本実施形態は、例えば、ハイブリッド自動車に搭載された多気筒エンジンの排気通路に設けられ、特定成分の濃度を検出するガスセンサである空燃比センサを対象としている。図1は、このエンジンの排気通路の概略構成図である。ハイブリッド自動車では、モータを駆動源として走行するEVモードと、エンジンを駆動源として走行するエンジンモードとの切り替えが可能となっている。なお、ハイブリッド自動車では、例えば低速走行時にEVモードで走行し、加速に伴う中高速走行時にエンジンモードで走行する。
エンジン10は、一般的な構成のもので、燃料の燃焼によりクランクシャフトに回転力を発生する。また、エンジン10には、各燃焼室に空気を供給する吸気通路11及び各燃焼室内から排気を排出する排気通路12が接続されている。また、エンジン10には、各燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置13が設けられている。
また、エンジン10には、エンジン10の温度を示すエンジン水温Twを検出する水温センサ14が設けられている。そして、エンジン10が配置されたエンジンルーム内には、エンジン10の周辺環境の温度である周囲温度として外気温Taを取得する外気温センサ15が設けられている。なお、エンジン温度として、エンジン油温を検出する構成であってもよいし、シリンダブロックの壁面温度を検出する構成であってもよい。また、エンジン10の吸気温を検出する吸気温センサを外気温センサとして用いる構成や、外気温センサ15を、エンジンルーム外に設ける構成としてもよい。
排気通路12には、排気中の酸素濃度に基づいてエンジン10の燃焼室内の空燃比を検出する空燃比センサ20が設けられている。空燃比センサ20は、例えば限界電流式のセンサであって、ハウジング21に保持されたセンサ素子22と、センサ素子22を活性温度まで加熱するヒータ23とを備えている。また、空燃比センサ20には、被水割れ対策が施されており、例えば、センサ素子22に撥水コーティングが施されている。センサ素子22は、排気通路12内で保護カバー24に覆われており、保護カバー24には、排気が通過可能な孔部が形成されている。そして、保護カバー24内に流入した排気の空燃比をセンサ素子22が検出する。
水温センサ14や外気温センサ15や空燃比センサ20等の各種センサで検出された結果は、ECU30に出力される。ECU30は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを備えている。ECU30は、エンジン10の回転数や負荷に合わせて、空気量や燃料噴射装置13の制御を行っている。また、ECU30は、空燃比センサ20のヒータ23の通電の制御を行っている。なお、EUC30が「通電制御装置」に相当する。
また、空燃比センサ20のヒータ23には、電源40から電力が供給される。電源40は、例えば、エンジンルーム内に搭載された鉛蓄電池である。そして、電源40とヒータ23との間は、ワイヤハーネス41により接続されている。また、電源40からヒータ23への通電は、PWM回路を介して行われる。ECU30は、算出したデューティでPWM回路を制御することで、ヒータ23への通電量を制御する。なお、昇温通電制御はオープン制御であって、ECU30は、デューティと通電時間を設定することで、ヒータ23を昇温通電制御する。
次に、空燃比センサ20におけるヒータ23の通電制御について説明する。空燃比センサ20は、ヒータ23によりセンサ素子22が600℃~700℃等の活性温度まで加熱することで、センサ素子22を構成する固体電解質の酸素イオンの移動度を高めて、センサ素子22を活性化させる。エンジン10の始動後は、空燃比センサ20を使用可能な状態とするために、センサ素子22を早期活性させるべく比較的大きな通電量でヒータ通電が行われる。
このようなセンサ素子の被水割れ等による破損を抑制するために、従来の空燃比センサ等のガスセンサでは、図2に示すように、2種類の予熱通電を実施している。具体的には、停止中にセンサ素子に付着した水分が突沸することによる突沸割れを防ぐ予熱通電と、始動後の排気中の水分がセンサ素子に付着することで生じた温度差による被水割れを防ぐ予熱通電とを実施している。図2は、従来のガスセンサにおける昇温通電時のデューティ(通電量)と素子温度を示すタイムチャートである。
タイミングt11より以前に、IG(イグニッション)がオン状態になる等して、エンジン10での燃焼の準備が始まり、タイミングt11で、ヒータ23への通電が開始される。タイミングt11では、突沸割れを抑制するために、非常に低いデューティ(例えば5%程度)で予熱通電が開始される。そして、センサ素子に付着した水分による突沸が抑制できる程度の時間が経過するまで、低いデューティでの予熱通電が継続される。
センサ素子に付着した水分による突沸が抑制できる程度の時間が経過すると、タイミングt12で、デューティが上昇する。タイミングt12では、排気中の水分による被水割れを抑制するために、タイミングt11~タイミングt12までよりは大きくかつ被水割れが生じない程度のデューティ(例えば、10~20%程度)で予熱通電が開始される。そして、エンジン10の燃焼によって排気通路12内の温度が上昇して排気内の水分がなくなる状態まで、予熱通電が継続される。なお、被水割れを防ぐための予熱通電の時間は、突沸割れを防ぐための予熱通電の時間に比べて長い。
排気通路12内の温度が上昇し、排気中の水分がない状態になると、タイミングt13で、センサ素子を活性温度まで昇温させる昇温通電を開始する。具体的には、デューティが100%の状態で、所定時間加熱することで、素子温度が活性温度域内の目標温度まで素早く昇温される。
タイミングt14で、目標温度まで素子温度が昇温されると、センサ素子の目標インピーダンスと実インピーダンスを一致させるように制御するインピーダンスフィードバック制御によるヒータ通電が行われる。そして、素子温度が目標温度に維持されるように通電される。
ところで、本実施形態のように、被水割れ対策が施された構造のガスセンサ(空燃比センサ20)においては、図2に示すような予熱通電の時間が不要、又は突沸対策のための予熱通電の時間だけでよくなり、昇温通電を開始するまでの時間が非常に短くなる。これにより、エンジン10が暖機状態となっていない、つまりエンジンルーム内の温度(空燃比センサ20及びワイヤハーネス41の周辺環境の温度)が所定の範囲内にない状態で、ヒータ23の昇温通電制御を開始することになる。そこで、ヒータ23への通電経路であるワイヤハーネス41の抵抗値は、空燃比センサ20の周辺環境の温度に依存することになる。
空燃比センサ20の周辺環境の温度は、エンジン10の環境温度である外気温とエンジン10の温度であるエンジン水温に依存すると考えられる。例えば、エンジン10の冷間始動時には、ワイヤハーネス41の抵抗値が外気温に依存したものとなり、外気温が低温であるほどワイヤハーネス41の抵抗値が低くなる。このような場合に、通電開始当初から100%デューティの昇温通電制御を実施すると、実際にヒータ23に投入される電力が過大になるおそれがある。このようにワイヤハーネス41の抵抗値が周辺環境の温度によって影響を受け、電源40からの電力供給量が同じであってもヒータ23に投入される電力が異なるものになる。そこで、周辺環境の温度に基づいたヒータ23への通電量とする必要がある。
図3は、ヒータ23への通電を制御するためにECU30が実施するフローチャートであって、ECU30により所定周期で繰り返し実行される。
S10で、昇温フラグが1になっているか判定する。昇温フラグは、エンジン10の始動後のヒータ23の昇温通電制御中であることを示すフラグである。昇温フラグは、初期値が0であり、昇温通電制御がなされる場合に1になり、昇温通電制御の後にフィードバック制御が実施される場合に0にリセットさせる。昇温フラグが0の場合(S10=Noの場合)、S11に進む。
S11で、始動時か判定する。始動時とは、IGスイッチがオンになってエンジン10の燃焼がスタートする場合や、EVモードからエンジンモードに移行しエンジン10の燃焼が再スタートする場合を示す。始動時である場合(S11=Yes)には、S12に進む。
S12では、エンジン10の周辺環境の温度である外気温Taを取得する。具体的には、外気温センサ15が検出した外気温Taを取得する。S13では、エンジン10の温度であるエンジン水温Twを取得する。具体的には、水温センサ14が検出したエンジン水温Twを取得する。なお、S12が「周囲温度取得部」に相当し、S13が「エンジン温度取得部」に相当する。
S14では、外気温Ta及びエンジン水温Twに基づいて、エンジン10の冷間始動状態であるか判定する。エンジン水温Twが外気温Taと同じでありかつ暖機閾値Thよりも低温である場合には、エンジン10が冷間始動状態である(S14=Yes)と判定し、S15に進む。一方、エンジン水温Twが外気温Taと異なっておりかつ暖機閾値Thよりも高温である場合には、エンジン10が再始動状態である(S14=No)と判定し、S16に進む。なお、エンジン水温Twが外気温Taと同じとは、同じ環境状態にあるとみなせる程度の温度範囲にあることを示している。また、暖機閾値Thは、エンジン10が冷間始動状態にあるかを判定する閾値であって、エンジン10の暖機が完了しているかを示す値に設定される。S14が「判定部」に相当する。
S14で冷間始動状態であると判定されると、S15では、冷間始動状態での通電経路であるワイヤハーネス41の冷間時抵抗値RAを算出する。図4は外気温とワイヤハーネス41の抵抗との関係を示す図であり、この図に基づいて、ワイヤハーネス41の冷間時抵抗値RAを算出する。冷間始動状態の場合には、ワイヤハーネス41の抵抗値は、外気温の影響を強く受ける。そのため、外気温が大きくなった場合の抵抗値の変化量が大きい状態となっている。そして、図4に示す外気温と抵抗値の相関関係を用いて、外気温Taに基づいて、ワイヤハーネス41の抵抗値を算出する。
S16で、突沸割れを防止するための予熱通電制御が必要か判定する。エンジン10の停止中に排気通路12内に水分が発生している場合には、空燃比センサ20に水分が付着しているおそれがある。突沸割れを防止するために、排気通路12内に水分が発生していると判定される場合には、予熱通電制御が必要であると判定する。そして、S17で、突沸を抑制するための極短い時間、低いデューティ(例えば、5~10%程度)での予熱通電制御を行い、S19に進む。なお、S16で判定することなく、予熱通電制御を行うようにしてもよい。
一方、S14で再始動状態であると判定されると、S18では、再始動状態での通電経路であるワイヤハーネス41の再始動時抵抗値RBを算出する。エンジン10が暖機状態から再始動される場合には、ワイヤハーネス41の抵抗値が外気温だけでなく、エンジン水温にも依存したものとなる。そこで、図4に基づいて、ワイヤハーネス41の再始動時抵抗値RBを算出する。再始動状態の場合には、外気温以外の周囲環境の温度の影響も受けることから、外気温が大きくなった場合の抵抗値の変化量が小さい状態となっている。また、同じ外気温の場合において、再始動時抵抗値RBが冷間時抵抗値RAよりも大きくなっている。そして、図4に示す外気温と抵抗値の相関関係を用いて、外気温Taに基づいて、ワイヤハーネス41の抵抗値を算出して、S19に進む。なお、図4では、再始動時抵抗値RBを算出する関係を1つしか示していないが、エンジン水温に応じて複数の相関関係を示すマップを有していてもよい。この場合には、エンジン水温が高いほど、同じ温度での再始動時抵抗値RBは大きくなり、外気温に対する変化量は小さくなる。
S19で、始動時の車速情報を取得する。始動時に車両が走行している状態である場合には、どの程度の車速で走行しているかという情報を取得する。EVモードからエンジンモードに移行する場合に、車両走行状態下でエンジン10が始動される。一方、停止している状態でエンジン10が始動した場合には、車速が0であるという情報を取得する。
そして、S20で、冷間時抵抗値RA又は再始動時抵抗値RBを補正する。始動時に車両が走行状態下にある場合には、ワイヤハーネス41の温度は、走行による風を受けて冷却されることで、停止状態下よりも下がることになる。これにより、外気温で算出される抵抗値よりも実際の抵抗値が低くなる。そこで、S19で取得した情報により、始動時に車両が走行状態下である場合には、S20で、算出した抵抗値(冷間時抵抗値RA又は再始動時抵抗値RB)を小さくする補正を行う。つまり、周囲温度と車速とに基づいて、ワイヤハーネス41の抵抗値を算出する。一方、S19で取得した情報により、車速が0である場合、つまり始動時に車両が移動していなかった場合には、S15又はS18で算出した抵抗値のままにする。
S20の処理が終了すると、S21では、昇温通電時の通電量を算出する。昇温通電制御は、オープン制御であって、予め算出したデューティで、予め算出した通電時間の間通電するように制御する。そこで、S21で、S20で算出したワイヤハーネス41の抵抗値に基づいて、通電量を算出する。具体的には、予め算出したマップ等により、抵抗値から電源40から供給する通電量を算出する。この際に、抵抗値が小さくなるほど、ワイヤハーネス41を流れる電流量が大きくなる。そこで、抵抗値が小さい場合には、デューティを100%ではなく、90~95%まで下げたり、通電時間を短くしたりして、抵抗値に応じた通電量となるように設定する。
S21で通電量を算出すると、S22で昇温フラグを1とする。S22で昇温フラグが1になった場合、又はS10で、昇温フラグが1であると判定された(S10=Yes)場合、S23で昇温通電制御を実施する。具体的には、S21で算出したデューティで電源40から電力が供給されるようにする。
そして、S24で、昇温フラグが1になってから所定時間経過したか、つまりS21で算出された通電時間の間昇温通電がされたかを判定する。所定時間が経過していない場合(S24=No)、処理を終了する。所定時間が経過していた場合には、S25に進む。S25では、昇温フラグを0にリセットし、昇温通電の終了処理を行う。そして、素子インピーダンスに基づくフィードバック制御を行うように設定する。なお、S15、S18、S20、S21、S23、S24が「通電制御部」に相当する。
S11で、始動時ではないと判定された場合(S11=No)、S31に進む。S31で、EVモード中か、つまりエンジン10の運転が休止しているか判定する。なお、S31が「休止判定部」に相当する。
S31で、EVモード中ではないと判定された場合(S31=No)、S32に進む。S32では、センサ素子22の素子インピーダンスを取得する。素子インピーダンスは、センサ素子22の温度と相関性を有する値である。なお、S32が「センサ温度取得部」に相当する。
そして、S33で、燃料カット中(フューエルカット中)か判定する。S33で、燃料カット中でないと判定された場合(S33=No)、S34に進む。S34では、取得した素子インピーダンスを目標インピーダンスに一致させるべく、所定の範囲内でヒータ23の通電量を算出するフィードバック制御を実施する。フィードバック制御を実施することで、センサ素子22の温度が、センサ素子22を活性状態にできる目標温度に維持することができる。
S33で、燃料カット中であると判定された場合(S33=No)、S35で、ヒータ23への通電量を増加させる増加制御を実施する。燃料カット中には、エンジン10の燃料噴射が休止され、燃焼が休止される。そして、燃料カット中には、吸気通路11からエンジン10内に供給された空気が排気通路12に排出される。エンジン10での燃焼がない状態では、空燃比センサ20は排気を監視する必要がない。一方、燃料カット状態は、比較的短い時間で終了することから、ヒータ23を通電させて空燃比センサ20の活性状態を保持する必要がある。ところが、燃料カット中は、吸気通路11から供給された比較的冷たい空気が排気通路12を流れるため、空燃比センサ20は通常の通電量では冷却されてしまう。
そこで、S35で、ヒータ23への通電量を増加させる増加制御を実施する。増加制御では、ヒータ23の通電量がフィードバック制御の所定範囲よりも大きくなることを許可する。具体的には、通常のフィードバック制御時に設定されているデューティの上限値を外して、フィードバック制御によるデューティが大きくなれるようにする。そして、ヒータ23の通電量がフィードバック制御の所定範囲よりも大きくなれるようにする。なお、増加制御の方法として、燃料カット時でない通常時のフィードバックゲインよりも燃料カット時のフィードバックゲインを増加させてもよい。これにより、通常時のデューティよりも燃料カット時のデューティを大きくすることができ、ヒータ23の通電量を増加させることができる。なお、S34,S35が「フィードバック制御部」に相当する。
一方、EVモード中であると判定する(S31=Yes)と、S36で、ヒータ23への通電量を所定の低電力通電とする低電力制御を実施する。EVモード中(モータでの走行中)の間、エンジン10が休止しており、エンジン10からの排気が生じないため、空燃比センサ20は、排気を監視する必要がなく、センサ素子22の活性状態を維持する必要がない。また、EVモードは、いつ終了するかわからず、EVモード中は電力の消費を抑えることが好ましい。そこで、EVモード中は、空燃比センサ20への水の付着を抑制する程度(例えばデューティが5~10%程度)でヒータ23の通電を継続する低電力通電を実施する。これにより、EVモードからの再始動時には突沸抑制のための予熱通電をする必要がなくなる。なお、低電力通電では、ヒータ23への通電を0にして所定間隔で予熱通電を行い水の付着を抑制してもいい。また、EVモード中はヒータ23への通電を0にしてもよい。ヒータ23への通電を0にし続けた場合には、EVモードからの再始動時であっても予熱通電が必要かどうか判定され、必要に応じて予熱通電制御する。
次に、図5は、図3の処理によりヒータ23の通電制御を実施した場合のタイムチャートであり、このタイムチャートについて説明する。IGは、イグニッションがオン状態(車両が動いている状態)かを示しており、エンジンは、エンジン10が運転中(オン状態)か、休止中(オフ状態)かを示しており、F/Cは、フューエルカット中(オン状態)かを示している。また、外気温Taと水温Twは、外気温センサ15と水温センサ14とで検出される値を示しており、破線が外気温Taを示す値であり、実線がエンジン水温Twを示している。ハーネス抵抗は、周囲環境から算出されるワイヤハーネス41の抵抗値を示しており、デューティは、ヒータ23への通電のデューティを示しており、素子温は、センサ素子22のインピーダンスから算出されるセンサ素子22の温度を示している。
タイミングt21で、IGがオンになると、エンジン10の運転が開始される。そして、タイミングt21では、外気温Taとエンジン水温Twが同じで、暖機閾値Thよりも小さいことから冷間始動状態であると判定される。そして、外気温Taに基づいたマップにより冷間時のワイヤハーネス41の冷間時抵抗値RAが算出される。そして、ワイヤハーネス41の冷間時抵抗値RAに基づいて、通電量が算出される。また、始動時の温度が低いことから、突沸のおそれがあるため、ヒータ23のデューティを低くした予熱通電制御が実施される。
タイミングt22では、予熱通電制御が終了し、昇温通電制御が開始される。この際に、タイミングt21で算出された通電量に基づいて、100%よりも低いデューティで所定時間通電が実施される。つまり、冷間始動状態では、第1通電制御として、冷間時抵抗値RAに基づく昇温通電制御を実施する。これにより、ヒータ23の通電量が過大になることを抑制でき、センサ素子22を適切に昇温させることができる。
所定時間が経過すると、タイミングt23で、昇温通電制御が終了し、センサ素子22が目標温度に昇温される。そして、センサ素子22の温度を目標温度で維持するインピーダンスフィードバック制御が実施される。なお、エンジン水温Twが一定値に到達した状態では、空燃比センサ20の周囲の環境温度も一定になるため、算出されるハーネス抵抗値も一定になる。
タイミングt24で、燃料噴射装置13による燃料噴射が休止され、燃料カット状態になると、ヒータ23のフィードバック制御時の通電量が所定範囲よりも大きくなることを許可することで、通常のフィードバック制御時よりもデューティが増加する。これにより、燃料カット中に大気に曝されるセンサ素子22を活性状態に保持することができる。そして、タイミングt25で燃料カットが終了すると、通常の所定範囲内でのフィードバック制御に戻る。
タイミングt26で、EVモードになり、エンジン10の運転が休止状態となると、所定の低電力通電によりヒータ23への通電を継続する。ヒータ23への通電を低電力で継続することで、センサ素子22への水の付着を抑制しつつ、通電量を抑制できる。
タイミングt27で、EVモードからエンジンモードに移行してエンジン10が始動されると、センサ素子22の温度が低くなっていることから、再び昇温通電制御される。この場合には、外気温Taとエンジン水温Twとが同じではなく、エンジン水温Twが暖機閾値Thを超えていることから、再始動状態であると判定される。そして、外気温Taとエンジン水温Twに基づいたマップによりワイヤハーネス41の再始動時抵抗値RBが算出される。なお、EVモード中には車両が走行していることから、車速に基づいて、ワイヤハーネス41の抵抗値が減少補正される。そして、ワイヤハーネス41の抵抗値に基づいて、通電量が算出され、昇温通電制御が開始される。ワイヤハーネス41の抵抗値が冷間始動状態の場合に比べて大きいことから、デューティが100%で昇温される。つまり、暖機始動状態では、第2通電制御として、再始動時抵抗値RBに基づく昇温通電制御を実施する。このようにヒータ23の通電量が過大になるおそれがない場合には、100%デューティで昇温されることで、素早く昇温させることができる。
そして、設定された所定時間が経過すると、タイミングt28で、昇温通電制御が終了し、センサ素子22が目標温度に昇温される。そして、センサ素子22の温度を目標温度で維持するインピーダンスフィードバック制御が実施される。
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏する。
エンジン10の始動時には、センサ素子22を早期活性させるべく比較的大きな通電量でヒータ23の通電が行われる。その際、ヒータ23の通電経路(ワイヤハーネス41)の抵抗値は、空燃比センサ20の周辺の温度環境に応じた値となっている。そのため、例えば低温時には、ワイヤハーネス41の抵抗値が小さくなり、それに起因して、実際にヒータ23に投入される電力が意図せず過大になることが懸念される。
そこで、本実施形態では、エンジン10の周辺環境の周囲温度に基づいて、ヒータ23の通電量を制御する。その結果、ヒータ23の通電量を環境に応じた通電量にすることができ、センサ素子22を適切に昇温させることができる。
なお、本実施形態のように、ガスセンサとして、例えばセンサ素子22に撥水コーティング等の被水割れ対策が施された構造の空燃比センサ20を用いる場合には、予熱制御の時間が不要又は短くなり、周囲温度によっては、実際にヒータ23に投入される電力が過大になるおそれがある。しかしながら、環境に応じた通電量とすることで、ヒータ23に投入される電力が過大になることを抑制できる。
空燃比センサ20の周辺環境の温度は、エンジン10の環境温度である外気温だけではなく、エンジン10の温度であるエンジン温度(エンジン水温)にも依存すると考えられる。例えば、エンジン10の冷間始動時には、ヒータ23の通電経路(ワイヤハーネス41)の抵抗値が周囲温度に依存したものとなり、周囲温度が低温であるほどヒータ23の通電経路が低抵抗となる。一方で、エンジン10が暖機状態から再始動される場合には、ヒータ23の通電経路の抵抗値が外気温だけでなく、エンジン温度にも依存したものとなる。
そこで、本実施形態では、冷間始動状態と再始動状態とで、ヒータ23への通電制御を異なるものとする。これにより、環境に応じた通電制御を実施することができ、センサ素子22を適切に昇温させることができる。
周辺の環境状況によって、電源40とヒータ23とを接続するワイヤハーネス41の抵抗値が異なり、抵抗値が異なることで、実際に空燃比センサ20のヒータ23に供給される電力が異なる。そこで、冷間始動状態では、外気温の影響が大きいため、外気温に基づいて抵抗値を算出し、その抵抗値に基づく第1通電制御を実施する。再始動状態では、エンジン水温によりエンジン暖機状態を把握し、周囲温度とエンジン温度に基づいて抵抗値を算出し、その抵抗値にも基づく第2通電制御を実施する。このように抵抗値を算出し、その抵抗値に基づく制御を実施することで、センサ素子22を適切に昇温させることができる。
車両の走行中は、ワイヤハーネス41等が風に曝されるため、外気温やエンジン温度から推定したワイヤハーネス41の環境の温度よりも温度が下がり、ワイヤハーネス41の抵抗値が小さくなることが多い。そのため、外気温やエンジン温度に基づいて算出した抵抗値を車速に応じて小さくなるように算出することで、より算出誤差を抑制でき、適切な通電量にすることができる。
エンジン10の燃料カット中は、エンジン10での燃焼が行われず、吸気された空気がそのまま通過するため、排気の温度が下がることになる。このような排気に曝されると、通常のフィードバック制御では、空燃比センサ20の温度が下がってから再び昇温させることになるため、再び燃焼が始まったときに、温度が下がった状態となっているおそれがある。そこで、燃料カット中は、通常のフィードバック制御時よりもデューティ(フィードバックゲイン)を増加させることで、空燃比センサ20の温度が下がることを抑制する。
エンジン10の運転の休止中、例えばハイブリッド自動車のモータ駆動時(EVモード時)等には、長時間空燃比センサ20を利用しない可能性がある。このような場合には、ヒータ23の通電量を小さくして、水の付着を抑制できるような低電力通電により通電を維持することで、空燃比センサ20の温度維持に使用する電力を抑制する。
<他の実施形態>
本発明は、上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。
・上記実施形態では、ハイブリッド自動車を対象としていたが、アイドリングストップ機能付きの車両を対象としてもよい。この場合には、図3の処理のS31では、エンジン10が休止中かの判定として、アイドリングストップ中かを判定し、アイドリングストップ中の場合には、S36で通電量を減少制御する。
なお、アイドリングストップは、一般的に車両の停止している状態等で行われるため、再始動時のワイヤハーネス41の抵抗値が車速の影響をほとんど受けない。図5のタイムチャートでは、エンジン10休止中に車両が走行していないため、素子温が破線Xで示すように、EVモードの場合よりも温度が下がりにくくなる。また、ワイヤハーネス41の抵抗値は、外気温とエンジン水温に依存し、走行による補正がなくなることから、ワイヤハーネス41の抵抗値が破線Xで示すように、EVモードの場合よりも大きくなる。これにより、昇温通電時の通電量(通電時間)が若干EVモードの場合よりも長くなる。このようにして、車速等に応じて補正を適正に行うことで、より適切な昇温通電制御をすることができる。
・ガスセンサは空燃比センサではなく、ヒータ23により昇温される他のガスセンサであってもよい。例えば、混合電位型のNOxセンサ等にも本実施形態のような通電制御を用いることができる。
・上記実施形態では、ワイヤハーネス41の抵抗値を算出し、それに基づいて通電量を算出していたが、ワイヤハーネス41の抵抗値を算出せずに外気温及びエンジン水温に基づいたマップ等によりデューティと通電時間を算出するようにしてもよい。
・上記実施形態では、再始動状態での第2通電制御として、外気温及びエンジン水温に基づいたワイヤハーネス41の再始動時抵抗値RBを算出し、再始動時抵抗値RBに基づく制御を実施している。しかし、再始動状態での第2通電制御として、周囲温度以外の他の要素、例えば、素子温度等に基づいて、昇温通電制御のための通電量を算出するようにしてもよい。