JP4099811B2 - 定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子及びその製造方法 - Google Patents

定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、ロッド状あるいはファイバー状多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子及びその製造方法に関するものである。より詳細には、アルカリ珪酸塩をシリカ源として使用し、そこから生成するシリカ溶存種、またシリカ溶存種と酸或はアルカリに溶解した金属塩を原料とするTi、Zr、Al、Fe、Zn、Cr、Mn、Co、Cu、Ni、V、Sn、Ru、Ce、Mo、W、Rh、Ag等種々の金属溶存種の1種類あるいは複数を同時に含む混合溶液相において、非イオン性界面活性剤の秩序形成能に基づいてミクロ構造の規則性と、マクロ形態の規則性を同時に得ることを利用した、ロッド状あるいはファイバー状の規則形態を持つ多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1992年に多孔体MCM-41の合成法がNature誌上に発表されて以来、メソポーラス材料への関心が高まり、中でも4級アンモニウム塩等のイオン系界面活性剤を使用した研究は数多く検討された。その一方で、無毒性、生分解性、除去が容易等の特徴を有し、4級アンモニウム塩に比較すると安価なオリゴマー或はポリマー系の非イオン系界面活性剤をテンプレートとして用いたメソ孔を有する多孔性材料が、1995年Science誌に取り上げられ、新たな注目を集めた。
(1) Bagshaw, S. A.; Prouzet, E.; Pinnavaia, T. J. Science 1995, 269, 1242.(非特許文献1)
特に、規則配列したメソ孔を有する材料に関しては、金属元素(イオン)等により細孔の表面修飾を行うことで、触媒担体、重金属イオンや蛋白質の吸着剤等への応用も検討され、今後はレーザー、光機能、各種センサーにまで応用分野が広がることが期待されている。
更に最近では、メソ細孔構造のみならず、ミクロンサイズのマクロ形態まで制御した、定形メソ多孔性材料の開発が行われている。
【0003】
しかしながら、これまでの研究において、シリカ源としてアルコキシシラン等の有機シリカを用いたものが多く、上記のような応用分野に利用するための量産化には向かないという理由から、最近になってアルカリ珪酸塩等の安価なシリカ源を出発原料とした研究がわずかながら報告され始めた。
アルカリ珪酸塩を出発原料とした研究報告例としては;
(2) Sierra, L.; Guth J.-L. Microporous Mesoporous Mater. 1999, 27, 243.では、塩酸に溶解した非イオン性ポリエチレンオキシドに、珪酸ナトリウム水溶液を添加し、更に必要に応じて水酸化ナトリウム或は水酸化アンモニウムを添加することで、マイクロ及びメソポーラスシリカを合成しているが、細孔構造は不規則なうえ、細孔径分布もかなりブロードで、更に熱安定性に劣る(非特許文献2)。
(3) Boissiere, C.; Larbot, A.; van der Lee, A.: Kooyman, P.J.; Prouzet,E. Chem. Mater. 2000, 12, 2902.では、塩酸に溶解し、2℃に維持した直鎖非イオン性ポリオキシエチレン酸性溶液に、珪酸ナトリウム水溶液を添加し、安定なミセル集合体を調整した後、20〜70℃に加温し、更にシリカの縮重合を進行させる為にフッ化ナトリウムを添加して3日間の反応を行うことで、直径5μm程度の球状シリカメソ多孔体を合成しているが、手順が煩雑で合成に長時間を必要とし、更に球以外の定形粒子は得られていない(非特許文献3)。
(4) Kim, J. M.; Stucky, G. D. Chem. Commun. 2000, 1159.では、珪酸ナトリウム水溶液と水に溶解した非イオン性ブロック共重合体の混合液に濃塩酸を添加し、室温〜40℃で1日攪拌した後、更に100℃で1日反応させることでシラノール基の重合を促進し、規則的な細孔構造を有するメソポーラス材料を合成しているが、濃塩酸を使用した過酷な反応条件を必要とし、更にマクロ形態については言及していない(非特許文献4)。
(5) Kim, S. S.; Karkamkar, A.; Pinnavaia, T. J. J. Phys. Chem. B 2001, 105, 7663.では、酢酸に溶解した非イオン性トリブロック共重合体に、珪酸ナトリウム水溶液を添加し、pH6.5付近の中性に近い条件下、室温で20時間、必要に応じ更に100℃で20時間反応させ、規則的な細孔構造を有するメソポーラス材料を合成しているが、マクロ形態については言及していない(非特許文献5)。
【0004】
従来、珪酸乃至珪酸塩系の繊維の合成法も公知であり、例えば、特開昭51−112924号公報には、特定の含水アルカリ珪酸塩を、200℃以下の押出温度で、0.4規定以上の濃度の酸の水溶液中に紡出し、次いで水洗、乾燥処理或いは更に焼成処理を施すことを特徴とする珪酸系繊維の製造方法が記載されている(特許文献1)。
【0005】
また、特開2000−1309号公報には、原料のワラストナイトを水に分散して水分散スラリーとし、該水分散スラリーに炭酸ガスを吹き込むことにより繊維状シリカゲルを製造し、必要に応じてこれを熱処理することにより、比表面積の小さな繊維状非晶質シリカ、繊維状石英または繊維状クリストバライトとすることが記載されている(特許文献2)。
しかしながら、これら公知の珪酸乃至珪酸塩系の繊維はマイクロ孔及びメソ
孔を有するものではない。
【0006】
【非特許文献1】
Bagshaw, S. A.; Prouzet, E.; Pinnavaia, T. J. Science 1995, 269, 1242.
【非特許文献2】
Sierra, L.; Guth J.-L. Microporous Mesoporous Mater. 1999, 27, 243.
【非特許文献3】
Boissiere, C.; Larbot, A.; van der Lee, A.: Kooyman, P.J.; Prouzet, E. Chem. Mater. 2000, 12, 2902.
【非特許文献4】
Kim, J. M.; Stucky, G. D. Chem. Commun. 2000, 1159.
【非特許文献5】
Kim, S. S.; Karkamkar, A.; Pinnavaia, T. J. J. Phys. Chem. B 2001, 105, 7663.
【特許文献1】
特開昭51−112924号公報
【特許文献2】
特開2000−1309号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のとおり、安価なアルカリ珪酸塩をシリカ源としたマイクロ孔及びメソ孔を有する多孔質材料に関する研究は、多孔質材料の利用分野を拡大するという着想において非常に優れたものであるが、その報告例は高価なアルコキシシラン等の有機シリカを原料としたものに比べ極めて少なく、更に、マクロ形態制御に関してはほとんど報告されていない。
上記(3)で公表されたマクロ形態制御に関する報告においても、珪酸ナトリウム原料から得られた定形粒子は球状物のみであり、さらには合成に数日を要し、手法が複雑であるという課題を有することから量産化は困難である。
【0008】
本発明者らは、安価なアルカリ珪酸塩をシリカ源とし、無毒性の非イオン性界面活性剤をテンプレートとして使用することで、多孔性で、比較的大きい比表面積と微細孔とを有する、全く新規なロッド状及びファイバー状の定形多孔質粒子の合成に成功した。
本発明の目的は、細孔構造、マクロ形態を制御するために、無毒性で、生分解性の非イオン性界面活性剤を使用し、更にシリカ源として安価なアルカリ珪酸塩を用いた反応系において、反応物質の混合割合、酸性度、反応温度、攪拌速度を変化させることにより、定形多孔質シリカ粒子の前駆体となる界面活性剤を含んだ有機無機ナノ複合体を比較的温和な条件下、短時間で作製し、最終的に有機成分を取除くことによる、ロッド状及びファイバー状の多孔質シリカ及びその製造方法を提供することにある。さらに、酸或はアルカリに溶解した各種金属塩を上記反応系に加えることによる、Siの一部を他の金属で置換したり、また骨格外に金属酸化物等を含むロッド状及びファイバー状の多孔質シリカ金属複合体粒子及びその製造方法を提供することにある。また、本製造法で得られる定形多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子は、ミクロンオーダーのロッド状或はファイバー状の形状を呈すると同時に、直径4〜7nmの細孔が規則配列しており、2つの異なるスケールで秩序構造を有している。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記式
SiO・nMOm/2
式中、Mは多価金属を表し、mは多価金属の価数であり、
nはゼロを含む0.1以下の数である、
で表される化学的組成を有し且つメソ孔とマイクロ孔とを有する定形多孔質シリカ粒子であって、回折角0.5乃至5度(CuKα)に細孔の規則配列構造を示すX線回折ピークを有し且つ細孔径3乃至8nmに細孔容積の極大値を有し、走査型顕微鏡観察による長軸の長さが0.5乃至5μmの範囲にあり、アスペクト比が1.1乃至15のロッド状単分散粒子からなり、
前記ロッド状単分散粒子が、高分解能電子顕微鏡(TEM)写真で観察して、粒子端面にハニカム状に規則的に配置されたメソ孔断面と、粒子長手方向に貫通して延びる1次元メソチャンネルとを示すものであることを特徴とするロッド状定形多孔質シリカ粒子が提供される。
本発明によればまた、下記式
SiO ・nMO m/2
式中、Mは多価金属を表し、mは多価金属の価数であり、
nはゼロを含む0.1以下の数である、
で表される化学的組成を有し且つメソ孔とマイクロ孔とを有する定形多孔質シリカ粒子であって、回折角0.5乃至5度(CuKα)に細孔の規則配列構造を示すX線回折ピークを有し且つ細孔径3乃至8nmに細孔容積の極大値を有し、
走査型顕微鏡観察による長軸の長さが5乃至1000μmの範囲にあり、アスペクト比が3乃至150のファイバー状粒子であり、高分解能電子顕微鏡(TEM)写真で観察して、粒子端面にハニカム状に規則的に配置されたメソ孔断面と、粒子長手方向に貫通して延びる1次元メソチャンネルとを示すものであることを特徴とするファイバー状定形多孔質シリカ粒子が提供される。
本発明によれば、前記ロッド状定形多孔質シリカ粒子の製造方法として、酸性水溶液と非イオン性界面活性剤との混合液と、アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下で混合して反応させ、白濁ゲル化を生じる前に攪拌を停止して静置下で反応を進行させてロッド状粒子を生成せしめ、次いで焼成して非イオン性界面活性剤を除去すると共に、前記攪拌下での反応及び静置下での反応を5乃至45℃の範囲に維持して行なうことを特徴とする方法が提供される。
本発明によれば、さらに、前記ファイバー状定形多孔質シリカ粒子の製造方法として、酸性水溶液と非イオン性界面活性剤との混合液と、アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下で混合し、5乃至45℃の温度に維持しつつ攪拌を続行してファイバー状粒子を生成せしめ、次いで焼成して該粒子中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする方法が提供される。
本発明のロッド状定形多孔質シリカ粒子においては、
(1)前記ロッド状粒子が、400m /g以上のBET比表面積を有し、且つ細孔径4乃至7nmに0.4ml/g以上の細孔容積を有すること、
が好適である。
また、本発明のファイバー状定形多孔質シリカ粒子においては、
(1)前記ファイバー粒子が、電解放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)写真で観察して、ロッド状ユニットの連鎖物もしくはその連鎖物の集合体からなること、
(2)前記ファイバー粒子が、500m /g以上のBET比表面積を有し、且つ細孔径4乃至7nmに0.4ml/g以上の細孔容積を有すること、
が好適である。
本発明のロッド状或いはファイバー状定形多孔質シリカ粒子の製造方法においては、
(1)前記攪拌下での反応に際して、酸或はアルカリに溶解した金属塩を攪拌下で混合す ること、
という手段を採用することができ、また、
(2)非イオン性界面活性剤をアルカリ珪酸塩中のSiO 1モル当たり0.002乃至0.25の量で用いること、
(3)酸をアルカリ珪酸塩中のSiO 1モル当たり0.6乃至15モルの量で用いること、
(4)水をアルカリ珪酸塩中のSiO 1モル当たり100乃至400モルの量で用いること、
が好適である。
本発明によるロッド状或いはファイバー状定形多孔質シリカ粒子は、樹脂添加剤、インク吸着用フィラー、石綿代替材料、増粘剤等の用途に利用される。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明では、ミクロンオーダーのロッド状及びファイバー状多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子の製造法において、シリカ源としてアルカリ珪酸塩を用い、金属アルコキシド等の高価な有機シリカを使用する必要がないこと、テンプレートとして高価な4級アンモニウム塩等を使用せずに無毒性、生分解性、安価な非イオン性界面活性剤を使用できること、更に温和な温度条件下、短時間で定形粒子を高収率で得られること、攪拌の有無により二種類のマクロ形態を選択的に合成できること、温度により細孔径をコントロールできること、酸濃度、反応濃度、攪拌速度によりアスペクト比を調整できること等、用いる製造手段及びその組合せに格段の進歩性を有する。
【0011】
本発明による定形多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子は、既に指摘したとおり、ミクロンオーダーのロッド状或はファイバー状の形状を呈すると同時に、直径4〜7nmの細孔が規則配列しており、2つの異なるスケールで秩序構造を有しているが、このような2つの秩序構造の生成機構は以下のように推定される。
アルカリ珪酸塩は強酸性水溶液下でシリカ溶存種がプラスに帯電し[I]、一方、強酸に溶解した非イオン性界面活性剤[N]においても、界面活性剤表面の親水基部分がプロトン[H]に覆われることでプラスの電荷を帯び、プラスに帯電したシリカ、界面活性剤の両表面間に陰イオン[X]が介在することで、電気的に安定なメソ構造体[N][X]を形成すると推定される。
更に、溶液中にはアルカリ珪酸塩と酸との反応により発生したアルカリイオン(P)が存在し、このイオンにより表面が帯電したシリカ間同士の電荷は相殺されるため、徐々にゲル化が進行しシリカ骨格中に非イオン性界面活性剤を包含した有機無機メソ構造体が生成する。この有機無機メソ構造体を核として界面活性剤との協調的な秩序形成能に基づいて、ミクロンオーダーの規則的なマクロ形態を有する定形粒子に成長すると推定される。有機成分を焼成或は溶媒抽出等の処理により除去することで得られる最終生成物は、ミクロンオーダーの規則的形状を呈すると同時に、1次元チャンネルが六方晶系に規則配列したメソ孔を併せ持ち、2つの異なるスケールで秩序構造を有していることになる。更に、非イオン性界面活性剤の親水性部がシリカ骨格中に進入することによりメソ孔以外にマイクロ孔も形成される。
添付図面の図1は、本発明に用いる反応系のゲル化前の溶液状態を模式的に示すものである。即ち、強酸性条件下では界面活性剤の親水基部分がH+に覆われ、ミセル表面はプラスに帯電している。一方で、Si溶存種の表面もプラス帯電を帯びており、両プラス表面間に陰イオン(X)が介在することで電荷が相殺されメソ構造体前駆体が生成する。また、プラスに帯電したシリカ間は、アルカリイオン(P)の存在により電荷反発が消失しゲル化が進行する。
添付図面の図2は、本発明におけるメソ前駆体生成と界面活性剤の除去により生成するメソポア及びマイクロポア含有多孔体を示すものである。即ち、図2の左方部分に示すとおり、界面活性剤ミセルを骨格内に取り込んだ形でメソ構造前駆体が生成するが、界面活性剤を除去することにより、メソポアとマイクロポアとを含有する多孔体が得られる。
本反応系において定形粒子を製造するためにはゲル化速度を厳密に制御しなければならない。例えば、出発原料組成、反応温度ばかりでなく、反応系への食塩等の塩の添加によりゲル化までの時間が短縮され、マクロ形態に著しい影響を及ぼす。
尚、本製造法において、界面活性剤が存在しない場合、大過剰の陰イオン(X)が系内に存在し、シリカのゲル化が妨げられるが、界面活性剤の量と陰イオンの量のバランスによりゲル化に要する時間をコントロールできる為、最終的にマクロ形態を制御できると推察される。
【0012】
本製造法において、規則的に配列したメソ孔を有し、ミクロンオーダーの定形多孔質シリカ粒子及び定形多孔質シリカ金属複合体粒子の前駆体を、室温付近常圧下において比較的短時間で製造できる。また、界面活性剤量、反応温度、酸濃度、シリカ濃度、攪拌速度をコントロールすることで、マクロ形態及び、細孔構造、更に細孔構造を形成するシリカ骨格のシリカ壁厚の制御が可能である。
【0013】
本製造法では、ゲル化過程における攪拌の有無により、全く異なったマクロ形態を有する定形粒子の選択的な合成に成功した。攪拌を行うことで、一次粒子の衝突が促進されファイバー状に粒子成長させることができ、一方、攪拌を行わない場合には粒子間衝突を抑制し、単分散性のロッド状定形粒子を合成できる。攪拌速度は問わないが、遅すぎると反応液の粘性のため衝突回数が減少すると推定され、長く伸びたファイバーが得難くなる傾向がある。
【0014】
本発明のロッド状及びファイバー状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、回折角2θ=0.5乃至5.0度にメソ孔の規則配列を示すXRD回折(CuKα)ピークを有する。
添付図面の図3は、本発明のロッド状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例のX線回折パターンであり、図4は、ファイバー状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例のX線回折パターンである。図3及び4において、上側の回折パターンはピークの存在を明確にするため拡大したもので、矢印はピーク位置を示す。
【0015】
図5は、本発明のロッド状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真であり、図6は、本発明のファイバー状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。更に、図11は、本発明のファイバー状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例の粒子構造を示す電解放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)写真である。図6の一本のファイバーは、より細かい繊維状シリカ粒子の集合体からなっていることが分かり、更に図11から当該集合体が竹の木のようにロッド状ユニットが連なった連鎖状物或いはその連鎖状物の絡み合ったものであることが分かる。これらの走査型電子顕微鏡写真から、本発明の定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、アスペクト比の揃った定形マクロ形態を有することがわかる。
【0016】
本発明のロッド状或はファイバー状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、一次粒子内にメソ孔を有し、BJH法でみてシャープな細孔径分布を有している。また、反応温度を上げることで、粒子中の細孔径を大きくすることが可能である。
図7は、本発明のロッド状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の数例について、細孔径と細孔径分布との関係を示すグラフであり、図8は、本発明のファイバー状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の数例について、細孔径と細孔径分布との関係を示すグラフである。図7は、反応時間が細孔径分布に殆ど影響を与えないことを示している。
既に指摘したとおり、本発明のロッド状或はファイバー状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、ミクロンオーダーのロッド状或はファイバー状の形状を呈すると同時に、直径4〜7nmの細孔が規則配列しており、2つの異なるスケールで秩序構造を有していることが顕著な特徴である。
図9は、本発明のロッド状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例について、ロッド状粒子端面の構造を示す高分解能電子顕微鏡(TEM)写真であり、図10は、ロッド状粒子の長手方向の構造を示す高分解能電子顕微鏡(TEM)写真である。図9及び図10を参照すると、本発明のロッド状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、粒子端面にハニカム状に規則的に配置されたメソ孔断面と、粒子長手方向に貫通して延びる1次元メソチャンネルとが明確に認められ、メソ構造の規則性に顕著に優れていることが明らかである。
尚、本発明の定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の内、ファイバー状のものでは、図9及び図10のような電子顕微鏡写真が得られていないが、これは繊維の絡み合いのためメソ構造が明確に確認できないというだけのことであり、メソ構造が形成されていることは疑いの余地がない。
【0017】
本製造法において、反応時間により生成物のアスペクト比やマクロ形態にも影響が現れる。反応時間が1時間よりも短いと、シリカ骨格が完全に出来上がらず、更に未反応のアルカリ珪酸塩が残存するため、反応は1時間以上行うことが好ましい。反応を長時間行ってもマクロ形態、細孔構造に大きな変化は見られず、生成物に与える影響は小さいが、生産効率の問題から経済的に不利になる。
【0018】
本製造法における反応温度は、5℃乃至45℃の範囲が望ましい。反応温度は、シリカのゲル化速度を左右するが、上記温度範囲よりも高い温度で反応を行うと、マクロ形態の規則性が悪化する傾向があり、これは、温度の上昇により非イオン性系面活性剤中の親水基部分の脱水和が起こりやすくなる為、結果的に非イオン性界面活性剤の形成するミセルが大きくなり、マクロ形態に影響を与えると推定される。一方、反応温度が低くなるとロッド状シリカにおいて、アスペクト比が小さくなる傾向が確認された。
【0019】
本製造法において、界面活性剤量の減少、酸濃度の増加、シリカ濃度の増加によってもシリカのゲル化に要する時間が短縮され、マクロ形態に影響が現れる。これは、界面活性剤の形成するミセルの配向性に影響が現れ、ゲル化速度が上がるとミセルの成長が抑制されるためであると推定される。
ファイバー状シリカ合成においては、シリカ濃度が低下するとファイバーが長く伸びアスペクト比が大きくなる傾向がある。一方、酸濃度が増加するとロッド状及びファイバー状共にアスペクト比が小さくなる傾向がある。
【0020】
本発明のロッド状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子において、有機成分除去後、超音波による水分散を行い、走査型電子顕微鏡により観察を行った時に、二次元的に規則配向した状態が確認され、非常に良好な単分散性を示すことが分かった。
【0021】
本発明のロッド状及びファイバー状の多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、所定の濃度の酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液と、水で希釈したアルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下に混合した後、攪拌を止め静置反応を行うか、又は攪拌を継続することにより、非イオン性界面活性剤とシリカ溶存種との協調的秩序形成能に基づいて生成する非イオン性界面活性剤を包含したシリカ複合前駆体から、最終的に非イオン性界面活性剤を焼成により除去することで得られる。
【0022】
本発明において、上記原料の添加順序には制限がなく、例えば水で希釈したアルカリ珪酸塩水溶液に酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液を添加してもよく、また逆に、酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液に水で希釈したアルカリ珪酸塩水溶液を添加しても良い。
【0023】
[原料]
本発明で使用される、シリカ原料、非イオン性界面活性剤、酸或はアルカリに可溶な金属塩、酸について更に説明する。
【0024】
本発明で使用されるシリカ原料としては、アルカリ珪酸塩を使用することが可能で、比較的廉価であるナトリウム珪酸塩が好ましい。ナトリウム珪酸塩としてはNaO・mSiO式中、mは1乃至4の数、特に2.5乃至3.5の数である組成を有するナトリウム珪酸塩水溶液を使用することが好ましい。
【0025】
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキシドーポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(PEO−PPO−PEO)或はポリプロピレンオキシドーポリエチレンオキシドーポリプロピレンオキシド(PPO−PEO−PPO)からなる分子量約2000から約13000程度の様々な重合比のトリブロック共重合体の他、アルキル基のカーボン数が12から18のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポチオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等を使用することができる。特に、本反応系ではトリブロック共重合体或はポリオキシエチレンアルキルエーテルの使用が好ましい。
【0026】
本発明で使用される、非イオン性界面活性剤において、ブロック共重合体の重合比や各種ポリマーの平均分子量に特に制限は持たないが、反応温度以下で酸に溶解するものが好ましい。
特に、トリブロック共重合体(PEO−PPO−PEO)において、その重量平均分子量は約2000乃至約12600であることが望ましい。またポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいては、C2m+1(PEO)(OH)の式中、mは12乃至18で、nは2乃至23であることが望ましく、好ましくはC2m - (PEO)(OH)の式中、mは18で、nは2乃至23であることが望ましい。
【0027】
本発明で使用された非イオン性界面活性剤は、SiOに対してモル比0.002乃至0.25の量を用いるのがよく、上記範囲外ではマクロ形態が定形ではなくなり、特に上記範囲より多い添加量では、生成物の濾過性が極端に悪化し生産効率が低下する。
【0028】
金属種としては、Siの他に、Ti、Zr、Al、Fe、Zn、Cr、Mn、Co、Cu、Ni、V、Sn、Ru、Ce、Mo、W、Rh、Ag等の一種類あるいは複数を同時に用いることができる。
酸に可溶な金属塩としては、上記金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩やその水和物等、酸に可溶な全ての金属塩を使用することができる。またAl等の両性酸化物の場合には、アルカリに可溶な金属塩、金属酸化物及び金属水酸化物等を使用することができる。
【0029】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、酢酸等の無機酸や有機酸が使用されるが、経済的な見地から塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の鉱酸を用いるのがよく、中でも、マクロ形態の一様さの点で塩酸、硝酸が好ましい。
【0030】
本発明のロッド状及びファイバー状多孔質シリカ粒子の合成において、出発原料の混合モル比は、SiO:非イオン性界面活性剤:NaO:酸:水 = 1:0.002〜0.25:0.25〜1:0.6〜15:100〜400であるのが好ましい。
更に、出発原料の混合方式を詳細に記述すると、ロッド状定形粒子合成においては、所定の濃度の酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液(A)、水に希釈したアルカリ珪酸塩水溶液(B)を攪拌下に混合し、白濁ゲル化する前の数秒乃至数分間攪拌後、攪拌を停止し、所定温度の下で1時間以上好ましくは3時間以上24時間程度、静置反応を行う。また、ファイバー状定形粒子合成においては、ロッド状定形粒子合成と同様の原料混合を行った後、攪拌を継続して所定温度の下で1時間以上好ましくは3時間以上24時間程度、攪拌反応を行う。ここで、原料溶液A及びBは予め同じ所定温度に調整して混合する。
本発明のロッド状及びファイバー状多孔質シリカ金属複合体粒子の合成において、出発原料の混合モル比は、SiO:非イオン性界面活性剤:NaO:酸:水:金属元素=1:0.002〜0.25:0.25〜1:0.6〜15:100〜400:0.001〜0.1である。
更に、出発原料の混合方式を詳細に記述すると、ロッド状定形粒子合成においては、所定の濃度の酸に溶解した非イオン性界面活性剤(A)と、水に希釈したアルカリ珪酸塩水溶液(B)と、酸或はアルカリに溶解した金属塩(C)を攪拌下に混合し、白濁ゲル化する前の数秒乃至数分間攪拌後攪拌を止め、所定温度の下で1時間以上好ましくは3時間以上24時程度、静置反応を行う。また、ファイバー状定形粒子合成においては、ロッド状定形粒子合成と同様の原料混合を行った後、所定温度の下で1時間以上好ましくは3時間以上24時程度、攪拌反応を行う。ここで、原料溶液A、B及びCは予め同じ所定温度に調整して混合する。
【0031】
上記いずれの場合も、反応後懸濁液から固体生成物を分離し、室温〜100℃で充分乾燥させる。最後に有機成分を除去してロッド状及びファイバー状多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子を作製するために、200℃以上で2時間以上、好ましくは400℃以上で1時間加熱処理する。
【0032】
[用途]
本発明のロッド状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子は、非常に良好な単分散性を示し、更にサイズが比較的揃ったロッド状形態を有するため、球とは異なり、粒子が二次元的にマクロ配向しやすいと推定されることから、樹脂に添加した場合に良好な分散性を示し、樹脂添加剤やガス分離膜に適している。
更に、金属種による多機能性を付与することで、機能性樹脂添加剤として利用できる。
また、多孔性を利用した、インク吸収剤や、イオン・分子の吸着・分離・貯蔵剤への利用、金属種添加による触媒或は触媒担体としての材料に適している。また、各種塗料、インク用体質顔料、インクジェット紙用添加剤、調湿剤、接着剤等に配合して種々の用途に利用することができる。
【0033】
本発明のファイバー状多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子は、多孔性であることから、上記と同様な用途に使用できるほか、非晶質ながら柔軟なファイバー状であるため、発ガン性が問題視されている石綿代用品として種々の用途に利用できる。更に、大きなアスペクト比を有するため増粘剤や、樹脂の強度を高める補強剤としても利用することができる。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されない。
尚、実施例で行った各試験方法は次の方法により行った。
【0035】
(測定法)
(1)走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社製JSM5300を使用し、加速電圧10kV、WD10mmで観察した。
(2)比表面積・細孔径分布:日本ベル製BELSORP28を使用し、液体窒素温度で測定した窒素吸着等温線からBET比表面積を求め、細孔径分布はBJH法により解析した。
(3)形状:走査型電子顕微鏡写真から観察した。
(4)粒子サイズ:走査型電子顕微鏡写真で測定した。
(5)X線回折:リガク製ロータフレックスRU−300を使用し、Cu−Kα線源、加速電圧40kV、80mAで測定した。
(6)27Al MAS NMRスペクトル測定:CMX300MHz固体NMR装置を使用し、回転数12kHz、90°パルス180秒の条件で測定した。
(7)高分解能電子顕微鏡:HITACHI製HF-2000を使用し、加速電圧200kVで観察した。
(8)電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子株式会社製JSM−6700Fを使用し、前処理Ptコーティング、加速電圧3kVで測定した。
【0036】
(実施例1)
市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加えて希釈した後、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め30℃に調整して混合し、反応は30℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.0169:0.312:5.90:202.88である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後30秒後に攪拌を停止し、30℃で6時間静置反応を行う。反応後固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し、ロッド状多孔質シリカ粒子(実施例1−1)を得る。
表1に出発原料組成、及び表2にそれぞれの合成条件で作製したロッド状多孔質シリカ粒子の比表面積と、細孔径分布曲線から求めた細孔径と細孔容積、XRD測定結果と細孔径から算出したシリカ壁厚を示す。
図7の細孔分布曲線から、本実施例のロッド状多孔質シリカ粒子は、反応時間によらず約5.5nmの均一細孔径を有していることが分かる。
また、本実施例の多孔質シリカ粒子のSEM写真は図5に示す通りであり、太さ及び長さの比較的揃った、実質的に単分散のロッド状形態を持つことがわかる。
本実施例のXRD測定結果は、図3に示すように低角領域(1度乃至5度)に3本の明瞭なピークと極めてブロードな2本のピークが認められ、メソ孔が2次元六方晶に規則配列していることを示している。
【0037】
【表1】
Figure 0004099811
【0038】
【表2】
Figure 0004099811
【0039】
(実施例2)
2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20 ) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液に、市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加え希釈した珪酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め30℃に調整して混合し、反応は30℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.0169:0.312:5.97:203.97である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後30℃で6時間攪拌反応を行う。反応後固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し、ファイバー状定形多孔質シリカ粒子を得る。
表1に出発原料組成、及び表2にそれぞれの合成条件で作製したファイバー状多孔質シリカ粒子の比表面積と、細孔径分布曲線から求めた細孔径と細孔容積、XRD測定結果と細孔径から算出したシリカ壁厚を示す。
図8の細孔径分布曲線から、本実施例2−1のファイバー状多孔質シリカ粒子は、5.6nmの均一細孔径を有していることが分かる。
また、本実施例の多孔質シリカ粒子のSEM写真は図6、FE−SEM写真は図11に示す通りであり、アスペクト比が大きく、太さ及び長さの比較的揃ったファイバー状であることが分かる。また一本のファイバーはより細い繊維状シリカ粒子の集合体からなることがわかる。
本実施例のXRD測定結果は、図4に示すように低角領域(1度乃至5度)に3本の明瞭なピークと極めてブロードな2本のピークが認められ、メソ孔が2次元六方晶に規則配列していることを示している。
【0040】
(実施例3)
市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加えて希釈した後、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め30℃に調整して混合し、反応は30℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.0169:0.312:5.97:204.17である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後30℃で6時間攪拌反応を行う。反応後固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し、ファイバー状多孔質シリカ粒子を得る。
表1に出発原料組成、及び表2にそれぞれの合成条件で作製したファイバー状多孔質シリカ粒子の比表面積と、細孔径分布曲線から求めた細孔径と細孔容積、XRD測定結果と細孔径から算出したシリカ壁厚を示す。
本実施例のXRD回折パターンには低角領域(1度乃至5度)に3本の明瞭なピークと極めてブロードな2本のピークが認められ、メソ孔が2次元六方晶に規則配列していることを示していた。
本実施例で得られた生成物はSEM、FE−SEMによる観察結果も実施例2と同様、アスペクト比の比較的揃ったファイバー状であり、細孔特性もほぼ同等である。このことは本反応系で得られるファイバー状多孔質シリカ粒子の形態ならびに細孔特性等は原料溶液の添加順序には依存しないことを示唆している。
【0041】
(実施例4)
市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加えて希釈した後、1.5Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)と塩化アルミニウムとの混合溶液を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め40℃に調整して混合し、反応は40℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO:AlCl=1:0.0168:0.312:4.48:207.59:0.0415である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後30秒後に攪拌を停止し、40℃で24時間静置反応を行う。反応後固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去すると、実施例1[図3(a)]と同等なロッド状多孔質シリカ・アルミナ粒子(Si/Alモル比0.0415)が得られる。
その細孔特性は比表面積542m/g、細孔容積0.48ml/g、細孔径6nmである。
しかし、原料溶液の混合比を一定として、反応温度を30℃、また塩酸濃度を2Nにした場合にはロッド状ではなく不規則なマクロ形態を呈した。本実施例はロッド状多孔質粒子の形態が反応条件例えば反応温度や塩酸濃度、更に塩の添加に極めて敏感なことを示している。尚、塩化アルミニウムをアルミニウム源とした場合にはロッド状多孔質粒子中のアルミニウムの大部分はシリケート骨格外に存在することが27Al MAS NMRスペクトルから明らかであった。
【0042】
(比較例1)
2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液に、市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加え希釈した珪酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め50℃に調整して混合し、反応は50℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.0169:0.312:5.93:203.69である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後50℃で6時間攪拌反応を行う。反応後固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し、多孔質シリカ粒子を得る。
表1に出発原料組成、及び表2に比表面積と、細孔径分布曲線から求めた細孔径と細孔容積を示す。
本比較例のシリカ粒子は多孔体であり、大きな細孔径を有するが、SEM観察から定形粒子ではないことが確認された。このことは生成物の形態が反応温度に極めて敏感なことを示している。
【0043】
(比較例2)
市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加え希釈した後、2N塩酸を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め43℃に調整して混合し、反応は43℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:NaO:HCl:HO=1:0.312:5.89:201.78である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後43℃で静置反応を行う。20時間経つと若干のゾル化が進行するが、1ヶ月経ってもゲル化は起こらず、定形シリカ粒子を得ることはできなかった。
本試験結果から、本製造方法における強酸性条件下でシリカのゲル化を進行させるためには、界面活性剤の添加が必要不可欠であることを示している。
【0044】
(比較例3)
市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)に水を加えて希釈した後、0.3Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液を攪拌しながら添加する。両原料溶液は予め40℃に調整して混合し、反応は40℃に保持して行った。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.0127:0.312:0.59:158.27である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。混合後30秒後に攪拌を停止し、40℃で24時間静置反応を行う。反応後固体生成物を濾別し、60℃の温水で洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去した。
得られシリカ粒子は非常に微細な不定形粒子の凝集体であり、定形粒子を得ることはできなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、安価なアルカリ珪酸塩をシリカ源として用い、安全性の高い非イオン性界面活性剤をテンプレートとして使用し、更に低温、常圧下、比較的短時間でロッド状或はファイバー状多孔質シリカ粒子乃至シリカ金属複合体粒子の合成に成功した。
本発明は、細孔構造の制御剤として非イオン性界面活性剤を使用し、アルカリ珪酸塩水溶液と酸性水溶液を混合する極めて単純な反応系において、反応物質の混合割合、酸性度、反応温度、特に攪拌速度を変化させることにより、常温付近、常圧下でロッド状或はファイバー状多孔体の前駆体となる界面活性剤を含んだ有機無機ナノ複合体を比較的短時間で選択的に作製し、最終的に有機物を取除くことによる、ミクロンオーダーの定形多孔質シリカ粒子の製造方法を提供する。
さらに、酸に溶解した非イオン性界面活性剤反応系と、酸或はアルカリに溶解した金属塩、アルカリ珪酸塩水溶液を混合することで、Siの一部を他の金属で置換したり、また骨格外に金属酸化物等を含むミクロンオーダーのロッド状或はファイバー状の多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法を提供する。
しかも、本定形粒子は、マクロ形態の秩序性と、同時に4〜7nmの細孔が規則性をもって配列しており、2つの異なるスケールで規則性を有する高比表面積定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の製造法を提供するものである。
安価な原料を使用し、穏やかな反応条件下、短時間での合成が可能であることから工業規模への応用も可能であり、更に、高比表面積、細孔径の均一性、単分散性等の特徴を併せ持つことから、形状選択能を利用した分子篩、吸着剤や、高分散性定形粒子であることを利用した樹脂添加剤、ガス分離膜、加えて触媒担体、触媒、クロマトグラフ用担体としての利用に適する。また、ファイバー状多孔質シリカ粒子は、大きく、揃ったアスペクト比を有する非晶質シリカであることから、人体への毒性が問題となっている石綿の代替品や樹脂の強度を高める補強剤、さらには増粘剤として利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる反応系のゲル化前の溶液状態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明におけるメソ前駆体生成と界面活性剤の除去により生成するメソポア及びマイクロポア含有多孔体を示す説明図である。
【図3】本発明のロッド状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例のX線回折パターンである。
【図4】ファイバー状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例のX線回折パターンである。
【図5】本発明のロッド状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明のファイバー状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明のロッド状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の数例について、細孔径と細孔径分布との関係を示すグラフである。
【図8】本発明のファイバー状多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の数例について、細孔径と細孔径分布との関係を示すグラフである。
【図9】本発明のロッド状シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例について、ロッド状粒子端面の構造を示す高分解能電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図10】図9のロッド粒子の長手方向の構造を示す高分解能電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図11】本発明のファイバー状定形多孔質シリカ乃至シリカ金属複合体粒子の一例の粒子構造を示す電解放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)写真である。

Claims (16)

  1. 下記式
    SiO・nMOm/2
    式中、Mは多価金属を表し、mは多価金属の価数であり、
    nはゼロを含む0.1以下の数である、
    で表される化学的組成を有し且つメソ孔とマイクロ孔とを有する定形多孔質シリカ粒子であって、回折角0.5乃至5度(CuKα)に細孔の規則配列構造を示すX線回折ピークを有し且つ細孔径3乃至8nmに細孔容積の極大値を有し、走査型顕微鏡観察による長軸の長さが0.5乃至5μmの範囲にあり、アスペクト比が1.1乃至15のロッド状単分散粒子からなり、
    前記ロッド状単分散粒子が、高分解能電子顕微鏡(TEM)写真で観察して、粒子端面にハニカム状に規則的に配置されたメソ孔断面と、粒子長手方向に貫通して延びる1次元メソチャンネルとを示すものであることを特徴とするロッド状定形多孔質シリカ粒子
  2. 前記ロッド状粒子が、400m/g以上のBET比表面積を有し、且つ細孔径4乃至7nmに0.4ml/g以上の細孔容積を有することを特徴とする請求項1に記載のロッド状定形多孔質シリカ粒子
  3. 下記式
    SiO ・nMO m/2
    式中、Mは多価金属を表し、mは多価金属の価数であり、
    nはゼロを含む0.1以下の数である、
    で表される化学的組成を有し且つメソ孔とマイクロ孔とを有する定形多孔質シリカ粒子であって、回折角0.5乃至5度(CuKα)に細孔の規則配列構造を示すX線回折ピークを有し且つ細孔径3乃至8nmに細孔容積の極大値を有し、
    走査型顕微鏡観察による長軸の長さが5乃至1000μmの範囲にあり、アスペクト比が3乃至150のファイバー状粒子であり、高分解能電子顕微鏡(TEM)写真で観察して、粒子端面にハニカム状に規則的に配置されたメソ孔断面と、粒子長手方向に貫通して延びる1次元メソチャンネルとを示すものであることを特徴とするファイバー状定形多孔質シリカ粒子
  4. 前記ファイバー粒子が、電解放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)写真で観察して、ロッド状ユニットの連鎖物もしくはその連鎖物の集合体からなることを特徴とする請求項3に記載のファイバー状定形多孔質シリカ粒子
  5. 前記ファイバー粒子が、500m/g以上のBET比表面積を有し、且つ細孔径4乃至7nmに0.4ml/g以上の細孔容積を有することを特徴とする請求項4に記載のファイバー状定形多孔質シリカ粒子
  6. 酸性水溶液非イオン性界面活性剤との混合液と、アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下で混合して反応させ、白濁ゲル化を生じる前に攪拌を停止して静置下で反応を進行させてロッド状粒子を生成せしめ、次いで焼成して非イオン性界面活性剤を除去すると共に、前記攪拌下での反応及び静置下での反応を5乃至45℃の範囲に維持して行なうことを特徴とするロッド状定形多孔質シリカ粒子の製造方法。
  7. 前記攪拌下での反応に際して、酸或はアルカリに溶解した金属塩を攪拌下で混合する請求項6に記載のロッド状定形多孔質シリカ粒子の製造方法。
  8. 酸性水溶液非イオン性界面活性剤との混合液と、アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下で混合し、5乃至45℃の温度に維持しつつ攪拌を続行してファイバー状粒子を生成せしめ、次いで焼成して該粒子中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とするファイバー状定形多孔質シリカ粒子の製造方法。
  9. 前記攪拌下での反応に際して、酸或はアルカリに溶解した金属塩を攪拌下で混合する請求項8記載のファイバー状定形多孔質シリカ粒子の製造方法。
  10. 非イオン性界面活性剤をアルカリ珪酸塩中のSiO1モル当たり0.002乃至0.25の量で用いることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の製造方法。
  11. 酸をアルカリ珪酸塩中のSiO1モル当たり0.6乃至15モルの量で用いることを特徴とする請求項6乃至10の何れかに記載の製造方法。
  12. 水をアルカリ珪酸塩中のSiO1モル当たり100乃至400モルの量で用いることを特徴とする請求項6乃至11の何れかに記載の製造方法。
  13. 請求項1乃至5の何れかに記載の定形多孔質シリカ粒子からなることを特徴とする樹脂添加剤。
  14. 請求項1乃至5の何れかに記載の定形多孔質シリカ粒子からなることを特徴とするインク吸着用フィラー。
  15. 請求項3乃至5の何れかに記載のファイバー状定形多孔質シリカ粒子からなることを特徴とする石綿代替材料。
  16. 請求項3乃至5の何れかに記載のファイバー状定形多孔質シリカ粒子からなることを特徴とする増粘剤。
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