JP3804160B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるシフトフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、シフトフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをシフトフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にシフトフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば特願平7−333452号に示すようにダイヤフラムスプリングとシフトフォークとの間に設けている。
【0004】
ところで、この特願平7−333452号に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、ガイドスリーブが樹脂製であることから、シフトフォークとの当接部に過大な摩耗が生じないよう、鋼板製の補強部材をシフトフォークとガイドスリーブとの間に設けるようにしている。
【0005】
図6は、特願平7−333452号に開示されているような従来技術による補強部材140とばね部材130の斜視図である。補強部材140は、ガイドスリーブ(不図示)に互いのフランジを重合させ、更に軸受(不図示)を固定するばね部材130を利用して、ガイドスリーブに取り付けられるようになっている。
【0006】
ばね部材130は、補強部材140のフランジ部に形成された切欠141内に挿入されるようになっている。ここで、切欠141はC字形状をしており、ばね部材130を切欠141内に挿入すると、切欠141の入口の対向突起141a、141bがばね部材130とガイドスリーブとの間に侵入するようになっており、それにより補強部材140とガイドスリーブとの分離が防止されるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、ばね部材130のベース部131は、その先端部をガイドスリーブ上の係止突起(不図示)に係止させることにより取り付けられている。従って、切欠141の対向突起141a、141bは、かかる係止突起を逃げるため、補強部材141のフランジ外周部に配置せざるを得ない。
【0008】
一方、クラッチレリーズ軸受装置の周囲部品の設計において、補強部材の外周はなるべく小さくすることが望まれているという実状がある。しかるに、切欠141の対向突起141a、141bを設ける位置は、ばね部材130のベース部131の長さlにより決定されてしまうため、かかる構成では補強部材141の外径を大幅に小さくすることは困難である。
【0009】
これに対し、切欠141の入口に対向突起141a、141bを廃し、その代わりに切欠141の底部に同様な機能を有する舌部を設けるという提案がなされている。かかる提案によれば、補強部材の外径を容易に小さくすることができ、クラッチレリーズ軸受装置のコンパクト化が図れる。しかしながら、ばね部材130は、ガイドスリーブに形成された突起を、弾性変形することにより乗り越えて組み付けられるようになっているため、弾性変形しやすいように適度に低い剛性が要求されている。しかるに従来技術においては、その要求をベース部131に長い切欠138を形成することにより充足している。
【0010】
以上より明らかであるが、従来技術のようにばね部材130に長い切欠138を形成している限り、ばね部材130が切欠141の底部に設けた舌部を押さえることはできない。よって補強部材の保持を確保するためには、切欠141の入口に対向突起141a、141bを形成さざるを得ず、設計の自由度が低下していた。
【0011】
そこで本願発明は、補強部材の保持を確保しつつも補強部材の設計の自由度を拡大させることのできるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
ガイド軸上に摺動自在に嵌合された軸受保持部材と、
該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記軸受保持部材には凸部が設けられ、前記連結部材には凹部が設けられ、組付時において、前記連結部材が弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えるようになっており、更に前記凸部が前記凹部に係合した時点で前記連結部材が元の形状に復帰するようになっていて、
前記連結部材には、前記凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整している。
【0013】
【作用】
本願発明によれば、前記連結部材において、前記凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整しているので、例えば、半径方向外方に延在する舌部を補強部材に設けた場合でも、前記連結部材により前記舌部を押さえることができ、従って前記補強部材の設計の自由度が広がることとなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1は、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。図2は、図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0015】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30と、補強部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。
【0016】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23が形成されている。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁部23の内周との間には隙間27が形成されている。更に、フランジ部22は、ばね部材30の取付部において半径方向に延在する外方突起22hを有する。
【0017】
図1において、ガイドスリーブ20のフランジ部22の左端上部と右端下部には略半円形状の突起22fが形成されている。また、フランジ部22には、各ばね部材30の取付位置に形成された一対のストッパ部25及び突起22cが形成されている。ストッパ部25は、ばね部材30の組付時におけるガイドの機能を有するものであり、図1に示すようにばね部材30の両脇を軸線方向に延在している。
【0018】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図3はばね部材30を示す図であり、図3(a)はばね部材30をエンジン側から見た正面図であり、図3(b)はその側面図であり、更に図3(c)はばね部材30をシフトフォーク側から見た図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部22に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、押圧部32はシール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。
【0019】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との交差部において、半径方向に突出するように形成された突出部34を有し、この突出部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の外方突起22hに対応している。また、ベース部31の上半部中央の両側には、矩形状のタブ31a、31bが形成されている。一方ベース部31の下半部は、二度折り曲げられて段部31cとなっている(図3(b)参照)。
【0020】
段部31cの両側下方端近傍においては、凹部である切欠き37が形成され(図3(c)参照)、更に段部31cの下縁中央には、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38の入口には、面取り39が形成されている。更に段部31cの中央には、矩形状開口36が形成されている。
【0021】
図4は、補強部材40を図1と同方向から見た図である。補強部材40は、円筒部41と、円筒部41に連結された円板状のアンビル部42と、アンビル部42の上端及び下端から軸線方向に延在するガイド部43とからなり、比較的肉厚の板をプレスし、その後焼入処理することによって形成される。これにより、シフトフォークとの接触部にて著しい摩耗が発生しないようにしている。また、アンビル部42をチタンコーティングすることにより著しい摩耗を防ぐこともできる。
【0022】
円筒部41は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する内径を有し、それにより補強部材40の半径方向の位置決めが達成されるようになっている。
【0023】
補強部材40のアンビル部42には、円周部に2つの小切欠42aと、2つの矩形状切欠42bが形成されている。この小切欠42aは取付時に、ガイドスリーブ20のフランジ部22の対応する位置に形成された突起22fと係合して、補強部材40の回り止めを達成している。矩形状切欠42bは、その底部中央から半径方向外方に向かって延在する舌部42cが形成されている。舌部42cは、図2において示されているように、2度小さく折り曲げられており、舌部42cがガイドスリーブ20のフランジ部22とばね部材30との間で保持され、補強部材40とガイドスリーブ30との分離が防止される。
【0024】
ストッパ部25は、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際にガイドする機能を有し、またタブ31a、31bと当接して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。なお、突起44はシフトフォークとクラッチレリーズ軸受とを結合するためのクリップ(不図示)を係合するためのものである。
【0025】
図5は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、上述したように突起22cが形成されている。凸部である突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。
【0026】
次に、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。
図1において、図示しないシフトフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、シフトフォークより受ける大荷重を支持することができる。シフトフォークとアンビル部42とは滑り接触をするが、上述したようにアンビル部42はチタンコーティング又は焼入処理されているので摩耗は小さく抑えられる。クラッチレリーズ軸受装置は、シフトフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0027】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟み込むように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0028】
次に、クラッチレリーズ軸受装置の組付方法について説明する。 ガイドスリーブ20の本体21の周囲に、クラッチレリーズ軸受10および補強部材40が配置された後、図1の斜め上方及び斜め下方からばね部材30が、ガイドスリーブ20のガイド部25にガイドされつつ挿入される。ばね部材30は外周の一方向から挿入できるようにしているため、組付が容易となっている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20の突起22cを弾性変形しながら乗り越えて、切欠き37が突起22cに係合し、かつタブ31a、31bがそれぞれ、一対のストッパ25に当接した段階で所定の形状に戻り、組付が完了する。斜面22dの作用によりばね部材30の挿入は比較的容易に行われるが、一旦係合した後は台部22eの作用により不用意に抜けないように構成されている。
【0029】
ところで、ばね部材30の剛性が高すぎると、ガイドスリーブ20は樹脂製であることから、突起乗り上げ時に突起22cを削ってしまうおそれがある。従ってばね部材30を適切な剛性とすることが必要である。ここで従来技術においては、ベース部31の切欠き38を大きく内方に追い込むことによって、その剛性を適切なものとしていた。しかしながら、本実施の形態においては、補強部材40の舌部42cをかかる切欠き38の内方に延在させることによって補強部材40を保持する構成となっているので、切欠き38を大きく内方に追い込むことができない。そこで、図3に示すように、切欠き38を内方に追い込む代わりに、ベース部31に矩形状開口36を形成してばね部材30の剛性を適度に低くし、それによりばね部材30の組付時に突起22cが削られることを防止するのである。
【0030】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。更に、回転輪は内輪でなく外輪であっても本願発明の構成は可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置によれば、連結部材において、凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整しているので、例えば、半径方向外方に延在する舌部を補強部材に設けた場合でも、前記連結部材により前記舌部を押さえることができ、従って前記補強部材の設計の自由度が広がることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。
【図2】図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】ばね部材30を示す図であり、図3(a)はばね部材30をエンジン側から見た正面図であり、図3(b)はその側面図であり、更に図3(c)はばね部材30をシフトフォーク側から見た図である。
【図4】補強部材40を図1と同方向から見た図である。
【図5】図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。
【図6】従来技術による補強部材140とばね部材130の斜視図である。
【符号の説明】
10………クラッチレリーズ軸受
20………ガイドスリーブ
30………ばね部材
36………矩形状開口
40………補強部材
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるシフトフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、シフトフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをシフトフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にシフトフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば特願平7−333452号に示すようにダイヤフラムスプリングとシフトフォークとの間に設けている。
【0004】
ところで、この特願平7−333452号に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、ガイドスリーブが樹脂製であることから、シフトフォークとの当接部に過大な摩耗が生じないよう、鋼板製の補強部材をシフトフォークとガイドスリーブとの間に設けるようにしている。
【0005】
図6は、特願平7−333452号に開示されているような従来技術による補強部材140とばね部材130の斜視図である。補強部材140は、ガイドスリーブ(不図示)に互いのフランジを重合させ、更に軸受(不図示)を固定するばね部材130を利用して、ガイドスリーブに取り付けられるようになっている。
【0006】
ばね部材130は、補強部材140のフランジ部に形成された切欠141内に挿入されるようになっている。ここで、切欠141はC字形状をしており、ばね部材130を切欠141内に挿入すると、切欠141の入口の対向突起141a、141bがばね部材130とガイドスリーブとの間に侵入するようになっており、それにより補強部材140とガイドスリーブとの分離が防止されるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、ばね部材130のベース部131は、その先端部をガイドスリーブ上の係止突起(不図示)に係止させることにより取り付けられている。従って、切欠141の対向突起141a、141bは、かかる係止突起を逃げるため、補強部材141のフランジ外周部に配置せざるを得ない。
【0008】
一方、クラッチレリーズ軸受装置の周囲部品の設計において、補強部材の外周はなるべく小さくすることが望まれているという実状がある。しかるに、切欠141の対向突起141a、141bを設ける位置は、ばね部材130のベース部131の長さlにより決定されてしまうため、かかる構成では補強部材141の外径を大幅に小さくすることは困難である。
【0009】
これに対し、切欠141の入口に対向突起141a、141bを廃し、その代わりに切欠141の底部に同様な機能を有する舌部を設けるという提案がなされている。かかる提案によれば、補強部材の外径を容易に小さくすることができ、クラッチレリーズ軸受装置のコンパクト化が図れる。しかしながら、ばね部材130は、ガイドスリーブに形成された突起を、弾性変形することにより乗り越えて組み付けられるようになっているため、弾性変形しやすいように適度に低い剛性が要求されている。しかるに従来技術においては、その要求をベース部131に長い切欠138を形成することにより充足している。
【0010】
以上より明らかであるが、従来技術のようにばね部材130に長い切欠138を形成している限り、ばね部材130が切欠141の底部に設けた舌部を押さえることはできない。よって補強部材の保持を確保するためには、切欠141の入口に対向突起141a、141bを形成さざるを得ず、設計の自由度が低下していた。
【0011】
そこで本願発明は、補強部材の保持を確保しつつも補強部材の設計の自由度を拡大させることのできるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
ガイド軸上に摺動自在に嵌合された軸受保持部材と、
該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記軸受保持部材には凸部が設けられ、前記連結部材には凹部が設けられ、組付時において、前記連結部材が弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えるようになっており、更に前記凸部が前記凹部に係合した時点で前記連結部材が元の形状に復帰するようになっていて、
前記連結部材には、前記凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整している。
【0013】
【作用】
本願発明によれば、前記連結部材において、前記凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整しているので、例えば、半径方向外方に延在する舌部を補強部材に設けた場合でも、前記連結部材により前記舌部を押さえることができ、従って前記補強部材の設計の自由度が広がることとなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1は、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。図2は、図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0015】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30と、補強部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。
【0016】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23が形成されている。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁部23の内周との間には隙間27が形成されている。更に、フランジ部22は、ばね部材30の取付部において半径方向に延在する外方突起22hを有する。
【0017】
図1において、ガイドスリーブ20のフランジ部22の左端上部と右端下部には略半円形状の突起22fが形成されている。また、フランジ部22には、各ばね部材30の取付位置に形成された一対のストッパ部25及び突起22cが形成されている。ストッパ部25は、ばね部材30の組付時におけるガイドの機能を有するものであり、図1に示すようにばね部材30の両脇を軸線方向に延在している。
【0018】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図3はばね部材30を示す図であり、図3(a)はばね部材30をエンジン側から見た正面図であり、図3(b)はその側面図であり、更に図3(c)はばね部材30をシフトフォーク側から見た図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部22に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、押圧部32はシール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。
【0019】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との交差部において、半径方向に突出するように形成された突出部34を有し、この突出部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の外方突起22hに対応している。また、ベース部31の上半部中央の両側には、矩形状のタブ31a、31bが形成されている。一方ベース部31の下半部は、二度折り曲げられて段部31cとなっている(図3(b)参照)。
【0020】
段部31cの両側下方端近傍においては、凹部である切欠き37が形成され(図3(c)参照)、更に段部31cの下縁中央には、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38の入口には、面取り39が形成されている。更に段部31cの中央には、矩形状開口36が形成されている。
【0021】
図4は、補強部材40を図1と同方向から見た図である。補強部材40は、円筒部41と、円筒部41に連結された円板状のアンビル部42と、アンビル部42の上端及び下端から軸線方向に延在するガイド部43とからなり、比較的肉厚の板をプレスし、その後焼入処理することによって形成される。これにより、シフトフォークとの接触部にて著しい摩耗が発生しないようにしている。また、アンビル部42をチタンコーティングすることにより著しい摩耗を防ぐこともできる。
【0022】
円筒部41は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する内径を有し、それにより補強部材40の半径方向の位置決めが達成されるようになっている。
【0023】
補強部材40のアンビル部42には、円周部に2つの小切欠42aと、2つの矩形状切欠42bが形成されている。この小切欠42aは取付時に、ガイドスリーブ20のフランジ部22の対応する位置に形成された突起22fと係合して、補強部材40の回り止めを達成している。矩形状切欠42bは、その底部中央から半径方向外方に向かって延在する舌部42cが形成されている。舌部42cは、図2において示されているように、2度小さく折り曲げられており、舌部42cがガイドスリーブ20のフランジ部22とばね部材30との間で保持され、補強部材40とガイドスリーブ30との分離が防止される。
【0024】
ストッパ部25は、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際にガイドする機能を有し、またタブ31a、31bと当接して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。なお、突起44はシフトフォークとクラッチレリーズ軸受とを結合するためのクリップ(不図示)を係合するためのものである。
【0025】
図5は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、上述したように突起22cが形成されている。凸部である突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。
【0026】
次に、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。
図1において、図示しないシフトフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、シフトフォークより受ける大荷重を支持することができる。シフトフォークとアンビル部42とは滑り接触をするが、上述したようにアンビル部42はチタンコーティング又は焼入処理されているので摩耗は小さく抑えられる。クラッチレリーズ軸受装置は、シフトフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0027】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟み込むように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0028】
次に、クラッチレリーズ軸受装置の組付方法について説明する。 ガイドスリーブ20の本体21の周囲に、クラッチレリーズ軸受10および補強部材40が配置された後、図1の斜め上方及び斜め下方からばね部材30が、ガイドスリーブ20のガイド部25にガイドされつつ挿入される。ばね部材30は外周の一方向から挿入できるようにしているため、組付が容易となっている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20の突起22cを弾性変形しながら乗り越えて、切欠き37が突起22cに係合し、かつタブ31a、31bがそれぞれ、一対のストッパ25に当接した段階で所定の形状に戻り、組付が完了する。斜面22dの作用によりばね部材30の挿入は比較的容易に行われるが、一旦係合した後は台部22eの作用により不用意に抜けないように構成されている。
【0029】
ところで、ばね部材30の剛性が高すぎると、ガイドスリーブ20は樹脂製であることから、突起乗り上げ時に突起22cを削ってしまうおそれがある。従ってばね部材30を適切な剛性とすることが必要である。ここで従来技術においては、ベース部31の切欠き38を大きく内方に追い込むことによって、その剛性を適切なものとしていた。しかしながら、本実施の形態においては、補強部材40の舌部42cをかかる切欠き38の内方に延在させることによって補強部材40を保持する構成となっているので、切欠き38を大きく内方に追い込むことができない。そこで、図3に示すように、切欠き38を内方に追い込む代わりに、ベース部31に矩形状開口36を形成してばね部材30の剛性を適度に低くし、それによりばね部材30の組付時に突起22cが削られることを防止するのである。
【0030】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。更に、回転輪は内輪でなく外輪であっても本願発明の構成は可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置によれば、連結部材において、凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整しているので、例えば、半径方向外方に延在する舌部を補強部材に設けた場合でも、前記連結部材により前記舌部を押さえることができ、従って前記補強部材の設計の自由度が広がることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。
【図2】図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】ばね部材30を示す図であり、図3(a)はばね部材30をエンジン側から見た正面図であり、図3(b)はその側面図であり、更に図3(c)はばね部材30をシフトフォーク側から見た図である。
【図4】補強部材40を図1と同方向から見た図である。
【図5】図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。
【図6】従来技術による補強部材140とばね部材130の斜視図である。
【符号の説明】
10………クラッチレリーズ軸受
20………ガイドスリーブ
30………ばね部材
36………矩形状開口
40………補強部材
Claims (1)
- 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
ガイド軸上に摺動自在に嵌合された軸受保持部材と、
該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記軸受保持部材には凸部が設けられ、前記連結部材には凹部が設けられ、組付時において、前記連結部材が弾性変形しつつ前記凸部を乗り越えるようになっており、更に前記凸部が前記凹部に係合した時点で前記連結部材が元の形状に復帰するようになっていて、
前記連結部材には、前記凹部の近傍に開口を形成し、それにより前記連結部材の剛性の程度を調整しているクラッチレリーズ軸受装置。
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JPH10246248A JPH10246248A (ja) | 1998-09-14 |
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- 1997-03-04 JP JP06393597A patent/JP3804160B2/ja not_active Expired - Fee Related
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