JP2005023317A - 蛍光体とその製造方法、および前記蛍光体を用いたガス放電表示パネルおよび蛍光ランプ - Google Patents

蛍光体とその製造方法、および前記蛍光体を用いたガス放電表示パネルおよび蛍光ランプ Download PDF

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Abstract

【課題】 第一の目的として、発光中心原子のEuの使用量をできるだけ抑えることで製造コストの低減を図りつつ、十分な発光特性を備える蛍光体を提供する。
また、第二の目的として、前記蛍光体を用いることにより、Euの使用量をできるだけ抑えることでコスト低減を図りつつ、良好な表示特性或いは発光特性を実現できる画像表示装置或いは蛍光ランプを提供する。
【解決手段】 蛍光体粒子(アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体)BaMgAl1017:Euを用い、当該蛍光体粒子1の付活原子(発光中心)であるEu原子の濃度分布において、蛍光体粒子全体のEu平均濃度より、粒子表面2aおよび当該表面近傍2bのEu平均濃度が相対的に高くなるように設定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、蛍光体とその製造方法、および前記蛍光体を用いたガス放電表示パネルおよび蛍光ランプ に関し、詳しくはEuに付活されるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体とその製造方法に関する。
近年、PDPや三波長蛍光ランプ等に使用される省エネルギーの蛍光体として、Euを発光中心とする蛍光体が実用化されている。
具体的には以下の組成が挙げられる。

(Y,Gd)BO3:Eu、Y22S:Eu、Y23:Eu、BaMgAl1017:Eu、CaAl24:Eu、CaMgSi26:Eu、SrAl1425:Eu、Sr227:Eu、(Sr,Ca)B47:Eu、Ca259Cl:Eu、Ba0.75Al1017.25:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、InBO3:Eu、(BaMg)Si25:Eu、YAl3(BO34:Eu、LaAlO3:Eu

このような蛍光体は、各色の蛍光体と組み合わせることにより、例えば白色発光をなすように発光色を調整して用いられている。
また最近では、真空紫外線励起時における優れた可視光発光特性を利用して、上記蛍光体のうち、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体BaMgAl1017:Euがガス放電表示パネルであるプラズマディスプレイパネル(PDP)や、無水銀蛍光ランプで積極的に使用されている。
これらのデバイスでは、蛍光体にバインダーを混合してスラリー化し、これをガラス等の基体に塗布し、その後ベーキングを行って、蛍光体層(蛍光体膜)からなる発光スクリーンを形成する。
特開昭60-115683号公報 特開平8-31325号公報 特開2001-35372号公報 特開2001-55567号公報 PhoshorHandbook,p392,p833,CRCPressLLC
このような蛍光体は、組成中においてEu原子を発光中心として利用しているが、Eu原料は一般に非常に高価であるため、製造コストを低減する上で、できるだけその使用量を抑えることが望ましい。
だが単純にEuを低減すると、蛍光体に含まれる発光中心のEu量が減少することになるので、その発光特性を損ねかねない。
本発明は、第一の目的として、発光中心であるEuの使用量をできるだけ抑制してコスト低減を図りつつ、十分な発光特性を備える蛍光体と、その製造方法を提供する。
また、第二の目的として、前記蛍光体を用いることにより、比較的低廉でありながら良好な画像表示性能或いは発光特性を備えるガス放電表示パネル等の画像表示装置或いは蛍光ランプを提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、Euにより付活される組成からなる蛍光体粒子であって、
当該の粒子表面および粒子表面近傍におけるEu平均濃度が、これら以外の粒子部分のEu平均濃度に比べて高い構成とした。
本発明の具体的な蛍光体としては、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を挙げることができる。
また前記蛍光体は、組成がBa1-x-yxEuyMgAl1017で表されるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、蛍光体粒子全体における平均的な組成が、0.00≦x≦0.2、0.01≦y<0.17の範囲に設定されており、且つ、前記蛍光体粒子の表面及び表面近傍において、0.17≦y≦0.8の範囲に設定されている(但し、MはSrまたはCaである)とすることもできる。
この構成のように、励起発光に大きく寄与する蛍光体粒子表面および粒子表面近傍のEu平均濃度をある程度に維持する一方、それ以外の領域でのEu平均濃度を相対的に低減することによって、従来と遜色ない発光効率を維持しながら、Euの使用量を飛躍的に低減することが可能である。このため本発明の蛍光体は、高い発光効率を持ちながら、コスト削減に非常に有効な特徴を持っている。
なお、本発明でいう「Eu平均濃度」とは、蛍光体粒子における局所的な濃度を指すものではなく、蛍光体粒子の所定領域において、当該蛍光体を構成する組成として含まれているEu原子の割合を指す。
なお本明細書では、蛍光体粒子に含まれるEu量をXmol、Ba量をYmolとした場合、Eu濃度をX/(X+Y)×100(%)で表すものとしている。
このような本発明の蛍光体をプラズマディスプレイパネル等のガス放電表示パネルに利用すれば、蛍光体に係るコスト削減がバランス良くなされていることから、比較的安価で優れた画像表示性能を有するガス放電表示パネルを実現することが可能である。
また、同様に本発明の蛍光体を蛍光ランプに利用すれば、安価且つ発光効率の良い蛍光ランプが実現されることとなる。
1.実施の形態1
1-1.蛍光体粒子の構成
図1は、実施の形態1の蛍光体粒子の構成例を示す模式的な断面図である。
当図1に示す蛍光体粒子は、真空紫外線蛍光体であるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体からなるものであって、組成式が以下のもので構成されている。

BaMgAl1017:Eu

当該蛍光体粒子1は、付活原子(発光中心)であるEu原子の濃度分布において、蛍光体粒子全体のEu平均濃度より、粒子表面2aおよび当該表面近傍2bのEu平均濃度が相対的に高く設定されている特徴を有する。当図では、このようなEuの濃度分布を粒子1中に記された点で模式的に表している。
当該蛍光体粒子1では、粒子全体のEu平均濃度を1mol%以上17mol%未満の範囲で設定し、且つ、粒子表面2aおよび粒子表面近傍2bのEu平均濃度を17mol%以上80mol%以下の範囲で相対的に高めた構成としている。
このような構成を持つ当該蛍光体粒子1によれば、励起時に発光領域として最も寄与する粒子表面2aおよび表面近傍2bにおいて発光中心濃度(Eu平均濃度)を適切な濃度に維持することで、発光特性を確保する一方で、発光特性にはそれほど寄与しない粒子中心部分3におけるEu平均濃度を低減することで、Euの使用量を減らせるようになっている。
具体的には、従来の蛍光体粒子では、その表面および表面近傍も内部もEu濃度は同じであって、発光特性を確保するため、例えば粒子1全体におけるEu平均濃度を17mol%以上80mol%以下の範囲に設定している。一方、上記蛍光体粒子1では発光に大きく寄与する表面2aおよび表面近傍2bを従来の一般的な濃度範囲(17mol%以上80mol%)に維持し、従来と遜色ない発光効率を維持する一方、これを除く領域でEu平均濃度を大幅に低減させている。これにより高い発光効率とコスト低減の両立を実現している。
本発明は、本発明者らが鋭意検討した結果、励起発光時に有効に寄与する蛍光体の領域が粒子表面からある程度の深さまでに限定されることを見出し、それ以上の深い領域におけるEu使用量を減らしても発光特性にそれほど影響しない点に着目して、上記蛍光体粒子1の構成を実現したものである。
ここで前記「蛍光体粒子の表面近傍2b」とは、真空紫外線等の短波長の光を受けた蛍光体粒子1において、励起され発光する領域を指す。具体的には、蛍光体粒子1の表面2aから50nm程度の厚み範囲である。但し、励起光の波長により蛍光体粒子1中へ進入するエネルギーの深さは変わるため、2bは上記50nmの厚み範囲を超える場合もある。
本実施の形態で挙げた組成式がBaMgAl1017:Euや、その他Ba0.75Al1017.25:Eu等のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、他の蛍光体に比べて高い発光効率を持つ。したがって、照明器具や映像表示装置に好適である。すなわち、当該アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を真空紫外線により励起される無水銀ランプ(蛍光ランプ)やガス放電表示パネル(PDP)に使用することによって、優れた発光特性或いは画像表示性能を発揮することができる。
なお、上記無水銀ランプやPDPにおいては、経時的な放電劣化の問題が存在するが、本発明の蛍光体粒子1は、従来の蛍光体と銅と程度の粒子表面2aおよび表面近傍2bのEu平均濃度が従来構成と同等に維持されているので、従来と同様の劣化特性を維持できるようになっている。
上記蛍光体(BaMgAl1017:Eu)は本発明の蛍光体の一例に過ぎない。本発明の蛍光体組成は、前記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体に適用する場合、実質的に以下の(定義1)の通りに定義できる。

<定義1>
Ba1-x-yxEuyMgAl1017

ここで蛍光体粒子全体における平均的な組成においては、前記x、yをそれぞれ
0.00≦x≦0.2、0.01≦y<0.17の各範囲内に設定し、且つ、
蛍光体粒子の表面2aまたは表面近傍での組成においては、yを0.17≦y≦0.8の範囲に設定するものとする。
上記MはSrまたはCaである。この数値範囲は、後述の実施例の測定実験等により決定されたものである。

この組成に適用される他の蛍光体としては、以下のものを挙げることができる。

(Y,Gd)BO3:Eu、Y22S:Eu、Y23:Eu、BaMgAl1017:Eu、CaAl24:Eu、CaMgSi26:Eu、SrAl1425:Eu、Sr227:Eu、(Sr,Ca)B47:Eu、Ca259Cl:Eu、Ba0.75Al1017.25:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、InBO3:Eu、(BaMg)Si25:Eu、YAl3(BO34:Eu、LaAlO3:Eu
また、上記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の他にも、真空紫外線により励起される(Y、Gd)BO3:Euが望ましい。

本発明の蛍光体粒子1の構成は、真空紫外線は蛍光体粒子の内部まで浸入しにくいため、真空紫外線励起により使用される蛍光体に適用すると特に有効である。しかしながら波長254nm等の紫外線を照射する場合も主として粒子内部には浸入しにくいので、同様の効果を奏する。したがって、本発明は真空紫外線励起の蛍光体に限るものではない。
さらに蛍光体粒子1におけるEuの濃度分布は、当図1に示すように粒子内部に向かってグラデーション的に濃度が低減していく構成例に限定されるものではない。例えば、蛍光体表面から内部に向けて、所定の深さごとに段階的にEu平均濃度が低減する構成としてもよい。
本発明の蛍光体粒子は、蛍光体組成がアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体である場合に、特に作製し易い。その理由としては、以下の通りに推測される。
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、結晶構造が層構造になっている場合が多い。この層構造中において、発光中心となるEu原子は、いくつかのアルカリ土類金属の原子と置換されることで存在している。
本願発明者らは、前記蛍光体の層構造では、前記置換されたEu原子とアルカリ土類金属原子とが結晶内で比較的動きやすい構造となっており、製造時の焼成工程において、蛍光体に熱エネルギーを加えることで、容易にEuとアルカリ土類金属の濃度分布が変化することを見出した。この際、蛍光体粒子の表面において、Eu原子を近接しておけば、これを取り込んで、粒子の表面・表面近傍のEu平均濃度を高めることが容易に行えるようになる。この方法の詳細については後述する。
ここで、図1および本発明でいう「蛍光体粒子」とは、市販物において「粒子」と称される形態、すなわちその製造工程において、焼成工程後に解砕することで得られる一次粒子を指すものである。したがって、前記「蛍光体粒子」は、一次粒子をさらに強制的に破壊して成る粒子や、一次粒子が複数にわたり結合してなる二次粒子を指すものではない。

1-2.本発明の別の蛍光体組成について
本発明では、前述した蛍光体以外にも、次の定義2で表されるものとすることができる。
<定義2>

組成が

qMgAlrt:Euu

で表されるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であって、蛍光体粒子全体における組成が、0.8≦q+u≦1.2、8≦r≦12、13.8≦t≦20.2の範囲に設定されているものとする。ここで、前記MはBa、Sr、Caの中から選ばれた1種以上である。

このような組成式で示される蛍光体を用いる場合、Eu濃度の調整としては、以下のように設定できる。
すなわち、蛍光体粒子全体におけるMとEuの合計mol量に対するEuの含有量が1mol%以上8mol%未満の範囲に設定するとともに、前記蛍光体粒子の表面および表面近傍におけるEuの含有量が8mol%以上90mol%以下の範囲に設定する。
このような構成の蛍光体粒子によっても、上記蛍光体粒子1とほぼ同様の効果が奏される。また、この構成では、蛍光体粒子の表面および表面近傍のEu濃度をさらに高める一方、それ以外の領域(粒子中心部分)におけるEu濃度をより低減させることができるため、結果として、Eu使用量をより一層低減させることが可能である。

1-3.本発明のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の製造方法
ここでは本発明の蛍光体層に用いられる蛍光体(アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体)の製造方法の一例を説明する。なお本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程以外は特に限定されるものではない。一般的には、それぞれの原料を所定の組成となるように配合すればよい。
1-3-1.材料の選定について
アルミニウム源となる材料として、高純度(純度99%以上)の水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム等の、焼成によりアルミナになるアルミニウム化合物を用いることができる。また、直接高純度(純度99%以上)のアルミナ(結晶形はαアルミナでも中間アルミナでもよい)を用いることもできる。
バリウム源となる材料として、高純度(純度99%以上)の水酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、ハロゲン化バリウム、シュウ酸バリウム等の、焼成により酸化バリウムになるバリウム化合物を用いることができる。また、直接高純度(純度99%以上)の酸化バリウムを用いることもできる。
カルシウム源となる材料として、高純度(純度99%以上)の水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、ハロゲン化カルシウム、シュウ酸カルシウム等の、焼成により酸化カルシウムになるカルシウム化合物を用いることができる。また、直接高純度(純度99%以上)の酸化カルシウムを用いることもできる。
ストロンチウム源となる材料として、高純度(純度99%以上)の水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウム等の、焼成により酸化ストロンチウムになるストロンチウム化合物を用いることができる。また、直接高純度(純度99%以上)の酸化ストロンチウムを用いることもできる。
マグネシウム源となる材料として、高純度(純度99%以上)の水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム、シュウ酸マグネシウム等の、焼成により酸化マグネシウムになるマグネシウム化合物を用いることができる。また、直接高純度(純度99%以上)の酸化マグネシウムを用いることもできる。
ユーロピウム源となる材料として、高純度(純度99%以上)の水酸化ユーロピウム、炭酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、ハロゲン化ユーロピウム、シュウ酸ユーロピウム等の、焼成により酸化ユーロピウムになるユーロピウム化合物を用いることができる。また、直接高純度(純度99%以上)の酸化ユーロピウムを用いることもできる。
原料の混合には、工業的に通常用いられるV型混合機、撹拌機等を用いることができ、また、粉砕機能を有したボールミル、振動ミル、ジェットミル等も用いることができる。
以上で蛍光体材料の混合物が得られる。

1-3-2.焼成工程について
本発明の蛍光体の粒子は、当該蛍光体粒子全体のEu平均濃度に比べて蛍光体粒子の表面2aおよび表面近傍2bのEu平均濃度が高くなるように作製される。また、蛍光体粒子の平均粒径は、従来と同等の作業性を考慮して、最終的に0.1μm〜20μmになるように設定するのが望ましい。
蛍光体粒子において、Euの濃度差部分を形成するために、大きく分けて2つの焼成工程のいずれかを選択することができる。

第一の焼成工程は、まずEu平均濃度の低い蛍光体を基本粒子とし、その後、当該基本粒子をEu平均濃度の高い蛍光体薄膜で被膜するか、Eu平均濃度の高い蛍光体の粉末で直接被膜し、熱処理によって拡散させるといった方法である。

第二の焼成工程は、Eu平均濃度の低い蛍光体からなる基本粒子を作製しておき、その後焼成雰囲気を制御して、蛍光体粒子の表面2aおよび表面近傍2bを熱処理して改質することによって粒子の中央部よりも外側領域をEu平均濃度の高い領域として形成する方法である。焼成雰囲気の制御方法としては、蛍光体を合成する際の焼成プロファイルにおいて、降温時に不活性ガス雰囲気(一例として窒素のみを含む雰囲気)にすることで蛍光体粒子表面におけるEu平均濃度を高めることが可能である。

上記実施の形態1の蛍光体粒子は、このうち第二の焼成工程に基づき作製したので、これについて具体的に説明する。
焼成工程に用いる焼成炉は工業的に通常用いられるプッシャー炉等の連続式またはバッチ式の電気炉、ガス炉の何れかを用いることができる。
焼成雰囲気は空気、窒素、アルゴンまたはそれらの混合物を用いることができるが、0.1体積%〜10体積%の水素を含有させた還元性雰囲気を用いることが望ましい。

まず、第一ステップとして、Eu平均濃度を理想的な濃度よりも少ない量で上記蛍光体材料の混合物を焼成し、蛍光体を合成する。これを本発明の蛍光体粒子の基本粒子とする。
次に、第二ステップとして、不活性ガス雰囲気下で降温させる。この第二ステップで、蛍光体粒子の表面2aおよび表面近傍2bのEu平均濃度を高めることができる。
なお第二ステップに関わる熱処理は、酸素雰囲気中において500℃以上1100℃以下の温度条件下で行うのが望ましい。ここで、1100℃以上の酸素雰囲気で熱処理した場合、Euが酸化され、発光特性が著しく低下してしまう。また、一般に照明器具や画像表示装置を製造する工程において、蛍光体が500℃程度で加熱される工程を含むため、500℃以下で処理しても製造工程中に再び蛍光体表面が改質してしまうので注意が必要である。
一般に、1100℃以下の高温条件下であっても蛍光体のEuは酸化するため、第二ステップにおけるEu平均濃度が高くなることによる発光特性向上と、Euが酸化されることによる発光特性の劣化が同時に発生する。このため、熱処理温度や雰囲気の条件は、合成するEuの濃度や合成材料等に対して、おのおの変更する必要がある。
また、酸素雰囲気は特に大気雰囲気に限るものではなく、酸素の濃度を制御してもよいし、一定時間内で還元雰囲気に保つようにしてもよい。
さらに第二ステップに関わる熱処理でEuが酸化されるのを防ぐため、プラズマ等の非平衡状態で熱処理してもよい。つまり、プラズマを用いて酸素雰囲気とEu原料との反応性を高め、非平衡状態を形成したのち、第二ステップに関わる熱処理を行うことによって、より低温で熱処理することもできる。このように予め酸素雰囲気とEu原料との反応性を高めておけば、加熱温度を100℃以上500℃以下に抑えることが出来、Euの不要な酸化による発光特性の低下を防止できる。
また、酸化雰囲気下において、400℃以上から700℃以下の温度条件下でバインダーを除去するベーキングを行っても、熱酸化を低減させることが可能であり、良好な発光色のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体が得られる。
さらに、酸素雰囲気でEu原料に紫外線を照射して酸素とEu原料との反応性を高めたのち、第二ステップで熱処理を行うことによっても、より低温度で本発明の熱処理を行うことができる。

このような第二の焼成工程は、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体について適用した場合、特に有効である。この理由はアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の結晶が層構造を有しており、組成中のEuとアルカリ土類金属とが置換されて含有されているが、層構造では置換されるEuとアルカリ土類金属とが結晶内で動きやすい構造であるため、蛍光体にエネルギーを加えることで、容易にEuとアルカリ土類金属の濃度分布を変化できるためであると推測される。
特に、前記アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体の組成が実質的に上記Ba1-x-yxEuyMgAl1017であるものは、特にEuとアルカリ土類金属の置換が起こりやすく、本発明によって高い効果を奏する。この置換は、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体に限らず、他の種類の蛍光体であっても生じる。
この特性を利用して、本発明では蛍光体粒子の表面または表面近傍におけるEu平均濃度を相対的に高める一方、これ以外の領域である粒子内部でのEu平均濃度を低減するように調節している。

なお、本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体原料としては、組成に水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩等、焼成により酸化物になりうるものを使用する場合、本焼成の前に、600℃〜800℃の温度範囲にて仮焼成することも可能である。このときの焼成雰囲気としては、Euを2価とするために、弱還元雰囲気が好ましい。また大気雰囲気下で焼成した後、弱還元雰囲気で再度焼成することもできる。弱還元性雰囲気としては、水素を2体積%含有させた窒素等を挙げることができる。
また反応を促進するために、フラックスを添加することもできる。蛍光体の結晶性を高めるために、必要に応じて再焼成を行うこともできる。

2.実施の形態2
2-1.PDPの構成
図2は、実施の形態2に係る交流面放電型PDP10(以下単に「PDP10」という)の主要構成を示す部分的な断面図である。PDP10は一例として42インチクラスのVGA仕様に合わせたサイズ設定になっているが、本発明は勿論この他のサイズに適用させてもよい。
図2に示すように、PDP10の構成は互いに主面を対向させて配設されたフロントパネル20およびバックパネル26に大別される。
フロントパネル20の基板となるフロントパネルガラス21には、その片面に厚さ0.1μm、幅150μmの帯状の透明電極220(230)と、これに厚さ7μm、幅95μmのバスライン221(231)が重ねられてなる表示電極22(23)(X電極23、Y電極22)が、紙面左右方向に複数対並設されている(23、230、231は紙面奥側に位置するため見えない)。
各対の表示電極22、23は、それぞれ紙面左右方向の端部付近でパネル駆動回路(不図示)と電気的に接続される。このとき、Y電極22は一括してパネル駆動回路に接続され、X電極23はそれぞれ独立してパネル駆動回路に接続される。前記パネル駆動回路からY電極22と特定のX電極23に給電すると、当該表示電極22、23の間隙(約80μm)で面放電(維持放電)が行われる。
さらに、X電極23はスキャン電極としても作動し、アドレス電極28と書き込み放電(アドレス放電)をなすようになっている。
複数対の表示電極22、23を配設したフロントパネルガラス21の表面には、前記複数対の表示電極22、23を覆うように厚さ約30μmの誘電体層24がコートされている。
さらに、この誘電体層24の上に厚さ約1.0μmの保護層25が積層されている。
バックパネル26の基板となるバックパネルガラス27には、その片面に厚さ5μm、幅60μmの複数のアドレス電極28が、紙面奥側・手前側を長手方向として複数並設されている。隣合う2つのアドレス電極28の並設ピッチは一定間隔(約150μm)である。
複数のアドレス電極28は、それぞれ独立して前記パネル駆動回路に接続され、個別に給電されるようになっており、特定のアドレス電極28と、特定のX電極23との間でアドレス放電がなされるようになっている。
複数のアドレス電極28を並設したバックパネルガラス27の表面には、前記複数のアドレス電極28を覆うように厚さ30μmの誘電体膜29がコートされている。
さらに誘電体膜29上には、隣接するアドレス電極28のピッチに合わせて高さ約150μm、幅約40μmの隔壁30が、x方向を長手方向として配設されている。
隣り合う2つの隔壁30の側面とその間の誘電体膜29の面上には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の何れかに対応する蛍光体層31〜33が形成されている。これらのRGB各蛍光体層31〜33はy方向に繰り返し配列される。
フロントパネル20とバックパネル26は、アドレス電極28と表示電極22、23が直交するように互いに対向させられ、両パネル20、26の外周縁部で接着される。これにより、当該両パネル20、26の間が封止されている。
この両パネル20、26間には、He、Xe、Neから選ばれた元素の希ガス成分からなる放電ガスが所定の圧力(通常6.7×104〜1.0×105Pa程度)で封入されている。隣接する2つの隔壁30の間に対応する空間が、放電空間38となる。
また、一対の表示電極22、23と1本のアドレス電極28が放電空間38を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかるセルに対応する。
なお一例として、当該セルのピッチは1080μm×360μmに設定されている。紙面左右方向に隣接する3セルで、1ピクセル(1080μm×1080μm)を構成する。
このような構成のPDP10の駆動時には、まず前記パネル駆動回路によって、特定のアドレス電極28と、特定のX電極23にパルス電圧を印加し、アドレス放電させる。そして当該アドレス放電後に、一対の表示電極22、23間にパルスを印加し、維持放電させることによって、短波長の紫外線(波長約147nmを中心波長とする共鳴線)を発生させる。この紫外線照射により蛍光体層31〜33に含まれる蛍光体が可視光発光し、画像表示がなされる。
2-2.蛍光体層について
実施の形態2のPDP10では、前記蛍光体層31〜33に充填される蛍光体として、赤色蛍光体、緑色蛍光体には一般的な組成からなる蛍光体を利用しているが、青色蛍光体層32は実施の形態1と同様の構成を持つ蛍光体粒子を充填してなる。
すなわち、青色蛍光体層32に用いられる蛍光体粒子は、蛍光体粒子の表面および表面近傍のEu平均濃度が、蛍光体粒子全体のEu平均濃度より高くなるように構成されていることを特徴としている。
青色蛍光体層32における蛍光体粒子全体における組成は以下の通りである。

青色蛍光体;Ba0.95MgAl1017:Eu0.05

また、青色蛍光体層32における蛍光体粒子の表面および表面近傍の組成は以下の通りである。

青色蛍光体;Ba0.5MgAl1017:Eu0.5

前記蛍光体粒子の表面および表面近傍に相当する部分の厚み範囲は、ここでは一例として50nm程度としているが、さらに薄くしても良い。蛍光体粒子の表面および表面近傍の厚み範囲は、駆動時に真空紫外線等の短波長光によって励起発光する深度までの厚み範囲とするのが望ましい。なお、蛍光体粒子の平均粒径は0.1μm〜20μmが好ましい。
これら蛍光体層32に用いられる蛍光体粒子では、Eu平均濃度が蛍光体粒子全体で、1mol%以上17mol%未満の範囲であり(これを言い換えると、本発明の蛍光体粒子の組成比はBa:Eu:Mg:Al=(1-Eu):0.05〜0.17:1:10に相当する)、且つ、蛍光体粒子の表面および表面近傍のEu平均濃度は17mol%以上80mol%以下の範囲となるように設定されている。このEu平均濃度の数値は、実験により見出された最適値範囲を示すものである。
このような構造の蛍光体粒子からなる蛍光体層32を用いたPDP10では、まず蛍光体粒子全体において、Eu使用量を減らすことで、高価なEu原料にかかるコスト低減を確実に図っている。このように蛍光体粒子の表面および蛍光体粒子の表面近傍以外の部分において、Euの使用を控えることで、飛躍的にコスト削減を図ることが可能である。
なお、本発明で良好なコスト低減効果を得るためには、当然ながら蛍光体粒子の表面および表面近傍におけるEuの平均濃度に比べて、蛍光体粒子全体におけるEuの平均濃度を従来よりも低く抑え、蛍光体層32全体でのEuの使用量を低減することが望ましい。
しかしながら、蛍光体層中のEu平均濃度は適正な濃度範囲にあることが必要であって、その適切な範囲以外では十分な発光特性が得られない。ここでは蛍光体層32の表面および表面近傍が主な発光領域となる真空紫外線蛍光体において、前記表面および表面近傍の発光中心濃度を上記の通り適切な濃度範囲に設定することで、表面近傍の発光特性を十分満足する特性が得られるようになっている。
本発明は、特に蛍光体粒子の表面および表面近傍で十分な発光特性が得られるようになっているため、真空紫外線励起で使用されるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体に非常に有効である。しかしながら、波長254nm等の紫外線励起であっても、蛍光体の表面は発光して発光特性に影響しうるため、真空紫外線の蛍光体に限るものではない。
また本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、PDP10の蛍光体層32に限らず、紫外線を照射することにより可視光発光を行い画像表示する画像表示装置(例えばプロジェクタ)に適用するようにしてもよい。
また本発明では、Euの平均濃度を蛍光体粒子の表面から中心に向けて、グラデーションで徐々に減少するようにしてもよい。また、数段階に分けて濃度を減少するようにしてもよい。

3.実施の形態3
本発明の蛍光体粒子は、紫外線を照射して可視光発光する蛍光ランプに適用するようにしてもよい。
図3は、本実施の形態3の直管形40W蛍光ランプ40(以下、蛍光ランプ40という)の構成例を示す図である。
当図に示されるように、蛍光ランプ40は、容器が管径32mmのガラス管41を有し、ガラス管41両端には電子放出物質の充填されたタングステンフィラメントコイル(WFL)を備えた電極部46a、46bが配置され、口金部42a、42bによって内部が気密封止されている。
また発光管1の内面4には、いわゆる保護膜としてアルミナ微粒子からなる膜厚0.1〜0.5μmの酸化アルミニウム膜44が形成され、次いでこの酸化アルミニウム膜44の表面に赤色・青色・緑色各色蛍光体を含んでなる蛍光体膜(層)45が形成されている。
このうち青色蛍光体には、実施の形態2のPDPと同様にEuを発光中心とするアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体が使用されている。
ここで本実施の形態3の蛍光ランプ40では、前記蛍光体膜45に用いられる蛍光体粒子の構成が、実施の形態2における蛍光体粒子と同様の構成であって、蛍光体粒子の表面および表面近傍のEu平均濃度が、蛍光体粒子全体のEu平均濃度より高くなるように構成されていることを特徴としている。
この蛍光体膜45に含まれる蛍光体粒子では、Eu平均濃度が蛍光体膜45全体で1mol%以上17mol%未満の範囲であり、蛍光体粒子の表面および表面近傍におけるEu平均濃度は17mol%以上80mol%以下の範囲となるように設定されている。この平均濃度の数値は、実験により見出された最適値範囲を示すものである。
このような構造からなる蛍光体膜45を用いた蛍光ランプ40では、実施の形態2のPDP10と同様に、蛍光体粒子全体におけるEuの添加量を従来構成に比べて低減させることで、高価なEuにかかるコスト低減を確実に図っている。蛍光体粒子の表面および表面近傍以外のEuの使用を控えると、飛躍的にコスト削減を図ることが可能である。
一方、蛍光体膜45中の領域で最も可視光発光に寄与する蛍光体粒子の表面および表面近傍(すなわち放電空間38で発生する紫外線が到達する深さ領域)では、蛍光体粒子全体に対し、Euの平均濃度を相対的に高めている。これにより、駆動時に発光管1内部で発生した紫外線照射によって可視光発光させても、従来に比べて遜色ない発光輝度を得ることができ、良好な発光性能が獲得される。
なお、本実施の形態3で良好なコスト低減効果を得るためには、実施の形態2と同様に、当然ながら蛍光体粒子の表面および表面近傍におけるEuの平均濃度に比べて、蛍光体粒子全体におけるEuの平均濃度を従来よりも低く抑え、且つ、蛍光体膜45全体でのEuの使用量を低減させる必要があるのは言うまでもない。
ここで、本発明の蛍光体膜(層)は、直管形蛍光ランプ40に限らず、管球形蛍光ランプ、コンパクト蛍光ランプなど、紫外線を照射することにより可視光発光を行い発光する各種ランプに適用してもよい。
また本実施の形態3においても、Euの平均濃度を発光中心濃度の表面から中心に向けて、グラデーションで徐々に減少するようにしてもよい。また、数段階に分けて濃度を減少するようにしてもよい。

4.実施例と比較例による性能評価実験
ここでは本発明および従来のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体の性能比較実験について説明する。実施例としては、まず従来よりEuの平均濃度が低い成分からなる蛍光体粒子(基本粒子)を作製し、追って当該蛍光体粒子の基本粒子の表面に、Euの平均濃度が高い部分を形成するものとした。
4-1.実施例と比較例の組成について
前記定義1で示される本発明の蛍光体例として、各実施例1〜4の蛍光体原料とその配合量をそれぞれ以下の通りに設定した。そして、前記蛍光体原料を混合したのち、焼成(最高温度1400℃で2時間、雰囲気;10体積%H2/N2)を行った。その後粉砕・分級・乾燥の各工程を経た。これにより、まず下記組成式で表される基本粒子としての2価アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を得た。

*実施例1(基本粒子のEu平均濃度;10mol%)
BaCO3 0.90mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.05mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.9MgAl1017:Eu0.1


*実施例2(基本粒子のEu平均濃度;17mol%)
BaCO3 0.83mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.085mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.83MgAl1017:Eu0.17

*実施例3(基本粒子のEu平均濃度;5mol%)

BaCO3 0.95mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.025mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.95MgAl1017:Eu0.05

*実施例4(基本粒子のEu平均濃度1mol%)

BaCO3 0.99mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.005mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.95MgAl1017:Eu0.05

次に、上記実施例1〜4の基本粒子に対し、その表面および表面近傍のEu平均濃度を高める工程を行った。
具体的には前記基本粒子の表面に、Eu原料を蛍光体合成時に混合したEuO3原料の量の5mol%(実施例1の場合は0.025mol%)を付着させた。
そして、これを酸素雰囲気下で800℃、20分間熱処理することで、粒子表面および粒子表面近傍のEu平均濃度を高めた。
以上で実施例1〜4の2価Eu付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を得た。

一方、各比較例の各原料量はそれぞれ以下の通りに設定した。焼成、粉砕、分級、乾燥の各工程は上記各実施例と同様とした。

*比較例1(粒子全体のEu平均濃度;10mol%);この比較例1の蛍光体組成は実施例1と同様であるが、粒子全体のEu平均濃度が均一な点で異なっている。

BaCO3 0.90mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.05mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.9MgAl1017:Eu0.1

*比較例2(粒子全体のEu平均濃度;17mol%);この比較例2の蛍光体組成は実施例2と同様であるが、粒子全体のEu平均濃度が均一な点で異なっている。


BaCO3 0.83mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.085mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.83MgAl1017:Eu0.17

*比較例3(粒子全体のEu平均濃度;5mol%);この比較例3の蛍光体組成は実施例3と同様であるが、粒子全体のEu平均濃度が均一な点で異なっている。

BaCO3 0.95mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.025mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.95MgAl1017:Eu0.05

*比較例4(粒子全体のEu平均濃度;25mol%);当該比較例4ではEu平均濃度を比較的高く設定し、且つ、粒子全体のEu平均濃度が均一に作製するものとした。

BaCO3 0.75mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.125mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.75MgAl1017:Eu0.25

*比較例5(粒子全体のEu平均濃度;20mol%);当該比較例5では下記組成の基本粒子を作製したのち、後述のように粒子表面および表面近傍のEu平均濃度を高める処理(比較例5〜8の当該処理にかかる濃度値については表1に示す)を行うものとした。

BaCO3 0.8mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.10mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.8MgAl1017:Eu0.2

なる組成式で表される比較例5の2価のEu付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体粒子(基本粒子)を得た。
次に、作製した実施例1〜3と同様の基本粒子の表面および表面近傍のEu平均濃度を高めた。

*比較例6(粒子全体のEu平均濃度;3mol%);当該比較例6も下記組成の基本粒子を作製したのち、後述のように粒子表面および表面近傍のEu平均濃度を高める処理を行うものとした。なお、上記「3mol%」の値は従来構成の蛍光体粒子におけるEu濃度の最適値よりも低く設定したものである。

BaCO3 0.97mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.015mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.97MgAl1017:Eu0.03

*比較例7(粒子全体のEu平均濃度;17mol%);当該比較例7も下記組成の基本粒子を作製したのち、後述のように粒子表面および表面近傍のEu平均濃度を高める処理を行うものとした。なお、上記「17mol%」の値は従来構成の蛍光体粒子におけるEu濃度の最適値よりも高く設定したものである。

BaCO3 0.83mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.085mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.83MgAl1017:Eu0.17


次に、比較例5〜7について、基本粒子の表面および表面近傍のEu平均濃度を高めた。具体的には前記基本粒子の表面に、蛍光体合成時の同量のEu原料を付着させ、これを酸素雰囲気下で800℃、60分間熱処理することで、蛍光体粒子表面および粒子表面近傍のEu平均濃度を高めた。

*比較例8(粒子全体のEu平均濃度;5mol%);当該比較例7も下記組成の基本粒子を作製したのち、後述のように粒子表面および表面近傍のEu平均濃度を高める処理を行うものとした。基本粒子全体のEu平均濃度としては、最適値と思われる範囲内に設定する一方、粒子表面および表面近傍のEu平均濃度を最適値よりも低く設定するものとした。

BaCO3 0.95mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.025mol
AlF3 0.05mol

組成式 Ba0.95MgAl1017:Eu0.05

上記基本粒子について、粒子表面および表面近傍のEu平均濃度を次のように高めた。具体的には前記基本粒子の表面に、蛍光体合成時の1%(0.00025mol%)のEu原料を付着させ、これを酸素雰囲気下で800℃、10分間熱処理した。
以上で比較例1〜8の2価アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を得た。

4-2.X線解析測定について
上記作製した実施例1〜4および比較例1のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体粒子について、X線回折測定を行い、結晶構造を確認した。実験条件は以下の通りである。

X線源;CuKα
管球電圧;40kV
管球電流;30mA
走査速度;2度 2θ/min、
散乱スリット(SS);1度
発散スリット(DS);1度
受光スリット(RS);0.3mm

上記実験条件でX線解析測定を行った結果を図4に示す。図中、Sample1は実施例1、Sample2は実施例2、Sample3は実施例3、Sample4は比較例1に相当する。
当図4で示されるように、実施例1〜4の蛍光体の基本粒子が示すピークは、比較例1の蛍光体粒子が示すピークと非常に類似している。
このことから実施例1〜4の基本粒子に用いるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体は、その粒子のEu平均濃度の変更と表面及び表面近傍のEu平均濃度を変更させてはいるが、従来(比較例1)のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体とほぼ同様の結晶構造を有していることが確認できる。

4-3.発光輝度測定について
次に、実施例1〜4及び比較例1〜8について発光輝度測定を行った。具体的には各蛍光体粒子に対し、Xe紫外線光源を用いて波長146nmの真空紫外線を照射し、発光輝度(Y)および色度(x,y)を測定した。
ここで実施例1〜4及び比較例1〜8の輝度と色度yをY1、y1として計算し、それぞれの蛍光体の比較のため実施例1のY1/y1を100%とした相対値で表すものとし、表1にまとめて示した。
本発明の蛍光体を用いてなる蛍光ランプ及びPDPは最終的な製品となる場合に、必ず安定動作させるための劣化放電(エージング)が行われる。よって本比較もエージング工程を終えたPDPおよび蛍光ランプと同様の性能となるように、発光特性の測定後に蛍光体を圧力が600Torrで且つ(Ne95体積%+Xe5体積%)雰囲気の放電に50時間曝し、その後に測定を行った。このエージング後の輝度と色度はY2/y2として計算し、実施例1のY1/y1を100%とした相対値で表1に示した。
なお、蛍光体粒子全体におけるEumol%(「全体%」)は、試料を酸またはアルカリ溶液に溶解させ、酸化還元滴定法により求めた。表1中「表面%」は蛍光体粒子表面及び表面近傍のEumol%を表す。
Figure 2005023317
表1に示すように、実施例1〜4の蛍光体粒子は、Y1/y1に示すように、いずれも比較例1〜4、6〜8と遜色ない性能を呈している。比較例5はもともとEu平均濃度が低いことから、発光効率が当然ながら低下している。
一方、エージング工程を行ったのちも、実施例1〜4の蛍光体粒子は、当該工程において、化学的にそれほど悪影響を受けることが無く、良好な特性変化を維持できることが確認できる。このような結果から、本発明の蛍光体粒子は優れた発光特性を有するものと言える。

4-4.組成分析について
蛍光体粒子の表面および当該表面により近い領域、すなわち最表面近傍のEu平均濃度(表面%)は、例えばX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
XPSでは試料表面に波長既知のX線(通常はAlKα線、或いはMgKα線)を照射し、試料から飛び出す光電子のエネルギー(BindingEnergy (eV))を測定する。このときのエネルギー強度を相対的に観察することにより、異なる試料(この場合蛍光体粒子)の表面から10nm程度までの深さに相当する最表面近傍の情報が選択的に得られる。
XPSでは、元素の取りうる特性についてそれぞれに相対感度因子が明らかにされていることから、このXPSを利用することで、蛍光体粒子の表面Eu平均濃度、および組成比を測定できる。
なお、本発明に記載されている測定値は、測定装置にPHI社製1600S型X線光電子分光装置を用い、X線源はMgKαを用いた。
図5にXPSによるSample1の測定結果例を示す。BaMgAl1017:EuではEu3d5に関するピークが1132eV付近に現れる。このEuのピークと、アルカリ土類金属(Sample1ではBa)のピークの強度比(面積)を求め、相対感度因子により換算する。この計算結果から、Euとアルカリ土類金属蛍光体の濃度を計算することが可能である。
なお当図5では、Eu平均濃度を、Euとアルカリ土類金属(ここではBa)との合計mol量に対しての割合(表面%)として例示しているが、比較方法はこれに限定しないのは言うまでもない。

4-5.別の実施例と比較例
ここで上記実施例1〜4とは別に作製した実施例5および比較例9のアルミン酸塩蛍光体の性能比較実験を行う。
実施例5として、まず従来よりEuの平均濃度が低い成分からなる蛍光体粒子(基本粒子)を作製し、追って当該蛍光体粒子の基本粒子の表面に、Euの平均濃度が高い部分を形成する。
本実施例5の各原料量は以下の通りとした。
*実施例5(Eu5mol%);以下は蛍光体全体の構成である。
BaCO3 0.9mol
MgO 0.9mol
Al23 5mol
Eu23 0.025mol
AlF3 0.01mol
上記各組成で蛍光体原料を混合したのち、焼成(最高温度1400℃で2時間、雰囲気;10体積%H2/N2)を行った。その後粉砕・分級・乾燥の各工程を経た。これにより、
Ba0.95Mg0.9Al1017:Eu0.05
なる組成式で表される実施例5の2価のEu付活アルミン酸塩蛍光体粒子(基本粒子に用いるもの)を得た。
本比較例の各原料量は以下の通りとした。

*比較例9(Eu10mol%);この比較例9は従来と同様である。
BaCO3 0.9mol
MgO 1.0mol
Al23 5.0mol
Eu23 0.05mol
AlF3 0.01mol
上記各組成で蛍光体原料を混合したのち、焼成(最高温度1400℃で2時間、雰囲気;10体積%H2/N2)を行った。その後粉砕・分級・乾燥の各工程を経た。これにより、
Ba0.9MgAl1017:Eu0.1
なる組成式で表される比較例9としての2価のEu付活アルミン酸塩蛍光体粒子を得た。

(発光輝度測定)
次に、上記作製した実施例5のアルミン酸塩蛍光体からなる蛍光体の基本粒子の表面および表面近傍のEu濃度を高めた。具体的には前記基本粒子の表面に、Eu原料を蛍光体合成時の1mol%(0.00025mol%)付着させ、これを酸素雰囲気下で800℃、20分間熱処理することで、蛍光体粒子表面および表面近傍のEu濃度を高める。
ついで、熱処理前(基本粒子)の実施例である蛍光体粒子、熱処理後(粒子表面および表面近傍のEu濃度が高い)の実施例5である蛍光体粒子、および比較例9である蛍光体粒子について発光輝度測定を行った。
具体的には各蛍光体粒子に対し、Xe紫外線光源を用いて波長147nmの真空紫外線を照射し、発光輝度(Y)および発光色を測定した。ここでは発光効率の変化を調べるため、ベーキング前(Y)とベーキング後(y)の発光効率の比(維持率)を求めた。
ここで比較例9の輝度と色度をY1、y1とし、熱処理前(基本粒子)の実施例5の輝度と色度をY2、y2、熱処理後(粒子表面および表面近傍のEu濃度が高い)の実施例5の輝度と色度をY3、y3として、各蛍光体のY/yの維持率を計算した。
実施例5および比較例9について求めた発光効率の比(維持率)を図6に示す。
当図に示すように、実施例5は比較例9に比べて、ベーキング処理後における維持率が最も高いことがわかった。具体的には、量論組成比通りに作製した比較例9(Y1/y1)と実施例5(Y3/y3)とを比較すると、本実施例5の維持率が優っているのが確認できる。このようなことから、実施例5の蛍光体粒子はベーキング処理時における特性変化(例えば熱酸化)にも強く、良好な発光輝度を維持できることがわかる。

5.その他の事項
上記各実施の形態2、3では、青色蛍光体にそれぞれ本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を用いる例を示したが、本発明はこれに限定せず緑色蛍光体に適用してもよい。さらに、青色・緑色のうち、いずれか一色のみを本発明のアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体で構成してもよい。
本発明は放電空間に使用する蛍光体に適しており、記載の蛍光体を用いて画像表示することを特徴とする画像表示装置、プラズマディスプレイパネルに適している。また可視光発光することを特徴とする蛍光ランプにも適している。
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどのガス放電パネルにおける蛍光体層や、その他蛍光ランプの蛍光膜に利用することが可能である。
実施の形態1の蛍光体粒子の構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態2のPDPの構成を示す図である。 実施の形態3の蛍光ランプの構成を示す図である。 蛍光体粒子のデータ(X線解析測定結果)を示す図である。 蛍光体粒子のデータ(X線光電子分光測定結果)を示す図である。 蛍光体粒子のデータ(ベーキング処理前後の発光効率の比)を示す図である。
符号の説明
1 蛍光体粒子
2a 粒子表面
2b 粒子表面近傍
10 交流面放電型プラズマディスプレイパネル
20 フロントパネル
21 フロントパネルガラス
22、23 表示電極
24 誘電体層
26 バックパネル
28 アドレス電極
31、32、33 蛍光体層
38 放電空間
40 直管形蛍光ランプ
41 発光管
42a、42b 口金部
45 蛍光体膜

Claims (12)

  1. Euにより付活される組成からなる蛍光体粒子であって、
    当該の粒子表面および粒子表面近傍におけるEu平均濃度が、これら以外の粒子部分のEu平均濃度に比べて高い構成を有することを特徴とする蛍光体。
  2. さらに、前記粒子表面近傍よりも浅い最表面近傍から前記粒子表面までの領域におけるEu平均濃度が、これら以外の粒子部分のEu平均濃度に比べて高い構成を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
  3. 前記蛍光体は、アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
  4. 前記蛍光体は、組成が

    Ba1-x-yxEuyMgAl1017

    で表されるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体であって、
    蛍光体粒子全体における平均的な組成が、0.00≦x≦0.2、0.01≦y<0.17の範囲に設定されており、且つ、
    蛍光体粒子の前記粒子表面近傍よりも浅い最表面近傍から前記粒子表面までの領域において、0.17≦y≦0.8の範囲に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の蛍光体。
    但し、MはSrまたはCaである。
  5. 蛍光体粒子全体における平均的な組成が、0.05≦y<0.17の範囲に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の蛍光体。
  6. 前記蛍光体は、組成が

    qMgAlrt:Euu

    で表されるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体であって、
    蛍光体粒子全体における組成が、0.8≦q+u≦1.2、8≦r≦12、13.8≦t≦20.2の範囲に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の蛍光体。
    但しMはBa、Sr、Caの中から選ばれた1種以上である。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の蛍光体を用いて画像表示する構成であることを特徴とする画像表示装置。
  8. 前記画像表示装置はガス放電表示パネルであることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
  9. 請求項1から6のいずれかに記載の蛍光体を用いて可視光発光する構成であることを特徴とする蛍光ランプ。
  10. Eu原料を含む複数の蛍光体原料を混ぜて混合材料を作製する混合ステップと、
    前記混合材料を焼成して基本粒子を作製する第一焼成ステップと、
    焼成雰囲気に不活性ガスを添加して降温させることで前記基本粒子表面および表面近傍におけるEu平均濃度を挙げる第二焼成ステップと
    を経ることを特徴とする蛍光体の製造方法。
  11. 前記第一焼成ステップと、前記第二焼成ステップとの間に、プラズマ存在下で非平衡状態を形成することで焼成するプラズマ焼成ステップを経ることを特徴とする請求項10に記載の蛍光体の製造方法。
  12. Eu原料を含む複数の蛍光体原料を混ぜて混合材料を作製する混合ステップと、
    前記混合材料を焼成して基本粒子を作製する第一焼成ステップと、
    前記基本粒子の表面にEu原料を付着させるEu付着ステップと、
    Eu付着ステップ後に熱処理を行う加熱ステップと
    を経ることを特徴とする蛍光体の製造方法。
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