JP5273551B2 - 繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ミクロンサイズの繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法に関するものである。
1992年に多孔体MCM−41の合成法がNature誌上に発表されて以来、メソポーラス材料への関心が高まり、4級アンモニウム塩等のイオン系界面活性剤を使用した研究が数多く報告されている。その後、無毒性、生分解性、除去が容易であり更に安価なオリゴマー或はポリマー系の非イオン系界面活性剤をテンプレートとしてメソポーラス材料が合成可能なことが報告された(非特許文献1)。
一方、メソポーラス材料の創製当初から、メソ細孔の規則構造のみならず、ミクロンからミリメートルサイズのマクロ形態まで制御した高次規則構造を有する多孔質材料の開発が注目されている(非特許文献2)。
これまでの多くの研究では、シリカ源としてアルコキシシラン等の有機シリカ、テンプレート剤には高価なイオン性界面活性剤を用いており、上記のような応用分野に利用するための量産化には向かないという理由から、アルカリ珪酸塩等の安価なシリカ源を出発原料とした研究が報告されている(非特許文献3)。
しかし、アルカリ珪酸塩とポリマー系の非イオン系界面活性剤を同時に使用し、且つマクロ形態を制御した報告例は極めて少ないのが現状である(非特許文献4および非特許文献5)。
その理由は、細孔径の制御とともにマクロ形態を制御する効率的な方法を見いだすことが非常に難しい点にある。実際、例えば、非特許文献3においてはメソ構造の規則性と合成条件との関係が検討され、マクロ形態に関する記載はない。
さらに、特許文献1には、珪酸ナトリウムと非イオン性界面活性剤の酸性溶液を原料とするメソポーラスシリカの合成方法が報告されているが、マクロ形態の制御方法並びに最終生成物の粒子形状等に関しては全く記載されておらず、得られた生成物のメソ構造の規則性も極めて低いことがX線回折パターンから推定される。
また、繊維状粒子の成長を水あるいは弱アルカリ性水溶液中で50℃以上の高温ばかりでなく、常温付近、大気圧下で、積極的に促進させる反応条件については全く報告例がない。
こうした実情に鑑み、本発明者らは、メソポーラス材料開発には、低コスト原料を使用した省エネ的合成方法によるマクロ形態の制御が重要なポイントと考え、これまでに幾つかの特許出願(特許文献2〜4)を行ってきた。
例えば、特許文献2では、珪酸ソーダとトリブロック共重合体(商品名 Pluronic P123)を用い、全反応を塩酸酸性溶液中攪拌工程で行い、攪拌の有無によって、メソ孔とマイクロ孔が有機的に連結した2元細孔構造を有する単分散ロッド状並びに繊維状のシリカメソ多孔体を選択的に合成している。
さらに、特許文献3では、この繊維状シリカメソ多孔体のメソ孔径を拡張するため、同様な塩酸酸性溶液を用いる全反応系に、フッ化物を添加することにより、ミクロンサイズの繊維状形態を有し、且つ平均細孔径が8nm以上で均一な細孔径分布を持った繊維状多孔質シリカ粒子の合成に成功している。
また、特許文献4では、塩酸酸性溶液を用いる全反応系に、フッ化物を添加せず、繊維状形態を保持したまま細孔径の大きな繊維状多孔質シリカ粒子を作製する合成方法と、10nm以上の細孔径を有する新規な繊維状多孔質シリカ粒子を提案している。
これらの方法は、従来の方法と異なり、いずれも、単分散ロッド状並びに繊維状のシリカメソ多孔体を製造できる点で優れたものであるが、たとえば、特許文献2の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法においては、長時間の攪拌工程を要するばかりでなく、繊維状形態を保持したまま細孔径を拡張することには限界があり、上記特許文献3では、フッ化物を利用して大きな細孔径を有する繊維状多孔質シリカ粒子を作製するため、フッ化物の残留、繊維長が短くなることなど、実質的な質的低下や排水処理等の問題があり、更に、特許文献4では、強酸性懸濁溶液を高温高圧下の水熱条件で熟成工程を行わなければならず、反応容器の腐食、作業工程、さらには作業環境等製造工程上克服すべき点が問題となっている。
とりわけ、これらの一連の繊維状のシリカメソ多孔体の製法で最も問題視されるのは、繊維状粒子の成長過程において攪拌・熟成工程区別なく反応溶液は強酸性条件に保持され、しかも攪拌工程に続いて行われる熟成工程も、強酸性溶液中でそのまま攪拌温度より高い温度で行っているために、反応容器の腐食ばかりでなく、作業工程及び作業環境上の安全対策、すなわち強酸性の反応溶液から繊維状多孔質シリカ粒子前駆体を分離する工程では、作業を実施する者や周辺器械を、塩酸蒸気やミストの発生・接触から遮断する処置を講じたり、あるいは反応溶液を充分冷却してから分離工程を行わなければならず非効率的であり、工業的な規模での製造においては、重大な支障となっていることである。
一方、この種のシリカメソ多孔体の合成法において、たとえばシリカ源としてテトラメチルオルトシリケート(TMOS)等を用いた場合に、中性もしくはアルカリ性の撹拌・熟成条件を採用すると、メソ構造の規則性が損なわれ、均質な長い繊維状粒子は形成されないことが周知となっている(非特許文献6、非特許文献7)。
したがって、上記したように、これまでに、珪酸アルカリ溶液をシリカ源とし、界面活性剤として非イオン界面活性剤を使用して、中性あるいはアルカリ性条件下で繊維状多孔質シリカ粒子を作製した報告例が全くのないのが現状であった。
特開2001−261326号公報 特許第4099811号公報 特開2006−124204号公報 特開2007−204288号公報
Bagshaw, S.A.; Prouzet, E.; Pinnavaia, T.J.Science 1995, 269, 1242. 1) Ciesla, U.; Schuth,F. Microporous Mesoporous Mater. 1999, 27, 131. 2) Stein, A.Adv. Mater. 2003, 15, 763. 1) Sierra, L.; Guth, J-L. Microporous Mesoporous Mater. 1999, 28, 243. 2) Kim, S.S.; Pauly, T.R.; PinnavaiaT.J. Chem. Commun.2000, 835. 3) Kim, S.S.; Pauly, T.R.; Pinnavaia T.J. Chem. Commun.2000, 1661. Boissiere, C.; Larbot, A.; van der Lee, A.: Kooyman, P.J.; Prouzet,E. Chem. Mater. 2000, 12, 2902. Sun, Q.; Kooyman, P.J.; Grossmann, J.G.; Bomans, P.H.H.;Frederik, P.M.; Magusin,P.C.M.M.; Beelen, T.P.M.;van Santen, R.A.; Sommerdijk, N.A.J.M.Adv. Mater. 2003, 15, 1097. Kim, J.M.; Han, Y-J.; Chmelka, B. F.; Stucky, G.D. Chem. Commun. 2000, 2437. Ying, L.; Zhaochi, F.; Yuxiang, L.; Keqiang, S.; Lei, Z.; Guoqing, J.; Qihua, Y.; Can, L. Microporous and Mesoporous Materials 2005, vol.85, 41.
本発明は、これらの従来の問題点を解消し、安価なアルカリ珪酸塩をシリカ源とし、無毒性の非イオン性界面活性剤をテンプレートとするとの本発明者によりこれまでに開発された技術を踏まえ、反応容器の腐食ばかりでなく、作業工程及び作業環境上の安全対策、すなわち強酸性の反応溶液から繊維状多孔質シリカ粒子前駆体を分離する工程では、作業を実施する者や周辺器械を、塩酸蒸気やミストの発生・接触から遮断する処置を講じたり、あるいは反応溶液を充分冷却してから分離工程を行わなければならないといった問題点を全て解消し、作業工程及び作業環境が安全であり、しかも、細孔特性並びに繊維形状を制御することが可能な、メソ孔とマイクロ孔を併せ持つ繊維状多孔質シリカ粒子を工業的に極めて有利に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を勧め、その過程において、極力攪拌工程に要する時間を短縮すること、即ちできる限り強酸性条件下での反応時間を短縮するため、ロッド状前駆体から繊維状粒子への成長過程を水あるいは弱アルカリ溶液中で行うことが繊維状シリカ多孔体の製法として極めて有利であることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を30℃から45℃の温度条件下で攪拌しながら混合し、一定温度で所定時間以上攪拌し続けたら反応懸濁液の攪拌を停止して、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を、中性もしくはアルカリ性の水溶液中において熟成後、溶液相から分離して得られた繊維状粒子前駆体中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈2〉酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を30℃から45℃の温度条件下で攪拌しながら混合し、一定温度で所定時間以上攪拌し続けたら反応懸濁液の攪拌を停止して、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を、攪拌温度と同一あるいは攪拌温度よりも低い反応温度で、水溶液中において熟成後、溶液相から分離して得られた繊維状粒子前駆体中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈3〉攪拌反応終了後、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を熟成する際に、水あるいは水に混合して均質な水溶液を形成する固体あるいは液体状の水溶性化合物を添加することを特徴とする〈1〉又は〈2〉に記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈4〉非イオン性界面活性剤をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり0.002乃至0.25モルの量で用いること特徴とする〈1〉〜〈3〉の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈5〉酸をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり0.6乃至15モルの量で用いることを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈6〉水をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり100乃至400モルの量で用いることを特徴とする〈1〉〜〈5〉の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈7〉水溶液中で熟成する場合、水をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり40乃至200モルの量で用いることを特徴とする〈1〉〜〈6〉の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
〈8〉水溶液中で熟成する際に、水溶性化合物をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり0.005乃至5モルの量で用いることを特徴とする〈1〉〜〈7〉の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
本発明の製造方法によれば、従来の低コスト、低環境負荷な材料設計に基づいて、細孔構造、繊維状形態を制御するために、無毒性で、生分解性の非イオン性界面活性剤を使用し、更にシリカ源として安価なアルカリ珪酸塩を用いた反応系において、攪拌条件下で生成する中間生成物を、水あるいは弱アルカリ水溶液中で熟成することで、長い繊維状形態粒子が得られ、さらには熟成工程において金属塩等を溶解して熟成することで、細孔特性並びに繊維形状を制御することが可能な、メソ孔とマイクロ孔を併せ持つ繊維状多孔質シリカ粒子を得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、攪拌反応終了後、ろ過・洗浄して得られた湿潤状態の生成物を常温常圧の水溶液中に保存し、この操作を繰り返し行って、湿潤状態の生成物を一定量蓄積し、大量の繊維状多孔質シリカ粒子前駆体を、1度に熟成工程を実施することが可能となり、より工業的に繊維状多孔質シリカ粒子を得ることができる。
しかも、本発明の製造方法は、熟成温度を広範囲に調整できることから、3から10nmの広範囲で均一細孔径を有する繊維状多孔質シリカ粒子を作製するための普遍的な方法であり、ミクロンサイズの長さを有する繊維状多孔質シリカ粒子を、水あるいは弱アルカリ水溶液中での熟成によって製造できる画期的な工業的製造方法といえる。
(a)実施例1−1〜実施例1−10の攪拌反応によって得られる反応中間物質の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真 (b)実施例1−1の繊維状多孔質シリカ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真 本発明の繊維状多孔質シリカ粒子一例(実施例1−2)の走査電子顕微鏡(SEM)写真。 (a)、(b):本発明の繊維状多孔質シリカ粒子(実施例1−2)の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真。 本発明の実施例1−1及び1−2で合成した繊維状多孔質シリカ粒子のX線回折パターン。 本発明の実施例1−1及び1−2で合成した繊維状多孔質シリカ粒子の窒素吸着等温線。 本発明の実施例1−1及び1−2で合成した繊維状多孔質シリカ粒子の細孔径分布曲線。 本発明の実施例1−1及び1−2で合成した繊維状多孔質シリカ粒子のt−プロット図。 本発明の繊維状多孔質シリカ粒子一例(実施例1−8)の走査電子顕微鏡(SEM)写真。 本発明の繊維状多孔質シリカ粒子一例(実施例2−12)の走査電子顕微鏡(SEM)写真。 本発明の実施例1−8及び2−12で合成した繊維状多孔質シリカ粒子のX線回折パターン。 本発明の実施例1−8及び2−12で合成した繊維状多孔質シリカ粒子の窒素吸着等温線。 本発明の実施例1−8及び2−12で合成した繊維状多孔質シリカ粒子の細孔径分布曲線。
本発明の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法は、酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を30℃から45℃の温度条件下で攪拌しながら混合し、一定温度で所定時間以上攪拌し続けたら反応懸濁液の攪拌を停止して、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を、中性もしくは弱アルカリ性の水溶液中において熟成後、溶液相から分離して得られた繊維状粒子前駆体中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴としている。
すなわち、本発明の製造方法は、強酸性条件において常温付近、常圧下で生成する繊維状多孔質粒子の前駆体である界面活性剤を含んだ有機無機ナノ複合体の成長を、常温常圧から高温高圧下の広い反応条件下において、水あるいは弱アルカリ水溶液中で熟成して行うことを本旨とするものである。
前記したように、従来、メソポーラス材料合成においては、中性からアルカリ性領域で合成した場合には、所望の繊維状多孔質シリカ粒子を得ることができないため、繊維状多孔質シリカ粒子を合成するには、強酸性下において、ケイ酸源をトリブロック共重合体の存在下で、反応溶液を一定時間攪拌し、続いて熟成することが必須とされていた。
したがって、充分な繊維状形態には成長していないロッド状前駆体が、水あるいは弱アルカリ水溶液中において、長い繊維状形態粒子に成長すること、しかも好ましくは熟成温度を攪拌温度よりも低温でも長い繊維状形態粒子に成長することは新たな知見であり、この現象を積極的に利用した繊維状多孔質シリカ粒子の合成手法は、従来報告例のない新規な製造方法である。
本発明は、以上のとおり、従来の攪拌及び熟成工程を見直すことにより、全く新しい、従来では予期することのできない知見を踏まえて、これまで発明者等が報告したと同様なミクロンサイズの繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法を完成させたものである。
本発明による繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法では、酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を30℃から45℃の温度条件下で攪拌しながら混合し、そのままの温度で攪拌し続け、一定時間経過した後攪拌を停止し、生成した有機無機ナノ複合体を反応懸濁液から分離して、攪拌時よりも低い温度から100℃以上の水熱条件下の広い温度範囲において中性もしくは弱アルカリ性の水溶液中で熟成し、非イオン界面活性剤を含む繊維状有機無機ナノ複合体、さらには粒子中の非イオン性界面活性剤を除去した繊維状多孔質シリカ粒子を製造する。
これまで明らかにされた通り、高いメソ構造の規則性を有する繊維状多孔質粒子を作製するには、強酸性反応系において、攪拌条件下でロッド状構造体を30〜45℃の温度範囲で生成させると同時に、相互の連鎖を促進するためには一定時間攪拌を継続することが必要であり(特許文献2)、また一定時間攪拌した後、反応生成物であるロッド状有機無機ナノ複合体を強酸性のままより高温で熟成を行うことで(特許文献4)、大きなメソ細孔径を有する繊維状多孔質粒子を作製することが可能であった。
本発明では、繊維状多孔質粒子をより温和な条件で更に効率的に製造することを意図し、上記の反応過程を詳細に検討し、熟成反応を中性もしくは弱アルカリ性の条件下で行うと強酸性条件下における反応時間を極めて短縮できることを明らかにした。
図1は、本発明の製造方法の特徴である、強酸性下の攪拌によって生成する不完全な連鎖状態にあるロッド状粒子が、中性もしくは弱アルカリ性の水溶液中での熟成によって繊維状粒子に成長する過程を明示するSEM像である。
この図から、強酸性下において、35℃では2時間攪拌を行った場合、反応中間物質中にはロッド状粒子の生成が認められ、ロッド状粒子間の連鎖は極めて遅く、不完全な状態であること分かる(図1a)。即ち、大部分はロッド状粒子のままか、あるいは少数のロッド状粒子が連鎖した短いロープ状粒子として認められる。この反応中間物質を37℃の水中に浸し、熟成するとロッド状粒子の連鎖が誘起される(図1b)。さらに、長時間熟成を継続することによって、より長い繊維状粒子が形成される(図2)。
また、後記実施例に記載するように、より高温の水熱条件下での熟成、あるいは金属塩等を溶解した水溶液中での熟成によって、連鎖反応がより促進され、あるいは細孔特性を制御することが可能である。
このことは、30〜45℃の温度範囲で、ある一定時間以上攪拌して形成されるロッド状有機無機ナノ複合体は、溶液相において自発的に連鎖するように仕組まれた界面状態にあり、このことが本発明の繊維状多孔質粒子の形成に不可欠のことと考えられる。この仕組みは水あるいは水に混合して均質な水溶液を形成する固体あるいは液体状の水溶性化合物、例えば金属イオン等の共存、さらには溶液相の温度を高くすることでさらに促進されることになる。なお、攪拌反応後、ろ過・洗浄して得られた湿潤状態の生成物はあまりにも長時間あるいは高温で乾燥させることは好ましくなく、空気等気相中に一時的に保存する場合には、熟成工程での繊維状粒子の成長を抑制しない時間内の風乾程度にしておくことが好ましい。このことは、ろ過・洗浄後の生成物はできるだけ湿潤状態に保つことが望ましいことを示している。
本発明の製造方法でミクロンオーダーの繊維状の形状を呈すると同時にメソ細孔が規則配列した繊維状多孔質粒子の生成機構は以下のように推定される。
アルカリ珪酸塩は強酸性水溶液下でシリカ溶存種がプラスに帯電し[I+]、一方、強酸に溶解した非イオン性界面活性剤[N0]においても、界面活性剤表面の親水基部分がプロトン[H+]に覆われることでプラスの電荷を帯び、プラスに帯電したシリカ、界面活性剤の両表面間に陰イオン[X-]が介在することで、電気的に安定なメソ構造体[N0+][X-+]を形成すると推定される。更に、溶液中にはアルカリ珪酸塩と酸との反応により発生したアルカリイオン(M+)が存在し、このイオンにより表面が帯電したシリカ間同士の電荷は相殺されるため、ゲル化が進行しシリカ骨格中に非イオン性界面活性剤を包含した有機無機メソ構造体が生成する。この有機無機メソ構造体がロッド状構造体として生成し易い非イオン性界面活性剤[N0]を選択し、繊維状粒子の基本構造単位であるロッド状構造体が連鎖することを決定づける条件下で一定時間攪拌することによって、攪拌反応後はロッド状構造体が不完全な連鎖体であっても、そのまま攪拌を継続することで繊維状粒子の成長が決定づけられた条件であれば、中性もしくは弱アルカリ性の水溶液中で熟成することによって最終的にミクロンオーダーの繊維状形態を有する粒子に成長すると推定される。すなわち、ロッド状構造体が連鎖して成長することで繊維状多孔質粒子前駆体が形成され、有機成分を焼成或は溶媒抽出等の処理により除去することで得られる生成物は、ミクロンオーダーの繊維状を呈すると同時に、1次元チャンネルが六方晶系に規則配列したメソ孔を併せ持ち、2つの異なるスケールで秩序構造を有していることになる。
なお、有機無機メソ構造体を構成する界面活性剤の親水基はシリカ骨格内に侵入しており、その除去に伴いマイクロ孔形成の要因となり、生成多孔体のメソ孔はマイクロ孔で連結されている。熟成温度を高くすると非イオン性界面活性剤の親水性部が極めて疎水的挙動を強め、マイクロ孔は形成されず、メソ孔の1次元チャンネルだけを持つことになる。さらに、特定の化合物を添加し低い温度で熟成しても、シリカ壁のマイクロ孔数を顕著に減じることが可能であり、メソ孔径の小さな繊維状多孔質シリカ粒子が形成されることになる。
本発明の製造法で得られる繊維状多孔質シリカ粒子は、図1b及び図2の走査型電子顕微鏡写真に示す通り、ミクロンサイズの繊維状形態を有している。図3は図2の繊維状多孔質シリカ粒子の電界放射型走査電子顕微鏡(FE―SEM)写真で、一本の繊維状粒子が、より細かい繊維状シリカ粒子の集合体であり(図3a)、当該集合体がロッド状粒子の連なった連鎖状物質(図3b)或いはその連鎖状物質の絡み合ったものであることを示している。
本発明の繊維状多孔質シリカ粒子は、図4のXRD回折パターンに示すように、回折角2θ=0.5乃至5.0度にメソ孔の規則配列を示す複数のピークを有している。さらに、図5、図6及び図7に示される、細孔特性を示す吸着等温線、細孔径分布曲線、t−プロット図から、本発明の繊維状シリカ粒子はいずれもシャープな細孔径分布を有し、メソ孔の他マイクロ孔を有していることは明らかである。なお、t−プロットにおいては、直線Nと縦軸との切片が正値であることからマイクロ孔の存在が明らかで、その切片の値からマイクロ孔容量が算出できる。また、本願の全細孔容量はメソ孔とマイクロ孔との総和であり、t−プロットの直線Mと縦軸との切片に対応する吸着量から求められる。
これらの実験結果は、従来の特許文献(特許文献2及び4)に示したと同様、本繊維状多孔質シリカ粒子は、基本構造単位であるロッド状粒子の連続体であり、個々のロッド状粒子中には粒子内を貫通する1次元メソチャンネルがハニカム状に規則配列していることに対応している。
また、図8から図12に示されるように、熟成工程を弱アルカリ性水溶液で行った、繊維状多孔質シリカ粒子の形態並びに細孔構造に関する特性評価に関する結果から、本発明の弱アルカリ性水溶液を用いる製造法が、低温でも高いメソ構造の規則性を有し、細孔径の比較的大きな繊維状多孔質シリカ粒子を得る方法として優れていることがわかる。
さらに、後述の実施例について示した表1及び表2から明らかなように、熟成条件を選択することによって、細孔特性あるいは繊維形状を制御することが可能である。
そして、既に指摘したとおり、本発明の製造方法によって、広い範囲の均一細孔径を有し、且つミクロンオーダーの繊維状の形状を呈する繊維状多孔質シリカ粒子を作製することが可能である。
すなわち、本発明においては、走査型顕微鏡観察による長軸の長さが5乃至2000μmの範囲にあり、アスペクト比が3乃至150であって、3〜10nmの広い範囲の均一細孔径を持つ、ミクロンサイズの多孔質シリカ粒子が提供される。
強酸性下における攪拌と、引き続いて行う水溶液中での熟成反応に基づく、本発明の製造法においては、生成物のマクロ形態は攪拌並びに熟成工程の温度と時間、並びに金属塩等水溶性化合物の種類と添加量により制御できる。また、メソ構造の規則性、さらにはメソ孔の大きさ等細孔特性は、攪拌条件にも影響を受けるが、特に熟成温度、水溶性化合物の種類とその添加量等熟成条件によって制御できる。
本発明の製造法における反応温度は、攪拌混合操作においては、30℃から45℃の範囲である。30℃未満の場合にはメソ構造の規則性が低下するばかりでなく、繊維状粒子前駆体が形成され難い。45℃を超えると非イオン性系面活性剤中の親水基部分の脱水和が起こりやすくなる為、撹拌によって繊維状粒子の基本構造体であるロッド状粒子の生成が阻害され、熟成によって繊維状多孔質シリカ粒子を合成することは難しい。
熟成前の反応溶液の攪拌混合時間は、反応温度にも依存するが、30分以上であることが望ましく、短すぎると繊維状に成長させることが難しいと同時に、最終的に得られる繊維状多孔質シリカ粒子の生成量が減少することになる。また、攪拌時間は2時間を越えても繊維状多孔質シリカ粒子の形成には影響はほとんどないが、攪拌工程を短縮する観点から150分以内で十分である。さらに、熟成時間の制御によって、細孔径がコントロールできることも本発明の製造方法の大きな特徴である。また、金属塩等の添加は、低温で熟成する場合には、アスペクト比が大きく良質な長い繊維状多孔質シリカ粒子を作製するには特に効果的である。
熟成温度は、攪拌温度に依存するが、攪拌温度が比較的高い場合を考慮すると20℃以上、好ましくは25℃以上で、上限は特に水溶液中での熟成であることから必要であれば200℃の高温でも問題はないが、通常は200℃以下、好ましくは160℃以下で特に支障はなく、広い温度範囲で熟成を行うことができる。また、表2からわかるように、本発明では、意外なことに、熟成温度を攪拌温度よりも低温で行っても所望の結果が得られる。
本発明の製造法においては、初期段階における撹拌反応で繊維状多孔質シリカ粒子前駆体が生成する条件、即ちロッド状有機無機ナノ複合体が連鎖することを決定づける条件を満たした上で、界面活性剤、酸、シリカ等の反応物質の混合割合、さらには撹拌温度と時間、および熟成温度と時間をコントロールすることによって繊維状粒子の長さ、アスペクト比等の形態並びに細孔特性の制御が可能である。
また、本発明の製造方法では、上記の通り、酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌しながら一定時間混合し、反応溶液に白濁が認められた後、攪拌を停止し、20℃以上の一定温度で熟成して得られた繊維状粒子中の非イオン性界面活性剤を除去することで作製される。
本発明においては、上記原料の添加順序は極めて重要であり、繊維状形態を形成させるためには、水で希釈したアルカリ珪酸塩水溶液を、酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液に添加しなければならない。
[原料]
本発明で使用される、シリカ原料、非イオン性界面活性剤、酸及び金属元素を含む化合物について更に説明する。
本発明で使用されるシリカ原料としては、アルカリ珪酸塩を使用すること6較的廉価であるナトリウム珪酸塩が好ましい。ナトリウム珪酸塩としてはNa2O・mSiO2式中、mは1乃至5の数、特に1.5乃至4.5の数である組成を有するナトリウム珪酸塩水溶液を使用することが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド(PEO)を含む高分子界面活性剤が使用でき、特にPEOを含むトリブロック共重合体が好ましく、さらにはポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド(PEO−PPO−PEO)の使用が最適である。
本発明で使用される、トリブロック共重合体の重合比、平均分子量並びに疎水基の重量割合が重要であり、その平均分子量は約4800以上で、疎水基の重量割合が、重量65%以上であることが望ましく、特にPEO20PPO70PEO20が(商品名Pluronic 123)最適である。
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等いずれも使用することができ、特にロッド状粒子の生成において最も効果的である塩酸が好ましい。また、酸類として種々の廃酸を利用できる可能性もありコスト低減に有用と考えられる。
熟成工程における、水あるいは水に混合して均質な水溶液を形成する固体あるいは液体状の水溶性化合物としては、水溶性であり、シリケート骨格中のSiを置換する元素を含まない化合物であれば特に制限はなく、アルカリ金属、遷移金属等の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、さらにはアルカリ水酸化物等が使用可能であり、またこれらを混合して使用することもできる。例えば、NaCl、KCl、及びMgCl、AlCl、NiCl等の無水塩やその水和物等を使用できる。その添加量はSiO 1モルに対し、金属元素0.01モル以上であって、単分散性の向上が認められれば上限を規定する必要はないが、1モル以下で充分である。なお、ロッド状粒子の単分散化に、熟成工程における金属塩等の添加が極めて効果的であることを明らかにしたことは、本発明において極めて特徴的なことである。
本発明の繊維状多孔質シリカ粒子の合成において、出発原料の混合モル比は、SiO2:非イオン性界面活性剤:Na2O:酸:水=1:0.002〜0.25:0.25〜1:0.6〜15:100〜400であるのが好ましい。熟成工程における水及び水溶性化合物は、出発原料のSiO21モルに対し、それぞれ40乃至200モル、及び0.005乃至5モルであるのが好ましい。特に、アルカリ水溶液中で熟成を行う場合には、水及び水溶性化合物は、出発原料のSiO21モルに対し、それぞれ40乃至200モル、及び0.005乃至0.2モルであるのが好ましい。
更に、出発原料の混合方式を詳細に記述すると、繊維状繊維状粒子合成においては、所定の濃度の酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液(1)に、水に希釈したアルカリ珪酸塩水溶液(2)を攪拌下で添加し、上記混合溶液(1及び2)の撹拌を30分以上行い、反応溶液に白濁が認められた後に停止し、反応生成物を溶液相から分離し、水溶液中において20℃以上で熟成する。なお、熟成時には水に溶解する化合物を添加することができる。熟成反応後懸濁液から固体生成物を分離し、室温〜65℃で充分乾燥させる。繊維状多孔質シリカ粒子を作製する場合には、有機成分を除去するため、加熱処理あるいはエタノール(塩酸)を用いた溶媒抽出法を適用する。加熱処理は400℃で2時間以上、好ましくは500℃以上4加熱処理する。
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されない。
尚、実施例で行った各試験方法は次の方法により行った。
(測定法)
(1)形態と粒子サイズ:日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM5300を使用し、加速電圧10kV、WD10mmで観察した。さらに、日立製電界放射型走査電子顕微鏡S−4700Fを使用して形態観察を行うと共にアスペクト比を求めた。
(2)比表面積・細孔径分布:日本ベル製BELSORP28を使用し、液体窒素温度で測定した窒素吸着等温線からBET比表面積を求め、細孔径分布はBJH法により解析した。さらに、t−プロットから、メソ孔とマイクロ孔に起因する全細孔容積と、マイクロ孔容積を算出した。
(3)X線回折:リガク製ロータフレックスRU−300を使用し、CuKα線源、加速電圧40kV、80mAで測定した。
(実施例1)
本実施例は熟成温度を、攪拌温度より高い温度に設定している。水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20)溶液に攪拌しながら添加した。両原料溶液は予め所定温度35℃あるいは38℃に調整して混合し、両原料溶液を混合してから1〜2時間後に攪拌を停止した。反応懸濁液をろ別し、洗浄して得られた湿潤状態の反応生成物を、そのまま純水中、あるいは金属塩等を添加した水溶液中で、37℃以上で一定時間熟成した後、ろ過・洗浄し、生成物を乾燥させ、最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し繊維状多孔質シリカ粒子を作製した。攪拌時の混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.88:202である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。熟成はSiO1モルに対して、水は80〜85モルの範囲とし、金属塩化物は0.08〜1.6モル、NaOHは0.0015モル、NHOHは0.015モルを使用している。
表1に、本実施例の繊維状多孔質シリカ粒子のBET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積並びにメソ孔径を示す。この結果から、本製造方法においては、攪拌温度が一定の場合、熟成温度が高いほどメソ孔が大きくなり、細孔径を制御できることが分かる。また、攪拌温度並びに攪拌時間を変化させることにより、細孔特性パラメータを調整できることも明らかであり、さらに反応条件によって繊維長をも制御可能である。
(実施例2)
本実施例は熟成温度を、攪拌温度と同一あるいはより低い温度に設定している。水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic P123 (PEO20PPO70PEO20)溶液に攪拌しながら添加した。両原料溶液は予め所定温度30℃あるいは38℃に調整して混合し、両原料溶液を混合してから2時間後に攪拌を停止した。反応懸濁液をろ別し、洗浄して得られた湿潤状態の反応生成物を、そのまま純水中、あるいは金属塩等を添加した水溶液中で、30℃で一定時間熟成した後、ろ過・洗浄し、生成物を乾燥させ、最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し繊維状多孔質シリカ粒子を作製した。攪拌時の混合溶液のモル比はSiO:Pluronic P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.88:202である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。熟成はSiO1モルに対して、水は80〜85モルの範囲とし、金属塩化物は0.08〜1.6モル、NaOHは0.015モルを使用している。
表2に、本実施例の繊維状多孔質シリカ粒子のBET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積並びにメソ孔径を示す。表1の結果も考慮すると、本製造方法においては、熟成時間により細孔特性の調整が可能であり、攪拌温度が高いほどメソ孔径が大きい繊維状多孔質シリカ粒子が製造可能である。また、簡単な温度制御によって、大きな細孔径ばかりでなく、細孔径の小さい繊維状多孔質シリカ粒子が作製できることがわかる。特に、熟成時に添加する化合物は細孔特性の制御に顕著な効果を発揮し、マイクロ孔をほとんど含まない繊維状多孔質シリカ粒子が得られることになる。また、表2からわかるように、本発明では、意外なことに、熟成温度を攪拌温度よりも低温で行っても所望の結果が得られる。
さらに、弱アルカリ性溶液中における熟成は、熟成温度の上昇と同等な効果を引き出すことが明らかである。図8及び図9はそれぞれ実施例1−8及び実施例2−12の弱アルカリ性溶液で作製した繊維状多孔質シリカ粒子のSEM像である。図10に示すX線回折パターン、さらには図11、図12の吸着等温線と細孔分布曲線から、反応温度、特に熟成温度が低くても、規則配列した比較的大きなメソ孔を有することが明らかである。毛管凝縮に起因する相対圧0.6〜0.7の吸着等温線の鋭い立ち上がりは、1次元メソチャンネルのハニカム状配列の高い規則性を示している。
本発明の製造方法は、安価な原料を使用し、ほとんどの反応時間が静置条件による熟成工程であることから工業規模への応用も容易であり、更に、製造される繊維状多孔質シリカ粒子は、高比表面積、細孔径の均一性、単分散性等の特徴を併せ持つことから、形状選択能を利用した分子篩、吸着剤や、高分散性繊維状粒子であることを利用した樹脂添加剤、ガス分離膜、加えて触媒担体、触媒、クロマトグラフ用担体としての利用に適する。また、繊維状多孔質シリカ粒子は、大きく、揃ったアスペクト比を有する非晶質シリカであることから、人体への毒性が問題となっている石綿の代替品や樹脂の強度を高める補強剤、さらには増粘剤として利用が可能である。
すなわち、本発明による繊維状多孔質シリカ粒子は、樹脂添加剤、インク吸着用フィラー、調湿剤、石綿代替材料、増粘剤等の用途に利用される。さらに、繊維状形態を利用して単独乃至他の無機物質および有機化合物と混合することによりフェルト様に加工成型し、各種フィルター素材として広く利用することが可能である。特に、大きな細孔径を有するものでは、酵素あるいは有機官能基を有する大きな分子の吸着・分離・吸蔵・固定剤等として利用することができる。さらに、メソ孔と連結して共存するマイクロ孔を利用して粒子内拡散能に優れた環境汚染排出ガス状物質等の浄化プロセスへの応用、あるいはゼオライトやシリカゲルに代わるマイクロポア多孔体として新規用途を導くことが期待される。また、細孔表面を金属及び金属酸化物等で化学修飾することによって種々の触媒の開発にも展開可能である。さらには、高耐熱環境下における多孔性材料や複合材料等として種々の用途が期待される。

Claims (8)

  1. 酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を30℃から45℃の温度条件下で攪拌しながら混合し、一定温度で所定時間以上攪拌し続けたら反応懸濁液の攪拌を停止して、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を、中性もしくは弱アルカリ性の水溶液中において熟成後、溶液相から分離して得られた繊維状粒子前駆体中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  2. 酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を30℃から45℃の温度条件下で攪拌しながら混合し、一定温度で所定時間以上攪拌し続けたら反応懸濁液の攪拌を停止して、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を、攪拌温度と同一あるいは攪拌温度よりも低い反応温度で、水溶液中において熟成後、溶液相から分離して得られた繊維状粒子前駆体中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  3. 攪拌反応終了後、反応生成物を溶液相から分離・洗浄して得られる湿潤状態の生成物もしくはその乾燥物を熟成する際に、水あるいは水に混合して均質な水溶液を形成する固体あるいは液体状の水溶性化合物を添加することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  4. 非イオン性界面活性剤をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり0.002乃至0.25モルの量で用いること特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  5. 酸をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり0.6乃至15モルの量で用いることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  6. 水をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり100乃至400モルの量で用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  7. 水溶液中で熟成する際に、水をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり40乃至200モルの量で用いることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
  8. 水溶液中で熟成する場合、水溶性化合物をアルカリ珪酸塩中のSiO21モル当たり0.005乃至5モルの量で用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の繊維状多孔質シリカ粒子の製造方法。
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