JP4068043B2 - 積層型光電変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜光電変換装置の変換効率の改善に関し、特に光電変換ユニットが複数積層された薄膜光電変換装置の光電変換効率の改善に関するものである。
なお、本願明細書における「結晶質」、「微結晶」との用語は、部分的に非晶質を含んでいるものも含んでいるものとする。また、本願明細書における「非晶質」との用語は、結晶相が検知不能であるものとする。また、本願明細書における「pin接合」の用語は、基板上への積層順がp型層、i型層、n型層の順番のものと、n型層、i型層、p型層の順番のものいずれも含んでいるものとする。また、本願明細書における「pin接合」の用語は、i型層に対して光入射側に近い層がp型層のものと、光入射側に近い層がn型層のものいずれも含んでいるものとする。
近年、光電変換装置の低コスト化、高効率化を両立するために資源面での問題もほとんど無い薄膜光電変換装置が注目され、開発が精力的に行われている。薄膜光電変換装置は、太陽電池、光センサ、ディスプレイなど、さまざまな用途への応用が期待されている。薄膜光電変換装置の一つである非晶質シリコン光電変換装置は、低温で大面積のガラス基板やステンレス基板上に形成できることから、低コスト化が期待できる。
薄膜光電変換装置は、一般に表面が絶縁性の基板上に順に積層された第一電極、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、及び第二電極とを含んでいる。そして1つの薄膜光電変換ユニットはp型層とn型層でサンドイッチされたi型層からなる。
薄膜光電変換ユニットの厚さの大部分は、実質的に真性の半導体層であるi型層によって占められ、光電変換作用は主としてこのi型層内で生じる。従って、光電変換層であるi型層の膜厚は光吸収のためには厚いほうが好ましいが、必要以上に厚くすると、その堆積にコストと時間がかかることになる。
他方、p型やn型の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役目を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜光電変換装置の重要な特性の1つである開放端電圧の値が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換には寄与しない不活性な層であり、導電型層にドープされた不純物によって吸収される光は発電に寄与せず損失となる。したがって、p型とn型の導電型層の膜厚は、十分な拡散電位を生じさせる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましい。
ここで、光電変換ユニットまたは薄膜太陽電池は、それに含まれるp型とn型の導電型層が非晶質か結晶質かにかかわらず、その主要部を占めるi型の光電変換層が非晶質のものは非晶質光電変換ユニットまたは非晶質薄膜太陽電池と称され、i型層が結晶質のものは結晶質光電変換ユニットまたは結晶質薄膜太陽電池と称される。
一般に光電変換層に用いられている半導体は、波長が長くなるに従い光吸収係数が小さくなる。特に、光電変換材料が薄膜である場合は、吸収係数の小さな波長領域において十分な光吸収が生じないために、光電変換量が光電変換層の膜厚によって制限されることになる。そこで、光電変換装置内に入射した光が外部に逃げにくい光散乱構造を形成することによって、実質的な光路長を長くし、十分な吸収を得、大きな光電流を発生させ得る工夫がなされている。例えば、光が基板側から入射する場合、光入射側電極として表面型状が凹凸であるテクスチャ透明導電膜が用いられている。
また、薄膜光電変換装置の変換効率を向上させる方法として、2つ以上の光電変換ユニットを積層した光電変換装置にする方法が知られている。この方法においては、光電変換装置の光入射側に大きなバンドギャップを有する光電変換層を含む第一光電変換ユニット(本願では、相対的に光入射側に配置された光電変換ユニットを第一光電変換ユニット、相対的に光入射側から遠い側に配置された光電変換ユニットを第二光電変換ユニットと呼ぶ。)を配置し、その後ろに順に小さなバンドギャップを有する(例えばSi−Ge合金の)光電変換層を含む第二光電変換ユニットを配置することにより、入射光の広い波長範囲にわたって光電変換を可能にし、これによって装置全体としての変換効率の向上が図られている。積層型薄膜光電変換装置の中でも、非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットを積層したものはハイブリッド型光電変換装置と称される。ハイブリッド型光電変換装置においては、非晶質シリコンが光電変換し得る光の波長は長波長側において800nm程度であるが、結晶質シリコンはそれより長い約1100nm程度までの光を光電変換することが可能であるため、入射光のより広い範囲を有効に光電変換することが可能になる。
ところで、積層型光電変換装置では、各光電変換ユニットが直列に接続されているため、光電変換装置としての短絡電流密度(Jsc)は各光電変換ユニットで発生する電流値のうち最も小さな値で律速される。従って、各光電変換ユニットの電流値は均等であるほど好ましく、さらに電流の絶対値が大きいほど変換効率の向上が期待できる。積層型の薄膜光電変換装置では、積層された複数の薄膜光電変換ユニットの間に光透過性及び光反射性の双方を有し且つ導電性の中間反射層を介在させることがある。この場合、中間反射層に到達した光の一部が反射し、中間反射層よりも光入射側に位置する第一光電変換ユニット内での光吸収量が増加し、その第一光電変換ユニットで発生する電流値を増大させることができる。すなわち、見かけ上第一光電変換ユニットの実効的な膜厚が増加したことになる。例えば、非晶質シリコン光電変換ユニットと結晶質シリコン光電変換ユニットからなるハイブリッド型光電変換装置に中間反射層を挿入した場合、非晶質シリコン層の膜厚を増やすことなく非晶質シリコン光電変換ユニットによって発生する電流を増加させることができる。もしくは、同一の電流値を得るために必要な非晶質シリコン層の膜厚を薄くできることから、非晶質シリコン層の膜厚増加に応じて顕著となる光劣化による非晶質シリコン光電変換ユニットの特性低下を押さえることが可能となる。
中間反射層は、多結晶のITO、ZnOのような透明導電性金属酸化物層、特にZnOで構成されることが多い。透明導電性金属酸化物層は、波長600nmの光にする屈折率が2以下の低い値をもち、前後の半導体層との屈折率の差によって光を反射する。非晶質シリコンおよび結晶質シリコンの波長600nmの光に対する屈折率は4で、透明導電性金属酸化物層との屈折率の差は大きく、非晶質シリコン/透明導電性金属酸化物層の界面、および透明導電性金属酸化物層/結晶質シリコンの界面の両者で、大きな反射効果が得られる。ここで、波長600nmの屈折率が重要なのは、積層型光電変換装置の一つであるハイブリッド型光電変換装置において、第一光電変換ユニットの分光感度電流の立下りと、第二光電変換ユニットの分光感度電流の立ち上りが600nm付近の波長で交錯するためである。600nm付近の光を良く反射する膜、すなわち、600nmの光に対する屈折率が小さい膜が、第一光電変換ユニットの発電電流を増加するのに好適であると言える。
しかしながら、ZnOはスパッタ、スプレーなどの手法で形成されるため、プラズマCVD法等で一般的に形成される半導体薄膜とは別設備を用いる必要があり、設備コストがかかり、生産タクトも長くなるという問題が発生する。さらに、特にZnOの形成にスパッタ法を用いる場合、下地半導体薄膜へのスパッタダメージによる性能低下を引き起こす可能性がある、という問題も発生する。
また、太陽電池の直列抵抗に与える影響を抑制するために、透明導電性金属酸化物層と半導体薄膜と界面で良好なオーミックコンタクトを取る必要がある。このために透明導電性金属酸化物層の暗導電率は、不純物をドープすることや酸化度を変化させることなどによって1.0×102S/cm〜1.0×103S/cmの高い値に調節する必要がある。
特にZnOは、非晶質シリコンまたは結晶質シリコンとの界面でオーミックコンタクトを取ることが困難であることが一般に知られている。暗導電率がこの範囲よりも低いと、中間反射層と第一光電変換ユニット、および中間反射層と第二光電変換ユニットとの良好なオーミックコンタクトが取れなくなり、接触抵抗が増加してセルの曲線因子(FF)を低下させ、光電変換装置の特性が悪くなる。逆に、暗導電率がこの範囲より高いと透明導電性金属酸化物層の透過率が低下して短絡電流密度(Jsc)を低下させ、光電変換装置の特性が悪くなる。
ところで、大面積の薄膜光電変換装置は、通常、集積型薄膜光電変換モジュールとして形成される。集積型薄膜光電変換モジュールは、小面積に区切られた光電変換装置である光電変換セルを、複数個、ガラス基板上で相互に直列接続した構造を有している。それぞれの光電変換セルは、一般的には、ガラス基板上への透明電極層、1つ以上の薄膜半導体光電変換ユニット、及び裏面電極層の製膜とパターニングとを順次行うことにより形成されている。
図24は、積層型光電変換装置を複数直列接続した中間反射層のない従来の集積型薄膜光電変換モジュールの例を概略的に示す断面図である。図24に示す集積型薄膜光電変換モジュール101は、ガラス基板102上に、透明電極層103、非晶質シリコン光電ユニットである第一光電変換ユニット104a、結晶質シリコン光電変換ユニットである第二光電変換ユニット104b、及び裏面電極層106を順次積層した構造を有している。
図24に示すように、集積型薄膜光電変換モジュール101には、上記薄膜を分割する第1、第2の分離溝121、122と接続溝123とが設けられている。これら第1、第2の分離溝121、122及び接続溝123は、互いに平行であって、紙面に対して垂直な方向に延在している。なお、隣り合う光電変換セル110間の境界は、第1及び第2の分離溝121,122によって規定されている。
第1の分離溝121は、透明電極層103をそれぞれの光電変換セル110に対応して分割しており、透明電極層103と非晶質シリコン光電変換ユニット104aとの界面に開口を有し且つ透明基板102の表面を底面としている。この第1の分離溝121は、非晶質シリコン光電変換ユニット104aを構成する非晶質によって埋め込まれており、隣り合う透明電極膜103同士を電気的に絶縁している。
第2の分離溝122は、第1の分離溝121から離れた位置に設けられている。第2の分離溝122は、第一光電変換ユニット104a、第二光電変換ユニット104b、及び裏面電極層106をそれぞれの光電変換セル110に対応して分割しており、裏面電極層106の上面に開口を有し且つ透明電極層103と第一光電変換ユニットの界面を底面としている。この第2の分離溝122は、隣り合う光電変換セル110間で裏面電極層106同士を電気的に絶縁している。
接続溝123は、第1の分離溝121と第2の分離溝122との間に設けられている。接続溝123は、第一光電変換ユニット104a、第二光電変換ユニット104bを分割しており、第二光電変換ユニット104bと裏面電極層106との界面に開口を有し且つ透明電極層103と第一光電変換ユニット104aの界面を底面としている。この接続溝123は、裏面電極層106を構成する金属材料で埋め込まれており、隣り合う光電変換セル110の一方の裏面電極層106と他方の透明電極層103とを電気的に接続している。すなわち、接続溝123及びそれを埋め込む金属材料は、ガラス基板102上に並置された光電変換セル110同士を直列接続する役割を担っている。
図25に示すように、単純に、図24の構造に中間反射層として透明導電性金属酸化層を、第一光電変換ユニットと第二光電変換ユニットの間に挿入すると、以下に説明するようにリーク電流の問題が発生し、集積型薄膜光電変換モジュールの特性が著しく低下する。
図25のように、中間反射層105を設けると、接続溝123は、第一光電変換ユニット104a、中間反射層105、第二光電変換ユニット104bを貫通し、この接続溝123に裏面電極層106を構成する材料が埋め込まれる。すなわち、接続溝123に埋め込む金属と中間反射層105とは接触することとなる。
この中間反射層を透明導電性金属酸化層で形成した場合、前述のように1.0×102S/cm〜1.0×103S/cmの高い暗導電率を有しており、中間反射層の中で基板と平行な方向にも容易に電流が流れて、電極層の役割も果たしてしまう。すなわち、中間反射層105、接続溝123、裏面電極層106の電流経路で、第二光電変換ユニット104bが短絡してしまい、大きなリーク電流が流れる。そのため、図25の構造では、第二光電変換ユニットで生じた電力をほとんど取り出すことができない。
このようなリーク電流の問題は、図26に示す本出願人による特許文献1に記載された新たに第3の分離溝を設けた構造を採用することにより解決され得るものと考えられる。特許文献1において、集積型薄膜光電変換モジュール101には、上記薄膜を分割する第1〜第3の分離溝121,122,124と接続溝123とが設けられている。
第3の分離溝124は、第1の分離溝121と接続溝123との間に設けられている。第3の分離溝124は、第一光電変換ユニット104a及び中間反射層105を分割しており、中間反射層105と第二光電変換ユニット104bとの界面に開口を有し且つ透明電極層103の表面を底面としている。この第3の分離溝124は、薄膜光電変換ユニット104bを構成する結晶質で埋め込まれており、中間反射層105のセル110内に位置する部分を接続溝123を埋め込む金属などの導電性材料から電気的に絶縁している。なお、第3の分離溝124は、第1の分離溝121が第3の分離溝124と接続溝123との間に位置するように設けられてもよい。但し、図26に示すように、第3の分離溝を第1の分離溝121と接続溝123との間に設けたほうが、発電に有効な面積を広くすることが容易である。
以上説明した図26のモジュール101では、分離溝124が設けられているため、中間反射層105のセル110内に位置する部分と接続溝123を埋め込む金属との間にリーク電流が発生するのを防止することができる。
ところで、積層型光電変換装置の半導体層の材料に非晶質酸素化シリコンを使う例が特許文献2に開示されている。この例では、ガラス基板上に、SnO2などの透明電極、非晶質炭素化シリコンの第一p型層、非晶質シリコン第一i型層、非晶質酸素化シリコンの第一n型層、非晶質炭素化シリコンの第二p型層、非晶質シリコンの第二i型層、非晶質シリコンの第二n型層、Agなどの金属電極を形成した構造を有している。通常は第一n
型層に非晶質シリコンまたは微結晶シリコンが用いられるが、特許文献2ではバンドギャプの広い非晶質酸素化シリコンを用いることによって、光の吸収ロスを低減できると報告している。その結果、第一n型層を透過して第二i型層に到達する光が増加して、短絡電流密度(Jsc)が増加して積層型光電変換装置の特性が改善すると示している。
非晶質酸素化シリコンは膜中の酸素濃度を任意に調整することが可能で、膜中酸素濃度が高いほどバンドギャップが広くなり、透過率が高くなる。一方、特許文献2では、第一n型層に適用するためには光を照射したときの導電率である光導電率が1×10-6S/cm以上必要とし、そのためには、一般式a−Si1-xxで表したときにxが0.2未満であること、光学ギャップが1.9eV以上2.1eV以下が必須であると報告している。
また、中間反射層として、n層またはp層の一部を酸素化シリコンとすることで屈折率の低い層とし、反射効果をねらったものが特許文献3に開示されている。ここでは屈折率の実際の値としては2から2.5が開示され、屈折率2.4の実施例があるが、積層型光電変換装置の短絡電流密度の値としては12mA/cm2の低い値に留まっている。また、開示されている実施レベルの非晶質酸素化シリコンの屈折率の最低値は2.2である。
また、特許文献3では膜中酸素量に対する屈折率の依存性のグラフを開示しており、酸素量0であるシリコン半導体の屈折率が約3.5と開示している。一般に屈折率は波長に対して分散をもち、シリコン系半導体およびシリコン合金系半導体においては、1000〜2500nmの波長の光に対してはほぼ一定値で飽和領域になるが、1000nmより波長が減少するにしたがって急激に増加する傾向がある。結晶質シリコンあるいは非晶質シリコンの屈折率は、1000〜2500nmの飽和領域で3.5、波長600nmでは4である。したがって、特許文献3で屈折率として評価しているのは、1000〜2500nmの飽和領域の波長の屈折率であることは明らかである。第一光電変換ユニットのi型層に非晶質シリコンを用い、第二光電変換ユニットのi型層に結晶質シリコンまたは非晶質シリコンゲルマニウムを用いた積層型光電変換装置の場合、第一光電変換ユニットの分光感度電流の立下りと、第二光電変換ユニットの分光感度電流の立ち上りが600nm付近の波長で交錯する。そのため、600nm付近の光を良く反射する膜、すなわち、600nmの光に対する屈折率が小さい膜が、第一光電変換ユニットの発電電流を増加するのに好適であると言え、中間反射層の反射効果の指標としては波長600nmの光に対する屈折率を評価することが重要である。1000〜2500nmの光は第一光電変換ユニットで吸収されず、第一光電変換ユニットの発電電流の増加に寄与しないので、1000〜2500nmの飽和領域の屈折率を評価しても、中間反射層の反射効果の指標としては不適当である。屈折率の分散関係の計算および後述する図1から、特許文献3に実施レベルで開示されている屈折率2.2〜2.5は、波長600nmの屈折率でいうと2.35〜2.7に相当する。
また、特許文献3では、酸素化シリコンの導電率が1×10-6S/cm以下になるとデバイス特性に不具合が生じると開示している。
特開2002−261308号公報 特開平5−95126号公報 特開2003−258279号公報
しかしながら、先行例1で示した特許文献1による図26の構造は、図24の構造に比べて分離溝が1本増えている。第1から第3の分離溝、あるいは接続溝は、一般にYAGレーザーなどによるパターニングによって行われる。すなわち、この構造はパターニングの工程が1回増えることになり、YAGレーザーの台数の増加、またはパターニングのタクト時間が増加し、集積型薄膜光電変換モジュールの装置コスト、製造コストが増大する問題が発生する。
また、図24の構造を作製する場合、第一光電変換ユニット104aと第二光電変換ユニット104bをプラズマCVDで、連続して真空装置中で作製することが可能である。
しかし、特許文献1の構造の場合、第一光電変換ユニット104aをプラズマCVDで、中間反射層105をスパッタなどで作製した後、一旦真空装置から取り出して、YAGレーザーでパターニングを行う必要がある。その後、もう1回真空装置に基板を入れて第二光電変換ユニット104bをプラズマCVDで作製する必要がある。したがって、図26の構造の場合、真空装置への搬入、基板の加熱、真空装置からの搬出が1回ずつ増えるので、集積型薄膜光電変換モジュールの製造時間が増加して、製造コストが増加することになる。
また、中間反射層105を作製後に1回大気中に基板を取り出すので、中間反射層105と第二光電変換ユニット104bの界面に大気中不純物が吸着し、集積型薄膜光電変換モジュールの特性の低下、剥離しやすいなど信頼性の低下の問題が発生する場合がある。
さらに、第3の分離溝124を設けたことにより、薄膜光電変換セルの面積ロスが増加するので、中間反射層有りの集積型薄膜光電変換モジュールの特性を十分発揮するに至らない問題がある。
他方、先行例2で示した特許文献2では、第二光電変換ユニットの光電変換活性層である第二i型層に到達する光が増えて、第二光電変換ユニットの発電電流の増加によってJscが増加して、積層型薄膜光電変換装置の変換効率が改善するとしている。しかしながら、第一光電変換ユニットの特性の向上については何ら言及されていない。また、非晶質シリコンの第一i型層と非晶質酸素化シリコンの第一n型層の界面で、光が反射して中間反射層としてはたらく可能性については何ら言及されていない。さらに非晶質酸素化シリコンの屈折率について何ら言及されていない。特許文献2では非晶質酸素化シリコンの膜中酸素濃度が20%未満に限定されているので、図1に示すように、波長600nmの光に対する屈折率が2.8以上といえる。その場合、非晶質酸素化シリコンと非晶質シリコンの屈折率の差が小さいため、界面での反射効果による電流の増加が期待できないのは明らかである。したがって、特許文献2の構成の非晶質酸素化シリコンを中間反射層として用いることはできない。
さらに、先行例3では中間反射層として本願と類似の屈折率2〜2.5、さらに正確には屈折率2.2〜2.5が例示されているが、従来のZnOなどの中間反射層の屈折率2以下と比較して、明らかに屈折率が大きなものしか得られていない。また、例示されている屈折率は、波長600nmの光に対する屈折率では2.35〜2.7に相当する。その結果、先行例3では、十分な反射効果が得られず、積層型光電変換装置の短絡電流密度も12mA/cm2未満の低い値のものしか得られていない。
上述のような状況に鑑み、本発明は、従来は透明導電性金属酸化物系の材料でしか得られないような低い屈折率で光電変換装置に適用可能な層を、光電変換ユニットと類似のプロセスおよび材料にて実現し、かつ積層型光電変換装置の中間反射層として配置することにより、高性能かつ低コストな積層型光電変換装置を提供することを目的としている。
また本発明は、上記中間反射層を光電変換ユニットと同一の設備で形成し、かつ製膜および集積化プロセスなどの製造工程の複雑化を極力避けることで、高性能かつ低コストな集積構造の積層型光電変換装置を提供することを目的としている。
本発明においては、光入射側から一導電型層と実質的に真性半導体の光電変換層と逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換装置において、第一光電変換ユニットと該第一光電変換ユニットよりも光入射側から見て後方側に隣接して配置される第二光電変換ユニットとを一組以上含み、前記第一光電変換ユニット内の逆導電型層または前記第二光電変換ユニット内の一導電型層のうち片方もしくは両方が導電性の非晶質酸素化シリコン層を少なくとも一部含む導電型層であって、前記非晶質酸素化シリコン層は部分的に非晶質シリコンを含んでいて33原子%以上の酸素濃度を有しかつ480cm-1±10cm-1の範囲内にラマン散乱のTOモードピークを示すとともに波長600nmの光に対する屈折率が2.2未満であることを特徴とする積層型光電変換装置を提供する。
また、前記非晶質酸素化シリコンの光学ギャップが2.2eV以上であることガ好ましい。
あるいは、前記非晶質酸素化シリコンのX線光電子分光法で測定したO1sのバンド間励起損失を受けた光電子の最上端エネルギーと、O1s光電子のピークエネルギーとのエネルギー差が2.2eV以上であることが好ましい。
さらに、前記非晶質酸素化シリコンは、最適な反射効果を得るために、膜厚が20nm以上130nm以下であることが好ましい。
また、前記非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光に対する屈折率が2.0未満であることがさらに好ましい。
本発明においては、透明基板と該透明基板の一方の主面上に並置され且つ互いに直列接続された複数の光電変換セルとを具備し、前記複数の光電変換セルは、前記透明基板の一方の主面上に順次積層された透明電極層、光電変換半導体層、及び裏面電極層で構成され、前記複数の光電変換セルのそれぞれの隣り合う2つの間で、前記透明電極層は第1の分離溝によって分割され、この第1の分離溝は前記光電変換半導体層を構成する材料で埋め込まれ、前記第1の分離溝から離れた位置に、前記裏面電極層の上面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された第2の分離溝が設けられ、前記第1の分離溝と前記第2の分離溝との間に、前記光電変換半導体層と前記裏面電極層との界面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された接続溝が設けられ、この接続溝は前記裏面電極層を構成する材料で埋め込まれることによって前記隣り合って並置された2つの光電変換セルの一方の裏面電極層と他方の透明電極層とを電気的に接続した集積構造の光電変換装置であって、かつ前記光電変換半導体層は光入射側から一導電型層と実質的に真性半導体の光電変換層と逆導電型層の順に構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換半導体層から成り、第一光電変換ユニットと該第一光電変換ユニットよりも光入射側から見て後方側に隣接して配置される第二光電変換ユニットとを一組以上含み、前記第一光電変換ユニット内の逆導電型層または前記第二光電変換ユニット内の一導電型層のうち片方もしくは両方が導電性の非晶質酸素化シリコン層を少なくとも一部含む導電型層であり、前記非晶質酸素化シリコン層は部分的に非晶質シリコンを含んでいて33原子%以上の酸素濃度を有しかつ480cm-1±10cm-1の範囲内にラマン散乱のTOモードピークを示すとともに波長600nmの光に対する屈折率が2.2未満であることを特徴とする積層型光電変換装置を提供する。
積層型光電変換装置の基板が透明基板である場合は、透明基板を通して入射した光の反射スペクトルが、波長450nmから800nmの範囲に反射率の極大値と極小値をそれぞれ少なくとも一つ以上持ち、前記極大値と前記極小値の反射率の差が1%以上あることが好ましい。
本発明によれば、以下のような具体的効果が得られる。まず、波長600nmの光に対する屈折率が2.2未満であることを特徴とする導電型の非晶質酸素化シリコンを中間反射層として用いることにより、非晶質酸素化シリコンの前後の界面で光が一部反射され、第一光電変換ユニットの発電電流を増大させることができ、あるいは第一光電変換ユニットのi形層の膜厚を薄くして同等の発電電流を発生させることができるため、積層型光電変換装置の特性を向上させることができる。
また、前記非晶質酸素化シリコンの膜中酸素濃度を33原子%以上にすることによって波長600nmの光に対する屈折率を2.2よりも低減して、中間反射層の反射効果を増大して積層型光電変換装置の特性を向上をさせることができる。波長600nmの光に対する屈折率を2.0未満にすれば、導電性透明酸化金属層の中間反射層に匹敵する反射効果を得ることができる。
前記の非晶質酸素化シリコンの光学ギャップを2.2eVより大きくすることによって、非晶質酸素化シリコンが透明化して吸収損失が減るので、非晶質酸素化シリコンを透過して第二光電変換ユニットに到達する光が増えて第二光電変換ユニットの発電電流を増加させるので、積層型光電変換装置の特性を向上することができる。
光学ギャップは禁制帯幅を反映し、非晶質酸素化シリコンの吸収損失の大小の指標になるが、光学ギャップが測定困難な場合はX線光電子分光法(XPS)でも、禁制帯幅を反映する量を測定可能である。光学ギャップの代わりに、X線光電子分光法で測定したO1sのバンド間励起損失を受けた光電子の最上端エネルギーと、O1s光電子のピークエネルギーとのエネルギー差(Expsと呼ぶことにする。)を、2.2eV以上にすれば、非晶質酸素化シリコンの吸収損失を低減して、積層型光電変換装置の特性を向上することができる。
また、導電型の非晶質酸素化シリコンは、光電変換ユニットと同様にプラズマCVDで作製可能であるので、同様の装置で中間反射層を含めた光電変換ユニットすべてを作製可能となる。したがって、従来の透明導電性酸化金属層を中間反射層とした場合に必要だった別方式の設備が不要となり、装置コストを低減できる。あるいは、タクトタイムの短縮によって製造コストが低減できる。
さらに、非晶質酸素化シリコンが光電変換ユニットにおける導電型層の一部を兼用することによって、反射効果によって第一の光電変換ユニットの発電電流を増大するだけでなく、光吸収損失を低減して光電変換装置全体の発電電流をも増大することが可能なり、積層型光電変換装置の変換効率が向上する。
集積型の積層型光電変換装置においては、導電型非晶質酸素化シリコンを中間反射層に用いることによって、第3の分離溝が不要となり、製造工程が1回減ってパターニングのための装置コスト、あるいはタクト時間を短縮できる。また、中間反射層を含めた光電変換ユニットすべてを連続して形成できるので、基板を真空装置に搬入、加熱、搬出する作業が一回で済み、タクト時間が短縮する。さらに、光電変換ユニット形成の途中で界面が大気にさらされることなく、汚染の影響がなくなる。また、第3の分離溝がないので、面積ロスを減らすことが可能となって集積型薄膜光電変換モジュールの変換効率が向上する。
以上のような効果により、本発明によれば高性能かつ低コストな積層型光電変換装置を提供することができる。
本発明者らは、中間反射層として光電変換装置に適用可能な材料を見出すべく、高周波プラズマCVD法によるシリコンと酸素の合金形成法を鋭意検討した。その結果、低い屈折率によって高い反射効果を持つ、光電変換装置に適用可能な非晶質酸素化シリコンを見出した。
このような非晶質酸素化シリコンは、反応ガスとして、SiH4、CO2、H2、PH3(またはB26)を用い、プラズマCVDで作製できる(製法としてプラズマCVD法が好ましいが、各種形成方法も使用可能である)。このとき、製膜条件は、容量結合型の平行平板電極を用いて、電源周波数10〜100MHz、パワー密度50〜500mW/cm2、圧力30〜1500Pa、基板温度130〜250℃である。ガスの比率としては、水素希釈率(H2/SiH4)を50より大きい範囲で、CO2/SiH4比が2以上の範囲を用いることが好ましい。CO2/SiH4比を増加させると膜中酸素濃度が単調に増加する。しかし、膜中炭素濃度はCO2/SiH4比を0〜4の範囲で変化させても1原子%以下であり、酸素に比べて炭素はほとんど膜に入らないことが実験によりわかった。
図1は、非晶質酸素化シリコンの膜中酸素濃度に対する、波長600nmの光の屈折率、および波長1000nmの光の屈折率である。2つの波長の屈折率を測定したのは、中間反射層の反射効果の指標として600nmが適当であることと、先行例3の屈折率との比較を1000nmで行うためである。ここで屈折率の測定は、分光エリプソメトリを用いて行った。
波長600nmの光の屈折率が重要であるのは、積層型光電変換装置の一つであるハイブリッド型光電変換装置において、第一光電変換ユニットの分光感度電流の立下りと、第二光電変換ユニットの分光感度電流の立ち上りが600nm付近の波長で交錯するためである。600nm付近の光を良く反射する膜、すなわち、600nmの光に対する屈折率が小さい膜が、第一光電変換ユニットの発電電流を増加するのに好適であると言える。先行例3で用いられているような波長1000nm(あるいは1000〜2500nmの飽和領域)の光に対する屈折率は、第一光電変換ユニットの発電電流増加に寄与しない波長領域なので、中間反射層の反射効果を判定するのには不適当である。また、波長1000nmの光に対する屈折率は、波長600nmの光に対する屈折率よりも低めの値になる。例えば、波長600nmの光に対する屈折率を2.0〜2.2にする場合、波長1000nmの光に対する屈折率は1.9〜2.1に相当する。
後述する図15で詳細に説明するように、積層型光電変換装置に非晶質酸素化シリコンを用いて反射効果によって電流の増加が1mA/cm2以上見こめる屈折率2.2未満である。そのためには、図1から膜中酸素濃度を33原子%以上にすることが好ましいといえる。さらに反射効果を増大して電流増加が2mA/cm2以上見こめる屈折率2.0未満にするためには膜中酸素濃度を40原子%以上にすることが好ましい。600nmの波長に対する非晶質シリコンあるいは結晶質シリコンの屈折率は約4なので、非晶質酸素化シリコンとの屈折率の差は大きく、十分な反射効果が得られる。本発明者らが知る限り、プラズマCVD法によるシリコンと酸素の合金系の膜について、このような低い屈折率で積層型光電変換装置の中間反射層に適用可能な膜の公知文献はない。
図2は、非晶質酸素化シリコンの光エネルギー(E)に対する吸収係数(α)である。図2の中で、非晶質酸素化シリコンの光学ギャップを変化させている。光学ギャップは非晶質酸素化シリコンの禁制帯幅を反映する。光学ギャップは、吸収係数(α)のスペクトルから、光エネルギー(E)に対して√(αE)をプロットし、その直線部分の延長線がα=0の軸と交わるエネルギーを光学ギャップとした(いわゆるタウスプロットから光学ギャップを求めた。)。
非晶質酸素化シリコンの光学ギャップの増加にともなって、吸収係数のスペクトルが右にシフトし、同じ光エネルギーで比較した場合、指数的に吸収係数が減少している。すなわち、非晶質酸素化シリコンを中間反射層に用いた場合、光学ギャップを増加すれば指数的に吸収損失を低減することができる。先行例1で好適であると開示している光学ギャップの範囲に相当する2.05eVの場合に対して、光学ギャップを2.2eV以上にすると広い光エネルギー範囲において1/3以下に吸収係数を低減できる。すなわち、光学ギャップ2.2eV以上の非晶質酸素化シリコンを中間反射層に適用した場合に吸収損失を低減することが可能である。
図3は非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光の屈折率に対する、光学ギャップを示す。図3から明らかにように、屈折率の低下にともなって光学ギャップが増加し、特に屈折率2.2未満で光学ギャップが著しく増加する。光学ギャップが広いと、非晶質酸素化シリコンの吸収損失が低減するので、積層型光電変換装置の特性向上することができる。非晶質酸素化シリコンの屈折率2.2未満にすると、反射効果だけでなく、光学ギャップの増加による吸収損失の低減効果も大きいので、積層型光電変換装置の特性向上に好ましい。
光学ギャップは、ガラス基板上に300nm以上の厚さの非晶質酸素化シリコンを堆積させた場合は、透過スペクトル、あるいは透過スペクトルと反射スペクトルから、容易に求めることが可能である。しかし、膜厚が薄い場合や積層膜の一部について測定することは困難である。そこで、光学ギャップと同様に非晶質酸素化シリコンの禁制帯幅を反映する指標として、X線光電子分光法(XPS)の測定を行った。図4に、非晶質酸素化シリコンをX線光電子分光法で測定した光電子エネルギー損失スペクトルを示す。図4から、禁制帯幅の指標として、O1sのバンド間励起損失を受けた光電子の最上端エネルギーと、O1s光電子のピークエネルギーとのエネルギー差(Expsと呼ぶことにする)を求めた。X線光電子分光法は、XPSあるいはESCAとも呼ばれる。X線を試料に当てて発生した内核光電子は、発生したときのエネルギーを失わずに真空中に脱出して検出されるものと、膜中でエネルギーを損失してから真空中に脱出して検出されるものがある。膜中の主なエネルギー損失には、バンド間励起によるものと、プラズモン励起によるものがある。非晶質酸素化シリコンの場合、プラズモン励起は20eV程度と大きいので、バンド間励起よりも大きく、信号を分離することができる。バンド間励起損失部分のスペクトルの直線部を延長して、ベースラインとの交点を上端エネルギーとし、O1sピークエネルギーとの差を求めた。図4の例では、Expsは、3.4eVである。XPSは、10nm以下の薄い膜についても測定可能である。また、イオンスパッタで膜の測定深さを変えながら測定を行えば、積層膜の深さ方向プロファイルを取ることも可能である。したがって、Expsは、10nm以下の薄い膜や、積層型光電変換装置などの積層膜について、測定することができる。
図5に、波長600nmの光の屈折率に対する、Expsを示す。屈折率を減少すると、Expsは、屈折率2.2付近で急激に増加する。積層型光電変換装置に非晶質酸素化シリコンを用いて反射効果によって電流の増加が十分見こめる屈折率2.2未満にするためには、Expsを2.2eV以上にすれば良い。また、反射効果だけでなく、非晶質酸素化シリコンの吸収損失低減するために、屈折率2.2未満が好ましいと言える。
また、n型の非晶質酸素化シリコンの場合はドーピング不純物として膜中リン濃度を5×1018cm-3以上にすることが好ましい。あるいは、p型の非晶質酸素化シリコンの場合はドーピング不純物として膜中ホウ素濃度を5×1018cm-3以上2×1021cm-3以下にすることが好ましい。膜中リン濃度あるいは膜中ホウ素濃度の増加とともに暗導電率が増加する。ただし、ホウ素は膜中に過剰に入ると光吸収損失が増大するので、膜中ホウ素濃度は上記の範囲に調整することが好ましい。
本発明による非晶質酸素化シリコンにおいては、光閉じ込めに最適な厚さと屈折率に設計できる。しかも非晶質酸素化シリコンの屈折率はCO2/SiH4ガス比を変えて膜中酸素濃度を調整するだけで容易に制御できるため、屈折率を膜厚方向で周期的に変化させるなど、より精緻な光学設計による光閉じ込め効果の増大も期待できる。
前述のように光電変換装置の直列抵抗に与える影響を抑制するためには、ZnOのような透明導電性酸化金属層を中間反射層として用いる場合その暗導電率は102〜103S/cmの高い値が必要であった。しかし、非晶質酸素化シリコンは極めて低い暗導電率にも関わらず、良好なオーミックコンタクトを非晶質シリコンおよび結晶質シリコンの光電変換ユニットとの間で実現できることが詳細な検討により明らかになった。例えば、後述する実施例1に示すように中間反射層に用いた非晶質酸素化シリコンの暗導電率が1.2×10-12S/cmにおいても、積層型光電変換装置の変換効率12.5%以上の良好な特性が得られている。
図6は、n型あるいはp型の非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光の屈折率と、暗導電率の関係を示す。屈折率の増加とともに、暗導電率は指数的に増加する。屈折率2.2で5×10-12S/cmの低い値を示し、屈折率2.0未満ではほとんどの膜が暗導電率1×10-12S/cm以下で測定限界以下であった。また、屈折率3.0においても暗導電率は10-7S/cm台である。暗導電率が10-9S/cm以上の非晶質酸素化シリコンは、光導電率は暗導電率の5倍以下であった。先行例2または3においては、光導電率または暗導電率が1×10-6S/cm以下では、非晶質酸素化シリコンをデバイスに適用できないと開示している。しかし、本発明では極めて低い導電率でも積層型光電変換装置に適用できている。
きわめて低い暗導電率にも関わらず、非晶質酸素化シリコンが、積層型光電変換装置の中間反射層に適用可能なことについて、以下のようなモデルで考えている。非晶質酸素化シリコンは膜面に平行な方向と、断面方向で電流の流れやすさが異なると考えられる。暗導電率は、ガラス基板にコプラナー型電極をつけて、基板に平行な方向に流れる電流を0.1mmから1mmのギャップで測定する。しかし、積層型光電変換装置の中間反射層に非晶質酸素化シリコンを適用した場合、膜の断面方向に電流が流れ、例えば、20nmから130nmの厚さを横切って流れる。すなわち、電流の流れる経路の長さは、暗導電率測定の場合に比べて、積層型光電変換装置の場合は3〜5桁異なる。
非晶質酸素化シリコン中に、シリコンリッチな部分すなわち非晶質シリコンがあれば、そこは局所的に低抵抗になる。良く知られているように、不純物が十分ドーピングされていれば、n型の非晶質シリコンの暗導電率は10-3S/cm〜10-1S/cm、p型の非晶質シリコンの暗導電率は10-5S/cm〜10-2S/cmと高い値を示す。このように、非晶質酸素化シリコン中にシリコンリッチで低抵抗な部分ができて、それが所々つながることによって、断面方向に電流が流れやすい経路ができていると考えられる。一方、暗導電率測定の場合は3〜5桁長い経路を電流が流れる必要があるので、電流の流れやすい経路が存在する確率が低く、途切れ途切れになって測定される暗導電率が低くなっていると考えられる。
あるいは、局所的に低抵抗な部分は、結晶相ができる直前の非晶質である可能性もある。結晶相ができる直前の条件では、非晶質酸素化シリコン膜中に結晶の前駆体が発生し、局所的に通常の非晶質に比べて低抵抗な部分できると考えられる。プラズマCVDで作製した薄膜シリコン系膜の場合、結晶相が発生すると、柱状に膜の断面方向に成長することが良く知られている。結晶相ができる直前の非晶質であっても、膜の断面方向に低抵抗な部分が成長してつながりやすいと考えられる。
また、非晶質酸素化シリコンで良好なオーミックコンタクトが取れる理由として、非晶質酸素化シリコンが非晶質シリコンおよび結晶質シリコンと同様にシリコンを主体にした半導体薄膜であることも挙げられる。
非晶質酸素化シリコンの暗導電率が透明導電性酸化金属に比べて数桁から十桁以上低くても良好なオーミックコンタクトを取れることから、集積型薄膜光電変換モジュールの構造の単純化が可能になり、装置コストの低減、モジュールの変換効率の向上を図ることができる。詳細な説明は後述するが、集積型薄膜光電変換モジュールにおいて、図23に示すような第3の分離溝がない構造でも、リーク電流の問題が発生しない。従って、集積型薄膜光電変換モジュールにおいて、パターニングが1回減ってパターニングの装置コストとタクト時間を短縮できる。また、第一光電変換ユニット、一導電型非晶質酸素化シリコンおよび第二光電変換ユニットを連続して形成できるので、基板を真空装置に搬入、加熱、搬出する作業が一回で済み、タクト時間が短縮するとともに、一導電型非晶質酸素化シリコンと第二光電変換ユニットの界面が大気にさらされることなく、汚染の影響がなくなる。また、第3の分離溝がないので、面積ロスが減って集積型薄膜光電変換モジュールの変換効率が向上する。
図7に、本発明の実施形態の一例による積層型光電変換装置の断面図を示す。透明基板1上に、透明電極層2、第一光電変換ユニット3、第二光電変換ユニット4、および裏面電極層5の順に配置されている。
基板側から光を入射するタイプの光電変換装置にて用いられる透明基板1には、ガラス、透明樹脂等から成る板状部材やシート状部材が用いられる。透明電極層2はSnO2、ZnO等の導電性金属酸化物から成ることが好ましく、CVD、スパッタ、蒸着等の方法を用いて形成されることが好ましい。透明電極層2はその表面に微細な凹凸を有することにより、入射光の散乱を増大させる効果を有することが望ましい。
裏面電極層5としては、Al、Ag、Au、Cu、PtおよびCrから選ばれる少なくとも一つの材料からなる少なくとも一層の金属層をスパッタ法または蒸着法により形成することが好ましい。また、光電変換ユニットと金属電極との間に、ITO、SnO2、ZnO等の導電性酸化物からなる層を形成しても構わない(図示せず)。
透明電極2の後方に、複数の光電変換ユニットから成る光電変換半導体層が配置される。このような積層型光電変換装置は通称タンデム型光電変換装置とも呼ばれる。図7のように2つの光電変換ユニットが積層された構造の場合、光入射側に配置された第一光電変換ユニット3には相対的にバンドギャップの広い材料、例えば非晶質シリコン系材料による光電変換ユニットなどが用いられる。その後方に配置された第二光電変換ユニット4には、それよりも相対的にバンドギャップの狭い材料、例えば結晶質を含むシリコン系材料による光電変換ユニットや、非晶質シリコンゲルマニウム光電変換ユニットなどが用いられる。なお、非晶質あるいは結晶質のシリコン系材料としては、半導体を構成する主要元素としてシリコンのみを用いる場合だけでなく、炭素、酸素、窒素、ゲルマニウムなどの元素をも含む合金材料であってもよい。
各々の光電変換ユニットは、一導電型層、実質的に真性な光電変換層であるi型層、および逆導電型層から成るpin接合もしくはnip接合によって構成されるのが好ましい。このうちi型層に非晶質シリコンを用いたものを非晶質シリコン光電変換ユニット、結晶質を含むシリコンを用いたものを結晶質シリコン光電変換ユニットと呼ぶ。光入射側の一導電型層はp型層でもn型層でもよく、これに対応して逆導電型層はn型層またはp型層になる。例えば図7の構造で、各光電変換ユニットにおいて光入射側(前方側)に配置される一導電型層31、41がp型層の場合、後方側の逆導電型層33、53がn型層となる。導電型層の主要構成材料としては、必ずしもi型層と同質のものである必要はなく、例えば非晶質シリコン光電変換ユニットのp型(またはn型)層に非晶質炭素化シリコンを用い得るし、n型(またはp型)層に結晶質を含むシリコン層(微結晶シリコンとも呼ばれる)も用い得る。
二種類の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役割を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜光電変換装置の特性の一つである開放端電圧(Voc)が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換には寄与しない不活性な層であり、ここで吸収される光はほとんど発電に寄与しない。従って、導電型層は十分な拡散電位を生じさせる範囲内で可能な限り薄くあるいは透明なものとすることが好ましい。
本発明では、波長600nmの光に対する屈折率が2.2未満であることを特徴とした非晶質酸素化シリコンを積層型光電変換装置における中間反射層として用いる。中間反射層として機能させるためには、第一光電変換ユニット3の内の光電変換層32と第二光電変換ユニット4の内の光電変換層42との間に配置させる必要がある。また、この非晶質酸素化シリコンは光電変換ユニット内の導電型層の一部を兼ねることができる。よって、第一光電変換ユニット3における逆導電型層33から第二光電変換ユニット4における一導電型層41まで領域の中に、最低1層以上の逆導電型あるいは一導電型の非晶質酸素化シリコンを配置すればよい。
非晶質酸素化シリコンが導電型層を兼ねることができるため、上記導電型層すべてを非晶質酸素化シリコンに置き換えるのが最も単純な構造となるが、これに限らず、従来技術による導電型材料(例えば導電型微結晶シリコンや、屈折率の高い導電型酸素化シリコンなど)との多層構造とし、多層構造全体で逆導電型層33あるいは一導電型層41を成すこともできる。また、屈折率などの物性値の異なる非晶質酸素化シリコン同士を積層した多層構造や、物性値を積層方向に連続的に変化させた非晶質酸素化シリコンを用いてもよい。さらに、非晶質酸素化シリコンは逆導電型層33内あるいは一導電型層41内のいずれか片方に配置させてもよいし、両方にそれぞれ配置させることもできる。いずれにしても、積層型光電変換装置の光学的あるいは電気的な特性を向上させるための構造設計の自由度は高いと言える。
図7で示した光電変換装置は、光電変換ユニット3および4を2段積層した最もシンプルなタンデム型の光電変換装置であるが、本発明は光電変換ユニットを3段以上積層したタンデム型光電変換装置にも適用し得る。例えば光入射側から上部光電変換ユニット、中部光電変換ユニット、下部光電変換ユニットの順に配置された3段積層型光電変換装置において、上部光電変換ユニットと中部光電変換ユニットを、それぞれ第一光電変換ユニットと第二光電変換ユニットと見なし、両者の境界近傍に導電型の非晶質酸素化シリコンを設けても良く、中部光電変換ユニットと下部光電変換ユニットを、それぞれ第一光電変換ユニットと第二光電変換ユニットと見なし、両者の境界近傍に導電型の非晶質酸素化シリコンを設けても良い。むろん、上部光電変換ユニットと中部光電変換ユニットの境界近傍および中部光電変換ユニットと下部光電変換ユニットの境界近傍の両方に非晶質酸素化シリコンを設けた構造でも良い。3段積層型光電変換装置としては、例えば上部光電変換ユニットに非晶質シリコン光電変換ユニット、中部光電変換ユニットに非晶質シリコンゲルマニウムあるいは結晶質シリコン系光電変換ユニット、下部光電変換ユニットに非晶質シリコンゲルマニウムあるいは結晶質シリコン系光電変換ユニットを適用する場合などが挙げられるが、組み合わせはこの限りではない。
さらに、図7の例では透明基板を用いる実施形態を示したが、本発明は透明でない基板を含めた任意の基板上に、裏面電極層、第二光電変換ユニット、第一光電変換ユニット、透明電極層を順次積層され、基板とは逆の方向から光が入射されるタイプの積層型光電変換装置にも適用可能であり、第二および第一光電変換ユニットの境界近傍に導電型の非晶質酸素化シリコンを中間反射層として配置することによって、同様の効果が得られる。
図8に非晶質酸素化シリコンの膜厚を変化させた場合の、非晶質酸素化シリコン前後の界面の干渉を考慮した600nmの光の反射率を示す。このとき、非晶質酸素化シリコンの600nmの光に対する屈折率は2である。第一光電変換ユニット3の側に反射される光を10%以上にするためには、非晶質酸素化シリコンの膜厚を20nm以上130nm以下にすることが好ましいことがわかる。さらに、第一光電変換ユニット3の側に反射される光を30%以上にするためには、非晶質酸素化シリコンの膜厚が50nm以上100nm以下にすることが好ましいことがわかる。
このような積層型光電変換装置に適用した非晶質酸素化シリコンの膜厚や形状は、断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)で測定することができる。非晶質酸素化シリコンは非晶質シリコンや結晶質シリコンに比べて密度が低いので、断面TEM像ではやや明るく写り、非晶質酸素化シリコンの有無、膜厚を調べることが可能である。
また、本願明細書における「非晶質」との用語は、結晶相が検知不能であるものとしている。結晶相が膜に含まれるかどうかを検知する手段として、ラマン散乱、X線回折、透過型電子顕微鏡による分析が挙げられる。
ラマン散乱の測定によって、ラマンシフトに対して特徴的なピークまたはショルダーが検出されれば、膜中に結晶相が含まれるとわかる。ラマン散乱で測定した結晶シリコン成分のTOモードピークと非晶質シリコンのTOモードピークのピーク強度比(Ic/Ia)が0.5以上の場合、シリコン結晶相が膜中に含まれると判断できる。結晶シリコン成分のTOモードピークは、ラマンシフトで520cm-1±5cm-1に鋭いピークが現れ、非晶質シリコン成分のTOモードピークは480cm-1±10cm-1に幅の広いピークが現れる。
X線回折の測定により、回折角に対して特徴的なピークが検出されれば、膜中に結晶相が含まれるとわかる。また、透過型電子顕微鏡の暗視野像に明るい部分が観察されれば、結晶相に起因にした回折があることから、膜中に結晶相が含まれるとわかる。あるいは、高倍率の透過型電子顕微鏡像に結晶格子像が観察されれば、結晶相を含む膜であることは自明である。
また、積層型光電変換装置の非晶質酸素化シリコン中の酸素濃度、リン濃度あるいはホウ素濃度は既知の分析方法で検知可能である。例えば、ウェットエッチング、プラズマエッチング、イオンスパッタリングなどで検知する深さを変化させながら、SIMS、XPS(ESCA)、EPMA、オージェ電子分光法などで組成を分析可能である。
積層型光電変換装置の非晶質酸素化シリコンの屈折率は、裏面電極層を塩酸などの酸で除去し、ウェットエッチング、プラズマエッチング、イオンスパッタリングなどで非晶質酸素化シリコンを露出させて、エリプソメトリを測定することによって検知可能である。
さらに、非晶質酸素化シリコンの有無の判定は、ガラス基板から入射した光の反射率の差異でも簡便に検知することが可能である。図9は、ガラス基板/非晶質シリコン光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニット/裏面電極層から成る積層型光電変換装置のうち、非晶質酸素化シリコンを含まないもの、膜厚30nmおよび60nmの非晶質酸素化シリコンを中間反射層として非晶質シリコン光電変換ユニットと結晶質シリコン光電変換ユニットの界面近傍に配置させた光電変換装置に、ガラス基板から光を入射した場合の反射光スペクトルである。非晶質酸素化シリコンがある場合は、非晶質光電変換ユニット中で光が往復反射して干渉が起こり、反射率の差が1%以上ある極大値と極小値が波長450nm〜800nmに現れる。これに対して非晶質酸素化シリコンのない場合は、この波長領域に明確な極大値、極小値が現れない。
以下、本発明による実施例と、従来技術による比較例に基づいて詳細に説明する。各図において同様の部材には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明はその趣旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
まず、2段の積層型光電変換装置について、従来技術による比較例1、および、本発明による実施例1〜4について比較しながら説明する。なお、比較例1、および、実施例1〜4の積層型光電変換装置の特性を表1にまとめて示す。光電変換装置の有効面積は1cm2であり、AM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して25℃で出力特性を測定した。表中に開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、変換効率(Eff)を示す。
Figure 0004068043
(比較例1)
比較例1として、図10に示すような積層型光電変換装置を作製した。厚み1.1mm、127mm角のガラス基板1上に、透明電極層2として厚さ800nmのピラミッド状SnO2膜を熱CVD法にて形成した。得られた透明電極層2のシート抵抗は約9Ω/□であった。またC光源で測定したヘイズ率は12%であり、凹凸深さdは約100nmであった。この透明電極層2の上に、プラズマCVDを用いて厚さ15nmのp型非晶質炭素化シリコン層31a、厚さ300nmのi型非晶質シリコン層32a、及び厚さ30nmのn型微結晶シリコン層33aからなる第一光電変換ユニット3を形成し、続けて厚さ15nmのp型微結晶シリコン層41a、厚さ2.5μmのi型結晶質シリコン層42a、及び厚さ15nmのn型微結晶シリコン層43aからなる第二光電変換ユニット4を順次形成した。その後、裏面電極層5として厚さ90nmのAlドープされたZnOと厚さ300nmのAgをスパッタ法にて順次形成した。
(実施例1)
図11に示すような積層型光電変換装置を作製した。比較例1と異なるのは、第一光電変換ユニット3のn型層を、厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン33bで置き換えたことである。それ以外は、比較例1と同様に作製した。
n型非晶質酸素化シリコン33bを製膜時のガスの流量比はSiH4/CO2/PH3/H2=1/3/0.02/100である。電源周波数は13.56MHz、パワー密度100mW/cm2、圧力100Pa、基板温度200℃で製膜した。このときn型非晶質酸素化シリコン33bは、膜中酸素濃度が44原子%、光学ギャップ2.42eV、XPSで測定したExpsは3.6eV、暗導電率は1.2×10-12S/cmであった。600nmの光に対する屈折率は1.95であり、ZnOなどの透明導電性金属酸化物層に匹敵する低い屈折率が得られている。
表1に示すように、実施例1は比較例1よりもJscが2mA/cm2と大幅に増加してEffが向上している。また、比較例1に比べて、分光感度電流は第一光電変換ユニット、第二光電変換ユニットともに増加している。非晶質酸素化シリコン33bが中間反射層として機能し、第一光電変換ユニット3側に効果的に入射光を反射していることがわかる。また、非晶質酸素化シリコンで光の散乱が起こって、第二光電変換ユニット4の光路長も伸びていると考えられる。さらに、第一光電変換ユニットのn型層が透明度の高い非晶質酸素化シリコン33bに置き換わっているため、光吸収ロスも低減されているものと考えられる。ただし、比較例1に比べてFFが低下しており、i型非晶質シリコン層32a/非晶質酸素化シリコン33b界面あるいは非晶質酸素化シリコン33b/p型微結晶シリコン41a界面において、接触抵抗が増加していると考えられる。
(実施例2)
図12に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例1と異なるのは、第一光電変換ユニット3のn型層33として、i型非晶質シリコン層32aの後方に厚さ30nmのn型微結晶シリコン33a/厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン33bの順に積層して形成したことである。それ以外は、実施例1と同様の作製方法であり、また非晶質酸素化シリコン33bの膜特性も同じである。
表1に示すように、実施例2は実施例1と比べてFFが改善されて、Effが向上している。これはn型微結晶シリコン33aを挟むことによってi型非晶質シリコン層32a/非晶質酸素化シリコン33b界面の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。一方で、上記n型微結晶シリコン33aにおける光吸収ロスの影響によって、Jscは実施例1の場合と比べて低下している。
(実施例3)
実施例3として、図13に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例1と異なるのは、第一光電変換ユニット3のn型層33として、i型非晶質シリコン層32aの後方に厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン33b/厚さ5nmのn型微結晶シリコン33cの順に積層して形成したことである。それ以外は、実施例1と同様の作製方法であり、また非晶質酸素化シリコン33bの膜特性も同じである。また、微結晶シリコン33cの作製方法は比較例1の微結晶シリコン33aと同様である。
表1に示すように、実施例3においても実施例1と比べてFFが改善されて、Effが向上している。これはn型微結晶シリコン33cを薄く挟むことによって非晶質酸素化シリコン33b/p型微結晶シリコン41a界面の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。一方で、上記n型微結晶シリコン33cの光吸収ロスの影響によって、Jscは実施例1の場合と比べてやや低下している。
(実施例4)
実施例4として、図14に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例1と異なるのは、第一光電変換ユニット3のn型層33として、i型非晶質シリコン層32aの後方に厚さ5nmのn型微結晶シリコン33d/厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン33b/厚さ5nmのn型微結晶シリコン33cの順に積層して形成したことである。それ以外は、実施例1と同様の作製方法であり、また、非晶質酸素化シリコン33bの膜特性も同じものを用いた。また、微結晶シリコン33cおよび33dの作製方法は比較例1の微結晶シリコン33aと同様である。
表1に示すように、実施例4は実施例2あるいは3と比べてFFがさらに向上している。i型非晶質シリコン32aとn型非晶質酸素化シリコン33bとの界面、およびn型非晶質酸素化シリコン33bとp型微結晶シリコン41aとの界面の、両方の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。
(実施例5)
図15に、本発明の実施例5として、実施例1の構造の積層型光電変換装置において、非晶質酸素化シリコン33bの屈折率を変化させた場合の第一光電変換ユニットにおける分光感度電流を示す。非晶質酸素化シリコンは、CO2/SiH4の比を1〜15で変化させた以外は、実施例1と同様に作製した。図15の横軸は波長600nmの光に対する非晶質酸素化シリコンの屈折率、第一光電変換ユニットの分光感度電流である。比較のために、比較例1の第一光電変換ユニットの分光感度電流も図の右側に示した。屈折率の減少に伴って、第一光電変換ユニット側に反射される光が増加して第一光電変換ユニットの分光感度電流が増加している。屈折率が2.5付近では比較例1に比べた0.5mA/cm2未満のわずかな電流増加にとどまる。これに対して屈折率をさらに減少すると、屈折率2.2から2.0にかけて著しく分光感度電流が増加する。屈折率2.2未満で比較例1に比べて1mA/cm2以上の電流増加が得られる。さらに屈折率2.0未満で比較例1に比べて2mA/cm2以上の電流増加が得られる。屈折率2.0未満でさらに屈折率を減少するとやや緩やかに分光感度電流が増加する。上記から、第一光電変換ユニットで十分な電流増加を図るためには、非晶質酸素化シリコンの600nmの光に対する屈折率を2.2未満にすることが重要である。非晶質酸素化シリコンの屈折率2.2未満で大幅な電流増加が起こるのは、界面の反射特性と合わせて、図3に示したようにバンドギャップの急増による吸収損失の低減が理由として挙げられる。
また、さらに電流増加を図るためには、非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光に対する屈折率を透明導電性酸化金属層の屈折率に匹敵する2.0未満にすることが好ましい。屈折率2.0未満で電流増加が緩やかになるのは、バンドギャップの増加が緩やかになって吸収損失の低減の効果に飽和傾向が現れるためと考えられる。波長600nmの光の屈折率2.2と2.0は、屈折率の飽和領域の波長1000〜2500nmにおける屈折率にすると、それぞれ2.1と1.9に相当する。
(実施例6)
図16は、本発明の実施例6として、実施例1の構造の積層型光電変換装置において、SIMSで測定した膜中リン濃度と酸素濃度の深さ方向プロファイルである。裏面電極はあらかじめ塩酸でウェットエッチングし、基板側に向かってイオンスパッタリングしながらSIMSでリン濃度および酸素濃度の深さ方向プロファイルを測定した。深さ方向で、リンと酸素が同じ位置に明確なピークをもつことからn型の非晶質酸素化シリコンが存在することがわかる。
(実施例7)
図17に、本発明の実施例7として、実施例5で用いた積層型光電変換装置についてXPSで測定した膜中酸素濃度の深さ方向プロファイルである。このとき、積層型光電変換装置は、非晶質酸素化シリコンの屈折率2.18である以外は、実施例1の構造になっている。非晶質酸素化シリコンの屈折率は、裏面電極はあらかじめ塩酸でウェットエッチングし、基板側に向かってイオンスパッタリングしながらXPSで酸素濃度の深さ方向プロファイルを測定した。酸素濃度に明確なピークが現れ、非晶質酸素化シリコンが存在することがわかる。図17の酸素濃度のピーク値は約15原子%、半値幅約110nmである。実際の非晶質酸素化シリコンの膜厚50nmを考慮して、(15原子%)×(110nm/50nm)=33なので、非晶質酸素化シリコンの膜中酸素濃度が33原子%であることがわかる。
(実施例8)
図18は、非晶質酸素化シリコンの膜厚を変化させて測定したラマン散乱スペクトルである。非晶質酸素化シリコンの製膜条件は、実施例1の非晶質酸素化シリコンと同じである。50nmのサンプルは、実施例1の積層型光電変換装置をウェットエッチングで裏面電極を除去し、イオンスパッタで非晶質酸素化シリコンの表面を露出させて、ラマン散乱スペクトルを測定した。300nmと1μmのサンプルは、ガラス基板上に製膜した。非晶質酸素化シリコンの膜厚が50nmの場合と300nmの場合は、480cm-1付近の幅の広いピークであるアモルファスシリコン成分TOモードピークだけが観察され、結晶相が膜中に含まれないことを示している。非晶質酸素化シリコンの膜厚を1μmにすると、520cm-1付近にショルダーが観察され、結晶シリコン成分TOモードピークが検知された。膜厚を厚くして結晶相を検出したことから、実施例1の非晶質酸素化シリコンは結晶相が発生する直前の条件になっていると考えられる。すなわち、積層型光電変換装置の中間反射層の非晶質酸素化シリコンは、同じ製膜条件で1μm以上堆積した場合に膜中にシリコン結晶相を含むことが、好ましい条件の一つといえる。なお、50nmと300nmの非晶質酸素化シリコンについては、X線回折、透過型電子顕微鏡でも結晶相は検知されなかった。
非晶質酸素化シリコンを、水素希釈率だけを実施例1の条件と変えて製膜した場合、水素希釈率120以上で結晶相が検知された。また、実施例4の構造の積層型光電変換装置において、中間反射層の非晶質酸素化シリコンを製膜時の水素希釈率だけを50〜120で変化させたときに、水素希釈率70以上でJscが比較例1に比べて5%以上増加した。すなわち、積層型光電変換装置の中間反射層に用いる非晶質酸素化シリコンの製膜時の水素希釈率は、結晶相が検知される水素希釈率の60%以上にすることが好ましい条件の一つといえる。非晶質酸素化シリコンが結晶相を含む製膜条件から、水素希釈率以外の製膜条件を非晶質側にずらして製膜した非晶質酸素化シリコンにおいても、積層型光電変換装置の特性向上に有効であった。
次に、2段の積層型光電変換装置のうち、第二光電変換ユニットにおける一導電型層(p層)の一部にも非晶質酸素化シリコンを用いた場合について、従来技術による比較例1と本発明による実施例9、10とを比較しながら説明する。積層型光電変換装置の特性を表2にまとめて示す。
Figure 0004068043
(実施例9)
図19に示すような積層型光電変換装置を作製した。比較例1と異なるのは、第一光電変換ユニットのn型層を厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン33bで置き換え、かつ第二光電変換ユニット4のp型層を、厚さ30nmのp型非晶質酸素化シリコン41bで置き換えたことである。それ以外は、比較例1と同様に作製した。n型非晶質酸素化シリコン33bは、製膜条件および膜特性ともに実施例1と同じものを用いた。
p型非晶質酸素化シリコン41bを製膜時のガスの流量比はSiH4/CO2/B26/H2=1/2/0.005/200である。電源周波数は13.56MHz、パワー密度100mW/cm2、圧力100Pa、基板温度200℃で製膜した。このときp型非晶質酸素化シリコン41bは、膜中酸素濃度が33原子%、600nmの光に対する屈折率は2.17、光学ギャップ2.33eV、XPSで測定したExpsは2.4eV、暗導電率は4.0×10-12S/cmであった。
表2に示すように、実施例10は比較例1よりもJscが大幅に増加してEffが向上している。また、実施例1と比べてもJscが増加してEffが向上していることがわかる。n型非晶質酸素化シリコン33bおよびp型非晶質酸素化シリコン41bの厚さの合計は80nmであり、中間反射層としての機能がさらに向上したものと考えられる。この膜厚は図8で示した干渉を考慮した中間反射層の界面の反射率が最大になる膜厚に近い値になっている。
また、第一光電変換ユニットのn型層および第二光電変換ユニットのp型層の両者がいずれも透明度の高い非晶質酸素化シリコンに置き換わっているため、光吸収ロスも大幅に低減されているものと考えられる。ただし、実施例1に比べてFFが低下しており、i型非晶質シリコン層32a/n型非晶質酸素化シリコン33b界面あるいはp型非晶質酸素化シリコン41b/i型結晶質シリコン層42a界面において、接触抵抗が増加していると考えられる。
(実施例10)
図20に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例9と異なるのは、i型非晶質シリコン層32の後方に、第一光電変換ユニット3のn型層33として厚さ5nmのn型微結晶シリコン33d/厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン33bの順に積層して形成し、さらに第二光電変換ユニット4のp型層41として厚さ30nmのp型非晶質酸素化シリコン41b/厚さ5nmのp型微結晶シリコン41cの順に積層して形成したことである。n型非晶質酸素化シリコン33bおよびp型非晶質酸素化シリコン41bの製膜条件および膜特性は、それぞれ実施例1および実施例9と同じである。
表2に示すように、実施例10は実施例9と比べて大幅にFFが改善されてEffが向上している。これはn型微結晶シリコン33dを薄く挟むことによってi型非晶質シリコン層32a/n型非晶質酸素化シリコン33b界面の接触抵抗が低減され、さらにp型微結晶シリコン41cを薄く挟むことによってp型非晶質酸素化シリコン41b/i型結晶質シリコン層42a界面の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。一方で、上記n型微結晶シリコン33dおよびp型微結晶シリコン41cにおける光吸収ロスの影響によって、Jscは実施例10の場合と比べてやや低下している。
次に、3段の積層型光電変換装置について、従来技術による比較例2および本発明による実施例11について比較しながら説明する。積層型光電変換装置の特性の相対値を表3にまとめて示す。
Figure 0004068043
(比較例2)
比較例2として、図21に示すような3段積層型光電変換装置を作製した。比較例1で記したものと同様のガラス基板1/透明電極2上に、プラズマCVDを用いて上部光電変換ユニット6である非晶質シリコン光電変換ユニット、中部光電変換ユニット7である結晶質シリコン光電変換ユニット、下部光電変換ユニット8である結晶質シリコン光電変換ユニットを順次形成し、その後比較例1と同様裏面電極層5として厚さ90nmのAlドープされたZnOと厚さ300nmのAgをスパッタ法にて順次形成した。p型非晶質炭素化シリコン層61a、i型非晶質シリコン層62a、n型微結晶シリコン層63aから成る上部光電変換ユニット6は、比較例1の31a、32a、33aと同じ方法で形成し、膜厚はi型非晶質シリコン層62aを除いて比較例1と同様にした。またp型微結晶シリコン層71aあるいは81a、i型結晶質シリコン層72aあるいは82a、n型微結晶シリコン層73aあるいは83aから成る中部光電変換ユニット7と下部光電変換ユニット8は、いずれも比較例1の41a、42a、43aと同じ方法で形成し、膜厚はi型結晶質シリコン層72aと82aを除いて比較例1と同様にした。但し、i型非晶質シリコン層62aの膜厚は100nm、中部光電変換ユニット7におけるi型結晶質シリコン層72aの膜厚は1.2μm、下部光電変換ユニット8におけるi型結晶質シリコン層82aの膜厚は2.5μmとした。
(実施例11)
図22に示すような3段積層型光電変換装置を作製した。比較例3と異なるのは、上部光電変換ユニット6のn型層63を、厚さ5nmのn型微結晶シリコン63d/厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン63b/厚さ5nmのn型微結晶シリコン63cの積層構造にしたこと、および中部光電変換ユニット7のn型層73を、厚さ5nmのn型微結晶シリコン73d/厚さ50nmのn型非晶質酸素化シリコン73b/厚さ5nmのn型微結晶シリコン73cの積層構造にしたことである。これら非晶質酸素化シリコンの作製方法および膜特性は実施例1で示したものと同じである。
表3に示すように、3段積層型光電変換装置においても、非晶質酸素化シリコンによる中間反射効果によってJscが増加し、Effが向上していることがわかる。
(実施例12)
図23に、本発明の実施例12の集積型光電変換装置を示す。図23の構造は、リーク電流の問題が発生した図25のZnOの中間反射層105を、非晶質酸素化シリコン107に代えた以外は、図25と同じ構造をしている。各層の膜厚、作製方法は実施例2と同様に作製した。基板の大きさは910mmX455mmであり、パターニングによって分割することにより、光電変換セルを100段直列接続した。非晶質酸素化シリコン107は、実施例1で示したn型非晶質酸素化シリコン33bと同じ膜特性、膜厚のものを用いた。
比較例3として、図24に示す中間反射層のない集積型光電変換装置を作製した。また比較例4として、図25に示す様にスパッタで作製した厚さ30nmのZnOを中間反射層に用い、かつ第3の分離溝がない構造の集積型光電変換装置を作製した。さらに比較例5として、図26に示す様にZnOを中間反射層に用い、かつ第3の分離溝を設けた構造の集積型光電変換装置を作製した。表4に、実施例12および比較例3〜5の集積型光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して25℃で測定した出力特性を示す。表4に特性として、開放電圧(Voc)、短絡電流(Isc)、曲線因子(FF)、最大電力(Pmax)、変換効率(Eff)を示す。
中間反射層がない比較例3に比べて、ZnOの中間反射層を挿入した比較例4は、Voc、FFが大幅に低下して著しく変換効率が減少している。これはZnOの中間反射層105、接続溝123、裏面電極層106の電流経路でリーク電流が発生したためである。一方、第3の分離溝を設けた比較例5は、リーク電流が抑制されてFFが増加し、反射効果によってIscが増加して変換効率Effが改善されている。
非晶質酸素化シリコンを用いた実施例12は、比較例5に比べてさらにIscが増加して、Effが大幅に向上している。これは、第3の分離溝が不要になった分の面積ロスがなくなったことからIscが向上したと考えられる。また、第一光電変換ユニット104a、非晶質酸素化シリコン107、第二光電変換ユニット104bをプラズマCVDで連続して作製できるので、非晶質酸素化シリコン107と第二光電変換ユニット104bの界面で大気汚染の影響がないので、FFが向上したと考えられる。本発明者らが知る限り、プラズマCVD法によるシリコンと酸素の合金系の膜を用いた中間反射層で、透明導電性金属酸化物層の中間反射層を超える電流増加を確認した公知文献はない。非晶質酸素化シリコンで、透明導電性金属酸化物層に匹敵する低い屈折率で、積層型光電変換装置に適用可能な膜を実現したことが重要である。
さらに、比較例5に比べて、実施例12は、第3の分離溝が不要になったため、パターニング回数が減ってレーザースクライブ機を1台減らすことができ、装置コストを削減できる。また、プラズマCVDを用いて光電変換ユニットと同じ装置で作製できるので、ZnOで必要だったスパッタなどの中間反射層専用の製膜設備が不要となり、ここでも装置コストを大幅に削減できる。また、比較例5に比べて実施例12は、真空装置であるプラズマCVD装置へ基板を搬入、加熱、搬出する作業が1回ずつ減り、また、パターニングの時間も1回分減ったので、生産タクト時間が大幅に減って、製造コストを低減することができる。
Figure 0004068043
非晶質酸素化シリコンの膜中酸素濃度に対する、波長600nmおよび1000nmの光の屈折率。 非晶質酸素化シリコンの光学ギャップを変化させた場合の吸収スペクトル。 非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光の屈折率に対する光学ギャップ。 非晶質酸素化シリコンのX線光電子分光法で測定したO1sの光電子エネルギー損失スペクトル。 非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光の屈折率に対する、X線光電子分光法で測定したO1sのバンド間励起損失を受けた光電子の最上端エネルギーと、O1s光電子のピークエネルギーとのエネルギー差。 非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光の屈折率に対する暗導電率。 本発明の実施形態の一例による積層型光電変換装置の構造断面図。 非晶質酸素化シリコンの膜厚を変化させた場合の干渉を考慮した屈折率の特性。 本発明の積層型光電変換装置のガラス基板から光入射した光の反射率。 従来技術の比較例1による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例1による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例2による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例3による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例4による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例5による積層型光電変換装置の分光感度電流の相対値。 本発明の実施例6によるSIMSによる積層型光電変換装置のPおよび酸素濃度。 本発明の実施例7によるXPSによる積層型光電変換装置の酸素濃度。 本発明の実施例8による非晶質酸素化シリコンの膜厚を変化させた場合のラマン散乱スペクトル。 本発明の実施例9による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例10による積層型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例2による3段積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例11による3段積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例12による集積型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例3による集積型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例4による集積型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例5による集積型光電変換装置の構造断面図。
符号の説明
1 透明基板
2 透明電極層
3 第一光電変換ユニット
31 第一光電変換ユニット内の一導電型層
32 第一光電変換ユニット内の光電変換層
33 第一光電変換ユニット内の逆導電型層
31a p型非晶質炭素化シリコン層
32a i型非晶質シリコン層
33a、33c、33d n型微結晶シリコン層
33b n型非晶質酸素化シリコン層
4 第二光電変換ユニット
41 第二光電変換ユニット内の一導電型層
42 第二光電変換ユニット内の光電変換層
43 第二光電変換ユニット内の逆導電型層
41a、41c、41d p型微結晶シリコン層
41b p型非晶質酸素化シリコン層
42a i型結晶質シリコン層
43a n型微結晶シリコン層
5 裏面電極層
6 3段積層型光電変換装置における上部光電変換ユニット
61a p型非晶質炭素化シリコン層
62a i型非晶質シリコン層
63a、63c、63d n型微結晶シリコン層
7 3段積層型光電変換装置における中部光電変換ユニット
71a p型微結晶シリコン層
72a i型結晶質シリコン層
73a、73c、73d n型微結晶シリコン層
73b n型非晶質酸素化シリコン層
8 3段積層型光電変換装置における下部光電変換ユニット
81a p型微結晶シリコン層
82a i型結晶質シリコン層
83a n型微結晶シリコン層
101 集積型薄膜光電変換モジュール
102 ガラス基板
103 透明電極層
104a 第一光電変換ユニット
104b 第二光電変換ユニット
105 ZnOの中間反射層
106 裏面電極層
107 一導電型の非晶質酸素化シリコン層
110 光電変換セル部
121 第一の分離溝
122 第二の分離溝
123 接続溝
124 第三の分離溝

Claims (7)

  1. 光入射側から一導電型層と実質的に真性半導体の光電変換層と逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換装置において、
    第一光電変換ユニットと該第一光電変換ユニットよりも光入射側から見て後方側に隣接して配置される第二光電変換ユニットとを一組以上含み、前記第一光電変換ユニット内の逆導電型層または前記第二光電変換ユニット内の一導電型層のうち片方もしくは両方が導電性の非晶質酸素化シリコン層を少なくとも一部に含む導電型層であって、
    前記非晶質酸素化シリコン層は部分的に非晶質シリコンを含んでいて33原子%以上の酸素濃度を有しかつ480cm-1±10cm-1の範囲内にラマン散乱のTOモードピークを示すとともに波長600nmの光に対する屈折率が2.2未満であることを特徴とする積層型光電変換装置。
  2. 前記非晶質酸素化シリコンの光学ギャップが2.2eV以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  3. 前記非晶質酸素化シリコンのX線光電子分光法で測定したO1sのバンド間励起損失を受けた光電子の最上端エネルギーと、O1s光電子のピークエネルギーとのエネルギー差が2.2eV以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型光電変換装置。
  4. 前記非晶質酸素化シリコンの膜厚が20nm以上130nm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型光電変換装置。
  5. 前記非晶質酸素化シリコンの波長600nmの光に対する屈折率が2.0未満であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型光電変換装置。
  6. 透明基板と該透明基板の一方の主面上に並置され且つ互いに直列接続された複数の光電変換セルとを具備し、前記複数の光電変換セルは、前記透明基板の一方の主面上に順次積層された透明電極層、光電変換半導体層、及び裏面電極層で構成され、前記複数の光電変換セルのそれぞれの隣り合う2つの間で、前記透明電極層は第1の分離溝によって分割され、この第1の分離溝は前記光電変換半導体層を構成する材料で埋め込まれ、前記第1の分離溝から離れた位置に、前記裏面電極層の上面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された第2の分離溝が設けられ、前記第1の分離溝と前記第2の分離溝との間に、前記光電変換半導体層と前記裏面電極層との界面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された接続溝が設けられ、この接続溝は前記裏面電極層を構成する材料で埋め込まれることによって前記隣り合って並置された2つの光電変換セルの一方の裏面電極層と他方の透明電極層とを電気的に接続した集積構造の光電変換装置であって、
    かつ前記光電変換半導体層は光入射側から一導電型層と実質的に真性半導体の光電変換層と逆導電型層の順に構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換半導体層から成り、
    第一光電変換ユニットと該第一光電変換ユニットよりも光入射側から見て後方側に隣接して配置される第二光電変換ユニットとを一組以上含み、前記第一光電変換ユニット内の逆導電型層または前記第二光電変換ユニット内の一導電型層のうち片方もしくは両方が導電性の非晶質酸素化シリコン層を少なくとも一部に含む導電型層であり、
    前記非晶質酸素化シリコン層は部分的に非晶質シリコンを含んでいて33原子%以上の酸素濃度を有しかつ480cm-1±10cm-1の範囲内にラマン散乱のTOモードピークを示すとともに波長600nmの光に対する屈折率が2.2未満であることを特徴とする積層型光電変換装置。
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載の積層型光電変換装置であって、該積層型光電変換装置が透明基板上に積層されてなり、前記透明基板を通して入射した光の反射スペクトルが、波長450nmから800nmの範囲に反射率の極大値と極小値をそれぞれ少なくとも一つ以上持ち、前記極大値と前記極小値の反射率の差が1%以上あることを特徴とする請求項1ないし6に記載の積層型光電変換装置。
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