JP2005329718A - エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法と樹脂ペレット - Google Patents
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法と樹脂ペレット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】押出機を用いて含水押出することにより、環境への排出負荷を低減し、かつ押出機への噛み込み性、押出安定性、熱安定性(ロングラン性)が良好なエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂ペレットを提供する。
【解決手段】EVOHを押出機に供給し、押出機内における樹脂溶融温度を70〜170℃の範囲に保ち、押出機から吐出した直後の含水率が5〜40重量%となるように押出機内の水分量を調整し、押出後カットする。これにより樹脂ペレットの切断面を偏光顕微鏡で観察したとき、中心部において、球晶が観察されず、または樹脂ペレット中に滑剤を含有せず、かつ前記樹脂ペレットを積み上げたときの安息角が23度以下のペレットを得る。
【選択図】 図1
【解決手段】EVOHを押出機に供給し、押出機内における樹脂溶融温度を70〜170℃の範囲に保ち、押出機から吐出した直後の含水率が5〜40重量%となるように押出機内の水分量を調整し、押出後カットする。これにより樹脂ペレットの切断面を偏光顕微鏡で観察したとき、中心部において、球晶が観察されず、または樹脂ペレット中に滑剤を含有せず、かつ前記樹脂ペレットを積み上げたときの安息角が23度以下のペレットを得る。
【選択図】 図1
Description
本発明は、押出機への噛み込み性の良好で、製造コストの安価なエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう。)樹脂ペレットおよびその製造方法に関する。
EVOHは、ガスバリヤー性が高く、耐油・耐有機溶剤性、保香性、透明性などに優れるため、食品包装用として広く使用されている。食品包装用としては、押出成形によるフィルム、ブロー成形によるボトル、真空成形による各種パック類など様々な成形加工法が採用されている。このような様々な成形加工法においては、樹脂ペレットを押出機のホッパーなどに投入することから成形加工が開始される。
しかしながら、従来のEVOH樹脂ペレットは、押出機へ樹脂をフィードする際、ホッパー内でブロッキングを起こしやすく、押出機への噛み込み性は良好ではないという問題があった。
また成形加工時には、溶融温度を200℃以上としなければならないが、ポリマーの熱安定性を向上しておかないと溶融成形時にポリマーが劣化し、フィシュアイやブツが生じて製品の品質を低下させる原因となる。そのため、熱安定性を向上させておく必要がある。
従来、EVOHにかかる特性を付与するために、酸性物質および/または金属塩などの微量成分を添加する方法が知られており、その一例として、上記に示すようなロングラン性およびゲル・ブツに代表される外観を改善するために、周期律表第2属の金属塩を0.0005〜0.05重量%(金属換算)、pKa3.5以上で沸点が180℃以上の酸を0.002〜0.2重量%およびpKa3.5以上で沸点が120℃以下の酸を0.01〜0.2重量%含有させ、かつ特定の流動特性を示すEVOH組成物が開示されている(特許文献1)。
上記に示すような微量成分を添加したEVOHペレットを得る方法としては、(1)EVOHペレットに微量成分の水溶液をスプレーし、ヘンシェルミキサーで混合後乾燥する方法(特許文献2)、(2)EVOHペレットに粉末状の微量成分を混合し、スーパーミキサーでドライブレンドする方法(特許文献3)、(3)EVOHペレットを微量成分を含有する水溶液に浸漬し、脱液後乾燥する方法(特許文献4)、(4)EVOHペレットの含水率を20〜80重量%に調整した後、ホウ素化合物、酢酸塩およびリン酸化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物の水溶液と接触させる方法(特許文献5)などが知られている。
しかしながら、前記(1)または(2)の添加方法では、EVOHペレットにおける微量成分の均一性が不充分であり、添加量の制御も困難であるために、安定した品質の製品を得ることが困難である。また前記(3)または(4)の方法は、溶液濃度を調節することによりEVOHペレットに含有される微量成分の量を制御しやすいメリットがある。しかし、前記方法で処理されたEVOHペレットは、溶融押出によって成形する場合において押出機のモータートルクおよびトルク変動が大きくなるため、通常、押出時にはEVOHからなる樹脂組成物に滑剤を添加する必要があった。しかしながら、EVOHからなる樹脂組成物は、食品包装用途などに好適に用いられるために、かかる滑剤の添加は衛生上の観点から必ずしも好ましくないため、滑剤の低減または排除が望まれていた。
前記(3)または(4)の方法で処理されるEVOHペレットは、通常、ケン化後のEVOHのメタノール溶液を、水/メタノール混合溶液からなる凝固浴中に析出させて得たストランドをカットすることによって得られる。ところが、エチレン含有量が20モル%未満のEVOHおよび/またはケン化度95モル%未満のEVOHは、上記凝固浴中でストランドが析出し難く、また、カットミスや微粉の混入が発生し易いため、ペレットを安定して生産することが困難であり、場合によってはストランド析出が出来ず、ペースト状のEVOHが不定形な形状で凝固したクラム状物として析出する。しかしながら、(3)または(4)の方法で前記クラム状析出物を処理した場合は、微量成分を均質に混ぜ合わせることが困難であり、安定した品質の製品を得ることが出来ない。
一方、エチレン含有量20モル%以上、ケン化度95モル%以上のEVOHであっても、生産効率を向上させるために高速でストランド析出を行った場合にはストランドの析出が不安定となるため、ペレットを安定して生産することが困難となり、(3)または(4)の処理方法では、安定した品質の製品を得ることができなかった。
さらに、製造プロセスの観点から見た場合、従来のEVOHペレットを酸性物質および/または金属塩を含有する処理液に浸漬する処理方法の場合、前記ペレットを浸漬処理するための処理浴や処理塔が必要であり、かかる処理浴または処理塔で用いられた処理液は、EVOHの処理後には酸性物質および/または金属塩が消費されているため、使い捨てにするか、あるいは回収して、適切な量の酸性物質および/または金属塩を再添加する必要がある。
処理液を使い捨てにすることは環境への影響の観点から好ましくなく、通常、排水処理設備を通して廃棄される。また、処理液を回収して再使用する場合は、安定した品質の製品を供給するために、酸性物質および/または金属塩を再添加する設備と処理液中のオリゴマーなどに代表される不純物の除去設備が必要であった。
以上のとおり、前記従来の方法は、大きな処理装置の設置や長時間処理が必要で、やはり製造コストが高いという問題があった。
また、含水押出としては特定のエネルギーで溶融押出成形する例(特許文献6)、特定のシリンダー温度のコントロールにより溶融押出成形する例(特許文献7)が提案されている。
しかしながら、前記従来の方法は、いずれも操作が面倒であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットを製造するための処理方法としては好ましいものではなかった。
特開昭64−66262号公報
特開昭55―12108号公報
特開昭57−34148号公報
特開昭64−66262号公報
WO99/05213号明細書
特開平11−58500号公報
特開平11−58501号公報
本発明は、前記従来の問題を解決するため、環境への排出負荷を低減し、かつ押出機への噛み込み性、押出安定性、熱安定性(ロングラン性)が良好なエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明の第1番目の製造方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を押出機に供給し、押出機内における樹脂溶融温度を70〜170℃の範囲に保ち、前記共重合体を押出機から吐出した直後の含水率が5〜40重量%となるように押出機内の水分量を調整し、押出後前記共重合体をカットすることを特徴とする。
次に本発明の第2番目の製造方法は、押出機内でエチレン−ビニルアルコール共重合体にカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加することを特徴とする。前記添加剤の添加は、EVOHが含水かつ溶融状態であることが好ましい。
次に本発明の第1番目のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットは、樹脂ペレットの切断面を偏光顕微鏡(ただし、倍率600)で観察したとき、球晶が観察されないことを特徴とする。
次に本発明の第2番目のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットは、樹脂ペレット中に滑剤を含有せず、かつ前記樹脂ペレットを積み上げたときの安息角が23度以下であることを特徴とする。
本発明によれば、EVOHを押出機を用いて含水押出することにより、環境への排出負荷を低減し、かつ押出機への噛み込み性、押出安定性、熱安定性(ロングラン性)が良好なEVOH樹脂ペレットを製造できる。また、比較的低温度で処理できるので、ポリマーの劣化を防止したEVOH樹脂ペレットを製造できる。
本発明においては、EVOH樹脂に、さらにカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤が配合されていることが好ましい。熱安定性(ロングラン性)をさらに良好に保持できるからである。また前記添加剤のうち、カルボン酸としては、25℃におけるpKaが3.5以上のものが好ましい。カルボン酸のより好ましい例は、酢酸または乳酸である。
またEVOHのエチレン含有量は3〜70モル%の範囲が好ましい。またEVOHのケン化度は80モル%〜100モル%の範囲が好ましい。
また本発明方法においては、前記共重合体をカットした後、水分率が1重量%以下になるまで乾燥することが好ましい。
また本発明方法においては、押出機に供給するEVOHの含水率が0.5〜70重量%の範囲であることが好ましい。
また本発明方法においては、押出機から吐出した直後の樹脂の含水率が5〜40重量%となるように、押出機中で不足水を供給するかまたは過剰水を除去することが好ましい。
また本発明方法においては、含水かつ溶融状態のEVOHに添加剤を添加することが好ましい。
また本発明方法においては、押出機内における樹脂温度が70〜170℃の範囲であることが好ましい。
また本発明方法においては、EVOHからなる樹脂組成物の押出機吐出直後の含水率が5〜40重量%であることが好ましい。
また本発明方法においては、添加剤を水溶液で添加することが好ましい。
また本発明方法においては、押出機が混練部を有する押出機であることが好ましい。
また本発明方法においては、添加剤の添加位置が押出機の混練部であることが好ましい。
また本発明方法においては、添加剤の添加位置が1箇所または2箇所であることが好ましい。
また本発明方法においては、押出後、前記共重合体をカットし、水分率が1重量%以下になるまで乾燥することが好ましい。
次に図面を用いて本発明を説明する。図1は本発明方法の一実施形態の概略工程図を示す説明図である。2軸押出機20の原料供給部1から含水状態のEVOHを供給する。含水かつ溶融または半溶融状態のEVOHは、フルフライトスクリュー部2により前方に向けて送られ、逆フライトスクリュー部3で混練され、ベントシリンダー部7では過剰の水分が脱離され水分調整される。その後、フルフライトスクリュー部4により前方に向けて送られ、微量成分添加部8から添加剤が所定量添加される。その後、逆フライトスクリュー部5で混練され、フルフライトスクリュー部6を通過して吐出口11から吐出される。吐出口11より下流側でペレット化される。9はEVOHの温度を検出し制御するための温度センサーである。また10はシリンダーバレルである。
本発明に用いられるEVOHとしては、エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化して得られるものが好ましい。エチレン含有量は3〜70モル%であり、ガスバリア性と溶融成形性に優れた成形物を得るという観点からは、好適には10〜60モル%、さらに好適には20〜55モル%、最適には25〜55モル%であるものが好ましい。さらに、ビニルエステル成分のけん化度は80モル%〜100モル%であり、ガスバリア性に優れた成形物を得るという観点からは、好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。
一方、エチレン含量3〜20モル%のEVOHは、水溶性を付与させたEVOHとして好適に用いられ、かかるEVOH水溶液はバリア性、塗膜成形性に優れ、優れたコート材料として用いられる。
また、ケン化度80〜95モル%のEVOHは、溶融成形性を改善するために好適に用いられる。かかるEVOHは単独で用いることも可能であるが、ケン化度が99モル%を超えるEVOHとブレンドして用いる実施態様も好適である。
しかし、製造プロセスの観点から見た場合、上記のエチレン含量が3〜20モル%のEVOHおよびケン化度80〜95モル%のEVOHは、何れも従来の方法通りに、かかるEVOHのメタノール溶液を凝固浴にストランド状に押し出して析出させることが困難であり、安定したペレットの生産が困難であり、かつ前記ペレットに酸性物質および金属塩を均一に含有させることも困難であった。このようなEVOHに対しても、安定したペレットの生産、および前記ペレットへの酸性物質および金属塩の均一添加が可能になった観点からも、本発明の意義は大きい。
EVOHのエチレン含有量が3モル%未満では溶融成形性が悪く、耐水性、耐熱水性、高湿度下でのガスバリア性が低下する恐れがある。一方、70モル%を超える場合は、バリア性や印刷適性等が不足する。また、けん化度が80モル%未満では、バリア性、耐着色性、耐湿性が不満足なものとなる。
以下にEVOHの製造方法を具体的に説明する。エチレンとビニルエステルの重合は溶液重合に限るものではなく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであっても良い。また連続式、回分式のいずれであってもよい。回分式の溶液重合の重合条件の一例を以下に示す。
溶媒;アルコール類が好ましいが、その他エチレン、ビニルエステルおよびエチレン−ビニルエステル共重合体を溶解し得る有機溶剤(ジメチルスルホキシドなど)を用いることができる。アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等を用いることができ、特にメチルアルコールが好ましい。
触媒;2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤およびイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤等を用いることができる。
ビニルエステル;酢酸ビニル、脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
(1) 温度;20〜90℃、好ましくは40℃〜70℃。
(2) 時間;2〜15時間、好ましくは3〜11時間。
(3) 重合率;仕込みビニルエステルに対して10〜90%、好ましくは30〜80%。
(4) 重合後の溶液中の樹脂分;5〜85%、好ましくは20〜70%。
(5) 共重合体中のエチレン含有率;3〜70モル%。好適には10〜60モル%、さらに好適には20〜55モル%、最適には25〜55モル%
なお、エチレンとビニルエステル以外にこれらと共重合し得る単量体、例えば、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸またはその無水物、塩、あるいはモノまたはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸またはその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を少量共存させることも可能である。
(1) 温度;20〜90℃、好ましくは40℃〜70℃。
(2) 時間;2〜15時間、好ましくは3〜11時間。
(3) 重合率;仕込みビニルエステルに対して10〜90%、好ましくは30〜80%。
(4) 重合後の溶液中の樹脂分;5〜85%、好ましくは20〜70%。
(5) 共重合体中のエチレン含有率;3〜70モル%。好適には10〜60モル%、さらに好適には20〜55モル%、最適には25〜55モル%
なお、エチレンとビニルエステル以外にこれらと共重合し得る単量体、例えば、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸またはその無水物、塩、あるいはモノまたはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸またはその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を少量共存させることも可能である。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応ビニルエステルを追い出す。エチレンを蒸発除去したエチレン−ビニルエステル共重合体から未反応のビニルエステルを追い出す方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から前記共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応ビニルエステルを除去した前記共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
未反応ビニルエステルを除去した前記共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、前記共重合体中のビニルエステル成分をケン化する。ケン化方法は連続式、回分式いずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが用いられる。例えば、回分式の場合のケン化条件は次の通りである。
(1) 前記共重合体溶液濃度;10〜50%
(2) 反応温度;30〜65℃
(3) 触媒使用量;0.02〜1.0当量(ビニルエステル成分当り)
(4) 時間;1〜6時間
反応後のEVOHはアルカリ触媒、副生塩類、その他不純物等を含有するため、これらを必要に応じて中和、洗浄することにより除去することが好ましい。
(1) 前記共重合体溶液濃度;10〜50%
(2) 反応温度;30〜65℃
(3) 触媒使用量;0.02〜1.0当量(ビニルエステル成分当り)
(4) 時間;1〜6時間
反応後のEVOHはアルカリ触媒、副生塩類、その他不純物等を含有するため、これらを必要に応じて中和、洗浄することにより除去することが好ましい。
上記のカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種はそれぞれ単独で添加することも可能であるが、実施態様に応じて、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる複数種の化合物を下記に示した好適な範囲で添加することにより、EVOHからなる樹脂組成物ペレットの各種性能を改善することが可能である。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットに対し、カルボン酸を添加することが、熱安定性改善の観点から好ましい。上記カルボン酸としては、25℃におけるpKaが3.5以上であることが好ましい。25℃におけるpKaが3.5未満のカルボン酸を添加した場合、EVOHからなる樹脂組成物のpHの制御が困難となり、耐着色性や層間接着性が不満足なものになる恐れがある。上記カルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、乳酸などが例示されるが、コストなどの面から、酢酸又は乳酸を用いることが好ましい。
本発明のEVOHからなる乾燥樹脂組成物ペレット中のカルボン酸の含有量は、10〜5000ppmであることが好ましい。カルボン酸の含有量が10ppm未満の場合、溶融成形時に着色が発生する恐れがあり、また5000ppmを超える場合は層間接着性が不充分となる恐れがある。カルボン酸の含有量の下限は好適には30ppm以上であり、さらに好適には50ppm以上である。また、カルボン酸の含有量の上限は好適には1000ppm以下であり、さらに好適には500ppm以下である。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットに対し、リン酸化合物を添加することも、熱安定性改善の観点から好ましい。本発明のEVOHからなる乾燥樹脂組成物ペレット中のリン酸化合物の含有量はリン酸根換算で1〜1000ppmであることが好ましく、リン酸化合物を適切な範囲で添加することにより、成形物の着色およびゲル・ブツの発生を抑制することが可能である。リン酸化合物の添加による上記の改善効果はEVOHからなる樹脂組成物ペレットを用いたロングラン成形時および成形物の回収時に特に顕著である。リン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が例示されるが、これらに限定されない。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。
リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で下限は10ppm以上が好ましく、より好ましくは30ppm以上であり、上限は500ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましい。かかる範囲のリン酸化合物を含有することで、より着色が少なく、ゲル化しにくいEVOHからなる樹脂組成物ペレットを得ることができる。リン酸化合物の含有量が1ppm未満の場合は、溶融成形時の着色が激しくなる恐れがある。特に、熱履歴を重ねるときにその傾向が顕著であるために、前記樹脂組成物ペレットを成形して得られた成形物が、回収性に乏しいものとなる恐れがある。また、リン酸化合物の含有量が1000ppmを超える場合は成形物のゲル・ブツが発生しやすくなる恐れがある。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットは、熱安定性向上、機械的性質の改善の観点から、ホウ素化合物を含有させることが好適である(特公昭49-20615号公報)。EVOHからなる樹脂組成物にホウ素化合物を添加した場合、EVOHとホウ素化合物との間にキレート化合物が生成すると考えられ、かかるEVOHを用いることによって、通常のEVOHよりも熱安定性の改善、機械的性質を向上させることが可能である。
ホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸(単にホウ酸と表示)が好ましい。
本発明のEVOHからなる乾燥樹脂組成物ペレット中のホウ素化合物の含有量はホウ素換算で20〜2000ppmであることが好ましく、50〜1000ppmであることがより好ましい。10ppm未満ではホウ素化合物を添加することによる熱安定性の改善効果が得られない恐れがあり、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる恐れがある。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットに対し、アルカリ金属塩を含有させることにより、層間接着性や相容性を効果的に改善することが可能である。本発明のEVOHからなる乾燥樹脂組成物ペレット中のアルカリ金属塩の添加量は、アルカリ金属元素換算で5〜5000ppmが好ましい。より好ましくは20〜1000ppm、さらに好ましくは、30〜750ppmである。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどがあげられ、アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウムが好適である。
また、本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットに対し、アルカリ土類金属塩を添加することも好適である。アルカリ土類金属塩を添加した場合、耐着色性の改善効果が若干低下するが、前記樹脂組成物ペレットを用いた溶融成形時における、熱劣化した樹脂の成形機のダイ付着量をさらに低減することが可能である。アルカリ土類金属塩は特に限定されないが、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩など挙げられ、特にマグネシウム塩とカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩のアニオン種も特に限定されるものではないが、酢酸アニオンやリン酸アニオンが好適である。
本発明のEVOHからなる乾燥樹脂組成物ペレット中のアルカリ土類金属の含有量は金属換算で10〜1000ppmが好適であり、より好適には20〜500ppmである。アルカリ土類金属の含有量が10ppm未満の場合はロングラン性の改善効果が不充分となる恐れがあり、1000ppmを超えると樹脂溶融時の着色が激しくなる恐れがある。
上記に示したカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種をEVOHからなる樹脂組成物ペレットに含有させるにあたり、エチレン含有量3〜70モル%、ケン化度80モル%以上のEVOHに押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加することが本発明の一つの特徴である。押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加することにより、EVOHに対してカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を配合させ、EVOHに対してカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を非常に良好な均一性で混練させることが出来る。かかる構成を採用することにより、溶融成形時の押出機のモータートルクおよびそのトルク変動が小さく、押出安定性、耐着色性およびロングラン性に優れ、ゲル・ブツの発生およびダイ付着量が少ないEVOHからなる樹脂組成物ペレットを得ることが可能となる。尚、本発明において、EVOHに押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加するにあたり、前記カルボン酸等の押出機へのフィード位置は、押出機内のEVOHが溶融した状態の位置で添加することが、本発明の効果を充分発揮する点で好ましい。特に、含水かつ溶融状態のEVOHに前記添加剤を添加することが好ましい。
なお押出機は混練部を有していることが好ましく、特に前記添加剤の添加位置が押出機の混練部であることが、添加剤が均質に配合されやすいことから好ましい。
また、上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩以外の金属塩として、周期律表の第4周期に記載される金属塩を使用することも可能である。
カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加形態は特に限定されない。押出機内に乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法などが例示されるが、添加量の制御や、EVOH中にカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を均質に分散させる観点からは、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を溶媒に溶解させて溶液として添加する方法が特に好適である。かかる溶媒は特に限定されないが、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の溶解性、コスト的なメリット、取り扱いの容易性、作業環境の安全性等の観点から、水が好適である。
EVOHに対してカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加する方法は特に限定されない。カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を、1箇所あるいは2箇所以上から押出機に添加することが好ましい。
EVOHに対してカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を溶液として添加する際には、EVOHの乾燥重量100重量部に対して、前記溶液の添加量の下限は1重量部以上であることが好ましく、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが特に好ましい。また、前記溶液の添加量の上限は、EVOHの乾燥重量100重量部に対して50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることが特に好ましい。前記溶液の添加量が1重量部未満の場合は、一般に溶液の濃度が高くなるため、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加における分散性の改善効果が低下する恐れがある。また、50重量部を超える場合はEVOHの含水率の制御が困難となる恐れがあり、押出機内でEVOHからなる樹脂組成物において、樹脂と樹脂に含有される水が相分離を起こしやすくなる恐れがある。
押出機内に投入される前のEVOHの形状は特に限定されない。凝固浴中に析出させたストランドをカットして得られるペレットが好適に用いられる他、EVOHのペーストが不定形な形状で凝固したクラム状析出物なども用いることが可能である。従来の、EVOHを酸性物質および/または金属塩の溶液に含浸させる処理方法では、上記のようなEVOHのクラム状析出物などは良好な品質の製品を得ることが困難であったが、本発明により、かかる形態のEVOHに関してもカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を均質に添加することが可能となり、安定した品質のEVOHからなる樹脂組成物ペレットを得ることが可能である。
押出機内に投入される前のEVOHの含水率の下限は0.5重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましい。また、押出機内に投入される前のEVOHの含水率の上限は70重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることがさらに好ましい。押出機内に投入される前のEVOHの含水率がかかる範囲にあることで、押出機内において、乾燥状態のEVOHの融点よりも低い温度で溶融状態のEVOHを得ることが可能となり、押出機内におけるEVOHの熱劣化を抑制することが可能であり、かつ押出安定性を良好にすることが可能である。
押出機内に投入される前のEVOHの含水率が0.5重量%未満の場合は、押出機内におけるEVOHの熱劣化の抑制効果が不充分となる恐れがある。また、含水率が70重量%を超える場合は、EVOHからなる樹脂組成物において、樹脂と樹脂に含有される水が相分離を起こしやすくなる恐れがある。樹脂と樹脂に含有される水が相分離を起こした場合は、樹脂表面が濡れ状態となり摩擦が大きくなるために、押出機ホッパー内でブリッジが発生しやすくなる恐れがあり、EVOHからなる樹脂組成物ペレットの生産性に悪影響を及ぼす恐れがある。
押出機内に投入される前のEVOHの含水率を調整する方法としては特に限定されない。含水率を上げる際には、樹脂に水をスプレーする方法、樹脂を水中に浸漬させる方法、樹脂を水蒸気と接触させる方法などが挙げられる。また、含水率を低下させる際には適切な乾燥方法を用いれば良く、たとえば流動式熱風乾燥機あるいは静置式熱風乾燥機を用いて乾燥する方法が挙げられるが、乾燥斑を低減するという観点から流動式熱風乾燥機を使用するのが好ましい。さらに、熱劣化を抑制する観点から、乾燥温度は120℃以下であることが好ましい。
押出機内における樹脂温度は、70〜170℃であることが好ましい。樹脂温度が70℃未満の場合は、EVOHが完全に溶融しない恐れがあり、添加するカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の分散性の改善効果が不充分となる恐れがある。好適には80℃以上であり、より好適には90℃以上である。また、樹脂温度が170℃を超える場合は、EVOHが熱劣化を受けやすくなる恐れがある。さらに、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を水溶液として添加する場合は、樹脂温度が170℃を超える場合は水分の蒸発が激しくなるため、好適な水溶液濃度でEVOHと前記水溶液を混合することが困難となる恐れがある。好適には150℃以下であり、より好適には130℃以下である。かかる樹脂温度の調整方法は特に限定されないが、押出機内シリンダの温度を好適に設定する方法が特に好ましい。
本発明において、樹脂温度とは、押出機シリンダーに設置した温度センサーにより検出した温度をいい、検出個所は押出機先端部吐出口付近の温度を示す。
押出機吐出直後のEVOHからなる樹脂組成物の含水率は5〜40重量%であることが好ましく、5〜35重量%であることが特に好ましい。押出機吐出直後のEVOHからなる樹脂組成物の含水率が40重量%を超える場合は、EVOHからなる樹脂組成物において、樹脂と樹脂に含有される水が相分離を起こしやすくなる恐れがあり、その結果、押出機吐出後のストランドが発泡しやすくなる恐れがある。また、押出機吐出直後のEVOHからなる樹脂組成物の含水率が5重量%未満の場合は、前記押出機内におけるEVOHの加熱による劣化の抑制効果が不充分となる恐れがあり、得られるEVOHペレットの耐着色性が不満足なものとなる恐れがある。
また、押出機内で不足水を供給するかまたは過剰水を除去することによって押出機吐出直後の樹脂の含水率を上記範囲内とする押出方法を採用することもできる。
かかる押出機吐出直後の含水率を制御する方法としては特に限定されないが、押出機投入前のEVOHの含水率を適切に調整する方法、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を適切な濃度の水溶液として添加する方法、押出機内の少なくとも一カ所以上に脱気用ベントシリンダーを設置して用いてEVOHからなる樹脂組成物から分離水を脱水除去する方法等が例示される。
押出機から吐出されたEVOHからなる樹脂組成物をペレット化する方法は特に限定されないが、前記樹脂組成物をダイスからストランド状に凝固浴中に押出し、適切な長さにカットする方法が例示される。ペレットの取り扱いの容易性の観点から、ダイスの口径は2〜5mmφ(φは直径。以下同。)が好適であり、ストランドを1〜5mm程度の長さでカットすることが好ましい。
得られたペレットは、通常、乾燥工程に供される。乾燥後のEVOHからなる樹脂組成物ペレットの含水率は、一般に1重量%以下とされ、好適には0.5重量%以下とされる。乾燥方法は特に限定されないが、静置乾燥法、流動乾燥法などが好適なものとして挙げられ、幾つかの乾燥方法を組み合わせた多段階の乾燥工程を採用することも可能である。この中でも、初めに流動乾燥法で乾燥し、引き続いて静置乾燥法で乾燥する方法が好適である。
本発明の樹脂ペレットの一つの特徴は、その切断面を偏光顕微鏡(倍率600)で観察したとき、中心部において球晶が観察されないことである。ケン化後のEVOH溶液を析出させて得たストランドを切断したペレットを乾燥して得られた従来の製法でのペレットでは球晶が観察される(比較例1)。また、水を含まないEVOHペレットを高温で溶融成形した場合のペレット(比較例2)でも球晶が観察される。これに対して、本発明のペレットは球晶が観察されず、良好な性能を示すものである。
また本発明の樹脂ペレットの別の特徴は、樹脂ペレット中に滑剤を含有しない状態であっても、樹脂ペレットを積み上げたときの安息角が23度以下であることである。かかる低い安息角を有することで押出機への噛み込み性が良好となる。滑剤を配合しないことは、食品包装等に用いられることが多いEVOH樹脂においては衛生上の観点から好ましい。なおここで滑剤を含有しないとは、樹脂組成物中に含有しないのみならず、ペレット表面にも付着していないことをいう。
従来のEVOHペレットを酸性物質および/または金属塩を含有する処理液に浸漬する処理方法の場合、処理後のEVOHの含水率は通常40〜70重量%程度であった。ところが、本発明のEVOHを押出機で溶融し、前記押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加する処理方法の場合は、押出機吐出直後のEVOHからなる樹脂組成物の含水率を任意に調節が可能であり、押出機吐出直後の含水率は好適には5〜40重量%である。従って従来法よりも含水率の低いペレットを得ることが可能である。かかる含水率の低いペレットは、乾燥プロセスにおけるエネルギーの消費量を低減することができる観点から好適である。
特に、含水率が40重量%を超えるペレットは、乾燥温度を100℃以上にした場合、ペレット同士の融着が発生する恐れがある。かかる観点からも、上記のような含水率の低いペレットが得られる、EVOHを押出機で溶融し前記押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加する本発明の処理方法は好適である。
上記の方法で得られたEVOHからなる樹脂組成物ペレットに、重合度、エチレン含有率およびケン化度の異なるEVOHをブレンドし溶融成形することも可能である。また、前記樹脂組成物ペレットに他の各種可塑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等の補強剤等を適量添加することも可能である。本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットは押出機のモータートルクおよびそのトルク変動が小さく、押出安定性に優れているため、実施態様によっては滑剤の使用量を大幅に低減すること、あるいは滑剤を使用しないことが可能な点で特に好適である。ただし、前記ペレットを用いて成形物を成形する際の滑剤の使用は任意であり、制限されない。
また、EVOH以外の熱可塑性樹脂を本発明の目的を阻害しない範囲で適量配合することも可能である。熱可塑性樹脂としては各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、またはこれらを不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンなど)、各種ナイロン(ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6/6,6共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリアセタールおよび変性ポリビニルアルコール樹脂などが用いられる。
得られた本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットは溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形体に成形される。これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等が可能である。溶融温度は前記共重合体の融点等により異なるが150〜270℃程度が好ましい。
本発明のEVOHからなる樹脂組成物ペレットは、上述した如く前記樹脂組成物のみを単層とする樹脂成形物の製造以外に、本発明の組成物フィルム、シート等の成形物を少なくとも1層とする多層構造体として実用に供せられることが多い。前記多層構造体の層構成としては、本発明のEVOHからなる樹脂組成物をE、接着性樹脂をAd、熱可塑性樹脂をTで表わすと、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等が挙げられるが、これに限定されない。それぞれの層は単層であってもよいし、場合によっては多層であってもよい。
用いられる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(炭素数4〜20のα−オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独またはその共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエステルエラストマー、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステルが好ましく用いられる。
EVOHと熱可塑性樹脂とを積層するに際し、接着性樹脂を使用する場合があり、この場合の接着性樹脂としてはカルボン酸変性ポリオレフィンからなる接着性樹脂が好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物を化学的(たとえば付加反応、グラフト反応により)結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体が好適である。ここでオレフィン系重合体とはポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテンなどのポリオレフィン、オレフィンと前記オレフィンとを共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステルなど)との共重合体、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体などを意味する。このうち直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5〜55重量%)、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8〜35重量%)が好適であり、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好適である。エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物とはエチレン性不飽和モノカルボン酸、そのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸、そのモノまたはジエステル、その無水物があげられ、このうちエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好適である。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステルなどが挙げられ、なかんずく、無水マレイン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物のオレフィン系重合体への付加量またはグラフト量(変性度)はオレフィン系重合体に対し0.01〜15重量%、好ましくは0.02〜10重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物のオレフィン系重合体への付加反応、グラフト反応は、たとえば溶媒(キシレンなど)、触媒(過酸化物など)の存在下でラジカル重合法などにより得られる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンのASTM−D1238に準じD−1238−65Tにより、190℃で測定したメルトインデックス(MI)は0.2〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10g/10分である。これらの接着性樹脂は単独で用いてもよいし、また二層以上を混合して用いることもできる。
本発明においては、上記多層構造体はそのまま各種形状のものに用いることが出来るが、前記多層構造体の物性を改善するためには延伸処理を施すことも好ましく、破断、ピンホール、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート等が得られる。
延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好である。本発明においては、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラ、デラミ等の生じない延伸フィルムや延伸シート等が得られる。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等の他、深絞成形、真空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は80〜170℃、好ましくは100〜160℃程度の範囲から選ばれる。
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。又、得られる延伸フィルムは必要に応じ、冷却処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
かくして得られた多層構造体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる多層構造体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
上記に示す多層構造体を製造するに当たっては、本発明のEVOHからなる樹脂組成物より得られたフィルム、シート等の成形物の層の片面又は両面に他の基材をラミネートするのであるが、ラミネート方法としては、例えば、前記成形物(フィルム、シート等)に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に前記樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、熱可塑性樹脂とEVOHからなる樹脂組成物を共射出する方法、更にはEVOHからなる樹脂組成物より得られた成形物と他の基材のフイルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられ、中でも他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法が好ましく用いられる。本発明のEVOHからなる樹脂組成物は層間接着性に非常に優れるため、共押出成形用樹脂組成物、およびそれを用いた共押出多層構造体に好適である。
本発明の組成物と熱可塑性樹脂との共押出の方法は、マルチマニホールド合流方式Tダイ法、フィードブロック合流方式Tダイ法、インフレーション法のいずれでもよい。
このようにして得られた共押出多層構造体を二次加工することにより、各種成形品(フィルム、シート、チューブ、ボトルなど)を得ることができ、たとえば以下のようなものが挙げられる。
(1)多層構造体(シート又はフィルムなど)を一軸または二軸方向に延伸、又は二軸方向に延伸、熱処理することによる多層共延伸シート又はフィルム
(2)多層構造体(シート又はフィルムなど)を圧延することによる多層圧延シート又はフィルム
(3)多層構造体(シート又はフィルムなど)真空成形、圧空成形、真空圧空成形、等熱成形加工することによる多層トレーカップ状容器
(4)多層構造体(パイプなど)からのストレッチブロー成形等によるボトル、カップ状容器
このような二次加工法には特に制限はなく、上記以外の公知の二次加工法(ブロー成形など)も採用できる。
(1)多層構造体(シート又はフィルムなど)を一軸または二軸方向に延伸、又は二軸方向に延伸、熱処理することによる多層共延伸シート又はフィルム
(2)多層構造体(シート又はフィルムなど)を圧延することによる多層圧延シート又はフィルム
(3)多層構造体(シート又はフィルムなど)真空成形、圧空成形、真空圧空成形、等熱成形加工することによる多層トレーカップ状容器
(4)多層構造体(パイプなど)からのストレッチブロー成形等によるボトル、カップ状容器
このような二次加工法には特に制限はなく、上記以外の公知の二次加工法(ブロー成形など)も採用できる。
このようにして得られた共押出多層構造体、共射出多層構造体はゲル・ブツの発生が少なく、また、フィルム成形時のフィッシュアイおよびストリークの発生が少ないので、食品容器の材料、たとえば深絞り容器、カップ状容器、ボトル等の材料として好適に用いられる。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。以下「%」、「部」とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。尚、水はすべてイオン交換水を使用した。
(1)含水率の測定
試料とする含水EVOH20gを良く乾燥した秤量ビンに取り、熱風乾燥機で120℃、24時間乾燥し、乾燥前と乾燥後のEVOHの重量変化から、下記式(1)を用いてEVOHの含水率を求めた。
含水率(重量%)=(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量×100(1)
(2)球晶数測定法
前記組成物ペレットをライカ社製ライヘルト−ウルトラカットS 型を用いて、厚み1μmのスライス片を作成した。得られたサンプル片に封入液(屈折率1.53)を加え、偏光顕微鏡(Nikon社製OPTIPHOT-POL型)を用いて600倍で観察した。ペレット中心部(表層から0.1mm以上内部)を観察し、球晶の有無を観察した。
試料とする含水EVOH20gを良く乾燥した秤量ビンに取り、熱風乾燥機で120℃、24時間乾燥し、乾燥前と乾燥後のEVOHの重量変化から、下記式(1)を用いてEVOHの含水率を求めた。
含水率(重量%)=(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量×100(1)
(2)球晶数測定法
前記組成物ペレットをライカ社製ライヘルト−ウルトラカットS 型を用いて、厚み1μmのスライス片を作成した。得られたサンプル片に封入液(屈折率1.53)を加え、偏光顕微鏡(Nikon社製OPTIPHOT-POL型)を用いて600倍で観察した。ペレット中心部(表層から0.1mm以上内部)を観察し、球晶の有無を観察した。
(3)安息角測定方法
図2に示す測定装置30を用いた。測定装置30は、横470mm、奥行き330mm、深さ80mmのステンレス製バット31[バフ研磨仕上げ(#400仕上げ)]と、外側直径42mm、内側直径35mm、高さ365mmの中空円筒形試料受け32(塩ビ製パイプ)と、前記中空円筒形試料受け32を保持する試料受け保持器33と支持リング34からなる。まずバット31を水平面上に設置し、その中央部に試料受け32を置く。ペレット試料の水分率は0.3重量%以下にしておき、測定場所の雰囲気は温度:20±2℃,相対湿度:65%RHに保つ。試料容器(300ml)でペレット試料を採取し、全試料を試料受け32内に静かに注ぎ入れる。試料を注ぎ入れた後、試料受け32を試料が山状になるところまで、静かに持ち上げる。次に、バット31上に刻んだ8方向の放射状の直線上にある試料の4方向の直径を読み取る。このとき、個別に飛散した試料は除き、試料の外周を結んだラインを読み取る。バット31の試料の円錐(山状の底部と頂点)の高さを求める。高さの測定方法は、バット31の上部にJIS C型1級ステンレス製定規を橋渡しして、その定規の下部と円錐の頂点の長さを前記定規で測り、その値をバットの深さ(80mm)から差し引いた値を円錐の高さとする。測定回数は5回実施してその平均を求める。安息角計算は、次の式により、算出し、JIS Z 8401によってJIS R 9301に従い整数第一位に丸める。
図2に示す測定装置30を用いた。測定装置30は、横470mm、奥行き330mm、深さ80mmのステンレス製バット31[バフ研磨仕上げ(#400仕上げ)]と、外側直径42mm、内側直径35mm、高さ365mmの中空円筒形試料受け32(塩ビ製パイプ)と、前記中空円筒形試料受け32を保持する試料受け保持器33と支持リング34からなる。まずバット31を水平面上に設置し、その中央部に試料受け32を置く。ペレット試料の水分率は0.3重量%以下にしておき、測定場所の雰囲気は温度:20±2℃,相対湿度:65%RHに保つ。試料容器(300ml)でペレット試料を採取し、全試料を試料受け32内に静かに注ぎ入れる。試料を注ぎ入れた後、試料受け32を試料が山状になるところまで、静かに持ち上げる。次に、バット31上に刻んだ8方向の放射状の直線上にある試料の4方向の直径を読み取る。このとき、個別に飛散した試料は除き、試料の外周を結んだラインを読み取る。バット31の試料の円錐(山状の底部と頂点)の高さを求める。高さの測定方法は、バット31の上部にJIS C型1級ステンレス製定規を橋渡しして、その定規の下部と円錐の頂点の長さを前記定規で測り、その値をバットの深さ(80mm)から差し引いた値を円錐の高さとする。測定回数は5回実施してその平均を求める。安息角計算は、次の式により、算出し、JIS Z 8401によってJIS R 9301に従い整数第一位に丸める。
θ=arctan(2h/D)、[ここに、θ:安息角(度)、h:円錐の高さ(mm)、D:4方向の直径の平均値(mm)]
(4)添加した微量成分の定量
以下に示す方法に従って、定量を行った。なお、以下の「乾燥ペレット」とは、押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加されたEVOHからなる樹脂組成物ペレットを、流動式熱風乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥し、引き続いて静置式熱風乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥を行って得られたものである。
(4−a)カルボン酸含有量の定量
試料とする乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液にフェノールフタレインを指示薬として1/50規定のNaOHで中和滴定し、カルボン酸含有量を定量した。
(4−b)アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの定量
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれの金属塩化物水溶液で作成した検量線を用いた。こうして乾燥ペレット中のアルカリ金属塩の量およびアルカリ土類金属塩の量を金属換算の量で得た。
(4−c)ホウ素化合物の定量
試料とするペレットにNa2CO3水溶液を加え、白金るつぼで600℃で灰化させた。得られたサンプルに塩酸を加えて溶解し、ICP発光分光分析法によりホウ素化合物の含有量をホウ素換算で定量した。
(4−d)リン酸イオンの定量
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン化合物の含有量をリン酸根換算で得た。
(4)添加した微量成分の定量
以下に示す方法に従って、定量を行った。なお、以下の「乾燥ペレット」とは、押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種を添加されたEVOHからなる樹脂組成物ペレットを、流動式熱風乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥し、引き続いて静置式熱風乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥を行って得られたものである。
(4−a)カルボン酸含有量の定量
試料とする乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液にフェノールフタレインを指示薬として1/50規定のNaOHで中和滴定し、カルボン酸含有量を定量した。
(4−b)アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンの定量
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれの金属塩化物水溶液で作成した検量線を用いた。こうして乾燥ペレット中のアルカリ金属塩の量およびアルカリ土類金属塩の量を金属換算の量で得た。
(4−c)ホウ素化合物の定量
試料とするペレットにNa2CO3水溶液を加え、白金るつぼで600℃で灰化させた。得られたサンプルに塩酸を加えて溶解し、ICP発光分光分析法によりホウ素化合物の含有量をホウ素換算で定量した。
(4−d)リン酸イオンの定量
試料とする乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン化合物の含有量をリン酸根換算で得た。
(5)メルトインデックス(MI)
ASTM−D1238に準じ、メルトインデクサーを使用し、温度190℃、荷重2160gの条件にて測定した。
ASTM−D1238に準じ、メルトインデクサーを使用し、温度190℃、荷重2160gの条件にて測定した。
(6)単層製膜試験
(6−a)押出機投入時のモータートルクおよびトルク変動幅
下記仕様の押出機を使用してEVOHからなる樹脂組成物の単層製膜を行い、EVOHからなる樹脂組成物ペレットの押出機投入時のモータートルクおよびトルク変動幅を調べた。
(6−a)押出機投入時のモータートルクおよびトルク変動幅
下記仕様の押出機を使用してEVOHからなる樹脂組成物の単層製膜を行い、EVOHからなる樹脂組成物ペレットの押出機投入時のモータートルクおよびトルク変動幅を調べた。
押出機の仕様は以下の通り。
押出機 GT−40−A (株)プラスチック工学研究所製
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 26
CR 3.5
口径 40mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
回転数 40rpm
駆動機 住友重機株式会社製直流式電動機SCR−DC218B モーター容量 DC7.5KW(定格45A)
ヒーター 4分割タイプ
ダイ幅 300mm
ダイ内樹脂温度 240℃
引取り速度 10m/min.
(6−b)ゲル・ブツ
試料とする乾燥ペレットを用いてEVOHの単層製膜を実施し、製膜開始から1時間後のフィルムのゲル状ブツ(肉眼で確認できる約100μm以上のもの)を数え、1.0m2あたりに換算した。ブツの個数によって以下のように判定した。A;20個未満、B;20〜40個、C;40〜60個、D;60個以上
(6−c)耐着色性
試料とする乾燥ペレットを用いてEVOHの単層製膜を実施し、製膜開始から1時間後のフィルムを紙管に巻き取り、フィルム端面の着色度を肉眼で判定し以下のように判定した。A;着色なし、B;やや黄変、C;黄変、D;激しい着色
(6−d)ダイ内付着量
試料ペレットを用いてEVOHの単層製膜を8時間実施後、MI=1のLDPEで押出機内のEVOH樹脂を1時間かけて置換した後、ダイ内部に付着したEVOH熱劣化樹脂の重量を測定した。
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 26
CR 3.5
口径 40mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
回転数 40rpm
駆動機 住友重機株式会社製直流式電動機SCR−DC218B モーター容量 DC7.5KW(定格45A)
ヒーター 4分割タイプ
ダイ幅 300mm
ダイ内樹脂温度 240℃
引取り速度 10m/min.
(6−b)ゲル・ブツ
試料とする乾燥ペレットを用いてEVOHの単層製膜を実施し、製膜開始から1時間後のフィルムのゲル状ブツ(肉眼で確認できる約100μm以上のもの)を数え、1.0m2あたりに換算した。ブツの個数によって以下のように判定した。A;20個未満、B;20〜40個、C;40〜60個、D;60個以上
(6−c)耐着色性
試料とする乾燥ペレットを用いてEVOHの単層製膜を実施し、製膜開始から1時間後のフィルムを紙管に巻き取り、フィルム端面の着色度を肉眼で判定し以下のように判定した。A;着色なし、B;やや黄変、C;黄変、D;激しい着色
(6−d)ダイ内付着量
試料ペレットを用いてEVOHの単層製膜を8時間実施後、MI=1のLDPEで押出機内のEVOH樹脂を1時間かけて置換した後、ダイ内部に付着したEVOH熱劣化樹脂の重量を測定した。
(実施例1)
エチレン32モル%、ケン化度99.5モル%、含水率35重量%のEVOHを図1に記載した二軸押出機に投入し、吐出口の樹脂温度を100℃とし、吐出口側先端部の、図1に示した微量成分添加部より、酢酸/ホウ酸/酢酸ナトリウム/酢酸マグネシウム/リン酸二水素カリウム水溶液からなる処理液を添加した。EVOHの単位時間当たりの投入量は10kg/hr(含有される水の重量を含む)、処理液の単位時間当たりの投入量は0.65L/hrであり、処理液の組成は酢酸を4.3g/L、ホウ酸を15g/L、酢酸ナトリウムを4.6g/L、酢酸マグネシウムを3.0g/L、リン酸二水素カリウムを1.4g/L含有する水溶液であった。二軸押出機の仕様を以下に示す(詳細は図1に記載)。
エチレン32モル%、ケン化度99.5モル%、含水率35重量%のEVOHを図1に記載した二軸押出機に投入し、吐出口の樹脂温度を100℃とし、吐出口側先端部の、図1に示した微量成分添加部より、酢酸/ホウ酸/酢酸ナトリウム/酢酸マグネシウム/リン酸二水素カリウム水溶液からなる処理液を添加した。EVOHの単位時間当たりの投入量は10kg/hr(含有される水の重量を含む)、処理液の単位時間当たりの投入量は0.65L/hrであり、処理液の組成は酢酸を4.3g/L、ホウ酸を15g/L、酢酸ナトリウムを4.6g/L、酢酸マグネシウムを3.0g/L、リン酸二水素カリウムを1.4g/L含有する水溶液であった。二軸押出機の仕様を以下に示す(詳細は図1に記載)。
形式 二軸押出機
L/D 45.5
口径 30mmφ
スクリュー 同方向完全噛合型
回転数 300rpm
モーター容量 DC22KW
ヒーター 13分割タイプ
ダイスホール数 5穴(3mmφ) ダイス内樹脂温度 105℃
引取り速度 5m/min
押出機吐出後のEVOHからなる樹脂組成物ペレットの含水率は、20重量%であった。得られたペレットを流動乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥し、引き続き静置乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥した結果、含水率は0.3重量%であった。乾燥後のEVOHからなる樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は300ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算で270ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウムが金属換算で40ppm、ナトリウムが金属換算で130ppmであり、アルカリ土類金属塩の含有量はマグネシウムが金属換算で50ppmであった。また、MIは1.5g/10minであった。
L/D 45.5
口径 30mmφ
スクリュー 同方向完全噛合型
回転数 300rpm
モーター容量 DC22KW
ヒーター 13分割タイプ
ダイスホール数 5穴(3mmφ) ダイス内樹脂温度 105℃
引取り速度 5m/min
押出機吐出後のEVOHからなる樹脂組成物ペレットの含水率は、20重量%であった。得られたペレットを流動乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥し、引き続き静置乾燥機を用いて100℃で15時間乾燥した結果、含水率は0.3重量%であった。乾燥後のEVOHからなる樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は300ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算で270ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウムが金属換算で40ppm、ナトリウムが金属換算で130ppmであり、アルカリ土類金属塩の含有量はマグネシウムが金属換算で50ppmであった。また、MIは1.5g/10minであった。
得られた乾燥ペレットを用い、ペレット内部の球晶を観察したところ球晶は観察されなかった。また、安息角は22度であった。
乾燥ペレットの単層製膜を行い、押出機投入時のモータートルクおよびトルク変動幅、ゲル・ブツ、耐着色性およびダイ付着量の試験を実施した。
本試験に用いた押出機及びTダイ仕様は下記の通りである。
押出機 GT−40−A (株)プラスチック工学研究所製
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 26
CR 3.5
口径 40mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
回転数 40rpm
駆動機 住友重機株式会社製直流式電動機SCR−DC218B モーター容量 DC7.5KW(定格45A)
ヒーター 4分割タイプ
ダイ幅 300mm
ダイ内樹脂温度 240℃
引取り速度 10m/min.
上記条件で単層製膜の結果、押出時のモータートルクは220kg・cm、トルク変動幅は50kg・cmであった。ゲル・ブツ試験および耐着色性試験はいずれもA判定であり、ダイ内付着量は2.2gであった。
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 26
CR 3.5
口径 40mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
回転数 40rpm
駆動機 住友重機株式会社製直流式電動機SCR−DC218B モーター容量 DC7.5KW(定格45A)
ヒーター 4分割タイプ
ダイ幅 300mm
ダイ内樹脂温度 240℃
引取り速度 10m/min.
上記条件で単層製膜の結果、押出時のモータートルクは220kg・cm、トルク変動幅は50kg・cmであった。ゲル・ブツ試験および耐着色性試験はいずれもA判定であり、ダイ内付着量は2.2gであった。
(実施例2〜4)
EVOHのエチレン含量、ケン化度、押出機内での樹脂温度、押出機投入前の含水率および押出機吐出直後の含水率を表1にまとめて示すように変更し、EVOHの単位時間当たりの仕込量と、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種溶液の単位時間当たりの仕込量および組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてEVOHペレットを作成した。押出時の条件を表1に、処理液の組成を表2に、得られたEVOHペレットの組成を表3に、評価結果を表4に示す。
EVOHのエチレン含量、ケン化度、押出機内での樹脂温度、押出機投入前の含水率および押出機吐出直後の含水率を表1にまとめて示すように変更し、EVOHの単位時間当たりの仕込量と、カルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種溶液の単位時間当たりの仕込量および組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてEVOHペレットを作成した。押出時の条件を表1に、処理液の組成を表2に、得られたEVOHペレットの組成を表3に、評価結果を表4に示す。
(比較例1)
エチレン含有量32モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対し、0.4当量となるように添加し、メタノールを添加して共重合体濃度が20%になるように調整した。60℃に昇温し反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。4時間後、酢酸で中和し反応を停止させ、さらに水を加え、エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5%のEVOHのメタノールと水の溶液を得た。前記EVOH溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出してストランド析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットは遠心分離機で脱液しさらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
エチレン含有量32モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の45%メタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対し、0.4当量となるように添加し、メタノールを添加して共重合体濃度が20%になるように調整した。60℃に昇温し反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。4時間後、酢酸で中和し反応を停止させ、さらに水を加え、エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5%のEVOHのメタノールと水の溶液を得た。前記EVOH溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出してストランド析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットは遠心分離機で脱液しさらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
こうして得られたEVOHペレット(含水率55重量%)3.5kgを、酢酸0.4g/L、酢酸ナトリウム0.4g/L、酢酸マグネシウム0.3g/L、リン酸二水素カリウム0.1g/L、ホウ酸0.7g/Lを含有する水溶液6Lに25℃で6時間浸漬した。浸漬後脱液し、得られたEVOH樹脂組成物からなるペレット(含水率55重量%)を流動乾燥機を用いて80℃で15時間、引き続いて静置乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥を行い、乾燥ペレット(含水率0.3%)を得た。
得られた乾燥後のEVOHからなる樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は300ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算で270ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウムが金属換算で40ppm、ナトリウムが金属換算で130ppmであり、アルカリ土類金属の含有量はマグネシウムが金属換算で50ppmであった。また、MIは1.5g/10minであった。前記ペレットを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例2)
比較例1で得られた乾燥後のEVOH樹脂組成物ペレットを用い、下記仕様の押出機を使用し、EVOH樹脂組成物ペレットを得た。
比較例1で得られた乾燥後のEVOH樹脂組成物ペレットを用い、下記仕様の押出機を使用し、EVOH樹脂組成物ペレットを得た。
押出機の仕様は以下の通り。
押出機 GT−40−A (株)プラスチック工学研究所製
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 26
CR 3.5
口径 40mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
回転数 40rpm
駆動機 住友重機株式会社製直流式電動機SCR−DC218B モーター容量 DC7.5KW(定格45A)
ヒーター 4分割タイプ
ダイ幅 6穴(3mmφ)
ダイ内樹脂温度 250℃
引取り速度 2m/min
得られたEVOH樹脂組成物ペレットは、静置乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥を行い、乾燥ペレット(含水率0.3重量%)を得た。乾燥後のEVOHからなる樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は220ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算で270ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウムが金属換算で40ppm、ナトリウムが金属換算で130ppmであり、アルカリ土類金属の含有量はマグネシウムが金属換算で50ppmであった。また、MIは1.5g/10minであった。前記ペレットを用いて、実施例1と同様に評価を行った。
形式 単軸押出機(ノンベントタイプ)
L/D 26
CR 3.5
口径 40mmφ
スクリュー 一条フルフライトタイプ、表面窒化鋼
回転数 40rpm
駆動機 住友重機株式会社製直流式電動機SCR−DC218B モーター容量 DC7.5KW(定格45A)
ヒーター 4分割タイプ
ダイ幅 6穴(3mmφ)
ダイ内樹脂温度 250℃
引取り速度 2m/min
得られたEVOH樹脂組成物ペレットは、静置乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥を行い、乾燥ペレット(含水率0.3重量%)を得た。乾燥後のEVOHからなる樹脂組成物ペレット中の酢酸の含有量は220ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算で270ppm、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で100ppm、アルカリ金属塩の含有量はカリウムが金属換算で40ppm、ナトリウムが金属換算で130ppmであり、アルカリ土類金属の含有量はマグネシウムが金属換算で50ppmであった。また、MIは1.5g/10minであった。前記ペレットを用いて、実施例1と同様に評価を行った。
以上の条件と結果を表1〜4に示す。
以上表1〜4(とくに表4)から明らかなとおり、本発明の実施例1〜4は球晶が観察されず、かつ安息角が21〜22度の範囲であったので、押出機への噛み込み性、押出安定性及び製膜品質は優れていた。これに対して比較例1は浸漬法による酢酸などの吸着、比較例2は前記比較例1で得られた樹脂の押出成形ペレットであり、球晶が観察され、安息角は23度を超える範囲であったので、押出機への噛み込み性及び押出安定性が好ましくなかった。
以上説明したとおり、本発明によれば、EVOHを押出機を用いて含水押出することにより、環境への排出負荷を低減し、かつ押出機への噛み込み性、押出安定性、熱安定性(ロングラン性)が良好なEVOH樹脂ペレットを製造できる。また、比較的低温度で処理できるので、ポリマーの劣化を防止したEVOH樹脂ペレットを製造できる。
1 原料供給部
2,4,6 フルフライトスクリュー部
3,5 逆フライトスクリュー部
7 ベントシリンダー部
8 微量成分添加部
9 温度センサー
10 シリンダバレル
11 吐出口
20 2軸押出機
30 測定装置
31 ステンレス製バット
32 中空円筒形試料受け
33 試料受け保持器
34 支持リング
2,4,6 フルフライトスクリュー部
3,5 逆フライトスクリュー部
7 ベントシリンダー部
8 微量成分添加部
9 温度センサー
10 シリンダバレル
11 吐出口
20 2軸押出機
30 測定装置
31 ステンレス製バット
32 中空円筒形試料受け
33 試料受け保持器
34 支持リング
Claims (25)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体を押出機に供給し、押出機内における樹脂溶融温度を70〜170℃の範囲に保ち、前記共重合体を押出機から吐出した直後の含水率が5〜40重量%となるように押出機内の水分量を調整し、押出後前記共重合体をカットすることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 前記共重合体をカットした後、水分率が1重量%以下になるまで乾燥する請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 押出機に供給するエチレン−ビニルアルコール共重合体の含水率が0.5〜70重量%の範囲である請求項1または2に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 押出機から吐出した直後の樹脂の含水率が5〜40重量%となるように、押出機中で不足水を供給するかまたは過剰水を除去する請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が3〜70モル%の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が80モル%〜100モル%の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 押出機内でカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 含水かつ溶融状態のエチレン−ビニルアルコール共重合体に添加剤を添加する請求項7に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- カルボン酸の25℃におけるpKaが3.5以上である請求項7または8に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- カルボン酸が酢酸または乳酸である請求項7または8に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体の押出機供給前の含水率が0.5〜70重量%の範囲である請求項7〜10のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 押出機内における樹脂温度が70〜170℃の範囲である請求項7〜11のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物の押出機吐出直後の含水率が5〜40重量%である請求項7〜12のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 添加剤を水溶液で添加する請求項7〜13のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 押出機が混練部を有する押出機である請求項7〜14のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 添加剤の添加位置が押出機の混練部である請求項15に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 添加剤の添加位置が1箇所または2箇所である請求項7〜16のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 押出後、前記共重合体をカットし、水分率が1重量%以下になるまで乾燥する請求項7〜17のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法。
- 樹脂ペレットの切断面を偏光顕微鏡(ただし、倍率600)で観察したとき、中心部において、球晶が観察されないエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
- 樹脂ペレット中に滑剤を含有せず、かつ前記樹脂ペレットを積み上げたときの安息角が23度以下であるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂に、さらにカルボン酸、ホウ素化合物、リン酸化合物、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の添加剤が配合されている請求項19または20に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
- カルボン酸の25℃におけるpKaが3.5以上である請求項21に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
- カルボン酸が酢酸または乳酸である請求項21または22に記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が3〜70モル%の範囲である請求項19〜23のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が80モル%〜100モル%の範囲である請求項19〜24のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005164532A JP2005329718A (ja) | 1999-07-23 | 2005-06-03 | エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂ペレットの製造方法と樹脂ペレット |
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---|---|---|---|
JP24027499 | 1999-07-23 | ||
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