JP2005135986A - 積層型光電変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高性能かつ低コストな積層型光電変換装置を提供する。
【解決手段】 光入射側から見て一導電型層と実質的に真性半導体の光電変換層と逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換装置であって、相対的に光入射側に配置された前方光電変換ユニット3内の逆導電型層33と、該前方光電変換ユニット3の後方側に隣接して配置される後方光電変換ユニット4内の一導電型層41のうち、片方もしくは両方がシリコン複合層を少なくとも一部含む導電型層であり、前記シリコン複合層はシリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含むことを特徴とすることによって課題を解決する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、光電変換装置の変換効率の改善に関し、特に光電変換ユニットが複数積層された光電変換装置の光電変換効率の改善に関するものである。
なお、本願明細書における「結晶質」、「微結晶」との用語は、部分的に非晶質を含んでいるものも含んでいるものとする。
近年、光電変換装置の低コスト化、高効率化を両立するために資源面での問題もほとんど無い薄膜光電変換装置が注目され、開発が精力的に行われている。薄膜光電変換装置は、太陽電池、光センサ、ディスプレイなど、さまざまな用途への応用が期待されている。薄膜光電変換装置の一つである非晶質シリコン光電変換装置は、低温で大面積のガラス基板やステンレス基板上に形成できることから、低コスト化が期待できる。
薄膜光電変換装置は、一般に表面が絶縁性の基板上に順に積層された第一電極、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、及び第二電極とを含んでいる。そして1つの薄膜光電変換ユニットはp型層とn型層でサンドイッチされたi型層からなる。
薄膜光電変換ユニットの厚さの大部分は、実質的に真性の半導体層であるi型層によって占められ、光電変換作用は主としてこのi型層内で生じる。従って、光電変換層であるi型層の膜厚は光吸収のためには厚いほうが好ましいが、必要以上に厚くすると、その堆積にコストと時間がかかることになる。
他方、p型やn型の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役目を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜光電変換装置の重要な特性の1つである開放端電圧の値が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換には寄与しない不活性な層であり、導電型層にドープされた不純物によって吸収される光は発電に寄与せず損失となる。したがって、p型とn型の導電型層の膜厚は、十分な拡散電位を生じさせる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましい。
ここで、光電変換ユニットまたは薄膜太陽電池は、それに含まれるp型とn型の導電型層が非晶質か結晶質かにかかわらず、その主要部を占めるi型の光電変換層が非晶質のものは非晶質光電変換ユニットまたは非晶質薄膜太陽電池と称され、i型層が結晶質のものは結晶質光電変換ユニットまたは結晶質薄膜太陽電池と称される。
一般に光電変換層に用いられている半導体は、波長が長くなるに従い光吸収係数が小さくなる。特に、光電変換材料が薄膜である場合は、吸収係数の小さな波長領域において十分な光吸収が生じないために、光電変換量が光電変換層の膜厚によって制限されることになる。そこで、光電変換装置内に入射した光が外部に逃げにくい光散乱構造を形成することによって、実質的な光路長を長くし、十分な吸収を得、大きな光電流を発生させ得る工夫がなされている。例えば、光が基板側から入射する場合、光入射側電極として表面型状が凹凸であるテクスチャ透明導電膜が用いられている。
また、光電変換装置の変換効率を向上させる方法として、2つ以上の光電変換ユニットを積層した光電変換装置にする方法が知られている。このような積層型光電変換装置は通称タンデム型光電変換装置とも呼ばれる。この方法においては、光電変換装置の光入射側に大きなバンドギャップを有する光電変換層を含む前方光電変換ユニットを配置し、その後ろに順に小さなバンドギャップを有する(例えばSi−Ge合金の)光電変換層を含む後方光電変換ユニットを配置することにより、入射光の広い波長範囲にわたって光電変換を可能にし、これによって装置全体としての変換効率の向上が図られている。(本願では、相対的に光入射側に配置された光電変換ユニットを前方光電変換ユニットと呼び、これよりも相対的に光入射側から遠い側に隣接して配置された光電変換ユニットを後方光電変換ユニットと呼ぶ。)積層型薄膜光電変換装置の中でも、非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットを積層したものはハイブリッド型光電変換装置と称される。ハイブリッド型光電変換装置においては、非晶質シリコンが光電変換し得る光の波長は長波長側において800nm程度であるが、結晶質シリコンはそれより長い約1100nm程度までの光を光電変換することが可能であるため、入射光のより広い範囲を有効に光電変換することが可能になる。
ところで、積層型光電変換装置では、各光電変換ユニットが直列に接続されているため、光電変換装置としての短絡電流密度(Jsc)は各光電変換ユニットで発生する電流値のうち最も小さな値で律速される。従って、各光電変換ユニットの電流値は均等であるほど好ましく、さらに電流の絶対値が大きいほど変換効率の向上が期待できる。積層型の薄膜光電変換装置では、積層された複数の薄膜光電変換ユニットの間に光透過性及び光反射性の双方を有し且つ導電性の中間反射層を介在させることがある。この場合、中間反射層に到達した光の一部が反射し、中間反射層よりも光入射側に位置する前方光電変換ユニット内での光吸収量が増加し、その前方光電変換ユニットで発生する電流値を増大させることができる。すなわち、見かけ上前方光電変換ユニットの実効的な膜厚が増加したことになる。例えば、非晶質シリコン光電変換ユニットと結晶質シリコン光電変換ユニットからなるハイブリッド型光電変換装置に中間反射層を挿入した場合、非晶質シリコン層の膜厚を増やすことなく非晶質シリコン光電変換ユニットによって発生する電流を増加させることができる。もしくは、同一の電流値を得るために必要な非晶質シリコン層の膜厚を薄くできることから、非晶質シリコン層の膜厚増加に応じて顕著となる光劣化による非晶質シリコン光電変換ユニットの特性低下を押さえることが可能となる。
中間反射層は、多結晶のITO、ZnOのような透明導電性金属酸化物層、特にZnOで構成されることが多い。しかしながら、ZnOはスパッタ、スプレーなどの手法で形成されるため、プラズマCVD法等で一般的に形成される半導体薄膜とは別設備を用いる必要があり、設備コストがかかり、生産タクトも長くなるという問題が発生する。さらに、特にZnOの形成にスパッタ法を用いる場合、下地半導体薄膜へのスパッタダメージによる性能低下を引き起こす可能性がある、という問題も発生する。
また、太陽電池の直列抵抗に与える影響を抑制するために、透明導電性金属酸化物層と半導体薄膜と界面で良好なオーミックコンタクトを取る必要がある。このために透明導電性金属酸化物層の暗導電率は、不純物をドープすることや酸化度を変化させることなどによって1.0×102S/cm〜1.0×103S/cmの高い値に調節する必要がある。
また、特にZnOは非晶質シリコンまたは結晶質シリコンとの界面でオーミックコンタクトを取ることが困難であることが一般に知られている。暗導電率がこの範囲よりも低いと、中間反射層と前方光電変換ユニット、および中間反射層と後方光電変換ユニットとの良好なオーミックコンタクトが取れなくなり、接触抵抗が増加してセルの曲線因子(FF)を低下させ、光電変換装置の特性が悪くなる。逆に、暗導電率がこの範囲より高いと透明導電性金属酸化物層の透過率が低下して短絡電流密度(Jsc)を低下させ、光電変換装置の特性が悪くなる。
ところで、大面積の薄膜光電変換装置は、通常、集積型光電変換モジュールとして形成される。集積型光電変換モジュールは、小面積に区切られた光電変換装置である光電変換セルを、複数個、ガラス基板上で相互に直列接続した構造を有している。それぞれの光電変換セルは、一般的には、ガラス基板上への透明電極層、1つ以上の薄膜半導体光電変換ユニット、及び裏面電極層の製膜とパターニングとを順次行うことにより形成されている。
図25は、積層型光電変換装置を複数直列接続した中間反射層のない従来の集積型薄膜光電変換モジュールの例を概略的に示す断面図である。図25に示す集積型薄膜光電変換モジュール101は、ガラス基板102上に、透明電極層103、非晶質シリコン光電ユニットである前方光電変換ユニット104a、結晶質シリコン光電変換ユニットである後方光電変換ユニット104b、及び裏面電極層106を順次積層した構造を有している。
図25に示すように、集積型薄膜光電変換モジュール101には、上記薄膜を分割する第1、第2の分離溝121、122と接続溝123とが設けられている。これら第1、第2の分離溝121、122及び接続溝123は、互いに平行であって、紙面に対して垂直な方向に延在している。なお、隣り合う光電変換セル110間の境界は、第1及び第2の分離溝121,122によって規定されている。
第1の分離溝121は、透明電極層103をそれぞれの光電変換セル110に対応して分割しており、透明電極層103と非晶質シリコン光電変換ユニット104aとの界面に開口を有し且つ透明基板102の表面を底面としている。この第1の分離溝121は、非晶質シリコン光電変換ユニット104aを構成する非晶質によって埋め込まれており、隣り合う透明電極膜103同士を電気的に絶縁している。
第2の分離溝122は、第1の分離溝121から離れた位置に設けられている。第2の分離溝122は、前方光電変換ユニット104a、後方光電変換ユニット104b、及び裏面電極層106をそれぞれの光電変換セル110に対応して分割しており、裏面電極層106の上面に開口を有し且つ透明電極層103と前方光電変換ユニットの界面を底面としている。この第2の分離溝122は、隣り合う光電変換セル110間で裏面電極層106同士を電気的に絶縁している。
接続溝123は、第1の分離溝121と第2の分離溝122との間に設けられている。接続溝123は、前方光電変換ユニット104a、後方光電変換ユニット104bを分割しており、後方光電変換ユニット104bと裏面電極層106との界面に開口を有し且つ透明電極層103と前方光電変換ユニット104aの界面を底面としている。この接続溝123は、裏面電極層106を構成する金属材料で埋め込まれており、隣り合う光電変換セル110の一方の裏面電極層106と他方の透明電極層103とを電気的に接続している。すなわち、接続溝123及びそれを埋め込む金属材料は、ガラス基板102上に並置された光電変換セル110同士を直列接続する役割を担っている。
図26に示すように、単純に、図25の構造に中間反射層として透明導電性金属酸化層を、前方光電変換ユニットと後方光電変換ユニットの間に配置させると、以下に説明するようにリーク電流の問題が発生し、集積型薄膜光電変換モジュールの特性が著しく低下する。図26のように、中間反射層105を設けると、接続溝123は、前方光電変換ユニット104a、中間反射層105、後方光電変換ユニット104bを貫通し、この接続溝123に裏面電極層106を構成する材料が埋め込まれる。すなわち、接続溝123に埋め込む金属と中間反射層105とは接触することとなる。
この中間反射層を透明導電性金属酸化層で形成した場合、前述のように1.0×102S/cm〜1.0×103S/cmの高い暗導電率を有しており、中間反射層の中で基板と平行な方向にも容易に電流が流れて、電極層の役割も果たしてしまう。すなわち、中間反射層105、接続溝123、裏面電極層106の電流経路で、後方光電変換ユニット104bが短絡してしまい、大きなリーク電流が流れる。そのため、図26の構造では、後方光電変換ユニットで生じた電力をほとんど取り出すことができない。
(先行例1)
このようなリーク電流の問題は、図27に示す本出願人による特許文献1に記載された新たに第3の分離溝を設けた構造を採用することにより解決され得るものと考えられる。特許文献1において、集積型薄膜光電変換モジュール101には、上記薄膜を分割する第1〜第3の分離溝121,122,124と接続溝123とが設けられている。
第3の分離溝124は、第1の分離溝121と接続溝123との間に設けられている。第3の分離溝124は、前方光電変換ユニット104a及び中間反射層105を分割しており、中間反射層105と後方光電変換ユニット104bとの界面に開口を有し且つ透明電極層103の表面を底面としている。この第3の分離溝124は、薄膜光電変換ユニット104bを構成する結晶質で埋め込まれており、中間反射層105のセル110内に位置する部分を接続溝123を埋め込む金属などの導電性材料から電気的に絶縁している。なお、第3の分離溝124は、第1の分離溝121が第3の分離溝124と接続溝123との間に位置するように設けられてもよい。但し、図27に示すように、第3の分離溝を第1の分離溝121と接続溝123との間に設けたほうが、発電に有効な面積を広くすることが容易である。
以上説明した図27のモジュール101では、分離溝124が設けられているため、中間反射層105のセル110内に位置する部分と接続溝123を埋め込む金属との間にリーク電流が発生するのを防止することができる。
(先行例2)
ところで、積層型光電変換装置の半導体層の材料に非晶質酸化シリコンを使う例が特許文献2に開示されている。この例では、ガラス基板上に、SnO2などの透明電極、非晶質炭化シリコンの前方p型層、非晶質シリコン前方i型層、非晶質酸化シリコンの前方n型層、非晶質炭化シリコンの後方p型層、非晶質シリコンの後方i型層、非晶質シリコンの後方n型層、Agなどの金属電極を形成した構造を有している。通常は前方n型層に非晶質シリコンまたは微結晶シリコンが用いられるが、特許文献2ではバンドギャップの広い非晶質酸化シリコンを用いることによって、光の吸収ロスを低減できると報告している。その結果、前方n型層を透過して後方i型層に到達する光が増加して、短絡電流密度(Jsc)が増加して積層型光電変換装置の特性が改善すると示している。
非晶質酸化シリコンは膜中の酸素濃度を任意に調整することが可能で、膜中酸素濃度が高いほどバンドギャップが広くなり、透過率が高くなる。一方、非晶質酸化シリコンの膜中酸素濃度が高くなるほど導電率が低下する。特許文献2では、前方n型層に適用するためには光を照射したときの導電率である光導電率が1X10-6S/cm以上必要とし、そのためには、一般式a−Si1-xxで表したときにxが0.2未満であることが必須であると報告している。
(先行例3)
また、SiH4、CO2、H2を含み、CO2/SiH4の流量比を1.5以下に限定してガスを分解することによって、シリコン微結晶相を含む非晶質酸化シリコン膜を作製し非晶質シリコン光電変換装置の窓層に適用する方法が特許文献3に開示されている。特許文献3では、窓層に適用可能な最低限の光導電率10-6S/cmの非晶質酸化シリコンに比べて、同じ光導電率のシリコン微結晶相を含む非晶質酸化シリコンは、吸収係数が小さくなるので、光電変換装置の窓層に適用した場合に光吸収損失が低減されると開示している。
特開2002−261308号公報 特開平5−95126号公報 特許第3047666号公報
しかしながら、先行例1で示した特許文献1による図27の構造は、図25の構造に比べて分離溝が1本増えている。第1から第3の分離溝、あるいは接続溝は、一般にYAGレーザーなどによるパターニングによって行われる。すなわち、この構造はパターニングの工程が1回増えることになり、レーザースクライブ機の台数の増加、またはパターニングのタクト時間が増加し、集積型光電変換モジュールの装置コスト、製造コストが増大する問題が発生する。
また、図25の構造を作製する場合、前方光電変換ユニット104aと後方光電変換ユニット104bをプラズマCVDで、連続して真空装置中で作製することが可能である。
しかし、特許文献1の構造の場合、前方光電変換ユニット104aをプラズマCVDで、中間反射層105をスパッタなどで作製した後、一旦真空装置から取り出して、レーザースクライブ機でパターニングを行う必要がある。その後、もう1回真空装置に基板を入れて後方光電変換ユニット104bをプラズマCVDで作製する必要がある。したがって、図27の構造の場合、真空装置への搬入、基板の加熱、真空装置からの搬出が1回ずつ増えるので、集積型光電変換モジュールの製造時間が増加して、製造コストが増加することになる。
また、中間反射層105を作成後に1回大気中に基板を取り出すので、中間反射層105と後方光電変換ユニット104bの界面に大気中不純物が吸着し、集積型薄膜光電変換モジュールの特性の低下、剥離しやすいなど信頼性の低下の問題が発生する場合がある。
さらに、第3の分離溝124を設けたことにより、薄膜光電変換セルの面積ロスが増加するので、中間反射層を設けても集積型光電変換モジュールの特性を十分発揮するに至らないという問題がある。
他方、先行例2で示した特許文献2では、後方光電変換ユニットの光電変換活性層である後方i型層に到達する光が増えて、後方光電変換ユニットの発電電流の増加によってJscが増加して、積層型薄膜光電変換装置の変換効率が改善するとしている。しかしながら、特許文献2では非晶質酸化シリコンの膜中酸素濃度が20%未満に限定されているので、図5に示すように、波長600nmの光に対する屈折率が3前後といえる。その場合、非晶質酸化シリコンと非晶質シリコンの屈折率の差が小さいため、中間反射層としての機能、すなわち界面での光反射による前方光電変換ユニットの電流増加という効果は顕著には現れない。
さらに、先行例3で示した特許文献3の構成では、シリコン微結晶相を含む非晶質酸化シリコンを光電変換装置の窓層として適用する場合の手法と効果を開示しているのみである。またCO2/SiH4の流量比を1.5以下に限定しているため、先行例2と同様、積層型光電変換装置の中間反射層として機能するような低い屈折率の酸化シリコン層は得られない。
上述のような状況に鑑み、本発明は、低い屈折率と適度な導電性を有する層を、光電変換ユニットと類似のプロセスおよび材料にて実現し、かつ積層型光電変換装置の中間反射層として配置することにより、高性能かつ低コストな積層型光電変換装置を提供することを目的としている。
また本発明は、上記中間反射層を光電変換ユニットと同一の設備で形成し、かつ製膜および集積化プロセスなどの製造工程の複雑化を極力避けることで、高性能かつ低コストな集積構造の積層型光電変換装置を提供することを目的としている。
本発明においては、
光入射側から見て、一導電型層と、実質的に真性半導体の光電変換層と、逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換装置であって、
相対的に光入射側に配置された前方光電変換ユニット内の逆導電型層と、該前方光電変換ユニットの後方側に隣接して配置される後方光電変換ユニット内の一導電型層のうち、片方もしくは両方がシリコン複合層を少なくとも一部含む導電型層であり、
前記シリコン複合層はシリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含む、
ことを特徴とする積層型光電変換装置を提供する。
反射効果を十分得るために、前記シリコン複合層は600nmの波長の光に対する屈折率が2.5以下であることが好ましい。また、低い屈折率を実現するために、膜中酸素濃度が25原子%以上であることが好ましい。
また、より高い光電変換特性を得るために、前記シリコン複合層の暗導電率は、10-1S/cm以下であることが好ましい。さらに、この好適な暗導電率を実現するために、ラマン散乱で測定した非晶質シリコン成分のTOモードピークに対する結晶シリコン成分のTOモードピークのピーク強度比が10以下であることが好ましい。
さらに、シリコン複合層は、最適な反射効果を得るために、膜厚の総和が20nm以上130nm以下であることが好ましい。
また本発明においては、
透明基板と、該透明基板の一方の主面上に並置され且つ互いに直列接続された複数の光電変換セルとを具備し、
前記複数の光電変換セルは、前記透明基板の一方の主面上に順次積層された透明電極層、光電変換半導体層、及び裏面電極層で構成され、
前記複数の光電変換セルのそれぞれの隣り合う2つの間で、前記透明電極層は第1の分離溝によって分割され、この第1の分離溝は前記光電変換半導体層を構成する材料で埋め込まれ、
前記第1の分離溝から離れた位置に、前記裏面電極層の上面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された第2の分離溝が設けられ、
前記第1の分離溝と前記第2の分離溝との間に、前記光電変換半導体層と前記裏面電極層との界面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された接続溝が設けられ、この接続溝は前記裏面電極層を構成する材料で埋め込まれることによって前記隣り合って並置された2つの光電変換セルの一方の裏面電極層と他方の透明電極層とを電気的に接続した集積構造の光電変換装置であって、
かつ前記光電変換半導体層は、
光入射側から見て、一導電型層と、実質的に真性半導体の光電変換層と、逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換半導体層から成り、
相対的に光入射側に配置された前方光電変換ユニット内の逆導電型層と、該前方光電変換ユニットの後方側に隣接して配置される後方光電変換ユニット内の一導電型層のうち、片方もしくは両方がシリコン複合層を少なくとも一部含む導電型層であり、
前記シリコン複合層はシリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含む
ことを特徴とする積層型光電変換装置を提供する。
積層型光電変換装置の基板が透明基板である場合は、透明基板を通して入射した光の反射スペクトルが、波長450nmから800nmの範囲に反射率の極大値と極小値をそれぞれ少なくとも一つ以上持ち、前記極大値と前記極小値の反射率の差が1%以上あることが好ましい。
本発明によれば、以下のような具体的効果が得られる。まず、シリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含むことを特徴とする導電型のシリコン複合層を中間反射層として用いることにより、シリコン複合層の前後の界面で光が一部反射され、前方の光電変換ユニットの発電電流を増大させることができ、あるいは前方光電変換ユニットのi形層の膜厚を薄くして同等の発電電流を発生させることができるため、積層型光電変換装置の特性を向上させることができる。
また、導電型のシリコン複合層は、光電変換ユニットと同様にプラズマCVDで作製可能であるので、同様の装置で中間反射層を含めた光電変換ユニットすべてを作製可能となる。したがって、従来の透明導電性酸化金属層を中間反射層とした場合に必要だった別方式の設備が不要となり、装置コストを低減できる。あるいは、タクトタイムの短縮によって製造コストが低減できる。
さらに、シリコン複合層が光電変換ユニットにおける導電型層の一部を兼用することによって、反射効果によって前方の光電変換ユニットの発電電流を増大するだけでなく、光吸収損失を低減して光電変換装置全体の発電電流をも増大することが可能なり、積層型光電変換装置の変換効率が向上する。
集積型の積層型光電変換装置においては、導電型シリコン複合層を中間反射層に用いることによって、第3の分離溝が不要となり、製造工程が1回減ってパターニングのための装置コスト、あるいはタクト時間を短縮できる。また、中間反射層を含めた光電変換ユニットすべてを連続して形成できるので、基板を真空装置に搬入、加熱、搬出する作業が一回で済み、タクト時間が短縮する。さらに、光電変換ユニット形成の途中で界面が大気にさらされることなく、汚染の影響がなくなる。また、第3の分離溝がないので、面積ロスを減らすことが可能となって集積型薄膜光電変換モジュールの変換効率が向上する。
以上のような効果により、本発明によれば高性能かつ低コストな積層型光電変換装置を提供することができる。
本発明者らは、低い屈折率と高い導電性を兼ね備える材料を見出すべく、高周波プラズマCVD法によるシリコンと酸素の合金形成法を鋭意検討した。その結果、シリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相が含まれている構造(本発明ではシリコン複合層と呼ぶ)が、低い屈折率と高い導電性を兼ね備えることを見出した。
このようなシリコン複合層は、反応ガスとして、SiH4、CO2、H2、PH3(またはB26)を用い、H2/SiH4比が大きいいわゆる微結晶作製条件で、かつCO2/SiH4比が2以上の範囲を用いてプラズマCVD法で作製できる(製法としてプラズマCVD法が好ましいが、各種形成方法も使用可能である)。このときのプラズマCVDの条件は、例えば容量結合型の平行平板電極を用いて、電源周波数10〜100MHz、パワー密度50〜500mW/cm2、圧力50〜1500Pa、基板温度150〜250℃である。CO2/SiH4比を増加させると膜中酸素濃度が単調に増加する。しかし、膜中炭素濃度はCO2/SiH4比を0〜4の範囲で変化させても1原子%以下であり、酸素に比べてほとんど膜に入らないことが実験によりわかった。
図1に、シリコン複合層をガラス基板上に製膜して測定した屈折率に対する暗導電率を示す。ここで屈折率は、分光エリプソメトリを用いて、600nmの光に対して測定した。これは、積層型光電変換装置の一つであるハイブリッド型光電変換装置において、前方光電変換ユニットの分光感度電流の立下りと、後方光電変換ユニットの分光感度電流の立ち上りが600nm付近の波長で交錯するためである。600nm付近の光を良く反射する膜、すなわち、600nmの光に対する屈折率が小さい膜が、前方光電変換ユニットの発電電流を増加するのに好適であると言える。暗導電率は、コプラナー型の電極をシリコン複合層につけて、基板と平行な方向に流れる電流で測定した。図1からわかるように、本発明者らは詳細な実験の結果、シリコン複合層において、2.5以下の低い屈折率と、10-1S/cmまでの高い暗導電率を同時に実現できることを見出した。600nmの波長に対する非晶質シリコンあるいは結晶質シリコンの屈折率は約4なので、シリコン複合層との屈折率の差は大きく、十分な反射効果が得られる。本発明者らが知る限り、プラズマCVD法によるシリコンと酸素の合金系の膜について、このような低い屈折率と十分な導電性を兼ね備えた膜の公知文献はない。
図2は、シリコン複合層をガラス基板上に製膜し、膜面側から撮影した透過型電子顕微鏡(TEM)の暗視野像である。暗視野像は、特定の角度で回折された電子線の結像なので、非晶質の部分では回折は起こらず、特定の角度を向いた結晶だけが回折を起こす。従って、暗視野像で明るく結像したところは必ず結晶相である。すなわち、図2は非晶質中に結晶相が含まれていることを表している。図3は、図2と同じシリコン複合層を膜面側から撮影した高解像度TEMの明視野像である。規則的な結晶格子が並んだ部分が確認でき、膜中に結晶相が含まれていることが明らかである。
図4は、図2と同じシリコン複合層の、ラマン散乱スペクトルである。520cm-1付近の結晶シリコンのTOモードの鋭いピークが現れている。すなわち、結晶相はシリコンの結晶であることがわかる。このとき、480cm-1付近の非晶質シリコン成分のTOモードピークに対する結晶シリコン成分のTOモードピークのピーク強度比は2.5である。このピーク強度比は、シリコン複合層内におけるシリコン結晶相の割合の指標となる。ピーク強度比の増加にともなって暗導電率が増加するが、これが大きくなりすぎるとシリコン複合層中の非晶質酸化シリコンの割合が減少して屈折率が増加する。このため、ラマン散乱のピーク強度比は10以下の範囲に調整することが好ましい。
図5は、シリコン複合層の膜中酸素濃度に対するシリコン複合層の波長600nmの光に対する屈折率である。後述する図17で説明するように積層型光電変換装置にシリコン複合層を用いて反射効果によって電流の増加が十分見こめる屈折率2.5以下にするためには、膜中酸素濃度を25原子%以上にすれば良く、反射効果により10%の以上電流増加が見こめる屈折率2.1以下にするためには膜中酸素濃度を40原子%以上にするのがさらに好ましい。。
また、n型のシリコン複合層の場合はドーピング不純物として膜中P濃度を5X1019cm-3以上2X1022cm-3以下にすることが好ましい。あるいは、p型のシリコン複合層の場合はドーピング不純物として膜中B濃度を5X1019cm-3以上2X1021cm-3以下にすることが好ましい。膜中P濃度あるいは膜中B濃度の増加とともに暗導電率が増加するが、過剰に入ると結晶相の割合が減少する。
なお、図1において、同じ屈折率でも暗導導電率のばらつきが大きいのは、膜中酸素濃度、膜中不純物濃度、シリコン結晶相の割合が作製条件によって異なるためである。
本発明によるシリコン複合層においては、シリコン結晶相が電子の輸送経路を支配していると考えられるため、膜中酸素濃度を多くして屈折率を2.5以下に下げてもシリコン複合層の暗導電率を適度に保つことができる。このため、このシリコン複合層を光電変換ユニットの中に配置しても、光電変換装置の直列抵抗に与える影響は小さい。従って、光閉じ込めに最適な厚さと屈折率に設計できる。しかもシリコン複合層の屈折率はCO2/SiH4ガス比を変えて膜中酸素濃度を調整するだけで容易に制御できるため、屈折率を膜厚方向で周期的に変化させるなど、より精緻な光学設計による光閉じ込め効果の増大も期待できる。
前述のように光電変換装置の直列抵抗に与える影響を抑制するためには、ZnOのような透明導電性酸化金属層を中間反射層として用いる場合その暗導電率は102〜103S/cmの高い値が必要であった。しかし、シリコン複合層は10-1S/cm以下の暗導電率でも良好なオーミックコンタクトを非晶質シリコンおよび結晶質シリコンの光電変換ユニットとの間で実現できることが詳細な検討により明らかになった。この理由の一つとして、シリコン複合層が非晶質シリコンおよび結晶質シリコンと同様にシリコンを主体にした半導体薄膜であることが挙げられる。
さらに、以下に述べるようにシリコン複合層の断面方向にシリコン結晶相を介した電流経路があると考えられることが、良好なオーミックコンタクトが取れる理由として挙げられる。図1の暗導電率は膜と平行な方向に流れる電流から求めた値であるが、光電変換装置の場合は膜の断面方向に電流が流れる。図2のTEMの暗視野像において、明るく見える結晶相がところどころ見えるので、シリコン複合層の膜厚を貫通するシリコン結晶相が、平面状に分散した構造であるといえる。つまり、積層型光電変換装置に適用したシリコン複合層は、膜の断面方向にはシリコン結晶相で所々つながっていると考えられる。したがって、シリコン複合層は、たとえ膜面と平行な方向の暗導電率が低くても、シリコン結晶相を主に介して断面方向に電流が流れて、光電変換装置の直列抵抗の増加を抑制できると考えられる。
シリコン複合層の暗導電率が10-1S/cm以下と透明導電性酸化金属よりも数桁から10桁低くても良好なオーミックコンタクトを取れることから、集積型光電変換モジュールの構造の単純化が可能になり、装置コストの低減、モジュールの変換効率の向上を図ることができる。詳細な説明は後述するが、集積型光電変換モジュールにおいて、図24に示すような第3の分離溝がない構造でも、リーク電流の問題が発生しない。従って、集積型光電変換モジュールにおいて、パターニングが1回減ってパターニングの装置コストとタクト時間を短縮できる。また、導電型シリコン複合層を含め前方光電変換ユニットから後方光電変換ユニットまでを連続して形成できるので、基板を真空装置に搬入、加熱、搬出する作業が一回で済み、タクト時間が短縮するとともに、光電変換ユニット形成の途中で界面が大気にさらされることなく、汚染の影響がなくなる。また、第3の分離溝がないので、面積ロスが減って集積型光電変換モジュールの変換効率が向上する。
図6に、本発明の実施形態の一例による積層型光電変換装置の断面図を示す。透明基板1上に、透明電極層2、前方光電変換ユニット3、後方光電変換ユニット4、および裏面電極層5の順に配置されている。
基板側から光を入射するタイプの光電変換装置にて用いられる透明基板1には、ガラス、透明樹脂等から成る板状部材やシート状部材が用いられる。透明電極層2はSnO2、ZnO等の導電性金属酸化物から成ることが好ましく、CVD、スパッタ、蒸着等の方法を用いて形成されることが好ましい。透明電極層2はその表面に微細な凹凸を有することにより、入射光の散乱を増大させる効果を有することが望ましい。
裏面電極層5としては、Al、Ag、Au、Cu、PtおよびCrから選ばれる少なくとも一つの材料からなる少なくとも一層の金属層をスパッタ法または蒸着法により形成することが好ましい。また、光電変換ユニットと金属電極との間に、ITO、SnO2、ZnO等の導電性酸化物からなる層を形成しても構わない(図示せず)。
透明電極2の後方に、複数の光電変換ユニットから成る光電変換半導体層が配置される。図6のように2つの光電変換ユニットが積層された構造の場合、光入射側に配置された前方光電変換ユニット3には相対的にバンドギャップの広い材料、例えば非晶質シリコン系材料による光電変換ユニットなどが用いられる。その後方に配置された後方光電変換ユニット4には、それよりも相対的にバンドギャップの狭い材料、例えば結晶質を含むシリコン系材料による光電変換ユニットや、非晶質シリコンゲルマニウム光電変換ユニットなどが用いられる。
各々の光電変換ユニットは、一導電型層、実質的に真性な光電変換層であるi型層、および逆導電型層から成るpin接合もしくはnip接合によって構成されるのが好ましい。このうちi型層に非晶質シリコンを用いたものを非晶質シリコン光電変換ユニット、結晶質を含むシリコンを用いたものを結晶質シリコン光電変換ユニットと呼ぶ。なお、非晶質あるいは結晶質のシリコン系材料としては、半導体を構成する主要元素としてシリコンのみを用いる場合だけでなく、炭素、酸素、窒素、ゲルマニウムなどの元素をも含む合金材料であってもよい。
光入射側の一導電型層はp型層でもn型層でもよく、これに対応して逆導電型層はn型層またはp型層になる。例えば図6の構造で、各光電変換ユニットにおいて光入射側(前方側)に配置される一導電型層31、41がp型層の場合、後方側の逆導電型層33、43がn型層となる。導電型層の主要構成材料としては、必ずしもi型層と同質のものである必要はなく、例えば非晶質シリコン光電変換ユニットのp型(またはn型)層に非晶質シリコンカーバイドを用い得るし、n型(またはp型)層に結晶質を含むシリコン層(微結晶シリコンとも呼ばれる)も用い得る。
二種類の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役割を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜光電変換装置の特性の一つである開放端電圧(Voc)が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換には寄与しない不活性な層であり、ここで吸収される光はほとんど発電に寄与しない。従って、導電型層は十分な拡散電位を生じさせる範囲内で可能な限り薄くあるいは透明なものとすることが好ましい。
本発明では、シリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含むことを特徴としたシリコン複合層を積層型光電変換装置における中間反射層として用いる。中間反射層として機能させるためには、前方光電変換ユニット3内の光電変換層32と後方光電変換ユニット4内の光電変換層42との間のいずれかの位置に配置させる必要がある。また、このシリコン複合層は光電変換ユニット内の導電型層の一部を兼ねることができる。よって、前方光電変換ユニット3における逆導電型層33から後方光電変換ユニット4における一導電型層41までの領域の中に、最低1層以上の逆導電型あるいは一導電型のシリコン複合層を配置すればよい。
シリコン複合層が導電型層を兼ねることができるため、上記導電型層すべてをシリコン複合層に置き換えるのが最も単純な構造となるが、これに限らず、従来技術による導電型材料(例えば導電型微結晶シリコンや、屈折率の高い導電型酸化シリコンなど)との多層構造とし、多層構造全体で逆導電型層33あるいは一導電型層41を成すこともできる。また、屈折率などの物性値の異なるシリコン複合層同士を積層した多層構造や、物性値を積層方向に連続的に変化させたシリコン複合層を用いてもよい。さらに、シリコン複合層は逆導電型層33内あるいは一導電型層41内のいずれか片方に配置させてもよいし、両方にそれぞれ配置させることもできる。いずれにしても、積層型光電変換装置の光学的あるいは電気的な特性を向上させるための構造設計の自由度は高いと言える。
図6で示した光電変換装置は、光電変換ユニット3および4を2段積層した最もシンプルなタンデム型の光電変換装置であるが、本発明は光電変換ユニットを3段以上積層したタンデム型光電変換装置にも適用し得る。例えば光入射側から第一光電変換ユニット、第二光電変換ユニット、第三光電変換ユニットの順に配置された3段積層型光電変換装置において、第一光電変換ユニットと第二光電変換ユニットを、それぞれ前方光電変換ユニットと後方光電変換ユニットと見なし、両者の境界近傍に導電型のシリコン複合層を設けても良く、後述の図23の例のように第二光電変換ユニットと第三光電変換ユニットを、それぞれ前方光電変換ユニットと後方光電変換ユニットと見なし、両者の境界近傍に導電型のシリコン複合層を設けても良い。むろん、第一光電変換ユニットと第二光電変換ユニットの境界近傍および第二光電変換ユニットと第三光電変換ユニットの境界近傍の両方にシリコン複合層を設けた構造でも良い。3段積層型光電変換装置としては、例えば第一光電変換ユニットに非晶質シリコン光電変換ユニット、第二光電変換ユニットに非晶質シリコンゲルマニウムあるいは結晶質シリコン系光電変換ユニット、第三光電変換ユニットに非晶質シリコンゲルマニウムあるいは結晶質シリコン系光電変換ユニットを適用する場合などが挙げられるが、組み合わせはこの限りではない。
さらに、図6の例では透明基板を用いる実施形態を示したが、本発明は透明でない基板を含めた任意の基板上に、裏面電極層、後方光電変換ユニット、前方光電変換ユニット、透明電極層を順次積層され、基板とは逆の方向から光が入射されるタイプの積層型光電変換装置にも適用可能であり、後方および前方光電変換ユニットの境界近傍に導電型のシリコン複合層を中間反射層として配置することによって、同様の効果が得られる。
図7にシリコン複合層の膜厚を変化させた場合の、シリコン複合層前後の界面の干渉を考慮した600nmの光の反射率を示す。シリコン複合層の600nmの光に対する屈折率は2である。前方光電変換ユニット3の側に反射される光を10%以上にするためには、シリコン複合層の膜厚を20nm以上130nm以下にすることが好ましいことがわかる。さらに、前方光電変換ユニット3の側に反射される光を30%以上にするためには、シリコン複合層の膜厚が50nm以上100nm以下にすることが好ましいことがわかる。
このような積層型光電変換装置に適用したシリコン複合層の膜厚や形状は、断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)で測定することができる。図8は、ガラス基板/非晶質光電変換ユニット/シリコン複合層/結晶質光電変換ユニット/裏面電極層の構造の積層型光電変換装置において、シリコン複合層の前後の界面付近を撮影した断面TEMの明視野像である。図8の明視野像では、シリコン複合層がその前後の非晶質シリコンおよび結晶質シリコンより密度が低いことを反映して、シリコン複合層の部分が白っぽく写っている。図9は、図8の明視野像と同じ場所を撮影した暗視野像である。シリコン複合層中に部分的に明るい所があり、シリコン複合層中に結晶相が含まれていることがわかる。
また、積層型光電変換装置のシリコン複合層中の酸素濃度、P濃度あるいはB濃度は既知の分析方法で検知可能である。例えば、ウェットエッチング、プラズマエッチング、イオンスパッタリングなどで検知する深さを変化させながら、SIMS、ESCA、EPMA、オージェ電子分光法などで組成を分析可能である。
積層型光電変換装置のシリコン複合層の屈折率は、裏面電極層をHClなどの酸で除去し、ウェットエッチング、プラズマエッチング、イオンスパッタリングなどでシリコン複合層を露出させて、エリプソメトリ法を用いて測定することによって検知可能である。
さらに、シリコン複合層の有無の判定は、積層型光電変換装置にガラス基板から光を入射した時の、光の反射率の差異でも簡便に検知することが可能である。図10は、ガラス基板/非晶質シリコン光電変換ユニット/結晶質シリコン光電変換ユニット/裏面電極層から成る積層型光電変換装置のうち、シリコン複合層を含まないもの、膜厚30nmおよび60nmのシリコン複合層を中間反射層として非晶質シリコン光電変換ユニットと結晶質シリコン光電変換ユニットの界面近傍に配置させた光電変換装置に、ガラス基板から光を入射した場合の反射光スペクトルである。シリコン複合層がある場合は、非晶質光電変換ユニット中で光が往復反射して干渉が起こり、反射率の差が1%以上ある極大値と極小値が波長450nm〜800nmに現れる。これに対してシリコン複合層のない場合は、この波長領域に明確な極大値、極小値が現れない。
以下、本発明による実施例と、従来技術による比較例に基づいて詳細に説明する。各図において同様の部材には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明はその趣旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
まず、2段の積層型光電変換装置について、従来技術による比較例1、2、および、本発明による実施例1〜4について比較しながら説明する。なお、比較例1、2、および、実施例1〜4の積層型光電変換装置の特性を表1にまとめて示す。光電変換装置の有効面積は1cm2であり、AM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して25℃で出力特性を測定した。表中の開放電圧(Voc)、短絡電流密度、曲線因子(FF)、変換効率(Eff)は、比較例1のそれぞれの値で規格化した相対値である。また分光感度スペクトル測定から求めた前方光電変換ユニットの出力電流、後方光電変換ユニットの出力電流、およびこれらを合計した全体の出力電流についても、比較例1のそれぞれの値で規格化して記載している。
Figure 2005135986
(比較例1)
比較例1として、図11に示すような積層型光電変換装置を作製した。ガラス基板1上に、透明電極層2として厚さ800nmのピラミッド状SnO2膜を熱CVD法にて形成した。得られた透明電極層2のシート抵抗は約9Ω/□であった。またC光源で測定したヘイズ率は12%であり、凹凸深さdは約100nmであった。この透明電極層2の上に、プラズマCVDを用いて厚さ15nmのp型非晶質炭化シリコン層31a、厚さ300nmのi型非晶質シリコン層32a、及び厚さ30nmのn型微結晶シリコン層33aからなる前方光電変換ユニット3を形成し、続けて厚さ15nmのp型微結晶シリコン層41a、厚さ2.5μmのi型結晶質シリコン層42a、及び厚さ15nmのn型微結晶シリコン層43aからなる後方光電変換ユニット4を順次形成した。その後、裏面電極層5として厚さ90nmのAlドープされたZnOと厚さ300nmのAgをスパッタ法にて順次形成した。
(比較例2)
比較例2として、図12に示すような積層型光電変換装置を作製した。これは、比較例1のn型微結晶シリコン層33aを、厚さ30nmのn型の非晶質酸化シリコン33bで置き換えた構造になっている。これは、後方光電変換ユニット4が結晶質光電変換ユニットになっていることを除き、先行例2に類似した構造になっている。n型の非晶質酸化シリコン33b製膜時のガスの流量比はSiH4/CO2/PH3/H2=1/0.5/0.02/20ある。電源周波数は13.56MHz、パワー密度20mW/cm2、圧力100Pa、基板温度200℃で製膜した。このとき非晶質酸化シリコン33bは、膜中酸素濃度が18原子%、600nmの光に対する屈折率は3.0、ラマン散乱で測定した非晶質シリコン成分のTOモードピークに対する結晶シリコン成分のTOモードピークのピーク強度比は0で結晶相がなく、暗導電率は1.2X10-6S/cmであった。それ以外は、比較例1と同様の作製方法で形成した。
表1に示すように、比較例2は比較例1とほぼ同じ特性を示し、Jscの増加あるいは前方光電変換ユニット3の分光感度電流に有意な変化は見られなかった。すなわち、n型の非晶質酸化シリコン33bでは、前方光電変換ユニット側に光を反射する効果がないといえる。比較例2におけるn型の非晶質酸化シリコ33bは、屈折率が3.0と高く、非晶質シリコンあるいは結晶質シリコンと屈折率の差が小さいので、反射効果がほとんど得られないといえる。
(実施例1)
図13に示すような積層型光電変換装置を作製した。比較例1と異なるのは、前方光電変換ユニット3のn型層を、厚さ30nmのn型シリコン複合層33cで置き換えたことである。それ以外は、比較例1と同様に作製した。
n型シリコン複合層33cを製膜時のガスの流量比はSiH4/CO2/PH3/H2=1/2/0.02/200である。電源周波数は13.56MHz、パワー密度100mW/cm2、圧力100Pa、基板温度200℃で製膜した。このときn型シリコン複合層33cは、膜中酸素濃度が42原子%、600nmの光に対する屈折率は2.0、ラマン散乱で測定した非晶質シリコン成分のTOモードピークに対する結晶シリコン成分のTOモードピークのピーク強度比は2.0、暗導電率は5X10-6S/cmであった。
表1に示すように、実施例1は比較例1よりもJscが大幅に増加してEffが向上している。また、比較例1に比べて、分光感度電流は前方光電変換ユニット、後方光電変換ユニットともに増加している。シリコン複合層33cが中間反射層として機能し、前方光電変換ユニット3側に効果的に入射光を反射していることがわかる。また、シリコン複合層で光の散乱が起こって、後方光電変換ユニット4の光路長も伸びていると考えられる。さらに、前方光電変換ユニットのn型層が透明度の高いシリコン複合層33cに置き換わっているため、光吸収ロスも低減されているものと考えられる。ただし、比較例1に比べてFFが低下しており、i型非晶質シリコン層32a/シリコン複合層33c界面あるいはシリコン複合層33c/p型微結晶シリコン41a界面において、接触抵抗が増加していると考えられる。
(実施例2)
図14に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例1と異なるのは、前方光電変換ユニット3のn型層33として、i型非晶質シリコン層32の後方に厚さ10nmのn型微結晶シリコン33a/厚さ30nmのn型シリコン複合層33cの順に積層して形成したことである。それ以外は、実施例1と同様の作製方法であり、またシリコン複合層33cの膜特性も同じである。
表1に示すように、実施例2は実施例1と比べてFFが改善されている。これはn型微結晶シリコン33aを薄く挟むことによってi型非晶質シリコン層32a/シリコン複合層33c界面の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。一方で、上記n型微結晶シリコン33aにおける光吸収ロスの影響によって、Jscは実施例1の場合と比べてやや低下している。
(実施例3)
実施例3として、図15に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例1と異なるのは、前方光電変換ユニット3のn型層33として、i型非晶質シリコン層32aの後方に厚さ30nmのn型シリコン複合層33c/厚さ5nmのn型微結晶シリコン33dの順に積層して形成したことである。それ以外は、実施例1と同様の作製方法であり、またシリコン複合層4の膜特性も同じである。
表1に示すように、実施例3においても実施例1と比べてFFが改善されている。これはn型微結晶シリコン33dを薄く挟むことによってシリコン複合層33c/p型微結晶シリコン41a界面の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。一方で、上記n型微結晶シリコン33dにおける光吸収ロスの影響によって、Jscは実施例1の場合と比べてやや低下している。
(実施例4)
実施例4として、図16に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例1と異なるのは、前方光電変換ユニット3のn型層33として、i型非晶質シリコン層32aの後方に厚さ5nmのn型微結晶シリコン33a/厚さ30nmのn型シリコン複合層33c/厚さ5nmのn型微結晶シリコン33dの順に積層して形成したことである。それ以外は、実施例1と同様の作製方法であり、また、シリコン複合層33cの膜特性も同じものを用いた。
表1に示すように、実施例4は実施例2あるいは3と比べてFFがさらにさらに向上している。i型非晶質シリコン32aとn型シリコン複合層33aの界面、およびn型シリコン複合層33c/p型微結晶シリコン41a界面の両方の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。
(実施例5)
図17に、本発明の実施例5として、実施例2の構造の積層型光電変換装置において、シリコン複合層33dの屈折率を変化させた場合の前方光電変換ユニットにおける分光感度電流の相対値を示す。シリコン複合層は、CO2/SiH4の比を1〜15で変化させた以外は、実施例1と同様に作製した。図17の横軸は波長600nmの光に対するシリコン複合層の屈折率、縦軸はシリコン複合層がない比較例1の構造の積層型光電変換装置における分光感度電流に対する相対値である。屈折率の減少に伴って、前方光電変換ユニット側に反射される光が増加して前方光電変換ユニットの分光感度電流が増加している。屈折率が2.5以下で比較例1より分光感度電流が5%以上増加する。また、比較例1より10%以上の分光感度電流を増加するためには屈折率を2.1以下にすればよいことがわかる。
次に、2段の積層型光電変換装置のうち、後方光電変換ユニットにおける一導電型層(p層)の一部にもシリコン複合層を用いた場合について、従来技術による比較例1と本発明による実施例6〜9とを比較しながら説明する。積層型光電変換装置の特性の相対値を表2にまとめて示す。
Figure 2005135986
(実施例6)
図18に示すような積層型光電変換装置を作製した。比較例1と異なるのは、後方光電変換ユニット4のp型層を、厚さ30nmのp型シリコン複合層41bで置き換えたことである。それ以外は、比較例1と同様に作製した。
p型シリコン複合層41bを製膜時のガスの流量比はSiH4/CO2/B26/H2=1/2/0.0025/500である。電源周波数は13.56MHz、パワー密度100mW/cm2、圧力800Pa、基板温度200℃で製膜した。このときp型シリコン複合層41bは、膜中酸素濃度が29原子%、600nmの光に対する屈折率は2.45、ラマン散乱で測定した非晶質シリコン成分のTOモードピークに対する結晶シリコン成分のTOモードピークのピーク強度比は1.2、暗導電率は2X10-5S/cmであった。
表2に示すように、実施例6においても比較例1よりもJscが増加してEffが向上している。p型シリコン複合層41bが中間反射層として機能し、前方光電変換ユニット3側に効果的に入射光を反射していると考えられる。また、後方光電変換ユニットのp型層が透明度の高いp型シリコン複合層41bに置き換わっているため、光吸収ロスも低減されているものと考えられる。ただし、比較例1に比べてFFが低下しており、n型微結晶シリコン層33a/p型シリコン複合層41b界面あるいはp型シリコン複合層41b界面/i型結晶質シリコン層42aにおいて、接触抵抗が増加していると考えられる。
(実施例7)
図19に示すような積層型光電変換装置を作製した。比較例1と異なるのは、前方光電変換ユニット3のn型層を厚さ30nmのn型シリコン複合層33cで置き換え、かつ後方光電変換ユニット4のp型層を、厚さ30nmのp型シリコン複合層41bで置き換えたことである。またn型シリコン複合層33cおよびp型シリコン複合層41bの膜特性は、それぞれ実施例1および実施例6と同じである。
表2に示すように、実施例7は比較例1よりもJscが大幅に増加してEffが向上している。また、実施例1や実施例6と比べてもJscが増加してEffが向上していることがわかる。n型シリコン複合層33cおよびp型シリコン複合層41bの厚さの合計は60nmであり、中間反射層としての機能がさらに向上したものと考えられる。また、前方光電変換ユニットのn型層および後方光電変換ユニットのp型層の両者がいずれも透明度の高いシリコン複合層に置き換わっているため、光吸収ロスも大幅に低減されているものと考えられる。ただし、比較例1に比べてFFが低下しており、i型非晶質シリコン層32a/シリコン複合層33c界面あるいはp型シリコン複合層41b界面/i型結晶質シリコン層42aにおいて、接触抵抗が増加していると考えられる。
(実施例8)
図20に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例7と異なるのは、i型非晶質シリコン層32の後方に、前方光電変換ユニット3のn型層33として厚さ10nmのn型微結晶シリコン33a/厚さ30nmのn型シリコン複合層33cの順に積層して形成し、さらに後方光電変換ユニット4のp型層41として厚さ30nmのp型シリコン複合層41b/厚さ5nmのp型微結晶シリコン41aの順に積層して形成したことである。n型シリコン複合層33cおよびp型シリコン複合層41bの膜特性は、それぞれ実施例1および実施例6と同じである。
表2に示すように、実施例8は実施例7と比べてFFが改善されている。これはn型微結晶シリコン33aを薄く挟むことによってi型非晶質シリコン層32a/n型シリコン複合層33c界面の接触抵抗が低減され、さらにp型微結晶シリコン41aを薄く挟むことによってp型シリコン複合層41b界面/i型結晶質シリコン層42a界面の接触抵抗が低減されたことによると考えられる。一方で、上記n型微結晶シリコン33aおよびp型微結晶シリコン41aにおける光吸収ロスの影響によって、Jscは実施例7の場合と比べてやや低下している。
(実施例9)
図21に示すような積層型光電変換装置を作製した。実施例7と異なるのは、i型非晶質シリコン層32の後方に、前方光電変換ユニット3のn型層33として厚さ30nmのn型シリコン複合層33c/厚さ10nmのn型微結晶シリコン33aの順に積層して形成し、さらに後方光電変換ユニット4のp型層41として厚さ5nmのp型微結晶シリコン41a/厚さ30nmのp型シリコン複合層41bの順に積層して形成したことである。n型シリコン複合層33cおよびp型シリコン複合層41bの膜特性は、それぞれ実施例1および実施例6と同じである。
表2に示すように、実施例9は実施例8と比べてさらにFFが改善されている。これは接触抵抗の影響が最も顕著に現れる前方光電変換ユニット3および後方光電変換ユニット4同士の接合界面にシリコン複合層が介在せず、比較例1と同様n型微結晶シリコン33a/p型微結晶シリコン41aの接合が形成されているためと考えられる。
次に、3段の積層型光電変換装置について、従来技術による比較例3および本発明による実施例10について比較しながら説明する。積層型光電変換装置の特性の相対値を表3にまとめて示す。
Figure 2005135986
(比較例3)
比較例3として、図22に示すような3段積層型光電変換装置を作製した。比較例1で記したものと同様のガラス基板1/透明電極2上に、プラズマCVDを用いて第一光電変換ユニット6である非晶質シリコン光電変換ユニット、第二光電変換ユニット7である結晶質シリコン光電変換ユニット、第三光電変換ユニット8である結晶質シリコン光電変換ユニットを順次形成し、その後比較例1と同様裏面電極層5として厚さ90nmのAlドープされたZnOと厚さ300nmのAgをスパッタ法にて順次形成した。p型非晶質炭化シリコン層61a、i型非晶質シリコン層62a、n型微結晶シリコン層63aから成る第一光電変換ユニット6は、比較例1の31a、32a、33aと同じ方法で形成した。またp型微結晶シリコン層71aあるいは81a、i型結晶質シリコン層72aあるいは82a、n型微結晶シリコン層73aあるいは83aから成る第二光電変換ユニット7と第三光電変換ユニット8は、いずれも比較例1の41a、42a、43aと同じ方法でそれぞれ形成した。但し、i型非晶質シリコン層62aの膜厚は100nm、第二光電変換ユニット7におけるi型結晶質シリコン層72aの膜厚は1.2umでn型微結晶シリコン層73aの膜厚は30nm、第三光電変換ユニット8におけるi型結晶質シリコン層82aの膜厚は2.5umとした。
(実施例10)
図23に示すような3段積層型光電変換装置を作製した。比較例3と異なるのは、第二光電変換ユニット7のn型層を厚さ30nmのn型シリコン複合層73bで置き換え、かつ第三光電変換ユニット8のp型層を、厚さ30nmのp型シリコン複合層81bで置き換えたことである。これらシリコン複合層の作成方法および膜特性は実施例1および実施例6で示したものと同じである。
表3に示すように、3段積層型光電変換装置においても、シリコン複合層による中間反射効果によってJscが増加し、Effが向上していることがわかる。
(実施例11)
図24に、本発明の実施例11の集積型光電変換装置を示す。図24の構造は、リーク電流の問題が発生した図26のZnOの中間反射層105を、シリコン複合層107に代えた以外は、図26とほぼ同じ構造をしている。各層の膜厚、作製方法は実施例2と同様に作製した。基板の大きさは910mmX455mmであり、パターニングによって分割することにより、光電変換セルを100段直列接続した。シリコン複合層107は、実施例1で示したのn型シリコン複合層33cと同じ膜特性のものを用いた。
比較例4として、図25に示す中間反射層のない集積型光電変換装置を作製した。また比較例5として、図26に示す様にスパッタで作製した厚さ30nmのZnOを中間反射層に用い、かつ第3の分離溝がない構造の集積型光電変換装置を作製した。さらに比較例6として、図27に示す様にZnOを中間反射層に用い、かつ第3の分離溝を設けた構造の集積型光電変換装置を作製した。表4に、実施例11および比較例4〜6の集積型光電変換装置にAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射して25℃で測定した出力特性を、実施例11に対する相対値として示す。
中間反射層がない比較例4に比べて、ZnOの中間反射層を挿入した比較例5は、Voc、FFが大幅に低下して著しく変換効率が減少している。これはZnOの中間反射層105、接続溝123、裏面電極層106の電流経路でリーク電流が発生したためである。一方、第3の分離溝を設けた比較例6は、リーク電流が抑制されてJscが増加して変換効率Effが改善されている。
シリコン複合層を用いた実施例11は、比較例6に比べてさらにJscが増加して、Effが大幅に向上している。これは、第3の分離溝が不要になった分の面積ロスがなくなったことからJscが向上したと考えられる。また、前方光電変換ユニット104a、シリコン複合層107、後方光電変換ユニット104bをプラズマCVDで連続して作製できるので、シリコン複合層107と後方光電変換ユニット104bの界面で大気汚染の影響がないので、FFが向上したと考えられる。
さらに、比較例6に比べて、実施例11は、第3の分離溝が不要になったため、パターニング回数が減ってレーザースクライブ機を1台減らすことができ、装置コストを削減できる。また、プラズマCVDを用いて光電変換ユニットと同じ装置で作製できるので、ZnOで必要だったスパッタなどの中間反射層専用の製膜設備が不要となり、ここでも装置コストを大幅に削減できる。また、比較例6に比べて実施例11は、真空装置であるプラズマCVD装置へ基板を搬入、加熱、搬出する作業が1回ずつ減り、また、パターニングの時間も1回分減ったので、生産タクト時間が大幅に減って、製造コストを低減することができる。
Figure 2005135986
シリコン複合層の波長600nmの光に対する屈折率と暗導電率の特性。 シリコン複合層の透過型電子顕微鏡の暗視野像。 シリコン複合層の透過型電子顕微鏡の高解像度明視野像。 シリコン複合層のラマン散乱スペクトル。 シリコン複合層の膜中酸素濃度と、波長600nmの光に対する屈折率の特性。 本発明の実施形態の一例による積層型光電変換装置の構造断面図。 シリコン複合層の膜厚を変化させた場合の干渉を考慮した界面の反射率。 本発明の積層型光電変換装置の断面透過型電子顕微鏡の明視野像。 本発明の積層型光電変換装置の断面透過型電子顕微鏡の暗視野像。 本発明の積層型光電変換装置のガラス基板から光入射した光の反射率。 従来技術の比較例1による積層型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例2による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例1による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例2による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例3による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例4による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例5による積層型光電変換装置の分光感度電流の相対値。 本発明の実施例6による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例7による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例8による積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例9による積層型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例3による3段積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例10による3段積層型光電変換装置の構造断面図。 本発明の実施例7による集積型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例4による集積型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例5による集積型光電変換装置の構造断面図。 従来技術の比較例6による集積型光電変換装置の構造断面図。
符号の説明
1 透明基板
2 透明電極層
3 前方光電変換ユニット
31 前方光電変換ユニット内の一導電型層
32 前方光電変換ユニット内の光電変換層
33 前方光電変換ユニット内の逆導電型層
31a p型非晶質炭化シリコン層
32a i型非晶質シリコン層
33a、33d n型微結晶シリコン層
33b n型非晶質酸化シリコン層
33c n型の、シリコン結晶相を含む非晶質酸化シリコン層(シリコン複合層)
4 後方光電変換ユニット
41 後方光電変換ユニット内の一導電型層
42 後方光電変換ユニット内の光電変換層
43 後方光電変換ユニット内の逆導電型層
41a、41c p型微結晶シリコン層
41b p型の、シリコン結晶相を含む非晶質酸化シリコン層(シリコン複合層)
42a i型結晶質シリコン層
43a n型微結晶シリコン層
5 裏面電極層
6 3段積層型光電変換装置における第一光電変換ユニット
61a p型非晶質炭化シリコン層
62a i型非晶質シリコン層
63a n型微結晶シリコン層
7 3段積層型光電変換装置における第二光電変換ユニット
71a p型微結晶シリコン層
72a i型結晶質シリコン層
73a n型微結晶シリコン層
73b n型の、シリコン結晶相を含む非晶質酸化シリコン層(シリコン複合層)
8 3段積層型光電変換装置における第三光電変換ユニット
81a p型微結晶シリコン層
81b p型の、シリコン結晶相を含む非晶質酸化シリコン層(シリコン複合層)
82a i型結晶質シリコン層
83a n型微結晶シリコン層
101 集積型薄膜光電変換モジュール
102 ガラス基板
103 透明電極層
104a 前方光電変換ユニット
104b 後方光電変換ユニット
105 ZnOの中間反射層
106 裏面電極層
107 導電型の、シリコン結晶相を含む非晶質酸化シリコン合金層(シリコン複合層)
110 光電変換セル部
121 第一の分離溝
122 第二の分離溝
123 接続溝
124 第三の分離溝

Claims (8)

  1. 光入射側から見て、一導電型層と、実質的に真性半導体の光電変換層と、逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換装置であって、
    相対的に光入射側に配置された前方光電変換ユニット内の逆導電型層と、該前方光電変換ユニットの後方側に隣接して配置される後方光電変換ユニット内の一導電型層のうち、片方もしくは両方がシリコン複合層を少なくとも一部含む導電型層であり、
    前記シリコン複合層はシリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含むことを特徴とする積層型光電変換装置。
  2. 前記シリコン複合層の600nmの波長の光に対する屈折率が2.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  3. 前記シリコン複合層の膜中酸素濃度が25原子%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  4. 前記シリコン複合層の暗導電率が10-1S/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  5. 前記シリコン複合層において、ラマン散乱で測定した前記非晶質に由来するピークに対する結晶シリコン成分のTOモードピークのピーク強度比が10以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  6. 前記シリコン複合層の膜厚の総和が20nm以上130nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  7. 透明基板と、該透明基板の一方の主面上に並置され且つ互いに直列接続された複数の光電変換セルとを具備し、
    前記複数の光電変換セルは、前記透明基板の一方の主面上に順次積層された透明電極層、光電変換半導体層、及び裏面電極層で構成され、
    前記複数の光電変換セルのそれぞれの隣り合う2つの間で、前記透明電極層は第1の分離溝によって分割され、この第1の分離溝は前記光電変換半導体層を構成する材料で埋め込まれ、
    前記第1の分離溝から離れた位置に、前記裏面電極層の上面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された第2の分離溝が設けられ、
    前記第1の分離溝と前記第2の分離溝との間に、前記光電変換半導体層と前記裏面電極層との界面に開口を有し且つ底面が前記透明電極層と前記光電変換半導体層との界面で構成された接続溝が設けられ、この接続溝は前記裏面電極層を構成する材料で埋め込まれることによって前記隣り合って並置された2つの光電変換セルの一方の裏面電極層と他方の透明電極層とを電気的に接続した集積構造の光電変換装置であって、
    かつ前記光電変換半導体層は、
    光入射側から見て、一導電型層と、実質的に真性半導体の光電変換層と、逆導電型層の順で構成される光電変換ユニットを複数含む積層型光電変換半導体層から成り、
    相対的に光入射側に配置された前方光電変換ユニット内の逆導電型層と、該前方光電変換ユニットの後方側に隣接して配置される後方光電変換ユニット内の一導電型層のうち、片方もしくは両方がシリコン複合層を少なくとも一部含む導電型層であり、
    前記シリコン複合層はシリコンと酸素の非晶質合金中にシリコン結晶相を含む
    ことを特徴とする積層型光電変換装置。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型光電変換装置であって、該積層型光電変換装置が透明基板上に積層されてなり、前記透明基板を通して入射した光の反射スペクトルが、波長450nmから800nmの範囲に反射率の極大値と極小値をそれぞれ少なくとも一つ以上持ち、前記極大値と前記極小値の反射率の差が1%以上あることを特徴とする積層型光電変換装置。
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