JP2004138182A - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチレリーズ軸受の保持をより確実に行えるクラッチレリーズ軸受装置を提供する。
【解決手段】ばね部材30の押圧部32は、正面から見て湾曲した円弧形状を有しているので、周方向に細長く延在するクラッチレリーズ軸受10の外輪12の端面に、全体的に当接できるようになり、それによりクラッチレリーズ軸受10の保持力を高めることができる。更に、押圧部32の曲率半径Rは、クラッチレリーズ軸受10の外輪12の外周半径より小さく内周半径より大きくなっているので、内輪11などとの干渉を防止できる。
【選択図】 図3
【解決手段】ばね部材30の押圧部32は、正面から見て湾曲した円弧形状を有しているので、周方向に細長く延在するクラッチレリーズ軸受10の外輪12の端面に、全体的に当接できるようになり、それによりクラッチレリーズ軸受10の保持力を高めることができる。更に、押圧部32の曲率半径Rは、クラッチレリーズ軸受10の外輪12の外周半径より小さく内周半径より大きくなっているので、内輪11などとの干渉を防止できる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に用いられるクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるレリーズフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、レリーズフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをレリーズフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にレリーズフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば以下の特許文献1に示すようにダイヤフラムスプリングとレリーズフォークとの間に設けている。
【特許文献1】
特開平10−246248号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この特許文献1に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、ガイドスリーブに対して、クラッチレリーズ軸受を半径方向に移動自在に保持するために、略コ字状に折り曲げた板状のばね部材を設けている。しかるに、ばね部材の端部は、ばね部材の弾性力でクラッチレリーズ軸受の外輪に押し付けられているが、クラッチレリーズ軸受装置に、本来作用するはずのない衝撃、例えば搬送時や組立時に誤って高所から落下させたときなどのように強い衝撃が作用した場合、ばね部材がずれたり外れたりする恐れがあることが判明した。これに対し、ズレや外れを抑制するために、板厚を増大させてばね部材の弾性力をあげることも考えられるが、それによりコストが増大し又組み付け性が悪化するなどの新たな問題が懸念される。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、クラッチレリーズ軸受の保持をより確実に行えるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結部材は、前記一方の輪に当接する端部が、前記クラッチレリーズ軸受の軸線方向に見て円弧形状を有することを特徴とする。
【0007】
【作用】
本発明者は、衝撃等が生じた場合にクラッチレリーズ軸受の外輪からばね部材がずれるという不具合を、ばね部材の厚みを増大させることに頼らず、その端部形状を工夫することで効果的に解消できることを発見したのである。より具体的には、本発明者の鋭意研究により、上述した特許文献1に開示のクラッチレリーズ軸受装置に用いているばね部材の端部形状が直線的になっているので、クラッチレリーズ軸受の外輪に当接した際に、その中央部のみが外輪に当接するため、衝撃力等に応じて十分な保持力を得られない場合があるという事実が判明したのである。そこで、本発明者は、前記連結部材(ばね部材に相当)の端部を、前記クラッチレリーズ軸受の軸線方向に見て円弧形状とすれば、例えばクラッチレリーズ軸受の外輪に当接する範囲が増大し、より保持力を高めることができることに思い至ったのである。
【0008】
更に、前記一方の輪に当接する前記連結部材の端部における円弧形状は、前記クラッチレリーズ軸受の前記一方の輪(例えば外輪)の外径より小さく、内径より大きい径を有すると、他方の輪(例えば内輪)や他の部材との干渉が抑制されるので好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図2は、図1の構成をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0010】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30と、補強部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。
【0011】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23が形成されている。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁部23の内周との間には隙間27が形成されている。更に、フランジ部22は、ばね部材30の取付部において半径方向に延在する外方突起22hを有する。
【0012】
図1において、ガイドスリーブ20のフランジ部22の左端上部と右端下部には略半円形状の突起22fが形成されている。また、フランジ部22には、各ばね部材30の取付位置に形成された一対のストッパ部25及び突起22cが形成されている。ストッパ部25は、ばね部材30の組付時におけるガイドの機能を有するものであり、図1に示すようにばね部材30の両脇を軸線方向に延在している。
【0013】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図3は、ばね部材30を示す図であり、図3(a)は、ばね部材30をエンジン側から見た正面図であり、図3(b)はその側面図であり、更に図3(c)はばね部材30をレリーズフォーク側から見た図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部22に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、端部である押圧部32は、シール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。又、傾斜部32aは、図3(a)に示すように、正面から見て(すなわち組み付けた状態でクラッチレリーズ軸受10の軸線方向に見て)湾曲した円弧形状を有し、その曲率半径Rは、クラッチレリーズ軸受10の外輪12の外周半径より小さく内周半径より大きくなっている。
【0014】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との交差部において、半径方向に突出するように形成された突出部34を有し、この突出部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の外方突起22hに対応している。また、ベース部31の上半部中央の両側には、矩形状のタブ31a、31bが形成されている。一方ベース部31の下半部は、二度折り曲げられて段部31cとなっている(図3(b)参照)。
【0015】
段部31cの両側下方端近傍においては、凹部である切欠き37が形成され(図3(c)参照)、更に段部31cの下縁中央には、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38の入口には、面取り39が形成されている。更に段部31cの中央には、矩形状開口36が形成されている。
【0016】
図4は、補強部材40を図1と同方向から見た図である。補強部材40は、円筒部41と、円筒部41に連結された円板状のアンビル部42と、アンビル部42の上端及び下端から軸線方向に延在するガイド部43とからなり、比較的肉厚の板をプレスし、その後焼入処理することによって形成される。これにより、レリーズフォークとの接触部にて著しい摩耗が発生しないようにしている。また、アンビル部42をチタンコーティングすることにより著しい摩耗を防ぐこともできる。
【0017】
円筒部41は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する内径を有し、それにより補強部材40の半径方向の位置決めが達成されるようになっている。
【0018】
補強部材40のアンビル部42には、円周部に2つの小切欠42aと、2つの矩形状切欠42bが形成されている。この小切欠42aは取付時に、ガイドスリーブ20のフランジ部22の対応する位置に形成された突起22fと係合して、補強部材40の回り止めを達成している。矩形状切欠42bは、その底部中央から半径方向外方に向かって延在する舌部42cが形成されている。舌部42cは、図4において示されているように、2度小さく折り曲げられており、舌部42cがガイドスリーブ20のフランジ部22とばね部材30との間で保持され、補強部材40とガイドスリーブ20との分離が防止される。
【0019】
ストッパ部25は、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際にガイドする機能を有し、またタブ31a、31bと当接して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。なお、突起44はレリーズフォークとクラッチレリーズ軸受とを結合するためのクリップ(不図示)を係合するためのものである。
【0020】
図5は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、上述したように突起22cが形成されている。凸部である突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。
【0021】
次に、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。図1において、図示しないレリーズフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、レリーズフォークより受ける大荷重を支持することができる。レリーズフォークとアンビル部42とは滑り接触をするが、上述したようにアンビル部42はチタンコーティング又は焼入処理されているので摩耗は小さく抑えられる。クラッチレリーズ軸受装置は、レリーズフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0022】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリング(クラッチ装置の回転部材)に当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟み込むように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0023】
次に、クラッチレリーズ軸受装置の組付方法について説明する。ガイドスリーブ20の本体21の周囲に、クラッチレリーズ軸受10および補強部材40が配置された後、図1の斜め上方及び斜め下方からばね部材30が、ガイドスリーブ20のガイド部25にガイドされつつ挿入される。ばね部材30は外周の一方向から挿入できるようにしているため、組付が容易となっている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20の突起22cを弾性変形しながら乗り越えて、切欠き37が突起22cに係合し、かつタブ31a、31bがそれぞれ、一対のストッパ25に当接した段階で所定の形状に戻り、組付が完了する。斜面22dの作用によりばね部材30の挿入は比較的容易に行われるが、一旦係合した後は台部22eの作用により不用意に抜けないように構成されている。
【0024】
本実施の形態によれば、ばね部材30の押圧部32は、図3(a)に示すごとく正面から見て湾曲した円弧形状を有しているので、周方向に細長く延在するクラッチレリーズ軸受10の外輪12の端面に、全体的に当接できるようになり、それによりクラッチレリーズ軸受10の保持力を高めることができる。更に、押圧部32の曲率半径Rは、クラッチレリーズ軸受10の外輪12の外周半径より小さく内周半径より大きくなっているので、内輪11などとの干渉を防止できる。
【0025】
図6は、別な実施の形態にかかるばね部材の斜視図である。連結部材であるばね部材30’は、図3の実施の形態と同様に、端部である押圧部32’が正面から見て湾曲した円弧形状(曲率半径R)を有している。本実施の形態が、図3に示す実施の形態と異なるのは、ベース部31’の端部に切欠きが形成されておらず直線状となっており、その代わりに、ばね部材30’の剛性を調整するための矩形状開口36’が大きく形成されている点である。
【0026】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。更に、回転輪は内輪でなく外輪であっても本発明の構成は可能となる。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、クラッチレリーズ軸受の保持をより確実に行えるクラッチレリーズ軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図2】図1の構成をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】ばね部材30を示す図である。
【図4】補強部材40を図1と同方向から見た図である。
【図5】図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。
【図6】別な実施の形態にかかるばね部材の斜視図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受
20 ガイドスリーブ
30,30’ ばね部材
40 補強部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に用いられるクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるレリーズフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、レリーズフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをレリーズフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にレリーズフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば以下の特許文献1に示すようにダイヤフラムスプリングとレリーズフォークとの間に設けている。
【特許文献1】
特開平10−246248号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この特許文献1に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、ガイドスリーブに対して、クラッチレリーズ軸受を半径方向に移動自在に保持するために、略コ字状に折り曲げた板状のばね部材を設けている。しかるに、ばね部材の端部は、ばね部材の弾性力でクラッチレリーズ軸受の外輪に押し付けられているが、クラッチレリーズ軸受装置に、本来作用するはずのない衝撃、例えば搬送時や組立時に誤って高所から落下させたときなどのように強い衝撃が作用した場合、ばね部材がずれたり外れたりする恐れがあることが判明した。これに対し、ズレや外れを抑制するために、板厚を増大させてばね部材の弾性力をあげることも考えられるが、それによりコストが増大し又組み付け性が悪化するなどの新たな問題が懸念される。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、クラッチレリーズ軸受の保持をより確実に行えるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結部材は、前記一方の輪に当接する端部が、前記クラッチレリーズ軸受の軸線方向に見て円弧形状を有することを特徴とする。
【0007】
【作用】
本発明者は、衝撃等が生じた場合にクラッチレリーズ軸受の外輪からばね部材がずれるという不具合を、ばね部材の厚みを増大させることに頼らず、その端部形状を工夫することで効果的に解消できることを発見したのである。より具体的には、本発明者の鋭意研究により、上述した特許文献1に開示のクラッチレリーズ軸受装置に用いているばね部材の端部形状が直線的になっているので、クラッチレリーズ軸受の外輪に当接した際に、その中央部のみが外輪に当接するため、衝撃力等に応じて十分な保持力を得られない場合があるという事実が判明したのである。そこで、本発明者は、前記連結部材(ばね部材に相当)の端部を、前記クラッチレリーズ軸受の軸線方向に見て円弧形状とすれば、例えばクラッチレリーズ軸受の外輪に当接する範囲が増大し、より保持力を高めることができることに思い至ったのである。
【0008】
更に、前記一方の輪に当接する前記連結部材の端部における円弧形状は、前記クラッチレリーズ軸受の前記一方の輪(例えば外輪)の外径より小さく、内径より大きい径を有すると、他方の輪(例えば内輪)や他の部材との干渉が抑制されるので好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図2は、図1の構成をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0010】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、連結部材であるばね部材30と、補強部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端に当接部11aを有する略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、半径方向外方にめくれたような形状をしており、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。
【0011】
一方、ガイドスリーブ20はモールド成形された樹脂製であって、円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周から半径方向に延在するフランジ部22と、フランジ部22の半径方向外方端において軸線方向左方に突出する外壁部23が形成されている。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部24が設けられている。この拡径部24は、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10の外方に設けられ、その半径方向の移動制限部となっている。また、クラッチレリーズ軸受10を半径方向に移動可能とするため、外輪12の外周と外壁部23の内周との間には隙間27が形成されている。更に、フランジ部22は、ばね部材30の取付部において半径方向に延在する外方突起22hを有する。
【0012】
図1において、ガイドスリーブ20のフランジ部22の左端上部と右端下部には略半円形状の突起22fが形成されている。また、フランジ部22には、各ばね部材30の取付位置に形成された一対のストッパ部25及び突起22cが形成されている。ストッパ部25は、ばね部材30の組付時におけるガイドの機能を有するものであり、図1に示すようにばね部材30の両脇を軸線方向に延在している。
【0013】
図1より明らかなように、同一形状のものが2つ設けられたばね部材30は、クラッチレリーズ軸受10をガイドスリーブ20に対して取り付ける機能を有する。図3は、ばね部材30を示す図であり、図3(a)は、ばね部材30をエンジン側から見た正面図であり、図3(b)はその側面図であり、更に図3(c)はばね部材30をレリーズフォーク側から見た図である。ばね部材30は、一枚のSK5等のばね鋼板をプレスで打ち抜いた後折り曲げその後焼入処理することによって形成されている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20のフランジ部22に当接するベース部31と、軸受の外輪12に当接する押圧部32と、ベース部31と押圧部32との間に設けられ、押圧部32に外輪12を付勢するための弾性力を付与する梁部33とからなっている。なお、端部である押圧部32は、シール17に接触しないように、またばね部材30の組付を容易にすべく、軸線方向外方に傾斜した傾斜部32aを有する。又、傾斜部32aは、図3(a)に示すように、正面から見て(すなわち組み付けた状態でクラッチレリーズ軸受10の軸線方向に見て)湾曲した円弧形状を有し、その曲率半径Rは、クラッチレリーズ軸受10の外輪12の外周半径より小さく内周半径より大きくなっている。
【0014】
更にばね部材30は、ベース部31と梁部33との交差部において、半径方向に突出するように形成された突出部34を有し、この突出部34は、ガイドスリーブ20のフランジ22部の外方突起22hに対応している。また、ベース部31の上半部中央の両側には、矩形状のタブ31a、31bが形成されている。一方ベース部31の下半部は、二度折り曲げられて段部31cとなっている(図3(b)参照)。
【0015】
段部31cの両側下方端近傍においては、凹部である切欠き37が形成され(図3(c)参照)、更に段部31cの下縁中央には、比較的大きな切欠き38が形成されている。切欠き38の入口には、面取り39が形成されている。更に段部31cの中央には、矩形状開口36が形成されている。
【0016】
図4は、補強部材40を図1と同方向から見た図である。補強部材40は、円筒部41と、円筒部41に連結された円板状のアンビル部42と、アンビル部42の上端及び下端から軸線方向に延在するガイド部43とからなり、比較的肉厚の板をプレスし、その後焼入処理することによって形成される。これにより、レリーズフォークとの接触部にて著しい摩耗が発生しないようにしている。また、アンビル部42をチタンコーティングすることにより著しい摩耗を防ぐこともできる。
【0017】
円筒部41は、ガイドスリーブ20に取り付けられた際に本体21に丁度嵌合する内径を有し、それにより補強部材40の半径方向の位置決めが達成されるようになっている。
【0018】
補強部材40のアンビル部42には、円周部に2つの小切欠42aと、2つの矩形状切欠42bが形成されている。この小切欠42aは取付時に、ガイドスリーブ20のフランジ部22の対応する位置に形成された突起22fと係合して、補強部材40の回り止めを達成している。矩形状切欠42bは、その底部中央から半径方向外方に向かって延在する舌部42cが形成されている。舌部42cは、図4において示されているように、2度小さく折り曲げられており、舌部42cがガイドスリーブ20のフランジ部22とばね部材30との間で保持され、補強部材40とガイドスリーブ20との分離が防止される。
【0019】
ストッパ部25は、図1から明らかなように、ばね部材30をガイドスリーブ20に取り付ける際にガイドする機能を有し、またタブ31a、31bと当接して、それ以上ばね部材30が内方に押し込まれることを防止するよう機能する。なお、突起44はレリーズフォークとクラッチレリーズ軸受とを結合するためのクリップ(不図示)を係合するためのものである。
【0020】
図5は、図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。ガイドスリーブ20のフランジ部22には、上述したように突起22cが形成されている。凸部である突起22cは、斜面22dと台部22eとからなっており、ばね部材30が装着された際に切欠き37に係合する形状となっている。
【0021】
次に、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。図1において、図示しないレリーズフォークが枢動して、その先端が補強部材40のアンビル部42に当接して一定の荷重を印加する。補強部材40の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、レリーズフォークより受ける大荷重を支持することができる。レリーズフォークとアンビル部42とは滑り接触をするが、上述したようにアンビル部42はチタンコーティング又は焼入処理されているので摩耗は小さく抑えられる。クラッチレリーズ軸受装置は、レリーズフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0022】
ばね部材30は適切な板厚となっていて、ガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、押圧部32と外輪12との間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリング(クラッチ装置の回転部材)に当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。なお、ガイドスリーブ20の外壁部23は、クラッチレリーズ軸受10が所定量以上半径方向外方に移動しないよう制限する機能を有する。また、一般の玉軸受の外輪にはフランジがないタイプが多いので、本実施の形態のように外輪をばね部材30で挟み込むように構成すれば、外輪自体を改造する必要がなく既存のものを使用でき、コスト低減に寄与しうる。
【0023】
次に、クラッチレリーズ軸受装置の組付方法について説明する。ガイドスリーブ20の本体21の周囲に、クラッチレリーズ軸受10および補強部材40が配置された後、図1の斜め上方及び斜め下方からばね部材30が、ガイドスリーブ20のガイド部25にガイドされつつ挿入される。ばね部材30は外周の一方向から挿入できるようにしているため、組付が容易となっている。ばね部材30は、ガイドスリーブ20の突起22cを弾性変形しながら乗り越えて、切欠き37が突起22cに係合し、かつタブ31a、31bがそれぞれ、一対のストッパ25に当接した段階で所定の形状に戻り、組付が完了する。斜面22dの作用によりばね部材30の挿入は比較的容易に行われるが、一旦係合した後は台部22eの作用により不用意に抜けないように構成されている。
【0024】
本実施の形態によれば、ばね部材30の押圧部32は、図3(a)に示すごとく正面から見て湾曲した円弧形状を有しているので、周方向に細長く延在するクラッチレリーズ軸受10の外輪12の端面に、全体的に当接できるようになり、それによりクラッチレリーズ軸受10の保持力を高めることができる。更に、押圧部32の曲率半径Rは、クラッチレリーズ軸受10の外輪12の外周半径より小さく内周半径より大きくなっているので、内輪11などとの干渉を防止できる。
【0025】
図6は、別な実施の形態にかかるばね部材の斜視図である。連結部材であるばね部材30’は、図3の実施の形態と同様に、端部である押圧部32’が正面から見て湾曲した円弧形状(曲率半径R)を有している。本実施の形態が、図3に示す実施の形態と異なるのは、ベース部31’の端部に切欠きが形成されておらず直線状となっており、その代わりに、ばね部材30’の剛性を調整するための矩形状開口36’が大きく形成されている点である。
【0026】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、ばね部材30は2つでなく3つでもよい。更に、回転輪は内輪でなく外輪であっても本発明の構成は可能となる。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、クラッチレリーズ軸受の保持をより確実に行えるクラッチレリーズ軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図2】図1の構成をII−II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】ばね部材30を示す図である。
【図4】補強部材40を図1と同方向から見た図である。
【図5】図1のクラッチレリーズ軸受装置をV−V線に沿って切断し拡大して矢印方向に見た図である。
【図6】別な実施の形態にかかるばね部材の斜視図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受
20 ガイドスリーブ
30,30’ ばね部材
40 補強部材
Claims (2)
- 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合された軸受保持部材と、該軸受保持部材に対して、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する連結部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
前記連結部材は、前記一方の輪に当接する端部が、前記クラッチレリーズ軸受の軸線方向に見て円弧形状を有することを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。 - 前記一方の輪に当接する前記連結部材の端部における円弧形状は、前記クラッチレリーズ軸受の前記一方の輪の外径より小さく、内径より大きい径を有することを特徴とする請求項1に記載のクラッチレリーズ軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002304238A JP2004138182A (ja) | 2002-10-18 | 2002-10-18 | クラッチレリーズ軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002304238A JP2004138182A (ja) | 2002-10-18 | 2002-10-18 | クラッチレリーズ軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004138182A true JP2004138182A (ja) | 2004-05-13 |
Family
ID=32451719
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002304238A Withdrawn JP2004138182A (ja) | 2002-10-18 | 2002-10-18 | クラッチレリーズ軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004138182A (ja) |
-
2002
- 2002-10-18 JP JP2002304238A patent/JP2004138182A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050921 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Effective date: 20070604 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 |