JP4149706B2 - N−(1(s)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−l−アラニンn−カルボキシ無水物の晶析法 - Google Patents

N−(1(s)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−l−アラニンn−カルボキシ無水物の晶析法 Download PDF

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Description

【0001】
技術分野
本発明は、高血圧の治療薬として現在市販されているものの中で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することで優れた抗高血圧作用を示すものの一群の共通中間体である、式(1)
【0002】
【化1】
Figure 0004149706
【0003】
(式中、不斉炭素の立体配置はいずれも(S)配置である)で示されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物(以後、化合物(1)とも称する)の晶析法に関する。
背景技術 化合物(1)は、式(2)
【0004】
【化2】
Figure 0004149706
【0005】
(式中、不斉炭素の立体配置はいずれも(S)配置である)で示されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン(以後、化合物(2)とも称する)にN,N’−カルボニルジイミダゾール又はホスゲンを反応させて得ることができる。上記化合物(1)の使用方法としては、上記反応液から単離することなくそのまま次工程に使用する方法(特開昭57−175152号公報、米国特許US5359086)や、上記反応液から溶媒を減圧下に留去、濃縮乾固することで固化させ、砕いて白色粉末として使用する方法が知られている(特公平5−41159号公報の参考例)。
従来の化合物(1)の使用方法には、工業的に利用する上で幾つかの問題があった。例えば、反応液として次の工程で用いる場合では、溶媒置換工程を経ない限り、次工程での反応溶媒種が、N−カルボキシ無水物化反応(以降、NCA化反応と称する)での使用溶媒種、又は、NCA化反応での使用溶媒との混合溶媒に制限されることになる。また、溶液での移送と保管が必要となるため、汎用性のある中間体としての取り扱いに関して利便性が悪いという欠点がある。
【0006】
また、特公平5−41159号公報において粉末として化合物(1)を取得できることは知られているものの、NCA化反応後の溶液を濃縮乾固する方法で取得されているため、共存する不純物は除去されず、また、その操作も工業的規模で実施するには難がある。
本発明者らが化合物(1)の晶析を予備的に検討したところ、化合物(1)の結晶化は、工業的規模では油状化やスケーリングが非常に起こりやすく、工業的規模で安定的に結晶化を実施するのは難しいことが分かった。また、高純度でかつ粉体特性の良好な結晶として取得することが困難であることも判明した。
【0007】
発明の要約
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、油状化やスケーリングを回避して操作性良く取り扱え、平均結晶粒径が大きく粉体特性の良好な結晶として化合物(1)を安定的に取得できる、工業的に実施可能な晶析法を見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、第一の本発明は、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液と脂肪族炭化水素溶媒を混合して該N−カルボキシ無水物を晶析する方法であって、該N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液を脂肪族炭化水素溶媒へ添加することで、該N−カルボキシ無水物の油状化及びスケーリングを抑制しながら結晶化することからなる、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の晶析法に関する。
即ち、第二の本発明は、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液へ脂肪族炭化水素溶媒を添加して該N−カルボキシ無水物を晶析する方法であって、60℃以下の温度で脂肪族炭化水素溶媒を1/4時間以上かけて逐次添加することで、該N−カルボキシ無水物の油状化及びスケーリングを抑制することからなる、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の晶析法に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
発明の詳細な開示
まず、第一の本発明について説明する。
本発明においては、上記化合物(1)の富溶媒溶液と脂肪族炭化水素溶媒を混合して化合物(1)を結晶化させる。化合物(1)の晶析を好適に実施するためには、脂肪族炭化水素溶媒の存在が必須である。
【0009】
上記脂肪族炭化水素溶媒としては特に制限されないが、例えば、ペンタン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカンなどのC2n+2で表されるC5−12の鎖状の飽和炭化水素類、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、プロピルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどのC2nで表されるC5−12の環状の飽和炭化水素類、及び、それらの混合溶媒等を挙げることができる。また、2−ペンテン、1−ヘキセン、シクロヘキセンなどのC2n又はC2n−2で表されるC5−12の不飽和炭化水素類、及び、それらの混合溶媒又はそれらと主記飽和炭化水素類の混合溶媒等も使用可能である。
なかでも、C2n+2又はC2nで表されるC5−12の鎖状若しくは環状の飽和炭化水素類又はそれらの混合溶媒が好適である。晶析だけでなく、取得結晶の乾燥時間などを考慮すれば、工業的により好ましい脂肪族炭化水素溶媒は、C2n+2又はC2nで表されるC5−C10の飽和炭化水素類又はそれらの混合溶媒である。
【0010】
なかでも、ペンタン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン又はそれらの混合溶媒が好ましく、さらに、ペンタン、2−メチルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン又はそれらの混合溶媒がより好ましい。特に、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、メチルシクロヘキサン又はそれらの混合溶媒が好適であり、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン又はそれらの混合溶媒がさらに好適である。
【0011】
上記富溶媒としては特に制限されないが、例えば、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエンなどの芳香族類、及び、それらの混合溶媒等を挙げることができる。具体的には、好ましくは、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンである。
【0012】
なかでも、上記のハロゲン化炭化水素類、エーテル類及びエステル類が好適であり、特にハロゲン化炭化水素類が好適である。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン又はこれらの混合溶媒が好ましく、なかでも、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンが好ましい。特に好ましいのはジクロロメタンである。言うまでもなく、他の溶媒が悪影響の無い範囲で存在してもよい。
第一の本発明においては、上記化合物(1)の富溶媒溶液と脂肪族炭化水素溶媒の混合は上記化合物(1)の富溶媒溶液を脂肪族炭化水素溶媒に添加する方法で実施される。
富溶媒溶液の添加時の温度は、60℃以下が好ましいが、本発明の効果を最大に発揮するためには、富溶媒溶液の添加時に−30〜50℃がより好ましく、−20〜45℃がさらに好ましい。
【0013】
上記化合物(1)の富溶媒溶液の脂肪族炭化水素溶媒への添加は、富溶媒溶液の逐次添加により行うのが好ましい。このような逐次添加は、1/4時間以上かけて行うことが好ましく、良好な結晶化のためには、1/2時間以上がより好ましく、さらに好ましくは1時間以上である。
第一の本発明の晶析においては、予め脂肪族炭化水素溶媒中に一定量の化合物(1)の結晶を添加しておいた状態で、化合物(1)の富溶媒溶液を添加すると、油状化及びスケーリングをほとんど生じない、さらに良好な結晶化が実施可能である。具体的には、添加する富溶媒溶液中の該化合物(1)の全量に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の該化合物(1)の結晶(下限は普通0.1重量%である)を脂肪族炭化水素溶媒に添加して該化合物(1)の結晶スラリーを調製し、該スラリーに化合物(1)の富溶媒溶液を添加、好ましくは逐次添加することにより行う。
【0014】
また、予め化合物(1)の富溶媒溶液の一部を脂肪族炭化水素溶媒に添加して、該化合物(1)を析出させたスラリーを調製した後、該スラリーに残りの富溶媒溶液を添加することによっても、同様の効果が達成できる。具体的には、添加する該化合物(1)の富溶媒溶液の全量に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の富溶媒溶液(下限は普通0.5重量%である)を脂肪族炭化水素溶媒へ予め添加、好ましくは逐次添加して該化合物(1)の結晶スラリーを一旦調製した後、残りの富溶媒溶液を添加、好ましくは逐次添加することで、油状化やスケーリングがほとんど生じない結晶化が実施できる。脂肪族炭化水素溶媒へ該化合物(1)の富溶媒溶液の一部を添加して、結晶スラリーを一旦調製する場合、該化合物(1)の富溶媒溶液の添加は、例えば1/10時間以上の時間をかけて行うが、良好な結晶析出のためには、1/5時間以上かけて行うのが好ましく、より好ましくは1/2時間以上である。
言うまでもないが、化合物(1)の富溶媒溶液全量を脂肪族炭化水素溶媒に長時間かけて徐々に連続又は分割添加することは、上記の該化合物(1)の結晶スラリーを一旦調製した後に、富溶媒溶液を添加する操作を連続して実施していることと同じであり、上記と同様の油状化及びスケーリングの抑制効果を期待できる。
【0015】
上記化合物(1)の富溶媒溶液を脂肪族炭化水素溶媒へ添加した後の保持時間は、特に制限されないが、普通、約1/2時間以上である。
添加終了時の富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒との比率は、使用する富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒の組み合わせや使用する化合物(1)の富溶媒溶液中の濃度により異なるが、脂肪族炭化水素溶媒に対する富溶媒の重量比率として、生産性などを考慮して、0.001〜1が好ましく、0.003〜1がより好ましく、0.003〜0.8がさらに好ましく、0.01〜0.5が特に好ましい。
【0016】
具体的には、富溶媒にハロゲン化炭化水素を用いる場合には好ましくは0.003〜1、より好ましくは0.01〜0.5であり、富溶媒にテトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒を用いる場合では0.01〜0.7が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5であり、富溶媒に酢酸エチルなどのエステル類又はトルエンなどの芳香族類を用いる場合では0.06〜0.8が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5である。
【0017】
上記の結晶化により、最終的に富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒の比率を所定比率に調整することで、全量の80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上の該化合物(1)を析出させ、油状化を抑制し、スケーリングは全量の10重量%以下、より好ましくは8重量%以下に抑制しながら、高い回収率で該化合物(1)の結晶を取得することが可能である。
第一の本発明では、富溶媒溶液の脂肪族炭化水素溶媒への添加が終了した後、析出している結晶を分離する前に、液温を25℃以下に調整して晶出量を高めることが好ましい。上記液温は、より好ましくは−30〜25℃であり、さらに好ましくは−20〜15℃の温度である。これにより、結晶を十分に析出させて、高回収率で結晶を取得できる。
本発明の晶析法は、化合物(1)の再結晶方法として使用することができるし、反応液からの化合物(1)の単離方法として使用することもできる。
【0018】
本発明で使用する化合物(1)の富溶媒溶液は、前記化合物(2)に、上記富溶媒中、N,N’−カルボニルジイミダゾール又はホスゲン(ホスゲン2量体やホスゲン3量体等も含む)を反応させることにより得られるNCA化反応液でもよい。これらのNCA化反応の溶媒としては、NCA化反応で安定な溶媒であれば特に限定されず、例えば、上記のハロゲン化炭化水素類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、ケトン類又はこれらの混合溶媒等を好ましく用いることができる。具体的には、ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフランや1,4−ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトニトリルなどのニトリル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類などが一般に好適に使用でき、なかでもハロゲン化炭化水素類が好ましく、特にジクロロメタンが好ましい。
晶析時に用いる溶媒種と上記NCA化反応で用いる溶媒種は必ずしも同一でなくとも良い。すなわち、本発明で使用する化合物(1)の富溶媒溶液としては、NCA化反応後、反応溶媒を含む低沸点成分(ホスゲンを使用した場合にはホスゲン、塩化水素ガス等を含む)を除去するために、1回又は複数回の濃縮操作を行ったものを用いてもよいし、反応溶媒を晶析に適した溶媒へ置換したものを用いてもよい。言うまでもなく、反応溶媒が晶析溶媒(富溶媒)を兼ねるのが好都合である。例えば、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類をNCA化反応溶媒として用い、NCA化試剤としてホスゲンを使用した場合では、反応後に濃縮して化合物(1)の濃度を調整して、これを化合物(1)の富溶媒溶液として好ましく用いることができる。
【0019】
なお、高品質の化合物(1)の結晶を取得するために、上記NCA反応で副生した不純物又は着色成分を、本発明の晶析の実施に際し、あらかじめ、吸着剤(好ましくは、活性炭)を用いて除去するのが好ましい。
このようにして得られた結晶は、遠心分離や加圧濾過、減圧濾過などの一般的な固液分離操作により分離し、好ましくは脂肪族炭化水素溶媒で洗浄した後、必要に応じて、常圧乾燥、減圧乾燥(真空乾燥)などにより乾燥することができる。
第一の本発明によれば、該化合物(1)の油状化及びスケーリングを抑制しながら、良好に結晶化が実施でき、高回収率で該化合物(1)の結晶を取得することができる。
【0020】
次に、第二の本発明を説明する。
第二の本発明においては、上記化合物(1)の富溶媒溶液へ脂肪族炭化水素溶媒を添加して化合物(1)を結晶化させる。化合物(1)の晶析を好適に実施するためには、脂肪族炭化水素溶媒の存在が必須である。
上記脂肪族炭化水素溶媒としては特に制限されないが、例えば、ペンタン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカンなどのC2n+2で表されるC5−12の鎖状の飽和炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、プロピルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどのC2nで表されるC5−12の環状の飽和炭化水素類、及び、それらの混合溶媒等を挙げることができる。また、2−ペンテン、1−ヘキセン、シクロヘキセンなどのC2n又はC2n−2で表されるC5−12の不飽和炭化水素類、及び、それらの混合溶媒又はそれらと上記飽和炭化水素類の混合溶媒等も使用可能である。
【0021】
なかでも、C2n+2又はC2nで表されるC5−12の鎖状若しくは環状の飽和炭化水素類又はそれらの混合溶媒が好適である。晶析だけでなく、取得結晶の乾燥時間などを考慮すれば、工業的により好ましい脂肪族炭化水素溶媒は、C2n+2又はC2nで表されるC5−C10の鎖状若しくは環状の飽和炭化水素類又はそれらの混合溶媒である。
なかでも、ペンタン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン又はそれらの混合溶媒が好ましい。特に、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン又はそれらの混合溶媒が好適であり、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン又はそれらの混合溶媒がさらに好適である。
【0022】
上記富溶媒としては特に制限されないが、例えば、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエンなどの芳香族類、及び、それらの混合溶媒等を挙げることができる。具体的には、好ましくは、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトンである。
【0023】
なかでも、上記のハロゲン化炭化水素類、エーテル類及びエステル類が好適であり、特にハロゲン化炭化水素類が好適である。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン又はこれらの混合溶媒が好ましく、なかでも、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンが好ましい。特に好ましくはジクロロメタンである。言うまでもなく、他の溶媒が悪影響の無い範囲で存在してもよい。
【0024】
次に、脂肪族炭化水素溶媒の添加時の条件について説明する。
上記化合物(1)の富溶媒溶液への脂肪族炭化水素溶媒の添加は、逐次添加により行われる。逐次添加は、上記脂肪族炭化水素溶媒を連続的に添加することにより行ってもよいし、上記脂肪族炭化水素溶媒をいくつかに分割してそれらを順次添加することにより行ってもよい。
逐次添加にかける時間は、添加時の温度、濃度や攪拌状態によって異なるが、一般に所定の脂肪族炭化水素溶媒全量の添加を1/4時間以上かけて行う。大きな粒径の結晶を得るためには1/2時間以上かけて逐次添加を行うのが好ましく、1時間以上かけるのがより好ましい。
【0025】
また、脂肪族炭化水素溶媒を添加する際の温度は、油状化やスケーリングを抑制するために、60℃以下である。本発明の効果を最大に発揮するためには、−30〜50℃がより好ましく、安定的に大粒径の結晶を得るためには、0〜45℃がさらに好ましい。脂肪族炭化水素溶媒添加後の保持時間は、特に制限されないが、普通、約1/2時間以上あれば充分である。
第二の本発明では、脂肪族炭化水素溶媒の添加時に、油状化やスケーリングを抑制するのに十分な攪拌を与えることが好ましい。撹拌の強さを単位体積当たりの攪拌所要動力として表した場合、単位体積当たりの攪拌所要動力として、一般に0.1kW/m以上の攪拌力で攪拌しながら添加するのが好ましく、より好ましくは0.3kW/m以上の撹拌力である。
【0026】
第二の本発明の晶析法における添加は、N−カルボキシ無水物のスラリーを予め作成した(予備晶析)後、該スラリーに脂肪族炭化水素溶媒を逐次添加することにより行うと、油状化やスケーリングを安定的に抑制できるとともに大きな粒径の結晶を取得でき、さらに好都合である。
上記予備晶析で予め作成するスラリーの懸濁量としては特に制限はないが、生産性などを考慮すると、晶析終了時点での該N−カルボキシ無水物全量の30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下であり、下限は通常0.1重量%である。
【0027】
予備晶析におけるスラリーは、該N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液へ所定量の脂肪族炭化水素溶媒を逐次添加して(予備晶析)、富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒の混合組成を化合物(1)の一部が析出する組成に調整して核化させることにより作成しても良いし、該N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液に該N−カルボキシ無水物の結晶を添加することにより作成しても良い。また、両方の手法をともに用いてもよい。
上記懸濁量を達成するための好ましい混合組成は、晶析濃度や使用する溶媒種類により一律に規定できないが、脂肪族炭化水素溶媒に対する富溶媒の重量比率は、化合物(1)の富溶媒溶液に脂肪族炭化水素溶媒を添加する場合、0.1〜10が好ましく、0.1〜5がより好ましく、0.1〜3がさらに好ましい。
【0028】
具体的な例として、富溶媒にジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルやアセトン等を用いた場合では、上記予備晶析時のスラリーの懸濁量を達成するための脂肪族炭化水素溶媒に対する富溶媒の重量比率は、好ましくは0.2〜5であり、より好ましくは0.2〜3であり、また、富溶媒に酢酸エチルやトルエン等を用いた場合では、上記懸濁量を達成するための脂肪族炭化水素溶媒に対する富溶媒の重量比率は、好ましくは0.3〜7であり、より好ましくは0.3〜5である。尚、予備晶析で良好な核化・結晶成長を行うためには、一般に予備晶析時に結晶析出が一度に生じないように、脂肪族炭化水素溶媒を分割又は連続添加するのが好ましく、添加時間は、1/5時間以上、良好な核化・結晶成長のためには、普通1/2時間程度、より好ましくは1/2時間以上必要である。
上記N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液へ該N−カルボキシ無水物の結晶を添加して予備晶析のスラリーを作成する場合では、該N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液での濃度を飽和溶解度近辺以下にコントロールする方が好都合である。富溶媒溶液の該N−カルボキシ無水物の濃度や溶液温度を調整することにより、及び/又は、所定量の脂肪族炭化水素溶媒を添加することにより、実施することができる。
【0029】
言うまでもないが、該N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液への脂肪族炭化水素溶媒の逐次添加を長時間に渡って実施する操作や、結晶析出開始時に脂肪族炭化水素溶媒の添加を一時停止して結晶を成長させる等の結晶析出速度をコントロールした後に残りの所定量の脂肪族炭化水素溶媒を追添加することなどの操作は、上記の予備晶析を経る結晶化と同じ効果が期待できる。
次に、第二の本発明の晶析での富溶媒と使用する脂肪族炭化水素の添加量の関係について説明する。
【0030】
脂肪族炭化水素溶媒の添加終了時において、富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒との比率は、使用する富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒の組み合わせや使用する化合物(1)の富溶媒溶液中の濃度により異なるが、脂肪族炭化水素溶媒に対する富溶媒の重量比率として、生産性などを考慮して、0.001〜1が好ましく、0.003〜0.8がより好ましく、0.01〜0.5がさらに好ましい。
【0031】
具体的には、富溶媒にハロゲン化炭化水素を用いる場合には、好ましくは0.003〜1、より好ましくは0.01〜0.5であり、富溶媒にテトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒を用いる場合には、0.01〜0.7が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5であり、富溶媒に酢酸エチルなどのエステル類又はトルエンなどの芳香族類を用いる場合には、0.06〜0.8が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5である。
【0032】
上記の結晶化により、最終的に富溶媒と脂肪族炭化水素溶媒の比率を所定比率に調整することで、全量の80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%の該化合物(1)を析出させ、油状化を抑制し、スケーリングは全量の5重量%以下、より好ましくは3重量%以下に抑制しながら、高い回収率で平均結晶粒径が200μm以上の該化合物(1)の結晶を取得することが可能である。
第二の本発明では、富溶媒溶液への脂肪族炭化水素溶媒の添加が終了した後、析出している結晶を分離する前に、液温を25℃以下に調整して晶出量を高めることが好ましい。上記液温は、より好ましくは−30〜25℃であり、さらに好ましくは−20〜15℃の温度である。これにより、結晶を十分に析出させて、高回収率で結晶を取得できる。
本発明の晶析法は、化合物(1)の再結晶方法として使用することができるし、反応液からの化合物(1)の単離方法として使用することもできる。
【0033】
上記化合物(1)の富溶媒溶液については上述したものと同様である。
このようにして得られた結晶は、遠心分離や加圧濾過、減圧濾過などの一般的な固液分離操作により分離し、好ましくは脂肪族炭化水素溶媒で洗浄した後、必要に応じて、常圧乾燥、減圧乾燥(真空乾燥)などにより乾燥することができる。
第二の本発明によれば、該化合物(1)の油状化及びスケーリングを抑制しながら、操作性良く結晶化が実施でき、粉体特性の良好な、一般に、平均粒径が約200μm以上の該化合物(1)の結晶を高回収率で安定的に取得することができる。化合物(1)を安定的に大粒径結晶として取得することは、不安定な化合物(1)の長期保管、高温保管における安定化に大きく寄与すると期待できる。
【0034】
発明の実施のための最良の形態
以下に実施例及び参考製造例を用いてさらに詳しく本発明を説明するが、本発明はもとよりこれらに限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例及び参考製造例において、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の定量は、該N−カルボキシ無水物の溶液又は結晶を、トリエチルアミン含有エタノール中でエチルエステル体へ誘導した後、以下のHPLC分析により行った。
分析条件機種 :(株)島津製作所製、LC−9Aカラム :日本分光(株)製ODSカラム Finepak SIL−C18−5 4.6mm×250mm溶離液 :アセトニトリル/60mM燐酸バッファー=35/65(v/v)
流速 :0.8ml/min検出 :210nm(UV検出器)
温度 :30℃
【0036】
(富溶媒溶液の調製例) N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液の調製 環流冷却器をセットした2L容量の4つ口丸底フラスコにN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン25g(89.6mmol)とジクロロメタン500mlを加え、攪拌しながらホスゲン32gを吹き込んだ後、50℃の油浴上にて8時間加熱環流した。反応後、ジクロロメタン(ホスゲン、塩化水素ガスを含む)を減圧下に留去した後、残査にジクロロメタンを加え、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の濃度として約62重量%溶液を調製した(収率98%)。
【0037】
(実施例1)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.2g(62重量%濃度)をノルマルヘキサン250ml中へ、−12℃にて1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン50mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して全体量の約6重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、37.2gの乾燥品を得た(回収率93%、化学純度98%、光学純度99%e.e.以上、平均粒径50μm)。
【0038】
(実施例2)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.2g(62重量%濃度)をノルマルヘキサン250ml中へ、45℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、4時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して全体量の約8重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、36.8gの乾燥品を得た(回収率92%、化学純度98%、光学純度99%e.e.以上、平均粒径20μm)。
【0039】
(実施例3)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液160g(60重量%濃度)をノルマルヘキサン700ml中へ、27℃にて1時間かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、1時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.13)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン200mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して、全体量の約5重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、92.1gの乾燥品を得た(回収率94%、化学純度98%、光学純度99%e.e.以上、平均粒径20μm)。
【0040】
(実施例4)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液100g(62重量%濃度)を、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶1.9gを懸濁させたノルマルヘキサン700ml(添加結晶によるスラリー濃度は約1.8重量%)中へ、27℃下、15分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、1時間かけて10℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.08)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン80mlで洗浄した。濾過の際、スケーリングは殆ど生じていないことを確認した。また、油状化も生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、61.4gの乾燥品を得た(回収率96%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径40μm)。
【0041】
(実施例5)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液160g(62重量%濃度)の一部(同左溶液5g)をノルマルヘキサン700ml中へ、27℃下、15分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、予備晶析を行った(予備晶析時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.004、生じたスラリーの懸濁量は2.3重量%)。次いで、上記ジクロロメタン溶液の残り(155g)を、27℃下、15分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、1時間かけて10℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(添加終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.13)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン130mlで洗浄した。濾過の際、スケーリングが殆ど生じていないことを確認した。また、油状化も生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、94.8gの乾燥品を得た(回収率95%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径40μm)。
【0042】
(実施例6)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液26.4g(62重量%濃度)をノルマルヘキサン300ml中へ、35℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.05)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン50mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して全体量の約2重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、15.7gの乾燥品を得た(回収率96%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約20μm)。
【0043】
(実施例7)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液131.6g(62重量%濃度)をノルマルヘキサン152ml中へ、35℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.5)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン150mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して全体量の約1重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、75.0gの乾燥品を得た(回収率92%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約20μm)。
【0044】
(実施例8)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物24.0gを含む酢酸エチル溶液48.0g(50重量%濃度)をノルマルヘキサン250ml中へ、35℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン60mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して、全体量の約3重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、22.3gの乾燥品を得た(回収率93%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約30μm)。
【0045】
(実施例9)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物39.2gを含むアセトン溶液63.2g(62重量%濃度)をノルマルヘキサン250ml中へ、30℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、2.5時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して、全体量の約1重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、34.4gの乾燥品を得た(回収率88%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約40μm)。
【0046】
(実施例10)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物39.2gを含むテトラヒドロフラン溶液63.3g(62重量%濃度)をノルマルヘキサン250ml中へ、35℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して、全体量の約1重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、37.8gの乾燥品を得た(回収率96%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約30μm)。
【0047】
(実施例11)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.3g(62重量%濃度)をイソオクタン240ml中へ、35℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して全体量の約1重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、38.0gの乾燥品を得た(回収率97%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約20μm)。
【0048】
(実施例12)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.3g(62重量%濃度)をメチルシクロヘキサン235ml中へ、35℃にて30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した。濾過後、器壁に付着したスケーリング量は別途乾燥して全体量の約1重量%であることを確認した。また、油状化はほとんど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、40.4gの乾燥品を得た(回収率95%、光学純度99%e.e.以上、取得結晶の平均粒径は約20μm)。
【0049】
(実施例13)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液253g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン200mlを温度40〜41℃で30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.71、生じたスラリーの懸濁量は約25重量%)。次いで、ノルマルヘキサン800mlを温度40〜41℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、1時間かけて5℃まで冷却し、同温度で2時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.14)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン200mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して2重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、145.9gの乾燥品を得た(回収率93%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約400μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.7〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0050】
(実施例14)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.2g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度35℃で15分かけて添加した後、同温度で該N−カルボキシ無水物の結晶0.5gを添加し、さらに30分攪拌を実施した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒重量比率は0.71、生じたスラリーの懸濁量は約20重量%)。次いで、ノルマルヘキサン200mlを温度35℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、1時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.14)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して2重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、37.6gの乾燥品を得た(回収率96%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約400μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.5〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0051】
(実施例15)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.3g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン100mlを温度35℃で30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.35)。次いで、ノルマルヘキサン200mlを温度35℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、1時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.12)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン50mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して1重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、37.7gの乾燥品を得た(回収率94%、化学純度98%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約380μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.4〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0052】
(実施例16)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.2g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン250mlを温度45℃で1.5時間かけて添加した後、同温度で1時間攪挿した(富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.14)。次いで、2時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して3重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、37.9gの乾燥品を得た(回収率94%、化学純度97%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約300μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.42〜0.8kW/mの攪拌力で実施した。
【0053】
(実施例17)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液131.6g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度18〜23℃で30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は1.52)。次いで、ノルマルヘキサン102mlを温度24〜26℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、2時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.5)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン200mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して約1重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、75.1gの乾燥品を得た(回収率92%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約200μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.7〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0054】
(実施例18)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液26.3g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度15〜18℃で15分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.30)。次いで、ノルマルヘキサン250mlを温度18〜23℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、2時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.05)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン60mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して約5重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、15.2gの乾燥品を得た(回収率94%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約200μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.7〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0055】
(実施例19)
富溶媒溶液の調製例と同様の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液63.2g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度15〜18℃で15分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.73)。次いで、ノルマルヘキサン200mlを温度15〜18℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、2時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して約5重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、36.7gの乾燥品を得た(回収率94%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約200μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.7〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0056】
(実施例20)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物24.0gを含む酢酸エチル溶液48.0g(50重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度30℃で30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.73)。次いで、ノルマルヘキサン200mlを温度30℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、3時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して約2重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、23.3gの乾燥品を得た(回収率95%、化学純度98%、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約200μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.4〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0057】
(実施例21)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物39.2gを含むアセトン溶液63.2g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度15℃で30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.73)。次いで、ノルマルヘキサン200mlを温度15℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、1時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して約1重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、34.7gの乾燥品を得た(回収率88%、化学純度99%以上、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約200μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.4〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0058】
(実施例22)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物39.3gを含むテトラヒドロフラン溶液63.3g(62重量%濃度)に、ノルマルヘキサン50mlを温度30℃で30分かけて添加した後、同温度で30分攪拌した(この時点での富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.73)。次いで、ノルマルヘキサン200mlを温度30℃で1時間かけて添加した後、同温度で1時間攪拌し、更に、2時間かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した(晶析終了時の富溶媒/脂肪族炭化水素溶媒の重量比率は0.15)。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取し、ノルマルヘキサン100mlで洗浄した(濾過性は極めて良好であった)。容器からのスラリー払い出し後、スケーリング量を確認したところ、容器壁に付着した結晶量は全量に対して約1重量%であった。また、油状化は殆ど生じなかった。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、38.9gの乾燥品を得た(回収率97%、化学純度98%、光学純度99%e.e.以上、平均粒径約200μm)。尚、晶析時の攪拌は、攪拌所要動力として、約0.4〜1.3kW/mの攪拌力で実施した。
【0059】
(参考例)
富溶媒溶液の調製例の方法で調製したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物のジクロロメタン溶液323.0g(62重量%濃度)を4時間かけて−12℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した。析出したN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の結晶を減圧下にブフナーロートにて濾取した(スケーリングや油状化は生じなかった)。取得した湿結晶は、真空下、25℃で15時間乾燥し、53.5gの乾燥品を得た(回収率26.7%)。
従来の化合物(1)の取得法としては、工業的に操作性の良い結晶として取得する方法が知られていなかったが、本発明の晶析法によれば、回収率90%以上で大粒径の結晶として、高純度品の取得が可能である。また、光学純度を非常に高く保持したままで、化合物(1)を回収できる。
【0060】
産業上の利用可能性
本発明によれば、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物を工業的に実施可能な方法で、油状化やスケーリングを回避して操作性良く取り扱え、平均結晶粒径の大きい粉体特性の良好な結晶として取得することができる。

Claims (11)

  1. N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液と脂肪族炭化水素溶媒を混合して該N−カルボキシ無水物を晶析する方法であって、上記富溶媒がジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン又はそれらの混合溶媒であり、上記脂肪族炭化水素溶媒がノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、メチルシクロヘキサン又はそれらの混合溶媒であり、予め前記富溶媒溶液の一部を前記脂肪族炭化水素溶媒に添加して、該N−カルボキシ無水物を析出させたスラリーを調製した後、該スラリーに残りの前記富溶媒溶液を添加することにより、富溶媒溶液の脂肪族炭化水素溶媒への添加を行うことを特徴とする、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の晶析法。
  2. 予め添加するN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液の量が、添加する富溶媒溶液の全量に対して30重量%以下である請求の範囲第1項記載の晶析法。
  3. N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液を脂肪族炭化水素溶媒へ添加する際の温度が−20〜45℃である請求の範囲第1または2項に記載の晶析法。
  4. 富溶媒がジクロロメタンである請求の範囲第1〜3項のいずれか1項に記載の晶析法。
  5. N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液の添加は逐次添加により行う請求の範囲第1〜4項のいずれか1項に記載の晶析法。
  6. N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液の逐次添加は1/4時間以上かけて行う請求の範囲第5項記載の晶析法。
  7. 添加が終了した後、液温を−30〜25℃に調整して晶出量を高める請求の範囲第1〜6項のいずれか1項に記載の晶析法。
  8. 添加終了時において、脂肪族炭化水素溶媒に対する富溶媒の重量比率が0.003〜1である請求の範囲第1〜7項のいずれか1項に記載の晶析法。
  9. N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液は、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンにN,N’−カルボニルジイミダゾール若しくはホスゲンを反応させて得られるNCA化反応液であるか、又は、それを濃縮若しくは溶媒置換して得られる溶液である請求の範囲第1〜8項のいずれか1項に記載の晶析法。
  10. 晶析に際し、予め、NCA化反応で副生した不純物又は着色成分を吸着剤を用いて除去する請求の範囲第9項記載の晶析法。
  11. NCA化反応溶媒が、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン N−カルボキシ無水物の富溶媒溶液における富溶媒を兼ねる請求の範囲第8又は9項記載の晶析法。
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