JP3960759B2 - シリカゲルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐水性などに優れた新規なシリカゲルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカゲルは古くより乾燥剤として広く用いられてきたが、最近は、触媒担体、分離剤、吸着剤等とその用途が広がっている。そこで、各用途に応じた、シリカゲルの性能に対する要求も多様化している。シリカゲルの性能は、シリカゲルの表面積、細孔径、細孔容積、細孔径分布等の物性に大きく影響されるが、これらの物性はシリカゲルの製造条件に大きく影響される。
【0003】
このシリカゲルの製造方法としては、最も一般的には、ケイ酸ソーダ等のケイ酸アルカリ塩を鉱酸で加水分解し、得られるシリカヒドロゾルをゲル化し、乾燥する方法であるが、シリカゲルの性能を改良するため、製造方法の詳細につき多くの提案がなされている。
例えば、特開昭62−113713号公報では、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との反応により生成したシリカヒドロゾルをゲル化し、これをpH2.5以下の酸溶液で処理し、水洗後、緩衝作用を有する水溶液中でpH4―9に調整して水熱処理することにより、細孔分布の狭いシリカゲルを製造する方法が提案されている。
【0004】
また、特開平9−30809号公報では、シリカヒドロゲルの乾燥を回分式流動乾燥、次いで水熱処理する方法を提案している。この方法でも得られるシリカゲルの性能に変化は認められ、よりシャープな細孔分布を有するシリカゲルが得られる。とは言いながら、細孔容積、比表面積及び平均細孔径を十分変化できるまでには至らず、所望の物性範囲のシリカゲルを得る方法としては十分ではなかった。
【0005】
一方、上記で説明したケイ酸アルカリ塩を原料として得られるシリカゲルには、通常、原料に由来するナトリウム、カルシウム、マグネシウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどの不純物が相当量含まれている。シリカゲル中の金属不純物の合計は、その含有量がたとえ数百ppm程度の微量であっても、シリカゲルの性能に大きな影響を与えうる。例えば、1)高温下においてはシリカゲルの結晶化を促進する、2)水存在下ではシリカゲルの水熱反応を促進して、細孔径や細孔容積の拡大、比表面積の低下、細孔分布の拡大をもたらす、3)これらの不純物は、焼結温度を低下させる可能性があるので、これらを含むシリカゲルを加熱すると比表面積の低下を促進させうる、などが挙げられる。そして、かかる影響は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の不純物で、特にその傾向が強い。更に、不純物としてチタンやアルミニウムがシリカゲルの表面又はシロキサン結合中に存在すると、酸性点が増加し、触媒担体や吸着剤として用いた場合にシリカゲル自身が好ましからざる触媒作用を発現することもありうる。
【0006】
KIMら(Ultrastable Mesostructured Silica Vesicles Science,282,1302)(1998)には、電気的に中性のgemini界面活性剤と、テトラエチルオルトシリケートの前駆体との水素結合からなるスーパーモレキュラーの細道によって、耐熱性(1000℃)、耐水性(100℃で150時間以上)のメソポーラスのモレキュラーシーブの製造について記載されている。
【0007】
そこで、不純物を含まないシリカゲルの製造方法として、珪酸アルカリ塩を中和して得るゲルを精製する方法や、シリコンアルコキシドを加水分解する方法が知られているが、特に、後者の方法は、シリコンアルコキシドは蒸留等により精製することができるため、比較的容易に高純度のシリカゲルを得ることが可能である。しかしながら、シリコンアルコキシドからゾル−ゲル法により得られるシリカゲルは、一般に、平均細孔径が小さく、かつ細孔分布も広い。また、このシリカゲルに水熱処理を施しても目立った性能の改良は殆ど報告されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の従来技術の問題点を踏まえ、細孔容積と比表面積が大きいだけでなく、細孔分布が狭く、耐熱性、耐水性などに優れたシリカゲルの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリコンアルコキシドを加水分解し、得られたヒドロゲルを実質的に熟成することなくその破壊応力が6MPa以下の状態で、温度50〜150℃で1〜10時間水熱処理するシリカゲルの製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明のシリカゲルの製造方法は、シリコンアルコキシドを加水分解し、得られたヒドロゲルを実質的に熟成することなく水熱処理することを特徴とする方法である。
【0011】
本発明のシリカゲルの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリまたはテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度のシリカゲルの原料として好適である。シリコンアルコキシド中の金属不純物の総含有量は、通常好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。金属不純物の含有量は、シリカゲル中の不純物の測定法と同じ方法で測定できる。
【0012】
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2〜10モル、好ましくは3〜8モルの水を用いて行う。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することでより高い温度で行うことも可能である。反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。反応時間はヒドロゲルの破壊応力が6MPaを越えない時間である。なお、反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる添加物の使用は、後述のように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明のシリカゲルの製造においてはあまり好ましいことではない。
【0013】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇とし、ゲル化してヒドロゲルとなり最終的に固化する。本発明のシリカゲルを製造するためには、上記の加水分解により生成したシリカのヒドロゲルが完全に固化しないように、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行うことが重要である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを熟成、乾燥させ、更にこれに水熱処理を施し、最終的に安定した硬さのシリカゲルとする従来の方法では、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを製造することができない。
【0014】
上記にある、加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行うということは、シリカのヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の、水熱処理に供するようにするということを意味する。シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を添加すること、または該加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるため好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
【0015】
ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段としては、後述の実施例に示すような方法で測定したヒドロゲルの硬度を参考にすることができる。即ち、破壊応力が、通常6MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを得ることができる。
【0016】
この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1〜10重量倍、好ましくは0.5〜5重量倍、特に好ましくは1〜3重量倍の水を加えてスラリー状とし、50〜150℃の温度で、1〜10時間実施される。水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールなどが含まれてもよい。また、メンブランリアクターなどを作る目的で、シリカゲルを膜状あるいは層状に粒子、基板、あるいは管などの母体上に形成させた材料の場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて条件変更により水熱処理を行うことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理では最適条件が通常は異なっているため、この方法で本発明のシリカゲルを得ることは一般的には難しい。
【0017】
以上の水熱処理条件において、温度を高くすると得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなる傾向がある。また、処理時間とともに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要があるが、水熱処理下では、シリカゲルの物性は変化しやすい状況にあるので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0018】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると本発明のシリカゲルを得ることが困難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRでのQ4 /Q3 値が極端に小さくなる。
【0019】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行うと、純水中で行う場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲルは一般に疎水性となるが、特に100〜150℃という比較的高温で水熱処理すると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001〜10%、特に好ましくは0.005〜5%である。
【0020】
水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常40〜200℃、好ましくは60〜120℃で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400〜600℃で焼成除去することができる。原料のシリコンアルコキシド由来の炭素分を除くためシリカヒドロゲルを加熱してもよい。更に、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明のシリカゲルを得る。
【0021】
結晶構造を有するシリカゲルは水中熱安定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成するのに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下でシリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に結晶構造を含むものとなる。従って、本発明においては、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、すなわち、これらがテンプレートとしての機能を発揮するほどの量は存在しない条件下で加水分解するのが好ましい。
【0022】
本発明のシリカゲルの製造方法により得られるシリカゲルは、細孔容積と比表面積が通常のものより大きい範囲のものであり、細孔容積は、窒素ガス吸・脱着法で測定して通常0.6〜1.6ml/g、好ましくは0.8〜1.6ml/gである。また、比表面積は、通常300〜900m2 /g、好ましくは400〜900m2 /gである。これら細孔容積と比表面積は窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0023】
更に、本発明の製造方法により得られるシリカゲルは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.H.Haklenda,J.Amer.Chem.Soc.,vol.73,373(1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上での最頻直径(Dmax)が通常20nm未満であり、下限は特に制限はないが、好ましくは2nm以上である。このことは、本発明のシリカゲルの最頻直径(Dmax)が、通常のシリカゲルより小さい範囲のものであることを意味する。
【0024】
本発明の製造方法により得られるシリカゲルは、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の容積が、全細孔容積の通常50%以上、好ましくは60%以上である。最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の容積は、全細孔容積の通常90%以下である。このことは、本発明の製造方法で得られるシリカゲルが、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。
【0025】
かかる特徴に関連して、本発明の製造方法により得られるシリカゲルは、上記のBJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常5.0〜12.0ml/gであることが好ましい(なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である。)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるもので、最頻直径(Dmax)のピークが極めてシャープであるものと言える。
【0026】
本発明の製造方法により得られるシリカゲルは、以上の細孔構造の特徴に加えて、その三次元構造を見るに、非結晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないという特徴を有する。このことは、本発明の製造方法で得られるシリカゲルをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。本発明において非結晶質ではないシリカゲルとは、X線回折パターンで6オングストローム(Å Units d−spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。非結晶質のシリカゲルは、結晶性のシリカゲルに較べて、極めて耐水性に優れている。
【0027】
その他、本発明の製造方法で得られるシリカゲルの構造に関しては、固体Si−NMRによる分析でも特徴ある結果が得られる。即ち、固体Si−NMRでは、本発明の製造方法で得られるシリカゲルの、−OSiが3個結合したSiと−OSiが4個結合したSiとのモル比を示す「Q4 /Q3」 の値が通常1.3以上、好ましくは1.5以上である。一般的に、「Q4 /Q3」の値が大きいほど、その熱安定性が高いものと言われている。「Q4 /Q3」の値は、通常10以下である。
【0028】
本発明の製造方法で得られるシリカゲルを特定する最後の特徴は、シリカゲルの骨格を構成するケイ素を除いた、金属不純物の合計含有量が通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、最も好ましくは1ppm以下というように、極めて高純度であることである。このように不純物の影響が少ないことは、本発明の製造方法により得られるシリカゲルにおける耐熱性、耐水性などの優れた性質を発現させることができる大きな要因の一つである。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0030】
(1) シリカのヒドロゲルの硬度測定
5Lセパラブルフラスコ中でシリコンアルコキシドと6モル倍の水を反応させ、反応液の温度が反応により生成するアルコールの沸点に達した後に、反応液をフラスコより抜き取り、抜き出した反応液を50ccのガラス製スクリュー管に一定量(液深で20mm程度)移し、密栓して実質的に一定温度にコントロールされた水浴に保持し、熟成時間の経過と共に破壊強度をデジタルフォースゲージ(株式会社エイ・アンド・ディー社製、型式:AD−4935)にて測定した。該測定器にはプローブ(ステンレス製直径5mmの丸棒)が装着されており、ヒドロゲル中にゆっくりと押し込まれることにより、容器中に保持されたヒドロゲルを圧縮破壊する。ヒドロゲルが圧縮されて破壊される迄の間に示される最大の応力値をもって破壊応力とした。
【0031】
測定結果を図1に示した。図1は、シリカのヒドロゲルの熟成時間の常用対数を横軸に、破壊応力を縦軸にプロットしてものである。図1より、熟成時間の経過とともに破壊応力が大きくなること、熟成速度が温度に依存していることがわかる。
【0032】
(2)シリカゲルの分析方法
1)細孔容積、比表面積
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細孔容積は相対圧P/P0 =0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0 =0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。
2)粉末X線回折
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行った。発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
3)金属不純物の含有量
試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行った。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
4)固体Si−NMR(Q4 /Q3 値)
Bruker社製MSL300固体NMR装置を使用し、共鳴周波数59.2MHz(7.05テスラ)、7mmCP/MAS(Cross Polarization/Magic Angle Spinning)プローブにて、測定を行った。
【0033】
(3) シリカゲルの製造、評価
実施例1〜3
ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。80rpmで撹拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6である。セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き撹拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、撹拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。このヒドロゲル450gと純水450gを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、表−1に示す条件で水熱処理を実施した。所定時間水熱処理した後、No.5A濾紙で濾過し、濾滓を水洗することなく100℃で恒量となるまで減圧乾燥した。
【0034】
得られたシリカゲルの諸物性を表−1に示す。細孔径分布を図2に、粉末X線回折スペクトルの低角側を図3に、広角側を図4に示す。粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、また周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められない。
なお、得られたシリカゲルの不純物濃度は、実施例1〜3のいずれのものも、ナトリウム0.2ppm、カリウム0.1ppm、カルシウム0.2ppmで、マグネシウム、アルミニウム、チタン及びジルコニウムは検出されなかった。
【0035】
実施例4
実施例1と同様にしてシリカヒドロゲルを製造した。1Lのオートクレーブにこのシリカゲル450gと1重量%アンモニア水450gを加え、60℃で3時間撹拌することなく、水熱処理を行った。乾燥後のシリカゲルの諸物性を表−1に、その細孔径分布を図2に示す。
【0036】
比較例1
実施例1で製造したシリカヒドロゲルを密封容器に入れ、冷暗所(10〜15℃)に2週間放置して熟成した後、実施例1と同様にして60℃で3時間水熱処理した。乾燥後のシリカゲルの諸物性を表−1に示す。
【0037】
比較例2〜4
富士シリシア化学(株)製の触媒担体用シリカゲルCARIACT Gシリーズ(破砕状)の諸物性を表−1に、それらの細孔径分布を図5に示す。
また、G−6の金属不純物濃度を測定したところ、ナトリウム170ppm、マグネシウム31ppm、アルミニウム15ppm、カリウム23ppm、カルシウム160ppm、チタン260ppm、ジルコニウム44ppmであった。
【0038】
比較例5
実施例1で使用したシリカヒドロゲルの一部を、60℃で48時間真空乾燥させた後、密封容器に入れ、150℃で3時間水熱処理した。乾燥後のシリカゲルの諸物性を表−1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(シリカゲルの耐熱性試験)
実施例1、2、比較例2,3のシリカゲル試料を各々5gを石英ビーカーに入れ、電気炉中で空気雰囲気下に200℃/分で所定の熱処理温度まで昇温させた。所定の熱処理温度に1時間保持したのち、直ちにビーカーを室温に取出し、放冷した。この試料につき窒素吸脱着によるBET法で比表面積を測定した結果を図6に示す。図6より実施例のシリカゲルの方が、比較例のシリカゲルより、熱処理をした際の比表面積の変化が小さいことがわかる。
【0041】
(シリカゲルの水中熱安定性試験)
実施例1〜3、比較例2〜4のシリカゲルに、各々純水を加えて40重量%のスラリーを調製した。容積60mlのステンレススチール製のミクロボンベに、上記で調製したスラリー約40mlを入れて密封し、280±1℃のオイルバス中に3日間浸漬した。ミクロボンベからスラリーの一部を抜出し、5A濾紙で濾過した。濾滓は100℃で5時間真空乾燥した。この試料について比表面積を測定した結果を表−2に示す。
【0042】
また、上記の試料について、発散スリット1deg、散乱スリット1degとした以外は前記と同様にして粉末X線パターンを測定した。実施例1〜3、比較例2のシリカゲルではいずれもピークが発現せず、非晶質パターンのままであった。これに対し、比較例3,4のシリカゲルでは、非晶質パターンの中に2θ=20.9°及び26.6°に明瞭なピークが発現した。このピークはα−Quartzのピークと一致するので、比較例3,4のシリカゲルは一部結晶化していると考えられる。これらのシリカゲルが高温・高圧の水熱条件下で結晶化を起し、かつ比表面積の著しい減少を起したのは、これらのシリカゲルがアルカリ金属などを高濃度に含んでいて構造や形状の変化を起しやすいことによるものと考えられる。
【0043】
(シリカゲルの圧壊強度試験)
実施例1、比較例2のシリカゲル1.4±0.2gをIR用錠剤成形器(錠剤直径20mm)に充填し、各々常温にて4.0ton/cm2で3分間加圧した。錠剤成形器から粉体を取り出し、比表面積と細孔容積を、窒素吸脱着法により測定した結果を表−3に示す。実施例1のシリカゲルは比表面積、細孔容積共に大きな変化がなかったのに対し、比較例2の市販のシリカゲルは、試験後に大きく低下した。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
工業的に得られるシリカゲルには高い機械的強度が要求される。そのまま用いられる場合は、粒子同士、または機器との接触により粒子が壊れて微粉が発生し、それによりシリカゲルが関与する設備の運転に問題をきたしうる。また、成型体として用いられる場合は、成型時にかけられる圧力に耐えられることが重要であり、十分な強度を持たないものは、元々のシリカゲルの細孔特性が生かされない成型体となってしまう。従来のシリカゲルは、十分な強度ではなかった。表−3からも明らかなように、本発明の製造方法によるシリカゲルは十分は圧壊強度を有するものである。
【0047】
【発明の効果】
本発明の新規なシリカゲルの製造方法は、従来からのシリカゲルと比較して、耐熱性、耐水性に優れ、安定性が高いうえ、高純度である。また、本発明のシリカゲルの製造方法は、シリコンアルコキシドを原料とした比較的簡単な工程で、且つ、所望の物性範囲に制御されたシリカゲルを製造することができる。
【0048】
本発明の製造方法により得られるシリカゲルは、従来からのシリカゲルの用途で利用できるが、特に、触媒担体、メンブランリアクターなどとして用いた場合、性能劣化が少なく、より安定に長時間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シリカのヒドロゲルを、35℃、45℃及び55℃の各温度で熟成させた場合の、各熟成時間とその際のヒドロゲルの破壊応力の関係を示す図である。
【図2】 本発明の実施例のシリカゲルの細孔分布を示す図である。
【図3】 本発明の実施例のシリカゲルの粉末X線回折スペクトル(低角側)を示す図である。
【図4】 本発明の実施例のシリカゲルの粉末X線回折スペクトル(広角側)を示す図である。
【図5】 比較例(市販シリカゲル)の細孔分布を示す図である。
【図6】 本発明の実施例のシリカゲル及び比較例のシリカゲルの、加熱による比表面積の変化を示す図である。
Claims (3)
- シリコンアルコキシドを加水分解し、得られたヒドロゲルを実質的に熟成することなくその破壊応力が6MPa以下の状態で、温度50〜150℃で1〜10時間水熱処理することを特徴とするシリカゲルの製造方法。
- 水熱処理にアンモニア水を使用する請求項1のシリカゲルの製造方法。
- テンプレートの非存在下でシリコンアルコキシドを加水分解する請求項1または2のシリカゲルの製造方法。
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