JP4088980B2 - 生分解性インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙、プラスチック等の種々の基材上に印刷層やコーティング層あるいは磁性層を形成するためのインキ組成物に関し、より詳しくは土中もしくは水中等で微生物の代謝によって分解される生分解性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、商業印刷物、証券印刷物、包装材料、建材、玩具、教材等をはじめとして様々な分野において、バーコード、絵柄模様、文字などの可視情報記録層や、磁気情報記録のための磁性層を、紙やプラスチックフィルムあるいはシートなどの基材上に、種々の印刷法や塗工法を利用して形成することが行なわれている。この形成の際には、通常、非生分解性のバインダー樹脂、着色顔料あるいは磁性顔料及び溶媒からなるインキ組成物が使用されている。
【0003】
ところで、インキ組成物が印刷あるいは塗工された印刷物や塗工物は、使用後にはゴミとしてその大半が焼却処分あるいは埋め立て処理されている。特に、基材としてプラスチックを使用した印刷物等に関しては、ほとんど焼却されずに埋め立てられている。これは、焼却温度が高温となって焼却炉の耐久性の低下や、排ガスによる大気汚染の発生などの問題が生ずるからである。
【0004】
しかし、一般のプラスチックは、化学的に非常に安定であるため、埋め立て処理された場合には土中で分解することなく半永久的に存在しつづけ、結果的に生態系のバランスを崩し、環境を破壊するという問題を有する。
【0005】
そこで、近年、土中や水中に生息する特定の微生物によって分解される性質を有する生分解性プラスチック(特開昭57−150393号公報、特開昭59−220192号公報、特開昭63−260912号公報等)を印刷物の基材として使用し、その基材上に従来のインキ組成物からなる印刷層あるいはコーティング層や磁性層を形成することが試みられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような生分解性基材上に従来のインキ組成物により印刷等を施したものは、土中に埋め立て処理した場合、その基材は分解されるがインキ組成物で形成された印刷層あるいは磁性層は生分解されずに土中に半永久的に残存し、環境に悪影響を与えるという問題を有する。
【0007】
そこで、上述した特開昭57−150393号公報、特開昭59−220192号公報、特開昭63−260912号公報等に記載されている生分解性プラスチックをインキ組成物のバインダー樹脂として使用することが考えられる。しかし、これらの生分解性樹脂は、人体や地球環境上に悪影響を有する塩化メチレンやパークロルエチレンなどのハロゲン系有機溶媒に対し良好な溶解性を示すが、グラビア印刷用の一般的な溶剤、例えばトルエン、メチルエチルケトン等や、スクリーン印刷用の一般的な溶剤、例えばブチルセルソルブ、ε−カプロラクトン等の汎用非ハロゲン系有機溶剤に対して良好な溶解性を示さないという問題がある。このため、上述の生分解性樹脂と汎用非ハロゲン系有機溶剤とを使用して従来と同レベルの印刷適性を示すインキ組成物は未だ得られていないというのが現状である。
【0008】
本発明は、以上の従来技術の課題を解決しようとするものであり、即ち、ハロゲン系有機溶剤を使用することなく、従来と同レベルの印刷適正を有する生分解性のインキ組成物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、生分解性樹脂のポリカプロラクトン及びD−乳酸とL−乳酸とを共重合させて得られるポリ乳酸の双方が、それぞれ特定の汎用非ハロゲン系有機溶媒に良好に溶解するので油性の生分解性インキ組成物のバインダー樹脂として適していること、また水に良好に溶解するポリビニルアルコールが水性の生分解性インキ組成物のバインダー樹脂として適していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、バインダー樹脂と、そのバインダー樹脂を溶解することができる溶媒と、磁性顔料もしくは着色顔料としてのアゾ顔料又は多環式顔料とからなり、バインダー樹脂が、式(1)の生分解性のポリカプロラクトン、
【0011】
【化3】
(式中、nは重合度を示す数である。)
L−乳酸とD−乳酸との共重合体であって、L−乳酸のD−乳酸に対するモル比が0.25以上1未満である共重合体からなる式(2)の生分解性のポリ乳酸、
【0012】
【化4】
(式(2)中、mは重合度を示す数であり、Xは1位がカルボキシル基で置換されてもよい炭素数1〜50のアルキル基である。)
又は生分解性のポリビニルアルコールを含有することを特徴とする生分解性インキ組成物を提供する。また、本発明は、バインダー樹脂と、そのバインダー樹脂を溶解することができる溶媒と、着色顔料又は磁性顔料と、更に顔料の分散剤とからなり、バインダー樹脂が、式(1)の生分解性のポリカプロラクトン、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であって、L−乳酸のD−乳酸に対するモル比が0.25以上1未満である共重合体からなる式(2)の生分解性のポリ乳酸又は生分解性のポリビニルアルコールを含有することを特徴とする生分解性インキ組成物を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の生分解性インキ組成物においては、バインダー樹脂として式(1)のポリカプロラクトン、式(2)のポリ乳酸又はポリビニルアルコールを使用する。これらの樹脂は、いずれも土壌中あるいは活性汚泥中で黴、細菌、酵母等の微生物の作用によって、より低分子量のオリゴマーやモノマー、あるいはさらに低分子の物質にまで分解される性質を有する。従って、バインダー樹脂としてこれらの樹脂を使用するインキ組成物から形成された印刷層あるいは塗工層は生分解性となる。また、これらの生分解性樹脂の他にバインダー樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの他の樹脂を併用した場合でも、印刷層あるいは塗工層はこれらの生分解性樹脂部分で生分解を受けるために、全体として形状が保持できなくなり、微小片に崩壊する。
【0015】
また、これらの生分解性樹脂のうち、式(1)のポリカプロラクトン又は式(2)のポリ乳酸は特定の汎用非ハロゲン系溶媒に良好に溶解する。また、ポリビニルアルコールは水に良好に溶解する。従って、これらの生分解性樹脂を使用すれば、人体や地球環境に悪影響を与えるハロゲン系溶剤を使用することなく、汎用非ハロゲン系溶媒あるいは水を使用して生分解性インキ組成物を調製することができる。
【0016】
特に、式(1)のポリカプロラクトンの場合、優れた可撓性を有するので、磁性層の形成時にカールの発生を防止するためにインキ組成物に従来より添加されていたウレタンエラストマーを省略することができる。
【0017】
式(1)のポリカプロラクトンとしては、その分子量が小さすぎると成膜性が低下し、大きすぎると溶剤への溶解性が低下するので、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは40,000〜70,000のものを使用する。従って、重合度を示すnは、好ましくは分子量が10,000〜100,000となる数である。
【0018】
このようなポリカプロラクトンのバインダー樹脂中の配合割合は、少な過ぎるとそれから形成される印刷層や磁気記録層の生分解速度が低くなりすぎるので、好ましくは20重量%以上、より好ましくは35重量%以上とする。なお、バインダー樹脂をポリカプロラクトン100%から構成してもよいが、生分解性インキ組成物の印刷適性や塗工性、得られる磁気記録層の機械的性質等を考慮することによりバインダー中における上限の配合割合は適宜決定される。
【0019】
また、式(2)のポリ乳酸としては、D−乳酸とL−乳酸との共重合体を使用する。このように共重合させたポリ乳酸は結晶性が小さくなり、汎用非ハロゲン系有機溶媒に対する溶解性が向上する。ここで、式(2)のポリ乳酸中におけるD−乳酸ユニットとL−乳酸ユニットとの重量比は、好ましくは2:8〜8:2とする。また、式(2)のポリ乳酸としては、その分子量が小さ過ぎると成膜性が低下し、大きすぎると溶剤への溶解性が低下するので、好ましくは10,000〜150,000、より好ましくは80,000〜120,000のものを使用する。重合度を示すmは、小さ過ぎるとインキ組成物の成膜性や得られる膜の膜強度が不十分となるので10以上であることが好ましい。より好ましくは分子量が80,000〜120,000となる数である。また、1位がカルボキシル基で置換されてもよい炭素数1〜50のアルキル基であるXの具体例としては、1−カルボキシルメチル、1−カルボキシルエチル等を挙げることができる。
【0020】
このようなポリ乳酸のバインダー樹脂中の配合割合は、少な過ぎるとそれから形成される印刷層や磁気記録層の生分解速度が低くなりすぎるので、好ましくは20重量%以上、より好ましくは35重量%以上とする。なお、バインダー樹脂をポリ乳酸100%から構成してもよいが、生分解性インキ組成物の印刷適性や塗工性、得られる磁気記録層の機械的性質等を考慮することによりバインダー中における上限の配合割合は適宜決定される。
【0021】
式(1)又は(2)の生分解性樹脂をバインダー樹脂として使用した場合、更に、従来よりインキ組成物において用いられているような樹脂をバインダー樹脂として使用することができ、例えば、ニトロセルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂などから選択される少なくとも一つのポリマーを含有させることができる。
【0022】
本発明においては、式(1)のカプロラクトン又は式(2)のポリ乳酸に適した溶剤として、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、ε−カプロラクトン、n−ブチルアセテート、エチルセロソルブアセテート及びイソホロンからなる群から選択される少なくとも一つを使用する。これらの溶剤は、生分解性樹脂の種類や分子量、利用する印刷方法あるいはその印刷条件などに応じて、一種のみで又は二種以上を混合して使用することができる。例えば、グラビア印刷の場合にはトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトンなどを使用することが好ましい。また、スクリーン印刷の場合にはグラビア印刷の場合に比べ沸点の高いブチルセロソルブ、ε−カプロラクトン、n−ブチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、イソホロンなどを使用することが好ましい。なお、いずれの場合も必要に応じて水を併用してもよい。
【0023】
本発明において使用するポリビニルアルコールとしては、その分子量が小さすぎると成膜性が低下し、大きすぎると溶剤への溶解性が低下するので、好ましくは20,000〜90,000、より好ましくは50,000〜70,000のものを使用する。
【0024】
このようなポリビニルアルコールのバインダー樹脂中の配合割合は、少な過ぎるとそれから形成される印刷層や磁気記録層の生分解速度が低くなりすぎるので、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上とする。なお、バインダー樹脂をポリビニルアルコール100%から構成してもよいが、通常は、生分解性インキ組成物の印刷適性や塗工性、得られる磁気記録層の機械的性質等を考慮することによりバインダー中における上限の配合割合は適宜決定される。
【0025】
ポリビニルアルコールをバインダー樹脂として使用した場合、更に、ポリビニルアルコールに相溶性の良好な樹脂、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂等をバインダー樹脂として使用することができる。
【0026】
本発明においては、ポリビニルアルコールに適した溶剤として、水を使用するが、水に混和するメタノール、エタノールなどの低級アルコール等を併用してもよい。
【0027】
本発明において使用する着色顔料としては、従来のインキ組成物において用いられているものを適宜選択して使用することができる。例えば、カーミン6B、レッド2B、モノアゾエロー、ジスアゾエロー、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、クロモフタロエロー、クロモフタルレッド等のアゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、イソインドリノンエローベリレン、ペリノン、フラバントロン、チオインジゴ等の多環式顔料等を使用することができる。また、無機顔料としては、酸化チタン、べんがら、沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、含水珪酸塩、無水珪酸塩、アルミニウム粉、カーボンブラック、パール顔料等を使用することができる。
【0028】
また、本発明において使用することができる磁性顔料としても、従来のインキ組成物において用いられているものを適宜選択して使用することができる。具体的には、いわゆるハード磁性材、例えば磁性酸化鉄、コバルト被着磁性酸化鉄、バリウムフェライト等の高保磁力材等、鉄、ニッケル、クロム等の強磁性金属、いわゆるソフト磁性材、例えばパーマロイ、センダスト等の強磁性合金等の粉末を使用することができる。なお、磁性顔料に必要な保磁力、平均粒子径、軸比(長短/単軸)、比表面積は必要に応じて適宜決定することができる。
【0029】
本発明の生分解性インキ組成物には、必要に応じて顔料の分散性を向上させるために、分散剤としてレシチン、高級脂肪酸、リン酸エステル、スルホン酸エステル、高級アルコール、その他界面活性剤等を適宜添加することができる。また、所望の印刷特性を実現するために、粘度調整剤を添加することができる。更に、シリコーンオイル、二硫化モリブデン等の潤滑剤、カーボンブラック、グラファイト等の帯電防止剤等を添加することができる。
【0030】
また、本発明の生分解性インキ組成物には、必要に応じて硬化剤(架橋剤)を配合することができる。これにより、形成される印刷層の物性や化学的特性の向上を図ることができる。このような硬化剤としては、バインダーを構成する樹脂の種類に応じて適宜選択することができ、例えばイソシアネート系架橋剤を好ましく使用することができる。
【0031】
本発明の生分解性インキ組成物は常法により製造することができる。例えば、着色顔料もしくは磁性顔料、バインダー樹脂及び溶剤、更に他の成分とを、ボールミル法、ロッドミル法、サンドミル法、バイブレーションミル法、ペイントシェーカー法等の適当な分散方法により均一に分散させることにより製造することができる。
【0032】
本発明の生分解性インキ組成物は、従来のインキ組成物と同様に使用することができる。例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の一般的な印刷法や、ワイヤーバーコーティング法、ドクターブレード法などの一般的なコーティング方法等により被印刷物もしくは被塗工物の表面に印刷又は塗工することが推奨される。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0034】
実施例1
表1〜表4の配合組成の混合物を、それぞれ密閉容器に投入し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーにより2時間混合分散した。この分散物にイソシアネート系硬化剤(コロネートHV,日本ポリウレタン工業社製)2重量部を添加し十分に撹拌することにより4色の生分解性インキ組成物を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
得られた4色の生分解性インキ組成物を使用してスクリーン印刷法により、188μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に網点からなるカラー画像を印刷し、70℃で1時間乾燥することにより画像を定着させた。
【0040】
得られたPETシートをカード形状に打ち抜き、そのカードのカラー画像の生分解性を土中埋設法により評価した。即ち、そのカードを埼玉県北葛飾郡杉戸町の土中に深さ10cmで埋設したところ、埋設から6か月経過後にはカラー画像は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後にはカラー画像は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0041】
実施例2
表5〜表8の配合組成の混合物を、それぞれ密閉容器に投入し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーにより2時間混合分散した。この分散物にイソシアネート系硬化剤(コロネートHV,日本ポリウレタン工業社製)2重量部を添加し十分に撹拌することにより4色の生分解性インキ組成物を得た。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
得られた4色の生分解性インキ組成物を使用し、実施例1と同様にPETシート上にカラー画像を形成し、更にそのカラー画像の生分解性を土中埋設法により評価した。その結果、実施例1と同様に、埋設から6か月経過後にはカラー画像は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後にはカラー画像は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0047】
実施例3
L−ラクチド50部、D−ラクチド30部及びオクチル酸第一スズ0.15部のトルエン溶液を、窒素雰囲気化で200℃に加熱し、約1時間かけて開環重合させた。得られた樹脂をクロロホルムに溶解し、メタノールに注いで再沈殿させ、メタノールを蒸発させて白色粉末のポリ乳酸を得た。このポリ乳酸の平均分子量約は70,000〜80,000であり、分散度は約1.7〜1.8であった。また、このポリ乳酸中のD体とL体の比率は、水酸化ナトリウムで加水分解後の施光度計計測結果によれば約3:5であった。
【0048】
得られたポリ乳酸をバインダー樹脂として使用し、表9〜表12の生分解性インキ組成物を調製した。
【0049】
【表9】
【0050】
【表10】
【0051】
【表11】
【0052】
【表12】
【0053】
得られた4色の生分解性インキ組成物を使用し、実施例1と同様にPETシート上にカラー画像を形成し、更にそのカラー画像の生分解性を土中埋設法により評価した。その結果、実施例1と同様に、埋設から6か月経過後にはカラー画像は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後にはカラー画像は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0054】
実施例4
表13の配合組成の混合物を密閉容器に投入し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーにより2時間混合分散した。この分散物にイソシアネート系硬化剤(コロネートEH,日本ポリウレタン工業社製)2重量部を添加し十分に撹拌することにより生分解性磁性インキ組成物を得た。
【0055】
【表13】
【0056】
得られた生分解性磁性インキ組成物を用いて、厚さ188μmの白色ポリエステルフィルム上にワイヤーバーコータにより20μm厚の磁性膜を形成し、更に磁気配向器により磁性膜を配向させ、磁化容易軸方向を設けた。
【0057】
得られた磁性フィルムをカード形状に打ち抜き、そのカードの磁性膜の生分解性を実施例1と同様に土中埋設法により評価した。即ち、そのカードを埼玉県北葛飾郡杉戸町の土中に深さ10cmで埋設したところ、埋設から6か月経過後には磁性膜は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後には磁性膜は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0058】
実施例5
表14の配合組成の混合物を密閉容器に投入し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーにより2時間混合分散した。この分散物にイソシアネート系硬化剤(コロネートEH,日本ポリウレタン工業社製)2重量部を添加し十分に撹拌することにより生分解性磁性インキ組成物を得た。
【0059】
【表14】
【0060】
得られた生分解性磁性インキ組成物を用いて、実施例4の場合と同様に白色ポリエステルフィルム上に磁性膜を形成し、更に磁化容易軸方向を設け、その磁性膜の生分解性を実施例1と同様に評価した。その結果、実施例4と同様に、埋設から6か月経過後には磁性膜は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後には磁性膜は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0061】
実施例6
実施例3で使用したポリ乳酸を使用する表15の配合組成の混合物を密閉容器に投入し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーにより2時間混合分散した。この分散物にイソシアネート系硬化剤(コロネートEH,日本ポリウレタン工業社製)2重量部を添加し十分に撹拌することにより生分解性磁性インキ組成物を得た。
【0062】
【表15】
【0063】
得られた生分解性磁性インキ組成物を用いて、実施例4の場合と同様に白色ポリエステルフィルム上に磁性膜を形成し、更に磁化容易軸方向を設け、その磁性膜の生分解性を実施例1と同様に評価した。その結果、実施例4と同様に、埋設から6か月経過後には磁性膜は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後には磁性膜は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0064】
比較例1
バインダー樹脂として生分解性樹脂を用いずに、従来より用いられている塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とポリウレタン樹脂とを併用する表16の配合組成の混合物を密閉容器に投入し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーにより2時間混合分散した。この分散物にイソシアネート系硬化剤(コロネートEH,日本ポリウレタン工業社製)2重量部を添加し十分に撹拌することにより比較のための非生分解性磁性インキ組成物を得た。
【0065】
【表16】
【0066】
得られた生分解性磁性インキ組成物を用いて、実施例4と同様に白色ポリエステルフィルム上に磁性膜を形成し、その磁性膜の生分解性を土中埋設法により評価した。その結果、実施例4と同様に、埋設から6か月経過後には磁性膜は断続的に分解し、その形状が保持しにくい状態となった。更に、埋設から12か月経過後には磁性膜は完全に分解して原形を全くとどめていない状態となった。
【0067】
なお、実施例4〜6及び比較例1のインキ組成物から形成されて磁性層の保磁力、飽和磁束密度、角形比などの磁気特性を振動試料型磁力計で測定したところ表17に示すようにほとんど相違はないことが確認できた。従って、実施例4〜7のインキ組成物は、従来例の磁気特性レベルを維持しつつ生分解性を示したことがわかった。
【0068】
【表17】
磁気特性 実施例4 実施例5 実施例6 比較例1
保磁力(Oe) 297 298 297 298
飽和磁束密度(Mx/cm) 1.25 1.28 1.25 1.29
角形比(−) 0.88 0.90 0.89 0.90
【0069】
実施例7
表18の配合の成分を、ボールミル中で12時間混合分散した。この分散物をボールミル中で混合分散しながら、固形分が25%となるように調製されたポリカプロラクトン(TONE767:ユニオンカーバイド社製)のトルエン溶液80部を5回に分けて添加し、更に6時間混合分散した。得られた分散物を、フィルター(5μmグレード)で濾過することにより均一な分散物を磁性インキ組成物として得た。
【0070】
この磁性インキ組成物に、ポリイソシアネート硬化剤(コロネートEH、日本ポリウレタン社製)2部を添加して均一に混合した。得られた混合物を、リバースロール法により、約200μm厚の生分解性シート状基材(バイオポールD600、ゼネカ社製)に8μm(乾燥厚)となるように塗布し、約3000ガウスの磁場中で配向させ、その後、乾燥(50℃,3日)させて磁気記録層(磁性層)を形成することにより磁気記録シートを作製した。
【0071】
【表18】
【0072】
得られた磁気記録シートの静磁気特性及び電磁変換特性は、実用上問題のないものであった。また、この磁気記録シートに対し、市販のリード/ライター装置でエンコードしたところ、問題なく記録と読み取りとができた。
【0073】
また、カード状に打ち抜いた磁気記録シートの生分解性を土中埋設法により評価した。即ち、秋季の畑土壌中に磁気記録シートを埋設し、定期的にその分解状態を観察した。その結果、3ケ月後には磁気記録層は断続的に分解して形状が保持できない状態となり、十分な生分解性を示した。なお、この時には、基材はまだ残存していたが12ケ月経過後には、基材も十分に分解し、その形状が確認できなくなった。
【0074】
実施例8
表18に示した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体に代えてポリカプロラクトン(TONE767:ユニオンカーバイド社製)を使用する以外は、実施例7と同様にして磁性インキ組成物を調製し、更に磁気記録シートを作製した。
【0075】
この磁気記録シートは、その磁気記録層の耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐屈曲性などの性質の点で実施例7の磁気記録シートに比べ劣り、カードの適用範囲が若干狭まる傾向にあるが、静磁気特性及び電磁変換特性は実用上問題のないものであった。また、この磁気記録シートに対し、市販のリード/ライター装置でエンコードしたところ、問題なく記録と読み取りとができた。
【0076】
また、カード状に打ち抜いた磁気記録シートの生分解性を実施例7と同様に土中埋設法により評価したところ、2ケ月後には磁気記録層は断続的に分解して形状が保持できない状態となり、十分な生分解性を示した。なお、この時には、基材はまだ残存していたが12ケ月経過後には、基材も十分に分解し、その形状が確認できなくなった。
【0077】
比較例2
ポリカプロラクトンに代えて、固形分20%の汎用ポリウレタン樹脂(ニッポラン3113、日本ポリウレタン社製)90部を使用する以外は、実施例7と同様にして磁性インキ組成物を調製し、更に磁気記録シートを作製した。この磁気記録シートの静磁気特性及び電磁変換特性は実用上問題のないものであった。また、この磁気記録シートに対し、市販のリード/ライター装置でエンコードしたところ、問題なく記録と読み取りとができた。
【0078】
また、カード状に打ち抜いた磁気記録シートの生分解性を実施例7と同様に土中埋設法により評価したところ、2ケ月後には基材上で磁気記録層がそのままの形で残存している状態であった。更に、12ケ月経過後には基材の形状は保持されていなかったが、磁気記録層は以前としてそのままの状態で残存しており、その表面にわずかな黴の繁殖が認められる程度であった。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のインキ組成物と同等の印刷適正を維持しつつ、ハロゲン系有機溶剤を使用しない生分解性のインキ組成物を提供することができる。
Claims (6)
- バインダー樹脂が、式(1)のポリカプロラクトンを少なくとも20重量%、式(2)のポリ乳酸を少なくとも20重量%又はポリビニルアルコールを少なくとも20重量%含有する請求項1又は2記載の生分解性インキ組成物。
- 式(1)のポリカプロラクトンの分子量が10,000〜100,000であり、式(2)のポリ乳酸の分子量が10,000〜150,000であり、ポリビニルアルコールの分子量が20,000〜90,000である請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性インキ組成物。
- バインダー樹脂が式(1)のポリカプロラクトン又は式(2)のポリ乳酸を含有する場合に、溶媒がトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、ε−カプロラクトン、n−ブチルアセテート、エチルセロソルブアセテート及びイソホロンからなる群から選択される少なくとも一つを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性インキ組成物。
- バインダー樹脂がポリビニルアルコールを含有する場合に、溶媒が水を含有する請求項1記載の生分解性インキ組成物。
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