JP4067384B2 - 燃料噴射方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジン等に燃料を供給するための電子制御式の燃料噴射方法に関し、特に、電源電圧の変動や、燃料噴射装置を構成するソレノイドのコイル抵抗などの変動の影響を受けずに、正確に燃料噴射を行う燃料噴射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の電源電圧に基づいて補正を行うタイプの燃料噴射装置の制御機構を説明するための図である。このタイプの制御機構では、電源端子11に印加された電源電圧VB を電源電圧入力回路12を介してECU(Electronic Control Unit)のマイクロコンピュータ13に入力する。
【0003】
マイクロコンピュータ13は、電源電圧VB が低いときにはFET14のオン期間を長くするような波形のパルスをFET駆動回路15に出力する。それによって、ソレノイド16にコイル電流が流れる時間が長くなり、燃料噴射時間が長くなる。電源電圧VB が高いときにはその逆となり、燃料噴射時間を短くすることによって、燃料噴射量が一定になるように制御している。FET14がオンからオフに切り替わった直後にソレノイド16に流れる電流はダイオード17を介してツェナーダイオード18に流れ、FET14のドレイン電圧がツェナーダイオード18の電圧と同じになり、そこで電力が消費されて燃料噴射が停止することになる。
【0004】
図9は、従来の定電流制御を行うタイプの燃料噴射装置の制御機構を説明するための図である。このタイプの制御機構では、電源端子11に印加された電源電圧VB を電源電圧検出回路21により検出するとともに、電流検出用に付加した電流検出用抵抗22および電流検出回路23によりコイル電流を検出する。そして、マイクロコンピュータ13および定電流駆動回路24により、コイル電流が電源電圧VB の変動によって変化しないように制御している。
【0005】
上記電源電圧の変動を検出して燃料噴射量を補正する従来技術としては、例えば下記の特許文献1が開示されている。また、電源電圧とともにソレノイドに流れる駆動電流を検出して燃料噴射量を補正する従来技術としては、例えば下記の特許文献2が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭58−28537号公報
【特許文献2】
特開2002−4921号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示すような電源電圧VB に基づいて補正を行う制御機構では、ソレノイド16を構成するコイルの温度が上昇した場合にそのコイルの抵抗値が変化し、電源電圧VB が同じでもコイル電流が変化してしまうため、燃料噴射量を正確に補正することは困難である。
【0008】
ところで、図9に示すような定電流制御を行う構成によればコイル温度が上昇してもコイル電流を一定に制御することができるが、そのための制御回路の複雑化による部品点数の増加や、ソフトウェア処理の増加を招くという不都合があった。
【0009】
次に、図10は、図9に示す電流検出回路23の内部回路を記載した図である。また、図11は、電流検出におけるオフセット電圧の影響を説明するための図である。図示のように、駆動電流を検出するに際して、電流検出回路23の電位差(電流検出用抵抗22と電流検出回路23の間のオフセット電圧;Vinoffset)と、電流検出回路23のオペアンプ25が有するオフセット電圧(Vopoffset)と、マイクロコンピュータ13内部のA/Dコンバータ26が有するオフセット電圧(Vadoffset)が生じる。この際、電流検出用抵抗22と電流検出回路23の間のオフセット電圧(Vinoffset)と、電流検出回路23のオペアンプ25が有するオフセット電圧(Vopoffset)は、オペアンプ25の増幅率に対応して値が増大する。
【0010】
このため、図11に示す如く、A/Dコンバータ26に入力される電圧(Vadin)は、真の駆動電流成分の電圧(Vadini)の他にオフセット成分の電圧(Vadinoffset)が加わった値となる。このオフセット成分の電圧(Vadinoffset)は、全体に対し無視できない割合を占めており、電流検出の精度を低下させ正確な燃料噴射制御の妨げとなる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、燃料噴射用のソレノイドの電流検出時に生じるオフセット成分を除去して燃料噴射量を正確に補正することができる燃料噴射方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる燃料噴射方法は、プランジャポンプによる圧送により所定の圧力に加圧された燃料を噴射する電磁式燃料噴射ポンプの燃料噴射方法において、燃料噴射用のソレノイドの駆動を開始する工程と、前記ソレノイドの駆動開始前のコイル電流値を検出する工程と、前記ソレノイド駆動時のコイル電流値を検出する工程と、前記ソレノイド駆動時のコイル電流値と前記ソレノイドの駆動開始前のコイル電流値との差分電流値を算出する工程と、前記検出された差分電流値に基づいて前記ソレノイドを駆動する駆動パルス幅を補正する工程と、前記ソレノイドの駆動を停止する工程とを含む構成を採用できる。
【0013】
この請求項1に記載の発明によれば、ソレノイドの駆動毎に駆動開始前後の差分電流値を求めて電流検出時に発生したオフセット成分を検出でき、このオフセット成分を除去して駆動パルス幅を正確に補正することができる。
【0014】
また、請求項2の発明にかかる燃料噴射方法は、請求項1に記載の発明において、前記差分電流値を算出した後に予め定めたスパン補正値に基づき電流スパン値を調整する工程を含み、前記調整された電流スパン値に基づき前記駆動パルス幅を補正する構成を採用できる。
【0015】
この請求項2に記載の発明によれば、電流スパン値を適切に設定することができ、駆動パルス幅の補正を精度良く行えるようになる。
【0016】
また、請求項3の発明にかかる燃料噴射方法は、請求項1または2に記載の発明において、前記ソレノイドの駆動毎に、前記ソレノイドの駆動開始前のコイル電流値を検出する工程を実行することにより、前記ソレノイドの駆動毎に前記駆動パルス幅を補正する構成を採用できる。
【0017】
この請求項3に記載の発明によれば、ソレノイドの駆動毎にそのときに生じたオフセット成分を除去できるようになり、温度ドリフト等の影響を除去して駆動パルス幅の補正を長期に渡り安定して行えるようになる。
【0018】
また、請求項4の発明にかかる燃料噴射方法は、請求項2または3に記載の発明において、製品調整時において前記スパン補正値を算出するスパン補正値算出工程を含み、該スパン補正値算出工程は、前記ソレノイドに一定電流を流す前後においてそれぞれ検出したコイル電流値に基づき前記スパン補正値を算出する構成を採用できる。
【0019】
この請求項4に記載の発明によれば、装置毎に異なる電流スパン値を求めることができ、各装置に適合した電流スパン値を用いて駆動パルス幅の補正をより精度良く行えるようになる。
【0020】
また、請求項5の発明にかかる燃料噴射方法は、請求項4に記載の発明において、前記算出されたスパン補正値を書き換え可能な記憶手段に記憶する工程を含む構成を採用できる。
【0021】
この請求項5に記載の発明によれば、装置の出荷時等に記憶手段にスパン補正値を格納しておくことにより、装置毎に異なる電流スパンを各装置に適切な状態で持たせておくことができ、出荷後直ちに最適なオフセット補正が行えるようになる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本発明にかかる燃料噴射方法を適用した電磁式燃料噴射ポンプ・システムの構成について説明する。図1は、本発明にかかる燃料噴射方法を適用した電磁式燃料噴射ポンプ・システムの概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示すように、電磁式燃料噴射ポンプ・システムは、燃料タンク31内の燃料を圧送する電磁駆動ポンプとしてのプランジャポンプ32と、プランジャポンプ32による圧送により所定の圧力に加圧された燃料を通過させるオリフィス部を有する入口オリフィスノズル33と、入口オリフィスノズル33を通過した燃料が所定の圧力以上のとき(エンジンの)吸気通路内に向けて噴射する噴射ノズル34と、エンジンの運転情報およびプランジャポンプ32のソレノイドに流れるコイル電流値に基づいてプランジャポンプ32等に制御信号を発する駆動ドライバ35およびコントロールユニット(ECU)36等を、その基本構成として備えている。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態にかかる燃料噴射方法を適用した電磁式燃料噴射ポンプ・システムの制御機構を説明するための図である。図2において、ソレノイド16はプランジャポンプ32を構成する。このソレノイド16を駆動するためのスイッチング素子である例えばNチャネルFET14と、FET駆動回路15と、電源電圧検出回路21と、電流検出用抵抗22と、電流検出回路23と、ダイオード17およびツェナーダイオード18は、駆動ドライバ35に含まれる。
【0025】
ツェナーダイオード18は、FET14がオンからオフになったとき、FET14のドレイン電圧をツェナーダイオード18の電圧と同じにしてソレノイド電流を消費させるものである。マイクロコンピュータ13はコントロールユニット36に含まれる。
【0026】
電源電圧検出回路21は、電源電圧VB を検出してその検出値をマイクロコンピュータ13に供給する。ソレノイド16の一端は、電源電圧VB が印加される電源端子11に接続される。ソレノイド16の他端は、FET14のドレインに接続されるとともに、ダイオード17およびツェナーダイオード18を介してFET14のゲートに接続される。FET14のゲートには、マイクロコンピュータ13から出力された制御信号に基づいてFET駆動回路15において生成される駆動パルスが供給される。
【0027】
FET14のソースは電流検出用抵抗22を介して接地される。駆動パルスによってFET14がオン状態になると、電源端子11からソレノイド16,FET14および電流検出用抵抗22を介して接地端子へ電流(コイル電流)が流れ、ソレノイド16が駆動される。電流検出用抵抗22を流れる電流の大きさは電圧信号として電流検出回路23に入力され、そこで入力電圧に応じた電流値が検出されることになる。電流検出回路23から出力された検出信号はマイクロコンピュータ13に入力され、前述したA/Dコンバータ26によりディジタル信号に変換されて、駆動パルスを補正する処理が実行される。なお、電流検出回路23の内部構成は、前述した図10の構成と同一であり、説明を省略する。
【0028】
上記構成による電磁式燃料噴射ポンプの噴射量の補正概要について説明する。燃料噴射用のソレノイド16の駆動時のコイル電流値を検出し、その検出値に基づいてFET14のオン期間の調節、すなわち駆動パルス幅の補正を行う構成となっている。図3は、この駆動パルス幅の補正原理を説明するために、要求燃料噴射量から要求される駆動パルス(以下、要求駆動パルスとする)51,コイル電流52および実際に出力される駆動パルス(以下、駆動パルス出力とする)53の各波形を示す波形図である。
【0029】
図3において、Pwは要求駆動パルス51のパルス幅、すなわちソレノイドの要求駆動パルス幅である。Trはソレノイド16の駆動開始からコイル電流52の値を検出するために予め設定した時間であり、Irはコイル電流52の検出値である。Prはコイル電流の検出値Irに基づいて求められたパルス幅の補正値であり、Poutは駆動パルス出力53のパルス幅である。
【0030】
図3に示すように、要求駆動パルス51の立ち上がりエッジに同期して駆動パルス出力53が立ち上がり、それによってコイル電流52が流れ始める。そして、コイル電流検出の設定時間Tr(特に限定しないが、例えば2ms経過した時点)で、コイル電流52の検出値Irが検出される。この検出値Irと要求駆動パルス幅Pwとを用いて駆動パルスの補正値Prが求められる。その補正値Prに基づいて要求駆動パルス幅Pwが補正され、実際にはパルス幅Poutの駆動パルスがFET14に供給される。
【0031】
ここで、IrとPwとPrとの関係は予め実験等により求められており、マイクロコンピュータ13内の不揮発性メモリに記憶されている。
【0032】
次に、マイクロコンピュータ13が実行するオフセット補正処理について説明する。図4は、オフセット補正処理にかかるデータ処理の全体の流れを示すフローチャートである。エンジン燃料量の計算処理(ステップS1)によって得られた燃料噴射量(要求駆動パルス51のパルス幅Pw)が得られる。この後、駆動電流(コイル電流)52の検出により、駆動電流補正処理(ステップS2)が実行され、電流補正された駆動パルス幅(駆動パルス出力53のパルス幅Pout)が得られる。そして、駆動電流52は、以下に説明するオフセット補正処理を実行した後に駆動電流補正処理(ステップS2)が実行されるようになっている。
【0033】
図5は、通常運転時における駆動電流補正処理を示すフローチャートである。まず、駆動パルス出力53の駆動電流がOFFの状態(ステップS11)における検出電流成分(オフセット成分Vadinoffset)64がA/Dコンバータ26に入力され、この値を図示しないメモリに記憶させる(ステップS12)。
【0034】
図6は、駆動電流(コイル電流)がOFF時においてA/Dコンバータ26に入力されるオフセット電圧を説明するための図である。図示のように、電流検出回路23のオフセット電圧(Vinoffset)と、オペアンプ25が有する入力オフセット電圧(Vopoffset)と、マイクロコンピュータ13内部のA/Dコンバータ26が有するオフセット電圧(Vadoffset)が生じる。この際、電流検出用抵抗22と電流検出回路23の間のオフセット電圧(Vinoffset)と、電流検出回路23のオペアンプ25が有するオフセット電圧(Vopoffset)は、オペアンプ25の増幅率に対応して値が増大する。A/Dコンバータ26に入力される電圧(Vadin)は、これら全てのオフセット成分の電圧(Vadinoffset)からなる。
【0035】
この後、駆動電流をONさせ(ステップS13)、一定時間の経過(図3に示す設定時間Tr)を待ち(ステップS14)、A/Dコンバータ26の入力電圧(Vadin)65を検出する(ステップS15)。そして、メモリに記憶されたオフセット成分の電圧(Vadinoffset)と、入力電圧(Vadin)に基づき、図11に示した真の駆動電流の成分の電圧(Vadini)66を下記式(1)を用いて計算する(ステップS16)。
【0036】
Vadini=Vadin−Vadinoffset …(1)
【0037】
この後、予めメモリに記憶されている所定の係数であるスパン補正値(Kspan)67を用いて下記式(2)により電流スパン調整を行う(ステップS17)。
【0038】
Vadins=Vadin×Kspan …(2)
【0039】
電流スパン調整後の値(Vadins)が駆動電流52として駆動電流補正処理(図4のステップS2)に出力される。駆動電流補正処理(ステップS2)では、パルス幅電流補正値を計算した後(ステップS2a)、このパルス幅電流補正値に基づき駆動パルス幅(Pout)を計算し(ステップS2b)、ソレノイド16に供給する。駆動開始からこの駆動パルス幅(Pout)の時間が経過すると駆動パルス出力53をOFFにする(ステップS20)。
【0040】
上述したオフセット補正処理によれば、ソレノイド16の駆動がオフのときにオフセット成分を検出するため、ソレノイド16の駆動時には、オフセット成分を除去し正確な駆動パルス幅を算出できるようになる。また、上記の処理は、ソレノイド16の駆動に同期して毎回の駆動オフ時にオフセット検出することができ、ソレノイド16の駆動毎にこのオフセット成分を除去できるようになる。
【0041】
次に、電流スパン成分の計算処理について説明する。上記処理によりオフセット補正された駆動電流は、電流スパンについて処理されていない。実際の回路におけるスパン補正の影響について説明する。スパンの影響は、電流検出用抵抗(Ri)22の誤差が支配的であり、この抵抗値の誤差が±2%であると、その誤差が直接、スパンの誤差として現れる。このため、予め装置の出荷時など製品基板の調整時にスパンの調整値を測定して不揮発性メモリに記憶させておき、上述した通常運転時にこの調整値を読み出して駆動電流の電流スパンを補正する。
【0042】
図7は、電流スパンの補正値算出処理を示すフローチャートである。まず駆動電流がOFFのとき(ステップS21)、A/Dコンバータ26に入力される検出電流成分(オフセット成分Voffset)の値を図示しないメモリに記憶させる(ステップS22)。次に、一定の電流基準値(V1a,図4参照)68で駆動電流をONさせる(ステップS23)。この際の駆動電流としては例えば1Aを流す。
【0043】
そして、一定時間の経過を待った後(ステップS24)、A/Dコンバータ26の入力電圧(Vadin1a)69を検出する(ステップS25)。そして、メモリに記憶されたオフセット電圧(Voffset)と、入力電圧(Vadin1a)に基づき、駆動電流成分(Vadin1as)を下記式(3)を用いて計算する(ステップS26)。
【0044】
Vadin1as=Vadin1a−Voffset …(3)
【0045】
この後、上記電流基準値(V1a)68と、上記式(3)の結果(Vadin1as)を用いて、スパン補正値67(係数)を下記式(4)により計算する(ステップS27)。
【0046】
Kspan=V1a/Vadin1as …(4)
【0047】
計算されたスパン補正値(Kspan)67は、書き換え可能なメモリ、例えばEEPROM等に記憶させておく。このスパン補正値(Kspan)67は、前述した通常駆動時にメモリから読み出され(図5のステップS17)、電流スパンが調整される。
【0048】
このように製品出荷時等に製品の基板を製造ラインで調整する際に、EEPROM等の不揮発性メモリに書き込んでおくことにより、製品毎に異なる特性に適合したスパン補正値を保持しておくことができ、オフセット除去性能を向上できるようになる。
【0049】
以上説明したこの発明の実施の形態によれば、製品の出荷時に装置に適した電流スパン値が設定保持でき、ソレノイド16の駆動がオフのときにオフセット成分を検出して記憶させておくことができる。これにより、ソレノイド16の駆動時には、これら電流スパン値とオフセット成分に基づき、検出した電流値からオフセット成分を除去して正確な駆動パルス幅を算出できるようになる。また、上記の処理は、ソレノイド16の駆動に同期して毎回の駆動オフ時にオフセット検出するため、オフセット電圧の電圧ドリフトや経時変化に対応しこれらを相殺することができるようになる。
【0050】
【実施例】
上記構成におけるオフセット電圧の具体的数値を図10の回路構成を用いて説明する。オペアンプ25のオフセット電圧(Vopoffset)を7mV,マイクロコンピュータ13のA/Dコンバータ26の入力のオフセット電圧(Vadoffset)を20mVとしたとき、マイクロコンピュータ13に入力される電圧(A/Dコンバータ26によるA/D変換後の電圧換算値)は、
【0051】
Vd=Vini×(1+R2/R1)±7mV×(1+R2/R1)±20mV
【0052】
となる。ここで、R1=1kΩ,R2=18kΩ,電流検出回路23の電位差(Vinoffset)=0とする。
【0053】
駆動電流(コイル電流)をIdcpとすると、
【0054】
Vini=Idcp×Ri
(Ri=電流検出用抵抗22)
【0055】
ここで、Ri=22mΩとする。
このとき、駆動電流とA/Dコンバータ26に入力される電圧換算値Vdは、下記表1に示す数値となる。
【0056】
【表1】
【0057】
この表に示す計算値においてそれぞれオフセット補正を行えば、ソレノイド16がオフのときの電圧として上記オフセット電圧が入力され、この値がマイクロコンピュータ13の演算処理により相殺(オフセット除去)され、誤差は0となる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料噴射用のソレノイドの駆動パルス幅を補正するにあたり、ソレノイドの駆動オフ時に入力されたソレノイドの電流値をオフセット成分として検出し、ソレノイドの駆動時にオフセット補正する構成であるため、電流検出回路に用いられるオペアンプ等のオフセット電圧の影響を除去でき、正確な電流値を得て駆動パルス幅を高精度に補正できるという効果を奏する。
【0059】
また、ソレノイドの駆動オフ毎にオフセット検出する構成とすれば、温度等の経時変化によるドリフトの影響を解消できるようになるという効果を奏する。また、電流スパン補正値を予め基板調整時等に算出しておくことにより、装置毎の特性に合わせた適切な電流スパンを設定でき、駆動パルス幅をより高精度に補正できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる燃料噴射方法を適用した電磁式燃料噴射ポンプ・システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる燃料噴射方法を適用した電磁式燃料噴射ポンプ・システムの制御機構を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる燃料噴射方法を適用した電磁式燃料噴射ポンプ・システムにおける要求駆動パルス,コイル電流および駆動パルス出力の各波形を示す波形図である。
【図4】オフセット補正処理にかかるデータ処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図5】通常運転時における駆動電流補正処理を示すフローチャートである。
【図6】駆動電流(コイル電流)がOFF時においてA/Dコンバータに入力されるオフセット電圧を説明するための図である。
【図7】電流スパンの補正値算出処理を示すフローチャートである。
【図8】従来の電源電圧に基づいて補正を行うタイプの燃料噴射装置の制御機構を説明するための図である。
【図9】従来の定電流制御を行うタイプの燃料噴射装置の制御機構を説明するための図である。
【図10】図9に示す電流検出回路の内部回路を記載した図である。
【図11】電流検出におけるオフセット電圧の影響を説明するための図である。
【符号の説明】
11 電源端子
13 マイクロコンピュータ
14 NチャネルFET
15 FET駆動回路
16 ソレノイド
21 電源電圧検出回路
22 電流検出用抵抗(Ri)
23 電流検出回路
25 オペアンプ
26 A/Dコンバータ
Claims (5)
- プランジャポンプによる圧送により所定の圧力に加圧された燃料を噴射する電磁式燃料噴射ポンプの燃料噴射方法において、
燃料噴射用のソレノイドの駆動を開始する工程と、
前記ソレノイドの駆動開始前のコイル電流値を検出する工程と、
前記ソレノイド駆動時のコイル電流値を検出する工程と、
前記ソレノイド駆動時のコイル電流値と前記ソレノイドの駆動開始前のコイル電流値との差分電流値を算出する工程と、
前記検出された差分電流値に基づいて前記ソレノイドを駆動する駆動パルス幅を補正する工程と、
前記ソレノイドの駆動を停止する工程と、
を含むことを特徴とする燃料噴射方法。 - 前記差分電流値を算出した後に予め定めたスパン補正値に基づき電流スパン値を調整する工程を含み、
前記調整された電流スパン値に基づき前記駆動パルス幅を補正することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射方法。 - 前記ソレノイドの駆動毎に、前記ソレノイドの駆動開始前のコイル電流値を検出する工程を実行することにより、前記ソレノイドの駆動毎に前記駆動パルス幅を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射方法。
- 製品調整時において前記スパン補正値を算出するスパン補正値算出工程を含み、
該スパン補正値算出工程は、前記ソレノイドに一定電流を流す前後においてそれぞれ検出したコイル電流値に基づき前記スパン補正値を算出することを特徴とする請求項2または3に記載の燃料噴射方法。 - 前記算出されたスパン補正値を書き換え可能な記憶手段に記憶する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射方法。
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