JP3864479B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるシフトフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、シフトフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをシフトフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にシフトフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、ダイヤフラムスプリングとシフトフォークとの間に設けている。
【0004】
図5は、従来技術と同様なクラッチレリーズ軸受装置の一例を示す軸線方向一部断面図である。図5に示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、軸受10の内輪11の先端部11aが不図示のダイヤフラムスプリングに対向している。一方軸受10の外輪12の後端は、ガイドスリーブ120のフランジ部122と当接している。更に、軸受10を囲う軸受ケース130から延在する爪部132を、フランジ部122及び補強部材40にかしめ、付勢ばね50の付勢力で軸受外輪12をフランジ部122に押圧するようにして、軸受10はガイドスリーブ120に取り付けられている。不図示のシフトフォークの先端によりガイドスリーブ120のフランジ部122が補強部材40を介して後方から押されれば、内輪先端部11aがダイヤフラムスプリングに当接するよう、軸受装置全体が軸線方向に移動可能となっている。
【0005】
ここで軸受外輪12は、ガイドスリーブ120のフランジ部122に対して半径方向に移動自在となるよう、付勢ばね50によって付勢されているため、ガイドスリーブ120のフランジ部122が後方よりシフトフォークに押されて軸受10の内輪先端部11aがクラッチのダイヤフラムスプリングに当接したときに、互いの間に偏心があっても、自動的に軸受10が調心されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来技術のクラッチレリーズ軸受装置においては、図5に示すように、ガイドスリーブ120のフランジ部122の肉厚部122aと、軸受ケース130との間にはスキマAが形成されているが、かかるスキマAが形成されていることにより、以下のような問題が生じている。補強部材40は、枢動するシフトフォークとの摩擦により半径方向の力を繰り返し受けるため、シフトフォークの動作と共に半径方向にわずかに移動するようになる。ここで、ガイドスリーブ120(フランジ部122)は半径方向にほとんど移動しないが、スキマAがあるため、軸受ケース130は補強部材40と共に半径方向へ移動してしまう。
【0007】
その結果、かしめられた爪部132が広がり、軸線方向の拘束力が減少する。すると、軸受10の外輪12が内輪11と共に回転しやすくなる。外輪12が回転すると、フランジ部122との間に滑りが生じ、滑り面において摩擦熱による発熱が生じる。フランジ部122を含むガイドスリーブ120は樹脂製であるので、かかる発熱により溶け出して変形する恐れがあり、それによりクラッチレリーズ軸受装置の機能を損なう恐れがある。このような不具合を防止するためには、各部材の材質や精度等を向上させなくてはならず、軸受装置全体のコスト増大を招来する。
【0008】
かかる問題点に鑑み、本願発明は、安価でありながら、長期間にわたって機能を維持できるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転自在な他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円管状本体と該円管状本体から半径方向に延在するフランジ部とを備え該フランジ部の一方の面側に枢動する入力部材により押圧されるアンビル部を有する軸受保持部材と、
該軸受保持部材の前記フランジ部の他方の面側に前記クラッチレリーズ軸受の前記一方の輪を該クラッチレリーズ軸受が半径方向に移動可能となるよう保持する連結手段とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結手段は、前記フランジ部に対して前記クラッチレリーズ軸受を保持するための円筒状支持部材と、該円筒状支持部材から軸方向に延在し、前記フランジ部の前記他方の面に対向する環状板部と前記一方の面に対向する把持片とを有し前記フランジ部を軸線方向に把持する把持部材とを一体に備え、
前記フランジ部の前記他方の面には、前記円筒状支持部材に当接して前記連結手段が前記フランジ部に対して半径方向に移動することを阻止する環状のストッパ部が形成されていて、前記連結手段の前記円筒状支持部材が前記環状のストッパ部に締め代を持って外嵌していることを特徴とする。
【0010】
【作用】
本願発明によれば、前記軸受保持部材には、前記連結手段が前記軸受保持部材に対して半径方向に移動することを阻止するストッパ部を更に設けてなるので、前記入力部材の枢動に伴い、前記アンビル部が半径方向に移動する方向に力を受けても、前記軸受保持部材と前記連結手段とは半径方向に相対移動しないようになっており、それにより前記連結手段の把持部における前記軸受保持部材に対する把持は維持され、もって前記連結手段における前記クラッチレリーズ軸受の保持を確保できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。
図1は、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。図2は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。図3は、図1のクラッチレリーズ軸受装置を矢印III方向から見た図である。
【0012】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、ガイドスリーブ20と、軸受ケース30と、シフトフォークからの入力を受ける補強部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18(ラビリンスタイプ)とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。また、内輪11の当接部11aと反対側の端部はプレスによるブランク加工のままとし、切削加工を行わず製作コストを安くするようにしてもよい。
【0013】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂(チタン酸カリウム入り66ナイロン)製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22とからなる。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。フランジ部22のエンジン側(図2左側)外縁近傍には、ストッパ部である環状の段部23が形成されている。
【0014】
アンビル部である補強部材40は、円板部41と、円板部41の中央に同軸に連結された円筒部42と、円板部41の上下部にて軸線方向に延在するガイド部43とからなる。補強部材40は比較的固い鋼製となっており、不図示のシフトフォークと当接する円板部41の受け面41aにて著しい摩耗が発生しないようにしている。なおガイド部43は、シフトフォークを案内する機能を有し、更にシフトフォークに連結するためのピン(不図示)を係合させる開口43aを有する。ここで、ガイドスリーブ20と補強部材40とで軸受保持部材を構成する。
【0015】
円筒部42は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する径と形状を有している。また、円板部41は、水平方向両端に切欠41bを形成しており、組付時かかる切欠41bにガイドスリーブ20のフランジ22に形成された突起22bを係合させることにより、補強部材40の位置決め及び回り止めが達成される。
【0016】
軸受ケース30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。軸受ケース30は、クラッチレリーズ軸受10を内包する円筒状のケース部31と、ケース部31の縁から軸線方向に延在する4つの爪部32とからなる。なお、爪部32が把持部を構成する。
【0017】
図4は、図2のクラッチレリーズ軸受装置の部分IVを拡大して示す断面図である。軸受ケース30のケース部31は、エンジン側(図4左方)端部に折り曲げ部31aを有している。軸受ケース30は、軸受ケース30の折り曲げ部31aにより、例えば波形ばねのような調心ばね50を介して、クラッチレリーズ軸受10の外輪12をフランジ部22に向かって押し付け、その状態で爪部32をフランジ部22及び補強部材40に対してかしめることにより取り付けられている。ここで、軸受ケース30と調心ばね50とで連結手段を構成する。
【0018】
なお、クラッチレリーズ軸受10の外輪12と軸受ケース30のケース部31との間には、一定の間隔が設けられており、後述する軸受自動調心を可能としている。図4から明らかなように、フランジ部22に形成された段部23は、軸受ケース30のケース部31の端部に全周にわたって嵌合当接しており、その締め代は径で0ないし0.4mmである。このようにわずかな締め代であるため、熱膨張によるガイドスリーブ20の内径寸法への影響は少ない。
【0019】
次に、本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。
図1において、図示しないシフトフォークが枢動して、その先端が補強部材40の表面に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、シフトフォークより受ける大荷重を支持することができる。クラッチレリーズ軸受装置は、シフトフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0020】
調心ばね50は適切な付勢力を有していて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、調心ばね50及びフランジ部22と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、軸受ケース30のケース部31は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。
【0021】
ここで、不図示のシフトフォークが補強部材40にレリーズ力を伝達するときは、シフトフォークはクラッチレリーズ軸受装置の軸線に対してねじれの位置にある鉛直軸回りに枢動するため、補強部材40に対して図1の水平方向にわずかに滑りながら摩擦力を印加することになる。ところが、ガイドスリーブ20の段部23が、軸受ケース30のケース部31にしっかり嵌合当接しているために、シフトフォークからかかる摩擦力が印加されても、補強部材40は水平方向にほとんど移動しない。従って、爪部32のかしめ状態は強固に維持されたままとなり、外輪12はフランジ部22にしっかり保持されて内輪11と共回りすることはない。それにより、外輪12が共回りしたならば生ずるであろう、クラッチレリーズ軸受装置の機能低下を未然に防止することができる。
【0022】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、補強部材にストッパ部を形成しても良い。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明のクラッチレリーズ軸受装置によれば、軸受保持部材のフランジ部には、連結手段が前記フランジ部に対して半径方向に移動することを阻止する環状のストッパ部が形成されていて、前記連結手段の円筒状支持部材が前記環状のストッパ部に締め代を持って外嵌している構成なので、入力部材の枢動に伴い、アンビル部が半径方向に移動する方向に力を受けても、前記軸受保持部材と前記連結手段とは半径方向に相対移動しないようになっており、それにより前記連結手段の把持部における前記軸受保持部材に対する把持は維持され、もって前記連結手段における前記クラッチレリーズ軸受の保持を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をシフトフォーク側から見た図である。
【図2】図1のII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】図1のクラッチレリーズ軸受装置を矢印III方向から見た図である。
【図4】図2のクラッチレリーズ軸受装置の部分IVを拡大して示す断面図である。
【図5】従来技術におけるクラッチレリーズ軸受装置の一例を示す軸線方向一部断面図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受
11 内輪
12 外輪
20 ガイドスリーブ
23 段部
30 軸受ケース
40 補強部材
50 調心ばね

Claims (1)

  1. 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転自在な他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、
    ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円管状本体と該円管状本体から半径方向に延在するフランジ部とを備え該フランジ部の一方の面側に枢動する入力部材により押圧されるアンビル部を有する軸受保持部材と、
    該軸受保持部材の前記フランジ部の他方の面側に前記クラッチレリーズ軸受の前記一方の輪を該クラッチレリーズ軸受が半径方向に移動可能となるよう保持する連結手段とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
    前記連結手段は、前記フランジ部に対して前記クラッチレリーズ軸受を保持するための円筒状支持部材と、該円筒状支持部材から軸方向に延在し、前記フランジ部の前記他方の面に対向する環状板部と前記一方の面に対向する把持片とを有し前記フランジ部を軸線方向に把持する把持部材とを一体に備え、
    前記フランジ部の前記他方の面には、前記円筒状支持部材に当接して前記連結手段が前記フランジ部に対して半径方向に移動することを阻止する環状のストッパ部が形成されていて、前記連結手段の前記円筒状支持部材が前記環状のストッパ部に締め代を持って外嵌していることを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。
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