JP4106647B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるレリーズフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、レリーズフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをレリーズフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、回転部材であるダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にレリーズフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材(ガイドスリーブ)とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば特開平11−82541号に示されているように、ダイヤフラムスプリングとレリーズフォークとの間に設けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、クラッチレリーズ軸受装置において、ガイドスリーブを樹脂製とすることにより、軽量化と低コスト化を図ろうという考えがあるが、かかる場合、レリーズフォークの当接部に、摩耗を抑制する板状のアンビル部材を設けることが好ましい。しかしながら、アンビル部材は板状であるため、製造過程で反りが生じ、ガイドスリーブのフランジ部から離隔して、その剛性が低下し、運転者の操作感の低下を招く恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、軽量・コンパクトな構成であり、且つ剛性を高めることができるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合され円筒状の本体とフランジ部とを備えた軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材と、入力部材から受けた力を前記軸受保持部材のフランジ部に伝達する鋼板材からなるアンビル部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、前記軸受保持部材のフランジ部は、少なくとも前記アンビル部材が力を受ける面の背後に、肉盛り部を形成してなり、前記肉盛り部と前記本体とに挟まれた領域において、前記フランジ部と前記アンビル部材との間に隙間が存在し、前記肉盛り部の高さが、前記肉盛り部以外のベース面より0.1〜0.5mm高くなっているものである。
【0007】
【作用】
本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、一方の輪(例えば外輪)が固定され、回転する他方の輪(例えば内輪)がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合され円筒状の本体とフランジ部とを備えた軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材と、入力部材から受けた力を前記軸受保持部材のフランジ部に伝達する鋼板材からなるアンビル部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、前記軸受保持部材のフランジ部は、少なくとも前記アンビル部材が力を受ける面の背後に、肉盛り部を形成してなり、前記肉盛り部と前記本体とに挟まれた領域において、前記フランジ部と前記アンビル部材との間に隙間が存在し、前記肉盛り部の高さが、前記肉盛り部以外のベース面より0.1〜0.5mm高くなっているので、前記アンビル部材に反りが生じたような場合でも、前記軸受保持部材と前記アンビル部材との当接を確保でき、それによりアンビル部材とレリーズフォークとの当接部の剛性を高めることができる。
【0008】
尚、前記肉盛り部とは、前記肉盛り部以外のベース面から高くなった部分を意味し、前記アンビル部材のレリーズフォークから力を受ける面の背後の反りは、通常0.1〜0.5mmであるため、前記肉盛り部はベース面よりも0.1〜0.5mm高くなっていると、前記アンビル部材の力を受ける面の背後と前記肉盛り部との間にスキマがなくなり、剛性が向上するため好ましい。又、前記アンビル部材の力を受ける面の背後を、前記肉盛り部でバックアップするため、アンビルの強度が向上し、アンビル板厚を薄くでき、コストを低く抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図2は、図1のII-II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。図3は、図2のIII部を拡大して示す図である。
【0010】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30と、鋼板材からなるアンビル部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。シール17は微接触シールであると好ましい。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。また、内輪11の当接部11aと反対側の端部はプレスによるブランク加工のままとし、切削加工を行わず製作コストを安くするようにしている。
【0011】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向に突出するガイド部25(図1)とからなる。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁23の内周との間には隙間27が形成されている。
【0012】
図3に示すように、フランジ部22のアンビル部材40に対する当接面には、肉盛り部22a(図1でクロスハッチにより示す領域)が形成されている。肉盛り部22aは、それ以外のフランジ部22のベース面22bよりも、H=0.1〜0.5mm高くなって(アンビル部材40側に張り出して)いる。肉盛り部22aは、アンビル部材40の、レリーズフォーク当接面42の背後(クラッチレリーズ軸受10側)に位置している。
【0013】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図4は、ばね部材30の斜視図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、押圧部32はシール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、外方に傾斜した傾斜部32aを有する。
【0014】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との略中間において、半径方向に突出するように形成された凸部34を有し、この凸部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の端部に対応している。また、ベース部31の両側部31aにおける下方端近傍においては、切欠き37が形成され、更にベース部31の中央には矩形開口38が形成されている。
【0015】
尚、ガイドスリーブ20のストッパ22gは、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際に、ばね部材30の矩形開口38に係合して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。切欠き37は、フランジ22に形成された突起22cに係合し、抜け止めとして機能する。
【0016】
次に、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。図1において、図示しないレリーズフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42における領域Pに当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚く、レリーズフォークより受ける大荷重を受けることができる。クラッチレリーズ軸受装置は、レリーズフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0017】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それにより軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟みこむように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0018】
本実施の形態によれば、アンビル部材40に当接する肉盛り部22aが、それ以外のフランジ部22のベース面22bよりも、H=0.1〜0.5mm高くなって(アンビル部材40側に張り出して)いるので、アンビル部材40にレリーズフォーク側(不図示)側への反りが生じたとしても、肉盛り部22aとの当接を確保でき、それによりクラッチレリーズ軸受装置の動作時の剛性を高めることができ、操作感を良好なものとすることができる。
【0019】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、一方の輪(例えば外輪)が固定され、回転する他方の輪(例えば内輪)がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合され円筒状の本体とフランジ部とを備えた軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材と、入力部材から受けた力を前記軸受保持部材のフランジ部に伝達する鋼板材からなるアンビル部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、前記軸受保持部材のフランジ部は、少なくとも前記アンビル部材が力を受ける面の背後に、肉盛り部を形成してなり、前記肉盛り部と前記本体とに挟まれた領域において、前記フランジ部と前記アンビル部材との間に隙間が存在し、前記肉盛り部の高さが、前記肉盛り部以外のベース面より0.1〜0.5mm高くなっているので、前記アンビル部材に反りが生じたような場合でも、前記軸受保持部材と前記アンビル部材との当接を確保でき、それにより当接部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図2】図1のII-II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】図2のIII部を拡大して示す図である。
【図4】ばね部材30の斜視図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受
11 内輪
12 外輪
20 ガイドスリーブ
30 ばね部材
Claims (1)
- 一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合され円筒状の本体とフランジ部とを備えた軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材と、入力部材から受けた力を前記軸受保持部材のフランジ部に伝達する鋼板材からなるアンビル部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記軸受保持部材のフランジ部は、少なくとも前記アンビル部材が力を受ける面の背後に、肉盛り部を形成してなり、前記肉盛り部と前記本体とに挟まれた領域において、前記フランジ部と前記アンビル部材との間に隙間が存在し、
前記肉盛り部の高さが、前記肉盛り部以外のベース面より0.1〜0.5mm高くなっているクラッチレリーズ軸受装置。
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