、JIS K−7210、条件20に規定する温度280℃、荷重2.16kgfにおけるメルトフローレート(MFR)を50g/10分以下にすることを特徴とするポリエステルーポリオレフィン・ブロック共重合体樹脂の製造方法。
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