JP3956413B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるシフトフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、シフトフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをシフトフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にシフトフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば特願平8−259745号に示されているように、ダイヤフラムスプリングとシフトフォークとの間に設けている。
【0004】
ところで、この特願平8−259745号に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、軸受の内輪の先端部がダイヤフラムスプリングに対向している。一方軸受の外輪の後端は、ガイドスリーブのフランジ部と当接している。更に、板ばねにより軸受外輪とフランジ部とを軸線方向に挟み込むようにして、軸受はガイドスリーブに取り付けられている。シフトフォークの先端により補強部材を介してガイドスリーブのフランジ部が後方から押されれば、内輪先端部がダイヤフラムスプリングに当接するよう、軸受装置全体が軸線方向に移動可能となっている。
【0005】
ここで軸受外輪は、ガイドスリーブのフランジ部に対して半径方向に移動自在となるよう、板ばねによって付勢されているため、ガイドスリーブのフランジ部が後方よりシフトフォークに押されて軸受の外輪がクラッチのダイヤフラムスプリングに当接したときに、互いの間に偏心があっても、自動的に軸受が調心されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図10は、かかる従来技術によるクラッチレリーズ軸受装置の軸線方向一部断面図である。図10において、ばね部材30の押圧部32近傍に半径方向(下向き)の力Fが印加されたとすると、ばね部材30は反時計回りのモーメントを受けて、押圧部32が軸受外輪12から離隔する方向に曲がろうとする。しかしながら、かかる場合にはばね部材30の押圧部32が軸受外輪12から外れる前に、ばね部材30の凸部34の内面が、ガイドスリーブ120の外方突起122hと干渉し、それ以上の曲がりを制限することになる。これにより、押圧部32が外輪12から離隔することを防止し、もってばね部材30の脱落を防止するものである。
【0007】
ところで、図10において、ばね部材30を引っ張る力F(あるいは、クラッチレリーズ軸受装置の調心機能に基づき外輪12が図中下方に移動したときの、外輪12と押圧部32との間に作用する摩擦力F)が過大な場合には、ばね部材30の凸部34の内面から外方突起122hへ軸線方向に向かう大きな力が印加され、外方突起122hの付け根122iに過大な応力が生じる。しかるに、ガイドスリーブ20を軽量化等のため樹脂製とすることがあるが、その場合にはかかる軸線方向力により外方突起122hの曲がり等が生ずるおそれがあった。外方突起122hがたとえ曲がっても、直ちにクラッチレリーズ軸受装置の機能自体が損なわれるわけではないが、上述したばね部材30の脱落を防止することができなくなるおそれがある。
【0008】
そこで本願発明は、コストを大幅に増加させることなく、信頼性を高めたクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置は、互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転可能な他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、半径方向に延びる外方延在部とを備える軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結部材は、前記軸受保持部材の前記外方延在部に形成された半径方向に突出する外方突起に対応して設けられた第1の凹部と前記第1の凹部よりも半径方向小径側で前記第1の凹部から軸方向両側に広がって該第1の凹部より大きな幅を有する第2の凹部との異なる2以上の幅を有する凹部を有し、
前記連結部材の前記第2の凹部の一方の端部は前記外方延在部に係合しており、前記連結部材の前記第2の凹部の他方の端部は、前記クラッチレリーズ軸受の固定輪に係合し、前記外方延在部と前記固定輪とが近接する方向に押圧力を印加するようになっており、
前記第1の凹部と前記外方突起とは、前記連結部材の固定輪側の端部に、半径方向に向かう力が印加されたときに、前記連結部材が傾くことによって、前記端部が前記固定輪から外れる前に前記第1の凹部が前記外方突起と接触し、それにより前記連結部材の傾きが制限されるようになっており、
前記第1の凹部が前記外方突起と接触したときに、前記外方突起を含む前記外方延在部に生じる応力を緩和する緩和手段を有し前記緩和手段は前記外方突起に設けられていることを特徴とする。
【0010】
【作用】
本願発明によれば、前記凹部の一つが前記外方延在部と接触したときに、前記外方延在部に生じる応力を緩和する緩和手段を設けているので、かかる接触時に大きな力が前記連結部材から前記外方延在部へ印加されても、外方延在部の曲がり等を極力防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施例を図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1は、本願発明の実施例であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。図2は、図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0012】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。また、内輪11の当接部11aと反対側の端部はプレスによるブランク加工のままとし、切削加工を行わず製作コストを安くするようにしている。
【0013】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向に突出するガイド部25(図1)とからなる。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁部23の内周との間には隙間27が形成されており、フランジ部22の中程には水平溝26が設けられており、この水平溝26にはシフトフォークを固定するクリップ(不図示)が挿入されるようになっている。
【0014】
更に、フランジ部22は、ばね部材30の取付部に半径方向に延在する外方突起22hを有する。ばね部材30と外方突起22hとの間には、スキマΔが存在する。ばね部材30における外輪12の当接面の、鉛直方向に対する傾き角αは0乃至5度である。
【0015】
図3は、ガイドスリーブ20を図1と同一方向に見た図であり、図4は、図3のガイドスリーブ20をIV方向に見た部分拡大図である。図3において、ガイドスリーブ20のフランジ部22の水平方向端部には突起22fが形成されている。
また、フランジ部22には、各ばね部材30の取付位置に形成されたストッパ22gと、一対の突起22cが形成されている。フランジ部22の内方略全面部22aは、後述する補強部材40の板厚・形状に合わせてフランジ部22の周辺より低くなっているが、ばね部材30の嵌合する部分22bは、それより高くなっている。ガイド部25は、ばね部材30の組付時にガイドの機能を有するものであり、図1に示すようにばね部材30の両脇を軸線方向に延在している。
【0016】
フランジ部22から半径方向に突出する幅広板状の外方突起22hが設けられている。図5は、フランジ部22とともに外方延在部を構成する外方突起22hの斜視図である。図4,5から明らかなように、外方突起22hの両端において、緩和手段である一対の傾斜部22jが設けられている。すなわち図5に示すように、外方突起22hの両端の断面形状は台形となっている。なお、傾斜部22j間の距離W1は、ばね部材30の幅W2(図6)より大きくなっている。
【0017】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図6は、ばね部材30の斜視図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、押圧部32はシール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。
【0018】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との略中間において、半径方向に突出するように形成された凸部34を有し、この凸部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の外方突起22hに対応している。また、ベース部31の両側部31aにおける下方端近傍においては、切欠き37が形成され、更にその下縁部31bには、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38と下縁部31bとの交差部には、面取り39が形成されている。なお、ばね部材30は、凸部34の裏側に第1の凹部を形成し、ベース部31と押圧部32との間に第2の凹部を形成する。
【0019】
図7は、補強部材40の斜視図である。補強部材40は、円筒部41と、円筒部41の略中央から上方及び下方へ突出した板状のアンビル部42と、円筒部41の端部から半径方向に延在するフランジ部43とからなり、比較的肉厚の板をプレスし、その後焼入処理することによって形成される。これにより、シフトフォークとの接触部にて著しい摩耗が発生しないようにしている。また、アンビル部42をチタンコーティングすることにより著しい摩耗を防ぐこともできる。
【0020】
円筒部41は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する径を有し、それにより補強部材40の半径方向の位置決めが達成されるようになっている。円筒部41の上方及び下方は、アンビル部42と対応するように延長されて矩形部41aを形成している。この矩形部41aは、シフトフォークをガイドする機能と、アンビル部の剛性を確保する機能とを有する。アンビル部42とフランジ部43との間には段差が形成されている。
【0021】
補強部材40のフランジ部43には、円周部に矩形状切欠43aが形成されており、この切欠43aは取付時に、ガイドスリーブ20のフランジ部22の対応する位置に形成された突起22fと係合して、補強部材40の回り止めを達成している。更に、フランジ部43には、ガイドスリーブ20の突起22cとストッパ22g及び部分22bを貫通させるためのC字形切欠き43bが形成されている。
【0022】
尚、ガイドスリーブ20のストッパ22gは、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際に、ばね部材30の切欠き38に係合して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。ばね部材30の面取り39は、その挿入を容易にする機能を有する。
【0023】
図8は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をVIII−VIII線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、上述したように突起22cが形成されている。突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。フランジ部22の部分22a(図3)と部分22bの段差は補強部材40の板厚より大きいため、そこに補強部材40をセットすると、ばね部材30と補強部材40との間にスキマδが生ずるようになっている。
【0024】
次に、本願発明の実施例であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。
図1において、図示しないシフトフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、シフトフォークより受ける大荷重を支持することができる。シフトフォークとアンビル部42とは滑り接触をするが、上述したようにアンビル部42はチタンコーティング又は焼入処理されているので摩耗は小さく抑えられる。クラッチレリーズ軸受装置は、シフトフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0025】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟み込むように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0026】
ばね部材30と補強部材40とは、図8に示すようにスキマΔが生ずる程度に離隔しているため、クラッチレリーズ動作に伴いシフトフォークから補強部材40に軸線に直角な方向の力が印加された場合でも、かかる力はばね部材30に伝達されることはない。したがって、ばね部材30は、シフトフォークからの力で変形等することはない。
【0027】
次に、クラッチレリーズ軸受装置の組付方法について説明する。 ガイドスリーブ20の本体21の周囲に、クラッチレリーズ軸受10および補強部材40が配置された後、図1の斜め上方及び斜め下方からばね部材30が、ガイドスリーブ20のガイド部25にガイドされつつ挿入される。ばね部材30は外周の一方向から挿入できるようにしているため、組付が容易となっている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20の突起22cを弾性変形しながら乗り越えて、切欠き37が突起22cに係合し、かつ切欠き38がストッパ22gに当接した段階で所定の形状に戻り、組付が完了する。斜面22dの作用によりばね部材30の挿入は比較的容易に行われるが、一旦係合した後は台部22eの作用により不用意に抜けないように構成されている。
【0028】
ここで、ばね部材30の剛性が高すぎると、ガイドスリーブ20は樹脂製であることから、突起乗り上げ時に突起22cを削ってしまうおそれがあるので、適切な剛性とすることが必要である。そこで、図6に示すように、本実施の形態においては、l1=5乃至8mm、l2=1乃至4mm、l3=1.5乃至2.5mm、 l4=2乃至4mm、l5=0.5乃至2.0mmとし、適切な剛性を得ている。かかる場合、突起22cの高さを0.6乃至0.9mm、ばね部材30の板厚を0.6乃至0.9mmとすれば適切な剛性が得られるので、ばね部材30の組付時に突起22cが削られることがない。
【0029】
図9は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をIX−IX線で切断して矢印方向に見た図である。図9において、ばね部材30の押圧部32近傍に半径方向の力Fが印加されたとすると、ばね部材30は反時計回りのモーメントを受けて、押圧部32が軸受外輪12から離隔する方向に曲がろうとする。しかしながら、スキマΔ(図2)が適切な値となっているため、かかる場合にはばね部材30の押圧部32が軸受外輪12から外れる前に、凸部34の内面が外方突起22hと干渉し、それ以上の曲がりを制限することになる。これにより、押圧部32が外輪12から離隔することを防止し、もってばね部材30が脱落することを防止するものである。
【0030】
ところで、図9において、ばね部材30を引っ張る力F(あるいは、クラッチレリーズ軸受装置の調心機能に基づき外輪12が図中下方に移動したときの、外輪12と押圧部32との間に作用する摩擦力F)が過大な場合には、ばね部材30の凸部34の内面から外方突起22hへ軸線方向に向かう大きな力が印加される。しかしながら、外方突起22hの両端は断面が台形となっており(図5)、かかる力が大きなものであっても外方突起22hの付け根の応力を小さく維持できる。すなわち、かかる力に抗して外方突起22hの曲がり等を極力防止することができる。なお、外方突起22hの両端のみならず全体を一様に台形断面とすれば、その剛性はより向上することとなるが、組付時にばね部材30の凸部34と外方突起22hとが干渉してしまう(図9参照)。そこで、凸部34と干渉しない外方突起22hの両端のみを台形断面としているのである。
【0031】
なお、本実施の形態では、ばね部材30と外方突起22hとの間にスキマを持たせた構造としてあるが、組込状態ではスキマなく当初から接触している構造とすることも可能である。
【0032】
更に、従来構造によるクラッチレリーズ軸受装置の場合、軸受外輪12の肉厚が薄いと、許容偏心量の範囲内でクラッチレリーズ軸受10を動かしたとき、ばね部材30の先端の押圧部32が外輪12の内部から外れて(つまり内側に落ち込んで)しまうことがある。ばね部材30の全てが同じような接触状態(先端32aから外輪全周が内側に落ち込んだ状態)になれば、外輪12はどちらの方向にもスムーズに動けるようになる。しかしながら、ばね部材30と内輪11とが干渉しないような寸法としているため、押圧部32が外れた部分と180度反対側の押圧部32は、外輪12の端面から外れないこととなる。このような状態になると、軸受外輪12は、抵抗の大きい方(すなわちばね部材30を押し広げる方向)には動きにくくなり、このため調心機能が十分発揮できないおそれがある。
【0033】
そこで、本実施の形態においては、図2に示すようにばね部材30の取付状態において、押圧部32の鉛直方向に対する角度(接触角)αを0乃至5度として、過なる半径方向に外輪12が移動しても、押圧部32の先端32aが外輪12の内径側に落ち込まないようにしている。また、ばね部材30の断面高さを小さくできるので、ばね部材30と内輪11との干渉がないよう設計することが容易となる。なお、あまり大きな接触角は問題があるので、5度程度にとどめるのが好ましい。
【0034】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。更に、回転輪は内輪でなく外輪であっても本願発明の構成は可能となる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置によれば、連結部材の凹部の一つが外方延在部と接触したときに、前記外方延在部に生じる応力を緩和する緩和手段を設けているので、かかる接触時に大きな力が前記連結部材から前記外方延在部へ印加されても、外方延在部の曲がり等を極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。
【図2】図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】ガイドスリーブ20を図1と同一方向に見た図である。
【図4】図3のガイドスリーブ20をIV方向に見た部分拡大図である。
【図5】外方突起22hの斜視図である。
【図6】ばね部材30の拡大斜視図である。
【図7】補強部材40の斜視図である。
【図8】図1のクラッチレリーズ軸受装置をVIII−VIII線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。
【図9】図1のクラッチレリーズ軸受装置をIX−IX線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。
【図10】従来技術によるクラッチレリーズ軸受装置の軸線方向一部断面図である。
【符号の説明】
10………クラッチレリーズ軸受
20………ガイドスリーブ
22j………傾斜部
30………ばね部材
40………補強部材
Claims (3)
- 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転可能な他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、半径方向に延びる外方延在部とを備える軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結部材は、前記軸受保持部材の前記外方延在部に形成された半径方向に突出する外方突起に対応して設けられた第1の凹部と前記第1の凹部よりも半径方向小径側で前記第1の凹部より大きな幅を有する第2の凹部との異なる2以上の幅を有する凹部を有し、
前記連結部材の前記第2の凹部の一方の端部は前記外方延在部に係合しており、前記連結部材の前記第2の凹部の他方の端部は、前記クラッチレリーズ軸受の固定輪に係合し、前記外方延在部と前記固定輪とが近接する方向に押圧力を印加するようになっており、
前記第1の凹部と前記外方突起とは、前記連結部材の固定輪側の端部に、半径方向に向かう力が印加されたときに、前記連結部材が傾くことによって、前記端部が前記固定輪から外れる前に前記第1の凹部が前記外方突起と接触し、それにより前記連結部材の傾きが制限されるようになっており、
前記第1の凹部が前記外方突起と接触したときに、前記外方突起を含む前記外方延在部に生じる応力を緩和する緩和手段を有し前記緩和手段は前記外方突起に設けられていることを特徴とするクラツチレリーズ軸受装置。 - 前記緩和手段は、傾斜部であることを特徴とする請求項1に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
- 前記外方突起は前記外方延在部の外周面に周方向に部分的にかつ軸方向において外周面幅内の一部から半径方向に突出しており、
前記第2の凹部は前記第1の凹部から軸方向両側に広がって該第1の凹部より大きな幅を形成しており、そして
前記第1の凹部と前記外方突起との軸方向の間には隙間が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
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1997
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