JP4093384B2 - 樹脂組成物及び多層構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)の樹脂組成物及びそれを用いた多層構造体に関し、更に詳しくは加熱延伸成形性(外観、ガスバリア性、連続成形性、耐衝撃デラミ性)に優れたEVOH樹脂組成物及びそれを用いた多層構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、EVOHは、透明性、帯電防止性、耐油性、耐溶剤性、ガスバリア性、保香性などに優れている反面、耐衝撃性が劣るため他の熱可塑性樹脂と積層して多層構造体として用いられている。しかし、この多層構造体を延伸しようとすると、延伸時にEVOH層に破断、ピンホール、クラックなどが発生し、その結果外観、ガスバリア性が悪化するといった問題点を有する。かかる問題点を改善する目的で、特開昭61−4752号公報には、少なくとも2種のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、溶液状態で混合した後、けん化することによって得られた特定のエチレン含量、けん化度を有し、かつ示差走査熱量計(以下DSCと略記する)による特有の融解曲線をもつEVOHからなる気体遮断性成形材料が開示され、特開平2−261847号公報には、2種以上の特定のEVOHからなり、再けん化前後の組成物がDSCにおいて特有の吸熱ピークを有するEVOH組成物が開示され、その実施例には同様に、2種のエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶液状態で混合した後にけん化することが挙げられ、特開平5−200865号公報には、特定のEVOH層を少なくとも一層有し、かつ90℃の熱水中に一分間浸漬したときの面積収縮率が10%以上である熱収縮フィルム又は多層フィルムが開示され、その実施例には、2種のEVOHを溶液状態で混合することが挙げられ、特開平8−311276号公報では、DSCで、特有の吸熱ピークを示すEVOH樹脂組成物およびそれを用いた多層延伸フィルムが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭61−4752号公報や特開平2−261847号公報開示技術では、加熱延伸成形後の成形物の外観とガスバリア性については改善が認められるものの、連続成形性と耐衝撃デラミ性が不十分であり、また特殊な製造法を用いているため生産コストが不利となり、特開平5−200865号公報開示技術では、得られたフィルムの延伸性および熱収縮性には優れるものの、そのガスバリア性に劣るため、熱収縮性フィルム以外の高いガスバリア性を要求される用途には不適であり、特開平8−311276号公報開示技術では、多層延伸フィルムの分野においては優れた適性を示すものの、カップやボトル等の厚肉容器の分野においては、加熱延伸成形体の耐衝撃デラミ性の点で、更なる改良が求められている。
【0004】
【問題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、示差走査熱量計で測定(昇温速10℃/min)される融解ピーク温度(Tm)が175℃以上で、且つ、エチレン含有量が20〜60モル%、ケン化度80モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)を55〜95重量%含み、かつこれに対してエチレン含有量の差が6〜20モル%及びケン化度の差が1.5〜10モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる2種以上のEVOHであって、2種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を溶液状態でブレンドするか、またはメルトサイドフィード法により溶融ブレンドすることにより得られた、下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とする樹脂組成物が、かかる課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
|Sy−Sn|≦100・・・(1)
Sa≦100・・・(2)
5≦K≦300・・・(3)
但し、上記式中Syはレオメーターで測定(温度100℃、引張速度50mm/min)される樹脂組成物から得られたフィルム(厚み30μm)の引張試験時の応力−歪み曲線から得られる降伏点応力値(g/mm2)を、Snは同曲線から得られるネッキング応力値(g/mm2)を、Saは同曲線から得られる塑性変形域の応力の振幅値(g/mm2)を、Kは、樹脂組成物中のカリウム含有量(ppm)を示す。尚、上記のレオメーター使用による測定とは、レオメーターを引張試験装置として使用し、制御計測部のアナログ出力端に、レコーダーを接続し、試験片に加わっている荷重に比例する信号を検出して引張時の応力変化を測定したものである。
【0005】
上記のSy、Sn及びSaを図1でより具体的に説明すれば、図1は本発明の樹脂組成物から得られたフィルム(厚み30μm)の引張試験により測定された応力−歪み曲線の一例であり、縦軸は応力を、横軸は、歪み(%)を示す。歪み(%)とは、もとのフィルム〔長さ(L0)〕を引っ張った後のフィルムの長さをLとすると〔(LーL0)/L0〕×100(%)で示される。歪み100(%)とはもとのフィルムの長さと同じ長さだけ、引っ張った状態を示す。図1において、Syは最初の応力のピーク値、Snは塑性変形領域での最初の応力の極小値を示し、Saは歪みが100(%)の前後の応力の極小値と極大値(あるいは極小値と極大値)の差を示す。歪み100%が応力の極小値あるいは極大値となった場合はその前の極大値あるいは極小値との差を示す。また、Sy−Snは、弾性変形領域から塑性変形領域への臨界点における応力の変動値を意味している。つまり、本発明では、|Sy−Sn|が100(g/mm2)以下であり、Saが100(g/mm2)以下であればよい。
【0006】
本発明は、2種以上のEVOHの混和手段がその相溶性に大きな影響を与えるとの知見のもと、それをより向上すること及び組成物中のカリウム量のコントロールという工夫によって、加熱延伸成形性を改善しようとするものである。
【0007】
以下に、本発明を詳細に述べる。本発明の樹脂組成物は、少なくとも2種以上のEVOHからなり、その1種はTmが175℃以上(好ましくは180〜205℃)のEVOH〔以下EVOH(A)と略記する〕であることが必要である。該Tmが175℃未満のEVOHでは樹脂組成物のガスバリア性が不十分で不適当である。また、EVOH(A)のエチレン含有量は20〜60モル%であり、ケン化度は80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上である。エチレン含有量が10モル%未満では高湿時のガスバリア性、溶融成形性が低下し、70モル%を越えると充分なガスバリア性が得られない。又、ケン化度が80モル%未満ではガスバリア性や、熱安定性、耐湿性が低下する。
【0008】
該EVOH(A)はエチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化によって得られ、該エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、公知の任意の重合法、例えば懸濁重合、エマルジョン重合、溶液重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
また、該EVOH(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。又、同様に本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0009】
本発明の樹脂組成物に含有される上記のEVOH(A)以外のその他のEVOHとしては特に限定されず、上記のEVOH(A)とエチレン含有量やケン化度が異なるものであればよく、特に、EVOH(A)と次に多く含有されるEVOHとのエチレン含有量の差は6〜20モル%であり、特には10〜18モル%であることが好ましい。該エチレン含有量の差が4モル%未満では本発明の効果が発揮されない場合があり好ましくない。また、EVOH(A)と次に多く含有されるEVOHとのケン化度の差は1.5〜10モル%であり、特には2〜6モル%であることが好ましい。該ケン化度の差が1モル%未満でも、同様に本発明の効果が発揮されない場合があり好ましくない。
【0010】
また、本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)の含有量が55〜95重量%である。かかる含有量が50重量%未満では、樹脂組成物のガスバリア性が不十分となり不適当である。
【0011】
また、本発明の樹脂組成物は、下記式(1)を満足することも必要である。
|Sy−Sn|≦100・・・(1)
なお、上記においてSyはレオメーターで測定(温度100℃、引張速度50mm/min)される樹脂組成物から得られたフィルム(厚み30μ)の引張試験時の応力−歪み曲線から得られる降伏点応力値(g/mm2)を、Snは同曲線から得られるネッキング応力値(g/mm2)を示す。
|Sy−Sn|が100(g/mm2)を越えると、加熱延伸成形時の連続成形性が不十分となり不適当であり、好ましくは50(g/mm2)以下である。
【0012】
また、本発明の樹脂組成物は、下記式(2)を満足することも必要である。
a≦100・・・(2)
なお上記においてはSaは同曲線から得られる塑性変形域の応力の振幅値(g/mm2)を示す。
aが100(g/mm2)を越えると、加熱延伸成形時の連続成形性が不十分となり不適当であり、好ましくは80(g/mm2)以下である。
【0013】
上記の(A)〜(C)からなる樹脂組成物は、(A)〜(C)成分をブレンドすれば良いのであるが、具体的には、(A)成分に(C)成分を含有させた後に(B)成分を溶融混練する方法が用いられる。
【0014】
尚、K(カリウム)の測定方法は以下の方法による。
乾燥した試料を精秤して、恒量化した白金蒸発皿に入れ、電熱器で炭化する。次にガスバーナーで加熱し、煙が出なくなるまで焼く。更に電気炉内に前記の白金蒸発皿を入れ、昇温して、完全に灰化させる。冷却後、灰化物に塩酸及び純水を入れ、電熱器で加熱して溶解し、メスフラスコに流し込み、純水で容量を一定にして原子吸光分析用の試料とする。
別途、調製した標準液(カリウム1ppm、塩酸約0.5N)を対照液として原子吸光度の測定を行い、吸光度の比率からカリウムの量を定量する。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、EVOH同士の相溶性を考慮したブレンド法を用いることが大切で、該ブレンド法としては、(I)EVOHを共に溶液状態でブレンドする方法、(II)EVOHを共に溶融状態でブレンドする方法(メルトサイドフィード法)がある。
【0016】
(I)の方法について詳細に述べる。EVOHを溶液にするにあたっては、それぞれのEVOHを溶解可能な溶剤に溶解すればよく、その溶剤や方法等については限定されないが、該溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等やこれらの溶剤を含有する水(混合溶剤)を挙げることができ、好ましくは水/アルコール混合溶剤が、特に好ましくは水/メタノールおよび水/プロパノール混合溶剤が用いられる。水/溶剤の重量混合比は10/90〜70/30の範囲から選択することができ、さらにそれぞれのEVOHの水/溶剤混合溶液において下記式(4)を満足することが好ましい。
0.0933×(50−Et)2+6≦H2O≦0.0933×(50−Et)2+26・・・(4)
ここで、EtはEVOHのエチレン含有量(モル%)、H2OはEVOHの水/溶剤混剤中の水の含有量(重量%)をそれぞれ表す。
【0017】
上記式(4)を満足しないような混合比の水/溶剤混合溶剤を用いて、各EVOH溶液同士をブレンドすると、本発明の樹脂組成物を得ることは難しい場合がある。各混合溶剤中に含有される各EVOHの量としては、2〜70重量%(更には5〜60重量%、特には10〜55重量%)が、均一にブレンドできる点で好ましく、具体的には、イ)各EVOHの粉体やペレット等を溶剤や水/溶剤の混合溶剤中で所定の濃度となるように溶解したり、ロ)各EVOH製造時のケン化処理後のEVOHの溶剤溶液に水、溶剤またはその混合溶剤を適当量添加して調整したり、ハ)各EVOH製造時の析出または析出−水洗後の含水EVOHのペレットを溶剤または水/溶剤の混合溶剤中で所定の濃度と液組成になるように溶解したりする方法を挙げることができ、生産上好適にはロ)の方法が採用され得る。
【0018】
こうして得られた2種のEVOH溶液の混合方法については特に限定されず、両者を一括して混合して攪拌する方法、一方を攪拌下にもう一方を徐々に添加する方法などが挙げられる。3種以上のEVOH溶液の混合方法としては、3種以上を一括して混合して攪拌する方法、最も多く含有されるEVOHの溶液に、他の溶液を一括して混合する方法、最も多く含有されるEVOHの溶液に、他の溶液を個別に混合する方法等が挙げられる。混合に使用する装置としては、公知の混合攪拌機やラインミキサー等が用いられる。混合時および混合後攪拌時のEVOH溶液の温度は、30〜110℃に保っておくと、作業性と混合の均一性の点で好ましい。
【0019】
かくして得られた、2種以上のEVOHの均一混合溶液は、次いで溶剤または混合溶剤を除去することにより、本発明のEVOH樹脂組成物が得られる。溶剤または水混合溶剤の除去方法については特に限定されず、i)EVOH混合溶液を加熱して溶剤または水を除去する方法、ii)EVOH混合溶液を凝固液と接触させて析出せしめてからさらに乾燥する方法等を挙げることができ、生産上好適にはii)の方法が採用され、以下ii)の方法について説明する。
【0020】
かかるEVOH混合溶液はそのままでもよいし、該溶液を適宜濃縮あるいは希釈したりすることも可能である。この時点で、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、アンチブロッキング材(酸化ケイ素、タルク等の微小粒子など)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、抗菌剤等の添加剤を配合しても良い。
【0021】
かかるEVOH混合溶液は、次いで凝固液中にストランド状に押し出して析出させるのであるが、EVOH溶液中のEVOHの濃度(2種以上のEVOHの総含有量)としては10〜60重量%が好ましい。
【0022】
凝固液としては水又は水/アルコール混合溶媒、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機酸エステル等が用いられるが水又は水/アルコール混合溶媒が好ましい。該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールが用いられるが、好ましくはメタノールが用いられる。
EVOH溶液を凝固液と接触させる温度は、−10〜40℃が好ましい。
【0023】
EVOH溶液は任意の形状を有するノズルにより、上記の如き凝固液中にストランド状に押し出される。次いで、ストランド状に押し出されたEVOHは凝固が充分進んでから切断され、ペレット化されその後水洗される。水洗条件としては、ペレットを温度10〜60℃の水槽中で水洗する。かかる水洗により、EVOH中のオリゴマーや不純物が除去される。
【0024】
通常は、上記のペレット化の後に乾燥工程を経て、EVOHペレットが得られる。かかる乾燥方法として、種々の乾燥方法を採用することが可能であり、具体的には流動乾燥、静置乾燥、およびそれらの組合せが挙げられる。なお、ここで言う流動乾燥とは、実質的にEVOHペレットが機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる乾燥を意味し、該乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円筒乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥とは、実質的にEVOHペレットが撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる乾燥を意味し、該乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型サイロ乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
乾燥処理後のEVOHペレットの含水率は0.001〜2.0重量%(更には0.01〜1.0重量%)になるようにするのが好ましく、該含水率が0.001重量%未満では、該ペレットのロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に2.0重量%を越えると成形品に発泡が発生しやすくなり好ましくない。
【0026】
次に、(II)の方法について詳細に述べる。メルトサイドフィード法とは、樹脂組成物成分の一方を溶融状態にしておき、それに他の成分を溶融状態で加えた後に溶融混合する成形方法で、例えば、EVOH(A)を二軸押出機により溶融温度185〜270℃程度で加熱溶融させた後、該二軸押出機のサイド供給口から、単軸押出機や二軸押出機等で溶融温度150〜250℃程度で加熱溶融させた他のEVOHを供給し、均一な組成物となるように混練する方法が挙げられる。3種以上のEVOHを混合する場合は他の2種以上のEVOHを予め溶融混合してからEVOH(A)に供給するのが好ましい。
【0027】
(II)はEVOH(A)あるいはEVOHの熱劣化を抑制するために、各押出機のホッパー内およびサイド供給口内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましく、(I)で述べた添加剤を配合してもよい。
【0028】
以上で式(1)、(2)を満足する組成物が得られるのであるが、更に本発明においては式(3)を満足するようにカリウムを含有させることも必要で実際にはカリウム化合物を樹脂組成物中に含有させればよく、該カリウム化合物としては、特に限定されないが、酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、ホウ酸カリウムが代表的なものとして挙げられる。これらの中でも、酢酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、およびこれらの併用系が、加熱延伸成形性の向上効果に優れる点で特に好ましい。
【0029】
樹脂組成物中にカリウム化合物を含有させる方法、時期等は特に限定されず、上記のブレンド法において、x)複数のEVOHをブレンドする際に同時に添加する方法、y)あらかじめ少なくとも一種のEVOHに含有させた後、複数のEVOHをブレンドする方法、z)複数のEVOHをブレンドした後のEVOH樹脂組成物に含有させる方法を挙げることができる。例えば、前述のEVOH溶液ブレンド法においては、混合前の少なくとも一種のEVOH溶液が、EVOHに対して5〜10000ppmのカリウムを含有するようにカリウム化合物を添加しておいたり、混合後のEVOH組成物溶液に、該溶液中のEVOHに対して5〜1000ppmのカリウムを含有するようにカリウム化合物を添加したり、更に、EVOH組成物溶液を凝固浴中で析出させて得た多孔性の20〜60重量%の含水ペレットを、10〜5000ppmのカリウムを含有する水溶液になるようにカリウム化合物を添加した水溶液中で処理したりすることが、カリウム化合物の分散性に優れる点で特に好ましい。
【0030】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、成形物の用途に多用され、溶融混練によりフィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形される。これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)やペレットを用いて再び溶融成形に供することも多い。溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、200〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
【0031】
本発明で得られた樹脂組成物は、上述の如き成形物に用いることができるが、特に該樹脂組成物からなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層してなる多層構造体として用いることが好ましく、耐水性、機械的特性、ヒートシール性等が付与された実用に適した多層構造体が得られる。
該多層構造体は、本発明の樹脂組成物を用いているため、ガスバリア性、透明性はもとより加熱延伸時の延伸成形性に非常に優れた効果を示すものである。
【0032】
該多層構造体を製造するに当たっては、本発明で得られた樹脂組成物の層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該樹脂組成物のフィルム、シートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該樹脂組成物を溶融押出する方法、該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られた樹脂組成物のフィルム、シートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
【0033】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ランダムおよびブロック)共重合体、エチレン−アクリル酢エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。EVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、多層構造体物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。
【0034】
更に、本発明で得られた樹脂組成物から一旦フィルム、シート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
多層構造体の層構成は、本発明で得られた樹脂組成物の層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b1/a/b2/a/b1等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0035】
又、共押出の場合、通常は樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層の間に接着性樹脂が設けられる。接着性樹脂としては、不飽和カルボン酸又はその無水物で変性された熱可塑性樹脂、特にポリオレフィン系樹脂が好ましく、上記で述べたのと同じ樹脂を不飽和カルボン酸又はその無水物で共重合又はグラフト変性することにより得ることができる。勿論、変性には、未変性の熱可塑性樹脂とその酸変性物のブレンドも含まれる。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。
このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.01〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.03〜1重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、加熱延伸成形性、特に耐衝撃デラミ性が不十分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。
さらに、aにb、bにaをブレンドしたり、aやbの少なくとも一方に両層面の密着性を向上させる樹脂を配合することもある。
【0036】
本発明においては、該多層構造体は、そのまま各種形状で使用されるが、更に該多層構造体の物性を改善するために、(加熱)延伸してフィルム、シートにしたり、カップ、トレイ、ボトル、タンク等の容器形状に成形する。該成形を行うためには加熱延伸処理を施すことが好ましく、該処理を行うと、高延伸しても、破断、ピンホール、クラック、偏肉等が生じず、ガスバリア性や透明性にも優れた多層構造体(多層容器)を得ることができる。
ここで加熱延伸成形とは、該多層構造体を種々のヒーターで均一に加熱して、チャック、プラグ、真空力、圧空力などにより、各種形状に均一に成形する操作を意味する。
【0037】
加熱延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、加熱延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、深絞成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等のものが採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。加熱延伸時の多層構造体の温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
本発明においては、特にシートから真空圧空成形によりカップ、トレイを得たり、パリソンからブロー成形によりボトル、タンクを得たりするような、厚物の加熱延伸成形分野において、特に効果的である。
上記の如く得られたフィルム、シート或いは多層容器等は食品、飲料、化粧品、医薬品、工業薬品、農薬、溶剤、燃料等各種の包装材料として有用である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
実施例1
樹脂組成物の製造
エチレン含有量(Et)32モル%、ケン化度99.5モル%、MFR(メルトフローレート)3.5g/10分(210℃、荷重2160g)、Tm=183℃のEVOH(A)を、水/メタノール(水の含有量:H2O=50%)混合溶剤に、EVOH濃度が40%になるように溶解して、EVOH(A)溶液を調製した。下記の(4)式にEt、H2Oの数値を代入すると、36.2≦50≦56.2となり、該式を満足するものであった。
0.0933×(50−Et)2+6≦H2O≦0.0933×(50−Et)2+26 ・・・ (4)
また、エチレン含有量(Et)47モル%、ケン化度96.8モル%、MFR30g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(B)を水/メタノール(組成重量比20/80、H2O=20%)に、樹脂濃度が35%になるように溶解して、EVOH(B)溶液を調製した。
また、上記同様Et、H2Oの数値を上記(4)式に代入すると、6.8≦20≦26.8となり、該式を満足するものであった。
尚、Tmはパーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC7)を用いて、昇温速度10℃/minで測定した。
【0039】
上記EVOH(A)溶液83部を40℃で攪拌下、EVOH(B)溶液17部を徐々に添加して混合攪拌した。更に1%の酢酸カリウム水溶液2.5部を加えて、40℃で30分間混合攪拌し混合溶液を、5℃の凝固液(重量組成比:水/メタノール=5/95)中に析出させてストランドとし、これを切断して得た含水ペレットを30℃の水槽中で水洗してから、回分式流動層乾燥器(塔型)を用いて、75℃の窒素ガスを流動させながら約3時間、続いて回分式箱型乾燥器(通気式)を用いて、125℃の窒素ガスで約18時間乾燥して、含水率0.3%の目的とするEVOH組成物(ペレット)を得た。該組成物中のEVOH(A)の含有量は85(%)、Kの含有量は25(ppm)であった。
【0040】
該樹脂組成物をTダイを備えた単軸押出機に供給して下記の条件で製膜して、厚み30μmのフィルムを得た。
Figure 0004093384
【0041】
上記で得られたフィルムを、レオメーター(レオロジ社製、DVE−V4)を使用して引張試験(温度100℃、引張速度50mm/min、試験片幅5mm、チャック間距離10mm、予熱時間5min)を行った。レオメーターで引張試験を行う場合は、チャック間距離の調整のために取付けられた本体操作部を上記引張速度で引張るように調整して実施した。具体的には本体操作部(MOTOR CONTROL)を操作(UPとFASTを同時に押す)して実施した。引張時の応力変化は、レオメーターの制御計測部のアナログ出力端子にレコーダーを接続し、試験片に加わっている荷重に比例する信号を検出して測定した。得られた応力−歪み曲線を解析したところ、Sy=1040(g/mm2)、Sn=1026(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=14(g/mm2)となり、Sa=30(g/mm2)であった。
【0042】
多層構造体の製造
上記樹脂組成物を用いて、フィードブロック3種5層のTダイを備えた多層押出装置に供給して、ポリスチレン(エーアンドエムスチレン社製『ダイアレックス HT516』)層/接着樹脂(三菱化学社製『モディックAP F502』)層/樹脂組成物層/接着樹脂層(同左)/ポリスチレン層(同左)の層構成(厚み450/90/120/90/450μm)とし、次にプラグアシスト型真空圧空成形機(浅野研究所製)にて、ヒーター温度が500℃で加熱時間28sec(カップ;上面65mmΦ、底面60mmΦ、深さ55mm)の延伸成形加工を行って多層構造体を作製した。
かかる多層構造体(カップ)について、外観、ガスバリア性、耐衝撃デラミ性、連続成形性を下記の如く評価した。
【0043】
(外観)
上記で得られたカップを、光学顕微鏡で観察し下記の基準により評価した。
○・・・微小なクラックやピンホール、局部的な偏肉は全く認められなかった。
△・・・カップの側面部に微小なクラックやピンホール或いは局部的な偏肉が若干認められた。
×・・・カップの側面部に微小なクラックやピンホール及び局部的な偏肉が著しく認められた。
【0044】
(ガスバリア性)
更に得られたカップの上面をアルミ金属板で密封して酸素透過度を測定(モダンコントロール社製、「OXTRAN10/50」を用いて23℃、50%RH条件)した。
【0045】
(耐衝撃デラミ性)
更に得られたカップに水を充填し、上面をLLDPEフィルムでヒートシールしたものについて、1mの高さから同一側面が落下面になるように10回繰り返して落下させた(温度23℃)後のカップを、目視で観察し下記の基準により評価した。
○・・・デラミ(層間剥離現象)は全く認められなかった。
△・・・若干デラミが認められた。
×・・・著しいデラミが認められた。
(連続成形性)
また、上記の延伸成形加工を連続して2時間行って、同様に120個のカップを得、以下のように評価した。
○・・・120個とも上記外観、耐衝撃デラミ性の評価が○である。
△・・・111〜119個が上記外観、耐衝撃デラミ性の評価が○である。
×・・・110個以下が上記外観、耐衝撃デラミ性の評価が○である。
【0046】
実施例2
樹脂組成物の製造
エチレン含有量34モル%、ケン化度99.6モル%、MFR(メルトフローレート)3g/10分(210℃、荷重2160g)、Tm=181℃、酢酸カリウム含有量120ppmのEVOH(A)と、エチレン含有量44モル%、ケン化度95.0モル%、MFR15g/10分(210℃、荷重2160g)、リン酸水素二カリウム含有量160ppmのEVOH(B)を用意した。ただし、カリウムの含有方法については、各EVOHについて、その水/メタノール溶液を凝固浴中に析出させてストランドとし、これを切断して得た多孔性含水ペレットを30℃の水槽中で水洗してから、さらに酢酸カリウム(EVOH(A))およびリン酸水素二カリウム(EVOH(B))の水溶液中で処理して乾燥することにより含有せしめた。
次いでEVOH(A)を二軸押出機に供給して230℃で加熱溶融させた。続いてEVOH(B)を単軸押出機で230℃で加熱して溶融したものを、EVOH(A)/EVOH(B)の重量比が70/30になるように前記二軸押出機のサイド供給口から供給したのち、二軸押出機で両者が均一になるように混練りし押し出して、目的とする樹脂組成物(ペレット)を得た。該組成物中のEVOH(A)の含有量は70(%)、Kの含有量は55(ppm)であった。
次いで実施例1と同様にして応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=945(g/mm2)、Sn=940(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=5(g/mm2)となり、更にSa=40(g/mm2)となった。
さらに実施例1と同様にして多層構造体を作製し、同様に評価を行った。
【0047】
実施例3
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.6モル%、MFR(メルトフローレート)3g/10分(210℃、荷重2160g)、Tm=183℃、酢酸カリウム含有量100ppmのEVOH(A)と、エチレン含有量38モル%、ケン化度99.2モル%、MFR8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(B)と、エチレン含有量44モル%、ケン化度95.0モル%、MFR15g/10分(210℃、荷重2160g)、リン酸水素二カリウム含有量135ppmのEVOH(C)を用意した。ただし、カリウムの含有方法については、EVOH(A)及び(C)の水/メタノール溶液を凝固浴中に析出させてストランドとし、これを切断して得た多孔性含水ペレットを30℃の水槽中で水洗してから、さらに酢酸カリウム(EVOH(A))およびリン酸水素二カリウム(EVOH(C))の水溶液中で処理して乾燥することにより含有せしめた。
次いでEVOH(A)とEVOH(B)の重量比が75/25になるようにドライブレンドして一括で二軸押出機に供給して230℃で加熱溶融させた。続いてEVOH(C)を単軸押出機で230℃で加熱して溶融したものを、[EVOH(A)+EVOH(B)]/EVOH(C)の重量比が80/20になるように前記二軸押出機のサイド供給口から供給したのち、二軸押出機で両者が均一になるように混練りし押し出して、目的とする樹脂組成物(ペレット)を得た。該組成物中のEVOH(A)の含有量は60(%)、Kの含有量は36(ppm)であった。
次いで実施例1と同様にして応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=985(g/mm2)、Sn980=(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=5(g/mm2)となり、更にSa=25(g/mm2)であった。
さらに実施例1と同様にして多層構造体を作成し、同様に評価を行った。
【0048】
比較例1
実施例1において、EVOH(A)の替りに、エチレン含有量40モル%、ケン化度99.5モル%、MFR3.5g/10分(210℃、荷重2160g)、Tm=170℃のEVOHを使用して、水/メタノールの組成重量比30/70の混合溶剤とした以外は同様に樹脂組成物(ペレット)を得て、同様に評価を行った。
尚、該組成物中の上記EVOHの含有量は85(%)、Kの含有量は25(ppm)であった。
さらに、応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=905(g/mm2)、Sn=900(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=5(g/mm2)となり、更にSa=25(g/mm2)であった。
【0049】
比較例2
実施例1において、EVOH(B)として、エチレン含有量45モル%、ケン化度99.2モル%、MFR(メルトフローレート)12g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(B1)と、エチレン含有量47モル%、ケン化度96.8モル%、MFR(メルトフローレート)30g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH(B2)の等量ブレンド品を使用して、該ブレンド品の水/MeOH溶液(樹脂濃度35%)とEVOH(A)溶液を、EVOH(A)とEVOH(B1)とEVOH(B2)の配合比がEVOH(A)/EVOH(B1)/EVOH(B2)=40/30/30となるように混合した以外は同様に樹脂組成物(ペレット)を得て、同様に評価を行った。すなわち、該組成物中のEVOH(A)のTm=183(℃)、EVOH(A)の含有量は40(%)、Kの含有量は25(ppm)であった。
さらに、応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=725(g/mm2)、Sn=723(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=2(g/mm2)となり、更にSa=10(g/mm2)であった。
【0050】
比較例3
実施例1において、EVOH(A)とEVOH(B)を溶液ブレンドではなく、両者ペレットと酢酸カリウムを所定量ドライブレンドして単軸押出機に供給して230℃で溶融ブレンドした以外は同様に樹脂組成物(ペレット)を得て、同様に評価を行った。
尚、該組成物のTmは183(℃)、EVOH(A)の含有量は85(%)、Kの含有量は25(ppm)であった。
さらに、応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=1130(g/mm2)、Sn=1010(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=120(g/mm2)となり、更にSa=90(g/mm2)であった。
【0051】
比較例4
実施例1において、EVOH(A)とEVOH(B)を溶液ブレンドではなく、両者ペレットと酢酸カリウムを所定量ドライブレンドして二軸押出機に供給して220℃で溶融ブレンドした以外は同様に樹脂組成物(ペレット)を得て、同様に評価を行った。
尚、該組成物のTmは183(℃)、EVOH(A)の含有量は85(%)、Kの含有量は25(ppm)であった。
さらに、応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=1100(g/mm2)、Sn=1010(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=90(g/mm2)となり、更にSa=110(g/mm2)であった。
【0052】
比較例5
実施例1において、EVOH(A)とEVOH(B)の総計に対する酢酸カリウムの配合量を900ppmにした以外は同様に樹脂組成物(ペレット)を得て、同様に評価を行った。
尚、該組成物のTmは183℃、EVOH(A)の含有量は85(%)、Kの含有量は360(ppm)であった。
さらに、応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=1060(g/mm2)、Sn=1025(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=35(g/mm2)となり、更にSa=45(g/mm2)であった。
【0053】
比較例6
実施例1において、EVOH(A)とEVOH(B)の総計に対する酢酸カリウムの配合量を6ppmにした以外は同様に樹脂組成物(ペレット)を得て、同様に評価を行った。
尚、該組成物のTmは183℃、EVOH(A)の含有量は85(%)、Kの含有量は2(ppm)であった。
さらに、応力−歪み曲線を測定したところ、Sy=1045(g/mm2)、Sn=1025(g/mm2)であり、|Sy−Sn|=20(g/mm2)となり、更にSa=30(g/mm2)であった。
実施例、比較例のそれぞれの評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0004093384
【0055】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)を55〜95重量%含み、かつこれに対してエチレン含有量の差が6〜20モル%及びケン化度の差が1.5〜10モル%である2種以上のEVOHからなり、2種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を共に溶液状態でブレンドするか、またはメルトサイドフィード法により溶融ブレンドすることにより得られるため、特定の関係式を満足するので、該樹脂組成物は加熱延伸成形性(外観、ガスバリア性、耐衝撃デラミ性、連続成形性)に優れ、それを用いた多層構造体も加熱延伸成形性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の樹脂組成物の応力−歪み曲線の概念図
【符号の説明】
y:降伏点応力値(g/mm2
n:ネッキング応力値(g/mm2
a:塑性変形域の応力の振幅値(g/mm2

Claims (1)

  1. 示差走査熱量計で測定(昇温速10℃/min)される融解ピーク温度(Tm)が175℃以上で、且つ、エチレン含有量が20〜60モル%、ケン化度80モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を55〜95重量%含み、かつこれに対してエチレン含有量の差が6〜20モル%及びケン化度の差が1.5〜10モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる2種以上のEVOHであって、2種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を共に溶液状態でブレンドするか、またはメルトサイドフィード法により溶融ブレンドすることにより得られた、下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とする樹脂組成物。
    |Sy−Sn|≦100・・・(1)
    Sa≦100・・・(2)
    5≦K≦300・・・(3)
    但し、上記式中Syはレオメーターで測定(温度100℃、引張速度50mm/min)される樹脂組成物から得られたフィルム(厚み30μm)の引張試験時の応力−歪み曲線から得られる降伏点応力値(g/mm2)を、Snは同曲線から得られるネッキング応力値(g/mm2)を、Saは同曲線から得られる塑性変形域の応力の振幅値(g/mm2)を、Kは、樹脂組成物中のカリウム含有量(ppm)を示す。
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