JP4157324B2 - アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、蛍光体ペースト組成物及び真空紫外線励起発光素子 - Google Patents

アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、蛍光体ペースト組成物及び真空紫外線励起発光素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に波長が200nm以下の真空紫外線(VUV)による励起下で輝度劣化の少ない高輝度の青色発光を呈する真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体(以下、単にアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体ともいう)、この蛍光体を使用した蛍光体ペースト組成物並びに輝度劣化が少なく高効率に発光を持続させ得る真空紫外線(VUV)励起発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、スキャナーの読取り用光源に使われる希ガスランプやプラズマディスプレイパネル(PDP)等に代表されるように、VUVによる励起下で発光する蛍光体を使用した蛍光膜をガラスなどからなる外囲器内に形成すると共に、その中にAr、Xe、He、Ne等の希ガスを単体もしくは混合して封入しておき、封入された希ガスを放電させることによって放射されるVUVによって外囲器内の蛍光膜を励起して発光させる構造・機能を持ったVUV励起発光素子の開発が近年盛んに行われ、実用されている。
【0003】
従来、このVUV励起発光素子の蛍光膜として使用される蛍光体としては(Y,Gd)BO3:Eu等の赤色蛍光体、LaPO4:Ce,Tb、Zn2SiO4:Mn、BaAl1219:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・aAl23:Mn、YBO3:Tb等の緑色発光蛍光体、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn等の青色発光蛍光体などが単一もしくは混合して使用されている。
【0004】
VUV励起発光素子の蛍光膜として用いられる蛍光体の特性としては、VUVによる励起下でより高輝度に発光すること、VUV励起発光素子の蛍光膜形成工程で蛍光体塗膜が500℃前後のベーキング処理を受ける際に蛍光膜としての発光輝度が低下しない(ベーキングによる輝度劣化が少ない)こと、VUV励起発光素子を長時間動作させ、継続的にVUVに晒されても蛍光体が輝度低下(VUVによる輝度劣化)が少ないこと、発光色の色純度が良いこと等が要求されるが、現在実用化されている蛍光体もこれらの特性を全て満足するわけではない。一方、市場ではVUV励起発光素子の諸特性のより一層の改善要求が常にあり、VUV励起用蛍光体についても上記特性の良好な新しい蛍光体の開発が期待されている。
ところで、VUV励起用蛍光体の中で、アルミン酸塩蛍光体は代表的な青色乃至青緑色発光のVUV励起用蛍光体であり、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn等、母体結晶としてMgを必須として含むアルカリ土類金属のアルミン酸塩に2価のEu又はEuとMnとを付活剤とした、通称BAM蛍光体と呼ばれる蛍光体が発光輝度等の発光特性に優れたVUV励起用青色ないし青緑色発光蛍光体として実用されている。しかしながら、このBAM蛍光体は、特にベーキングによる輝度劣化並びにVUVによる輝度劣化が大きい欠点をもった蛍光体であり、これに代わるベーキングによる輝度劣化やVUVによる輝度劣化の少ない青色発光ないし青緑色のVUV励起用蛍光体の開発が望まれている。
【0005】
BAM蛍光体と同じアルミン酸塩で、例えば、母体結晶中にMgを含まないアルカリ土類金属塩にEuを付活剤としたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、波長が200nmより長い紫外線で励起すると青色発光を呈することは良く知られているが(英国特許第1,190,520号公報、米国特許4,827,187号公報等参照)、この蛍光体がVUV励起により高輝度に発光するかどうかも含め、この蛍光体のVUV励起用蛍光体としての諸特性については従来知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、青色発光の新規なVUV励起用蛍光体の開発を意図してなされたものであり、発光効率が高く、特にVUV励起用蛍光体としてVUVによる輝度劣化が少なく、色純度の良好な青色発光を呈するアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、この蛍光体を用いた蛍光体ペースト組成物並びにVUV励起発光素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するため、Euを付活剤とした種々の組成のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体について詳細に検討した。
一般に、波長が200nmより長い紫外線で励起すると効率良く発光する蛍光体でも、これを波長200nm以下のVUVで励起した場合には高効率で発光するとは言えない。
しかしながら、本発明者等は水銀ランプ用蛍光体として従来から知られている、Mgを含まないアルカリ土類アルミン酸塩にEuを付活剤としたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、波長200nm以下のVUV励起によって青色発光を呈すること、更には特に化学組成的には同じであっても結晶構造が特定の構造である場合、VUV励起下で高効率の発光をするのに加えて、特に耐VUV性が向上してVUVによる輝度劣化が低減されること、この蛍光体を分散させた蛍光体ペースト組成物を用いて形成した蛍光膜を具備したVUV励起発光素子は青色成分のVUVによる輝度劣化が改善され、長時間使用しても高輝度の青色発光を維持すること、を見出し本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は以下の構成からなる。
(1)一般式a(M1−xEu)O・6Al23で表される蛍光体であり、該蛍光体のCuKα1特性X線による粉末回折X線スペクトルにおいて、該スペクトルの回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって幅広い帯状のピークを有するアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であって、化学量論的に前記一般式となる割合で混合してなる蛍光体原料化合物を還元性雰囲気中、1300〜1800℃の温度で焼成して製造されることを特徴とする真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。(但し、前記式中、MはBa、SrおよびCaから成る群より選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表し、xおよびaは、それぞれ0<x<1及び0.9≦a≦1.8なる条件を満たす数を表す)。
(2)前記Mは前記アルカリ土類金属元素の50モル%以上のBaから成ることを特徴とする前記(1)記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。
【0009】
(3)前記幅広い帯状のピークの半値幅が0.5°以上であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。(前記蛍光体のCuKα1特性X線による粉末回折X線スペクトルにおいて、該スペクトルの回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって半値幅0.5°以上のピークを有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。)
【0010】
(4)前記(蛍光体のCuKα1特性X線による)粉末回折X線スペクトルにおいて、該スペクトルの回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって存在するピークの積分値が、前記スペクトルの回折角(2θ)が21°〜22°の角度領域にわたって存在する独立したピークの積分値の0.5倍以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいづれかに記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。
【0011】
)バインダー(結合剤)を溶解した溶媒中に蛍光体を分散含有させてなる蛍光体ペースト組成物において、前記蛍光体が前記(1)〜()のいづれかに記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であることを特徴とする蛍光体ペースト組成物。
)前記蛍光体の含有率が5〜70重量%であることを特徴とする前記()記載の蛍光体ペースト組成物。
【0012】
)内部に蛍光膜が形成された真空外囲器内に封入されている希ガスの放電によって放射される真空紫外線により該蛍光膜を励起して発光させる真空紫外線励起発光素子において、該蛍光膜に前記(1)〜()のいづれかに記載の真空紫外線励起アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を用いることを特徴とする真空紫外線励起発光素子。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、1)Ba、SrおよびCaから成る群より選択される少なくとも1種のアルカリ土類元素、2)Al元素および3)付活剤であるEu元素の各酸化物、またはこれら1)〜3)の各元素の炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物等の化合物を、化学量論的に a(M1-XEuX)O・6Al23(但し、上記式中、Mは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表し、xおよびaは、それぞれ0<x<1及び0.9≦a≦1.8なる条件を満たす数を表す。以下同様である。)となる割合で秤取し、これらの混合物からなる蛍光体原料化合物を十分混合し、アルミナ坩堝等の耐熱容器に充填して焼成し、得られた焼成物に通常の蛍光体製造時に適用される後処理工程と同様に分散、水洗、乾燥、篩分けの諸処理を施すことによって製造することができる。上記組成式において、VUV励起下で発光する蛍光体を得るためにはx値が0より大で1より小とする必要があり、また、a値については0.9より小さいか1.8より大であれば化学組成的に不純物成分の混在量が多くなり、高輝度で耐VUV性の優れた蛍光体が得られないので好ましくない。焼成に供される蛍光体原料化合物中には、BAM蛍光体など従来のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体製造の場合と同様に、反応促進のためにAlF,BaF,CaF,SrF,NHHFなどのフッ化物をフラックスとして蛍光体原料化合物の混合物中に添加しておくこともできる。
【0014】
本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、a(M1-XEuX)O・6Al23なる組成式において、x値及びa値がそれぞれ、0<x<1及び0.9≦a ≦1.8なる範囲にあるとき、VUVで励起すると青色の発光を呈するが、VUV励起したときの発光輝度の観点から、特に、前記組成式において、前記x値及びa値がそれぞれ、0.03≦x≦0.5及び1.1≦a≦1.5であることがより好ましい。上記組成式中のx及びa値に関し、x値が0.03より小さくても0.5を越えても得られる蛍光体のVUV励起下での発光輝度が低くなってしまう。また、a値については1.1より小さいか1.5より大であれば化学組成的に不純物成分の混在が避けられず、高輝度で耐VUV性の優れた蛍光体を得るのが困難になる。
VUV励起したときの発光輝度(刺激和)の観点から、本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、蛍光体の母体結晶の一部を構成するM元素がBaであるか、もしくは50モル%以下、より好ましくは20モル%以下のBaをSrおよびCaの中の少なくとも1つで置換したアルカリ土類金属元素であることが好ましい。
【0015】
蛍光体原料化合物は、1300〜1800℃の温度で還元性雰囲気中で、その充填量に応じて2〜40時間かけて1回以上焼成する。焼成温度を1300℃より低くすると得られる蛍光体のVUVによる輝度劣化の程度が大になると共に、VUV励起下での十分な発光輝度が得られず、また、1800℃より高くすると不要なエネルギーを消費することになり工業的に好ましくない。
また、焼成時の還元性雰囲気を得るためには、蛍光体原料化合物が充填された坩堝中に黒鉛や活性炭を埋め込む方法、黒鉛や活性炭を充填した坩堝内に蛍光体原料化合物を充填した坩堝を埋め込む方法、窒素と水素の混合気体中で焼成する方法等が挙げられる。
更に、焼成雰囲気中には水蒸気が含まれていてもよい。
【0016】
上記のようにして製造された本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体の特徴は、この蛍光体の粉末にCuKα1特性X線を照射して粉末回折X線スペクトルを測定し、そのスペクトルを観察すると、回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって幅広い帯状のピークが認められることであり、この幅広い帯状のピークの強度が大であるほど、その蛍光体のVUV励起下での発光輝度が高く、しかもVUVによる輝度劣化の程度が少ない。
なお、本発明の蛍光体の上記粉末回折X線スペクトルにおいて、この回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって見られる幅広い帯状のピークとは局所的に見られる小さくてシャープなピークではなく、図1から分かるようにブロードなピークを言うが、この回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域での幅広いピークの半値幅が0.5°以上であり、さらには1°以上であることがVUV励起下での発光輝度をより高め、VUVによる輝度劣化がより抑制され得る点でより好ましい。
【0017】
また、別の観点からみると、上記粉末回折X線スペクトルにおいて、回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域における幅広いピークの回折X線カウント数の積分値(I28)と回折角(2θ)が21°〜22°の角度領域に現れる独立したピークの回折X線カウント数の積分値(I21)とをそれぞれ求め、この比(α)を算出したとき、このα値が0.5以上であれば蛍光体のVUV励起下での発光輝度が高く、しかもVUVによる輝度劣化の程度が少ない。さらに発光輝度の向上とVUVによる輝度劣化抑制効果の点でα値が0.8以上であればより好ましい。
このα値を求めるには、例えば図1に例示した蛍光体の粉末回折X線スペクトルであれば、回折角(2θ)が16°〜17°の角度領域ではX線回折強度のピークが観察されていないので、この角度領域をバックグラウンドとみなして、この16°〜17°の角度領域での回折X線カウント数の積分値(I16)を求め、更に、回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域における幅広いピークの回折X線カウント数の積分値(I28)と回折角(2θ)が21°〜22°の角度領域に現れる独立したピークの回折X線カウント数の積分値(I21)とをそれぞれ求めて、(I28−3×I16)/(I21−I16)なる値を算出することによって求めることができる。
【0018】
図1は、前記組成式においてa=1.286、x=0.1{即ち、組成式が1.286(Ba0.9,Eu0.1)O・6Al23}である、下記実施例1のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体のCuKα1特性X線による粉末回折X線スペクトルを示した図である。図1において曲線a、b、c、d、e及びfはそれぞれ1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃及び1700℃で焼成した各蛍光体について測定したスペクトルであり、曲線a〜fの6つの曲線の回折角(横軸)をそれぞれ一致させて各曲線を積み重ねて描いたものであって、縦軸の相対高さは同一曲線内では相対比較できるが各曲線間での比較はできない。
【0019】
図1からわかるように、1300℃〜1700℃で焼成された蛍光体(曲線b〜f)では、粉末回折X線スペクトルにおいて該スペクトルの回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にかけて弱い幅広のピークが認められるのに対し、1200℃で焼成された蛍光体(曲線a)では粉末回折X線スペクトルにおいて回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にはこのピークが全く認められない。この粉末回折X線スペクトルにおける回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域に現れる幅広い帯状のピークは、蛍光体原料を1300℃以上の温度で焼成して得られたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体には現れるが1300℃よりも低い温度で焼成された蛍光体には認められなかった。
なお、本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は波長が200nmより大の紫外線や電子線,X線などの電磁波や電離放射線で励起されても色純度の良い青色発光を示す。
【0020】
次に、本発明の蛍光体ペースト組成物について述べる。
本発明の蛍光体ペースト組成物は、蛍光体粉末として上記のようにして得た本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を用いる以外は従来の蛍光体ペースト組成物において使用されている成分を含有している。
本発明の蛍光体ペースト組成物は、本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を用いる以外は従来の蛍光体ペースト組成物を製造する場合と同様にして製造される。例えば、本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体とバインダー樹脂が溶解された溶媒とをそれぞれ所定量混合した混合物を十分に撹拌・混練して蛍光体を分散させると共に、使用目的にかなった粘度に調整することによって得ることが出来る。
【0021】
本発明の蛍光体ペースト組成物の製造に際して、上記アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体と共に用いるバインダー樹脂としては、使用目的に応じてエチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエチレンオキサイド、アクリル樹脂等が使用され、また、蛍光体及び結合剤樹脂を分散させるためと粘度調整のために、蛍光体及びバインダー樹脂と共に使用される溶媒としては水、酢酸ブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピオネール等が挙げられる。
アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体の配合量は、溶媒を除く蛍光体とバインダー樹脂との全重量に対して5〜70重量%とし、この蛍光体とバインダ−樹脂を溶解した溶媒を混和し、これを撹拌・混練して最後に溶媒を添加し粘度調整するのが塗膜厚のコントロールや塗布の作業性等の点で好ましい。
【0022】
次に、本発明のVUV励起発光素子について詳述する。
本発明のVUV励起発光素子の1つである希ガスランプを製造する場合は、例えば、所望の内径を有する透明なガラス細管の一端から、管内壁面上を流動可能な程度にまで粘度を調節された本発明の蛍光体ペースト組成物を流し塗りし、これを乾燥させ、更にベーキング処理をして有機物成分を焼成揮散させるとか、もしくは蛍光体ペースト組成物を塗布乾燥したガラス板等をガラス細管内部に入れた後、そのガラス管の内部を排気してから管内に少量の希ガスを封入し、ガラス細管の両端もしくはガラス管壁を挟む内外両面もしくはガラス管の外部の対向した両面に電極を取り付け、そのガラス管の両端を封じる。このようにして本発明のVUV励起発光素子の1つである希ガスランプとする。
【0023】
また、本発明のVUV励起発光素子の他の1例であるPDPを製造する場合は、例えば、ガラス板等の背面板に内部電極を形成し、ストライプ状もしくはマトリックス状の隔壁を設けて複数のセルを構成し、赤、緑、青の各色毎にセルを構成する各隔壁の底部並びに内壁にスクリーン印刷法等の方法により赤、緑、青の蛍光体ペースト組成物を塗布する。青色蛍光体ペーストとして本発明の蛍光体ペースト組成物を用いる。これを乾燥しベーキングして各セル内に蛍光膜を形成すると共に背面板と一定間隔を隔てて内部電極が形成されたガラス板等からなる前面板を対向配置し前面板と背面板との周囲を封じて、内部を排気してから希ガスを封入して本発明のVUV励起発光素子の1つであるPDPとする。
【0024】
その他、本発明のVUV励起発光素子は、上記の希ガスランプやPDPの外、その種類、形態等の如何に関係なく、それぞれのVUV励起発光素子における外囲器内の発光面となる支持体の表面に本発明の蛍光体ペースト組成物を公知の方法で塗布し、これを乾燥させ、ベーキング処理してそれぞれの蛍光膜を形成し、蛍光膜が形成された外囲器内に希ガスを封入して製造される。
このようにして得られた本発明のVUV励起発光素子は動作中の発光輝度の低下の少ない高輝度のVUV励起発光素子を得ることができる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0026】
[実施例1A]
BaCO3 :1.1574 モル
Eu23 :0.0643 モル
Al23 :6.0 モル
AlF3 :0.01 モル
上記各蛍光体原料を十分混合した後、アルミナ坩堝に充填し黒鉛を入れ蓋をして水蒸気を含んだ窒素中で最高温度1600℃で昇降温時間を含め24時間かけて焼成した。次いで、焼成粉を篩にかけて組成式が1.286(Ba0.9Eu0.1)O・6Al23であるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を得た。
この蛍光体のCuKα1特性X線による粉末回折X線スペクトルを測定したところ、図1の曲線eに示すように回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にかけて幅広い帯状のピークが観測された。該幅広い帯状のピークの半値幅が1.10°であり、α値が1.15であった。
【0027】
[実施例1B]
30重量%の実施例1Aのアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、10重量%のブチルカルビトール、53重量%のブチルカルビトールアセテート及び7重量%のエチルセルロースを十分に混練して実施例1Bの蛍光体ペースト組成物を製造した。
この実施例1Bの蛍光体ペースト組成物をガラス板上に500μmの厚さで塗布し、120℃で30分間放置して乾燥させ、これを更に空気中500℃で30分間ベーキングして得た蛍光膜に波長146nmのVUVを照射して、輝度計によりその発光輝度並びに発光色度点(x値,y値)を測定し、発光輝度を発光色の色度座標のy値で除した値である、刺激和(輝度/y)を求めたところ、これと同一の条件で測定した、下記比較例1Bの蛍光体ペースト組成物からなる蛍光膜の刺激和(輝度/y)を100とすると、実施例1Bの蛍光体ペースト組成物からなる蛍光膜の刺激和(輝度/y)は271.4であった。
なお、青色発光蛍光体の輝度はその発光色(色度点のy値)に比例して大きく変わるが、発光色(y値)の異なる蛍光体間の発光効率を相互比較する簡便な方法として輝度をy値で割った値で比較することが一般に行われる。そこで、本発明においても、発光輝度の測定値はそれぞれ上記定義の刺激和(輝度/y)を求めて相互に相対比較した。
【0028】
[実施例1C]
上記のようにして得られた実施例1Bの蛍光体ペースト組成物を幅2mmのガラス板上に塗布し、120℃で60分乾燥後500℃で30分焼成した。このガラス板を外径4mmのガラス管内に保持し、このガラス管の両端にニッケルの電極を付け、管内を真空に排気した後、Ne98%−Xe2%のガスを50Torr封入して、実施例1CのVUV励起発光素子(希ガスランプ)を作製した。
この実施例1CのVUV励起発光素子を連続点灯し、点灯直後並びに点灯してから24時間後の刺激和(輝度/y)をそれぞれ求め、点灯直後に対する、点灯してから24時間後の刺激和(輝度/y)の相対値(刺激和維持率)を算出したところ、実施例1CのVUV励起発光素子の刺激和維持率は85%であった。
【0029】
表1に実施例1Aの蛍光体を製造した際に用いた蛍光体原料の種類及びその配合比並びに焼成温度を示す。
また、表2に実施例1Aの蛍光体の組成式、粉末回折X線スペクトルにおいて回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域に現れる幅広い帯状のX線回折ピークの存在の有無、半値幅、α値、実施例1Bの蛍光体ペースト組成物からなる蛍光膜のVUV励起下での相対刺激和(輝度/y)及び実施例1CのVUV励起発光素子の刺激和維持率をそれぞれ示す。
【0030】
[実施例2A〜16A,比較例1A]
表1に示した化合物並びにその配合比の蛍光体原料を用い、これらを表1に示した焼成温度で焼成した以外は実施例1Aと同様にして実施例2A〜16A並びに比較例1Aの蛍光体を得た。
表2にこれら実施例2A〜16A及び比較例1Aの蛍光体の組成及び粉末回折X線スペクトルにおいて回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域に現れる幅広い帯状のX線回折ピークの存在の有無、半値幅及びα値を示す。
【0031】
[実施例2B〜16B,比較例1B]
実施例1Aの蛍光体に代えて実施例2A〜16A及び比較例1Aの各蛍光体を用いた以外は実施例1Bの蛍光体ペースト組成物を製造した場合と同様にして実施例2B〜16B及び比較例1Bの蛍光体ペースト組成物を製造した。
実施例1Bと同様にしてこれらの組成物からなる蛍光膜を作成し、これに波長146nmのVUVを照射して、その際の発光を実施例1Bと同一の条件で測定して各刺激和(輝度/y)を求め、比較例1Bの蛍光体からなる蛍光膜の刺激和(輝度/y)を100とした時の各蛍光膜の刺激和(輝度/y)の相対値を求めた結果を表2に示す。
【0032】
[実施例2C〜16C,比較例1C]
実施例1Bの蛍光体ペースト組成物に代えて実施例2B〜16B及び比較例1Bの各蛍光体ペースト組成物を用いて蛍光膜を作成した以外は実施例1CのVUV励起発光素子を製造した場合と同様にして実施例2C〜16C及び比較例1CのVUV励起発光素子を製造し、このVUV励起発光素子の刺激和維持率を実施例1Cと同様にして測定した結果を表2に示す。
【0033】
[比較例2A]
BaCO3 :0.9 モル
Eu23 :0.05 モル
3MgCO3・Mg(OH)2 :0.25 モル
Al23 :5.0 モル
AlF3 :0.01 モル
上記各蛍光体原料を十分混合した後、アルミナ坩堝に充填し黒鉛を入れ蓋をして水蒸気を含んだ窒素中で最高温度1450℃で昇降温時間を含め24時間かけて焼成し、冷却して1次焼成物を得た。得られた焼成粉を篩にかけて組成式が(Ba0.9Eu0.1)MgAl1017である比較例2AのBAM蛍光体を得た。
粉末回折X線スペクトルにおいて回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域に幅広い帯状のX線回折ピークは現れなかった。
【0034】
[比較例2B]
実施例1Aの蛍光体に代えて比較例2AのBAM蛍光体を用いた以外は実施例1Bの蛍光体ペースト組成物を製造した場合と同様にして比較例2Bの蛍光体ペースト組成物を製造した。
実施例1Bと同様にしてこの組成物からなる蛍光膜を作成し、これに波長146nmのVUVを照射して、その際の発光の刺激和(輝度/y)を求めたところ、これと同一の条件で測定した、上記比較例1Bの蛍光体ペースト組成物からなる蛍光膜の刺激和(輝度/y)を100とすると、比較例2Bの蛍光体ペースト組成物からなる蛍光膜の刺激和(輝度/y)は188.4であった。
【0035】
[比較例2C]
実施例1Bの蛍光体ペースト組成物に代えて比較例2AのBAM蛍光体を用いた以外は実施例1CのVUV励起発光素子を製造した場合と同様にして比較例2CのVUV励起発光素子を製造した。
このVUV励起発光素子の刺激和維持率を実施例1Cと同様にして測定したところ、刺激和維持率は82.1%であった。
【0036】
【表1】
Figure 0004157324
【0037】
【表2】
Figure 0004157324
【0038】
【表3】
Figure 0004157324
【0039】
【表4】
Figure 0004157324
【0040】
表2から分かるように、CuKα1特性X線による粉末回折X線スペクトルにおいて、回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にかけて幅広い帯状のピークを有する結晶構造を持った本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を蛍光膜とするVUV励起発光素子(実施例1C〜16C)は、粉末回折X線スペクトルにおいて、回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域に幅広い帯状のピークを有しない結晶構造を持った従来のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を蛍光膜とするVUV励起発光素子(比較例1C)に比べ、蛍光体のVUVによる輝度劣化の程度が低減されるため、刺激和維持率が著しく改善される。しかも、VUV励起下での刺激和(輝度/y)で表した発光効率も、本発明の蛍光体ペースト(実施例1B〜16B)からなる蛍光膜の場合、回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域に幅広い帯状のピークを有しない結晶構造を持った従来のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を含有する蛍光体ペースト(比較例1B)からなる蛍光膜に比べておよそ2〜2.7倍高かった。
また、特に本発明のVUV励起発光素子とした場合(実施例1C〜16C)の刺激和維持率は、BAM蛍光体を蛍光膜とするVUV励起発光素子(比較例2C)に比べても相当程度向上していた。
【0041】
【発明の効果】
本発明のEu付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体及びこれを用いた蛍光体ペースト組成物は、波長200nm以下のVUV励起により高効率の青色発光を呈し、VUVによる輝度劣化が少ないため、本発明の蛍光体ペースト組成物を用いて製造されたVUV励起発光素子は、長時間動作中における発光効率の変化が少なく高輝度の発光を維持させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光体を含むアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体の粉末回折X線スペクトルである。

Claims (6)

  1. 一般式a(M1−xEu)O・6Al23で表される蛍光体であり、該蛍光体のCuKα1特性X線による粉末回折X線スペクトルにおいて、該スペクトルの回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって幅広い帯状のピークを有するアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であって、化学量論的に前記一般式となる割合で混合してなる蛍光体原料化合物を還元性雰囲気中、1300〜1800℃の温度で焼成して製造されることを特徴とする真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。(但し、前記式中、MはBa、SrおよびCaから成る群より選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を表し、xおよびaは、それぞれ0<x<1及び0.9≦a≦1.8なる条件を満たす数を表す)。
  2. 前記幅広い帯状のピークの半値幅が、0.5°以上であることを特徴とする請求項1記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。
  3. 前記粉末回折X線スペクトルにおいて、該スペクトルの回折角(2θ)が28°〜31°の角度領域にわたって存在するピークの積分値が、前記スペクトルの回折角(2θ)が21°〜22°の角度領域にわたって存在する独立したピークの積分値の0.5倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体。
  4. バインダーを溶解した溶媒中に蛍光体を分散含有させてなる蛍光体ペースト組成物において、前記蛍光体が請求項1〜のいづれかに記載の真空紫外線励起用アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であることを特徴とする蛍光体ペースト組成物。
  5. 前記蛍光体の含有率が5〜70重量%であることを特徴とする請求項記載の蛍光体ペースト組成物。
  6. 内部に蛍光膜が形成された真空外囲器内に封入されている希ガスの放電によって放射される真空紫外線により前記蛍光膜を励起して発光させる真空紫外線励起発光素子において、上記蛍光膜に請求項1〜のいづれかに記載の真空紫外線励起アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を用いることを特徴とする真空紫外線励起発光素子。
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