JP4093731B2 - パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの造粒物およびその製法 - Google Patents

パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの造粒物およびその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛散性およびケーキング性が著しく抑制されたパラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの造粒物およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
パラヒドロキシ安息香酸は、高分子材料の原料として広い用途を持ち、特に最近は、高強度、高弾性率を有する液晶ポリエステル類の原料として注目を集めている。また、そのアルキルエステル類の多くは、化粧品や工業用の防カビ剤として幅広く用いられている。パラヒドロキシ安息香酸を製造するには、一般にまずフェノールを水酸化カリウムと反応させてフェノールカリウムとし、次にこれを加圧下に二酸化炭素と反応させてパラヒドロキシ安息香酸のカリウム塩とし、鉱酸を加えて酸析分離する方法が知られている。
【0003】
フェノールカリウムと二酸化炭素との反応としては、古くからいわゆるコルベ・シュミット反応と呼ばれる固気相反応が用いられてきた。しかしながら、この反応は固気相反応であるため反応時間が長いこと、熱的不均一性のため副反応での原料損失が多いこと、反応制御が困難で安定した収率が得られない等の問題があり、これを改良するために種々の方法が提案されてきた。
【0004】
本発明者の一人は、フェノールカリウムと炭酸ガスとの反応を、適当な溶媒の存在下に、カルボキシル化反応の開始前に、パラヒドロキシ安息香酸ジカリウムと反応させてフェノールカリウムを生成せしめるのに要する量のフェノールを添加して、180℃以上の温度で液状粒子懸濁液で行うことにより、短時間の反応で、しかも高収率で連続的に製造することが可能な方法を提案している(特公昭45−9529号公報)。
【0005】
このようにして製造されたパラヒドロキシ安息香酸は、酸析、濾過、遠心分離などの操作によって母液より分離され、水洗後、乾燥して液晶高分子等の原料として使用される。
【0006】
また、パラヒドロキシ安息香酸エステル類は、硫酸等の酸触媒によるパラヒドロキシ安息香酸とアルコール類との脱水反応等の一般的なカルボン酸エステルの製法によって製造される。
【0007】
パラヒドロキシ安息香酸およびそのエステル類の結晶は一般に非常に微細なものが含まれていて飛散性が強く、取り扱い上大きな支障を与える。例えばパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類を、高分子材料や防カビ剤の原料として仕込む時に、これらを反応タンクに投入すると、微粉末状のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類が粉塵となって舞い上がる。空気中に舞い上がったパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の微粉末はなかなか沈降せず、広範囲に浮遊し、作業上支障を来す。
【0008】
このような仕込み時の作業性や安全性の問題を軽減するため、作業者が防塵眼鏡や防塵マスクを着用したり、反応タンクの原料仕込み口とは別の口から吸収脱気し、フィルタで微粉末を捕集したりする方法が行われているが完全ではない。
【0009】
また、微細なパラヒドロキシ安息香酸およびそのエステル類は、保存中にケーキングしやすく、さらに作業性に支障を来すものであった。これは、水に対する溶解性を有するパラヒドロキシ安息香酸およびそのエステル類が小粒径の微細粒子となるに従い比表面積が増大し、空気中の水分により粉体間にブリッヂを起こしやすくなり、キャピラリー力の作用で、さらにケーキングし易くなるためであると考えられる。
【0010】
さらに、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類は帯電しやすいため、容器やビニール袋等へ静電気によって付着しやすく取り扱いが不便なものであった。
【0011】
このような性状を有する物質の飛散性を抑えるために、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類に水分を含ませ、押出し式の造粒機で押し出した後、乾燥させて、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の顆粒剤を形成することが考えられる。しかしながら、このようにして得られた顆粒剤は、飛散性および帯電性については若干改善が見られるものの、水分を添加するため、粒子がより一層凝集しやすくなり、ケーキング性を改善するには至らないものであった。また、このような顆粒剤は個々の粒子の結合力が弱く、輸送時や転送時等に顆粒が崩壊し、元の小粒子径の粒子に戻り飛散するという不具合が生じることがあった。
【0012】
一方、医薬品などの製造工程においては、主薬粉末に、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の結合剤を水やアルコール等の溶剤と共に添加し、混練、造粒することにより良好な顆粒剤を製造することが提案されている。しかしながら、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の製造工程において、これらの結合剤を添加すると、高純度のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類が得られず、このようなパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類を原料としてポリマー等を合成すると、色調の悪化や成形品の劣化等をもたらすという問題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は上記課題を解決し、飛散性およびケーキング性が著しく改善されたパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、平均粒子径が150μm以上であり、硬度が10〜3000gであることを特徴とする、パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステル類の造粒物を提供する。このような特性を有するパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、飛散性が著しく抑制され、取り扱いが容易となり、環境汚染や人体への影響が極めて軽減される。また、保存中にケーキングすることがなくなるため作業性が向上する。しかも、このパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物はかなり強い衝撃を与えても、元の微粉末状の粒子に戻ることはなく、輸送時等に崩壊することが抑制される。
【0015】
本発明の造粒物は、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粉体を乾式圧縮して成型物を得、これを粉砕、分級することによって、好適に調製することができる。従って、かかる調製方法もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0016】
【定義】
平均粒子径
平均粒子径は以下のように測定したものをいう:
予め重量を測定した造粒物を、目開き2800μm、1700μm、1180μm、840μm、500μmおよび250μmのメッシュスクリーンにてこの順に篩い、メッシュ上の残存量を測定する。まず最初に、全量を2800μmのメッシュにて速度230rpmで10分間、篩う。メッシュ上の残存量を測定し、最初の重量に対する重量%を求める。一方、メッシュを通過した造粒物の全量を、1700μmのメッシュで同様にして篩う。これを順次繰り返し、最後に250μmのメッシュを通過した造粒物の量を測定する。得られた結果から以下の式により平均粒子径を求める:
平均粒子径(μm)=(2800×2800μmメッシュ上残存部%/100)+(1700×1700μmメッシュ上残存部%/100)+(1180×1180μmメッシュ上残存部%/100)+(840×840μmメッシュ上残存部%/100)+(500×500μmメッシュ上残存部%/100)+(250×250μmメッシュ上残存部%/100)+(120×250μmメッシュ通過分%/100)
【0017】
硬度
簡易粒体硬度計を用いて測定する。試料の中心に先端1mmφの円錐台型押し棒を当接させて加重をかけ、試料が破砕する加重を硬度とする。
【0018】
摩損度試験器による粉化率
造粒物の粉化しやすさを測定するものである。各試料10gを採取し、60Mのメッシュスクリーン(目開き0.25mm)にて、1分間230rpmの速度で篩別する。メッシュ上に残った造粒物を、内部の直径27cm、厚さ4cmである摩損度試験器にて3分間、25回転/分の衝撃を与えた後、再度60Mのメッシュスクリーンにて1分間篩別する。衝撃を与える前の造粒物のメッシュ上の残存量をW、衝撃を与えた後のメッシュ上残存量をWとし、粉化率は下記式で示される:
粉化率(%)=(W−W)/W×100
【0019】
安息角、ゆるみ見掛け比重、固め見掛け比重は、ホソカワミクロン社、パウダーテスター(PT−N型)を用い、テスターに付属の説明書に記載の方法にて測定されるものである。
【0020】
安息角
標準篩(10メッシュ)上でサンプルを振動させ、ロートを通じ、注入法により測定する。
【0021】
ゆるみ見掛け比重
篩上でサンプルを振動させ、シュートを通して落下させ、規定の容器に受けて測定する。
【0022】
固め見掛け比重
規定の容器にサンプルを入れ、一定の高さから規定回数タッピングさせ、タッピングの衝撃で固めた後に測定したものである。
【0023】
圧縮度
圧縮度は、ゆるみ見掛け比重と固め見掛け比重から以下の式にて求められる値である:
(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、上記により測定される平均粒子径150μm以上のものであるが、好ましくは250〜3000μm、より好ましくは350〜1600μmであるのがよい。平均粒子径が150μm未満であると十分な飛散抑制およびケーキング抑制効果を得ることができなくなる。平均粒子径が3000μmを超えると飛散抑制およびケーキング抑制効果は優れるものの、溶解速度が遅く作業効率が悪くなる傾向がある。
【0025】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、74μmのメッシュを通過する粒子の割合が15重量%以下、好ましくは6重量%以下であることが望ましい。74μmのメッシュを通過する小粒子径粒子の割合が15%を超えると、飛散しやすくなる。
【0026】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物の硬度は、10〜3000gであり、より好ましくは10〜1000gであるのがよい。硬度が10g未満であると、造粒物が容易に崩壊しやすくなるため、輸送時等に粉化し、飛散の原因となる。硬度が3000gを超えると結合力が強くなりすぎて溶解しにくくなり、作業に支障を来すおそれがある。
【0027】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、多少の振動や衝撃等を加えても粉化しない強度を有しているものが好ましい。この強度を表わす指標である摩損度試験器による粉化率が3%以下のものが、搬送性、取り扱い性において優れた性能を示すため、特に好ましい。
【0028】
また、本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物の安息角は30〜50度、好ましくは35〜45度であるのがよい。この安息角の値は、造粒物の粒子径が大きくなったことにより、流動性が改善され取り扱い性が良くなったことを示す。
【0029】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物のゆるみ見掛け比重は0.5〜0.85g/cc、好ましくは0.55〜0.8g/ccがよい。また固め見掛け比重は0.55〜0.9g/ccがよく、好ましくは0.6〜0.85g/ccがよい。
【0030】
さらに本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は
(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100
で表わされる圧縮度が10%以下、好ましくは7%以下のものがよい。
【0031】
従来提供されている小粒子径のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の圧縮度は30〜60%と高く、ゆるみ見掛け比重と固め見掛け比重の差が大きいことを示す。
【0032】
これはパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粒子を一定の容器に詰めた際、粒子間に空隙がかなり存在することを表わす。これに対し、本発明の造粒物は圧縮度が10%以下と低く、容器に振動、衝撃等のタッピングを与えなくても造粒物間の空隙は少なく、充填性が改善されるものである。
【0033】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、帯電量が0.02μC/g以下であることが好ましく、これにより容器やビニール袋等への静電気による付着が軽減され作業性が向上する。
【0034】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粉体を乾式圧縮した後に破砕、分級して得ることができる。原料となるパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類粉体は、従来いずれの方法で得られたものであってもよく、パラヒドロキシ安息香酸の場合、例えば特公昭45−9529号公報に記載のコルべ・シュミット法などにより生産したパラヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を、例えば80〜100℃で酸析分離した後、必要により精製してパラヒドロキシ安息香酸を製造することができる。酸析工程で使用される酸は特に限定されないが、無機酸もしくは有機酸が用いられる。無機酸としては例えば、塩酸、フッ化水素酸のような二元酸(水素酸)、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸のようなオキソ酸が挙げられ、有機酸としてはギ酸、酢酸またはフェノール等が挙げられる。これらの酸により酸析工程はpH1〜4に調整されるのがよい。
【0035】
また、パラヒドロキシ安息香酸エステル類は、硫酸等の酸触媒によるパラヒドロキシ安息香酸とアルコール類との脱水反応等の一般的なカルボン酸エステルの製法によって得ることができる。
【0036】
パラヒドロキシ安息香酸エステル類としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステルなどの炭素原子数が1〜4のアルキルエステルおよびベンジルエステルが好適に造粒される。
【0037】
得られたパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粉体を乾式圧縮により成型物を得、これを粉砕して分級することにより、本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物を得ることができる。
【0038】
一般に「造粒」とは、粉体、溶融液、水溶液などからほぼ一定の形と大きさをもつ粉状物を作り出す操作のことをいい、その造粒には、押し出し造粒、噴霧乾燥造粒、破砕造粒、転道造粒、攪拌造粒、流動層造粒等の方法があるが、本発明においては、得られたパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類粉体を圧縮機を用いて圧縮して成型物を得、これを粉砕、分級して造粒物を得る方法、一般に乾式破砕造粒と呼ばれる方法により、本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物を好適に得ることができる。
【0039】
乾式圧縮に際しては、圧力0.2〜2.0ton/cmの機械圧縮が好適に採用される。圧力が0.2ton/cm未満であると、得られた造粒物の結合力が低く、容易に崩壊してしまうおそれがある。圧力が2.0ton/cmを超えると、造粒物の結合力が強くなりすぎ、パラヒドロキシ安息香酸のエステル類を化粧品や工業用の防カビ剤に使用する場合に、アルコール等への溶解性が悪くなる。
【0040】
圧縮時に用いるロールとしては、波型ロ一ルまたは平滑スリットロールが好適に用いられる。
【0041】
機械圧縮によって得られた成型物は、解砕機によって粉砕された後、分級することによって所定の粒度特性を有するパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物が製造される。
【0042】
解砕機としては、ロール式粉砕機、媒体式粉砕機、気流式粉砕機、剪断・磨砕式粉砕機等、様々な粉砕機を用いることができるが、特にハンマー型高速回転衝撃式粉砕機が好適に用いられる。
【0043】
次いで粉砕された造粒物を分級する。分級は、通常よく知られた方法にて行えばよく、例えば適当な大きさのメッシュスクリーンを用いればよい。また、カットされた小粒子径のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類は圧縮工程に、またカットされた大粒子径のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類は粉砕工程にそれぞれ再供給されることによって歩留まりの良いパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物を得ることができる。
【0044】
本発明の、パラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類を圧縮機によって圧縮したのち、粉砕、分級して得られるパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、高い圧力をかけたことにより、粒子間に固体の構成分子間の結合力(van der Waals力)や静電帯電による結合力が働く距離まで接近し、凝集している状態にある。この状態は湿式の押出し造粒法を用いて得られる、顆粒の粒子間に働く液体の表面張力とは異なるものである。したがって、得られたパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は衝撃を加えても容易に崩壊しにくく、作業性に優れるものである。
【0045】
本発明の方法において、原料として用いるパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粉体は、従来の方法で得られた小粒子径のものを水分調整の工程等を行わずに用いることができる。従来の原材料に水を添加して行う湿式押出し造粒に必要であった水分調整工程が不要となるため製造プロセスが簡略化され、大量生産が可能となるという利点もある。
【0046】
なお、本明細書では「乾式圧縮」とは、原材料に水等のバインダー成分を添加せずに圧縮操作を行うことをいい、原料に全く水を含まないことを意味するわけではない。原料となるパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粉体の水分含量は20%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは6%以下であることが望ましい。水分含量の少ないパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類を乾式圧縮することによって、上述したように、衝撃に強いにもかからわらず、優れた溶解特性を有するパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物を得ることができる。
【0047】
本発明のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の造粒物は、高分子材料の原料や、化粧品や工業用の防カビ剤として用いられる。
以下実施例を挙げて本発明を説明する。
【0048】
【実施例】
実施例1
公知のコルべ・シュミット法で工業的に製造した小粒子径(約40〜70μm)のパラヒドロキシ安息香酸粉体(水分含量0.1%)を、乾式圧縮造粒機(「ブリケッタ」形式BCS−1V 新東工業(株))を用いて、表1に示す条件で機械圧縮し成型物を得た。圧縮時の圧力は、ロール径とロール間距離を一定とし、ロールの回転数とロールにパラヒドロキシ安息香酸を供給するスクリューの回転数により決定される。
【0049】
この成型物をハンマー型高速回転衝撃式粉砕機(新東工業(株))を用いて粉砕した後、種々のメッシュスクリーンにて分級し、表2に示す粒度特性を有するパラヒドロキシ安息香酸の造粒物を調製した(サンプル1−1〜1−7)。
【0050】
実施例2
公知の方法で得られた、小粒子径(約40〜70μm)のパラヒドロキシ安息香酸ブチルエステル粉体(水分含量0.05%)を、実施例1と同様にして、表1に示す条件で機械圧縮し成型物を得た。この成型物を実施例1と同様に粉砕、分級して表3に示す粒度特性を有するパラヒドロキシ安息香酸ブチルエステルの造粒物を調製した(サンプル2−1〜2−7)。
【0051】
実施例3
公知の方法で得られた、小粒子径(約40〜70μm)のパラヒドロキシ安息香酸プロピルエステル粉体(水分含量0.05%)を、実施例1と同様にして、表1に示す条件で機械圧縮し成型物を得た。この成型物を実施例1と同様に粉砕、分級して表4に示す粒度特性を有するパラヒドロキシ安息香酸プロピルエステルの造粒物を調製した(サンプル3−1〜3−7)。
【0052】
実施例4
公知の方法で得られた、小粒子径(約40〜70μm)のパラヒドロキシ安息香酸エチルエステル粉体(水分含量0.05%)を、実施例1と同様にして、表1に示す条件で機械圧縮し成型物を得た。この成型物を実施例1と同様に粉砕、分級して表5に示す粒度特性を有するパラヒドロキシ安息香酸エチルエステルの造粒物を調製した(サンプル4−1〜4−7)。
【0053】
実施例5
公知の方法で得られた、小粒子径(約40〜70μm)のパラヒドロキシ安息香酸メチルエステル粉体(水分含量0.05%)を、実施例1と同様にして、表1に示す条件で機械圧縮し成型物を得た。この成型物を実施例1と同様に粉砕、分級して表6に示す粒度特性を有するパラヒドロキシ安息香酸メチルエステルの造粒物を調製した(サンプル5−1〜5−7)。
【0054】
実施例1〜5の圧縮条件は以下の通りである。
【表1】
Figure 0004093731
実施例1〜5の各サンプルについて、粒度特性を表2〜6に、硬度、粉化率および粉塵飛散性を表7に示す。
【0055】
【表2】
Figure 0004093731
【0056】
【表3】
Figure 0004093731
【0057】
【表4】
Figure 0004093731
【0058】
【表5】
Figure 0004093731
【0059】
【表6】
Figure 0004093731
【0060】
【表7】
Figure 0004093731
【0061】
なお、表2〜6に示した平均粒子径は、振とう機(飯田製作所製ES−65型)を用い、上記の各メッシュを通過しないもの、通過するものの重量を測定し上記定義欄にて示した式に基づいて計算した。また、各サンプルについて、250μmメッシュを通過した粒子のうち、さらに74μmメッシュを通過する粒子を測定し、その割合を算出した。また、表7の硬度、粉化率、粉塵飛散性は以下のごとく測定したものである。
【0062】
硬度
簡易粒体硬度計(筒井理化学機械(株))を用いて次のようにして測定した。
まず、秤の針が0位置にあることを確認した後、試料台にピンセットで試料(パラヒドロキシ安息香酸造粒物)を載置し、押し棒を試料の中心に当接させる。次いでハンドル操作により試料に加重をかけ、試料が破砕した際の数値を置き針にて読み取る。各試料につき10回以上測定し、その平均値を算出した。
なお、造粒物の粒径が0.3mm以下のものは、試料の位置決めが困難であるため測定できなかった。
【0063】
粉化率
摩損度試験器(萱垣医理科工業(株))を用いて次のようにして測定した。まず、各試料10gを採取し、粒子径を求める際に用いたものと同じ振とう機(飯田製作所製、ES−65型)を用い、60Mのメッシュスクリーン(目開き0.25mm)で1分間篩別した。メッシュ上に残ったパラヒドロキシ安息香酸(またはそのエステル類)造粒物を、内部の直径27cm、厚さ4cmである摩損度試験器にて3分間、25回転/分の衝撃を与えた後、再度60Mのメッシュスクリーンで1分間篩別した。摩損度試験器で衝撃を与える前にメッシュ上に残った粒子の重量をW、衝撃を与えた後にメッシュ上に残った粒子の重量をWとし、下記式にて粉化率を算出した。
粉化率(%)=(W−W)/W×100
なお、造粒物の粒径が0.3mm以下のものは、粒子径が小さく元々粉化された状態にあるため、測定の対象外とした。
【0064】
粉塵飛散性
粉塵飛散評価装置を用い、各サンプル50gを斜度60度の斜面の上部から50cm滑らせ、滑りきった時に舞う粉塵の距離と高さを測定した。なお、飛散した距離が70cm、高さが50cmを超えたものについては、測定不可能として「over」と示した。
【0065】
実施例1〜5において、乾式圧縮造粒によって得られた造粒物のうち、平均粒子径が150μm以上で、かつ硬度が70g以上であるもの(No.1−1〜1−5、No.2−1〜2−5、No.3−1〜3−5、No.4−1〜4−5および、No.5−1〜5−5)は、粉化率が3%以下であり、衝撃等を与えても容易に崩壊しないものであった。さらに、粉塵飛散性においても、飛散距離が50cm以下であり、取り扱い性に優れたものであった。
【0066】
一方、平均粒子径が150μm未満のもの(No.1−7、No.2−7、No.3−7、No.4−7およびNo.5−7)は、粉塵飛散性において、飛散距離が50cm以上であり、取り扱い性の悪いものであった。
【0067】
実施例6
実施例1〜5で調製した各サンプルを、実際の生産時を考慮して以下に示す割合で混合し、サンプル1−8〜5−8とした。
サンプル1−8:No.1−2(4.01%)、No.1−3(43.05%)、No.1−4(28.06%)、No.1−5(24.88%)
サンプル2−8:No.2−2(31.76%)、No.2−3(32.94%)、No.2−4(21.05%)、No.2−5(14.25%)
サンプル3−8:No.3−2(17.55%)、No.3−3(30.98%)、No.3−4(25.08%)、No.3−5(26.39%)
サンプル4−8:No.4−2(7.19%)、No.4−3(22.62%)、No.4−4(30.87%)、No.4−5(39.32%)
サンプル5−8:No.5−2(49.15%)、No.5−3(25.55%)、No.5−4(14.00%)、No.5−5(11.30%)
【0068】
また、それぞれ未造粒の粉体(粒子径約40〜70μm)を、サンプル1−9〜5−9とした。
サンプル1−9:未造粒のパラヒドロキシ安息香酸粉体
サンプル2−9:未造粒のパラヒドロキシ安息香酸ブチルエステル粉体
サンプル3−9:未造粒のパラヒドロキシ安息香酸プロピルルエステル粉体
サンプル4−9:未造粒のパラヒドロキシ安息香酸エチルエステル粉体
サンプル5−9:未造粒のパラヒドロキシ安息香酸メチルエステル粉体
【0069】
これらのサンプルについて、各種粉体特性を表8に、ケーキング性を表9に示す。
【0070】
【表8】
Figure 0004093731
【0071】
【表9】
Figure 0004093731
【0072】
粉体特性は、安息角、スパチュラ角、見掛け比重について測定した。これらの測定は、上記の通り粉体特性測定装置(パウダテスタPT−N型 ホソカワミクロン(株))を用いて、同装置の説明書に基づいて行った。
また、スパチュラ角は、スパチュラの上に堆積する粒子の角度を測定した。
【0073】
ケーキング性
内径40mm、高さ60mmのガラス筒に試料を30g入れ、試料上に、円形状の厚紙、ガラス板、シリコン栓および500gの分銅をこの順に載置し、室温にて3日間保存した。保存後筒から試料を抜き取り、抜き取った試料の上に分銅を載せていき、固まった試料が崩壊した時点の荷重を崩壊荷重とした。崩壊重量が低いほど、ケーキング性が低いことになる。
【0074】
実施例6のサンプル1−8、2−8、3−8、4−8および5−8は、実際の生産時を想定して実施例1〜5の各粒子径の造粒物を混合したものであるが、未造粒の小粒子径のパラヒドロキシ安息香酸またはそのエステル類の粉体(サンプル1−9、2−9、3−9、4−9および5−9)に比べて、安息角、スパチュラ角共に小さく、流動性の改善されたものであることがわかる。また、圧縮度も7%以下であり、充填性に優れたものであった。さらに飛散距離も少ないため、作業性および取り扱い性に優れるものであった。さらにケーキング性においても、No.1−8および2−8は保存中のケーキング性が著しく抑制され(崩壊荷重0はケーキングしなかったことを意味する)、作業性に優れるものであった。

Claims (13)

  1. 平均粒子径が150μm〜3000μmであり、硬度が10g〜1000gであることを特徴とするパラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの造粒物。
  2. 全粒子に対して目開き74μmのメッシュを通過する粒子の割合が15重量%以下である、請求項1記載の造粒物。
  3. 粉化率が3%以下である、請求項1記載の造粒物。
  4. 安息角が30〜50度である、請求項1記載の造粒物。
  5. パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの造粒物のゆるみ見掛け比重が0.5〜0.85g/ccで、固め見掛け比重が0.55〜0.9g/ccであり、
    (固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100
    で表わされる圧縮度が10%以下である、請求項1記載の造粒物。
  6. パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの粉体を乾式圧縮して成型物を得、これを粉砕して分級して得られるものである、請求項1から5いずれかに記載の造粒物。
  7. 乾式圧縮が0.2〜2.0ton/cmの圧力で行われる、請求項6記載の造粒物。
  8. パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの粉体の水分含量が20%以下である、請求項6記載の造粒物。
  9. 水分含量が20%以下であるパラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの粉体を用い、さらなる水または結合剤を用いずに乾式圧縮して成型物を得、これを粉砕して分級して得られるものである、請求項1から8いずれかに記載の造粒物。
  10. パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの粉体を乾式圧縮して成型物を得、これを粉砕して分級することを特徴とする、請求項1記載の造粒物の製法。
  11. 乾式圧縮が0.2〜2.0ton/cmの圧力で行われる、請求項10記載の製法。
  12. パラヒドロキシ安息香酸またはパラヒドロキシ安息香酸エステルの粉体の水分含量が20%以下である、請求項10記載の製法。
  13. さらなる水および結合剤を用いないことを特徴とする、請求項12記載の造粒物の製法。
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