JP5448588B2 - L−カルノシンの精製方法 - Google Patents
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前記スラリー溶液が、前記粗L−カルノシン1gに対して水の量が1.50ml以上2.00ml以下となる濃度であって、
前記スラリー溶液に混合するアルコールの量が、スラリー溶液に含まれる水とアルコールとの体積比率(水:アルコール)が1:0.2〜5となることを特徴とするL−カルノシンの精製方法である。
本発明において、精製の対象となるL−カルノシン(以下、粗L−カルノシンとする場合もある)は、特に制限されるものではなく、公知の方法、例えば、β−アラニン又はその誘導体と、L−ヒスチジン又はその誘導体とを原料として合成する方法により製造できる。中でも、フタロイル−β−アラニンの酸クロライドと、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンによりトリメチルシリル基で保護したL−ヒスチジンとを反応させ、フタロイル−L−カルノシンを得、これをヒドラジンで還元、脱保護して得られる粗L−カルノシンが好適に使用できる。このような方法で得られる粗L−カルノシンは、ヒスチジンからの収率が90%と非常に高く、本発明の方法で精製する前の純度を97.0%以上と高くすることができる(なお、本発明において、L−カルノシンの純度は、高速液クロマトグラフィー(HPLC)で測定したピーク面積を基準とした純度である。)。この方法は、Dokladi na Bulgarskata Akademiya na Naukite 44 (8) p53−56 (1991)に記載されている。この方法の概要を以下に説明する。
本発明においては、上記「L−カルノシンが溶解した水溶液」から水を濃縮することにより、L−カルノシンの結晶を析出させてL−カルノシンのスラリー溶液とすることが重要である。L−カルノシンの水溶液としない場合、例えば、単離した粗L−カルノシンと混合する水の量が少なく、水溶液とはならずにスラリー溶液とする場合、下記に詳述する熟成処理、及びアルコールとの混合を行ったとしても、純度の高いL−カルノシンを得ることができない。
本発明においては、上記方法で得られたL−カルノシンのスラリー溶液を30℃以上80℃以下の温度で0.1時間以上10時間以下熟成する(第一熟成工程)ことが重要である。この熟成とは、0.1時間以上10時間以下の間、該スラリー溶液を30℃以上80℃以下の温度範囲で保持してやればよい。この第一熟成工程を実施することにより、高純度のL−カルノシンを得ることができる。
本発明においては、高純度のL−カルノシンを取り出すため、上記第一熟成工程で処理したスラリー溶液とアルコールとを混合し、さらにL−カルノシンの結晶を析出させる。
本発明においては、上記方法により得られたスラリー混合溶液を50℃以上70℃以下の温度で0.1時間以上5時間以下熟成することが好ましい。なお、この熟成は、第一熟成工程と同じく、0.1時間以上5時間以下の間、該スラリー混合溶液を50℃以上70℃以下の温度範囲で保持してやればよい。この保持の間、スラリー混合溶液は、静置しておいてもよいし、攪拌しておいてもよい。純度の高いL−カルノシンとする場合には、攪拌しておくことが好ましい。
攪拌羽、温度計、ガス吸収装置を備えた1L四つ口フラスコにフタロイル−β−アラニン107g(0.488mol)を加え、N,N’−ジメチルホルムアミド10ml存在下、二塩化オキサリル600mlを加え、室温で2時間攪拌後、二塩化オキサリルを真空留去し、黄色結晶を得た(1)。
攪拌羽と温度計を備えた500ml四つ口フラスコに製造例1と同様の方法で得た粗L−カルノシン水溶液(水の量 425ml、粗L−カルノシンの濃度0.306g/ml、粗L−カルノシン仕込み量130g、粗L−カルノシンのHPLC純度97.9%)を加え、60℃に昇温した。
その後、該水溶液の温度を50〜65℃として減圧濃縮することにより、水を185ml留去し、L−カルノシンのスラリー溶液とした。(粗L−カルノシン1gに対して、水の量を1.85mlとした。)
(第一熟成工程)
その後、スラリー溶液の温度を60℃とし、1時間熟成した。この熟成の間、スラリー溶液を攪拌した。
第一熟成工程で熟成した60℃の温度のスラリー溶液を攪拌しながら、該スラリー溶液中に、温度が55℃を下回らないようにメタノール100mlを30分で滴下した。その後、昇温し、得られたスラリー混合溶液を60℃で1時間熟成した(第二熟成工程)。この第二熟成工程の間、スラリー混合溶液を攪拌した。次いで、スラリー混合溶液を0.4℃/分のスピードで20℃まで冷却し、20℃で1時間熟成した(この間もスラリー混合溶液を攪拌した。)。その後、ろ過し、真空乾燥を行った結果、115.7g(精製収率89.0%)、HPLC純度99.84%の白色のL−カルノシンが得られた。
実施例1と同じ粗L−カルノシン水溶液を使用し、メタノールの代わりにエタノールを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、120g(精製収率92.3%)、HPLC純度99.80%の白色L−カルノシンが得られた。
実施例1と同じ粗L−カルノシン水溶液使用し、メタノールの代わりにイソプロパノールを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、120.2g(精製収率92.5%)、HPLC純度99.80%の白色L−カルノシンが得られた。
実施例1と同じ粗L−カルノシン水溶液を使用し、スラリー調整工程の濃縮温度、第一熟成温度、メタノールを滴下する際のスラリー溶液の温度をいずれも75℃とし、第二熟成温度を68℃にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、115.0g(精製収率88.5%)、HPLC純度99.80%の白色L−カルノシンが得られた。
実施例1と同じ粗L−カルノシン水溶液を使用し、スラリー調整工程の濃縮温度、第一熟成温度、アルコール滴下温度を35℃、第二熟成温度を53℃にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、115.1g(精製収率88.5%)、HPLC純度99.79%の白色L−カルノシンが得られた。
実施例1と同じL−カルノシン水溶液を使用し、第二熟成工程を行わなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、104.7g(精製収率80.5%)、HPLC純度99.60%の白色L−カルノシンが得られた。
実施例1と同じ粗L−カルノシン水溶液を使用し、スラリー調整工程において水を濃縮することなく、該水溶液を5℃まで冷却し、L−カルノシンの結晶を析出させてL−カルノシンのスラリー溶液を得た。次いで、第一熟成工程を行わず、スラリー溶液の温度を5℃に保ちながら、100mlのメタノールを30分で滴下した。その後、第二熟成工程を行わず、得られたスラリー混合溶液から実施例1と同様の方法でL−カルノシンを取り出した。その結果、82.2g(精製収率63.2%)、HPLC純度99.78%の白色L−カルノシンが得られた。
(スラリー調整工程)
製造例1と同様の方法で得た粗L−カルノシン水溶液を濃縮乾固し、粗L−カルノシン150g(水分量14.5%、粗L−カルノシン131g、HPLC純度97.9%)を得た。この粗L−カルノシンに水240mlを加えて、粗L−カルノシンの全量を溶解させることなく、L−カルノシンのスラリー溶液とした。
得られたスラリー溶液を60℃で1時間撹拌した。
次いで、攪拌中の該スラリー溶液中に、メタノール100mlを30分で滴下した。その後、得られたスラリー混合溶液を攪拌しながら60℃で1時間熟成した(第二熟成工程)。さらに、スラリー混合溶液を0.4℃/分のスピードで20℃まで冷却し、20℃で1時間熟成した(この間、スラリー混合溶液を攪拌した)。その後、析出した結晶をろ過し、真空乾燥を行った結果、得られたL−カルノシンは117.5g(精製収率89.7%)、HPLC純度99.31%であり、あまり純度の高いものではなかった。
実施例1と同じ粗L−カルノシン水溶液を使用し、精製工程でメタノールを添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、57.5g(精製収率44.2%)、HPLC純度99.85%の白色L−カルノシンが得られたが、収率が極端に低かった。
攪拌羽と温度計を備えた1L四つ口フラスコに製造例1で得たL−カルノシン水溶液を、5℃に冷却後、日本エンバイロケミカル社製活性炭白鷺Aを8.1g加え、2時間攪拌した。攪拌後活性炭をろ過し、活性炭を20mlの水で洗浄し、無色澄明水溶液を得た。HPLC純度は99.0%であった。
Claims (4)
- 純度が95〜98%である粗L−カルノシンが溶解した水溶液から水を濃縮することにより、L−カルノシンの結晶を析出させて、L−カルノシンのスラリー溶液とした後、得られたスラリー溶液を30℃以上80℃以下の温度で0.1時間以上10時間以下熟成し、次いで、該スラリー溶液とアルコールとを混合した後、L−カルノシンの結晶を取り出すL−カルノシンの精製方法であって、
前記スラリー溶液が、前記粗L−カルノシン1gに対して水の量が1.50ml以上2.00ml以下となる濃度であって、
前記スラリー溶液に混合するアルコールの量が、スラリー溶液に含まれる水とアルコールとの体積比率(水:アルコール)が1:0.2〜5となることを特徴とするL−カルノシンの精製方法。 - スラリー溶液とアルコールとを混合した後、得られたスラリー混合溶液を50℃以上70℃以下の温度で0.1時間以上5時間以下熟成し、次いで、L−カルノシンの結晶を取り出すことを特徴とする請求項1に記載のL−カルノシンの精製方法。
- スラリー溶液が、前記水溶液の温度を30℃以上80℃以下にして水を濃縮して得られたものである請求項1または2に記載のL−カルノシンの精製方法。
- 前記水溶液に溶解したL−カルノシンが、フタロイル−β−アラニンの酸クロライドと、トリメチルシリル基で保護したL−ヒスチジンとを反応させて得られたフタロイル−L−カルノシンをヒドラジンにより脱保護して得られたものである請求項1〜3の何れかに記載のL−カルノシンの精製方法。
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