JP4160321B2 - イオン伝導体用シリカゲル及びイオン伝導体、並びに燃料電池及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

イオン伝導体用シリカゲル及びイオン伝導体、並びに燃料電池及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン伝導性物質の担体として用いられるシリカゲル、及び、その細孔内にイオン伝導性物質を担持させたイオン伝導体に関し、更には、イオン伝導体を用いた燃料電池及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イオン伝導体は、燃料電池、Li電池(リチウム電池)等の二次電池、空気電池等の電解質や、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の電気化学的デバイスに用いられる電解質等として用いられている。
【0003】
水素−酸素燃料電池に代表される燃料電池は、その反応生成物が原理的には水のみであり、地球環境への悪影響がほとんどない発電システムとして知られている。特にパーフルオロスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いた固体高分子電解質形燃料電池は、近年の研究が進んで高密度、高出力が可能となりつつあり、自動車等の車載用電源や家庭用電源、更には携帯機器用電源としての実用化が大いに期待されている。
【0004】
固体高分子電解質を用いた燃料電池に用いる電解質板としては、通常厚さ50〜200μmのプロトン伝導性イオン交換樹脂が用いられている。特に、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が、基本特性に優れていることから、広く研究されている。しかし、かかるイオン交換膜は、高温条件での耐久性が不十分であるという欠点や、フッ素系電解質は製造が困難であるため、非常に高価であるという欠点がある。
【0005】
そこで、より高温での耐久性に優れ、且つより安価な無機系プロトン伝導体、中でもシリカゲルを用いたプロトン伝導体の研究も盛んである。
【0006】
この様な、シリカゲルを用いたプロトン伝導体においては、その細孔構造等のシリカゲルの物性が、プロトン伝導体の性能に大きく影響する。しかしながら、燃料電池の実用に十分な性能を有するプロトン伝導体用のシリカゲルは未だ開発されていない。
【0007】
例えば、J. Non-Crystalline Solid、第290巻、93項(2001年)には、ゾルゲル法で調製したシリカキセロゲルをプロトン伝導体として用いることが記載されている。しかし、この文献では、シリカキセロゲルの構造とプロトン伝導度の大きさの関係についての記載はあるが、この文献記載のシリカキセロゲルは、制御された細孔構造を有していない。また、プロトン伝導度も実用的には不十分なレベルである。
【0008】
また、Electrochem. Solid-State Letters、第1巻、210項(1998年)には、アモルファスシリカにリン酸等のプロトン酸をドープしたプロトン伝導体の例が示されている。しかし、この文献では、シリカゲルの細孔構造とプロトン伝導体の相関についての記載はない。
【0009】
更に、J. Am. Ceram. Soc.、第83巻、3004項(2000年)には、界面活性剤を構造支持体(テンプレート)として調製したメソポーラスシリカゲルに、リン酸等のプロトン性の酸をドープしたプロトン伝導体の例がある。しかし、本方法で調製されたメソポーラスシリカゲルには、構造支持体由来の不純物の混入が避けられない。かかる不純物は、プロトン伝導体内を伝導するプロトンを強く吸着して伝導を阻害する等の作用により、プロトン伝導体の性能に重大な悪影響を及ぼすと考えられる。
【0010】
この様に、従来技術で使用されるイオン伝導体用シリカゲルは、細孔径等の精密な制御ができず、シリカゲルの物性を生かしたイオン伝導体の設計が困難であるため、得られるイオン伝導体の性能が低く、その品質も不安定であった。また、細孔容積が概して小さく、細孔内に担持できるイオン伝導性化合物の量が限られてしまうので、実用的に十分な程度の高いイオン伝導度を有するイオン伝導体を得ることは困難であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上の理由から、細孔径等の物性を精密に制御でき、これらの物性を生かしたイオン伝導体の設計が可能であるとともに、細孔容積が大きく、充分な量のイオン伝導性化合物を含有させることが可能な、イオン伝導体の担体として好適に使用できるシリカゲルの提供が、強く望まれていた。
【0012】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、細孔径等の物性を精密に制御でき、これらの物性を生かしたイオン伝導体の設計が可能であるとともに、細孔容積が大きく、充分な量のイオン伝導性化合物を担持することが可能な、イオン伝導体の担体として好適に使用できるシリカゲルを提供すること、並びに、このシリカゲルを用いて、実用的に十分な程度の高いイオン伝導度を有するとともに、耐久性にも優れ、従来よりも長寿命なイオン伝導体を提供すること、更には、このイオン伝導体を電解質として用いた、高性能の燃料電池及びリチウムイオン二次電池を提供することに存する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、シャープな細孔分布を有するとともに、純度が高く、且つ、構造が均質で歪みの少ないシリカゲルをイオン伝導体用シリカゲルとして用いることにより、従来よりも高いイオン伝導度が得られるイオン伝導体が得られるとともに、この様なイオン伝導体を電解質として用いることにより、従来よりも高性能の燃料電池やリチウムイオン二次電池が得られ、上記課題が効果的に解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、イオン伝導体に用いられるシリカゲルであって、(a)細孔容積が0.3ml/g以上3.0ml/g以下であり、(b)比表面積が200m/g以上1000m/g以下であり、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が4nm以上20nm未満であり、(d)非晶質であり、(e)固体Si−NMRでのQピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(I)
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I)
を満足し、(f)金属不純物の総含有率が500ppm以下であり、(g)固体Si−NMR測定におけるQ /Q ピークの値が1.3以上であり、(h)最頻直径(D max )における微分細孔容積が、2ml/g以上20ml/g以下であり、且つ(i)直径がD max ±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の20%以上であることを特徴とするイオン伝導体用シリカゲル、及び、このイオン伝導体用シリカゲルの細孔内にイオン伝導性の化合物又は組成物が担持されていることを特徴とするイオン伝導体に存する。
【0015】
また、本発明の別の要旨は、燃料極と、酸化極と、前記燃料極及び前記酸化極に狭持された電解質とを具備する燃料電池において、前記電解質が前記イオン伝導体であることを特徴とする燃料電池、並びに、正極と、負極と、前記正極と前記負極とを非接触に保つセパレータと、前記正極及び前記負極に狭持された電解質とを具備するリチウムイオン二次電池において、前記電解質が前記イオン伝導体であることを特徴とするリチウムイオン二次電池に存する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、細孔容積及び比表面積が通常のものより大きい範囲にあることを、特徴の一つとする。具体的には細孔容積の値が、通常0.3ml/g以上、好ましくは0.5ml/g以上、更に好ましくは0.8ml/g以上、また、通常3.0ml/g以下、好ましくは2.5ml/g以下、更に好ましくは2.0ml/g以下の範囲に存在する。また、比表面積の値は、通常200m2/g以上、好ましくは300m2/g以上、更に好ましくは400m2/g以上、また、通常1000m2/g以下、好ましくは900m2/g以下、更に好ましくは800m2/g以下の範囲に存在する。これらの細孔容積及び比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0017】
また、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、細孔の最頻直径(Dmax)が20nm以下であることを特徴とする。最頻直径(Dmax)は、気体や液体の吸着や吸収に関する特性に影響を及ぼすことが知られており、最頻直径(Dmax)が小さいほど吸着や吸収性能が高い。従って、種々の特性の中で最頻直径(Dmax)は、イオン伝導体用シリカゲルにとって重要な物性である。本発明のイオン伝導体用シリカゲルの好ましい最頻直径(Dmax)は、触媒成分との兼ね合いにより決められるが、中でも18nm以下、更には16nm以下である。また、下限は特に制限されないが、通常は2nm以上、好ましくは3nm以上、更に好ましくは4nm以上である。
【0018】
なお、上記の最頻直径(Dmax)は、窒素ガス吸脱着で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951) に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線をプロットして求められる。ここで、細孔分布曲線とは、微分細孔容積、すなわち、細孔直径d(nm)に対する微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd))を言う。上記のVは、窒素ガス吸着容積を表す。
【0019】
更に、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、上記の最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であることを特徴とする。このことは、本発明のイオン伝導体用シリカゲルが有する細孔の直径が、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。なお、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積について、特に上限は無いが、通常は全細孔の総容積の90%以下である。
【0020】
なお、かかる特徴に関連して、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、上記のBJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2ml/g以上、特に5ml/g以上、また、通常20ml/g以下、特に18ml/g以下であることが好ましい。ここで、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻直径(Dmax)の付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
【0021】
加えて、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、その三次元構造を見るに非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことを特徴とする。このことは、本発明のイオン伝導体用シリカゲルをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において結晶性のシリカゲルとは、X線回折パターンで6オングストローム(Å Units d-spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。非結晶質のシリカゲルは、結晶性のシリカゲルに較べて極めて生産性に優れている。
【0022】
また、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、不純物の含有率が非常に低く、極めて高純度であることを特徴とする。具体的には、シリカゲル中に存在することでその物性に影響を与えることが知られている、アルカリ金属,アルカリ土類金属,周期表の3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属からなる群に属する金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下である。このように不純物の影響が少ないことが、本発明のイオン伝導体用シリカゲルが高い耐熱性や耐水性などの優れた性質を発現でき、且つ高いイオン伝導度が得られることの大きな要因の一つである。
【0023】
更に、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、その構造に歪みが少ないことを特徴とする。ここで、シリカゲルの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQ4ピークのケミカルシフトの値によって表わすことができる。以下、シリカゲルの構造的な歪みと、前記のQ4ピークのケミカルシフトの値との関連について、詳しく説明する。
【0024】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q4)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q3)等が存在する(下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしている)。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQ4ピーク、Q3ピーク、・・と呼ばれる。
【0025】
【化1】
Figure 0004160321
【0026】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、上記のQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(I)
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I)
を満足することを特徴とする。従来のシリカゲルでは、上記のQ4ピークのケミカルシフトの値δは、上記式(I)の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる。よって、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、従来のシリカゲルに比べて、Q4ピークのケミカルシフトがより小さな値(よりマイナス側の値)を有することになる。これは、本発明のイオン伝導体用シリカゲルにおいて、Q4ピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
【0027】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルにおいて、Q4ピークのケミカルシフトδは、上記式(I)の左辺(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQ4ピークの最小値は、−113ppmである。
【0028】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルが有する、優れた耐熱性や耐水性と、上記の様な構造的歪みの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカゲルは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性が発現されるものと考えられる。なお、Q3以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカゲルの構造的な歪みが現れ難い。
【0029】
上記の特徴に関連して、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、固体Si−NMR測定によるQ4/Q3の値が、通常1.3以上、中でも1.5以上であることが好ましい。ここで、Q4/Q3の値とは、上述したシリカゲルの繰り返し単位の中で、−OSiが3個結合したSi(Q3)に対する−OSiが4個結合したSi(Q4)のモル比を意味する。一般に、この値が高い程、シリカゲルの熱安定性が高いことが知られており、ここから、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、熱安定性に極めて優れていることが判る。
【0030】
なお、Q4ピークのケミカルシフト及びQ4/Q3の値は、実施例の説明において後述する方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0031】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、従来のゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシドを加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法で製造することができる。
【0032】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度のシリカゲルの原料として好適である。シリコンアルコキシド中の金属不純物の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には30ppm以下、特に10ppm以下が好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシリカゲル中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
【0033】
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2〜20モル、好ましくは3〜10モル、特に好ましくは4〜8モルの水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。また、加水分解時には必要に応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加してもよい。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロルブ、エチルセロルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に混合できる有機溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカヒドロゲルを生成できる理由から好ましい。
【0034】
これらの溶媒を使用しない場合、本発明のイオン伝導体用シリカゲルの製造のためには、特に加水分解の際の攪拌速度が重要である。すなわち、シリコンアルコキシドと加水分解用の水は初期には分液しているため、攪拌によりエマルジョン化し、反応を促進させる。この際の攪拌速度は通常30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。斯かる条件を満足しない場合には、本発明のイオン伝導体用シリカゲルを得るのが困難になる。なお、加水分解によりアルコールが生成して液が均一液となり、発熱が収まった後には、均一なヒドロゲルを形成させるために攪拌を停止することが好ましい。
【0035】
結晶構造を有するシリカゲルは、水中熱安定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成するのに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下でシリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に結晶構造を含むものとなる。従って、本発明においては、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、即ち、これらがテンプレートとしての機能を発揮する程の量は存在しない条件下で、加水分解を行なうことが好ましい。
【0036】
反応時間は、反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に触媒として、酸,アルカリ,塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、斯かる添加物の使用は、後述するように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明のイオン伝導体用シリカゲルの製造においてはあまり好ましくない。
【0037】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。本発明のイオン伝導体用シリカゲルを製造するためには、上記の加水分解により生成したシリカのヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを安定した熟成、或いは乾燥させ、更にこれに水熱処理を施し、最終的に細孔特性の制御されたシリカゲルとする従来の方法では、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを製造することができない。
【0038】
上記にある、加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカのヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の水熱処理に供するようにするということを意味する。シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を添加すること、又は該加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるため好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗,乾燥,放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
【0039】
ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段としては、ヒドロゲルの硬度を参考にすることができる。即ち、破壊応力が、通常6MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを得ることができる。また、ヒドロゲルの破壊応力は時間と共に増大するので、実作業においては硬度を実測せず、予備実験により水熱処理実施可能な時間を調べ、その時間内の範囲で水熱処理を実施しても良い。
【0040】
この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1重量倍以上、好ましくは0.5重量倍以上、特に好ましくは1重量倍以上、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、特に好ましくは3重量倍の水を加えてスラリー状とし、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、通常250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、通常100時間以下、好ましくは10時間以下実施される。水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールや、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、その他の有機溶媒などが含まれてもよい。また、メンブランリアクターなどを作る目的で、シリカゲルを膜状或いは層状に粒子、基板、或いは管などの基体上に形成させた材料の場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理とでは通常、最適条件が異なっているため、この方法で本発明のイオン伝導体用シリカゲルを得ることは一般的に難しい。
【0041】
以上の水熱処理条件において温度を高くすると、得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなる傾向がある。水熱処理温度としては、100℃以上200℃以下の範囲であることが好ましい。また、処理時間とともに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要があるが、水熱処理は、シリカゲルの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0042】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明のイオン伝導体用シリカゲルを得ることが困難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ4/Q3値が極端に小さくなったりする。
【0043】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲルは一般に疎水性となるが、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、通常250℃以下、好ましくは200℃以下という比較的高温で水熱処理すると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001%以上、特に好ましくは0.005%以上、また、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。
【0044】
水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常40℃以上、200℃以下、好ましくは60℃以上、120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400℃以上600℃以下で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため、最高900℃の温度で焼成することもある。更に、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明のイオン伝導体用シリカゲルを得る。
【0045】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルの形状は任意であり、破砕状の粒子状であっても、不定形や球状の粒子状であっても良い。破砕状の粒子であれば、取扱いの容易性の面から、いったんこれを微粉砕し、錠剤状にプレス成形したり、押出品,ペレット品,粒状品に成形したりすることにより、好ましく使用される。これら、粉砕や成型等は、イオン伝導性化合物を担持させる前に行っても、担持させた後に行っても構わない。
【0046】
直接、大粒径の不定形や球状のシリカゲル粒子を得た場合には、そのままの形態でイオン伝導体の担体シリカゲルとして使用できるが、イオン伝導体用途においては、例えば、燃料電池の電解質においては、高い電気化学ポテンシャル下におかれることとなり、使用条件が過酷であるために、耐水性が高く使用中に割れや粉化が起こり難いシリカゲルが、特に好適に用いられる。
【0047】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルを用いてイオン伝導体を作成する場合に、シリカゲルに含有された不純物、特に金属成分は、イオン伝導の大きな妨げとなる。従って、高いイオン伝導度を有するイオン伝導体であるためには、シリカゲルに含まれる不純物、特に金属成分は、できる限り少ない方がよい。
【0048】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルに、イオン伝導性を示す化合物や組成物等の成分を含有させることにより、本発明のイオン伝導体とすることができる。例えば、ポリエーテル化合物等の公知のLiイオン伝導性の化合物又は組成物を含有させることにより、Liイオン伝導体とすることができる。このようなLiイオン伝導体は、Li二次電池のような二次電池の電解質として好ましく用いられる。また、本発明のイオン伝導体用シリカゲルに、従来公知の各種プロトン伝導性の化合物又は組成物を含有させることにより、プロトン伝導体とすることができる。このようなプロトン伝導体は、燃料電池の電解質として好ましく用いられる。
【0049】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルに上述したイオン伝導性の化合物又は組成物を含有させる方法としては、上記のイオン伝導性の化合物又は組成物をシリカゲル細孔中に担持させるなど、緊密な混合状態でシリカゲル中に含有させることができる手法であれば特に制限はなく、公知の各種手法を選択して使用することができる。
【0050】
具体的には、まず、シリカゲルの細孔中に目的とするイオン伝導性の化合物又は組成物を導入する。その方法としては、例えば、固体への各種化合物の担持法としてよく知られている含浸法<吸着(absorption)法,ポアフィリング(pore-filling)法,“incipient wetness”法,蒸発乾固(evaporation to dryness)法,スプレー(spray)法等>、沈殿法<共沈(coprecipitation)法、沈着(precipitation)法,混練(kneading)法等>、イオン交換(ion exchange)法などの公知の方法の何れを用いても良い。イオン伝導性の化合物又は組成物を導入した後、必要に応じて200〜400℃で焼成することにより、イオン伝導性の化合物とシリカゲルとの間の架橋反応を促進させることができる。また、必要であれば、イオン伝導性化合物を担持させた後に酸化や還元等の化学処理を行ない、イオン伝導性化合物の化学状態を変化させても良い。特に、無機酸化物や金属酸化物などの固体酸類をイオン伝導性化合物とする場合は、加水分解及びその後の焼成において目的とする酸化物に変換される可溶性の化合物を前駆体として担持させ、その後に乾燥、焼成して目的の酸化物形態とする。
【0051】
以上、詳述した本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、イオン伝導性の化合物や組成物を含有させてイオン伝導体として使用する場合に、従来の担体シリカゲルに比べてより精密な細孔径制御が可能である。更に、従来の担体シリカゲルに比べて構造が均質で歪みが少なく高純度である。従って、イオン伝導体が物理的・化学的な劣化を起こし難く、使用した電気化学的デバイスの性能低下や変性を招くことが無い。また、長期・連続使用時にも結晶化等による比表面積や細孔容積等の物性劣化が起こり難く、より長寿命の電気化学的デバイスを得ることができる。加えて、高純度であることから、イオン移動を障害することがなく、イオン伝導体の性能が十分に発揮される。
【0052】
また、上述の利点を有する本発明のイオン伝導体用シリカゲルにイオン伝導性化合物を含有させた本発明のイオン伝導体は、従来のイオン伝導体に比べてイオン伝導度が大きく、且つその品質も安定している。更に、イオン伝導性の化合物や組成物の含有率が高く、例えばプロトン伝導体として燃料電池の電解質に用いた場合や、リチウムイオン伝導体としてLi二次電池の電解質に用いた場合の発電効率等の性能にも優れている。また、高温で水蒸気と接触する様な過酷な発電条件下においても、イオン伝導度の低下や変性が生じ難い。加えて、長期・連続使用時にも性能の劣化が起こり難く、電解質としての寿命が長い。
【0053】
本発明のイオン伝導体は、所望のイオン伝導性を有する様に構成することにより、燃料電池、Li電池等の二次電池や空気電池などの電解質、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の電気化学的デバイスに好適に使用することが可能となる。以下の説明では例として、本発明のイオン伝導体をプロトン伝導体として構成し、これを燃料電池の電解質に用いる場合、並びに、本発明のイオン伝導体をLiイオン伝導体として構成し、これをLi二次電池に用いる場合について、それぞれ詳細に説明する。
【0054】
燃料電池は、水素やメタノールのような燃料を電気化学的に酸化して、直接電力を取り出す方式である。特に最近注目されている固体高分子電解質形燃料電池は、常温から作動でき、高出力密度が得られ、原理的に水や二酸化炭素のみが生成するという特徴を持つ。このため、近年のエネルギー、地球環境問題への社会的要請の高まりと共に電気自動車用電源、定置式電源、移動式(携帯式)電源などとして大きな期待が寄せられている。
【0055】
燃料電池の発電原理は、次の通りである。電解質である膜状のイオン交換体(プロトン伝導体)の両面に燃料極(アノード)と空気極(カソード)の二つの電極を接触させる。燃料極に水素やメタノール等の燃料を供給すると燃料が電気化学的に酸化されて、プロトンと電子が発生する。例えば、水素やメタノールの場合、以下の式のような反応が起こる。
2 → 2H+ + 2e-
CH3OH+H2 → 6H+ + 6e- +CO2
発生したプロトンは、電解質である膜状のイオン交換体(プロトン伝導体)中を通って空気極に移動する。一方、電子は外部負荷回路を通って、空気極へ移動する。空気極ではプロトンと空気中の酸素とで、
2 + 4H+ + 4e- → 2H2
の反応が起こり、水の生成と共に電気エネルギーが得られる。従って、プロトン伝導体を電解質として用いた場合、電解質中を移動するプロトンの早さ、すなわち電解質に用いるプロトン伝導体中のプロトン伝導度の大きさ(プロトン伝導性)は、燃料電池の性能を決定する重要な性質である。つまり、燃料電池電解質に用いるためには、プロトン伝導度は高い程好ましい。
【0056】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルを用いてプロトン伝導体を構成し、これを燃料電池の電解質に用いる場合には、通常、シリカゲルの細孔中にプロトン伝導性化合物を担持させて用いる。
【0057】
プロトン伝導性化合物の具体例としては、各種公知のプロトン伝導性化合物が用いられる。例えば、硫酸、リン酸、ポリリン酸、過塩素酸のような過ハロゲン酸類のようなプロトン酸性を有する化合物、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の各種のスルホン酸類、各種のヘテロポリ酸、固体酸や各種公知のプロトン伝導性ポリマーが挙げられる。
【0058】
なお、本明細書においてヘテロポリ酸とは、遊離酸並びにその中性及び酸性塩を含む概念である。ここで、酸性塩とは、水素イオンの幾つかが塩基性カチオン、例えばアルカリ金属カチオンで置き換えられたヘテロポリ酸(HPA)の塩を意味する。従って、本発明のオレフィン水和触媒の製造に使用されるヘテロポリ酸には、遊離酸及びその配位型の塩が含まれ、該塩中でアニオンは錯体高分子量物質として存在する。典型的には、該アニオンは2〜18個の酸素が結合した多価金属原子を含み、それは周辺原子と呼ばれる。これらの周辺原子は1個又はそれ以上の中心原子を対称的に取り囲む。該周辺原子は通常、1個又はそれ以上のモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、及びその他の金属である。中心原子は通常、ケイ素又はリンであるが、元素の周期表の第IA〜VIIA族及び第VIII族に属する元素を含んでいても良い。こうした元素のイオンとしては、例えば、第二銅イオン;二価のベリリウム、亜鉛、コバルト又はニッケルの各イオン;三価のホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、セリウム、ヒ素、アンチモン、リン、ビスマス、クロム又はロジウムの各イオン;四価のケイ素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム、バナジウム、イオウ、テルル、マンガン、ニッケル、白金、トリウム、ハフニウム、セリウムの各イオン、及びその他の稀土類イオン;五価のリン、ヒ素、バナジウム、アンチモンの各イオン;六価のテルルイオン;及び七価のヨウ素イオンが挙げられる。斯かるヘテロポリ酸はまた、“ポリオキソアニオン”、“ポリオキソメタレート”又は“金属酸化物クラスター”として知られる。代表的なアニオン構造として、ケギン(Keggin)構造、ウエルズ−ダウソン(Wells-Dawson)構造,アンダーソン−エヴァンズ−ペルロフ(Anderson-Evans-Perloff)構造(何れも当該分野の先駆的研究者に因んで命名された)が挙げられる。
【0059】
ヘテロポリ酸は通常、例えば700〜8500程度の高分子量を有し、二量錯体の構造を採る場合もある。また、ヘテロポリ酸は水やその他の酸素含有溶媒等の極性溶媒に比較的高い溶解性を有する。この溶解性は、ヘテロポリ酸が遊離酸やある種の塩の形態を採る場合に高くなることが知られており、適当な対イオンを選択することにより調節することができる。本発明のイオン伝導体のイオン伝導性化合物として使用し得るヘテロポリ酸としては、下記のものが挙げられる。
【0060】
リン−12−タングステン酸(H3[PW1240]xH2O),リン−12−モリブデン酸(H3[PMo1240]xH2O),ケイ−12−タングステン酸(H4[SiW1240]xH2O),ケイ−12−タングステン酸モノナトリウム(H3Na[SiW1240]xH2O),ケイ−12−モリブデン酸(H4[SiMo1240]xH2O),リンタングステン酸カリウム(K6[P21862]xH2O),リンモリブデン酸ナトリウム(Na3[PMo1240]xH2O),二リン−モリブデン酸アンモニウム((NH46[P2Mo1862]xH2O),ニッケル−タングステン酸ナトリウム(Na4[NiW6246]xH2O),二コバルト−モリブデン酸アンモニウム((NH4)[Co2Mo1036]xH2O),ケイタングステン酸セシウム水素(Cs3H[SiW1240]xH2O),リンモリブドジバナジウム酸カリウム(K5[PMoV240]xH2O)。
【0061】
なお、上に具体例を挙げて説明したヘテロポリ酸の多価酸化状態及び水和状態は、あくまでも本発明のイオン伝導体用シリカゲルに含浸させる前、特にかかるイオン伝導体を用いた燃料電池用電解質の実際の発電条件に付す前の状態である。ヘテロポリ酸の水和度は、プロトン伝導体の酸性状態、ひいてはその活性に影響を与える。よって、ヘテロポリ酸の含浸や燃料電池の発電状態は、ヘテロポリ酸の水和状態やヘテロポリ酸中の金属の酸化状態に影響を与える。即ち、シリカゲルに含浸させた水和/ヘテロポリ酸中の金属の酸化状態は、例えば燃料電池の発電条件下において変化し、使用後の触媒におけるヘテロポリ酸の酸化状態及び水和状態は、シリカゲルへの含浸前のヘテロポリ酸の酸化状態及び水和状態と異なるものと考えられる。
【0062】
一方、固体酸としては公知の固体酸を使用することができる。具体的には、ゼオライト類、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の各種の無機酸化物や、Zr、Sn等の金属酸化物を用いることができる。これらの無機酸化物や金属酸化物は無水状態でも水を化学的もしくは物理的に含有した状態で用いても構わない。また、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア等のように、二種類以上の元素の混合酸化物や複合酸化物であっても構わない。
【0063】
更に、プロトン伝導化合物として公知の、CsHSO4、Cs2(HSO4)(H2PO4)等のCs塩類や、Rb3H(SeO42のようなRb塩類、(NH43H(SO42のようなアンモニウム塩類、K3H(SO42のような硫酸水素塩類も好ましく用いられる。
【0064】
プロトン伝導性ポリマーとしては、公知のカチオン交換樹脂系イオン交換膜がよい。例えば、ナフィオン(デユポン社製等)やフレミオン膜(旭硝子製等)等のパーフルオロカーボンスルホン酸型イオン交換膜、特開2000−138068号公報記載のトリフルオロスチレンコポリマー膜型イオン交換膜、ポリベンズイミダゾール膜、ポリベンズイミダゾール膜にリン酸等の酸をドープした膜等が挙げられる。
【0065】
なお、上述した各種のプロトン伝導性化合物は、何れか一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。更にPTFE、PVDF等のバインダーや成形剤が含まれていても構わない。また、プロトン伝導性化合物として、特にプロトン伝導性ポリマーを用いる場合には、本発明のイオン伝導体用シリカゲルの細孔内に、プロトン伝導性ポリマーの原料となる化合物をあらかじめ担持させた後に、細孔内で重合等のポリマー形成反応を行ない、結果としてシリカゲルの細孔内にプロトン伝導性ポリマーが担持されるようにしても構わない。
【0066】
本発明のプロトン伝導体を用いた電解質板を使用し、この電解質板を燃料極(アノード)と空気極(カソード)とで挟持した起電部を構成することで、燃料電池を形成することができる。このときの電解質板は、本発明のプロトン伝導体を、燃料電池として使用する形状(通常シート状)に成形したものが好ましい。これは、燃料電池の組み立て作業中及び、組み立て後の運転時に一定の形状を保つことができる程度の形状保持性を有していることが好ましいとの意味である。
【0067】
燃料電池の電解質の形状としては、通常は膜状、フィルム状、シート状のものが一般的であり、これらの厚さは0.001〜20mm程度である。本発明のプロトン伝導体を、燃料電池の電解質として所望の形状に成型するために、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPVDF(ポリビニリデンフルオライド)のようなバインダーや成形剤を使用しても構わない。
【0068】
また、電解質がそれ自身、単独でその形状を維持しなくても、燃料極や空気極、又はカーボンペーパー、カーボンクロス、グラファイト板のような支持体上に0.001〜20mm程度に薄膜化、もしくは積層させたものでも構わない。このときの一般的な方法としては、キャステイング法、デイッピング法、スピンコート法等の公知の薄膜化技術、コーテイング技術が使用できる。この場合も、PTFEやPVDFのようなバインダーや成形剤を使用しても構わない。
【0069】
燃料電池の燃料極(アノード)には、通常、水素やメタノールを電気化学的に酸化して、プロトンと電子を生成させるための白金等の電極触媒が含有され、空気極(カソード)には、アノードから電解質中を伝導したプロトンを水に酸化するための白金等の電極触媒が含有される。また、アノード、カソードには、集電のための、電気伝導性化合物が含まれる。
【0070】
プロトン伝導性化合物の選択やプロトン伝導体中におけるプロトン伝導性化合物の担持量は、燃料電池の用途や使用条件に応じて適宜定めればよい。
【0071】
この様に、本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、従来の担体シリカゲルに比べてより精密な細孔径制御が可能であるので、プロトン伝導性化合物を担持させてプロトン伝導体として使用する場合に、使用する燃料電池等の用途や使用条件に応じて、プロトン伝導体の種類や量等の設計が容易であり、品質も安定している。また、同等の細孔径を有する従来の担体シリカゲルに比べて細孔容積がより大きいことから、より多量のプロトン伝導性化合物を含有させることができ、また、プロトン伝導体の実効表面積も大きくなる。その結果、従来のシリカゲルに比べてより高いプロトン伝導度が得られる。このことは、これを用いた燃料電池の発電効率等の性能も向上することを意味する。
【0072】
一方、Liイオン二次電池は、正極と、負極と、正極及び負極に狭持された電解質と、正極と負極とを非接触状態に保つセパレータとを備えて構成される。そして、従来用いられてきた電解質すなわちイオン伝導体は、真性ポリマー電解質とゲル電解質の2つに大別することができる。
【0073】
(1)真性ポリマー電解質
ポリエーテル(PEO,PPO、など)およびその類似高分子が、アルカリ金属塩を固溶している状態でイオン伝導性を有することが発見され、1970年代後半に二次電池への適用が提案された(特公平6−52671号公報:アジエンス ナチオナレ(フランス)、USP4,357,401号公報:レェタフランセ(フランス))。これらは、無機固体電解質にはない可塑性によって、充放電に伴う電極の体積変化を吸収して電極との電気化学的接触を維持することに着目した発明である。しかし、常温でのイオン伝導性は10 -5 S/cmと、実用電池からは2桁以上低かった。1990年頃まで、イオン伝導性の向上策として、活性光線による架橋化と薄膜化(特公平3−73081号公報:宇部興産)、ポリビニルアルコールなどのポリエーテル以外のポリマー種(特許2559822号公報:ユアサコーポレーション、特公平6−19923号公報:ナショナルサイエンス(台湾))などが提案された。また、この時期には、ポリマー電解質に複合酸化物正極および炭素負極を組み食わせた特許(特許2547816号公報:旭化成工業)が出願されている。その後、電極界面抵抗減少のためのイオン照射(特開平5−290613号公報:住友電気工業)あるいは、固体電解質分解防止のための電位窓二層電解質(特開平8−222235号公報:ソニー)など、真性ポリマー電解質としての実用化課題を掲げるものも見られた。しかし、多くは、ポリエーテルを側鎖に有する櫛型高分子、ポリエーテル鎖と他のモノマーとの共重合体、ポリエーテルを側鎖に有するポリシロキサン又はポリフォスファゼン、ポリエーテルの架橋体などの素材改善の提案で、単に真性ポリマー電解質としてではなく、同時にゲル電解質のホストポリマーとしての発明であり(特開平5−178949号公報:ユアサコーポレーション、特開平8−7924:ユアサコーポレーション、特開平10−308239号公報:松下電器産業、特開平11−45725号公報:三洋電機、など)、真性ポリマー電解質のイオン伝導度向上の目的であった。しかし、アルミナ系微粒子を添加して強度を改善するとともに、LiPF6などのフッ素系無機塩のアニオンがアルミナ粒子表面に特異的に吸着することにより、リチウムイオン伝導度を向上させる提案(特開平10−334731号公報:昭和電工)、また、電解質塩について、リチウムイオン電池で用いられているLiPF6などの無機塩ではなく、有機塩の提案(特開平9−22706号公報:ユアサコーポレーション)など、真性ポリマー電解質に特有の展開も見られる。真性ポリマー電解質は、金属リチウム二次電池のデンドライト(針状リチウム金属による電極短絡)対策として期待されている。
【0074】
(2)ゲル電解質
真性ポリマー電解質の提案があったのとほぼ同時期の1970年代末から80年代初頭にかけて、PMMAなど(特公昭58−368281号公報:松下電器産業)と、比誘電率4以上のポリマー(特公昭61−23945号公報、特公昭61−23947号公報:日本電気)をホストポリマーとするゲル電解質の提案がなされている。いずれも、漏液対策のために有機溶媒電解液を非流動化する手段として、ポリマーによるゲル化が発想されたものである。その後、90年前後にPEOなどの照射架橋ポリマー(USP4,830,939号公報:エムエイチピージョイントベンチャー(米国))と、PANなど(USP5,219,679号公報:イーアイシーラボラトリーズ(米国))、さらに架橋ポリシロキサン(特開平5−109310号公報:ウルトラセル(米国))をホストポリマーとする出願がなされたが、イオン伝導性は10 -4 S/cm程度で実用レベルには不十分であった。90年代半ばにPVDFとヘキサフルオロピレン(HFP)の共重合体(特許2853096号公報:ベルコミュニケーションズリサーチ(米国))、アグリロイルとアリルの共重合体(USP5,609,974:バッテリーエンジニアリング(米国))など、共重合により高分子の結晶度を低下させて、電解質液を高含浸化する発明がなされ、イオン伝導度は実用レベルの10 -3 S/cmに向上してきた。しかし、含浸比率が向上するとともにゲル電解質の強度が低下し、製造過程や使用中の変形による正極負極の短絡が重要課題であった。最近、素材の化学組成のみならず、層状ポリマーアロイなど、ゲルの内部構造に関する提案もされている(特開平10−261437号公報:松下電器産業、特開平11−111336号公報:日本電気、特開平11−185773号公報:ソニー)。
【0075】
以上のように、正極と負極との間の短絡の防止、高いイオン伝導度の達成が重要な課題であったが、これまでのレベルは十分にバランスされたものではなかった。上記▲1▼及び▲2▼の電解質をイオン伝導性化合物又は組成物として、本発明のイオン伝導体用シリカゲルと組み合わせてイオン伝導体を構成し、これを新たに電解質として用いれば、大きな細孔容積により高いイオン伝導性を阻害することなく、針状リチウム金属の電解質内への侵入による電極の短絡を防げるため、安全性を高めることができる。
【0076】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に制約されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。
【0077】
(1)担体シリカゲルの分析方法
(1−1)細孔容積、比表面積
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0078】
(1−2)粉末X線回折
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行なった。発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
【0079】
(1−3)金属不純物の含有量
試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行なった。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
【0080】
(1−4)固体Si−NMR測定
Bruker社製固体NMR装置(「MSL300」)を使用するとともに、共鳴周波数59.2MHz(7.05テスラ)、7mmのサンプルチューブを使用し、CP/MAS(Cross Polarization/Magic Angle Spinning)プローブの条件で測定した。具体的な測定条件を下の表1に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0004160321
【0082】
測定データの解析(Q4ピーク位置の決定)は、ピーク分割によって各ピークを抽出する方法で行なう。具体的には、ガウス関数を使用した波形分離解析を行なう。この解析には、サーモガラテック(Thermogalatic)社製の波形処理ソフト「GRAMS386」を使用することができる。
【0083】
(2)担体シリカゲルの製造及び評価
・実施例1
ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。100rpmで撹拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6である。セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き撹拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、撹拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。
【0084】
このヒドロゲル450gと純水450gとを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、3℃/minの速度で130℃まで昇温し、同温度に3時間保持して水熱処理を行なった。その後、No.5A濾紙で濾過し、濾滓を水洗することなく100℃で恒量となるまで減圧乾燥した。
【0085】
実施例1の担体シリカゲルの諸物性を下の表2に示す。粉末X線回折図には周期的構造による低角度側のピークは認められなかった。なお、実施例1のイオン伝導体用シリカゲルの不純物濃度は、ナトリウム0.2ppm、カリウム0.1ppm、カルシウム0.2ppmで、その他の金属不純物は検出されなかった。また、固体Si−NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値δは、前述した式(I)の左辺{−0.0705×(Dmax)−110.36}で計算される値よりも小さな値(よりマイナス側に存在する値)となった。
【0086】
・水中熱安定性試験
実施例1及び比較例1の担体シリカゲル試料各々20gに、純水を加えて40重量%のスラリーを各々調製した。容積60mlのステンレススチール製のミクロボンベに、上記で調製したスラリー約40mlを各々入れて密封し、280±1℃のオイルバス中に3日間浸漬した。ミクロボンベからスラリーの一部を抜出し、濾過によりシリカゲルを回収した。得られたシリカゲルを100℃で5時間真空乾燥した。乾燥後のシリカゲルについて比表面積を測定した結果を下の表2に示す。実施例1の担体シリカゲルは、比表面積の減少が少なく、より安定していると判断される。
【0087】
【表2】
Figure 0004160321
【0088】
(3)イオン伝導体の製造
上記の実施例1のシリカゲルに、先に詳説した各種のイオン伝導性化合物を、同じく先に詳説した各種の方法を用いて担持させることにより、イオン伝導体を製造することが可能である。
【0089】
ここでは、イオン伝導性化合物として、プロトン伝導性化合物であるリン酸を担持させたプロトン伝導体の製造法の例を、具体的に説明する。
【0090】
実施例1のシリカゲルを更に篩で分級して、6〜30μmのシリカゲルを得た。このシリカゲルを、85%のリン酸水溶液に24時間浸漬した後、漏斗上に移しリン酸水溶液を完全に液切りする。これに窒素気流中80℃で、20時間をかけて乾燥処理を施すことにより、上記の実施例1のシリカゲルを6〜30μmに分級したシリカゲルにリン酸を担持させたプロトン伝導体を調製した。
【0091】
・比較例1
実施例1において、ヒドロシリカゲル粒子を150℃で3時間水熱処理を行なわなかった以外は実施例1と同様にシリカゲルの調製を行った。得られたシリカゲル粒子を篩で分級することにより6〜30μmのシリカゲル粒子を得た。これを比較例1のシリカゲルとする。この比較例1のシリカゲルを、実施例1のシリカゲル(6〜30μmのシリカゲル)と同様に、リン酸を担持させたプロトン伝導体を調製した。
【0092】
(4)プロトン伝導度測定
実施例1と比較例1で得たプロトン伝導体を、金メッキを施したステンレス電極に挟むことにより評価用セルを作製し、交流インピーダンス法(測定周波数50Hz〜5MHz)を用いて、恒温槽中乾燥条件下に、40℃、80℃、100℃、120℃におけるプロトン伝導度を測定した。得られた結果を下の表3に示す。
【0093】
【表3】
Figure 0004160321
【0094】
以上の結果のように、実施例1のシリカゲルにリン酸を担持させたプロトン伝導体の方が、何れの温度においても高いプロトン伝導度を示した。このことから、実施例1のプロトン伝導体を燃料電池の電解質として用いた場合においても、比較例1と比べてより高い発電効率が得られることは明らかである。
【0095】
【発明の効果】
本発明のイオン伝導体用シリカゲルは、細孔径等の物性を精密に制御できるので、イオン伝導性化合物を含有させてイオン伝導体として使用した場合に、高いイオン伝導性を得るための材料設計が容易であり、品質の安定したイオン伝導体を得ることができる。また、細孔容積が大きいので、充分な量のイオン伝導性化合物を含有させることが可能であるとともに、高純度であり、イオン伝導の障害となる不純物が極めて少ないので、より高いイオン伝導度を有するとともに、性能の劣化が起こり難く寿命の長いイオン伝導体が得られる。
【0096】
特に、本発明のイオン伝導体用シリカゲルを用いてプロトン伝導体を構成すれば、燃料電池等の電解質に好ましく用いることができる。これによって得られた燃料電池は、発電効率等の性能が高くなる上に、その寿命も延長される。

Claims (9)

  1. イオン伝導体に用いられるシリカゲルであって、
    (a)細孔容積が0.3ml/g以上3.0ml/g以下であり、
    (b)比表面積が200m/g以上1000m/g以下であり、
    (c)細孔の最頻直径(Dmax)が4nm以上20nm未満であり、
    (d)非晶質であり、且つ、
    (e)固体Si−NMRでのQピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、
    δが下記式(I)
    −0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I)
    を満足し、
    (f)金属不純物の総含有率が500ppm以下であり、
    (g)固体Si−NMR測定におけるQ /Q ピークの値が1.3以上であり、
    (h)最頻直径(D max )における微分細孔容積が、2ml/g以上20ml/g以下であり、
    (i)直径がD max ±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の20%以上である
    ことを特徴とする、イオン伝導体用シリカゲル
  2. シリコンアルコキシドを加水分解する工程を経て製造される
    ことを特徴とする、請求項1記載のイオン伝導体用シリカゲル。
  3. 請求項1又は請求項2記載のイオン伝導体用シリカゲルにイオン伝導性の化合物又は組成物が含有されている
    ことを特徴とする、イオン伝導体。
  4. 前記のイオン伝導性の化合物又は組成物として、プロトン伝導性の化合物又は組成物が含有されている
    ことを特徴とする、請求項3記載のイオン伝導体。
  5. 前記のイオン伝導性の化合物又は組成物として、リチウムイオン伝導性の化合物又は組成物が含有されている
    ことを特徴とする、請求項3記載のイオン伝導体。
  6. 前記のリチウムイオン伝導性の化合物又は組成物が、ポリエーテル化合物である
    ことを特徴とする、請求項5記載のイオン伝導体。
  7. 膜状、フィルム状、又はシート状である
    ことを特徴とする、請求項5記載のイオン伝導体。
  8. 燃料極と、酸化極と、前記燃料極及び前記酸化極に狭持された電解質とを具備する燃料電池において、前記電解質が請求項3又は請求項4に記載のイオン伝導体である
    ことを特徴とする、燃料電池。
  9. 正極と、負極と、前記正極及び前記負極に狭持された電解質と、前記正極と前記負極とを非接触状態に保つセパレータとを具備するリチウムイオン二次電池において、前記電解質が請求項5又は請求項6に記載のイオン伝導体である
    ことを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
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