JP4138409B2 - ポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法および該製造方法により得られたポリシルセスキオキサン微粒子 - Google Patents

ポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法および該製造方法により得られたポリシルセスキオキサン微粒子 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、実用性の高い機能性薄膜の素材として好適に使用されるポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法および、該製造方法により得られたポリシルセスキオキサン微粒子に関する。
【0002】
【従来技術】
ポリシルセスキオキサン(「PSQ」と称する場合がある)は、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比が1.5であるようなシリコーン系レジンの総称であり、例えば、下記式(1)で示すことができる。このようなPSQは、耐熱性、高硬度、耐摩耗性、電気絶縁性などに優れた材料として注目されており、耐熱性絶縁材料、耐熱性グリース、滑材、しゅう動材、剥離材、耐炎材などに、単独ないしは他のオルガノシロキサンやフッ素系材料等と併用して使用されている。
【化1】
Figure 0004138409
(式(1)において、R1、R2は、同一又は異なって、有機基を示す。nは正の整数である。)
【0003】
なお、R1やR2は、通常、炭化水素基であり、酸素原子を有していない。
【0004】
このようなPSQの製造方法は、種々検討されており、例えば、出発物質としてフェニルトリクロロシランを用いる場合、加水分解物の反応性が比較的穏やかであるので、フェニルトリクロロシランの加水分解物を高沸点溶媒(ジフェニルエーテルなど)中で水酸化カリウム(KOH)を触媒としてアルカリ平衡化により重縮合を行って、可溶性のポリフェニルシルセスキオキサン(PPSQ)を得る方法(例えば、非特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
一方、出発物質としてメチルトリクロロシランを用いる場合、加水分解物の反応性が非常に高いので、トルエン等の有機溶媒中で、加水分解したものは、すぐに不溶性のゲルとなってしまい、可溶性のポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)を得ることは困難であるが、水に不溶性の溶媒とアセトンとを用いて、メチルトリクロロシランを加水分解する方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0006】
また、出発物質としてのフェニルトリクロロシランやメチルトリクロロシランをエチレンジアミン等のジアミンと反応させた後に加水分解して、ジアミンをテンプレートとしてラダー型ポリマーを得る方法(例えば、非特許文献2参照。)が提案されている。
【0007】
さらに、フェニルトリクロロシランのトルエン溶液を0℃の水に滴下した後、水相を0℃で炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)でpHを酸性(pH=3〜4)に調整することにより、結晶性の沈殿状態の加水分解物を得て、これを水酸化カリウム(KOH)を触媒としてトルエン中で環流して高い結晶性のPPSQを得る方法(例えば、非特許文献3参照。)も提案されている。
【0008】
さらにまた、特定の分子量範囲の硬化性のPMSQの製造方法として、含酸素有機溶媒ないしは含酸素有機溶媒とこの有機溶媒に対して50容積%以下の酸化水素系溶媒とを含む混合溶媒にメチルトリハロシランを溶解させたものを単独ないしは水と一緒に、水中に滴下して、水と含酸素有機溶媒ないしは混合溶媒の2層系中で加水分解及び重縮合を行う方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0009】
これらのPSQの製造方法では、PSQの形態や大きさ等を考慮しておらず、例えば、メチルトリハロシランを用いて、水と含酸素有機溶媒ないしは混合溶媒の2相系中で加水分解及び重縮合を行う前記PMSQの製造方法では、独立したフィルムとして使用するのに十分な柔軟性と耐クラック性、引張強度を与える材料を得ることを目的としており、含酸素有機溶媒を含む有機層中に形成されたPMSQを乾燥させ白色の固体として生成物を得て、それを用いてフィルム化している。
【0010】
PMSQの微粒子化に関しては、例えば、メチルトリアルコキシシランをアルカリ土類金属やアルカリ金属を含む水溶液中で加水分解・重縮合させて微粒子を得る方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。また、エチレンオキサイド等の親水性のポリオキシアルキレン鎖を有する3官能の加水分解性シランを加水分解・縮合させ水中に懸濁させることにより、例えば、最大粒子径が1.3μm、最小粒子径が0.4μm、平均粒子径が0.8μm程度の球状微粒子を得る方法(例えば、特許文献4参照。)も開示されている。
【0011】
一方、分子材料をサブマイクロオーダー(例えば、0.1μmのオーダー)やナノオーダー(例えば、1nmのオーダー〜10nmのオーダー)の大きさに微粒子化して、高分子ミクロスフェアやゲル微粒子として微粒子特有のサイズ効果や大きな比表面積を利用して、触媒担持体や薬剤のキャリアー、感温性の可逆性ゲル等に使用したり、均一な薄膜形成用の材料やスペーサー等に微粒子を応用することが盛んに行われている。従って、PSQについても、サブマイクロオーダーやナノオーダーの微粒子が精度よく製造できれば、PSQが本来的に有している優れた耐熱性、高硬度、耐摩耗性、電気絶縁性の活用の幅が広げられる可能性がある。特に、平均粒子径が可視光の最大波長領域に相当する800nm以下であれば、光学的に透明性が確保でき、光学機能材料の素材として使用することが可能である。また、水中にサブマイクロオーダーやナノオーダーの微粒子状で分散したPSQを製造する際の出発物質として、安価なトリハロシラン類を用いることができれば、コスト面、取り扱い性、環境に対する負荷や薄膜化の手段などで、有機溶剤系に比べて大きな優位性や実用性が期待される。
【0012】
【特許文献1】
カナダ国特許第868996号明細書
【特許文献2】
特開2000−159891号公報
【特許文献3】
ベルギー国特許第572412号明細書
【特許文献4】
特開平11−255888号公報
【非特許文献1】
J.F.Brown著,「J.Am.Chem.Soc.」,(米国),ACS publications,1960年,82巻,p.6194」
【非特許文献2】
R.Zhang著,「Chinese J.Polym.Sci.」,(中国),Chinese Chemical Society,1989年,7巻,p.183
【非特許文献3】
E.C.Lee,Y.Kimura著,「Polym.J.」,社団法人 高分子学会,1998年,30巻,p.234
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、取り扱い性に優れるとともに環境に対する負荷が少なく、粒子径が精度よく制御されたポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法および該製造方法により得られたポリシルセスキオキサン微粒子を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、安定的に且つ安価に製造することができるポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法および該製造方法により得られたポリシルセスキオキサン微粒子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、光学機能材料や機能性薄膜材料として有用で、実用性が高いポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法および該製造方法により得られたポリシルセスキオキサン微粒子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として2種類以上のトリハロシラン類を用いるとともに、該2種以上のトリハロシラン類を有機溶剤に溶解した溶液を水中に滴下して水相に加水分解された2種以上のシラントリオール類を得て、このシラントリオール類を含む水溶液に乳化剤を添加して重縮合を行うと、粒径が高精度に制御された球状のポリシルセスキオキサン微粒子を安定して且つ安価に得ることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、球状のポリシルセスキオキサン微粒子を製造する方法であって、下記の工程A〜工程Bを具備することを特徴とするポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法である。
工程A:芳香族炭化水素基置換トリハロシランと脂肪族炭化水素基置換トリハロシランとの組み合わせからなる2種以上のトリハロシラン類が個別に又は共存下で有機溶媒に溶解している各溶液又は混合溶液を用いて、水中で、2種以上のトリハロシラン類を個別に又は共存下で加水分解する工程
工程B:前記加水分解工程により得られた2種以上のシラントリオール類を含む水溶液に乳化剤を添加して重縮合を行う工程
【0016】
記芳香族炭化水素基置換トリハロシランと、脂肪族炭化水素基置換トリハロシランとの割合としては、前者/後者(モル比)=30/70〜90/10が好ましい。
【0017】
このようなポリシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径としては、800nm以下であることが好ましい。
【0018】
前記乳化剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された少なくとも1種を使用できる。
【0019】
なお、乳化剤を添加して行う重縮合を乳化剤添加重縮合と称する場合がある。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法は、前述のように、下記の工程A〜工程Bを具備している。
工程A:2種以上のトリハロシラン類が個別に又は共存下で有機溶媒に溶解している各溶液又は混合溶液を用いて、水中で、2種以上のトリハロシラン類を個別に又は共存下で加水分解する工程(加水分解工程)
工程B:前記加水分解工程により得られた2種以上のシラントリオール類を含む水溶液に乳化剤を添加して重縮合を行う工程(乳化剤添加重縮合工程)
【0021】
このように、ポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として、トリハロシラン類を用いているので、製造する際の取り扱い性および環境への負荷低減性が優れている。
【0022】
しかも、トリハロシラン類として2種以上を用いているとともに、該2種以上のトリハロシラン類の加水分解物である2種以上のシラントリオール類を含む水溶液を用いて乳化剤添加重合しているので、粒子径が高精度で制御されたポリシルセスキオキサン微粒子を得ることができる。すなわち、ポリシルセスキオキサン微粒子は、その平均粒子径がナノオーダーからサブマイクロオーダーの大きさと小さくても、均一又はほぼ均一な大きさで調製されている。また、安定して且つ安価に製造することができる。なお、ポリシルセスキオキサン微粒子は、球状の形態を有しており、該球状の形態としては、真球状の形態が好適であるが、略球状の形態であってもよい。
【0023】
さらにまた、ポリシルセスキオキサン微粒子は、高分子量及び/又は高架橋密度を有しており、耐熱性、高硬度、耐摩耗性、電気絶縁性などの特性が優れており、実用的に十分な物性を有している。
【0024】
なお、ポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として、2種以上のトリハロシラン類を用いずに、単独のトリハロシランを用いる場合には種々の問題が生じる。例えば、トリハロシラン類としてフェニルトリクロロシランを単独で用いる場合には、乳化剤添加重縮合自体は可能であるが、反応温度を90℃以上に設定しても十分に重縮合が進行せず、得られるポリフェニルシルセスキオキサンの数平均分子量が数千程度と低く、そのため強度や耐クラック防止性などが低く、実用面で限定された材料としてしか利用できなくなる。一方、メチルトリクロロシランを単独で用いた場合は、加水分解の段階で重縮合反応が起こり、乳化剤添加重縮合を円滑に進行させるためには厳密な条件設定が必要になり、製造が困難になる。しかしながら、本発明のように、ポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として、2種以上のトリハロシラン類(例えば、フェニルトリクロロシランとメチルトリクロロシランとの組み合わせなど)を用いると、上記のような問題が低減又は解消される。
【0025】
このようにポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として2種以上のトリハロシラン類を利用し、前記工程A〜Bを経て、ポリシルセスキオキサン微粒子を製造する際には、例えば、下記に示されるように、2種以上のトリハロシラン類の加水分解を各成分毎に独立して行い、この加水分解により得られた2種以上のトリハロシラン類の各加水分解物を加水分解後に混合して、乳化剤添加重縮合を行ってもよいが、工程の簡略化や反応の制御の面の観点から、予め混合した2種以上のトリハロシラン類を共加水分解して、その後乳化剤添加重縮合を行うことが好ましい。
【0026】
[工程A(加水分解工程)]
(トリハロシラン類)
トリハロシラン類としては、特に制限されないが、下記式(2)で示される炭化水素基置換トリハロシラン類を好適に用いることができる。
R−Si−X3 (2)
(式(2)において、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0027】
前記式(2)において、Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子が特に好ましい。なお、ケイ素原子に結合している3つのXにおけるハロゲン原子は、全部又は一部が同一のハロゲン原子であってもよく、全部が異なるハロゲン原子であってもよい。
【0028】
Rの炭化水素基としては、特に制限されず、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基などを用いることができるが、アルキル基が好適である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などのアルキル基が挙げられる。
【0029】
脂環式炭化水素基としてはシクロアルキル基が好適であり、該シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0030】
また、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を好適に用いることができる。
【0031】
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が好適である。また、炭化水素基は、トリハロシラン類の溶解性や加水分解性、シラントリオール類の乳化剤添加重縮合性、ポリシルセスキオキサン微粒子の物性などを損なわない範囲で、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、他の炭化水素基などを用いることができる。
【0032】
具体的には、前記式(2)で表されるトリハロシラン類としては、例えば、脂肪族炭化水素基置換トリクロロシラン(例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、s−ブチルトリクロロシラン、t−ブチルトリクロロシラン等のアルキルトリクロロシランなど)、脂環式炭化水素基置換トリクロロシラン(例えば、シクロヘキシルトリクロロシラン等のシクロアルキルトリクロロシランなど)、芳香族炭化水素基置換トリクロロシラン(例えば、フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシラン等のアリールトリクロロシランなど)などの炭化水素基置換トリクロロシランや、これらの炭化水素基置換トリクロロシランに対応する炭化水素基置換トリフルオロシラン、炭化水素基置換トリブロモシランなどが挙げられる。
【0033】
本発明では、トリハロシラン類としては、2種以上を用いている。このような2種以上のトリハロシラン類としては、例えば、前記式(2)で表されるトリハロシラン類の場合、トリハロシラン類に置換している炭化水素基が異なる炭化水素基である組み合わせからなる2種以上のトリハロシラン類が好適である。なお、2種以上のトリハロシラン類において、各トリハロシラン類に置換している炭化水素基としては、炭化水素基のなかでも、メチル基とエチル基などのように同一の炭化水素基の部類(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)に属している組み合わせであってもよいが、メチル基、エチル基等のアルキル基とフェニル基等のアリール基などのように異なる炭化水素基の部類に属している組み合わせであることが好ましい。特に、2種以上のトリハロシラン類としては、芳香族炭化水素基置換トリハロシランと、脂肪族炭化水素基置換トリハロシランとの組み合わせが好ましい。このような好適な組み合わせからなる2種以上のトリハロシラン類において、芳香族炭化水素基置換トリハロシランは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、また、脂肪族炭化水素基置換トリハロシランは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、このような好適な組み合わせからなる2種以上のトリハロシラン類としては、フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシランなどのアリールトリクロロシランから選択された少なくとも一種のトリクロロシランと、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどのアルキルトリクロロシランから選択された少なくとも一種のトリクロロシランとの組み合わせなどが挙げられる。
【0034】
このような2種以上のトリハロシラン類中の各トリハロシランの割合は特に制限されない。例えば、2種以上のトリハロシラン類として、アリールトリクロロシラン(フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシランなど)と、アルキルトリクロロシラン(メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなど)とを組み合わせて用いる場合、アリールトリクロロシランとアルキルトリクロロシランとの割合としては、例えば、アリールトリクロロシラン/アルキルトリクロロシラン(モル比又はモル%比)=30/70〜90/10(好ましくは40/60〜80/20)程度の範囲から選択することが望ましい。アリールトリクロロシランとアルキルトリクロロシランとの割合において、フェニルトリクロロシランなどのアリールトリハロシランの割合が30重量%未満では、メチルトリクロロシランなどのアルキルトリクロロシランの加水分解物の重縮合が非均一又は選択的に生じるようになる場合があり、一方、90重量%を超えると重縮合反応性が低下し、高分子量のポリ(アリール・アルキル)シルセスキオキサン(ポリ(フェニル・メチル)シルセスキオキサンなど)を得ることが困難になる場合がある。
【0035】
なお、2種以上のトリハロシラン類における各トリハロシランのハロゲン原子は、同一のハロゲン原子であることが好ましい。本発明では、2種以上のトリハロシラン類には、ハロゲン原子の違いによる2種以上のトリハロシラン類が含まれない場合がある。これは、ハロゲン原子の違いによる2種以上のトリハロシラン類を加水分解した際には、同一のシラントリオール類が生成する場合があるからである。
【0036】
一方、ポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として、トリアルコキシシラン類を用いることも考えられるが、トリアルコキシシラン類はトリハロシラン類に比べて原料コストが高く、また、加水分解反応の速度が遅く、しかも、球状であり且つその粒子径が精度よく制御されたものを得るためには、厳密な反応条件の設定が必要である。従って、前記出発物質としてはトリハロシラン類を用いる方が有利である。特に、シラントリオール類を水中で生成させるには、トリハロシラン類の加水分解による方法が最も優れている。
【0037】
(加水分解)
工程A(加水分解工程)では、2種以上のトリハロシラン類を個別に又は共存下で有機溶媒に溶解させて各溶液又は混合溶液(「トリハロシラン類含有溶液」と称する場合がある)を調製し、このトリハロシラン類含有溶液を、水への滴下等により、水中で、前記2種以上のトリハロシラン類を個別に又は共存下で加水分解しており、このトリハロシラン類の加水分解反応により、シラントリオール類が生成している。
【0038】
従って、2種以上のトリハロシラン類の加水分解に際しては、それぞれのトリハロシラン類を単独で加水分解反応を行ってもよく、2種以上のトリハロシラン類を共存させて共加水分解反応を行ってもよい。また、2種以上のトリハロシラン類の加水分解に際しては、トリハロシラン類含有溶液を全量を一気に水中に入れてもよいが、滴下により、トリハロシラン類含有溶液を徐々に水中に導入することが好ましい。具体的には、2種以上のトリハロシラン類を加水分解する方法としては、例えば、(1)2種以上のトリハロシラン類を共存下で有機溶媒に溶解させて混合溶液(2種以上トリハロシラン類を含む溶液)を調製し、この混合溶液を、水中に滴下して、該水中で、前記2種以上のトリハロシラン類を共存下で加水分解する方法、(2)2種以上のトリハロシラン類を個別に有機溶媒に溶解させて各溶液(各トリハロシラン類を含む2種以上の溶液)を調製し、この各溶液を、同一の水中に、同時に又は順次に滴下して、該水中で、前記2種以上のトリハロシラン類を個別に又は共存下で加水分解する方法の他、(3)2種以上のトリハロシラン類を個別に有機溶媒に溶解させて各溶液(各トリハロシラン類を含む2種以上の溶液)を調製し、この各溶液を、異なる水中に滴下して、前記2種以上のトリハロシラン類を個別に加水分解する方法(この場合、工程Bに際しては、得られる2種以上の水溶液を混合すればよい)などが挙げられる。これらの中でも(1)や(2)の方法が好ましく、特に(1)の方法が好適である。なお、前記(1)〜(3)の方法は、単独で又は複数組み合わせて利用することができる。
【0039】
出発物質のトリハロシラン類を溶解させる際に用いられる有機溶媒としては、トリハロシラン類を溶解する溶媒であれば特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒などが挙げられる。有機溶媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。有機溶媒としては、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を好適に用いることができる。なお、有機溶媒は出発物質のトリハロシラン類の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0040】
加水分解する際に用いられる水は、滴下するトリハロシラン類含有溶液中の有機溶媒の全容量(トリハロシラン類を溶解させる際に用いられる有機溶媒の容量に相当する)よりも多いことが重要である。具体的には、加水分解する際に用いられる水の容量は、例えば、滴下するトリハロシラン類含有溶液中の有機溶媒の全容量に対して2〜20倍(好ましくは5〜10倍)の容量であることが望ましい。
【0041】
また、前記水の温度は、常温以下の温度であることが望ましく、好ましくは10℃以下(さらに好ましくは5℃以下、特に0℃程度)の温度に保たれた条件を設定することができる。
【0042】
さらにまた、局部的に加水分解反応が生じることを避けるために、激しく攪拌しながら(例えば、スターラーを高速で回転させて攪拌させながら)、トリハロシラン類含有溶液の滴下を行うことが好ましい。
【0043】
このトリハロシラン類の加水分解により、シラントリオール類が生成する。また、トリハロシラン類含有溶液を水に滴下し加水分解した後、得られる反応混合液を静置すると水相と有機相との分離が生じ、シラントリオール類は水相側に多く含まれている。従って、トリハロシラン類の加水分解後は、分液ロートによる分液方法等の公知乃至慣用の分液方法を利用して、水相と有機相とを分離することにより、2種以上のシラントリオール類を含む水溶液を得ることができる。
【0044】
なお、シラントリオール類の安定化のために、シラントリオール類を含む水溶液に塩基を加えてpHを中性(pH=7程度)にして中和してもよい。このような塩基としては、特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等)などや、アンモニアなどを用いることができる。塩基は水溶液の状態で用いることができる。塩基としては弱塩基が好ましい。なお、塩基は、無機塩基であってもよく、有機塩基(アミン類など)であってもよい。
【0045】
[工程B(乳化剤添加重縮合工程)]
工程B(乳化剤添加重縮合工程)では、前記加水分解工程により得られた2種以上のシラントリオール類を含む水溶液を必要に応じて乳化剤等を加えて、2種以上のシラントリオール類の乳化剤添加重縮合を行っており、このシラントリオール類の乳化剤添加重縮合反応により、ポリシルセスキオキサン微粒子が生成している。なお、該ポリシルセスキオキサン微粒子におけるポリシルセスキオキサンは、例えば、前記式(1)で表すことができる。
【0046】
乳化剤は、必要に応じて用いればよいが、通常、用いられる。乳化剤としては、特に制限されず、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであっても用いることができる。乳化剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、乳化剤としては、例えば、脂肪族石鹸類、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジナフチルメタンスルホン酸塩、N−メチルアルキルタウレート、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルザルコシン酸塩、アルキルアミン塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンアルキル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、エーテルアルキロールアミド、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)ブロックコポリマー、脂肪族ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、アルキルペタイン、N−アルキル(アミノエチル)グリシンなどが挙げられる。
【0047】
乳化剤の使用量(添加割合)は、特に制限されないが、水溶媒に対して10重量%以下(例えば、0.1〜10重量%)の範囲から選択することができるが、好ましくは0.5〜3重量%程度である。乳化剤の添加割合が水溶媒に対して0.5重量%未満では、均一なディスパージョンの形成が不安定になる場合があり、一方、3重量%を超えると、乳化剤の溶解限界を超える場合が多く、そのため、不部が発生して不均一系となり、重縮合が精度よく進行せず、重縮合を行うことが困難になる場合がある。
【0048】
シラントリオール類の乳化剤添加重縮合は、2種以上のシラントリオール類を含む水溶液に乳化剤を添加し、加熱条件下で一定時間攪拌を続けることにより行うことができる。この乳化剤添加重縮合反応に際して、シラントリオール類の割合(濃度)は、特に制限されないが、例えば、溶媒の水に対して0.1〜5重量%(好ましくは0.3〜1重量%)程度の範囲から選択することができる。
【0049】
乳化剤添加重縮合に際しての加熱温度としては、常温以上の温度であることが望ましく、好ましくは80〜100℃(特に90〜100℃)の設定可能な最高温度に近い条件に設定することができる。また、乳化剤添加重縮合を行う時間は、任意によって設定できるが、6〜24時間程度の時間に設定することができる。
【0050】
なお、乳化剤添加重縮合において、乳化剤添加重縮合により形成されるポリシルセスキオキサン微粒子の大きさは、シラントリオール類の濃度が一定の場合、乳化剤に濃度が高くなるほど小さくなる傾向があり、一方、乳化剤の濃度が一定の場合、シラントリオール類の濃度が低くなるほど小さくなる傾向がある。
【0051】
このような工程A〜Bの製造方法により、ポリシルセスキオキサン微粒子は、通常、水溶液中に分散された(均一又はほぼ均一に分散された)状態で得られる。該ポリシルセスキオキサン微粒子は、公知乃至慣用の微粒子分離方法により、単離することができる。例えば、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む水溶液(均一に分散されている水溶液)を凍結解凍凝固することにより、前記微粒子を単離する方法などが挙げられる。
【0052】
本発明のポリシルセスキオキサン微粒子は、前記工程A〜工程Bを具備する製造方法により得られる球状の微粒子であり、その粒子径(特に、平均粒子径)がサブマイクロオーダー(例えば、0.1μmのオーダー)やナノオーダー(例えば、1nmのオーダー〜10nmのオーダー)であっても高精度に制御されている。すなわち、ポリシルセスキオキサン微粒子は、例えば、図1(a)〜(f)で示されるように、その粒子径の分布又は分布幅が小さく、均一な又はほぼ均一な粒子径を有している。
【0053】
図1は、前記工程A〜工程Bを具備する製造方法を利用した実施例により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像の例を示す図である。図1(a)〜(f)は、ポリシルセスキオキサンを製造する際の出発物質として、フェニルトリクロロシランとメチルトリクロロシランとの2種のトリハロシラン類を用いるとともに、乳化剤添加重縮合の際に乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて得られるポリシルセスキオキサン微粒子を示している。なお、図1(a)〜(f)では、フェニルトリクロロシランとメチルトリクロロシランとの割合、ドデシル硫酸ナトリウムの使用量、乳化剤添加重縮合時のフェニルトリクロロシランおよびメチルトリクロロシランの加水分解物の濃度などの条件が異なっている。具体的には、図1(a)は下記の実施例1により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像であり、図1(b)は下記の実施例2により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像であり、図1(c)は下記の実施例3により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像であり、図1(d)は下記の実施例4により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像であり、図1(e)は下記の実施例5により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像であり、図1(f)は下記の実施例6により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像である
【0054】
ポリシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径としては、例えば、800nm以下(例えば、10〜800nm)であることが好ましく、さらに好ましくは500nm以下(例えば、10〜500nm)である。本発明の製造方法を利用すると、ポリシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径は300nm以下(例えば、20〜300nm)、特に250nm以下(例えば、30〜250nm)であっても精度よく得られる。このように、ポリシルセスキオキサン微粒子は、その平均粒子径が800nm以下であれば、可視光の最大波長領域に相当する粒子径以下となり、光学的に透明性が確保される。
【0055】
ポリシルセスキオキサン微粒子又は該ポリシルセスキオキサン微粒子を含む水溶液(通常、ポリシルセスキオキサン微粒子が均一に分散されている)中のポリシルセスキオキサン微粒子について、その形状や大きさ(粒子径など)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる方法や動的光散乱(DLS)を利用する方法などにより、観察・計測を行うことができる。
【0056】
ポリシルセスキオキサン微粒子の分子量(重量平均分子量や数平均分子量など)や架橋密度の測定方法は、特に制限されないが、例えば、トルエン、クロロホルム、アセトン等の汎用の有機溶媒による溶解性で、分子量(重量平均分子量又は数平均分子量)や架橋密度の簡易判定を行うことができる。具体的には、得られたポリシルセスキオキサン微粒子が、汎用の有機溶媒(トルエン、クロロホルム、アセトンなど)に溶解せず、膨潤度が数%以下であるならば、実用的に十分な高分子量および高架橋密度を有していると判定することができる。なお、ポリシルセスキオキサン微粒子が有機溶媒(特に汎用の有機溶媒)に可溶の場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、分子量(重量平均分子量又は数平均分子量)を測定することができる。
【0057】
このように、本発明の方法により製造されたポリシルセスキオキサン微粒子は、その平均粒子径が高精度に制御されており、ポリシルセスキオキサン微粒子が本来有している特性(例えば、耐熱性、高硬度、耐摩耗性、電気絶縁性など)を保持するとともに、光学的な透明性を有している。従って、該ポリシルセスキオキサン微粒子は、光学機能材料や機能性薄膜材料などとして有用であり、実用性が優れている。
【0058】
【発明の効果】
本発明のポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法によれば、取り扱い性に優れるとともに環境に対する負荷が少なく、粒子径が精度よく制御されたポリシルセスキオキサン微粒子が得られる。しかも、安定的に且つ安価に製造することができる。本発明の方法によるポリシルセスキオキサン微粒子は、光学機能材料や機能性薄膜材料として有用で、実用性が高い。
【0059】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
フェニルトリクロロシラン:4.3gと、メチルトリクロロシラン3.1gとを含むトルエン溶液:100mlを、スターラーにより激しく攪拌され且つ温度が0℃の水:500ml中に滴下して、共加水分解反応を行った。該共加水分解反応終了後、反応液を分液ロートに入れた後静置し、水相とトルエン相とを分離し、水相に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを7にして中和を行った。これにより得られた共加水分解物を含む水溶液は614mlであり、共加水分解物は4.2g(水溶液全量に対して0.68重量%)含まれていた。
前記共加水分解物を含む水溶液150ml(該水溶液中の共加水分解物の濃度は0.68重量%である)に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を、前記水溶液の溶媒としての水全量に対して0.5重量%加えて、90℃で16時間攪拌し、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む分散液を得た。
【0061】
(実施例2)
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の使用量が、共加水分解物を含む水溶液の溶媒としての水全量に対して1.0重量%であること以外は実施例1と同様の条件で共加水分解反応、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む分散液を得た。
【0062】
(実施例3)
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の使用量が、共加水分解物を含む水溶液の溶媒としての水全量に対して2.0重量%であること以外は実施例1と同様の条件で共加水分解反応、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む分散液を得た。
【0063】
(実施例4)
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の使用量が、共加水分解物を含む水溶液の溶媒としての水全量に対して3.0重量%であること以外は実施例1と同様の条件で共加水分解反応、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む分散液を得た。
【0064】
(実施例5)
共加水分解物の濃度が0.34重量%である前記共加水分解物を含む水溶液150mlを用いたこと以外は実施例1と同様の条件で共加水分解反応、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む分散液を得た。
【0065】
(実施例6)
共加水分解物の濃度が0.34重量%である前記共加水分解物を含む水溶液150mlを用いたこと、および、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の使用量が、共加水分解物を含む水溶液の溶媒としての水全量に対して2.0重量%であること以外は実施例1と同様の条件で共加水分解反応、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン微粒子を含む分散液を得た。
【0066】
(比較例1)
フェニルトリクロロシラン:4.3gを含むトルエン溶液:100mlを、スターラーにより激しく攪拌され且つ温度が0℃の水:500ml中に滴下して、加水分解反応を行った。該加水分解反応終了後、反応液を分液ロートに入れた後静置し、水相とトルエン相とを分離し、水相に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを7にして中和を行った。これにより得られた加水分解物を含む水溶液は560mlであり、加水分解物は3.2g(水溶液全量に対して0.57重量%)含まれていた。
前記加水分解物を含む水溶液100mlに、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を、前記水溶液の溶媒としての水全量に対して0.5重量%加えて、90℃で16時間攪拌し、乳化剤添加重縮合反応を行って、ポリシルセスキオキサン粒子を含む分散液を得た。
【0067】
(比較例2)
メチルトリクロロシラン6.2gを含むトルエン溶液:100mlを、スターラーにより激しく攪拌され且つ温度が0℃の水:500ml中に滴下して、加水分解反応を行おうとしたが、ゲル化が生じ、加水分解反応が進行しなかった。
【0068】
(粒子の形状及び大きさの評価)
実施例1〜6および比較例1により得られた分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、粒子(分散粒子、50個の微粒子)の大きさを観察したところ、表1に示される結果(粒子の平均粒子径、および標準偏差)が得られた。なお、実施例1〜6により得られた分散液に関する透過型電子顕微鏡(TEM)による写真像を、それぞれ、図1(a)〜(f)に示す。図1(a)〜(f)における円状のものは、各分散液中の微粒子である。図1(a)〜(f)におけるスケールバーは200nmを示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004138409
【0070】
表1および図1(a)〜(f)より、実施例1〜6により得られた分散液中の微粒子は、800μm以下の大きさで且つ球状の微粒子であることが確認された。しかも、前記微粒子の大きさは、均一又はほぼ均一(一定又はほぼ一定)であり、高精度で調製されていることが確認された。
【0071】
(粒子の分子量及び架橋密度の評価)
また、実施例1〜6および比較例1に係る分散液から凍結単離方法により得られた粒子を、トルエンなどの汎用の有機溶媒中に入れて、粒子の溶解性を確認したところ、実施例1〜6に係る粒子[ポリ(フェニル・メチル)シルセスキオキサン微粒子]は溶けず、実用的に十分な高分子量又は高架橋密度を有するものであることが確認された。
【0072】
一方、比較例1に係る粒子(ポリフェニルシルセスキオキサン粒子)は、トルエンに溶解した。このポリフェニルシルセスキオキサン粒子について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量を測定したところ、2900〜3000と低かった。従って、比較例1に係るポリフェニルシルセスキオキサン粒子は、多数のシロキシルグループ(シロキシル基)を有するオリゴマーからなる粒子であり、実用的な使用に十分な分子量を有していないことが確認された。
【0073】
なお、比較例2では、メチルトリクロロシランの加水分解の段階で縮合反応によりゲル化が生じてしまい、乳化剤添加重縮合により球状のしかも均一な粒子径を有するポリメチルシルセスキオキサン粒子が得られないことが確認された。
【0074】
これらの評価結果より、実施例1〜6に係るポリ(フェニル・メチル)シルセスキオキサン微粒子は、安定的に得られるとともに、平均粒子径が10〜800nmである高精度の球状の微粒子(すなわち、ナノオーダーからサブマイクロオーダーの大きさを有する高精度の球状微粒子)であり、しかも、実用的に十分な高分子量及び高架橋密度を有していることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、前記工程A〜工程Bを具備する製造方法を利用した実施例により得られたポリシルセスキオキサン微粒子の透過型電子顕微鏡による写真像の例を示す図である。

Claims (4)

  1. 球状のポリシルセスキオキサン微粒子を製造する方法であって、下記の工程A〜工程Bを具備することを特徴とするポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
    工程A:芳香族炭化水素基置換トリハロシランと脂肪族炭化水素基置換トリハロシランとの組み合わせからなる2種以上のトリハロシラン類が個別に又は共存下で有機溶媒に溶解している各溶液又は混合溶液を用いて、水中で、2種以上のトリハロシラン類を個別に又は共存下で加水分解する工程
    工程B:前記加水分解工程により得られた2種以上のシラントリオール類を含む水溶液に乳化剤を添加して重縮合を行う工程
  2. 芳香族炭化水素基置換トリハロシランと、脂肪族炭化水素基置換トリハロシランとの割合が、前者/後者(モル比)=30/70〜90/10である請求項1記載のポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
  3. ポリシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径が800nm以下である請求項1又は2記載のポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
  4. 乳化剤が、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された少なくとも1種である請求項1〜3何れかの項に記載のポリシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
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