JP4046542B2 - 珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体、蛍光体ペースト組成物及び真空紫外線励起発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長が200nm以下の真空紫外線(VUV)による励起によって青色に発光し、真空紫外線励起発光素子として用いられるVUV用珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体(以下、2価金属珪酸塩蛍光体という)、またこの蛍光体を含有する蛍光体ペースト組成物及びこれを用いた蛍光膜を具備した真空紫外線励起発光素子(VUV励起発光素子)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えばスキャナーの読みとり用光源等に使われる希ガスランプやプラズマディスプレイパネル(PDP)等に代表されるように、Ar、Xe、He、Ne、Xe−Ne等の希ガスをガラス等によって形成された外囲器中に封入し、その希ガスの放電によって放射されるVUVにより外囲器内部のVUV用蛍光体からなる蛍光膜を励起して発光させる構造のVUV励起発光素子の開発が盛んに行われている。
【0003】
VUV励起発光素子の代表例である希ガスランプは、ガラス製の細管内にXe、Xe−Ne等の希ガスが封入されていて、その管の内壁面には、VUVにより励起されると発光するVUV用蛍光体からなる蛍光膜が形成されている。この希ガスランプの電極間に電気エネルギーを印加すると、該ガラス細管内に希ガス放電が起こり、その時放射されるVUVにより管の内壁面に形成されている蛍光膜が励起されて可視光を発する。
【0004】
また、VUV励起発光素子の他の代表例であるPDPは原理的には、前記のVUV励起の希ガスランプを更に小さくし、複数の希ガスランプをストライプ状、もしくはマトリックス状に並べたものと考えることが出来る。つまり、狭い放電空間(セル)がストライプ状、もしくはマトリックス状に配置されたものである。各セルには電極が設けられ、この各セルの内部にはVUV用蛍光体からなる蛍光膜が形成されている。各セル内にはXe、Xe−Ne等の希ガスが封入されて、セル内の電極から電気エネルギーを印加すると、セル内に希ガス放電が起こってVUVが放射され、このVUVによりセル内の蛍光膜が励起されて可視光を発し、この発光によって画像が表示される。フルカラーPDPの場合、VUV励起により赤、青、緑に発光する蛍光体からなる各セルをストライプ状もしくはマトリックス状に配列することにより、フルカラーの表示を行うことが出来る。
【0005】
そして、これらのVUV励起発光素子の蛍光膜形成のための蛍光体としては(Y,Gd)BO3:Eu等の赤色発光蛍光体、LaPO4:Ce,Tb、(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu,Mn、Zn2SiO4:Mn等の緑色発光蛍光体、BaMgAl10O17:Eu等の青色発光蛍光体等が所望の発光色に応じてそれぞれ単独もしくは混合して用いられている。(電子材料誌 1997年12月号工業調査会社等参照)。VUV励起発光素子の蛍光膜として実用されている、これらのVUV用の実用蛍光体の中、青色成分として主として実用されている蛍光体はBaMgAl10O17:Euの組成をもった、通称BAMと略称されているアルミン酸塩蛍光体であるが、このBAM蛍光体はVUVを照射して励起した時の発光輝度が高く、また青色としての色純度が良好であるものの、VUV励起発光素子の蛍光膜の製造時におけるベーキング工程での輝度劣化(ベーキング劣化)が大きいことと、VUV励起発光素子を駆動させた時、VUVに長時間晒らされた際の輝度の経時劣化(VUV劣化)が大きいといった欠点を有してる。
【0006】
これに対して、製造工程におけるベーキング劣化が少なく、かつVUV劣化少ない小さい青色蛍光体として、Euを付活剤とし、その組成式がCaMgSi2O6:Euで表される2価金属の珪酸塩蛍光体が報告されている(Proceedings of The 8th International Display Workshops 2001 pp.1115 参照)が、この蛍光体は従来の青色蛍光体であるBAM(BaMgAl10O17:Eu)と比較して輝度が低いのが問題である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたもので、VUV劣化が少なく、従来のものよりも発光輝度の改善された2価金属珪酸塩蛍光体、蛍光体ペースト組成物並びにVUV励起発光素子を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、VUV劣化が比較的少ないことが知られている、組成式CaMgSi2O6:EUで表される2価金属珪酸塩蛍光体の母体結晶に対して付活剤のEuの外に種々の金属元素を添加、含有させてみて、VUV励起下での発光輝度に及ぼす添加元素の影響について詳細に検討した結果、組成式がCaMgSi2O6:Euである2価金属珪酸塩にLaを特定量添加してこれを組成中に含有させると特にVUV励起下での発光輝度が増強され、この蛍光体を用いた蛍光体ペースト組成物により蛍光膜を形成すると青色成分の輝度が改善されたVUV励起発光素子となることを見出し本発明に至った。本発明の上記目的は以下のような構成とすることによって達成される。
【0009】
(1)一般式(Ca1−xEux)O・aMgO・bSiO2・cLa2O3で表され、波長が200nm以下の真空紫外線による励起によって発光し、真空紫外線励起発光素子として用いられることを特徴とする珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体。(但し、上記式中、a、b、cおよびxは、それぞれ0.9≦a≦1.1、1.9≦b≦2.2、0<c≦2.5×10−2および5×10−3≦x≦0.1なる条件を満たす数を表す。)
(2)上記a、b及びcが、それぞれa=1、b=2および2.5×10−4≦c≦1.5×10−2なる条件を満たす数であることを特徴とする上記(1)に記載の珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体(請求項2の発明)。
【0010】
(3) バインダーを溶解した溶媒中に蛍光体を分散させてなる蛍光体ペースト組成物に
おいて、上記蛍光体が上記(1)又は(2)に記載の珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体であることを特徴とする蛍光体ペースト組成物(請求項3の発明)。
(4)蛍光膜が形成された外囲器内に封入されている希ガスの放電によって放射される真空紫外線により該蛍光膜を励起して発光させる紫外線励起発光素子において、上記蛍光膜が、上記(1)又は(2)に記載の珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体により形成されていることを特徴とする真空紫外線励起発光素子(請求項4の発明)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の蛍光体を製造するには、従来から知られている2価金属珪酸塩蛍光体と同様、蛍光体を構成するCa、Mg、Si、La及びEuの各金属の酸化物または高温で酸化物に変わり得る炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物等の上記各金属の化合物からなる蛍光体原料混合物を、化学量論的にその組成式が(Ca1−xEux)O・aMgO・bSiO2・cLa2O3(但し、上記式中、xは5×10−3≦x≦0.1なる条件、a,bおよびcはそれぞれ0.9≦a≦1.1、1.9≦b≦2.2、および0<c≦2.5×10−2なる条件を満たす数を表す。以下同様である)となるような割合で混合し、アルミナ坩堝等の耐熱容器に充填して、還元性雰囲気で、1000〜1400℃の温度で2〜40時間かけて1回以上焼成し、この焼成物に分散、水洗、乾燥、篩かけ等の蛍光体製造時に通常行われる後処理を行うことによって製造することが出来る。なお、上記蛍光体原料混合物中には更にフッ化物等のフラックスを添加しておいてから焼成しても良い。
【0012】
図1は、上記組成式においてa、b及びxの各値がそれぞれ1.0、2.0及び2×10−2であって、Laの添加量(c値)の異なる2価金属珪酸塩蛍光体{(Ca0.98Eu0.02)O・MgO・2SiO2・cLa2O3}を製造し、得られた蛍光体に146nmのVUVを照射して発光させた際の各蛍光体の発光輝度を、Laを添加しなかった蛍光体(c値=0の場合)に対する相対値で示したグラフである。なお、青色蛍光体の輝度はその発光色(CIE表色系色度座標における色度点のy値)に比例して大きく変化するので、発光色のy値の異なる蛍光体間の発光効率を比較する簡便な方法として発光輝度をy値で割った(輝度/y)値(刺激和)で比較することが一般に行われる。そこで本発明においても、蛍光体間の発光効率(発光輝度)は刺激和で相互比較することとした。本明細書において発光輝度ないし輝度とはいづれも上記定義の「刺激和」のことをいう。図1における縦軸の「相対輝度」も各蛍光体について求めた刺激和の相対値である。
【0013】
図1からわかるように、従来の2価金属珪酸塩蛍光体{(Ca0.98Eu0.02)O・MgO・2SiO2}に少量のLaを添加することによってその発光輝度は向上するが、添加されるLaの量をある一定量よりも多くすると発光輝度はLaが添加されていない蛍光体に比べて次第に低下することがわかる。なお、図示していないが、この珪酸塩蛍光体において、組成中におけるMgOの割合(a値)が1.0であり、SiO2の割合(b値)が2.0であり、Euの濃度(x値)が2×10−2である組成以外の組成の蛍光体においても、所定の発光輝度が得られるような組成範囲にある場合、Laの含有量(c値)とこの蛍光体のVUV励起下での発光輝度との間には図1とほぼ類似の相関があることが確認された。
【0014】
従って、本発明の2価金属珪酸塩は、上記組成式において蛍光体組成中のLaの含有量(c値)が0<c≦2.5×10−2なる条件を満たす場合、VUV励起下での発光輝度はLaを組成中に含まない従来の2価金属珪酸塩蛍光体よりも発光輝度が高く、発光輝度の観点からc値がおよそ2.5×10−4〜1.5×10−2の範囲にあることがより好ましい。一方、c値が2.5×10−2より大になるとLa添加による輝度上昇の効果よりも、異相の生成による輝度低下の効果が大きくなってしまうので好ましくない。
【0015】
a値及びb値はそれぞれ0.9≦a≦1.1及び1.9≦b≦2.2の範囲にあるのが好ましく、蛍光体の結晶性の点から、a=1及びb=2であることが特に好ましい。このa値及びb値の上記各範囲からのずれが大きいと結晶性の不完全な蛍光体や異相が副生され、発光輝度が低下する原因となるので好ましくない。
【0016】
また、Euの濃度(x値)は同じく発光輝度の点で5×10−3≦x≦0.1なる範囲となる組成が好ましく、特に5×10−3≦x≦5×10−2の範囲とするのがより好ましい。このx値が0.1を越えると上記組成とは異なった異相を形成して蛍光体の輝度を低下させ、また5×10−3よりも低いと発光中心の量が不足し得られる蛍光体の発光輝度が低くなってしまう。
【0017】
本発明の蛍光体ペースト組成物は、バインダー樹脂が溶解した溶媒中に本発明の2価金属珪酸塩蛍光体を加えて十分に混練して溶媒の量を調節することによって使用用途に応じて適当な粘度のペースト状にすることにより製造することができる。
【0018】
本発明の蛍光体ペースト組成物を製造する際のバインダー樹脂としては、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエチレンオキサイド、アクリル樹脂等が使用され、また、ペーストの粘度調整のために使用される溶媒としては水、酢酸ブチル、ブチルカルビトール、テルピネオール等の溶媒が使用される。また本発明の蛍光体ペースト組成物中の蛍光体としては、その目的、用途に応じて本発明の2価金属珪酸塩蛍光体とこれ以外の組成の蛍光体との混合蛍光体を用いても良いことはいうまでもない。
【0019】
また、本発明のVUV励起発光素子は、ガラスなどからなる外囲器内におけるその素子に応じた所定の場所に本発明の蛍光体ペースト組成物を塗布し乾燥した後、ベーキング処理して蛍光膜を形成することによって上記本発明の2価金属珪酸塩蛍光体からなる蛍光膜が形成される以外は従来のVUV励起発光素子と同様にして製造される。
【0020】
上述のようにして得られた本発明の2価金属珪酸塩蛍光体は、Laを組成中に含有していない従来の2価金属珪酸塩蛍光体に比べて発光輝度が増大し、この蛍光体を含む本発明の蛍光体ペースト組成物により形成された蛍光膜を有する本発明のVUV励起発光素子の発光輝度が増大する。
【0021】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明する。
〔実施例1〕
CaCO3 0.98 モル
MgCO3 1.0 モル
Eu2O3 0.01 モル
SiO2 2.0 モル
La2O3 0.0005 モル
NH4F・HF 0.05 モル
【0022】
上記各化合物を十分に混合して蛍光体原料とし、この蛍光体原料をアルミナ坩堝に充填し、還元雰囲気中で、最高温度1150℃で昇降温時間を含め14時間かけて焼成した。この焼成物に蛍光体の後処理法として通常行われている分散、水洗、乾燥、篩いがけの処理を施して、組成式が(Ca0.98Eu0.02)O・MgO・2SiO2・0.0005La2O3である、実施例1のLa元素を含有したEu付活珪酸塩蛍光体を得た。
【0023】
このようにして得られた実施例1の蛍光体の粉末を、直径12mm、深さ1mmの円柱状の窪みを持ったセルに充填し、その上をガラス板で押し詰めして平らな粉末の蛍光面を作成し、この蛍光面に146nmのVUVを照射して励起し発光させてその時の発光輝度と発光色を測定し、刺激和(発光輝度/y値)を測定したところ、これと同様にして測定した、組成式(Ca0.98Eu0.02)O・MgO・2SiO2で表される下記比較例1の蛍光体の刺激和の104%の値であった。
【0024】
〔実施例2〕
CaCO3 0.98 モル
MgCO3 1.0 モル
Eu2O3 0.01 モル
SiO2 2.0 モル
La2O3 0.005 モル
NH4F・HF 0.05 モル
【0025】
上記各化合物を十分に混合して蛍光体原料とした以は実施例1の蛍光体と同様にして組成式が(Ca0.98Eu0.02)O・MgO・2SiO2・0.005La2O3である、La元素を含有した実施例2のEu付活珪酸塩蛍光体を得た。
この実施例2の蛍光体を実施例1と同様にして、146nmの真空紫外線で励起して発光させた時の発光輝度並びに発光色の色度点を測定し、その刺激和(発光輝度/y値)を求めたところ、下記比較例1の蛍光体の刺激和の104%であった。
【0029】
〔比較例1〕
CaCO3 0.98 モル
MgCO3 1.0 モル
Eu2O3 0.01 モル
SiO2 2.0 モル
NH4F・HF 0.05 モル
【0030】
上記各化合物を十分に混合して蛍光体原料とした以は実施例1の蛍光体と同様にして組成式が(Ca0.98Eu0.02)O・MgO・2SiO2である比較例1のEu付活珪酸塩蛍光体を得た。
【0031】
この比較例1の蛍光体を実施例1と同様にして、146nmの真空紫外線で励起して発光させた時の発光輝度並びに発光色の色度点を測定し、その測定値から刺激和(発光輝度/y値)を求め、上記各実施例の蛍光体の発光輝度の基準値とした。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の2価金属珪酸塩蛍光体におけるLa含有量(c)と蛍光体の発光の刺激和(輝度/y)のとの相関を例示するグラフである。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成を採用することにより、特にVUV励起下において従来のものよりも発光輝度の高い2価金属珪酸塩蛍光体および蛍光体ペースト組成物を提供することができ、これをVUV励起発光素子の蛍光膜に適用することによって青色成分の発光効率が改善されたVUV励起発光素子の提供を可能にした。
Claims (4)
- 一般式(Ca1−xEux)O・aMgO・bSiO2・cLa2O3で表され、波長が200nm以下の真空紫外線による励起によって発光し、真空紫外線励起発光素子として用いられることを特徴とする珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体。(但し、上記式中、a、b、cおよびxは、それぞれ0.9≦a≦1.1、1.9≦b≦2.2、0<c≦2.5×10−2および5×10−3≦x≦0.1なる条件を満たす数を表す。)
- 上記a、b及びcが、それぞれa=1、b=2および2.5×10−4≦c≦1.5×10−2なる条件を満たす数であることを特徴とする請求項1に記載の珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体。
- バインダーを溶解した溶媒中に蛍光体を分散させてなる蛍光体ペースト組成物において、上記蛍光体が請求項1又は2に記載の珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体であることを特徴とする蛍光体ペースト組成物。
- 蛍光膜が形成された外囲器内に封入されている希ガスの放電によって放射される真空紫外線により該蛍光膜を励起して発光させる紫外線励起発光素子において、上記蛍光膜が、請求項1又は2に記載の珪酸カルシウム・マグネシウム蛍光体により形成されていることを特徴とする真空紫外線励起発光素子。
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