JP3941256B2 - 酸素濃度センサのヒータ制御装置 - Google Patents

酸素濃度センサのヒータ制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素濃度センサのセンサ素子を加熱するヒータの制御方法を改善した酸素濃度センサのヒータ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の空燃比制御システムでは、排気ガス中の酸素濃度を酸素濃度センサにより検出し、この酸素濃度センサの検出値に基づいて、エンジンに吸入する混合気の空燃比をフィードバック制御することで、触媒による排気ガス浄化性能を高めるようにしている。一般に、酸素濃度センサは、その出力電圧の温度依存性が大きいため、酸素濃度の検出精度を良好に維持するには素子温度を適温(活性温度)に保つ必要がある。そのため、酸素濃度センサにヒータを付設し、このヒータの発熱により素子温度を活性温度(例えば約600〜700℃以上)に保つようにヒータへの通電を制御するようにしたものがある。この場合、素子温度に応じてセンサ素子のインピーダンス(抵抗値)が変化することに着目し、素子温度の代用情報として素子インピーダンスを検出し、この素子インピーダンスを目標インピーダンスに一致させるように制御することで、素子温度を活性温度に保つように制御するようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の空燃比制御システムは、四輪車に搭載されていたが、最近の二輪車の排気ガス規制の強化に伴って、二輪車にも搭載されるようになってきている。一般に、二輪車は四輪車よりも排気温が低い上に、排気管が走行風や雨水により冷却されやすいため、排気ガスが酸素濃度センサの周辺に到達するまでに排気温が更に低くなる。このため、二輪車では、センサ素子を活性化するのに、ヒータ電力を多く供給する必要があり、四輪車よりもヒータ温度が高くなる。更に、酸素濃度センサが経時劣化するに従って、図8に示すように、同じ素子温度でも素子インピーダンスが新品時よりも増加し、素子温度が実際よりも低く検出されてしまう。このため、酸素濃度センサの劣化に伴って、目標インピーダンス(目標温度)に制御するためのヒータ電力が益々増加し、ヒータ温度が益々高温になる傾向がある。
【0004】
以上のような事情から、二輪車では、センサ素子を活性温度に保つのに、四輪車よりもヒータ温度を上昇させる必要があり、ヒータの許容温度に対して余裕度が少ない。このため、雨天走行時の排気管被水や減速等により排気温が急低下した時に、ヒータ温度が過昇温して許容温度を越えてしまうおそれがあり、これが度重なると、ヒータが破損してしまうおそれがある。特に、酸素濃度センサが劣化していると、素子温度が実際よりも低く検出されるため、ヒータ温度の過昇温が発生しやすくなり、ヒータ破損が発生しやすくなる。また、ヒータ温度の過昇温は、素子温度の過昇温を招き、センサ素子の劣化を早めることにもなる。
【0005】
尚、四輪車においても、排気温が低くなる車種や、酸素濃度センサが劣化している場合に、ヒータ温度の過昇温が発生するおそれがあり、ヒータの寿命が短くなる。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、酸素濃度センサのヒータ温度を許容温度内に安定して制御することができ、ヒータの破損やセンサ素子の早期劣化を防止することができる酸素濃度センサのヒータ制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の酸素濃度センサのヒータ制御装置は、ヒータへの供給電力(以下「ヒータ電力」という)をヒータ制御手段により制御すると共に、電力ガード値設定手段により内燃機関の運転状態に基づいてヒータ電力の許容電力値を求め、この許容電力値をなまし処理して電力ガード値を求める。そして、この電力ガード値を用いて電力制限手段によりヒータ電力を制限する。
【0008】
このようにすれば、排気管被水、減速等による排気温低下やセンサ素子の劣化が発生しても、運転状態を反映した適正な電力ガード値によりヒータ電力が制限されるため、ヒータ温度の過昇温を防ぐことができて、ヒータの破損やセンサ素子の早期劣化を防止することができる。しかも、運転状態の変化が酸素濃度センサ周辺の排気温の変化をもたらすまでに若干の時間遅れがあることを考慮して、運転状態に基づいて求めた許容電力値をなまし処理して電力ガード値を求めるようにしたので、運転状態の変化を少しずつ遅らせて電力ガード値に反映させることができ、排気系の排気温伝達遅れを考慮して適正な電力ガード値を設定することができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、電力ガード値を増加させる時の増加率が、該電力ガード値を減少させる時の減少率よりも小さくなるように前記なまし処理に用いるなまし係数を切り換えるようにしても良い。このようにすれば、電力ガード値を増加させる時に、ヒータの許容温度に対する余裕度を持たせるように少しずつ電力ガード値を増加させることができ、ヒータ温度を更に安定して許容温度内に制御することが可能となる。このような制御は、特に減速時に有効である。
【0010】
また、請求項3のように、ヒータの通電率を100%に維持する100%通電制御と、ヒータ電力を素子インピーダンスに応じて制御する電力制御と、素子インピーダンスを目標インピーダンスに一致させるようにヒータの通電率を制御する素子インピーダンスフィードバック制御とを素子温度の上昇に応じて順番に切り換えて実施する場合、素子インピーダンスフィードバック制御の実行中に電力ガード値によるヒータ電力の制限を実施するようにすると良い。
【0011】
この場合、ヒータの通電開始後、素子温度の上昇(素子インピーダンスの低下)に応じて、ヒータの制御を100%通電制御→電力制御の順に実施することで、素子温度を活性温度付近まで上昇させる。その後、素子インピーダンスフィードバック制御に切り換えて素子インピーダンスを目標インピーダンスに制御することで、素子温度を活性温度に維持する。100%通電制御と電力制御の実行中は、素子温度が活性温度よりも低いため、電力ガード値によるヒータ電力の制限を行わずにセンサ素子の活性化を促進させ、素子インピーダンスフィードバック制御に移行してから電力ガード値によるヒータ電力の制限を実施してヒータ温度を確実に許容温度範囲内に制御する。
【0012】
ヒータの通電開始後、素子温度が順調に上昇すれば、電力制御の実行時間はあまり長くならないため、電力制御中には、電力ガード値によるヒータ電力の制限を行わなくても、ヒータに負担が掛かることがない。しかし、雨天走行時や低外気温時等のように、エンジン始動後に排気温が低い状態が比較的長く続く場合には、素子温度の昇温が遅れるため、電力制御の時間が長引いて、素子インピーダンスフィードバック制御への移行が遅れる。電力制御では、素子温度を活性温度付近まで上昇させるために、ヒータ電力を比較的大きな電力に制御するため、電力制御が長時間に渡って継続されると、ヒータが高温状態に長時間、保持され続けることになり、ヒータに負担が掛り過ぎるばかりか、この状態で、例えば加速等により排気温が急上昇すると、ヒータが過昇温状態となり、最悪の場合は、ヒータが破損してしまうおそれもある。
【0013】
そこで、請求項4のように、電力制御が所定時間以上続いた時、又はヒータへの通電開始から所定期間が経過した時に、素子インピーダンスフィードバック制御が開始されていなくても、電力ガード値によるヒータ電力の制限を開始するようにしても良い。つまり、通常であれば、電力制御から素子インピーダンスフィードバック制御に移行するであろう時期が過ぎても、電力制御が継続されているような場合は、センサ素子の活性化促進よりもヒータの保護を重視した方が良いと判断して、電力ガード値によるヒータ電力の制限を開始する。これにより、電力制御が長時間に渡って継続された場合でも、ヒータ温度の過昇温を防止でき、ヒータの破損を防止できる。
【0014】
ところで、ヒータ電力が電力ガード値にかかっている時には、素子温度が活性温度から外れているため、空燃比(酸素濃度)の変化に対して酸素濃度センサの応答に遅れが出たり、酸素濃度の検出精度が低下する。この状態で、酸素濃度センサの検出値に基づく空燃比フィードバック制御を通常と同じ条件で行っていたのでは、空燃比フィードバック制御が不安定となり、ハンチングが発生するおそれがある。
【0015】
この対策として、請求項5のように、ヒータ電力が電力ガード値にかかっている時に、空燃比フィードバック制御のフィードバックゲインを通常より小さくし、又は空燃比フィードバック制御を停止すると良い。つまり、空燃比フィードバック制御のフィードバックゲインを通常より小さくすれば、空燃比フィードバック制御に反映させる酸素濃度センサの検出値の比率を小さくして、安定性重視の空燃比フィードバック制御を行うことができ、ハンチングを防止できる。また、空燃比フィードバック制御を停止しても、ハンチングを防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明を二輪車の空燃比制御システムに適用した実施形態(1)を図1乃至図14に基づいて説明する。
【0017】
まず、図1に基づいてシステム全体の概略構成を説明する。エンジン11の排気管12には、酸素濃度センサ13が設置されている。この酸素濃度センサ13は、限界電流式の酸素濃度センサ(空燃比センサとも呼ばれている)であり、排気ガス中の酸素濃度(空燃比)にほぼ比例する限界電流を発生する。この酸素濃度センサ13のセンサ素子14は、活性温度が高く(約600〜700℃以上)、しかも、活性温度範囲が狭いため、排気ガスの熱のみでは、活性温度範囲を維持することが困難である。そこで、この酸素濃度センサ13には、ヒータ15を内蔵し、このヒータ15の発熱によりセンサ素子14の温度を活性温度範囲に維持するようにヒータ15への通電を制御する。
【0018】
この酸素濃度センサ13は、センサ制御回路16によって制御される。センサ制御回路16には、ホストマイクロコンピュータ(以下「ホストマイコン」と略記する)17との間でデータを送受信するサブマイクロコンピュータ(以下「サブマイコン」と略記する)18が設けられている。ホストマイコン17は、エンジン11全体の制御を行う主体となるマイクロコンピュータであり、そのROM(図示せず)に記憶された点火・噴射制御プログラムに従って演算した点火指令信号と噴射信号を点火装置(図示せず)と燃料噴射弁(図示せず)に出力して点火・噴射動作を制御する。
【0019】
一方、サブマイコン18は、CPU21、ROM22(記憶媒体)、RAM23、バッテリ(図示せず)でバックアップされたバックアップRAM24等を内蔵し、センサ素子14の印加電圧を制御するために、印加電圧指令信号をD/A変換器26を介して素子印加電圧制御回路27に出力し、通常の酸素濃度検出時には、この素子印加電圧制御回路27によってセンサ素子14の印加電圧(センサ素子14の両端の電圧差)を所定電圧で保持するように制御する。素子印加電圧制御回路27には、排気ガス中の酸素濃度に応じてセンサ素子14に生じる素子電流(限界電流)を検出する電流検出回路28が内蔵され、この電流検出回路28で検出された素子電流に応じた電圧がA/D変換器29を介して酸素濃度検出信号としてサブマイコン18内に取り込まれる。
【0020】
また、サブマイコン18は、デューティ信号をヒータ制御回路30に入力して、このヒータ制御回路30によってヒータ15の通電率(デューティ比)を制御する。図2に示すように、ヒータ15の一端はバッテリ電源(+B)に接続され、他端はスイッチング素子、例えばMOSFET31のドレインに接続されている。MOSFET31のゲートはサブマイコン18によりオン/オフされるスイッチ32に接続され、該MOSFET31のソースはヒータ電流検出用抵抗33を介してアース側に接続されている。
【0021】
ヒータ15の両端の電位差(ヒータ電圧Vh)がオペアンプ34により検出され、このオペアンプ34の出力電圧がヒータ電圧検出信号としてA/D変換器35を介してサブマイコン18に入力される。また、ヒータ電流検出用抵抗33の両端の電位差(ヒータ電流Ihに応じた電圧)がオペアンプ36によって検出され、このオペアンプ36の出力電圧がヒータ電流検出信号としてA/D変換器35を介してサブマイコン18に入力される。
【0022】
次に、限界電流式の酸素濃度センサ13の構造を図3に基づいて説明する。酸素濃度センサ13は、排気管12内に突出するように取り付けられている。この酸素濃度センサ13は、空燃比リーン領域における酸素濃度又は空燃比リッチ領域における一酸化炭素(CO)濃度に対応する限界電流を発生するセンサ素子14と、このセンサ素子14を内側から加熱するヒータ15と、センサ素子14を覆うカバー37とから構成され、カバー37の周壁に、排気ガスが流入する多数の小孔38が形成されている。
【0023】
センサ素子14は、有底筒状に形成された固体電解質層39と、この固体電解質層39の内外周面にそれぞれ固着された大気側電極層40と排気ガス側電極層41と、排気ガス側電極層41の外周面にプラズマ溶射法等で形成された拡散抵抗層42とから構成されている。上記固体電解質層34は、ZrO2 、HfO2 、ThO2 、Bi2 3 等にCaO、MgO、Y2 3 、Yb2 3 等を安定剤として配合した酸素イオン伝導性酸化物焼結体により形成されている。また、拡散抵抗層42は、アルミナ、マグネシア、ケイ石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質により形成されている。そして、排気ガス側電極層41及び大気側電極層40は、共に、白金等の触媒活性の高い貴金属により形成され、その表面には多孔質の化学メッキ等が施されている。
【0024】
一方、ヒータ15はセンサ素子14内に収容されており、その発熱によりセンサ素子14(大気側電極層40、固体電解質層39、排気ガス側電極層41及び拡散抵抗層42)を加熱して該センサ素子14を活性化する。
【0025】
以上のように構成された酸素濃度センサ13のセンサ素子14は、理論空燃比点にて濃淡起電力を発生し、理論空燃比点よりリーン領域の酸素濃度に応じた限界電流を発生する。この場合、酸素濃度に対応する限界電流は、排気ガス側電極層41の面積、拡散抵抗層42の厚さ、気孔率及び平均孔径により決定される。また、センサ素子14は酸素濃度を直線的特性にて検出し得るものであるが、このセンサ素子14を活性化するのに約600〜700℃以上の温度が必要とされる。尚、理論空燃比よりもリッチ側の領域では、未燃ガスである一酸化炭素(CO)の濃度が空燃比に対してほぼリニアに変化し、センサ素子14はCO濃度に応じた限界電流を発生する。
【0026】
次に、図4を用いて酸素濃度センサ13の電圧−電流特性について説明する。酸素濃度センサ13の電圧−電流特性は、検出空燃比にほぼ比例する固体電解質層39への流入電流と、この固体電解質層39への印加電圧との関係がほぼリニアな特性となっている。この場合、特性線の電圧軸V(横軸)に平行な直線部分が限界電流を示している。この限界電流の増減は空燃比の増減に対応しており、空燃比がリーン側になるほど限界電流は増大し、空燃比がリッチ側になるほど限界電流は減少する。
【0027】
また、この電圧−電流特性において、電圧軸Vに平行な直線部分よりも小さい電圧域は抵抗支配域となっており、その抵抗支配域における特性線の傾きは固体電解質層39の内部抵抗Zdcにより決定される(以下、この内部抵抗を「素子インピーダンス」という)。この素子インピーダンスZdcは、センサ素子14の温度に依存し、センサ素子14の温度が上昇するに従って、素子インピーダンスZdcが低下する。
【0028】
一方、サブマイコン18のROM22には、図5、図9及び図10に示すヒータ制御用の各ルーチンが記憶されている。以下、サブマイコン18によって実行される各ルーチンの処理内容を説明する。
【0029】
図5に示すヒータ制御ルーチンは、所定の周期(例えば128ms周期)でタイマ割り込み処理にて起動され、特許請求の範囲でいうヒータ制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、素子インピーダンスZdcが所定の判定値(例えば200Ω)以下に低下したか否かにより、センサ素子14が半活性状態に達したか否かを判定する。この際、素子インピーダンスZdcは、次のようにして検出される。図6に示すように、素子インピーダンスZdcの検出時に酸素濃度センサ13の印加電圧を一時的に正方向に変化させた後、負方向に変化させる。そして、印加電圧を正方向(又は負方向)に変化させた時の電圧変化量ΔVと電流変化量ΔIとから素子インピーダンスZdcを次式により算出する。
Zdc=ΔV/ΔI
【0030】
この機能が特許請求の範囲でいう素子インピーダンス検出手段に相当する。尚、この検出方法は一例であって、正負両側の電圧及び電流の変化量に基づき素子インピーダンスZdcを検出したり、負の印加電圧Vnegを印加した時のセンサ電流Inegから素子インピーダンスZdc(=Vneg/Ineg)を算出しても良い。
【0031】
上記ステップ101で、Zdc>200Ωと判定された場合、つまり、センサ素子14が半活性状態に達していない場合は、ステップ102に進み、ヒータ15の通電を「100%通電制御」で制御する。この100%通電制御は、ヒータ15の通電率(デューティ比)を100%に維持してセンサ素子14の温度上昇を促進する制御である。センサ素子14が半活性状態に達していない(Zdc>200Ω)期間中は、この100%通電制御が継続して実施される。
【0032】
その後、ヒータ15の加熱によりセンサ素子14の温度が上昇し、ステップ101でZdc≦200Ωと判定されたときに、センサ素子14が半活性状態に達したと判断して、ステップ103に進み、素子インピーダンスZdcが素子インピーダンスフィードバック制御(以下「素子インピーダンスF/B制御」と表記する)を開始するための所定の判定値以下であるか否かを判定する。ここで、素子インピーダンスF/B制御開始の判定値は、センサ素子14の温度が活性温度付近まで昇温したか否かを判定するものであり、バックアップRAM24内に記憶保持されている目標インピーダンスZdcTGに対して「+10Ω」程度の値である。例えば、目標インピーダンスZdcTGの初期値(センサ劣化前の値)が「30Ω」である場合、素子インピーダンスF/B制御開始の判定値は「40Ω」に設定される。
【0033】
このステップ103で「No」と判定された場合、酸素濃度センサ13の温度が活性温度付近まで昇温していないと判断して、ステップ104に進み、ヒータ15の通電を「電力制御」により制御する。この際、素子インピーダンスZdcに応じて図7に示すマップより電力指令値が決定され、その電力指令値に応じてヒータ15のデューティ比Dutyが算出される。この電力制御は、センサ素子14が半活性状態で且つ活性化が完了する前の期間に、継続して実施される。
【0034】
次のステップ108で、電力指令値が所定の電力ガード値WHGD以上であるか否かを判定する。この電力ガード値WHGDは後述する図10の電力ガード値設定ルーチンで算出される。もし、電力指令値が電力ガード値WHGD以上であれば、ステップ109に進み、電力指令値を電力ガード値WHGDでガード処理して(電力指令値=WHGD)、本ルーチンを終了する。一方、電力指令値が電力ガード値WHGDよりも小さければ、ステップ104で算出した電力指令値をそのまま採用して本ルーチンを終了する。
【0035】
その後、センサ素子14の温度が活性温度付近まで昇温すると、本ルーチンが起動されたときに、ステップ103で「Yes」と判定され、ステップ105に進み、後述する図9の目標インピーダンス設定ルーチンを実行して、目標インピーダンスZdcTGを設定する。この後、ステップ106に進み、「素子インピーダンスF/B制御」を実施する。この素子インピーダンスF/B制御では、例えばPID制御を用いてヒータ15の通電率であるデューティ比Dutyを次のようにして算出する。
【0036】
まず、次の(1)〜(3)式により比例項GP、積分項GI、微分項GDを算出する。
GP=KP・(Zdc−ZdcTG) ……(1)
GI=GI(i-1) +KI・(Zdc−ZdcTG) ……(2)
GD=KD・{Zdc−Zdc(i-1) } ……(3)
ここで、KPは比例定数、KIは積分定数、KDは微分定数であり、GI(i-1) 及びZdc(i-1) は前回処理時の値である。
【0037】
そして、上記比例項GP、積分項GI、微分項GDを積算してヒータ15のデューティ比Dutyを算出する(Duty=GP+GI+GD)。また、このとき、算出したデューティ比Dutyに対応する電力指令値を算出する。尚、デューティ比Dutyの制御は、上記PID制御に限定されるものではなく、PI制御やP制御を用いても良い。
【0038】
次のステップ107で、素子インピーダンスF/B実行フラグXFBを「1」にセットする。このフラグXFBは素子インピーダンスF/B制御が実施されているか否かを示すものであり、XFB=1は素子インピーダンスF/B制御の実施を意味し、XFB=0は素子インピーダンスF/B制御の未実施を意味する(但し、このXFBは、イグニッションキーのオン操作時に「0」にリセットされる)。
【0039】
素子インピーダンスF/B制御期間中も、後述する図10の電力ガード値設定ルーチンで電力ガード値WHGDが算出され、電力指令値のガード処理が行われる(ステップ108,109)。このとき、電力指令値が電力ガード値WHGDに達している場合には、上記ステップ106で算出したデューティ比Dutyが電力ガード値WHGDに応じて修正される。これらステップ108,109の処理が特許請求の範囲でいう電力制限手段としての役割を果たす。
【0040】
以上のようにして、センサ素子14の温度上昇(素子インピーダンスZdcの低下)に応じて、100%通電制御→電力制御の順に実施してセンサ素子14の温度を活性温度付近まで上昇させ、その後は、素子インピーダンスF/B制御により素子インピーダンスZdcを目標インピーダンスZdcTGに維持することで、センサ素子14の温度を活性温度に保持する。
【0041】
ところで、センサ素子14の温度の目標値(最適活性温度)を例えば700℃とした場合、図8に示すように、酸素濃度センサ13の劣化前には目標インピーダンスZdcTGを30Ωに設定すると、センサ素子14の温度が最適活性温度700℃程度に維持されるが、酸素濃度センサ13が劣化すると、ZdcTG=30Ωでは、素子温度が最適活性温度700℃を大きく越えてしまう(このときの素子温度は、劣化が進むほど上昇する)。
【0042】
そこで、本実施形態(1)では、図9に示す目標インピーダンス設定ルーチンを実行することで、酸素濃度センサ13が劣化したときでも、センサ素子14の温度を最適活性温度700℃付近に維持できるように、目標インピーダンスZdcTGをセンサ素子14の劣化度合に応じて増加側に補正する。
【0043】
図9の目標インピーダンス設定ルーチンは、図5のヒータ制御ルーチンのステップ105で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、ステップ111で、素子インピーダンスF/B制御の実施中(XFB=1)か否かを判定する。素子インピーダンスF/B制御が開始されていない場合(XFB=0の場合)、ステップ112に進み、バックアップRAM24から目標インピーダンスZdcTGを読み出し、それを初期値として設定する。この目標インピーダンスZdcTGの初期値は、前記ステップ106の素子インピーダンスF/B制御の開始時に使用される。
【0044】
その後、素子インピーダンスF/B制御(XFB=1)に切り換えられたときに、ステップ113に進み、その時のヒータ電圧Vhとヒータ電流Ihとから実ヒータ電力WH(=Vh×Ih)を算出し、次のステップ114で、算出した実ヒータ電力WHが電力ガード値WHGD以上であるか否かを判定する。もし、WH<WHGDと判定されれば、ステップ115に進み、「WH≧WHGD」の状態の継続時間を計測するカウンタを「0」にクリアし、続くステップ116で、目標インピーダンスZdcTGをその時の値(例えばセンサ劣化前の初期状態であれば、30Ω)に保持して本ルーチンを終了する。
【0045】
一方、上記ステップ114でWH≧WHGDと判定されれば、ステップ117に進み、「WH≧WHGD」の状態の継続時間を計測するカウンタの値をカウントアップする。そして、次のステップ118で、前記カウンタ値に基づき、「WH≧WHGD」の状態の継続時間が所定時間(例えば5分間)以上になったか否かを判定する。もし、「WH≧WHGD」の状態の継続時間が所定時間未満であれば、酸素濃度センサ13が劣化していないと判断して、ステップ116に進み、目標インピーダンスZdcTGの値をそのまま保持する。これに対し、「WH≧WHGD」の状態の継続時間が所定時間以上の場合は、酸素濃度センサ13が劣化していると判断して、ステップ119に進み、目標インピーダンスZdcTGを所定値αだけ増加側に補正して本ルーチンを終了する。
【0046】
上記ステップ119で補正した目標インピーダンスZdcTGは、バックアップRAM24に格納され、エンジンの停止中も記憶保持される。そして、この補正後の目標インピーダンスZdcTGは、次のエンジン始動後に本ルーチンを起動したときに、前記ステップ112で読み込まれる。
【0047】
次に、電力ガード値を設定する図10の電力ガード値設定ルーチンの処理の流れを説明する。本ルーチンは、例えば64ms毎に実行され、まず、ステップ201で、100%通電制御中か否かを判定し、100%通電制御中であれば、電力ガード値を設定せずに、ステップ202に進み、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値を0にリセットして本ルーチンを終了する。この電力ガード開始判定カウンタCWHGDは、電力制御開始後にステップ204を通過する毎にカウントアップして電力制御の継続時間を計測し、電力制御中の電力ガード値の切り換えタイミングの判定に使用される。
【0048】
その後、100%通電制御から電力制御に移行すると、ステップ201で「No」と判定され、ステップ203に進み、素子インピーダンスF/B制御実行中(XFB=1)か否かを判定する。電力制御中は、ステップ203で「No」と判定され、ステップ204に進む毎に、電力ガード開始判定カウンタCWHGDを1だけカウントアップし、次のステップ205で、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値が所定値T1 以上か否かを判定する。ここで、所定値T1 は、通常の排気温であれば、電力制御が開始されてから素子インピーダンスF/B制御に移行するのに十分な時間に相当する値に設定されている。
【0049】
このステップ205で、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値が所定値T1 未満であれば、ステップ206に進み、図11に示す第1の電力ガード値マップを検索し、現在の素子インピーダンスZdcに応じた第1の電力ガード値WHGDを求めて本ルーチンを終了する。ここで使用する第1の電力ガード値マップの特性は、素子インピーダンスZdcが大きくなるほど(素子温度が低くなるほど)、第1の電力ガード値WHGDがリニアに大きくなり、素子インピーダンスZdcが例えば200Ω以上になると、第1の電力ガード値WHGDが一定になる。
【0050】
その後、電力制御から素子インピーダンスF/B制御に移行すると、ステップ203でXFB=1と判定され、ステップ207に進み、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値を0にリセットして、ステップ208に進み、エンジン運転状態に応じた第2の電力ガード値の設定処理(ステップ208〜215)を実行する。
【0051】
また、前記ステップ205で、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値が所定値T1 以上と判定された場合、つまり、通常の排気温であれば、電力制御から素子インピーダンスF/B制御に移行するのに十分な時間が経過しても、電力制御が継続されているような場合も、センサ素子14の活性化促進よりヒータ15の保護を重視した方が良いと判断して、ステップ208に進み、エンジン運転状態に応じた第2の電力ガード値の設定処理を次のように実行する。
【0052】
まず、ステップ208で、図12に示すエンジン回転数NEと負荷(スロットル開度VTTP)とをパラメータとする第2の電力ガード値マップを検索して、現在のエンジン回転数NEと負荷(スロットル開度VTTP)に応じた仮の電力ガード値KWHGDM(許容電力値)を求める。尚、関数式を用いて仮の電力ガード値KWHGDMを算出しても良い。
【0053】
通常、エンジン回転数NE、負荷が大きいほど排気温が高くなり、排気温が高くなるほどヒータ温度を上げる必要がない。この点を考慮して、図12の第2の電力ガード値マップ特性は、エンジン回転数NE、負荷(スロットル開度VTTP)が大きくなるほど仮の電力ガード値KWHGDMが小さくなるように設定されている。
【0054】
尚、この第2の電力ガード値マップのパラメータとして用いる負荷は、スロットル開度に代えて、吸気管圧力又は吸入空気量を用いても良い。更に、エンジン回転数NEと負荷のいずれか一方のみから仮の電力ガード値KWHGDMを設定しても良く、要は、排気温に影響を及ぼすエンジン運転パラメータに基づいてマップ又は関数式により仮の電力ガード値KWHGDMを設定すれば良い。
【0055】
次のステップ209で、電力ガードなまし値KWHGSMの算出が初回か否かを判定し、もし、初回であれば、ステップ210に進み、電力ガードなまし値KWHGSMの初期値として、前記ステップ208で検索した仮の電力ガード値KWHGDMを設定して(KWHGSM=KWHGDM)、ステップ215に進み、仮の電力ガード値KWHGSMをそのまま電力ガード値WHGDとする。
【0056】
電力ガードなまし値KWHGSMの初期値設定後は、ステップ209からステップ211に進み、今回の仮の電力ガード値KWHGDMが前回の電力ガードなまし値KWHGSMよりも大きいか否かを判定する。今回の仮の電力ガード値KWHGDMが前回のなまし値KWHGSMよりも大きい場合には、ステップ212に進み、なまし係数KSMを比較的小さい係数KSMLに設定する。
【0057】
一方、今回の仮の電力ガード値KWHGDMが前回の電力ガードなまし値KWHGSM以下である場合には、ステップ213に進み、なまし係数KSMを比較的大きい係数KSMHに設定する。ここで、なまし係数KSMに用いるKSMLとKSMHを、KSML<KSMHの関係に設定することで、後述するステップ214のなまし処理において、電力ガードなまし値KWHGSMの増加率が減少率よりも小さくなるようなっている。
【0058】
次のステップ214で、仮の電力ガード値KWHGDMを、なまし係数KSMを用いて次式によりなまし処理し、電力ガードなまし値KWHGSMを求める。KWHGSM=KWHGSMO+KSM×(KWHGDM−KWHGSMO)
ここで、KWHGSMOは前回の電力ガードなまし値である。
【0059】
その後、ステップ215に進み、算出した電力ガードなまし値KWHGSMで第2の電力ガード値WHGDを更新して本ルーチンを終了する。尚、第2の電力ガード値が特許請求の範囲でいう電力ガード値に相当し、上記ステップ208〜215の処理が特許請求の範囲でいう電力ガード値設定手段としての役割を果たす。
【0060】
以上説明した実施形態(1)のヒータ制御の実行例を図13及び図14のタイムチャートを用いて説明する。図13及び図14は、共に、エンジン始動後にセンサ素子14を活性化し、素子温度を活性温度に制御する過程を示している。エンジン始動後、センサ素子14が半活性状態に達するまでの期間(素子インピーダンスZdc>200Ωの期間)は、100%通電制御を実施してセンサ素子14の昇温を促進する。この100%通電制御により、センサ素子14が半活性状態になった時点で、電力制御に移行し、センサ素子14の活性化が完了するまでの期間(200Ω≧素子インピーダンスZdc>40Ωの期間)は、この電力制御によりセンサ素子14の温度を活性温度付近まで上昇させる。これにより、センサ素子14の活性化が完了した時点で、素子インピーダンスF/B制御に移行し、素子インピーダンスZdcを目標インピーダンス30Ω(劣化のない場合)に維持するようにF/B制御してセンサ素子14の温度を活性温度に保持する。
【0061】
図13の例では、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値が所定値T1 に達する前に、電力制御から素子インピーダンスF/B制御に切り換えられる。このため、電力制御の期間中は、図11の第1の電力ガード値マップにより設定した第1の電力ガード値を用いてヒータ電力がガード処理される。その後、素子インピーダンスF/B制御に切り換えられると同時に、電力ガード値が第2の電力ガード値に切り換えられる。つまり、素子インピーダンスF/B制御の開始後は、図12の第2の電力ガード値マップを用いてエンジン回転数NEと負荷(スロットル開度VTTP)から仮の電力ガード値を求め、これをなまし処理して第2の電力ガード値を設定する。
【0062】
これにより、素子インピーダンスF/B制御期間中は、雨天走行時の排気管被水や減速により排気温が低下して素子温度が低下(素子インピーダンスが増大)しても、エンジン運転状態を反映した第2の電力ガード値によりヒータ電力が制限されるため、ヒータ温度の過昇温を防ぐことができて、ヒータ15の破損やセンサ素子14の過昇温による早期劣化を防止することができる。しかも、エンジン運転状態の変化が酸素濃度センサ13周辺の排気温の変化をもたらすまでに若干の時間遅れがあることを考慮して、エンジン運転状態に基づいて求めた仮の電力ガード値をなまし処理して第2の電力ガード値を求めるようにしたので、エンジン運転状態の変化を少しずつ遅らせて第2の電力ガード値に反映させることができ、排気系の排気温伝達遅れを考慮して適正な第2の電力ガード値を設定することができる。
【0063】
また、減速走行時等、エンジン回転数や負荷が低下する時には、図12のマップ特性により第2の電力ガード値が増加方向に変化するが、本実施形態(1)では、第2の電力ガード値の増加方向と減少方向との間で、なまし処理に用いるなまし係数を切り換えて、第2の電力ガード値の増加率が減少率よりも小さくなるようにしているので、第2の電力ガード値を増加させる時に、ヒータ15の許容温度に対する余裕度を持たせるように少しずつ第2の電力ガード値を増加させることができ、より確実にヒータ温度を許容温度内に制御することができる。しかしながら、なまし係数の切り換えを行わずに、なまし係数を固定値としても良く、この場合でも、なまし係数を適宜設定することで、本発明の所期の目的は十分に達成することができる。
【0064】
更に、本実施形態(1)では、図9の目標設定ルーチンを実行することで、センサ素子14の劣化に応じて目標インピーダンスを補正するので、センサ素子14の劣化によってセンサ素子14の温度が活性温度からずれることを防止することができる利点もある。但し、本発明は、センサ素子14の劣化に応じた目標インピーダンスの補正を行わないようにしても良く、この場合でも、第2の電力ガード値によりヒータ温度の過昇温を防止することができる。
【0065】
ところで、ヒータ15の通電開始後、素子温度が順調に上昇すれば、電力制御の実行時間はあまり長くならないため、電力制御中には、第2の電力ガード値によるヒータ電力の制限を行わなくても、ヒータ15に負担が掛かることがない。しかし、雨天走行時や低外気温時等のように、エンジン始動後に排気温が低い状態が比較的長く続く場合には、素子温度の昇温が遅れるため、電力制御の時間が長引いて、素子インピーダンスF/B制御への移行が遅れる。電力制御では、素子温度を活性温度付近まで上昇させるために、ヒータ電力を比較的大きな電力に制御するため、電力制御が長時間に渡って継続されると、ヒータ15が高温状態に長時間、保持され続けることになり、ヒータ15に負担が掛り過ぎるばかりか、この状態で、例えば加速等により排気温が急上昇すると、ヒータ15が過昇温状態となり、最悪の場合は、ヒータ15が破損してしまうおそれもある。
【0066】
その点、本実施形態(1)では、図14に示すように、電力制御中に電力ガード開始カウンタCWHGDのカウント値が所定値T1 に達した時点、つまり、通常であれば、電力制御から素子インピーダンスF/B制御に移行するであろう所定時間が経過した時点で、ヒータ15の保護を重視した方が良いと判断して、第2の電力ガード値によるヒータ電力のガード処理が開始される。これにより、電力制御が長い時間、継続されても、ヒータ15の負担を軽減してヒータ15の過昇温を防止できると共に、加速等により排気温が急上昇してもヒータ15の破損を防止することができる。
【0067】
尚、本実施形態(1)では、電力ガード開始判定カウンタCWHGDを電力制御開始からカウントアップさせるようにしたが、図13、図14中に二点鎖線で示すように、電力ガード開始判定カウンタCWHGDを100%通電制御開始からカウントアップさせて、電力ガード開始判定カウンタCWHGDのカウント値が所定値T2 に達した時点で、第2の電力ガード値によるヒータ電力のガード処理を開始するようにしても良い。この場合、所定値T2 は、通常の排気温であれば、100%通電制御が開始されてから素子インピーダンスF/B制御に移行するのに十分な時間に相当する値に設定されている。
【0068】
或は、100%通電制御開始からのヒータ電力の積算値、又は、電力制御開始からのヒータ電力の積算値が所定値に達した時に、素子インピーダンスF/B制御に移行するようにしても良い。
【0069】
また、本実施形態(1)では、図5、図9及び図10に示すヒータ制御用の各ルーチンをサブマイコン18で実行するようにしたが、これら各ルーチンをホストマイコン17で実行するようにしても良い。
【0070】
[実施形態(2)]
ところで、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっている時には、センサ素子14の温度が活性温度から外れるため、空燃比(酸素濃度)の変化に対して酸素濃度センサ13の応答に遅れが出たり、酸素濃度の検出精度が低下する。この状態で、酸素濃度センサ13の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を通常と同じ条件で行っていたのでは、空燃比フィードバック制御が不安定となり、ハンチングが発生して、ドライバビリティや排気エミッションに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0071】
そこで、本発明の実施形態(2)では、図15の空燃比制御ルーチンを実行することで、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっている時には、フィードバックゲインを通常より小さくして安定性重視にするか又は空燃比フィードバック制御を停止するようにしている。図15の空燃比制御ルーチンは、ホストマイコン17のROM(図示せず)に記憶され、所定クランク角(例えば180℃A)毎に実行されることで、特許請求の範囲でいう空燃比フィードバック制御手段としての役割を果たす。
【0072】
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、各種センサからの検出信号を読み込んで、冷却水温、始動後経過時間、エンジン回転数等から空燃比フィードバック条件が成立しているか否かを判定する。もし、空燃比フィードバック条件が不成立と判定された場合には、ステップ302に進み、空燃比フィードバック補正係数FAFを「1.0」に設定して、ステップ311に進む。この場合は、空燃比フィードバック制御が停止され、オープンループ制御で空燃比が制御される。
【0073】
一方、上記ステップ301で、空燃比フィードバック条件成立と判定された場合には、ステップ303に進み、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっているか否かを判定する。ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっていると判定された場合は、酸素濃度センサ13の素子温度が活性温度から外れているため、センサ応答性が低下していると判断して、ステップ304に進み、素子インピーダンスZdcが判定値αΩ(図13参照)よりも大きいか否かを判定する。ここで、判定値αΩは、空燃比フィードバック制御を実施するのに必要な最低のセンサ応答性、酸素濃度検出精度を確保できる素子温度に相当する素子インピーダンスに設定されている。
【0074】
このステップ304で、素子インピーダンスZdcが判定値αΩよりも大きいと判定された場合は、センサ素子14の温度が活性温度から大きく外れていて、空燃比フィードバック制御を実施するのに必要な最低のセンサ応答性、酸素濃度検出精度を確保できないため、ステップ302に進み、空燃比フィードバック補正係数FAFを「1.0」に設定して空燃比フィードバック制御を停止し、ステップ311に進む。
【0075】
これに対して、素子インピーダンスZdcが判定値αΩ以下と判定された場合には、素子温度の活性温度からの外れが比較的小さいため、空燃比フィードバック制御を実施可能と判断して、ステップ305に進み、通常よりも小さい安定性重視のフィードバックゲインK1 〜K6 を読み込んで、次のようにして空燃比フィードバック補正係数FAFを算出する。
【0076】
まず、ステップ306で、空燃比フィードバック補正係数FAFの算出が初回か否かを判定し、もし、初回であれば、ステップ307に進み、積分項の初期値FAFIA(1) を次式により算出して、ステップ309に進む。
Figure 0003941256
ここで、LAFSENは、酸素濃度センサ13で検出した現在の空燃比である。
【0077】
一方、空燃比フィードバック補正係数FAFの算出が2回目以降であれば、ステップ306からステップ308に進んで、今回の積分項FAFIA(i) を次式により算出して、ステップ309に進む。
FAFIA(i) =FAFIA(i-1) +(TGAF−LAFSEN)×KA
ここで、TGAFはエンジン回転数と負荷から求められる目標空燃比、KAは積分定数である。
【0078】
以上のようにしてステップ307又は308で積分項FAFIA(i) を算出した後、ステップ309に進み、空燃比フィードバック補正係数FAFを次式により算出する。
Figure 0003941256
ここで、添字の(i) 〜(i-5) はサンプリング時期を示す。
【0079】
この後、ステップ310に進み、算出した空燃比フィードバック補正係数FAFの上下限を、上限ガード値(1.25)と下限ガード値(0.75)でガード処理する。
【0080】
そして、次のステップ311で、基本燃料噴射量Tp、補正係数FALL、空燃比フィードバック補正係数FAF及び無効噴射時間Tvを用いて、次式により燃料噴射量TAUを算出して本プログラムを終了する。
TAU=Tp×FALL×FAF+Tv
ここで、補正係数FALLは、例えば、冷却水温による暖機増量補正係数、スロットル開度や吸気管圧力の変動による加減速補正係数、吸気温補正係数、大気圧補正係数等である。
【0081】
一方、前記ステップ303で、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっていないと判定された場合は、素子温度が活性温度に維持され、センサ応答性や酸素濃度検出精度が十分に確保されている判断して、ステップ312に進み、通常時の大きいフィードバックゲインを読み込んで、空燃比フィードバック補正係数FAFを算出し(ステップ306〜310)、ステップ311で燃料噴射量TAUを算出して本プログラムを終了する。
【0082】
以上説明した本実施形態(2)によれば、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっている時に、フィードバックゲインを通常より小さくするか又は空燃比フィードバック制御を停止するようにしたので、ヒータ電力のガード処理によりセンサ応答性、酸素濃度検出精度が低下した時には、空燃比フィードバック制御に反映させる酸素濃度センサ13の検出値の比率を小さくして、安定性重視の空燃比フィードバック制御を行ったり、空燃比フィードバック制御を停止することができ、空燃比フィードバック制御のハンチングを未然に防止できる。
【0083】
尚、本実施形態(2)では、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっている時に、素子インピーダンスZdcが判定値αΩよりも大きいか否かによって、空燃比フィードバック制御の停止と安定性重視の空燃比フィードバック制御とを切り換えるようにしているが、空燃比フィードバック制御の停止と安定性重視の空燃比フィードバック制御のどちらか一方のみを実施するようにしても良い。また、ヒータ電力が第2の電力ガード値にかかっている時に、素子インピーダンスZdcに応じてフィードバックゲインを複数段階又は連続的に切り換えるようにしても良い。
【0084】
その他、本発明は、二輪車の空燃比制御システムのヒータ制御装置に限定されず、四輪車の空燃比制御システムや空燃比制御システム以外の酸素濃度センサのヒータ制御装置に適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態(1)における酸素濃度検出システムの概略構成を示すブロック図
【図2】ヒータ制御回路の構成を示す回路図
【図3】酸素濃度センサの拡大断面図
【図4】酸素濃度センサの電圧−電流特性を示す図
【図5】ヒータ制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図6】素子インピーダンスの検出方法を説明するための図
【図7】素子インピーダンスと電力指令値との関係を規定するマップを概念的に示す図
【図8】素子温度と素子インピーダンスとセンサ素子の劣化との関係を示す特性図
【図9】目標インピーダンス設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図10】電力ガード値設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図11】素子インピーダンスと第1の電力ガード値との関係を規定する第1の電力ガードマップを概念的に示す図
【図12】エンジン回転数とスロットル開度と仮の電力ガード値との関係を規定する第2の電力ガード値マップを概念的に示す図
【図13】実施形態(1)のヒータ制御を行った場合の実行例を示すタイムチャート(その1)
【図14】実施形態(1)のヒータ制御を行った場合の実行例を示すタイムチャート(その2)
【図15】本発明の実施形態(2)における空燃比制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…排気管、13…酸素濃度センサ、14…センサ素子、15…ヒータ、17…ホストマイコン(空燃比フィードバック制御手段)、18…サブマイコン(ヒータ制御手段,電力ガード値設定手段,電力制限手段,素子インピーダンス検出手段)、30…ヒータ制御回路。

Claims (5)

  1. 内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサに適用され、該酸素濃度センサのセンサ素子を加熱するヒータへの通電を制御することで、該センサ素子の温度を制御する酸素濃度センサのヒータ制御装置において、
    前記ヒータへの供給電力(以下「ヒータ電力」という)を制御するヒータ制御手段と、 前記内燃機関の運転状態に基づいて前記ヒータ電力の許容電力値を求め、この許容電力値をなまし処理して電力ガード値を求める電力ガード値設定手段と、
    前記ヒータ電力を前記電力ガード値で制限する電力制限手段と
    を備えていることを特徴とする酸素濃度センサのヒータ制御装置。
  2. 前記電力ガード値設定手段は、前記電力ガード値を増加させる時の増加率が、該電力ガード値を減少させる時の減少率よりも小さくなるように前記なまし処理に用いるなまし係数を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の酸素濃度センサのヒータ制御装置。
  3. 前記センサ素子のインピーダンスを検出する素子インピーダンス検出手段を備え、
    前記ヒータ制御手段は、前記ヒータの通電率を100%に維持する100%通電制御と、前記ヒータ電力を前記センサ素子のインピーダンスに応じて制御する電力制御と、前記センサ素子のインピーダンスを目標インピーダンスに一致させるように前記ヒータの通電率を制御する素子インピーダンスフィードバック制御とを前記センサ素子の温度上昇に応じて順番に切り換えて実施し、
    前記電力制限手段は、前記素子インピーダンスフィードバック制御の実行中に前記電力ガード値によるヒータ電力の制限を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素濃度センサのヒータ制御装置。
  4. 前記電力制限手段は、前記電力制御が所定時間以上続いた時、又は前記ヒータへの通電開始から所定期間が経過した時に、前記電力ガード値によるヒータ電力の制限を開始することを特徴とする請求項3に記載の酸素濃度センサのヒータ制御装置。
  5. 前記酸素濃度センサの検出値に基づいて前記内燃機関に吸入する混合気の空燃比をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御手段を備え、
    前記空燃比フィードバック制御手段は、前記ヒータ電力が前記電力ガード値にかかっている時に、前記空燃比フィードバック制御のフィードバックゲインを通常より小さくし、又は前記空燃比フィードバック制御を停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の酸素濃度センサのヒータ制御装置。
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