JP4110874B2 - 内燃機関のガスセンサの加熱制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のガスセンサの加熱制御装置に関し、特にガスセンサの破損の防止に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気管にはガスセンサが設けられており、機関本体から排出される排気ガス中の酸素等のガス濃度を検出して、その検出信号を機関本体各部の制御に供するようになっている。
【0003】
ガスセンサは、今日、ジルコニア等の酸素イオン導電性の固体電解質材を基体として構成されたものが広く用いられている。このものでは、固体電解質材を酸素イオンが拡散する性質を利用しており、被測定ガスが存在する基体外部と、基体内部とで酸素が行き来可能に、空洞が形成される。空洞は、例えば基体外部と拡散抵抗を有する拡散層を介して連通する空洞とし、空洞の酸素を、空洞の外周壁の一部をなす固体電解質材を挟んで電極が形成されたポンプセルによりポンピングすることで電極間に限界電流を流し、限界電流の値からガス濃度を測定する。
【0004】
かかるガスセンサは、ガス濃度を検出可能な状態とすべく固体電解質材を活性温度まで上昇させる必要があり、固体電解質材を活性温度まで高めるためのヒータが一体的に設けられている。ガスセンサの加熱制御装置では、始動後に、活性温度まで昇温可能な駆動電力でヒータに通電する活性化通電制御を実行する。駆動電力は通常、最大駆動電力が出力され、速やかに排気管を流通する排気ガスを監視下におけるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガスセンサの固体電解質材として一般的なジルコニア等は割れやすいという性質を有する。このため、水分を多く含む排気ガスが流通する排気管に設けられるガスセンサにおいて、液滴状の水分がガスセンサと接触してガスセンサから受熱可能な状態におかれると、ガスセンサから水分への急激な熱の移動でガスセンサが破損するおそれがある。
【0006】
しかしながら、ガスセンサを構造的な改良により耐久性を向上することには限界がある。
【0007】
本発明は前記実情に鑑みなされたもので、ガスセンサの破損を防止することのできる内燃機関のガスセンサの制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、内燃機関の排気管に設けられたガスセンサのヒータに対し通電制御をする内燃機関のガスセンサの加熱制御装置において、
内燃機関の始動時に排気管内に液滴状の水分が存在しているか否かを前回の内燃機関の始動時から停止時までの経過時間が所定の基準値よりも短いか否かに基づいて判定する排気管水分判定手段と、
該排気管水分判定手段で肯定判断されると、前記ガスセンサを活性温度まで昇温が可能な電力で通電する活性化通電制御を、内燃機関の始動時から所定の待機時間が経過した後で実行する活性化通電制御手段とを具備せしめる。
【0009】
排気管内に液滴状の水分が存在するおそれのある間はガスセンサの加熱力は相対的に大きくないので、ガスセンサ表面に液滴状の水分が付着しても、水分は急激に受熱しない。したがって、ガスセンサが破損することが回避される。
【0010】
しかも、排気管内に液滴状の水分が存在しなければ、即、ガスセンサが加熱されるので、活性化通電制御の開始時期が遅延するのが必要最小限に抑えられる。ガスセンサの速やかな昇温という要請にも十分に応えることができる。
【0012】
始動時に近いほど内燃機関全体が未だ温まっていないため、排気ガス中に液滴状の水分が多く含まれる。そして、始動時からの経過時間が短いほど排気管内が温まっていないから、液滴状の水分が蒸発しないで排気管内に付着したまま残留しやすくなる。したがって、前回の内燃機関の始動時から停止時までの経過時間が所定の基準時間よりも短かいか否かで、排気管内に液滴状の水分が付着しているか否かを正確に判断することができる。
【0013】
請求項2記載の発明では、請求項1の発明において、前記排気管水分判定手段で肯定判断されると、前記活性化通電制御に先立って、活性化通電制御よりも低い電力で通電する予熱通電制御を実行する予熱通電制御手段を具備せしめる。
【0014】
排気管内に液滴状の水分が存在しているおそれがある間は相対的に低い加熱力に抑えられる。これにより、ガスセンサ表面に液滴状の水分が付着したときのガスセンサの破損に対する耐性を確保しつつ、活性温度到達までの時間を短縮することができる。
【0026】
請求項3記載の発明では、請求項2の発明の構成において、前記ヒータへの通電方式がデューティ制御であり、オンデューティを、前記予熱通電制御では前記活性化通電制御よりも小さくする。
【0027】
オンデューティを小さくすることで、簡易に加熱力を低くすることができる。
【0028】
請求項4記載の発明では、請求項2の発明の構成において、前記予熱通電制御手段を、前記ガスセンサの温度が予め設定した所定温度となるように、前記ヒータの駆動電力をフィードバック制御するように設定する。
【0029】
雰囲気温度等に影響されずにガスセンサ温度を所定値に維持することができるので、ガスセンサの破損に対する耐性をより高めることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明を適用した第1実施形態になる内燃機関のガスセンサの加熱制御装置を付設した内燃機関の構成を示す。本実施形態は例えば自動車搭載用に適用したものである。内燃機関の本体であるエンジン本体11は一般的な構成のもので、燃料の燃焼により、動力を発生するとともに排気ガスを排気管12に排出する。
【0031】
エンジン本体11の各部は電子制御ユニット(ECU)13により制御される。ECU13は、基本的な構成は一般的な内燃機関用のもので、イグニッションキー14のオンによりエンジン本体11を始動せしめ、スロットル開度等の情報に基づいてトルクや回転数を制御する。
【0032】
ECU13における制御に供する運転条件は種々のセンサ類により与えられるが、ECU13に検出信号が入力するセンサとして、前記排気管12の途中には排気ガスのO2 濃度に基づいてエンジン本体11の燃焼室内の空燃比を検出する空燃比センサユニット(以下、適宜、A/Fセンサユニットという)15が設けてある。A/Fセンサユニット15は、排気管12の管壁を貫通して取り付けられ、排気管12内に、有底筒状のカバー部材152に囲包されたセンサ本体であるA/Fセンサ151(図2参照)が位置している。被測定ガスとしての排気ガスは、カバー部材152の流通孔を通りA/Fセンサ151の表面に達する。
【0033】
A/Fセンサ151は例えば限界電流式の一般的なもので、図2に示すように、細長の基板37上に、これと全体形状が同じ固体電解質材であるジルコニアやアルミナ等をシート状に成形して、これを重ねて、複数層よりなる層状構造をなしている。この層状構造は、図中、上から、異物を排除するトラップ層31、所定の拡散抵抗でガスが流通可能な拡散層32が積層し、その下にはスペーサ33、固体電解質層34、スペーサ35が積層する。上側のスペーサ33には板厚方向に貫通する切り欠きが形成されて、拡散層32と固体電解質層34との間に空洞201が形成される。空洞201位置には、固体電解質層34の上下面に電極38,39が形成されて、固体電解質層34および電極38,39でポンプセル21が構成される。
【0034】
下側のスペーサ35の下方には絶縁層36がきて最下層の基板37となる。スペーサ35には、電極38,39位置まで長さ方向に伸びる大きさで板厚方向に貫通する切り欠きが形成されており、固体電解質層34と絶縁層36との間に、大気通路202が形成され、排気管15の外側で大気に開放されている。
【0035】
基板37は表面に導電性の薄膜をパターン形成したヒータ22が形成されており、ECU13の駆動回路132による通電制御で、センサ本体151全体を加熱するようになっている。駆動回路132はオンデューティの調整で駆動電流を増減する。
【0036】
電極38,39間にECU13の検出回路133から、所定の電圧を印加すると、電極38,39間に酸素濃度に応じた限界電流が流れ、これを検出回路133で測定することで、酸素濃度すなわち空燃比が知られるようになっている。
【0037】
ECU13にはまた、外気温を検出する外気温センサ16からの検出信号や、冷却水温度等、一般的なエンジンに設けられるセンサ類からの検出信号が入力している。
【0038】
ECU13はマイクロコンピュータ131を中心に構成された一般的な構成のもので、マイクロコンピュータ131と一方向若しくは双方向に通信可能な各種の駆動回路や入出力回路等の周辺回路を備えている。該周辺回路である前記検出回路133はA/Fセンサ151のポンプセル21の電極38,39と接続され、前記駆動回路132はA/Fセンサ151のヒータ22と接続される。マイクロコンピュータ131は演算を実行するCPU、作業領域としてのRAM、制御プログラムや種々のデータを格納したROM、バックアップRAM等からなる。
【0039】
次に、本内燃機関のガスセンサの加熱制御装置の作動を、マイクロコンピュータ131で実行されるヒータ22への通電制御の内容を示す図3のフローチャートを参照しつつ説明する。ECU13では、この通電制御に関連して、始動後の経過時間をカウントして、イグニッションキーオフ時点における経過時間(以下、適宜、始動後経過時間という)をバックアップRAMに記憶する。また、A/Fセンサ151のヒータ22の、後述する活性化通電制御による通電開始後の経過時間をカウントして、イグニッションキーオフ時点における経過時間(以下、適宜、ヒータ積算通電時間という)をバックアップRAMに記憶する。
【0040】
先ず、ステップS101では、始動後か否かを判定する。これはイグニッションキー14がオンされたか否かに基づいて判定される。肯定判断されると、ステップS102で、排気管12に液滴状の水分の付着があるか否かを判定する。これは、排気管水分付着の判定用のフラグxBEXWETが「1」か否かに基づいて判定される。「1」であれば排気管水分付着あり、を意味する。肯定判断されるとステップS104で、排気管予熱通電制御を実行し、続いて活性化通電制御を実行する。活性化通電制御以降は従来のものと同様である。活性化通電制御では、A/Fセンサ151を活性温度まで昇温可能な電力を供給すべくオンデューティ100%にて通電がなされ、その後は、A/Fセンサ151を活性温度に維持するようにオンデューティがフィードバック制御される。排気管予熱通電制御の詳細については後述する。
【0041】
排気管水分付着がなくステップS102が否定判断されると、ステップS103でA/Fセンサ151の空洞201に液滴状の水分付着があるか否かを判定する。これは、A/Fセンサ水分付着の判定用のフラグxBAFWETが「1」か否かに基づいて判定される。「1」であればA/Fセンサ水分付着あり、である。肯定判断されると、ステップS105で、活性化通電制御に先立ち、センサ予熱通電制御を実行する。
【0042】
A/Fセンサ水分付着がなくステップS103が否定判断されると、ステップS106で予熱通電制御を非実行として活性化通電制御から即、実行する。
【0043】
次に、図4により、前記排気管水分付着の推定処理について説明する。先ず、ステップS201では、次の推定条件が成立するか否かを判定する。推定条件は前記外気温センサ16により検出された外気温が予め設定した所定温度T1 よりも低く、かつ、始動後経過時間が予め設定した所定時間t1 よりも短いか否かを判定する。肯定判断されると、ステップS202で、排気管水分付着状態と判定し、判定用のフラグxEXWETを「1」とする。
【0044】
推定条件は、第1に、始動からごく最初の時期には内燃機関全体が十分な温度に達していないことで排気ガス中に液滴状の水分が多く含まれ、かかる状態でエンジンストールした場合には、再始動の時点で多くの水分が存在することに基づいている。また、始動後経過時間が長いほど、排気管12を含む内燃機関全体が漸次、温まっていき、水分が蒸発して、排気ガス中に液滴化した水分が減少していくのに対し、始動後経過時間が短ければ、排気管12を含む内燃機関全体が十分な温度に達しておらず、排気ガス中に液滴化した水分がそのまま多く残留している蓋然性が高いことに基づいている。
【0045】
推定条件のうち第2のものは、外気温が高ければその分、同じ始動後経過時間であっても、排気管12を含む内燃機関全体が十分な温度に達しており、飽和蒸気圧が高い分、水分の蒸発が促進されていると推認でき、外気温が低ければその分、同じ始動後経過時間であっても、相対的に水分の蒸発が十分に進行していないと推認することができることに基づいている。
【0046】
なお、前記ステップS201で否定判断されると、ステップS203で、排気管水分付着なし状態と判定し、判定用のフラグxEXWETを「0」とする。
【0047】
ステップS202またはステップS203に続くステップS204では、イグニッションキー14がオフ状態か否かを判定する。イグニッションキー14オン直後はこれは否定判断されることになるが、この場合はリターンに抜ける。
【0048】
ステップS204が肯定判断されると、ステップS205で、そのときの判定用のフラグxEXWETによりxBEXWETを設定し、バックアップRAMに格納する。そしてリターンに抜ける。
【0049】
したがって、イグニッションキー14がオフした時点での判定用のフラグxBEXWETが知られることになる。これは、外気温が所定温度T1 以下であることを条件として、始動後経過時間が基準時間である所定時間t1 を越えるまでは、判定用のフラグxEXWETは「1」であり、そして、始動後経過時間が所定時間t1 を越えると判定用のフラグxEXWETが「0」となる。
【0050】
これにより、判定用のフラグxEXWETが「1」であれば、排気管12内に水分が付着しているおそれが高いとして、次の始動時においては排気管12の水分が存在しなくなるまで、破損を生じない程度の弱い加熱力でA/Fセンサ151の予熱が活性化通電制御に先立って実行されることになる(ステップS104)。これにより、A/Fセンサ151の破損を防止することができる。
【0051】
しかも、A/Fセンサ151は、活性化通電制御開始時には予熱によりある程度、温められているから、速やかに固体電解質層34が活性温度に到達する。
【0052】
排気管予熱通電制御区間の長さ、すなわち、活性化通電制御までの待機時間は、排気管12内の液滴状の水分の排除が、蒸発や排気管12の下流への流下で十分進行したとみなせる時間が基準となるが、要求されるA/Fセンサ151の破損に対する安全度を考慮して予め実験等により設定する。
【0053】
また、前記所定温度T1 、前記所定時間t1 は、要求されるA/Fセンサ151の破損に対する安全度を考慮して、予め実験等により設定する。
【0054】
また、始動後経過時間の所定時間t1 が外気温により伸縮するようにして、始動後経過時間と所定時間t1 との比較のみで、ステップS201の推定条件を構成してもよい。
【0055】
次に、図5により、前記A/Fセンサ水分付着の推定処理について説明する。先ず、ステップS301では、次の推定条件が成立するか否かを判定する。推定条件は外気温が予め設定した所定温度T2 よりも低く、かつ、ヒータ積算通電時間が予め設定した所定時間t2 よりも短いか否かを判定する。肯定判断されると、ステップS302で、センサ水分付着状態と判定し、判定用のフラグxAFWETを「1」とする。
【0056】
推定条件は、第1に、ヒータ積算通電時間が十分長ければ機関停止時におけるA/Fセンサ151の温度状態が高温側にあり、その後、A/Fセンサ151の表面に液滴状の水分が付着し、トラップ層31および拡散層32を浸透して空洞201に達しても、蒸発が十分に進行して、空洞201に液滴化した水分が含まれていないと推認できるのに対し、ヒータ積算通電時間が短ければ、短いほどA/Fセンサ151の空洞201に液滴化した水分が残留している蓋然性が高いことに基づいている。
【0057】
また、推定条件のうち第2のものは、外気温が高ければその分、同じヒータ積算通電時間であっても、相対的に水分が水蒸気化していると推認でき、外気温が低ければその分、同じヒータ積算通電時間であっても、相対的に水分が液滴状のまま残っていると推認できることに基づいている。
【0058】
なお、前記ステップS301で否定判断されると、ステップS303で、センサ水分付着なし状態と判定し、判定用のフラグxAFWETを「0」とする。
【0059】
ステップS302またはステップS303に続くステップS304では、イグニッションキー14がオフ状態か否かを判定する。イグニッションキー14オン直後はこれは否定判断されることになるが、この場合はリターンに抜ける。
【0060】
ステップS304が肯定判断されると、ステップS305で、そのときの判定用のフラグxAFWETによりxBAFWETを設定し、バックアップRAMに格納する。そしてリターンに抜ける。
【0061】
したがって、イグニッションキー14がオフした時点での判定用のフラグxBAFWETが知られることになる。これは、外気温が所定温度T2以下であることを条件として、ヒータ積算通電時間が所定時間t2 を越えるまでは、判定用のフラグxAFWETは「1」であり、そして、ヒータ積算通電時間が所定時間t2 を越えると判定用のフラグxAFWETが「0」となる。
【0062】
これにより、判定用のフラグxAFWETが「1」であれば、A/Fセンサ151の空洞201に水分付着がある蓋然性が高いとして、次の始動時においてはA/Fセンサ151の空洞201に液滴状の水分が存在しなくなるまで、割れを生じない程度の弱い加熱力でA/Fセンサ151の予熱が本通電制御に先立って実行されることになる(ステップS105)。これにより、A/Fセンサ151の破損を防止することができる。
【0063】
センサ予熱通電制御区間の長さは、空洞201の水分が蒸発したとみなせる時間が基準となるが、要求されるA/Fセンサ151の破損に対する安全度を考慮して予め実験等により設定する。A/Fセンサ151の温度が水の沸点である100°に達すれば、それ以上センサ予熱通電制御を続ける必要がないのは勿論である。
【0064】
前記所定温度T2 、前記所定時間t2 は、要求されるA/Fセンサ151の破損に対する安全度を考慮して予め実験等により設定するのがよい。
【0065】
また、所定時間t2 が外気温により伸縮するようにして、ヒータ積算通電時間と所定時間t2 との比較のみで、推定条件を構成してもよい。
【0066】
(第2実施形態)
本内燃機関は、第1実施形態の構成においてECUにおけるヒータの通電制御を変えたもので、各部には第1実施形態と同じ番号を付して説明する。
【0067】
ECU13で実行される制御は基本的に第1実施形態のものと同じで、通電制御期間中のA/Fセンサ151のヒータ22への駆動電流のオンデューティを設定する処理が異なる。図6に、かかるデューティ設定処理のフローを示す。これは始動時すなわちイグニッションキー14のオンにより起動する。
【0068】
ステップS401では外気温tout が取り込まれる。ステップS402では、排気管水分付着があるか否かを判定用フラグxBEXWETに基づいて判定する。肯定判断されると、ステップS404でヒータデューティマップ検索用外気温度touttemp を−30°Cに設定し、ステップS407に進む。
【0069】
ステップS402が否定判断されると、ステップS403で、A/Fセンサ水分付着があるか否かを判定用フラグxBAFWETに基づいて判定する。肯定判断されると、ステップS405でヒータデューティマップ検索用外気温度touttemp を−10°Cに設定し、ステップS407に進む。
【0070】
ステップS403が否定判断されると、ステップS406でヒータデューティマップ検索用外気温度touttemp をステップS401で取り込まれたtout に設定し、ステップS407に進む。
【0071】
ステップS407ではヒータデューティマップから、ヒータデューティマップ検索用外気温度touttemp に対応するデューティを読み出し、ヒータ通電期間のデューティとする。
【0072】
ヒータデューティマップは、図7に示すように、各検索用外気温度touttemp に、7つで1組のデューティが対応しており、始動後から活性化通電制御に到る通電電流のプロファイルを規定する。すなわち、イグニッションキー14オン後に、通電制御における設定デューティを、読みだしたデューティに所定のタイミングで更新していくようになっている。ヒータデューティマップは、検索用外気温度touttemp が0°C以下になると予熱通電制御が実行され、デューティ比100%になる前に、長い時間、デューティ比が30%以下の期間が設定される。この期間は検索用外気温度touttemp が低くなるほど長くなる。また、予熱通電制御時のデューティが検索用外気温度touttemp が低くなるほど小さくなる。
【0073】
そして、排気管水分付着のおそれがあると、実際の外気温tout にかかわらず検索用外気温度touttemp が−30°Cになって、−30°Cの低温時と同様に、30%の低いオンデューティで100秒間の予熱通電制御が実行される。これは前記排気管予熱通電制御と同等の制御である。
【0074】
また、A/Fセンサ水分付着のおそれがあると、実際の外気温tout にかかわらず検索用外気温度touttemp が−10°Cになって、−10°Cの低温時と同様に、30%の低いデューティで10秒間の予熱通電制御が実行される。これは前記センサ予熱通電制御と同等の制御である。
【0075】
また、本実施形態では、実際の外気温tout が低い場合にも、始動後経過時間、ヒータ積算通電時間によらず、前記排気管予熱通電制御やセンサ予熱通電制御と同等の予熱通電制御が実行されることになる。これは、外気温tout が低ければ飽和水蒸気圧が低く、液滴状の水分が存在している蓋然性が高いことから、外気温tout が、排気管水分付着の有無やセンサ水分付着の有無を判定するためのパラメータたり得ることに特に注目したためである。このように、排気管水分付着の有無やセンサ水分付着の有無を判定するための判定条件は適宜、設定することができる。
【0076】
本実施形態では排気管予熱通電制御を実行する場合、センサ予熱通電制御を実行する場合、予熱通電制御を非実行とする場合のいずれもが、単一のヒータデューティマップの元で、画一的に処理できるから制御の構成が簡単である。
【0077】
(第3実施形態)
本内燃機関は、第1実施形態の構成においてECUにおけるヒータの通電制御を変えたもので、第1実施形態と同じ番号を付して説明する。
【0078】
ECU13で実行される制御は基本的に第1実施形態のものと同じで、通電制御期間中のヒータ22への供給電流のオンデューティを設定する処理が異なる。図8にかかるデューティ設定処理のフローを示す。
【0079】
ステップS501では、A/Fセンサ151のポンプセル21の電極38,39間の抵抗(以下、適宜、素子抵抗という)RI を検出する。これは図9に示すように素子抵抗RI と温度との間に相関があり、A/Fセンサ151の温度のパラメータとするためである。具体的には、非限界電流域における電圧に対する電流の傾きから求める一般的な手段が採用し得る。
【0080】
ステップS502では、始動後か否かを判定する。肯定判断されると、ステップS503で排気管水分付着があるか否かを判定用のフラグxBEXWETに基づいて判定する。肯定判断されると、ステップS504で、素子抵抗フィードバック制御を実行する。これは、前記ステップS501での検出抵抗RI が予め設定した目標RI に収束するようにデューティをフィードバック制御するものである。例えばPID制御が採用し得る。式(1)、式(2)に、このフィードバック制御を規定する式の一例を示す。式中、Dはデューティである。Kp 、KI はゲインである。
ΔRI =目標RI −RI ・・・(1)
D=Kp ×ΔRI +KI ×∫ΔRI ・・・(2)
【0081】
この期間が予め設定した所定時間行われると、オンデューティを100%とする活性化通電制御が実行され、速やかにA/Fセンサ温度を活性温度まで上昇せしめる。
【0082】
ここで目標RI を、被水があっても破損の発生しない温度に対応する抵抗値としておけば、割れを回避しつつ、活性化通電制御に移行した後、速やかに活性温度に到達させることができる。発明者らは、割れが生じないA/Fセンサ温度の上限が略300°Cであることを確認しており、例えば、目標RI を250°Cに対応する抵抗値とする。
【0083】
ステップS503が否定判断されると、ステップS505で予熱制御を行うことなく活性化通電制御が実行される。
【0084】
いずれの場合も、活性化通電制御実行の後は、A/Fセンサ温度を所定の温度に維持する制御に移行する。
【0085】
本実施形態によれば、A/Fセンサ温度を雰囲気温度等によらず適正値にすることができるので、A/Fセンサ151の割れの発生をさらに良好に防止することができる。
【0086】
本実施形態では、排気管水分付着を推定するようにしているが、A/Fセンサ151の水分付着を推定するようにしてもよい。この場合の目標RI は、A/Fセンサ151の空洞201で水分が緩慢に蒸発し突沸が生じない程度の温度、例えば100°Cに対応する抵抗とする。
【0087】
あるいは、第1実施形態のごとく、排気管12の水分付着の推定、およびA/Fセンサ151の水分付着の推定の両方を実行し、いずれの水分付着のおそれがあるか否かにより、目標RI を変えるようにしてもよい。
【0088】
なお、前記第1実施形態では、A/Fセンサ151の温度状態は、ヒータ積算通電時間をパラメータとしているが、ヒータ積算電力などでもよい。あるいは、第3実施形態のごとく、A/Fセンサの温度と相関のある素子抵抗により判じてもよい。
【0089】
また、排気管12やA/Fセンサ151の空洞201に液滴状の水分が付着しているか否かの判定条件は、前記各実施形態のものに限られず、排気ガスの量を規定ししたがって発生する水分の全体量を規定する吸入空気量、排気ガスの飽和蒸気圧を規定する排気温度、排気管を含む内燃機関全体の温度の指標となる冷却水温等に基づいて、水分付着を推定してもよい。この場合、前記各実施形態のように、推定条件を、複数の条件を組み合わせて用いてもよいし、簡単には単独でもよい。
【0090】
また、排気管に水分付着ありと判定されたときに、排気管予熱通電制御を実行しないで、単に、所定の待機時間の後、活性化通電制御を実行するようにしてもよい。活性化通電制御の時期を遅らせるのを排気管に水分付着のおそれのあるときに限定することで、A/Fセンサの速やかな立ち上げという要請に対しても十分に応えることができる。
【0091】
また、排気管予熱通電制御やセンサ予熱通電制御を、排気管に水分付着ありと判定されたときにのみ実行するのではなく、排気管の水分付着の有無の判定やA/Fセンサの空洞の水分付着の有無の判定を省略し、常に予熱通電制御が活性化通電制御に先立って実行されるようにしてもよい。
【0092】
また、本発明はA/Fセンサだけではなく、NOx 、CO、HC等についてガス濃度を検出するガスセンサを搭載した内燃機関にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関のガスセンサの加熱制御装置を適用した第1の内燃機関の構成図である。
【図2】前記ガスセンサの要部断面図である。
【図3】前記内燃機関のECUで実行される制御内容を示す第1のフローチャートである。
【図4】前記内燃機関のECUで実行される制御内容を示す第2のフローチャートである。
【図5】前記内燃機関のECUで実行される制御内容を示す第3のフローチャートである。
【図6】本発明の内燃機関のガスセンサの加熱制御装置を適用した第2の内燃機関のECUで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図7】前記ECUで実行される制御内容を説明する表である。
【図8】本発明の内燃機関のガスセンサの加熱制御装置を適用した第3の内燃機関のECUで実行される制御内容を示すフローチャートである。
【図9】前記ECUで実行される制御内容を説明するグラフである。
【符号の説明】
11 エンジン本体
12 排気管
13 ECU(活性化通電制御手段、予熱通電制御手段、排気管水分推定手段、センサ水分推定手段)
14 イグニッションキー
15 A/Fセンサユニット
151 A/Fセンサ(ガスセンサ)
21 ポンプセル
22 ヒータ
201 空洞(ガスセンサ内部)
16 外気温センサ
Claims (4)
- 内燃機関の排気管に設けられたガスセンサのヒータに対し通電制御をする内燃機関のガスセンサの加熱制御装置において、
内燃機関の始動時に排気管内に液滴状の水分が存在しているか否かを前回の内燃機関の始動時から停止時までの経過時間が所定の基準値よりも短いか否かに基づいて判定する排気管水分判定手段と、
該排気管水分判定手段で肯定判断されると、前記ガスセンサを活性温度まで昇温が可能な電力で通電する活性化通電制御を、内燃機関の始動時から所定の待機時間が経過した後で実行する活性化通電制御手段とを具備せしめたことを特徴とする内燃機関のガスセンサの加熱制御装置。 - 請求項1記載の内燃機関のガスセンサの加熱制御装置において、
前記排気管水分判定手段で肯定判断されると、前記活性化通電制御に先立って、活性化通電制御よりも低い電力で通電する予熱通電制御を実行する予熱通電制御手段を具備せしめた内燃機関のガスセンサの加熱制御装置。 - 請求項2記載の内燃機関のガスセンサの加熱制御装置において、
前記ヒータへの通電方式がデューティ制御であり、オンデューティを、前記予熱通電制御では前記活性化通電制御よりも小さくした内燃機関のガスセンサの加熱制御装置。 - 請求項2記載の内燃機関のガスセンサの加熱制御装置において、
前記予熱通電制御手段を、前記ガスセンサの温度が予め設定した所定温度となるように、前記ヒータの駆動電力をフィードバック制御するように設定した内燃機関のガスセンサの加熱制御装置。
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