JP2010254756A - 高成型性、高流動性低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびそれを含む固形製剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリセルロースをエーテル化して得られる、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを圧密摩砕する工程と、圧密摩砕された低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを気流分級装置で処理して、平均粒子径が20〜50μm、90%積算粒子径が50〜100μm、及び平均粒子径と90%積算粒子径との比(90%積算粒子径/平均粒子径)が2.4以下である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得る分級工程とを少なくとも含んでなる低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法等を提供する。
【選択図】なし
Description
従来市販されている低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは結晶セルロースと比べ、塑性変形性が不足し、微粉の発生を抑制するためには多くの添加量が必要であった。
本発明によれば、アルカリセルロースをエーテル化して得られる、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを圧密摩砕する工程と、圧密摩砕された低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを気流分級装置で処理して、平均粒子径が20〜50μm、90%積算粒子径が50〜100μm、及び平均粒子径と90%積算粒子径との比(90%積算粒子径/平均粒子径)が2.4以下である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得る分級工程とを少なくとも含んでなる低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法が提供できる。
また、この方法で製造された、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を乾式造粒して造粒物を得る工程と、上記造粒物を乾式直接打錠する工程とを少なくとも含む固形製剤の製造方法を提供できる。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、水に不溶で膨潤性を有する粉末であって、高成型性、高流動性を示すものである。この低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、無水グルコース当たりの置換モル数が0.1〜0.4で、平均粒子径が20〜50μmで90%積算粒子径が50〜100μmであり、かつ、90%積算粒子径と平均粒子径との比(90%積算粒子径/平均粒子径)が2.4以下であることを特徴とする。BET法で測定した比表面積は、好ましくは1.0m2/g以上であり、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の弾性回復率は、好ましくは7%以下であり、ゆるめ嵩密度は、好ましくは0.3〜0.4g/mLである。
また、本発明によれば、上記高成型性、高流動性の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを好ましくは20質量%以上含有し、保存安定性に優れる固形製剤を提供できる。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は、高成型性を保持するために、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の範囲が好ましく、より好ましくは0.3を超えて0.4以下である。これは市販品の0.1〜0.3の範囲より高く、このため粒子の塑性変形性に優れる。また、0.4超過では製剤の崩壊時間が遅延する恐れがある。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は、比表面積は1.0m2/g以上が好ましく、これ以下では所望の成型性が得られない場合がある。
弾性回復率={(30秒後の錠剤厚み−最小錠剤厚み)/(最小錠剤厚み)}×100
ここで、「最小錠剤厚み」は、下杵が固定された平杵を用いて上杵にて粉体を圧縮したときの最下点、すなわち錠剤が最も圧縮されたときの厚みをいう。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の弾性回復率は、好ましくは7%以下であり、結合剤として汎用される結晶セルロースと類似の塑性変形体であり、緻密な成型体を形成することができる。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は高い成型性を保ちながら、高流動性を保持するために、平均粒子径の範囲は20〜50μmが好ましい。平均粒子径が20μm未満では、粉体の凝集性が増大し、粉体の流動性が低下する。また、50μmを超えると十分な比表面積が確保できず、成型性が低下してしまう。また、90%積算粒子径は50〜100μmの範囲が好ましく、さらに、90%積算粒子径と平均粒子径の比(90%積算粒子径/平均粒子径)が2.4以下が好ましい。この比が小さいほどシャープな粒度分布を示すもので、このように粒子径が揃っていると良好な流動性を示す。既存の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースでは、この比は2.5〜3.5の範囲にあり流動性が低く、製剤中に高添加で使用できない。即ち、既存の置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、特公昭57−53100号公報に記載されているようにエーテル化反応終了後に、反応触媒として用いられたアルカリを水中で部分的に中和し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを一部溶解させて、繊維質部分を調整している。また、特開平10−305084号公報では粉砕はハンマーミル等の衝撃型粉砕機によって行われることが記載されている。このように方法で得られた粉体は、原料パルプ由来の繊維状形態とアルカリに溶解後、中和析出した球状の粉体との混合物で、粒子形状の異なる粒子の混合物であった。このような粉体を後述の気流分級装置を使用しても、粒度分布比の低い、流動性に優れる粉体を得ることは難しかった。本発明では、ロールやボール等の媒体を用いて粉体を圧密摩砕することにより、粉砕物は粒子形状が揃った粉体となる。このような粉砕物を後述の気流分級装置を用いることにより、粒度分布比が2.4以下で流動性に優れる粉体を得ることができる。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は、0.3〜0.5g/mLが好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.4g/mLである。ゆるめ嵩密度が0.3g/mL未満だと粉体の流動性は低下する恐れがある。特に高速打錠においては、臼への充填が追いつかなくなり、錠剤重量にばらつきが生じる恐れがある。また、0.5g/mLを超える場合には、成型性が低下する場合がある。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製剤中の添加量は20質量%以上が好ましく、さらに好ましくは40質量%以上である。20質量%未満では成型性の低い薬物では実用的な硬度を有する錠剤が得られない場合がある。また、崩壊性、溶出性に優れる錠剤が得られない場合がある。上限については薬物の有効量等によって異なるが、好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
また、球形顆粒の製造において、糖等の核粒子に薬物と添加剤の混合物を散布し、結合剤溶液をスプレーしながら造粒するレイヤリングでは、既存の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末に比べて、粒子径が揃っているため、球形度の高い顆粒を製造することができる。
具体的には、原料パルプにNaOH水溶液を混合することにより、反応性に富むアルカリセルロースを作製し、次に反応器内部を不活性ガスと置換後、プロピレンオキサイド等のエーテル化剤を仕込み反応させ、反応後の粗反応品中に残存するNaOHを酸により中和後、洗浄、乾燥する。
ここで、上記の様な圧密摩砕することにより、比表面積の増大と、塑性変形性が向上し、成型性が向上する。
その分級装置としては、気流分級装置が好適に使用できる。他の機械的篩通過品では粒度分布幅の狭い粉体は得られない。ここでいう気流分級装置は、気流を用いて粉体の粒度を調製するもので、粉体の浮遊速度の違いを利用して分級する装置である。
例えば、分級装置としては、日清エンジニアリング社製ターボクラシファイアー、日本ニューマチック工業社製高精度気流分級機UFCtype、セイシン企業社製ファルマエアーセパレーター等が挙げられる。これらを用いて上記粉砕品を分級し、粒度分布幅の狭い粉体を調製することが可能である。製品の収率又は生産性を考慮して、上記記載の粉砕との組み合わせで使用することが好ましい。
例えば、ローラーミルの上部に気流分級機をセットし、粉砕物が所定の粒度になったものをバグフィルター等で回収する。所定粒度より大きいものはローラーミル内部に滞留し、新たな粉砕原料とともに粉砕を繰り返す。このような組み合わせにより、より効率的に所望の粒子径、粒度分布の粉体が得られる。
中枢神経系薬物としては、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン等が挙げられる。
循環器系薬物としては、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト等が挙げられる。
呼吸器系薬物としては、アンレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、グアイフェネシン等が挙げられる。
消化器系薬物としては、抗潰瘍作用を有するベンズイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、パンクレアチン、ビサコジル、5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
抗生物質及び化学療法剤としては、セファレキシン、セファクロール、セフラジン、アモキシシリン、ピバンピシリン、バカンピシリン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンステアレート、リンコマイシン、ドキシサイクリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾール等が挙げられる。
代謝系薬物としては、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アデノシントリフォスフェート、グリベンクラミド、塩化カリウム等が挙げられる。
ビタミン系薬物としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC等が挙げられる。
実施例1
8.6kgの粉末状のパルプ(無水換算8kg)を130L内部撹拌型反応機に仕込み35質量%苛性ソーダ3.5kgを反応機に仕込み45℃で30分間混合して、無水セルロースに対する苛性ソーダの質量比が0.151のアルカリセルロースを得た。次に、窒素置換を実施し、そこにプロピレンオキサイドを1.68kg(セルロースに対して0.21質量部)添加して、ジャケット温度60℃で1.5時間反応を行い、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.34のヒドキシプロピルセルロース粗反応物を得た。
次に、反応機に50質量%の酢酸11.8kgを添加し、混合して中和を行った。この中和物をバッチ式減圧濾過機にて90℃の熱水で洗浄を行った。この脱水物を流動層乾燥機にて吸気80℃で排気温度60℃になるまで乾燥を行った。
次に乾燥物をローラーミル石川島播磨重工業社製IS−250に日清エンジニアリング社製に気流分級機ターボクラシファイアTC−15Nを上部にセットした粉砕機を使用した。ローラー加圧力3MPa、テーブル回転数90rpm、ターボクラシファイアの回転数350rpm、風量10Nm3/分、供給時間5kg/時で粉砕を行い目的の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを得た。この粉体の平均粒子径、90%積算粒子径、粒度分布幅(90%積算粒子径/平均粒子径)、比表面積、弾性回復率、ゆるめ嵩密度を測定した結果を表1に示す。次に、下記組成および打錠条件で乾式直打法により、錠剤を作製した。その錠剤硬度、錠剤質量バラツキRSD(相対標準偏差)を評価した結果を表1に示す。なお、錠剤硬度は、ERWEKA TBH−30にて1mm/秒の圧縮速度で錠剤を圧縮したときの錠剤の破断強度を測定した。
錠剤組成 (質量部)
アセトアミノフェン微粉タイプ 20
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 80
ステアリン酸マグネシウム 0.5
打錠条件
打錠機:ロータリー打錠機 菊水製作所社製 12本立て
錠剤サイズ:200mg/錠、8mm−D、12mm−R
打錠圧:2.5kN、5.0kN、7.5kN
打錠速度:20rpm、60rpm
プロピレンオキサイドの添加量を1.28kg(セルロースに対して0.16質量部)に変更した以外は、実施例1と同様にして無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.25のヒドキシプロピルセルロース粗反応物を得た。
この粗反応物を、実施例1と同様にして、中和、洗浄及び乾燥した。
次に、この乾燥物を、ローラー加圧力4MPa、ターボクラシファイアの回転数200rpmとした以外は実施例1と同様にして粉砕を行い、目的の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを得た。この粉体の測定結果、実施例1と同様に乾式直打法により打錠して得られた錠剤の評価結果を表1に示す。
プロピレンオキサイドの添加量を0.88kg(セルロースに対して0.11質量部)に変更した以外は実施例1と同様にして、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.18のヒドキシプロピルセルロース粗反応物を得た。
この粗反応物を、実施例1と同様にして、中和、洗浄及び乾燥した。
次に、この乾燥物を、ローラー加圧力6MPa、ターボクラシファイアの回転数450rpmとした以外は実施例1と同様にして粉砕を行い、目的の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを得た。この粉体の測定結果、実施例1と同様に乾式直打法により打錠して得られた錠剤の評価結果を表1に示す。
この粒度分布幅と錠剤質量バラツキの関係を図1に示した。一般的に錠剤の質量バラツキは1%以下が好適と言われており、本発明の粒度分布幅2.4以下であれば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース高添加系で高速打錠時においても錠剤質量バラツキは1%以下となることが分かる。
実施例1と同様の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を用いて、下記組成および打錠条件で乾式直打法により、錠剤を作製した。その錠剤硬度を測定した結果を表2に示す。
錠剤組成 (質量部)
アセトアミノフェン微粉タイプ 80
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 20
ステアリン酸マグネシウム 0.5
打錠条件
打錠機:ロータリー打錠機 菊水製作所社製 12本立て
錠剤サイズ:200mg/錠、8mm−D、10mm−R
打錠圧:5.0kN、7.5kN、10.0kN、12.5kN
打錠速度:20rpm
実施例1と同様の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を用いて、下記組成および打錠条件で乾式直打法により、錠剤を作製した。その錠剤硬度を測定した結果を表2に示す。
錠剤組成 (質量部)
アセトアミノフェン微粉タイプ 60
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 40
ステアリン酸マグネシウム 0.5
打錠条件
打錠機:ロータリー打錠機 菊水製作所社製12本立て
錠剤サイズ:200mg/錠、8mm−D、10mm−R
打錠圧:5.0kN、7.5kN、10.0kN、12.5kN
打錠速度:20rpm
Claims (6)
- アルカリセルロースをエーテル化して得られる、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを圧密摩砕する工程と、
圧密摩砕された低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを気流分級装置で処理して、平均粒子径が20〜50μm、90%積算粒子径が50〜100μm、及び平均粒子径と90%積算粒子径との比(90%積算粒子径/平均粒子径)が2.4以下である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得る分級工程と、
を少なくとも含んでなる低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法。 - 請求項1に記載の方法で製造された、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を用いて、乾式直打による又は乾式造粒して得られた造粒物を乾式打錠による固形製剤の製造方法。
- 上記造粒物を得る工程において、上記低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末が、上記固形製剤中に20質量%以上含まれるように添加される請求項2に記載の固形製剤の製造方法。
- 平均粒子径が20〜50μmであり、90%積算粒子径が50〜100μmで、かつ平均粒子径と90%積算粒子径との比(90%積算粒子径/平均粒子径)が2.4以下である、無水グルコース単位当たりの置換モル数が0.1〜0.4の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末。
- BET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上であり、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の弾性回復率が7%以下であり、ゆるめ嵩密度が0.30〜0.40g/mLである請求項4に記載の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末。
- 請求項4又は請求項5に記載の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末を20質量%以上含んでなる固形製剤。
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