JP4114278B2 - ノイズ低減装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はノイズ低減装置に関し、特にノイズの低減を図るノイズ低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マルチメディア時代を迎えてAVシステムの発展は著しく、特にVTR等のビデオ処理装置は、家庭用サーバとしても多くの用途の拡がりが期待されており、さらなる高性能化へ向けて開発が進んでいる。
【0003】
図9は従来のVTRの音声再生時の周辺ブロックを示す図である。ヘッドA、Bを通じて出力される音声信号は、ヘッドスイッチSWに入力する。ヘッドスイッチSWの出力は、FM復調回路101へ入力しFM復調される。
【0004】
ここで、ヘッドスイッチSWは、タイミング発生回路102のタイミング信号saにもとづいて、ヘッドA、Bのスイッチ切り替えを行う。このスイッチ切り替え時に、スイッチングノイズが音声信号にのってしまうため、従来ではサンプルホールド回路103を設けてスイッチングノイズをマスクして出力している。
【0005】
図10は信号波形を示す図である。図9のブロック図の対応する箇所の信号波形を示している。タイミング信号saは、ヘッドスイッチSWを切り替えるための信号である。復調信号sbは、FM復調回路101の出力信号である。サンプルホールドタイミング信号scは、サンプルホールド回路103に対するサンプルホールドのタイミングを示す信号である。音声出力信号sdはサンプルホールド回路103の出力信号である。
【0006】
音声信号の再生時には、2つのヘッドA、Bからの出力信号をタイミング信号saにもとづいてヘッドスイッチSWで切り替え、1つの連続したFM信号とした後、FM復調回路101で復調する。
【0007】
ところが、2つのヘッドA、Bからの出力信号は、テープの伸縮などによりFM信号としての位相が一致していないため、これをそのまま復調するとヘッドA、Bの切り替え直後に、復調信号sbには大きなスイッチングノイズが発生してしまう。
【0008】
したがって、スイッチングノイズを補正するために、サンプルホールド回路103は、ヘッドA、B切り替え直後の一定期間(T)の信号電圧を、サンプルホールドタイミング信号scにもとづいてサンプルホールドすることにより、スイッチングノイズを含まない音声出力信号sdを生成して出力している。
【0009】
図に示すサンプルホールドによりできる段差は、スイッチング周波数の高次歪みを含むため聴感上の帯域内に高次成分が入り、完全に消すことはできない。
図11はスペクトラムの概略を示す図である。縦軸が電力密度、横軸が周波数である。スイッチング周波数は50〜60Hz、サンプルホールドによりできる段差は50〜60Hzのn次成分を含むため、聴感帯域20KHz以内に多くの高次成分が含まれ、ノイズとして聞こえていた。
【0010】
このため従来では、サンプルホールドによってできる段差に対し逆極性のパルスを意図的に加えてホールド歪みを改善していた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来技術では、聴感上ではノイズは聞こえにくくなるが、パルスを付加することで本質的な信号のクオリティが失われてしまうといった問題があった。したがって、ダビング等を行った場合には劣化が大きくなってしまう。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、信号のクオリティを落とすことなく、効率よくスイッチングノイズの低減を図ったノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、ノイズの低減を図るノイズ低減装置において、ノイズを含む入力信号に対し、第1のホールド長でノイズ区間をサンプルホールドして第1のサンプルホールド信号を生成する第1のサンプルホールド手段と、第1のホールド長より短い第2のホールド長で、第1のホールド長の終点以降の区間をサンプルホールドして第2のサンプルホールド信号を生成する第2のサンプルホールド手段と、第1のサンプルホールド信号を、第2のホールド長の時間分遅延して遅延サンプルホールド信号を生成する遅延手段と、前記第1のホールド長の中間点以降の区間であって第1のホールド長と同じ長さの区間において、前記遅延サンプルホールド信号のレベルを前記第2のサンプルホールド信号のレベルに変換してノイズマスク信号を生成するレベル変換手段と、を有することを特徴とするノイズ低減装置が提供される。
【0014】
ここで、第1のサンプルホールド手段は、ノイズを持つ入力信号に対し、第1のホールド長でノイズ区間をサンプルホールドして第1のサンプルホールド信号を生成する。第2のサンプルホールド手段は、第1のホールド長より短い第2のホールド長で、第1のホールド長の終点以降の区間をサンプルホールドして第2のサンプルホールド信号を生成する。遅延手段は、第1のサンプルホールド信号を、第2のホールド長の時間分遅延して遅延サンプルホールド信号を生成する。レベル変換手段は、前記第1のホールド長の中間点以降の区間であって第1のホールド長と同じ長さの区間において、前記遅延サンプルホールド信号のレベルを前記第2のサンプルホールド信号のレベルに変換してノイズマスク信号を生成する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明のノイズ低減装置の原理図である。ノイズ低減装置10はノイズ(スイッチングノイズ)の低減を図る。
【0016】
第1のサンプルホールド手段11aは、ノイズを持つ入力信号Siに対し、第1のホールド長Tでノイズ区間をサンプルホールドして第1のサンプルホールド信号SH1を生成する。
【0017】
第2のサンプルホールド手段11bは、第1のホールド長Tより短い第2のホールド長(T/2)で、第1のホールド長の終点以降の区間をサンプルホールドして(すなわち、第1のホールド長Tの直後にサンプルホールドして)第2のサンプルホールド信号SH2を生成する。
【0018】
遅延手段12は、第1のサンプルホールド信号SH1を、第2のホールド長の時間分(すなわち、T/2)遅延して遅延サンプルホールド信号SHdを生成する。
【0019】
レベル変換手段13は、第2のサンプルホールド信号SH2と遅延サンプルホールド信号SHdを比較し、遅延サンプルホールド信号SHdのホールド長区間の電圧レベルを、第2のサンプルホールド信号SH2のホールド長区間の電圧レベルに変換してノイズマスク信号Soを生成する。
【0020】
このように、本発明のノイズ低減装置10は、ノイズを含む入力信号Siに対し、第1のホールド長T(=ノイズ区間)に互いに極性の異なる段差を持つようなサンプルホールドを施してノイズをマスクする構成とした。これにより、聴感帯域に漏れこんでくるノイズを著しく低減することが可能になる。
【0021】
次に逆極性のパルスを加えてノイズ低減を図った従来技術の内容について説明する。図2は逆極性のパルスを加えてノイズを低減させる場合の処理を示す図である。これは図10では50〜60Hzのn次高調波成分が聞こえていたのに対し、その直後にT(もしくはTよりも小さい)の逆極性のパルスを加えることによって、2T周期の50〜60Hzで周波数インタリーブされた音声出力信号sd−1としている。
【0022】
図3はスペクトラムの概略を示す図である。縦軸が電力密度、横軸が周波数である。逆極性のパルスを加えることで、図に示すように、100KHz位の点滅周期50〜60Hzの音となり、実質的に聴感帯域外の点滅音となって聞こえにくくしている。
【0023】
このように、従来ではもともとホールド長Tのサンプルホールドに+αの時間のパルスを加えなければならないので、付加パルス発生回路の追加等を行う必要があり、システムが複雑化してしまう。また、逆極性のパルスの付加は原信号のクオリティを落としてしまう等の問題があった。
【0024】
次にVTRの音声再生時の周辺ブロックに対して、本発明のノイズ低減装置10を適用した場合について詳しく説明する。図4はノイズ低減装置の構成を示す図である。ノイズ低減装置10aは、図10で上述したFM復調回路101の出力段に接続されてスイッチングノイズの低減を図る。
【0025】
第1のサンプルホールド手段11aには、FM復調回路101の出力である復調信号sb(Si)が入力する。ディレイ・イコライザ12aは、遅延手段12に該当し、音声帯域の特性を劣化させずにディレイのみを行うイコライザである。
【0026】
パルス・ジェネレータ14は、第1のサンプルホールド手段11a、第2のサンプルホールド手段11b及びレベル変換手段13それぞれに対して、後述のタイミング信号ta、tb、tcを送信する。
【0027】
図5はタイミング信号ta、tb、tcの波形及び位相を示す図である。タイミング信号taは、長さTの1パルス信号である。タイミング信号tbは、タイミング信号taの立ち下がりの位置から立ち上がる、長さT/2の1パルス信号である。タイミング信号tcは、タイミング信号taのT/2の位置から立ち上がる、長さTの1パルス信号である。
【0028】
次に図4のブロック図の対応する箇所の信号波形及び図5のタイミング信号ta〜tcを用いて動作について説明する。図6、図7は信号波形の処理手順を示す図である。
〔S1〕ノイズを含む復調信号sbに対して、第1のサンプルホールド手段11aは、パルス・ジェネレータ14で作られたタイミング信号taでホールド長Tのサンプルホールドを行い、第1のサンプルホールド信号SH1を生成する。
〔S2〕第2のサンプルホールド手段11bは、第1のサンプルホールド信号SH1に対し、パルス・ジェネレータ14で作られたタイミング信号tbでホールド長T/2のサンプルホールドを行い、第2のサンプルホールド信号SH2を生成する。
〔S3〕ディレイ・イコライザ12aは、第1のサンプルホールド信号SH1をT/2遅延させて、遅延サンプルホールド信号SHdを生成する。
〔S4〕レベル変換手段13は、第2のサンプルホールド信号SH2と遅延サンプルホールド信号SHdを比較し、遅延サンプルホールド信号SHdのホールド長区間のレベルを、第2のサンプルホールド信号SH2のホールド長区間のレベルに変換してノイズマスク信号Soを生成する。
【0029】
図8は本発明を用いた場合のスペクトラムの概略を示す図である。縦軸が電力密度、横軸が周波数である。本発明を用いた場合に得られた信号のサンプルホールドのホールド歪みによるノイズ成分は、従来(図3)と比べるとレベルで1/2、周波数で2倍となるため、聴感帯域に漏れこんでくるレベルはおよそ4倍(約12dB)改善することができる。
【0030】
以上説明したように、本発明のノイズ低減装置10は、ノイズを含む入力信号Siに対し、サンプルホールドした第1のサンプルホールド信号SH1を遅延した遅延サンプルホールド信号SHdのホールド長区間のレベルを、第2のサンプルホールド信号SH2のホールド長区間のレベルに変換してノイズマスク信号Soを生成する構成とした。
【0031】
これにより、従来より比較的シンプルなシステム構成でスイッチングノイズを改善できる。また、スイッチングノイズの改善効果が従来比で約12dBと大きい。さらに、原信号への加工量が少ないため、従来の逆極性パルス付加法よりも原信号のクオリティを落とすことなくスイッチングノイズを改善でき、ダビング等による劣化が少ない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のノイズ低減装置は、ノイズを含む入力信号に対して、サンプルホールドした第1のサンプルホールド信号を遅延した遅延サンプルホールド信号の、前記第1のホールド長の中間点以降の区間であって第1のホールド長と同じ長さの区間のレベルを第2のサンプルホールド信号のレベルに変換してノイズマスク信号を生成する構成とした。これにより、聴感帯域に漏れこんでくるノイズを著しく低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本発明のノイズ低減装置の原理図である。
【図2】逆極性のパルスを加えてノイズを低減させる場合の処理を示す図である。
【図3】スペクトラムの概略を示す図である。
【図4】ノイズ低減装置の構成を示す図である。
【図5】タイミング信号の波形及び位相を示す図である。
【図6】信号波形を示す図である。
【図7】信号波形を示す図である。
【図8】本発明を用いた場合のスペクトラムの概略を示す図である。
【図9】従来のVTRの音声再生時の周辺ブロックを示す図である。
【図10】信号波形を示す図である。
【図11】スペクトラムの概略を示す図である。
【符号の説明】
10……ノイズ低減装置、11a……第1のサンプルホールド手段、11b……第2のサンプルホールド手段、12……遅延手段、13……レベル変換手段、Si……入力信号、SH1……第1のサンプルホールド信号、SH2……第2のサンプルホールド信号、SHd……遅延サンプルホールド信号、So……ノイズマスク信号、T……第1のホールド長、T/2……第2のホールド長。
Claims (2)
- ノイズの低減を図るノイズ低減装置において、前記ノイズを含む入力信号に対し、第1のホールド長でノイズ区間をサンプルホールドして第1のサンプルホールド信号を生成する第1のサンプルホールド手段と、前記第1のホールド長より短い第2のホールド長で、前記第1のホールド長の終点以降の区間をサンプルホールドして第2のサンプルホールド信号を生成する第2のサンプルホールド手段と、前記第1のサンプルホールド信号を、前記第2のホールド長の時間分遅延して遅延サンプルホールド信号を生成する遅延手段と、前記第1のホールド長の中間点以降の区間であって第1のホールド長と同じ長さの区間において、前記遅延サンプルホールド信号のレベルを前記第2のサンプルホールド信号のレベルに変換してノイズマスク信号を生成するレベル変換手段と、を有することを特徴とするノイズ低減装置。
- 前記遅延手段は、信号特性を劣化させないイコライザを用いて、前記第1のサンプルホールド信号の遅延を行うことを特徴とする請求項1記載のノイズ低減装置。
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