JP3915466B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誤った組付けを阻止可能なクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるレリーズフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、レリーズフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをレリーズフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にレリーズフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材(スリーブ)とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば特開平11−315855号に示されているように、ダイヤフラムスプリングとレリーズフォークとの間に設けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
更に、上述した従来技術は、例えばアンビルに設けた凹部にスリーブの凸部を係合させて相互固定を行い、異音防止を図る構成となっている。しかし、かかる凸部は、スリーブ外周近傍で軸線方向に突出することから、車両に搭載した状態で、枢動するレリーズフォークが干渉する恐れがある。これを防止するためには、凸部をレリーズフォーク側に配置しないように、クラッチレリーズ軸受装置とレリーズフォークの相対位相(回転位置)を、所定の状態に維持しつつ組み込めばよいが、間違えないように組み付けるには手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、異音防止を図りつつも、レリーズフォークの干渉を抑制でき、しかも組み付け性に優れたクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、フランジ部とを備える樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材と、筒部とフランジ部と、フランジ部の軸線方向に延在する延在部と、延在部の軸線方向端から半径方向に向かう保持部とを有するアンビル部材と、からなっているクラッチレリーズ軸受装置において、前記クラッチレリーズ軸受装置に対して少なくとも2点で接触する二股形状のレリーズフォークを、前記クラッチレリーズ軸受装置にその半径方向外方から組み付ける際に、所定の相対回転位置では両者の組み付けを許容するが、前記所定の相対回転位置から180度回転した位置では両者の組み付けを阻止する阻止部が設けられていることを特徴とする。
又、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、フランジ部とを備える樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなり、前記軸受保持部材のフランジ部には、アンビル部材のフランジ部の外周に形成した切欠と係合する軸線方向アンビル側に突出する係合部が設けられたクラッチレリーズ軸受において、
前記クラッチレリーズ軸受装置に対して少なくとも2点で接触する二股形状のレリーズフォークを、半径方向における所定の側から組み付けたときには、前記係合部と干渉しないが、半径方向における前記所定の側以外の側から組み付けたときには、前記係合部と干渉するようになっており、
前記レリーズフォークを前記所定の側以外の側から取り付けようとしたときに、前記レリーズフォークの組み付けを阻止する阻止部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
【作用】
本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、前記クラッチレリーズ軸受装置に対して少なくとも2点で接触する二股形状のレリーズフォークを、前記クラッチレリーズ軸受装置にその半径方向外方から組み付ける際に、所定の相対回転位置では両者の組み付けを許容するが、前記所定の相対回転位置から180度回転した位置では両者の組み付けを阻止する阻止部が設けられているので、例えば、前記クラッチレリーズ軸受装置と前記レリーズフォークを組み付ける相対回転位置(干渉位置という)によって、前記レリーズフォークの動作により、前記クラッチレリーズ軸受装置の一部と干渉を生じることがあったとしても、その干渉位置を、前記所定の相対回転位置から180度回転した位置とすれば、前記干渉位置におて前記クラッチレリーズ軸受装置と前記レリーズフォークを組み付けることができず、結果として前記レリーズフォークの干渉を防止できることとなる。
【0008】
尚、前記阻止部は、アンビル部材(実施の形態のアンビルに相当)、又は記軸受保持部材(実施の形態のガイドスリーブに相当)に設けられていると好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明にかかる第1の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置を軸線方向に見た図であり、図2は、その下面図であり、図3は、図1の構成をIII-III線で切断して矢印方向に見た図である。
【0010】
図3において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30と、アンビル40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、図3で下方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。
【0011】
内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また焼き入れした鋼板をプレス成形することによって形成される内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。また、内輪11の当接部11aと反対側の端部はプレスによるブランク加工のままとし、切削加工を行わず製作コストを安くするようにしてもよい。
【0012】
ガイドスリーブ20は樹脂製であって、コストの比較的低いアキシャルドロー成形で形成されており、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向下方(図3)に突出する外壁部23と、フランジ部22の一部の外周近傍から軸線方向上方(図3)に突出する係合部28とからなる。本体21の内方には図3に一点鎖線で示すガイド軸Gが延在しており、本体21はガイド軸G上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸G上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁23の内周との間には隙間27が形成されている。
【0013】
図1に示すように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、弾性変形することによって、ガイドスリーブ20のフランジ部22に対してクラッチレリーズ軸受10を挟持し、ガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能に保持する機能を有する。
【0014】
図1において、アンビル40は、ガイドスリーブ20の本体21を内包し位置決めされる筒部41と、筒部41の端部からフランジ22に沿って半径方向に延在するフランジ部42と、フランジ部42の上部及び下部から軸線方向に延在する延在部43と、延在部43の軸線方向端から半径方向に向かう保持部44と、延在部43の中央から図1,2で左方に延在し、且つ先端が折り曲げられた逆組防止部45とからなる。
【0015】
フランジ部42は、図1,2に点線で示すレリーズフォークFが当接する当接領域42aのみ、ガイドスリーブ20のフランジ部22からわずかに離隔しており、レリーズフォークFからの過大な入力により領域42aが変形しても、それをガイドスリーブ20側に伝達しないようになっている。更に、フランジ部42は、その外周の一部を切り欠いて形成した切欠42bを有しており、ここにガイドスリーブ20のフランジ22から突出した係合部28が係合し、動作時におけるアンビル40とガイドスリーブ20との相対移動を禁止して異音を防止するように機能している。
【0016】
次に、本実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。図1〜3において、二股形状のレリーズフォークFが枢動して、その先端をアンビル40のフランジ部42に当接し、図2で下方に一定の荷重を印加する。それによりクラッチレリーズ軸受装置は、ガイド軸G(図1))上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0017】
ここで、ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリングに当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする調心力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。ばね部材30は、調心後にクラッチレリーズ軸受10の位置を保持する。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。
【0018】
次に、クラッチレリーズ軸受装置とレリーズフォークFとの組み付けについて説明する。図1,2で、クラッチレリーズ軸受装置に対し、図中矢印で示す右方からレリーズフォークFを組み込む場合(これを所定回転位置での組み込みという)、アンビル40の逆組防止部45は、領域42aまでのレリーズフォークFの進入を許容する。従って、レリーズフォークFは、その先端がアンビル40の領域42aと保持部44との間に挟まれてなる図1,2で点線で示す組み込み位置に到達できるようになっている。
【0019】
ところが、図1,2で、クラッチレリーズ軸受装置に対し、左方からレリーズフォークFを組み込む場合(これを所定回転位置から180度ずれた干渉位置での組み込みという)、阻止部であるアンビル40の逆組防止部45は、レリーズフォークFの先端に干渉し、領域42aまでのその進入を阻止する。従って、レリーズフォークFを、クラッチレリーズ軸受装置に適切に組み付けることができないのである。
【0020】
図2から明らかであるが、点線で示す組み込み位置に組み付けられたレリーズフォークFは、その枢動時にアンビル40又はガイドスリーブ20と干渉することはないが、これと180度異なる位置(干渉位置)で組み付けられた場合(すなわち逆組みされた場合)、レリーズフォークFは、その枢動時に、軸線方向に突出したガイドスリーブ20の係合部28と干渉する恐れがある。しかし、本実施の形態によれば、逆組防止部45が、クラッチレリーズ軸受装置に対し、図1,2で点線で示す方向にのみレリーズフォークFの進入を許容するようになっているため、そのようなレリーズフォークFと係合部28との干渉を未然に防止することができる。
【0021】
尚、本実施の形態の変形例として、逆組防止部45を設ける代わりに、係合部の軸線方向突出量を増大させることで(図2の点線で示す部分28’)、所定回転位置から180度ずれた干渉位置でのレリーズフォークFの組付けを阻止する阻止部として用いることもできる。
【0022】
図4は、本発明にかかる第2の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置を軸線方向に見た図であり、図5は、その下面図である。本実施の形態は、上述した実施の形態に関し、阻止部が主として異なるため、同様の構成については説明を省略する。
【0023】
図4に示すように、ガイドスリーブ120のフランジ部122は、アンビル40から半径方向外方であって且つ図4で左方側にのみ、略三角状にはみ出して延在している。フランジ部122におけるそのはみ出して延在した領域から、図5に示すように、2つの柱状部129が軸線方向に突出して形成されている。
【0024】
本実施の形態においても、図4,5で、クラッチレリーズ軸受装置に対し、左方からレリーズフォークFを組み込む場合、阻止部である柱状部129は、レリーズフォークFの先端に干渉し、領域142aまでのその進入を阻止する。従って、レリーズフォークFを、クラッチレリーズ軸受装置に組み付けることができず、それにより逆組を防止して、レリーズフォークFがガイドスリーブ120の係合部128に干渉するなどのトラブルを未然に防止できる。
【0025】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、軸線方向に突出する係合部は、アンビルに設けてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、前記クラッチレリーズ軸受装置に対して少なくとも2点で接触する二股形状のレリーズフォークを、前記クラッチレリーズ軸受装置にその半径方向外方から組み付ける際に、所定の相対回転位置では両者の組み付けを許容するが、前記所定の相対回転位置から180度回転した位置では両者の組み付けを阻止する阻止部が設けられているので、例えば、前記クラッチレリーズ軸受装置と前記レリーズフォークを組み付ける相対回転位置(干渉位置という)によって、前記レリーズフォークの動作により、前記クラッチレリーズ軸受装置の一部と干渉を生じることがあったとしても、その干渉位置を、前記所定の相対回転位置から180度回転した位置とすれば、前記干渉位置において前記クラッチレリーズ軸受装置と前記レリーズフォークを組み付けることができず、結果として前記レリーズフォークの干渉を防止できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置を軸線方向に見た図である。
【図2】第1の実施の形態のクラッチレリーズ軸受装置の下面図である。
【図3】図1の構成をIII-III線で切断して矢印方向に見た図である。
【図4】第2の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置を軸線方向に見た図である。
【図5】第2の実施の形態のクラッチレリーズ軸受装置の下面図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受装置
20、120 ガイドスリーブ
30 ばね部材
40,140 アンビル
Claims (4)
- 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、フランジ部とを備える樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材と、筒部とフランジ部と、フランジ部の軸線方向に延在する延在部と、延在部の軸線方向端から半径方向に向かう保持部とを有するアンビル部材と、からなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記クラッチレリーズ軸受装置に対して少なくとも2点で接触する二股形状のレリーズフォークを、前記クラッチレリーズ軸受装置にその半径方向外方から組み付ける際に、所定の相対回転位置では両者の組み付けを許容するが、前記所定の相対回転位置から180度回転した位置では両者の組み付けを阻止する阻止部が設けられていることを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。 - 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された円筒部と、フランジ部とを備える樹脂製の軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなり、前記軸受保持部材のフランジ部には、アンビル部材のフランジ部の外周に形成した切欠と係合する軸線方向アンビル側に突出する係合部が設けられたクラッチレリーズ軸受において、
前記クラッチレリーズ軸受装置に対して少なくとも2点で接触する二股形状のレリーズフォークを、半径方向における所定の側から組み付けたときには、前記係合部と干渉しないが、半径方向における前記所定の側以外の側から組み付けたときには、前記係合部と干渉するようになっており、
前記レリーズフォークを前記所定の側以外の側から取り付けようとしたときに、前記レリーズフォークの組み付けを阻止する阻止部が設けられていることを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。 - 前記阻止部は、前記アンビル部材に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
- 前記阻止部は、前記軸受保持部材に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
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