JP4098893B2 - ポリオルガノシロキサン微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオルガノシロキサン微粒子の製造方法の改良に関し、さらに詳しくは、液晶表示装置用スペーサや標準粒子などとして好適な、粒径分布が単分散のポリオルガノシロキサン微粒子を、所望の粒径のものが得られるように効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、粒径分布が単分散状のシリカ粒子(以下、単に単分散シリカ粒子ということがある)は、各種充填材やセラミックス原料などとして有用であることが知られているが、特に最近では、液晶表示装置のスペーサとしての用途が注目され、使用され始めている。
【0003】
液晶表示装置のスペーサには、従来ガラスファイバーチップあるいは合成樹脂の微粒子が用いられてきた。しかしながらガラスファイバーチップはファイバー径精度には優れているものの、その長さにばらつきが大きく、余りに長いものは目視され画質を低下するおそれがあり、またその端部が鋭利であるため、基板上に成形された配向膜や保護膜、カラーフィルターあるいは電気素子などを傷つけてしまうおそれがある。また、合成樹脂の微粒子は粒径精度が劣るため、液晶表示装置用スペーサとして要求される性能を満たし得ないことがある。したがって、より高度のギャップ精度を要求される場合には、粒径精度が良く、かつ球形で、基板上に形成された配向膜や保護膜、カラーフィルターあるいはITO導電膜等の電気素子を傷つけるおそれのないものが要求される。
【0004】
これらの要求を満たすものとして、シリコンアルコキシドを加水分解・重縮合することによって得られたシリカ粒子が提案されている。このシリカ粒子は、
(1)純度が高く、溶出成分による液晶への影響が少ない
(2)粒径精度が良く、下式
CV(%)=[微粒子径の標準偏差(μm)]
/[平均粒子径(μm)]×100
で得られるCV値(変動係数)を10%以下とすることができる
(3)ほとんど完全な真球にすることができるため、基板上に形成された配向膜や保護膜、カラーフィルターあるいはITO導電膜等の電気素子などを傷つけるおそれがない
などの利点を有している。
【0005】
シリコンアルコキシドの加水分解・重縮合により得られたシリカ粒子は上記のような利点を有するため、これまで数多くの製造方法が提案されている。
例えば、球状ポリメチルシルセスキオキサンの製造方法として、メチルトリアルコキシシランやその部分加水分解縮合物と、アンモニアやアミンを含む水溶液または水と有機溶剤との混合溶剤溶液とを、実質上混合することなく、2層状態を保持しながら反応させる方法が提案されている(特公平4−70335号公報)。この方法は、ミクロンサイズの単分散球状粒子を1段階の反応で容易に得ることができるという利点がある。この方法においては、粒子成長の後、ポリメチルシルセスキオキサン粒子が分散したアンモニア性水溶液を、例えば50℃に加熱して加水分解反応を促進させ、次いで生成した粒子を溶液から分離し、乾燥して単分散球状のポリメチルシルセスキオキサン粒子を得ている。
【0006】
さらに、上記2層系の反応においては、メチルトリアルコキシシラン以外に、加水分解されない有機基を有する加水分解性シラン化合物であるオルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、トリオルガノアルコキシシランのそれぞれ単独または2種以上の混合物、またはこれらとテトラアルコキシシランとの混合物を含み、かつ下層のアンモニア水やアミン水溶液の比重より小さい混合系において、ポリメチルシルセスキオキサン粒子と同様にミクロンサイズの単分散球状ポリオルガノシロキサン微粒子を合成することが知られている。
【0007】
しかしながら、これらの方法においては、生成するポリオルガノシロキサン粒子の粒径は、仕込み時の下層中のアンモニアやアミンの濃度によって制御されるが、核粒子の生成が不確定なため、発生粒子核数にバラツキが生じやすく、同一反応条件で反応を行っても、最終的に得られる粒子の径が目的とする粒径にならないという問題がある。例えば、平均粒径が5μmの粒子を得る目的で、同一条件で10回製造を行った場合、目的の粒径に対して40%程度(約2.0μm)のバラツキが生じる。
このように、所望の粒径が得られないと、厳密にその粒径精度が要求される液晶表示装置用スペーサなどには使用しにくいという問題が生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、特に液晶表示装置用スペーサとして好適な粒径分布が単分散のポリオルガノシロキサン微粒子を、所望の粒径のものが得られるように、効率よく製造する方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、非加水分解性基と加水分解性のアルコキシル基がケイ素原子に結合したケイ素化合物を、アンモニアやアミンの水性溶液中で加水分解・縮合させる際に、HLB値(親水性親油性バランス値)が所定の範囲にあるノニオン性界面活性剤を、上記水性溶液に含有させることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、HLB値8〜20のエーテル型ノニオン性界面活性剤と、アンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液の存在下に、一般式(I)
R1 nSi(OR2)4−n ・・・(I)
(式中、R1は非加水分解性基であって、炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、R2は炭素数1〜6のアルキル基、nは1〜3の整数を示し、R1が複数ある場合、各R1はたがいに同一であっても異なっていてもよく、OR2が複数ある場合、各OR2はたがいに同一であっても異なっていてもよい。)で表されるケイ素化合物を加水分解・縮合させ、反応の途中で、アンモニアおよび/またはアミンを追添することを特徴とするポリオルガノシロキサン微粒子の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明を実施するための好ましい態様は、上記製造方法において、一般式(I)で示される物質が、メチルトリメトキシシランおよび/またはビニルトリメトキシシランである方法である。
【0012】
特に好ましい態様は、これらの製造方法において、上記一般式(I)で表される単独物もしくは混合物の比重(23℃)が1以下であるケイ素化合物を、ノニオン性界面活性剤とアンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液と混合させることなく2層状態を保持しながら界面で反応させ、上層のケイ素化合物が消失した後に、アンモニアおよび/またはアミンを反応系に添加して熟成させる方法である。
【0013】
本発明を実施するための、他の好ましい態様は、加水分解・縮合ないし熟成後に得られた粒子について焼成処理を行う方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の方法においては、原料として、一般式(I)
R1nSi(OR2)4-n ・・・(I)
で表されるケイ素化合物が用いられる。
【0015】
上記一般式(I)において、R1は炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基としては、上記置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。この置換基を有するアルキル基の例としては、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、また、このアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0016】
一方、R2は炭素数1〜6のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。nは1〜3の整数であり、R1が複数ある場合、各R1はたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、またOR2が複数ある場合、各OR2はたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
前記一般式(I)で表されるケイ素化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。
本発明においては、原料として、前記一般式(I)で表されるケイ素化合物を1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明においては、ノニオン性界面活性剤を含有するアンモニアおよび/またはアミンの水性溶液の存在下に、前記一般式(I)で表されるケイ素化合物を加水分解・縮合させるが、上記アンモニアやアミンは、該ケイ素化合物の加水分解・縮合反応の触媒である。ここで、アミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどを好ましく挙げることができる。このアンモニアやアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、毒性が少なく、除去が容易で、かつ安価なことから、アンモニアが好適である。
【0019】
ノニオン性界面活性剤を含有するアンモニアおよび/またはアミンの水性溶液としては、水または水と水混和性有機溶剤との混合溶剤にノニオン性界面活性剤とアンモニアおよび/またはアミンを溶解した溶液が挙げられる。ここで、水混和性有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。これらは単独で水と混合してもよいし、2種以上を組み合わせて水と混合してもよい。
アンモニアやアミンの使用量としては特に制限はないが、反応開始前の水層のpHが、7.5〜11.0の範囲になるように選定するのが好ましい。
【0020】
本発明においては、ノニオン性界面活性剤として、HLB値が8〜20の範囲にあるものが用いられる。このHLBは、親水性と親油性のバランスを表す指標であり、その値が小さいほど、親油性が高い。HLB値が上記範囲を逸脱するものでは、本発明の効果が十分に発揮されない。本発明の効果をよりよく発揮させるには、HLB値が10〜17の範囲にあるものが好ましい。
【0021】
該ノニオン性界面活性剤としては、HLB値が上記の範囲にあるものであればよく、特に制限されず、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型ノニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油および硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型ノニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型ノニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキシドなどの含窒素型ノニオン性界面活性剤などが挙げられるが、これらの中でエーテル型が好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好適である。これらのノニオン性界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明においては、これらのノニオン性界面活性剤は、アンモニアおよび/またはアミンの水性溶液中に、関係式(II)
y=C・x-1/3 …(II)
に従って添加するのが好ましい。ここで、yは目的とするポリオルガノシロキサン粒子の平均粒径(μm)であり、xは該水性溶液中の界面活性剤の濃度(重量%)である。また、Cは定数であって、用いるノニオン性界面活性剤の種類(例えば、HLB値など)および反応条件(例えば、該水性溶液中のアンモニアおよび/またはアミンの濃度やpHなど)によって決定される。
【0023】
このCは、予備実験により、予め求めておき、実際のポリオルガノシロキサン微粒子の製造において、前記関係式(II)に基づき、所望の平均粒径とC値から、xの値(水性溶液中の界面活性剤濃度)を決定すればよい。このxとしては、ノニオン性界面活性剤の種類にもよるが、一般的には10-5〜5×10-2重量%の範囲で選ばれる。この界面活性剤濃度が上記範囲を逸脱すると本発明の効果が充分に発揮されないおそれがある。なお、界面活性剤の濃度が高くなるに伴い、生成するポリオルガノシロキサン粒子の平均粒径は小さくなる傾向にある。
【0024】
このように、該関係式(II)に基づいて、ノニオン性界面活性剤の濃度を決定することにより、所望の平均粒径を有する粒径分布が単分散のポリオルガノシロキサン微粒子を容易に製造することができる。これは、界面活性剤の集合体がシードとして作用し、界面活性剤濃度と生成粒子の個数との間に相関関係が成立するためであると推定される。
【0025】
本発明の方法における反応形式としては特に制限はなく、混合均一系反応および2層系反応のいずれも用いることができるが、本発明の効果がより良く発揮され、反応操作が容易な点から2層系反応の方が有利である。
【0026】
まず、混合均一系反応について説明する。
この混合均一系反応においては、前記一般式(I)で表されるケイ素化合物、およびノニオン性界面活性剤とアンモニアおよび/またはアミン含有水性溶液を混合し、撹拌しながら、混合均一系にて反応させる。この際の反応温度は、原料のケイ素化合物の種類などに左右されるが、一般的には0〜60℃の範囲で選ばれる。この場合、ケイ素化合物の加水分解・縮合反応により、ポリオルガノシロキサン微粒子が生成しはじめてから(反応液が白濁し始めてから)、ある程度反応が進行した時点で、反応系にアンモニアおよび/またはアミンを添加して、熟成を行うのが有利である。
【0027】
このアンモニアやアミンを添加する時期の決定は重要である。すなわち、あまり反応が進行していない時点で添加すると、その時点では生成粒子径が小さく、未反応のケイ素化合物が多量に存在するため、微小粒子が多数発生し、歩留まりが低下する上、分級処理回数が多くなるなどの問題が生じる。一方、反応が進行しすぎた時点で添加すると、粒子同士の凝集が生じ、巨大粒子が生成するようになるなどの問題が生じる。
【0028】
このアンモニアやアミンの適正な添加時期は、原料の種類、反応温度、pHなどによって左右されるので、予め予備実験において、原料の種類、反応温度、pHなどと適正な添加時期との関係を調べておき、これを利用して、適正な時期にアンモニアやアミンを添加するのが望ましい。
【0029】
アンモニアやアミンの添加量は特に制限はないが、反応系のpHが9.0〜12.0の範囲になるように選ぶのが望ましい。熟成温度は上記の反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。また、熟成時間は反応温度やpHなどによって左右され、一概に定めることはできないが、通常は1〜20時間程度で充分である。
【0030】
次に、2層系反応について説明する。
この2層系反応においては、原料のケイ素化合物として、前記一般式(I)で表される単独物もしくは混合物の比重(23℃)が1以下であるものが用いられる。
まず、このケイ素化合物を、ノニオン性界面活性剤とアンモニアおよび/またはアミン含有水性溶液と実質上混合させることなく、2層状態を保持しながら、界面で反応させる。
【0031】
この反応においては、ケイ素化合物とノニオン性界面活性剤含有アンモニアやアミン溶液層とが、実質上混合することなく、2層状態を保持するように穏やかに撹拌することが必要である。これにより、上層のケイ素化合物が加水分解されて下層に移行し、そこでポリオルガノシロキサン微粒子が成長する。この際の反応温度は、原料のケイ素化合物の種類などに左右されるが、一般的には0〜60℃の範囲で選ばれる。
【0032】
この2層系反応においては、上層が消失したのち、反応系にアンモニアおよび/またはアミンを添加し、熟成させるのが有利である。この熟成は上記の反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。アンモニアやアミンの添加量は特に制限はないが、反応系のpHが9.0〜12.0の範囲になるように選ぶのが望ましい。熟成時間は、反応温度やpHなどによって左右され、一概に定めることはできないが、通常は1〜20時間程度で充分である。
【0033】
この2層系反応においては、アンモニアおよび/またはアミンの添加を、上層が実質上消失した時点で行えばよいので、前記混合均一系反応のように、予備実験などを行う必要がなく、反応操作が簡単で有利である。
【0034】
このようにして、混合均一系反応または2層系反応において熟成を終了した後は、常法に従い生成した粒子を充分に洗浄したのち、必要ならば分級処理を行い、極大粒子または極小粒子を取り除き、乾燥処理を行う。分級処理方法としては特に制限はないが、粒径により沈降速度が異なるのを利用して分級を行う湿式分級法が好ましい。乾燥処理は、通常100〜200℃の範囲の温度で行われる。本発明においては、この乾燥処理において、粒子の凝集が実質上生じることはない。
【0035】
ポリオルガノシロキサン微粒子は、液晶装置用スペーサとして必要な圧縮強度を得るために、必要に応じ、焼成処理してもよい。この焼成処理は、窒素などの不活性雰囲気下または真空中において、200〜1000℃、特に300〜800℃の範囲の温度で行うのが好ましい。この温度が200℃未満では充分な圧縮強度が得られない場合があるし、1000℃を超えると粒子が硬くなりすぎる場合があり、好ましくない。焼成温度の選定は、粒子を構成する有機基の種類に依存しており、熱分解しやすい有機基を有する場合、上記焼成温度範囲において比較的低い温度で処理するのが望ましく、反対に熱分解しにくい有機基を有する場合には上記焼成温度範囲内で高温で処理するのが好ましい。いずれにしても、必要となる破壊強度や弾性率に応じて最適な条件を選定すればよい。また、焼成装置については特に制限はなく、電気炉やロータリーキルンなどを用いることができるが、粒子の攪拌が可能なロータリーキルン中で焼成するのが有利である。
【0036】
このような本発明の方法で得られたポリオルガノシロキサン微粒子は、平均粒径が、通常0.1〜15μm、好ましくは0.3〜10μmであり、また、粒度分布の変動係数(CV値)が、通常3.0%以下であって、真球状の単分散粒子である。
なお、変動係数(CV値)は下式により求められる。
CV値(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
300ミリリットルのプラスチック製ビーカーに、HLB値が13のノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(第一工業製薬社製「ノイゲンEA137」)0.0001重量%を含有する水溶液250ミリリットルを仕込み、この水溶液を磁気撹拌装置にて撹拌しながら、1規定のアンモニア水0.25ミリリットルを加え、均一になるように5分間撹拌した。
【0039】
次いで、撹拌子の回転数を60rpmとし、メチルトリメトキシシラン25gをゆっくりと添加し、上層にメチルトリメトキシシラン層を形成させた。これを室温にて、60rpmで撹拌し、上層が完全に消失した時点で、25重量%アンモニア水2.0ミリリットルを加え、10時間熟成させ、反応を終了させた。
【0040】
反応終了後、沈降速度の差を利用した湿式分級を行い、極小粒子を取り除き、目的のポリメチルシルセスキオキサン微粒子を得た。この粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均粒径およびCV値を求めた。
【0041】
この実験操作を10回繰り返し、得られたポリメチルシルセスキオキサン微粒子の平均粒径およびCV値を同様にして求めた。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から分かるように、最大平均粒径は2.913μm、最小平均粒径は2.678μmで、その差は0.235μm、中間の平均粒径は2.80μmであり、この中間平均粒径2.80μmに対し、8.4%のバラツキであった。また、CV値は、いずれも3.0%以下であった。すなわち、平均粒径2.8μmの粒子を目標とする場合、平均粒径が約8%のバラツキで、CV値3.0%以下の単分散粒子が得られることが分かる。
【0044】
比較例1
実施例1において、ノイゲンEA137 0.0001重量%を含有する水溶液250ミリリットルの代わりに、水250ミリリットルを用い、かつ1規定のアンモニア水の量を0.50ミリリットルに変えた以外は、実施例1と同様にして実験を10回繰り返した。平均粒径およびCV値を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から分かるように、最大平均粒径は6.033μm、最小平均粒径は4.058μmで、その差は1.975μm、中間の平均粒径は5.05μmであり、この中間平均粒径5.05μmに対し、39.1%のバラツキであった。またCV値は、いずれも3.0%以下で単分散であった。すなわち、平均粒径5.0μmの粒子を目標とする場合、平均粒径が約39%のバラツキで、CV値3.0%以下の単分散粒子が得られることが分かる。
【0047】
実施例2
300ミリリットルのプラスチック製ビーカーに、HLB値が15のノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(第一工業製薬社製「ノイゲンEA157」)0.0001重量%を含有する水溶液250ミリリットルを仕込み、この水溶液を磁気撹拌装置にて撹拌しながら、1規定のアンモニア水0.09ミリリットルを加え、均一になるように5分間撹拌した。
【0048】
次いで、撹拌子の回転数を60rpmとし、ビニルトリメトキシシラン25gをゆっくりと添加し、上層にビニルトリメトキシシラン層を形成させた。これを室温にて、60rpmで撹拌し、上層が完全に消失した時点で、25重量%アンモニア水2.0ミリリットルを加え、10時間熟成させ、反応を終了させた。
【0049】
反応終了後、沈降速度の差を利用した湿式分級を行い、極小粒子を取り除き、目的のポリビニルシルセスキオキサン微粒子を得た。この粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均粒径およびCV値を求めた。
【0050】
この実験操作を10回繰り返し、得られたポリビニルシルセスキオキサン微粒子の平均粒径およびCV値を同様にして求めた。その結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3から分かるように、最大平均粒径は2.566μm、最小平均粒径は2.411μmで、その差は0.155μm、中間の平均粒径は2.49μmであり、この中間平均粒径2.49μmに対し、5.8%のバラツキであった。また、CV値は、いずれも3.0%以下で単分散であった。すなわち、平均粒径2.5μmの粒子を目標とする場合、平均粒径が約6%のバラツキで、CV値3.0%以下の単分散粒子が得られることが分かる。
【0053】
実施例3
300ミリリットルのプラスチック製ビーカーに、HLB値が13のノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(第一工業製薬社製「ノイゲンEA137」)0.001重量%を含有する水溶液250ミリリットルを仕込み、この水溶液を磁気撹拌装置にて撹拌しながら、1規定のアンモニア水0.09ミリリットルを加え、均一になるように5分間撹拌した。
【0054】
次いで、撹拌子の回転数を60rpmとし、ビニルトリメトキシシラン25gをゆっくりと添加し、上層にビニルトリメトキシシラン層を形成させた。これを室温にて、60rpmで撹拌し、上層が完全に消失した時点で、25重量%アンモニア水2.0ミリリットルを加え、10時間熟成させ、反応を終了させた。
【0055】
反応終了後、沈降速度の差を利用した湿式分級を行い、極小粒子を取り除き、目的のポリビニルシルセスキオキサン微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均粒径を求めた。その結果、平均粒径は0.83μmであった。この値より、関係式(II)として
y=0.085x-1/3 ・・・(II−a)
を導き出した。
【0056】
次に、表4に示す各濃度のノイゲンEA137含有水溶液を用い、前記と同様に実施して、得られるポリビニルシルセスキオキサン微粒子の平均粒径を求め、前記関係式(II−a)が成り立つかどうかを調べた。結果を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
表4より、関係式(II−a)から導かれる平均粒径と実際に得られた粒子の平均粒径が極めてよく一致することが分かる。したがって、この関係式(II−a)を用いれば、容易に任意の粒子径を有する粒子が得られる。
【0059】
実施例4
300ミリリットルのプラスチック製ビーカーに、HLB値が13のノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(第一工業製薬社製「ノイゲンEA137」)0.0002重量%を含有する水溶液250ミリリットルを仕込み、この水溶液を磁気撹拌装置にて撹拌しながら、1規定のアンモニア水0.1ミリリットルを加え、均一になるように5分間撹拌した。
【0060】
次いで、撹拌子の回転数を60rpmとし、メチルトリメトキシシラン25gをゆっくりと添加し、上層にメチルトリメトキシシラン層を形成させた。これを室温にて、60rpmで撹拌し、上層が完全に消失した時点で、25重量%アンモニア水2.0ミリリットルを加え、10時間熟成させ、反応を終了させた。
【0061】
反応終了後、沈降速度の差を利用した湿式分級を行い、極小粒子を取り除き、得られたポリメチルシルセスキオキサン微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均粒径を求めた。その結果、平均粒径は2.8μmであった。この値より、関係式(II)として
y=0.1617x-1/3 ・・・(II−b)
を導き出した。
【0062】
次に、表5に示す各濃度のノイゲンEA137含有水溶液を用い、前記と同様に実施して、得られるポリメチルシルセスキオキサン微粒子の平均粒径を求め、前記関係式(II−b)が成り立つかどうかを調べた。結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
表5より、関係式(II−b)から導かれる平均粒径と実際に得られた粒子の平均粒径が極めてよく一致することが分かる。したがって、この関係式(II−b)を用いれば、容易に任意の粒子径をもつ粒子が得られる。
【0065】
実施例5
300ミリリットルのプラスチック製ビーカーに、HLB値が14のノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル(第一工業製薬社製「ノイゲンET147」)0.0001重量%を含有する水溶液250ミリリットルを仕込み、この水溶液を磁気撹拌装置にて撹拌しながら、1規定のアンモニア水0.09ミリリットルを加え、均一になるように5分間撹拌した。
【0066】
次いで、撹拌子の回転数を60rpmとし、ビニルトリメトキシシラン25gをゆっくりと添加し、上層にビニルトリメトキシシラン層を形成させた。これを室温にて、60rpmで撹拌し、上層が完全に消失した時点で、25重量%アンモニア水2.0ミリリットルを加え、10時間熟成させ、反応を終了させた。
【0067】
反応終了後、沈降速度の差を利用した湿式分級を行い、極小粒子を取り除き、目的のポリビニルシルセスキオキサン微粒子を得た。この粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均粒径およびCV値を求めた。
【0068】
この実験操作を10回繰り返し、得られたポリビニルシルセスキオキサン微粒子の平均粒径およびCV値を同様にして求めた。その結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6から分かるように、最大平均粒径は2.452μm、最小平均粒径は2.327μmで、その差は0.125μm、中間の平均粒径は2.40μmであり、この中間平均粒径2.40μmに対し、5.2%のバラツキであった。また、CV値は、いずれも3.0%以下で単分散であった。すなわち、平均粒径2.5μmの粒子を目標とする場合、平均粒径が約5%のバラツキで、CV値3.0%以下の単分散粒子が得られることが分かる。
【0071】
実施例6、7
実施例1の実験No.1および実施例2の実験No.1で得られたポリオルガノシロキサン微粒子を表7に示す条件下に焼成処理し、焼成ポリオルガノシロキサン微粒子を得た。
【0072】
【表7】
【0073】
焼成後に得られたポリオルガノシロキサン微粒子は、表7に示すような破壊強度を有し、液晶表示装置用スペーサとして特に好適であることが明らかとなった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、特に液晶表示装置用スペーサとして好適な、所望の粒径を有し、かつ粒径分布が単分散のポリオルガノシロキサン微粒子を効率よく製造することができる。
Claims (6)
- HLB値(親水性親油性バランス値)8〜20のエーテル型ノニオン性界面活性剤と、アンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液の存在下に、一般式(I)
R1 nSi(OR2)4−n ・・・(I)
(式中、R1は非加水分解性基であって、炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、R2は炭素数1〜6のアルキル基、nは1〜3の整数を示し、R1が複数ある場合、各R1はたがいに同一であっても異なっていてもよく、OR2が複数ある場合、各OR2はたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるケイ素化合物を加水分解・縮合させ、反応の途中で、アンモニアおよび/またはアミンを追添することを特徴とするポリオルガノシロキサン微粒子の製造方法。 - 一般式(I)で示される物質が、メチルトリメトキシシランおよび/またはビニルトリメトキシシランである請求項1に記載の製造方法。
- 一般式(I)で表される単独物もしくは混合物の比重(23℃)が1以下であるケイ素化合物を、エーテル型ノニオン性界面活性剤とアンモニアおよび/またはアミンを含有する水性溶液と混合させることなく2層状態を保持しながら界面で反応させ、上層のケイ素化合物が消失した後に、アンモニアおよび/またはアミンを反応系に添加して熟成させる請求項1または2に記載の製造方法。
- HLB値8〜20のエーテル型ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルおよび/またはポリオキシエチレンアルキルエーテルである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 水性溶液中のエーテル型ノニオン性界面活性剤の濃度が10−5〜5×10−2重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 加水分解・縮合ないし熟成後に得られた粒子について焼成処理を行う請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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