JP3752681B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるシフトフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、シフトフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをシフトフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にシフトフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば実開昭56−7124号に示されているように、ダイヤフラムスプリングとシフトフォークとの間に設けている。
【0004】
この実開昭56−7124号に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、軸受の外輪の先端部がダイヤフラムスプリングに対向し、一方軸受の内輪の後端には、フランジ部がガイドスリーブのフランジ部と対向して設けられている。また板ばねによりフランジ部同士を軸線方向に挟み込むようにして、軸受はガイドスリーブに取り付けられている。シフトフォークの先端によりガイドスリーブのフランジ部が後方から押されれば、外輪先端部がダイヤフラムスプリングに当接するよう、軸受装置全体が軸線方向に移動可能となっている。
【0005】
ここで内輪のフランジ部は、ガイドスリーブのフランジ部に対して半径方向に移動自在となるよう、板ばねによって付勢されているため、ガイドスリーブのフランジ部が後方よりシフトフォークに押されて軸受の外輪がクラッチのダイヤフラムスプリングに当接したときに、互いの間に偏心があっても、自動的に軸受が調心されるようになっている。
【0006】
ところで、従来においてはクラッチレリーズ装置の軸受保持部材(ガイドスリーブ)は鋼製であったが、近年部品の軽量化等の観点から、それを樹脂化したいとの要求がでてきた。しかしながら、単にガイドスリーブを樹脂化したのみでは、ガイドスリーブのフランジ部がシフトフォークからの力を受ける部分であることより、当接部の摩耗や変形等を招来することとなる。そこで、軸受の半径方向移動を抑えるための板ばねを鋼製として、シフトフォークとの当接部に設置することにより、当接部の摩耗や変形を防止することが考えられている。
【0007】
ところが、上述したような構成では、以下のような問題がある。軸受を調心可能とすべく半径方向に移動可能に保持するには、板ばねは2〜15kgf程度の軽い荷重で、軸受の回転輪とガイドスリーブのフランジ部とを挟み込まねばならない。しかしながら、例えば板ばねの板厚を1mm以上と比較的厚く設定した場合、必要な各部品の寸法許容差の問題から、その製作が困難となる。なぜなら板厚を厚くすると板ばねのばね常数が高くなり、少しの寸法誤差でも挟みつけ力が大きくバラつくため、寸法誤差を厳格に管理しなくてはならないからである。一方、シフトフォークの押圧荷重は極めて高いため、板ばねによりその荷重を受けようとした場合、シフトフォークの当接する面の板厚が比較的薄いと、板ばねの裏面に当たる樹脂性のフランジ部にたわみやへこみを生じることとなり、それにより板ばねの割れを招来する恐れがある。これを防止するには、例えば板ばねの板厚を1.5mm以上に設定する必要がある。しかしながら、板厚をこのように厚くすると上述した寸法管理の問題が生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を回避すべく、板ばねと別個に、補強板をシフトフォークとガイドスリーブのフランジ部との間に設けて、シフトフォークからの押圧荷重の一部を受けるようにし、それにより板ばねの板厚を比較的薄くする構成が考えられている。しかしながら、かかる構成においては以下に述べる問題がある。すなわち、シフトフォークは所定点周りに枢動するから、シフトフォークの当接点には軸線に直角な方向の力がある程度生じる。したがって、板ばねに直接シフトフォークが当接する場合では勿論のこと、たとえ補強板にシフトフォークが当接する場合でも補強板と板ばねとが密着していると、板ばねにも軸線に直角な方向の力が伝達され、それにより板ばね及び板ばねと接するガイドスリーブが変形等して機能を損なう恐れがある。
【0009】
本願発明の目的は、シフトフォークからの荷重に十分抗することができるにもかかわらず、信頼性をより向上させたクラッチレリーズ軸受装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決する手段】
上記目的を達成すべく、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、フランジ部とを備える樹脂製の軸受保持部材と、
該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結部材と前記軸受保持部材との間に設けられ、該入力部材から直接入力を受けて前記軸受保持部材のフランジ部に伝達する補強部材が設けられており、前記連結部材と前記補強部材との間には、軸線方向に所定のスキマが設けられ、それにより前記入力部材からの力が前記補強部材より前記連結部材に伝達されることを防止するようになっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本願発明のクラッチレリーズ軸受によれば、前記補強部材は前記入力部材から直接入力を受けると共に、前記連結部材と前記補強部材との間には、軸線方向に所定のスキマが設けられているので、前記入力部材からの力が前記補強部材より前記連結部材に伝達されることが防止され、それにより前記連結部材等の変形等が防止されるようになっている。
【0012】
【実施例】
以下、本願発明の実施例を図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1は、本願発明の実施例であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。図2は、図1のII-II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0013】
図2において、クラッチレリーズ装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。また、内輪11の当接部11aと反対側の端部はプレスによるブランク加工のままとし、切削加工を行わず製作コストを安くするようにしている。
【0014】
一方、ガイドスリーブ20は樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向に突出するガイド部25(図1)とからなる。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁23の内周との間には隙間27が形成されている。フランジ部22の中程には、水平溝26が設けられており、この水平溝26にはシフトフォークを固定するクリップ(不図示)が挿入されるようになっている。
【0015】
図3は、ガイドスリーブ20を図1と同一方向に見た図であり、図4は、図3のガイドスリーブ20をIV方向に見た部分拡大図である。図3において、ガイドスリーブ20のフランジ部22の水平方向端部には、突起22fが形成されている。また、フランジ部22には、ばね部材30の取付位置に形成されたストッパ22gと、一対の突起22cが形成されている。フランジ部22の内方略全面部22aは、後述する補強部材40の板厚・形状に合わせてフランジ部22の周辺より低くなっているが、ばね部材30の嵌合する部分22bは、それより高くなっている。ガイド部25はばね部材30の組付時にガイドの機能を有するものであり、図4に示すようにばね部材30の両わきを軸線方向に延在している。
【0016】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図5は、ばね部材30の斜視図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、押圧部32はシール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。
【0017】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との略中間において、半径方向に突出するように形成された凸部34を有し、この凸部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の端部に対応している。また、ベース部31の両側部31aにおける下方端近傍においては、切欠き37が形成され、更にその下縁部31bには、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38と下縁部31bとの交差部には、面取り39が形成されている。
【0018】
図6は、補強部材40の斜視図である。補強部材40は、円筒部41と、円筒部41の略中央から上方および下方へ突出した板状のアンビル部42と、円筒部41の端部から半径方向に延在するフランジ部43とからなり、比較的肉厚の薄い板をプレスし、その後焼入処理することによって形成される。これによりシフトフォークとの接触部にて著しい摩耗が発生しないようにしている。
【0019】
円筒部41は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する径を有し、それにより補強部材40の半径方向の位置決めが達成されるようになっている。円筒部41の上方および下方は、アンビル部42と対応するように延長されて矩形部41aを形成している。この矩形部41aは、シフトフォークをガイドする機能と、アンビル部の剛性を確保する機能とを有する。アンビル部42とフランジ部43との間には段差が形成されている。
【0020】
補強部材40のフランジ部43には、円周部に矩形状切欠43aが形成されており、この切欠43aは取付時に、ガイドスリーブ20のフランジ部22の対応する位置に形成された突起22fと係合して、補強部材40の回り止めを達成している。更に、フランジ部43には、ガイドスリーブ20の突起22cとストッパ22gを貫通させるためのC字形切欠き43bが形成されている。
【0021】
尚、ガイドスリーブ20のストッパ22gは、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際に、ばね部材30の切欠き38に係合して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。ばね部材30の面取り39は、その挿入を容易にする機能を有する。
【0022】
図7は、図1のVII-VII線に沿って切断した部分を拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、更に突起22cが形成されている。突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。フランジ部22の部分22a(図3)と22bの段差は補強部材40の板厚より大きいため、そこに補強部材40をセットすると、ばね部材30と補強部材40との間にスキマΔが生ずるようになっている。
【0023】
次に、本願発明の実施例であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。
図1において、図示しないシフトフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、シフトフォークより受ける大荷重を受けることができる。クラッチレリーズ軸受装置は、シフトフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0024】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それにより軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施例のように外輪をばね部材30で挟みこむように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0025】
ばね部材30と補強部材40とは、図7に示すようにスキマΔが生ずる程度に離隔しているため、クラッチレリーズ動作に伴いシフトフォークから補強部材40に軸線に直角な方向の力が印加された場合でも、かかる力はばね部材30に伝達されることはない。したがって、ばね部材30は、シフトフォークからの力で変形等することはない。
【0026】
次に、クラッチレリーズ軸受装置の組付方法について説明する。 ガイドスリーブ20の本体21の周囲に、クラッチレリーズ軸受10および補強部材40が配置された後、図1の斜め上方及び斜め下方からばね部材30が、ガイドスリーブ20のガイド部25にガイドされつつ挿入される。ばね部材30は外周の一方向から挿入できるようにしているため、組付が容易となっている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20の突起22cを弾性変形しながら乗り越えて、切欠き37が突起22cに係合し、かつ切欠き38がストッパ22gに当接した段階で所定の形状に戻り、組付が完了する。斜面22dの作用によりばね部材30の挿入は比較的容易に行われるが、一旦係合した後は台部22eの作用により不用意に抜けないように構成されている。
【0027】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。更に、回転輪は内輪でなく外輪であっても本願発明の構成は可能となる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明のクラッチレリーズ装置によれば、補強部材は入力部材から直接入力を受けると共に、連結部材と前記補強部材との間には、軸線方向に所定のスキマが設けられているので、前記入力部材からの力が前記補強部材より前記連結部材に伝達されることが防止され、それにより前記連結部材等の変形等が防止されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。
【図2】図1のII-II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】ガイドスリーブ20を図1と同一方向に見た図である。
【図4】図3のガイドスリーブ20をIV方向に見た部分拡大図である。
【図5】ばね部材30の拡大斜視図である。
【図6】補強部材40の斜視図である。
【図7】図1のVII-VII線に沿って切断した部分を拡大して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
10………クラッチレリーズ軸受
20………ガイドスリーブ
30………ばね部材
40………補強部材

Claims (3)

  1. 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
    ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、フランジ部とを備える樹脂製の軸受保持部材と、
    該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
    前記連結部材と前記軸受保持部材との間には、入力部材から直接入力を受けて前記軸受保持部材のフランジ部に伝達する補強部材が設けられており、
    前記フランジ部は前記補強部材の板厚よりも大きい段差部を有し、前記段差部に補強部材を配置することで、前記連結部材と前記補強部材との間に、軸線方向に所定のスキマが生じ、それにより前記入力部材からの力が前記補強部材を介して前記連結部材に伝達されることを防止したことを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。
  2. 前記補強部材は、半径方向に位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
  3. 前記補強部材は前記軸受保持部材に対して回動を防止されていることを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
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