JP2006040853A - イオン伝導性フィラーおよびイオン伝導性高分子組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高分子物質に添加することでイオン伝導性を向上させることができるイオン伝導性フィラーおよびイオン伝導性高分子組成物を提供する。
【解決手段】 メソ細孔を有する金属酸化物の多孔体であって、前記メソ細孔の内部およ
び/または多孔体の表面にイオン伝導性物質を有することを特徴とするイオン伝導性フィラーおよびこれを含むイオン伝導性高分子組成物。
【選択図】 図1
【解決手段】 メソ細孔を有する金属酸化物の多孔体であって、前記メソ細孔の内部およ
び/または多孔体の表面にイオン伝導性物質を有することを特徴とするイオン伝導性フィラーおよびこれを含むイオン伝導性高分子組成物。
【選択図】 図1
Description
本発明は、イオン伝導性フィラーおよびイオン伝導性高分子組成物に関する。
アルカリ金属塩を溶解させた高分子量のポリエチレンオキサイド(PEO:Polyethylene Oxide)複合体のイオン伝導性が1971年に初めて報告されて以来、ポリエーテルをベースとしたイオン伝導性高分子は、ポリマー2次電池などの次世代電気化学的デバイスには欠かせない材料となっている。例えば、Li塩とポリエチレンオキサイドの複合体(以下、「PEO−Li複合体」という)は、代表的なイオン伝導性高分子である。そして、これらのイオン伝導性高分子におけるイオン伝導度の改善を目的として各種の技術が開発され、また提案されている。
これまでに報告されたイオン伝導度の有望な改善技術としては、ポリマー骨格の架橋化、グラフト化による分子設計および極性溶媒の含浸によるゲル化等が挙げられる。これらの手法により、イオン伝導度は、室温で、10-4〜10-3S/cm程度にまで改善され、一部が電池の電解質材料として実用化されている(例えば、非特許文献1参照)。
ところが、前記ゲル化による方法では、溶媒の高い極性によりアルカリ金属塩の溶解性を促進させ、イオン拡散係数を増大させているに過ぎず、固体高分子電解質としての本来の特性が充分に活かされているとはいえなかった。そして、前記溶媒の蒸発や漏洩を防ぐことが必要になるため、安定性やコスト面、あるいは機械的強度の点で問題があった。
一方、近年、TiO2、SiO2およびAl2O3などの微粒子からなる無機フィラー(以下、「微粒子無機フィラー」と称す)を高分子量のPEOに添加したイオン伝導性高分子の優れたイオン伝導特性が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。この微粒子無機フィラーを添加したPEOは、そのイオン伝導機構や耐久性等について、未だ研究段階であり、電池等の実用に供せられるレベルには達していない。
さらに、イオン伝導性高分子に限られず、他の高分子においても、その用途が拡大するに伴って、その高分子本来の特性を発揮するともに、高いイオン伝導性が求められる場合がある。例えば、コピー機、ファクス、プリンターなどの電子写真装置に用いられる帯電ローラ(帯電部材)、現像ローラ(現像部材)、転写ローラ(転写部材)、ベルトなどには、感光ドラム、トナー、記録媒体等の他部材の帯電を制御するために、導電性が要求される場合がある。また、電磁遮蔽材料、電子部品を保護するために帯電防止機能が必要とされる包装部材若しくは衝撃吸収部材、電子計算機、電子式デジタル時計、電子カメラ、コンピューターキーボードなどの分野において、回路装置、例えばプリント回路基板とリードレスチップキャリアー、液晶パネルなどとの相互間の電気的な接続を達成するためのコネクターなどの各種部材においても、導電性が求められる場合がある。しかし、前記イオン伝導性高分子等の一部のイオン伝導性高分子を除いて、一般に、高分子の直流体積導電率は10-10S/cm以下である。そこで、高分子物質の導電性を改良するため、導電性を付与する材料の添加等が行なわれている。例えば、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンフィブリル、カーボンナノチューブ、ニッケル、また、鉄、コバルト等の金属粒子若しくはこれらの合金の粒子またはこれらの金属を含有する粒子、またはこれらの粒子の表面に金、銀、パラジウム、ロジウムなどのイオン伝導性の良好な金属のメッキを施したもの(金属コート炭素繊維、金属コート黒鉛、金属コートガラス繊維、イオン伝導性ポリマーフィラメント、ステンレス鋼繊維)、金属フレーク、金属や金属酸化物の粉末、ウィスカー、さらに、4級アンモニウム塩化合物等の有機化合物を配合して導電性を付与することが行なわれている。
しかし、従来の導電性フィラーは、フィラー自体が成形品の表面に出てくる現象、いわゆるブリード現象が発生したり、充填量の変化による導電率の微妙なコントロールが困難であったり、フィラーの分散性に応じて導電率にムラが生じる。また、カーボンブラック等の有色のフィラーを配合した場合には、着色されるため、用途が制限される、という問題があった。
しかし、従来の導電性フィラーは、フィラー自体が成形品の表面に出てくる現象、いわゆるブリード現象が発生したり、充填量の変化による導電率の微妙なコントロールが困難であったり、フィラーの分散性に応じて導電率にムラが生じる。また、カーボンブラック等の有色のフィラーを配合した場合には、着色されるため、用途が制限される、という問題があった。
ところで、金属酸化物の微粒子は、イオン伝導性高分子のみならず触媒や半導体分野でも用いられるものであり、新たな特性を求めて、そのミクロな構造についての研究が盛んに行われている。なかでも、メソ多孔体からなる無機フィラー(以下、「メソ多孔体無機フィラー」と称す)は、直径3nm〜30nmのメソ細孔と規則的配置構造とを有する金属酸化物の多孔体で構成され、その多孔性の状態を制御して合成することが比較的容易であることから、次世代の材料として有望視されている。
とりわけ、SiO2を骨格とするメソ多孔体無機フィラー(いわゆる、SBA−15、MCM−41等)については、その製造方法と物性について詳細に研究がなされている(例えば、非特許文献3および4参照)。ただし、現状では、それらをイオン伝導性高分子へ添加するという試みは極めて少なく、前記MCM−41をイオン伝導性高分子へ添加した場合、イオン伝導度は3〜4倍程度しか向上しないと報告されており、前記MCM−41のメソ細孔径やSiO2骨格の厚み等の最適化がさらに検討されている(例えば、非特許文献4参照)。
Shinji Takeoka、他2名、「Recent Adv ancement of Ion−conductive Polymers」、P olymers for Advanced Technologies、2002 年、第4巻、p.53−73
富永洋一、他2名「PEO−塩複合体の構造解析およびイオン伝導 度の改善に関する最新研究」、材料の科学と工学、2002年、第39巻、第3号、 p.34−38
Dongyuan Zhao、他6名、「Triblock Co polymer Synthesis of Mesoporous Silica with Periodic 50 to 300 Angstrom Pore s」Science、1998年、第279巻、p.548−552
Peter P.Chu、他2名、「Novel composi te polymer electrolyte comprising meso porous structured SiO2 and PEO/Li」、Sol id State Ionics、2002年、第156巻、p.141−153
そこで、本発明の第1の目的は、前記事情に鑑み、高分子物質に配合してイオン伝導性を付与し、またはイオン伝導性を向上させるイオン伝導性フィラー、特に、イオン伝導性高分子に配合してイオン伝導度をさらに向上させることができるイオン伝導性フィラーを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、高いイオン伝導性を有するため、広範囲の用途に適用できるイオン伝導性高分子組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、高いイオン伝導性を有するため、広範囲の用途に適用できるイオン伝導性高分子組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために、PEO−Li塩複合体に代表されるイオン性高分子について、従来のイオン伝導性高分子において最も大きな問題点であった断続的なイオン伝導性パスの形成や無機フィラー添加量の限界によるイオン伝導度の限界の克服について、添加するフィラーの観点から、鋭意検討した。その結果、規則的な構造を有するメソ多孔体フィラーは、イオン伝導パスの形成を促し、さらなるイオン伝導度の向上に大きな効果を示すことが期待され、さらに、そのメソ多孔体フィラーが有するメソサイズのトンネルをイオン移動に利用し、微粒子系複合体では実現できない新規なイオン伝導パスの構築と高分子−フィラー界面の増大を促進させることで、室温で10-3S/cm以上の高いイオン伝導度を発現できることを見出し、本発明を創案するに至った。そして、さらに、このメソ多孔体フィラーは、イオン伝導性高分子に限られず、非イオン伝導性高分子等の他の高分子に配合して、高いイオン伝導性を有するイオン伝導性高分子組成物を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明のイオン伝導性フィラーは、メソ細孔を有する金属酸化物の多孔体であって、前記メソ細孔の内部および/または多孔体の表面にイオン伝導性物質を有することを特徴とする。
このイオン伝導性フィラーは、メソ細孔の内部および/または多孔体の表面にイオン伝導性物質を有することによって、イオン伝導パスの形成を促すとともに、高分子とフィラーの界面の増大を促進し、高分子のイオン伝導性を向上させる。特に、高分子がイオン伝導性高分子である場合には、イオン伝導性高分子のイオン伝導度を向上させる。
また、本発明は、メソ細孔を有する金属酸化物の多孔体であって、前記メソ細孔の内部および/または多孔体の表面にイオン伝導性物質を有するイオン伝導性フィラーと、−150℃〜+150℃の範囲のガラス転移温度を有する結晶性または非結晶性の高分子物質とを含むイオン伝導性高分子組成物を提供する。
このイオン伝導性高分子組成物は、前記イオン伝導性フィラーを含むことによって、マトリックスとして用いられる高分子物質のイオン伝導性を向上させることができる。また、高分子物質として、イオン伝導性高分子を含む場合には、前記イオン伝導性フィラーを含むことによって、金属塩から供給されるイオンのマトリックスとなる前記イオン伝導性高分子が適切な極性を有するので、前記イオンの分散性または相溶性が良好に保持されるとともに、イオンの移動度が高くなり、イオン伝導性をさらに向上させることができる。
本発明のイオン伝導性フィラーは、高分子物質に配合して、イオン伝導性を付与しまたはイオン伝導性を向上させることができる。さらに、高分子に配合して、その機械的性質の向上のみならず、電池等に応用する場合、正極と負極との電気的短絡を防止する効果も得ることができる。特に、本発明のイオン伝導性フィラーは、イオン伝導性高分子に配合して、イオン伝導性高分子から供給されるイオンのイオン伝導パスの形成を促すとともに、イオン伝導性高分子との界面を増大し、イオン伝導性高分子のイオン伝導度を向上させることができる。
また、本発明のイオン伝導性フィラーは、一次径(0.5〜2μm程度)が比較的大きいため、他のフィラーと比較して高分子物質に対して高い分散性を示す。そのため、高分子物質に添加しても、ブリードや導電性のムラを生じ難い利点もある。
また、本発明のイオン伝導性高分子組成物は、高いイオン伝導性を有するため、各種の用途に適用することができる。また、イオン伝導性フィラーは、金属酸化物の多孔体からなるため、本発明のイオン伝導性高分子組成物は、機械的強度、寸法安定性に優れ、かつ、フィルム状にも成形できるので、各種の用途に適用することができる。特に、本発明のイオン伝導性高分子組成物が高分子物質としてイオン伝導性高分子を含む場合、金属塩から供給されるイオンのマトリックスとなる前記イオン伝導性高分子が適切な極性を有するので、前記イオンの分散性または相溶性が良好に保持されるとともに、イオンの移動度が高くなり、イオン伝導性がさらに向上したイオン伝導性高分子組成物を得ることができる。
また、本発明のイオン伝導性高分子組成物は、前記イオン伝導性フィラーを含むため、ブリードやイオン伝導性のムラを生じ難い。
また、本発明のイオン伝導性高分子組成物は、前記イオン伝導性フィラーを含むため、ブリードやイオン伝導性のムラを生じ難い。
以下、本発明のイオン伝導性フィラー(以下、「本発明のフィラー」という)およびイオン伝導性高分子組成物(以下、「本発明の組成物」という)について説明する。
[イオン伝導性フィラー]
本発明のフィラーは、均一なメソ細孔径と規則的配置構造とを有する金属酸化物の多孔体(以下、「メソ多孔体」という)で構成され、メソ細孔の内部および/またはメソ多孔体の表面にイオン伝導性物質を有するものである。このイオン伝導性物質によって、高分子物質にイオン伝導性を付与し、またはイオン伝導性を向上させることができる。特に、本発明のフィラーをイオン伝導性高分子に配合した場合には、イオン伝導性高分子中のイオン伝導パスの形成が促進され、イオン伝導度のさらなる向上が具現されるものと考えられる。
本発明のフィラーは、均一なメソ細孔径と規則的配置構造とを有する金属酸化物の多孔体(以下、「メソ多孔体」という)で構成され、メソ細孔の内部および/またはメソ多孔体の表面にイオン伝導性物質を有するものである。このイオン伝導性物質によって、高分子物質にイオン伝導性を付与し、またはイオン伝導性を向上させることができる。特に、本発明のフィラーをイオン伝導性高分子に配合した場合には、イオン伝導性高分子中のイオン伝導パスの形成が促進され、イオン伝導度のさらなる向上が具現されるものと考えられる。
前記金属酸化物の多孔体は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、WO3およびそれらの複合酸化物等を骨格とするメソ多孔体である。複合酸化物としては、例えば、SiAlOx、Si2AlOx(x=3〜6)、SiTiO4、Al2TiO5、ZrTiO4等が挙げられる。このメソ多孔体は、直径3nm〜30nmのメソ細孔を有し、特に、SiO2を骨格とするメソ多孔体が好ましい。特に、メソ細孔の直径が、3nm〜30nmであるSBA−15およびその未焼成体であるSBA−15N並びにMCM−41で知られるメソ多孔体を用いることが、より好ましい。このメソ多孔体の一次径は、通常、0.5〜2μm程度である。このSBA−15等のSiO2を骨格とするメソ多孔体は、これを添加する高分子物質を着色せず、従来のカーボンブラック等の有色フィラーを用いる場合のように用途が制限されることがなく、より広範囲の用途に適用が可能となる。そして、透明性の高い高分子物質に添加すれば、透明性の高いイオン伝導性材料の製造の可能となる利点がある。
通常、前記MCM−41は、アルキルアンモニウム塩を用いて合成され、また前記SBA−15は、非イオン性の界面活性剤であるポリエーテル系トリブロック共重合体を用いて合成される。一方、前記SBA−15は、前記界面活性剤自身が安価であり、非イオン性であり環境に優しく、無臭で取扱いが容易であるなどの利点を有するため、工業的には、前記SBA−15を用いることが、より好ましい。更に、前記SBA−15の未焼成体であるSBA−15Nは、細孔内に界面活性剤であるポリエーテル系トリブロック共重合体を取り込んだままの状態である。ポリエーテル系トリブロック共重合体は、それ自体がイオン伝導体として機能し、細孔内を通じた高イオン伝導パスの形成が期待されるため、SBA−15およびSBA−15Nの適用がより好ましい。
前記SBA−15は、具体的には、超分子鋳型として、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)から成り、EOn−POm−EOn型の構造(n、mは、1以上の自然数)を持つ、非イオン性界面活性剤を用いて製造することができる。通常、前記EOn−POm−EOnを塩酸水溶液に溶解し、(C2H5O)4Si(通称、TEOS)を滴下し、この混合溶液を、所定時間撹拌後、乾燥してSiO2を骨格とするメソ多孔体無機フィラーを製造することができる。ここで、この混合溶液のモル比は、EOn−POm−EOn:TEOS:HCl:H2O=1:60:350:9400であることが合成条件の点で好ましい。
イオン伝導性物質は、メソ多孔体のメソ細孔の内部および/またはメソ多孔体の表面にイオン伝導パスを形成するものであり、例えば、イオン性液体およびイオン伝導性表面修飾剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。イオン性液体は、室温前後で融解できる、塩類、塩類の組成物、あるいは、塩類を生成する成分の組成物の液体であり、室温で蒸気圧がゼロを示し、高い溶解力と広い液体範囲を有するという特徴を備える。このイオン性液体としては、イミダゾリウム化合物、4級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物が挙げられ、例えば、対アニオンとしてBF4、PF6、CF3SO3、CF3SO2NSO2CF3(TFSI)、C2F5SO2NSO2C2F5(BETI)、ClO4等を有するイミダゾリウム化合物または4級アンモニウム化合物、また、ハロゲンアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン若しくはテトラフルオロボレートアニオンを有するアンモニウム塩、ホスホニウム塩、N,N'−ジアルキルイミダゾリウム塩またはN−アルキルピリジニウム塩等の化合物が挙げられる。例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、N−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドまたはN−ブチルピリジニウムクロリドである。
このイオン性液体の具体例として、下記式(1)〜(7)(式中、Xは対アニオンを示し、Rは水素原子、または置換もしくは未置換の炭化水素基を示す)で表わされる化合物等が挙げられる。
(式中、nは1以上の整数である)
前記式(1)で表わされるイオン性液体の具体例として、下記式で表わされる1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF4塩(EImBF4)が挙げられる。
前記式(1)で表わされるイオン性液体の具体例として、下記式で表わされる1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF4塩(EImBF4)が挙げられる。
また、イオン伝導性表面修飾剤としては、末端に前記多孔体を構成する金属酸化物に結合する官能基を有する化合物が挙げられる。例えば、有機シランカップリング剤等が挙げられる。有機シランカップリング剤としては、例えば、下記式(1)または式(2)で表わされるシラン化合物が挙げられる。
R1−Si−(X)3 (1)
(X)3−Si−R2−Si−(X)3 (2)
式(1)または式(2)において、R1は、1価の炭化水素基または1価の芳香族基、例えば末端にアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基等の機能性官能基を有する炭化水素基または芳香基族であり、R2は、2価の炭化水素基または2価の芳香族基である。Xはアルコキシ基である。Xのアルコキシ基の具体例としては、例えばメトキシ基(−OCH3)、エトキシ基(−OC2H5)、プロポキシ基(−OC3H7)等が挙げられる。なお、前記式(1)および前記式(2)中の各Xは、それぞれ同一でもよく、あるいは、それぞれ異なっていてもよい。
R1−Si−(X)3 (1)
(X)3−Si−R2−Si−(X)3 (2)
式(1)または式(2)において、R1は、1価の炭化水素基または1価の芳香族基、例えば末端にアミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基等の機能性官能基を有する炭化水素基または芳香基族であり、R2は、2価の炭化水素基または2価の芳香族基である。Xはアルコキシ基である。Xのアルコキシ基の具体例としては、例えばメトキシ基(−OCH3)、エトキシ基(−OC2H5)、プロポキシ基(−OC3H7)等が挙げられる。なお、前記式(1)および前記式(2)中の各Xは、それぞれ同一でもよく、あるいは、それぞれ異なっていてもよい。
また、イオン伝導性表面修飾剤として、前記イミダゾリウム化合物、4級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物に由来する官能基を有するシランカップリング剤を用いることもできる。これによって、本発明のフィラーとして、有機・無機ハイブリッド型メソ多孔体フィラーを得ることができる。さらに、末端にスルホン酸基を有するカップリング剤を用いて形成される本発明のフィラーは、プロトン伝導性を発現させるためのフィラーとして有用である。例えば、燃料電池等に用いられる固体電解質に配合してプロトン伝導を発現させるためのフィラーとして用いることができる。
本発明のフィラーにおいて、イオン伝導性物質は、メソ細孔の内部および/またはメソ多孔体の表面に充填または結合して、イオン伝導性を向上させるものであり、特に、イオン伝導性高分子に配合した場合に、イオン伝導パスの形成を促進することができる。
本発明のフィラーの製造は、前記メソ多孔体をイオン伝導性物質中に均一に分散させ孔内までイオン伝導性物質を浸透させて行なうことができる。このとき、分散時の温度は−20〜100℃である。これによって、図1に示すとおり、イオン伝導性物質1が、メソ多孔体2のメソ細孔3やメソ多孔体2の表面に結合して、イオン伝導性物質によって修飾されたメソ多孔体4(本発明のフィラー)を得ることができる。例えば、イオン伝導性物質として、前記有機シランカップリング剤を用いる場合には、メソ多孔体を均一に分散させた有機溶媒中に有機シランカップリング剤を滴下し、シラン基を加水分解させてメソ細孔内および/またはメソ多孔体の表面に共有結合させて、R1、R2等の基を有するメソ多孔体を得ることができる。
有機溶媒としては、用いるイオン伝導性物質が有する官能基、メソ多孔体の骨格を構成する酸化物等に応じて、適宜用いることができる。例えば、アセトン等を、用いるイオン伝導性物質等に応じて、1種または2種以上の組み合わせを適宜選択することができる。
本発明のフィラーにおいて、イオン伝導性物質の重量比は、メソ多孔体100質量部に対して、50〜100質量部の割合であることが好ましい。
[イオン伝導性高分子組成物]
本発明の組成物は、前記イオン伝導性フィラーと、高分子物質とを含むものである。この高分子物質は、ガラス転移温度が−150℃〜+150℃の範囲の結晶性または非結晶性の高分子物質であり、特に制限されず、熱可塑性重合体または熱硬化性重合体、天然ゴム、液晶高分子、その他の天然または合成高分子重合体を含む。また、1種の高分子物質または2種以上の高分子物質のブレンド物、さらに、それらの高分子物質に各種の物質を化学修飾または添加したものであってもよい。
本発明の組成物は、前記イオン伝導性フィラーと、高分子物質とを含むものである。この高分子物質は、ガラス転移温度が−150℃〜+150℃の範囲の結晶性または非結晶性の高分子物質であり、特に制限されず、熱可塑性重合体または熱硬化性重合体、天然ゴム、液晶高分子、その他の天然または合成高分子重合体を含む。また、1種の高分子物質または2種以上の高分子物質のブレンド物、さらに、それらの高分子物質に各種の物質を化学修飾または添加したものであってもよい。
熱可塑性重合体としては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、ブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種を構成単位とする重合体および/または共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ポリ(メタ)アクリル酸;熱可塑性ポリウレタン;ポリ塩化ビニル;フッ素樹脂;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリエーテルスルホン等のポリスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンエーテル;ポリシロキサン;ポリエステル;ポリ乳酸等が挙げられる。スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、ブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種を構成単位とする重合体および/または共重合体からなる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル/ブタジエン/スチレン共重合体およびスチレン/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエポキシド、ポリフェノール、ポリ尿素、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリビスマレイミド、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
合成ゴムの具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレン−ブタジエン−ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴムおよびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム等のエピハロヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、また、これらの重合体または共重合体を構成するモノマーを組み合わせた共重合体ゴムを用いることもできる。さらに、ウレタンゴムとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の親水性ポリオールを構成成分として含むウレタンやウレタンゴム(凍り込み型ウレタン)等も挙げられる。
本発明の組成物において、マトリックスとして用いられる高分子物質は、イオン伝導性高分子および非イオン伝導性高分子から選ばれる少なくとも1種の高分子物質を用いることができ、1種または2種以上のイオン伝導性高分子、または1種または2種以上の非イオン伝導性高分子、もしくはイオン伝導性高分子と非イオン伝導性高分子の混合物を用いることができる。高分子物質として、非イオン伝導性高分子を含む本発明の組成物は、高いイオン伝導性を有するため、各種の用途に適用することができる。また、イオン伝導性フィラーは、金属酸化物の多孔体からなるため、本発明のイオン伝導性高分子組成物は、機械的強度、寸法安定性に優れ、かつ、フィルム状にも成形できるので、各種の用途に適用することができる。例えば、高分子物質として、エチレン−酢酸ビニル共重合体やポリ(メタ)アクリル酸等のを含む本発明の組成物は、高いイオン伝導性と、機械的強度、寸法安定性、成形性等に優れる利点を生かして、各種の機器に用いられるイオン伝導性材料として適用が可能である。例えば、コピー機、ファクス、プリンターなどの電子写真装置に用いられる帯電ローラ(帯電部材)、現像ローラ(現像部材)、転写ローラ(転写部材)、ベルトなどの導電性が要求される部材の構成材料;電磁遮蔽材料、電子部品を保護するために帯電防止機能が必要とされる包装部材若しくは衝撃吸収部材;電子計算機、電子式デジタル時計、電子カメラ、コンピューターキーボードなどの分野において、回路装置、例えばプリント回路基板とリードレスチップキャリアー、液晶パネルなどとの相互間の電気的な接続を達成するためのコネクターなどの各種の分野に好適に用いることができる。
また、高分子物質として、透明性が高く、生分解性を示すポリ乳酸を含む本発明の組成物は、使用時は、高いイオン伝導性とともに、十分な機械的特性、寸法安定性および成形性を示すとともに、利用後に廃棄すれば、微生物によって分解して環境を汚染する原因とならないため、地球環境にやさしい材料として有用である。
さらに、高分子物質として、ポリエチレンやポリスチレンなどの汎用の高分子を含む本発明の組成物においても、本発明のフィラーは高い分散性を示すため、本発明のフィラーの配合量を容易に調整して導電率を制御することが可能である。また、2種類以上の非相溶性系高分子物質を用いる場合には、一方の高分子相に本発明のフィラーを偏在させることができ、ネットワーク構造を容易に形成するため、より少ない充填量で目的の導電率を得ることが可能となる。
特に、高分子物質として、イオン伝導性高分子を含む本発明の組成物は、イオン伝導性フィラーによって、イオン伝導性がさらに向上した組成物を実現できる。
本発明の組成物の成分として用いられるイオン伝導性高分子は、マトリックスとなる高分子と、支持電解質として作用する金属塩とを備えて構成される。この組成物においては、前記金属塩によってイオン伝導性高分子のマトリックスに供給されるイオンが、このマトリックスの極性を有する基または電荷を有する基と強い相互作用をするので、イオンの解離度が高くなり、イオン伝導性をさらに向上させることができる。
また、前記イオン伝導性高分子のマトリックスとなる高分子は、ポリエチレンオキサイド(PEO)またはポリプロピレンオキシド(PPO)を主鎖または側鎖に有する直鎖型、分岐型、架橋型等の誘導体が好ましい。中でも、PEOは、金属塩としてアルカリ金属塩と複合化したときに比較的高いイオン伝導度となるので、特に好ましい。
前記アルカリ金属塩は、マトリックスとなるイオン伝導性高分子との分散性または相溶性が良いものが好ましく、ナトリウム、リチウムまたはカリウムの適当な塩を含み、より好ましくは、リチウム塩である。このような塩としては、たとえば、従来公知のLiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiI、LiCF3SO3、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)2、およびこれらの誘導体等からなる群より選ばれた1種または2種以上であることが、化学的安定性、高純度品の入手の容易さ、そしてコストの点でさらに好ましい。特に、アルカリ金属塩として、イオン伝導性高分子や有機溶媒への溶解度、安定性およびイオン伝導度を勘案すると、リチウム塩を用いることが好ましい。
前記イオン伝導性高分子の具体例としては、分子量105〜107のPEOと、金属塩として、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiI、LiCF3SO3、LiN(C2F5SO2)2およびLiC(CF3SO2)2のうちの1種または2種を用いることが、特に好ましい。そして、所定の分子量のPEOと、それと相溶性の良いリチウム塩のそれぞれの所定量を、有機溶媒に溶解し、充分に混合した後、前記有機溶媒を蒸発させることで、固体状のイオン伝導性電解質を製造することができる。ここで、前記有機溶媒は、前記高分子および前記リチウム塩の溶解度が高く、蒸発し易いアセトンのような有機溶媒を使うことが好ましい。
前記PEOと前記リチウム塩との配合割合は、前記PEOのエチレンオキサイド(EO)ユニットとLi+とのモル比を[Li+]/[EO]で表すと、[Li+]/[EO]=0.02〜0.2の範囲が好ましい。ただし、前記モル比の範囲は、前記PEOおよび前記リチウム塩の種類により異なるので、得られるイオン伝導度が最も高くなるように、前記モル比の最適値を選ぶことがさらに好ましい。
本発明のイオン伝導性複合材組成物は、前記のイオン伝導性フィラーと高分子物質を必須成分とするが、必要に応じて、その他の任意成分として、各種用途での有用性を高めるために、各種の添加剤を配合することができる。この添加剤は、特に限定されないが、例えば、難燃剤、UV吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、離型剤、スリップ剤、粘着防止剤、滑剤、曇り防止剤、着色剤、天然油、合成油、ワックス、無機充填材およびこれらの混合物などが挙げられる。
[超臨界状態のCO2による処理]
本発明のイオン伝導性高分子組成物は、超臨界状態のCO2と、所定時間、接触させることにより、さらにイオン伝導性を向上させることができる。例えば、高分子物質としてイオン伝導性高分子を含む本発明の組成物を、超臨界状態のCO2と、所定時間、接触させて処理することにより、イオン伝導性が向上する。この超臨界状態のCO2による処理を施すことにより、前記イオン伝導性高分子組成物中の金属塩のイオンの分散状態が改善され、前記イオンの移動度が向上することでイオン伝導性が向上すると考えられる。なお、CO2の超臨界状態は、温度31℃以上、かつ圧力7.4MPa以上で、生成させることが好ましく、特に、温度40〜100℃および圧力10〜20MPaの範囲が好ましい。この超臨界状態のCO2による処理は、前記イオン伝導性高分子の製造条件を大幅に変えることなく簡便に施すことができるので、製造コストの低減に寄与できる。
本発明のイオン伝導性高分子組成物は、超臨界状態のCO2と、所定時間、接触させることにより、さらにイオン伝導性を向上させることができる。例えば、高分子物質としてイオン伝導性高分子を含む本発明の組成物を、超臨界状態のCO2と、所定時間、接触させて処理することにより、イオン伝導性が向上する。この超臨界状態のCO2による処理を施すことにより、前記イオン伝導性高分子組成物中の金属塩のイオンの分散状態が改善され、前記イオンの移動度が向上することでイオン伝導性が向上すると考えられる。なお、CO2の超臨界状態は、温度31℃以上、かつ圧力7.4MPa以上で、生成させることが好ましく、特に、温度40〜100℃および圧力10〜20MPaの範囲が好ましい。この超臨界状態のCO2による処理は、前記イオン伝導性高分子の製造条件を大幅に変えることなく簡便に施すことができるので、製造コストの低減に寄与できる。
以下、本発明の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(製造例1)SBA−15およびSBA−15Nの製造
式:EO20−PO70−EO20で表わされる構造を有するトリブロック共重合体(BASF社製、商品名「P123」)を、室温下、6M塩酸水溶液に溶解した後、さらに、(C2H5O)4Si(TEOS)をゆっくりと滴下しながら、35℃で24時間撹拌して混合溶液を調製した。ここで、この混合溶液における溶質および溶媒のモル組成比は、TEOS:P123:HCl:H2O=1:60:350:9400である。そして、撹拌終了後、混合溶液を80℃で48時間静置して、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、100℃で24時間真空乾燥して、SBA−15Nの粉末を得た。さらに、このSBA−15Nを、400℃で4時間焼成して、超分子鋳型である界面活性剤P123を除去し、メソ細孔を有する粉末状のSBA−15を得た。
式:EO20−PO70−EO20で表わされる構造を有するトリブロック共重合体(BASF社製、商品名「P123」)を、室温下、6M塩酸水溶液に溶解した後、さらに、(C2H5O)4Si(TEOS)をゆっくりと滴下しながら、35℃で24時間撹拌して混合溶液を調製した。ここで、この混合溶液における溶質および溶媒のモル組成比は、TEOS:P123:HCl:H2O=1:60:350:9400である。そして、撹拌終了後、混合溶液を80℃で48時間静置して、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、100℃で24時間真空乾燥して、SBA−15Nの粉末を得た。さらに、このSBA−15Nを、400℃で4時間焼成して、超分子鋳型である界面活性剤P123を除去し、メソ細孔を有する粉末状のSBA−15を得た。
(実施例1)
製造例1で得られたSBA−15 0.1gと、イオン性液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF4塩:EImBF4)1.0gとを、室温下、24時間撹拌して混合してゲル状の混合液を得た。得られた混合液を、室温下、4000rpmで15分間遠心分離機に掛けて過剰のEImBF4を除去して褐色のペースト状の沈殿物を得た。ペースト状の沈殿物をろ紙の間に挟み、100℃で24時間真空乾燥して、褐色の固体を得た。この褐色の固体を、アセトン/へキサンの1/1(体積比)混合液で3回洗浄した後、80℃で24時間真空乾燥して、イオン伝導性フィラーを得た。
製造例1で得られたSBA−15 0.1gと、イオン性液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF4塩:EImBF4)1.0gとを、室温下、24時間撹拌して混合してゲル状の混合液を得た。得られた混合液を、室温下、4000rpmで15分間遠心分離機に掛けて過剰のEImBF4を除去して褐色のペースト状の沈殿物を得た。ペースト状の沈殿物をろ紙の間に挟み、100℃で24時間真空乾燥して、褐色の固体を得た。この褐色の固体を、アセトン/へキサンの1/1(体積比)混合液で3回洗浄した後、80℃で24時間真空乾燥して、イオン伝導性フィラーを得た。
(実施例2)
まず、実施例1で得られたイオン伝導性フィラーと、分子量5×105のポリエチレンオキサイド(PEO)に支持電解質である金属塩としてLiCF3SO3を含むイオン伝導性高分子とを、イオン伝導性フィラーの配合割合が5質量%、10質量%、15質量%、22質量%および28質量%となるようにそれぞれ配合して5種類の組成物を調製した。
まず、実施例1で得られたイオン伝導性フィラーと、分子量5×105のポリエチレンオキサイド(PEO)に支持電解質である金属塩としてLiCF3SO3を含むイオン伝導性高分子とを、イオン伝導性フィラーの配合割合が5質量%、10質量%、15質量%、22質量%および28質量%となるようにそれぞれ配合して5種類の組成物を調製した。
各組成物を、直径3mmのガラスビーズ20個を入れたポリエチレン容器に乾燥アルゴンガス雰囲気下で封入した後、室温下で回転数100rpmのモーター軸に乗せて24時間粉砕混合した。次に、組成物を、アルゴン雰囲気下、80〜90℃で20分間加圧してフィルムを製造した。
(比較例1)
実施例1で得られたイオン伝導性フィラーを用いない以外は、実施例2と同様にして、分子量5×105のポリエチレンオキサイド(PEO)−LiCF3SO3イオン伝導性高分子からなるフィルムを製造した。
実施例1で得られたイオン伝導性フィラーを用いない以外は、実施例2と同様にして、分子量5×105のポリエチレンオキサイド(PEO)−LiCF3SO3イオン伝導性高分子からなるフィルムを製造した。
(比較例2)
実施例1で得られたイオン伝導性フィラーの代わりに、製造例1で得られたSBA−15を用いて、SBA−15の配合割合が5質量%、10質量%および15質量%となる3種の組成物を調製し、この組成物を用いて、実施例2と同様にして、フィルムを製造した。
実施例1で得られたイオン伝導性フィラーの代わりに、製造例1で得られたSBA−15を用いて、SBA−15の配合割合が5質量%、10質量%および15質量%となる3種の組成物を調製し、この組成物を用いて、実施例2と同様にして、フィルムを製造した。
実施例2、比較例1および比較例2で得られたフィルムの物性を測定した。
図2は、これらの各フィルムについて、交流イオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。このグラフは、約30℃〜約100℃の温度範囲で交流イオン伝導度σ(S/cm)を測定し、その常用対数値を縦軸にとり、測定温度の絶対温度をTとして1000/Tを横軸にとって作成した。図2において、イオン伝導性フィラーの配合割合が5質量%、10質量%および15質量%のフィルムについての測定結果を、それぞれ実施例2−1、実施例2−2および実施例2−3とし、また、比較例2におけるSBA−15の配合割合が5質量%、10質量%および15質量%の場合を、それぞれ比較例2−1、比較例2−2および比較例2−3とした。比較サンプルとして、PEOおよび(PEO)−LiCF3SO3についても交流イオン伝導度を測定した。
図2は、これらの各フィルムについて、交流イオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。このグラフは、約30℃〜約100℃の温度範囲で交流イオン伝導度σ(S/cm)を測定し、その常用対数値を縦軸にとり、測定温度の絶対温度をTとして1000/Tを横軸にとって作成した。図2において、イオン伝導性フィラーの配合割合が5質量%、10質量%および15質量%のフィルムについての測定結果を、それぞれ実施例2−1、実施例2−2および実施例2−3とし、また、比較例2におけるSBA−15の配合割合が5質量%、10質量%および15質量%の場合を、それぞれ比較例2−1、比較例2−2および比較例2−3とした。比較サンプルとして、PEOおよび(PEO)−LiCF3SO3についても交流イオン伝導度を測定した。
この図2から、本発明のイオン伝導性フィラーを添加することにより、イオン伝導性高分子((PEO)−LiCF3SO3)の低温域での交流イオン伝導度σが向上することがわかる。
図3は、イオン伝導性フィラーの添加量(フィラー含有率(質量%))を変えたイオン伝導性高分子((PEO)LiCF3SO3)についての交流イオン伝導度を示す。
(a)のグラフは温度90℃における交流イオン伝導度、(b)のグラフは温度40℃における交流イオン伝導度を、それぞれ示す。また、比較のために比較例1および比較例2のフィルム、ならびにイオン伝導性高分子((PEO)−LiCF3SO3)にSiO2粒子(一次粒径:10nm)を5〜10質量%配合した組成物から得られるフィルムについて温度90℃で測定した交流イオン伝導度を示す。
(a)のグラフは温度90℃における交流イオン伝導度、(b)のグラフは温度40℃における交流イオン伝導度を、それぞれ示す。また、比較のために比較例1および比較例2のフィルム、ならびにイオン伝導性高分子((PEO)−LiCF3SO3)にSiO2粒子(一次粒径:10nm)を5〜10質量%配合した組成物から得られるフィルムについて温度90℃で測定した交流イオン伝導度を示す。
図4は、実施例2−1、実施例2−2および実施例2−3、比較例2−1、比較例2−2および比較例2−3、ならびにPEOおよび(PEO)−LiCF3SO3について、DSC(示査走査熱量計)によって昇温速度:10℃/minで熱分析を行った結果を示す。
この図4に示す結果から、ガラス転移温度Tg(℃)、融点Tm(℃)、自由エネルギー変化(J/g)を求めたところ、下記表1に示すとおりである。
(実施例3)
ポリビニルアルコール(重合度1500、以下、「PVA」という)に、前記実施例1で得られたイオン伝導性フィラーを10質量%となるように配合して、組成物を調製した。
この組成物を、直径3mmのガラスビーズ20個を入れたポリエチレン容器に乾燥アルゴンガス雰囲気下で封入した後、室温下で回転数100rpmのモーター軸に乗せて24時間粉砕混合した。次に、組成物を、アルゴン雰囲気下、80〜90℃で20分間加圧してフィルムを製造した。このフィルムについて、室温での直流体積導電率σを測定したところ、7.6×10-5S/cmであった。
ポリビニルアルコール(重合度1500、以下、「PVA」という)に、前記実施例1で得られたイオン伝導性フィラーを10質量%となるように配合して、組成物を調製した。
この組成物を、直径3mmのガラスビーズ20個を入れたポリエチレン容器に乾燥アルゴンガス雰囲気下で封入した後、室温下で回転数100rpmのモーター軸に乗せて24時間粉砕混合した。次に、組成物を、アルゴン雰囲気下、80〜90℃で20分間加圧してフィルムを製造した。このフィルムについて、室温での直流体積導電率σを測定したところ、7.6×10-5S/cmであった。
(比較例3)
実施例3で用いたPVAを、イオン伝導性フィラーを配合しないでそのまま用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルムを製造した。このフィルムについて、室温での直流体積導電率σを測定したところ、5.2×10-11S/cmであった。
実施例3で用いたPVAを、イオン伝導性フィラーを配合しないでそのまま用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルムを製造した。このフィルムについて、室温での直流体積導電率σを測定したところ、5.2×10-11S/cmであった。
(比較例4)
実施例3で用いたPVAに、製造例1で得られたSBA−15を10質量%の割合となるように配合して組成物を調製し、その組成物を用いてフィルムを製造した。このフィルムについて、室温での直流体積導電率σを測定したところ、7.6×10-5S/cmであった。
実施例3で用いたPVAに、製造例1で得られたSBA−15を10質量%の割合となるように配合して組成物を調製し、その組成物を用いてフィルムを製造した。このフィルムについて、室温での直流体積導電率σを測定したところ、7.6×10-5S/cmであった。
以上の実施例3、比較例2および比較例3で得られたフィルムの物性を測定した。
図5は、これらの各フィルムについて、イオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。このグラフは、約30℃〜約100℃の温度範囲で直流体積導電率σ(S/cm)を測定し、その常用対数値(logσ)を縦軸にとり、温度を横軸にとって作成した。
この図5から、比較例3および比較例4のフィルムについて測定された直流体積導電率σは、70℃付近で導電率の低下を示している。これは、PVAのガラス転移に基づく相変化に由来すると考えられ、PVAの導電性は、高分子鎖の運動性に依存していると推測される。一方、イオン伝導性フィラーを含む実施例3の組成物では、直流体積導電率σが10-4オーダーの値を示し、温度依存性は、比較例3および比較例4と比較しても非常に小さい。これは、実施例3のPVAとイオン伝導性フィラーとを含む組成物の直流体積導電率σの向上は、イオン伝導性フィラーを構成するメソ多孔体シリカ内に充填されたイオン性液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF4塩:EImBF4)によってイオン伝導パスが形成されていることに由来する、と考えられる。
図5は、これらの各フィルムについて、イオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。このグラフは、約30℃〜約100℃の温度範囲で直流体積導電率σ(S/cm)を測定し、その常用対数値(logσ)を縦軸にとり、温度を横軸にとって作成した。
この図5から、比較例3および比較例4のフィルムについて測定された直流体積導電率σは、70℃付近で導電率の低下を示している。これは、PVAのガラス転移に基づく相変化に由来すると考えられ、PVAの導電性は、高分子鎖の運動性に依存していると推測される。一方、イオン伝導性フィラーを含む実施例3の組成物では、直流体積導電率σが10-4オーダーの値を示し、温度依存性は、比較例3および比較例4と比較しても非常に小さい。これは、実施例3のPVAとイオン伝導性フィラーとを含む組成物の直流体積導電率σの向上は、イオン伝導性フィラーを構成するメソ多孔体シリカ内に充填されたイオン性液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF4塩:EImBF4)によってイオン伝導パスが形成されていることに由来する、と考えられる。
(実施例4)
下記組成式で表わされるエピクロロヒドリン系ゴム(日本ゼオン(株)製、Gechron3106)に、実施例1で得られたイオン伝導性フィラーを2.8質量%配合した組成物を調製した。
この組成物を用いて、実施例3と同様にしてフィルムを製造し、室温での直流体積導電率σを測定したところ、9.2×10-7S/cmであった。
また、エピクロロヒドリン系ゴム単体を用いて、実施例3と同様にしてフィルムを製造し、室温での直流体積導電率σを測定したところ、直流体積導電率σは1.2×10-8S/cmであった。
したがって、イオン伝導性フィラーを2.8質量%配合したエピクロロヒドリン系ゴムの組成物からなるフィルムは、エピクロロヒドリン系ゴム単体の約80倍の直流体積導電率σを示し、イオン伝導性の向上にイオン伝導性フィラーが有効であることがわかった。
下記組成式で表わされるエピクロロヒドリン系ゴム(日本ゼオン(株)製、Gechron3106)に、実施例1で得られたイオン伝導性フィラーを2.8質量%配合した組成物を調製した。
また、エピクロロヒドリン系ゴム単体を用いて、実施例3と同様にしてフィルムを製造し、室温での直流体積導電率σを測定したところ、直流体積導電率σは1.2×10-8S/cmであった。
したがって、イオン伝導性フィラーを2.8質量%配合したエピクロロヒドリン系ゴムの組成物からなるフィルムは、エピクロロヒドリン系ゴム単体の約80倍の直流体積導電率σを示し、イオン伝導性の向上にイオン伝導性フィラーが有効であることがわかった。
1 イオン伝導性物質
2 メソ多孔体
3 メソ細孔
4 イオン伝導性物質によって修飾されたメソ多孔体
2 メソ多孔体
3 メソ細孔
4 イオン伝導性物質によって修飾されたメソ多孔体
Claims (10)
- メソ細孔を有する金属酸化物の多孔体であって、前記メソ細孔の内部および/または多
孔体の表面にイオン伝導性物質を有することを特徴とするイオン伝導性フィラー。 - 前記イオン伝導性物質が、イオン性液体およびイオン伝導性表面修飾剤から選ばれる少
なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のイオン伝導性フィラー。 - 前記金属酸化物が、Si、Ti、Zr、Sn、AlおよびWから選ばれる少なくとも1
種の元素の酸化物または複合酸化物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記
載のイオン伝導性フィラー。 - メソ細孔を有する金属酸化物の多孔体であって、前記メソ細孔の内部および/または多
孔体の表面にイオン伝導性物質を有するイオン伝導性フィラーと、
−150℃〜+150℃の範囲のガラス転移温度を有する結晶性または非結晶性の高分子物質とを含むイオン伝導性高分子組成物。 - 前記高分子物質が、イオン伝導性高分子および非イオン伝導性高分子から選ばれる少なくとも1種の高分子物質であることを特徴とする請求項4に記載のイオン伝導性高分子組成物。
- 前記高分子物質が、非イオン伝導性高分子であることを特徴とする請求項5に記載のイオン伝導性高分子組成物。
- 前記高分子物質が、イオン伝導性高分子であることを特徴とする請求項5に記載のイオン伝導性高分子組成物。
- 前記イオン伝導性高分子は、ポリエーテル結合を有する高分子と金属塩の複合体であることを特徴とする請求項7に記載のイオン伝導性高分子組成物。
- 前記金属塩は、1種または2種以上のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項8に記載のイオン伝導性高分子組成物。
- 前記イオン伝導性高分子組成物は、超臨界状態のCO2によって所定時間接触処理されたことを特徴とする請求項4〜請求項9のいずれか1項に記載のイオン伝導性高分子組成物。
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