JP4059537B2 - 有機薄膜el表示装置及びその駆動方法 - Google Patents

有機薄膜el表示装置及びその駆動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELという)発光素子を用いた有機薄膜EL表示装置及びその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機薄膜EL素子は、ほとんど絶縁体薄膜である有機化合物に電極から半ば無理矢理に正負の電荷を注入し、それを再結合させることにより励起し、発光させる電流制御型の発光素子である。
【0003】
近年、有機薄膜のEL現象を用いた有機薄膜EL素子が各社により開発されている。
【0004】
従来のこの種の有機薄膜EL素子としては、例えば特開昭59−194393号、特開昭63−264692号、特開昭63−295695号の各公報に開示されたものがある。
【0005】
このような有機薄膜EL素子は、直流低電圧で駆動可能な自己発光型の発光素子であり、これを用いた表示装置は視野角が広く、表示面が明るく、かつ本体が薄くて軽いなど、液晶ディスプレイを凌ぐ利点を有している。このため、高信頼性が要求されるディスプレイや壁掛けテレビなどの大容量の表示装置として大きく期待され、実用化が試みられているところである。
【0006】
図19は有機薄膜EL素子の構成を示す断面図である。
【0007】
図において、有機薄膜EL素子は、ガラス基板1上に設けられた陽極2に有機薄膜3、陰極4が順に積層されている。
【0008】
陽極2は、発光の透過率を高める透明電極であり、例えばITO(indium tin oxide)、酸化第2スズ及び酸化インジウムなどの各種の透明電極材料が使用可能である。
【0009】
有機薄膜3は、少なくとも有機化合物からなる発光材料を含有する発光層を有し、構成形態としては、発光層のみからなるもの、発光層と正孔注入層とからなるもの、電子輸送層と発光層とからなるもの、電子輸送層と発光層と正孔注入層とからなるもの、これらの機能を有する材料を混合したもの、あるいは高分子に分散したものなどがあり、真空蒸着法などの方法で形成される。
【0010】
陰極4は、例えばMg、In、Ag、Li、Alなどの各種の金属及びこれらの合金が単層でまたは積層して使用可能で、真空蒸着法などで形成されている。
【0011】
図20は、このような有機薄膜EL素子の陽極2と陰極4とがストライプ状に形成され、かつ互いに交差するように配置したX−Yマトリックス有機薄膜EL表示装置の構造を示す図である。
【0012】
図において、上記有機薄膜EL表示装置は、陽極2と陰極4の交点に画素が形成され、陽極2、陰極4を適宜選択し該当する交点に位置する画素に電流または電圧を印加し励起することにより選択発光させることができる。
【0013】
このような、X−Yマトリックス型の表示装置の駆動方法として、陰極2及び陽極4に駆動電圧印加用のスイッチング素子を接続しその制御回路を設けて、線順次走査を行う方法が、特開平6−301355号公報、及び『有機EL素子の開発戦略』(69頁、サイエンスフォーラム社、1992年刊)などに開示されている。
【0014】
図21は、このような有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【0015】
図において、有機物からなる発光層として複数の有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)が各々対応する複数の単位電極からなるストライプ状のデータ電極Y1〜Ym及び走査電極X1〜Xn(第1及び第2のストライプ電極)によりマトリックス状に挟持されている。各データ電極Y1〜Ym(第1の単位電極)は、各データ電極Y1〜Ym毎に電極切替部を有する行選択切替部5を介して駆動電圧VBを持つ駆動電源系に接続されている。また、各走査電極X1〜Xn(第2の単位電極)は、各走査電極X1〜Xn毎にノーマリオフのMOSFET6(1)〜6(n)を有する列選択切替部7に接続されている。なお、行及び列選択切替部5,7は、表示対象の表示データが記憶された半導体メモリに基づいて制御部(図示せず)に制御される。
【0016】
ここで、各電極切替部は、電極切替回路8(1)〜8(m)、NPN型バイポーラトランジスタ9(1)〜9(m)及びノーマリオン(通常、ON状態にある。)のMOSFET10(1)〜10(m)からなり、バイポーラトランジスタ9(1)〜9(m)のコレクタ端子が駆動電源系に接続され、かつ、バイポーラトランジスタ9(1)〜9(m)のエミッタ端子及びMOSFET10(1)〜10(m)のソース端子が対応するデータ電極Y1〜Ymに接続されている。また、このMOSFET10(1)〜10(m)のドレイン端子はアースに接続され、かつ、バイポーラトランジスタ9(1)〜9(m)のベース端子及びMOSFET10(1)〜10(m)のゲート端子は電極切替回路8(1)〜8(m)の第1及び第2の出力部に接続されている。
【0017】
列選択切替部7のMOSFET6(1)〜6(n)は、対応する走査電極X1〜Xnがソース端子に接続され、ゲート端子への信号入力により該走査電極をドレイン端子を介してアースに接続可能としている。
【0018】
したがって、データ電極Y1〜Ymは励起状態(発光)では順バイアス、非励起状態ではアースに接続され、走査電極X1〜Xnは選択時にアース、非選択時にはフロート状態になる。
【0019】
次に、このようなX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置のマトリックス駆動について述べる。
【0020】
まず、制御部では、表示対象の各位置に対する画素(Xi,Yl)を示す電極切替信号を行及び列選択切替部5,7に送出する。この電極切替信号により、走査電極Xiに対応するMOSFET6(i)のゲートと、データ電極Ylに対応するバイポーラトランジスタ9(l)のベース及びMOSFET10(l)のゲートとに、各々同期してハイレベルのパルスが入力されると、走査電極Xiがアースされ、データ電極Ylが順バイアス電圧VBにラッチされる。
【0021】
このとき、順バイアスの駆動電圧VBが発光のしきい値以上の十分な電圧であれば、画素(Xi,Yl)に対応する有機薄膜EL素子に電流が流入し、有機薄膜が励起されて発光する。一方、非選択のデータ電極Yk(k≠l)はアースされているので、Yk電極上の有機薄膜EL素子には電圧が印加されず、発光しない。また、非選択の走査電極Xj(j≠i)はフロート状態にラッチされ、定常状態では電流は流れない。
【0022】
以上のようにして走査電極Xi上に発光、非発光状態が形成され、この発光、非発光状態を走査電極Xiを順次シフト選択しながら繰り返し表示することにより、所望の画像を表示している。
【0023】
また、輝度階調のある画像の表示は、選択している走査電極Xi上の各画素(Xi,Y1〜Ym)の輝度階調に応じたパルス幅の順バイアス電圧を各データ電極Y1〜Ymに印加することで各有機薄膜EL素子の発光状態の時間を制御することにより、時間平均された輝度(平均輝度)を調整している。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の有機薄膜EL表示装置は以上のように構成されているので、有機薄膜EL表示装置の高解像度化を図るためには、データ電極Y1〜Ym及び、または走査電極X1〜Xnの電極数を増やし画素数を増加させる必要がある。電極数が増加すると、電極幅が狭くなるため電極抵抗が増加する。
【0025】
また、表示する画像の繰り返し時間(フレーム表示時間)が一定の場合、1本の走査電極を選択する時間が走査電極数に反比例して短くなり有機薄膜EL素子の発光時間が短くなるため、図22に示すように時間平均された発光輝度が低くなるので、発光輝度を一定に保つためには有機薄膜EL素子に印加する電圧を大きくして電流を増加させて発光輝度を大きくする必要がある。
【0026】
したがって、有機薄膜EL表示装置の表示輝度を保ちながら高解像度化を図ると、画素までの配線電極による配線抵抗が大きくなり、また輝度を保つため画素に流れる電流も大きくなるので、配線抵抗による電圧降下(配線抵抗と電流の積)が大きくなり、配線抵抗による電圧降下に対応して表示装置の駆動電圧である順バイアス電圧VBを高く設定する必要がある。
【0027】
また、表示装置の高解像度化により配線抵抗が大きくなると表示装置内の画素の位置による配線抵抗の違いが無視できなくなる。すなわち、配線抵抗による各画素までの電圧降下が異なることになる。順バイアス電圧VBによる定電圧駆動では、各画素の有機薄膜EL素子に印加される電圧は、順バイアス電圧VBから配線抵抗による電圧降下を差し引いた電圧であるので、画素の位置により有機薄膜EL素子に印加される電圧が異なり、その結果、発光輝度のばらつきが発生するという問題がある。
【0028】
一方、表示装置内の画素の輝度階調に対応するパルス幅の順バイアス電圧VBを有機薄膜EL素子に印加制御して輝度階調を制御する場合、前述のように表示装置の高解像度化により有機薄膜EL素子の発光時間が短くなり、制御できる階調数を多くするためにはさらに短いパルス幅での制御が必要にある。しかし、実際の表示装置では、パルス状の順バイアス電圧VBは配線抵抗と有機薄膜EL素子との時定数により、図23に示すように波形なまりが発生し、印加する順バイアス電圧VBのパルス幅と時間平均された発光輝度との比例関係が成立しなくなる。また、画素の位置により配線抵抗が異なってくるため、各画素での印加する順バイアス電圧VBのパルス幅と時間平均された発光輝度の関係も異なってくる。
【0029】
このような輝度制御ずれは、制御する階調数が多くなり印加する順バイアス電圧VBのパルス幅が短いほど顕著になるので、有機薄膜EL素子の応答速度によらず正確な階調表示及び高階調表示ができない。
【0030】
また、特開平2−148667号公報には、有機薄膜EL表示装置内の各有機薄膜EL素子(画素)に対応する複数の2値化ビットデータを記憶することができるメモリセルとその出力信号で出力の有無が制御される複数の電流供給源とを備えて、各画素に供給される電流を制御して輝度階調を変化させる方法が開示されている。この方法によれば高解像度化されても1画素が発光状態の時間が短くなることがなく、また各画素毎の電流源を当該画素の近傍に配置することが可能であるので画素の位置による配線抵抗の違いが生じることがない。しかし、この方法の回路構成は、有機薄膜EL表示装置内に各画素毎に複数のメモリセルと電流供給源などを構成する必要があり、非常に複雑になり表示装置のコストが高くなるなど実用的でない。
【0031】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、各画素毎に複数のメモリセルや電流源などを構成することのない構造が簡易なX−Yマトリックス型で、高解像度化された表示装置においても、駆動電圧を低く抑えることが可能で、画面上の画素の位置による輝度ばらつきが発生せず、輝度階調制御が可能な有機薄膜EL表示装置とその駆動方法を得ることを目的とする。
【0037】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の有機薄膜EL表示装置は、少なくとも有機物からなる発光層を有し、複数のストライプ状のデータ電極と複数のストライプ状の走査電極で構成されるX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置において、駆動電圧VCCの電圧源に接続されたカレントミラー回路で構成される複数の電流源を前記複数のデータ電極に各々接続して駆動するとともに、駆動電圧VCCを調整する調整手段を備え、調整手段により走査電極毎に駆動電圧VCCを調整し、画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値とすることを特徴とするものである。
【0046】
請求項2に記載の有機薄膜EL表示装置の駆動方法は、少なくとも有機物からなる発光層をし、複数のストライプ状のデータ電極と複数のストライプ状の走査電極で構成されるX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置を駆動電圧VCCの電圧源に接続されたカレントミラー回路で構成される複数の電流源を前記複数のデータ電極に各々接続して駆動する有機薄膜EL表示装置の駆動方法において、駆動電圧VCCを調整する調整手段を備え、調整手段により走査電極毎に駆動電圧VCCを調整し、画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値とすることを特徴とする。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、添付した図面を参照して、この発明を具体的に説明する。
【0052】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【0053】
図において、有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)は、前記図20に示す従来例と同様に複数の単位電極からなるストライプ状の走査電極Y1〜Ym及びデータ電極X1〜Xn(第1及び第2のストライプ電極)によりマトリックス状に挟持されている発光素子である。
【0054】
各走査電極Y1〜Ym(第1の単位電極)は、有機薄膜EL素子の陰極と各走査電極Y1〜Ym毎に走査線選択信号を水平同期信号毎に順次シフトしていくシフトレジスタ11(1)〜11(m)とノーマリオフのMOSFET12(1)〜12(m)を有する走査電極選択切替部13に接続する。
【0055】
ADコンバータ(ADC)14は、入力された映像信号をaビットのディジタルデータに変換する。aビットシフトレジスタ15(1)〜15(n)は、aビットラインメモリ16を構成し、ADC14の出力データをその動作クロックCLK(DOT)毎に順次シフトし、走査線1本分のディジタルデータを保持する。
【0056】
PWM(pulse width modulation)変換器17(1)〜17(n)は、aビットシフトレジスタ15(1)〜15(n)の出力データに対応したパルス幅を出力する。
【0057】
電流源18(1)〜18(n)は、PWM変換器17(1)〜17(n)の出力パルスで制御され、一定の電流を出力する。PWM変換器17の構成については図3で後述する。
【0058】
各データ電極X1〜Xn(第2の単位電極)は、有機薄膜EL素子の陽極と駆動電圧VCCの電圧源19に接続された上記電流源18(1)〜(n)に接続する。
【0059】
図2は上記有機薄膜EL表示装置の走査電極Ylを選択して走査電極Yl上の有機薄膜EL素子EL(X1〜Xn)全てに電流値Iが流れている場合の配線抵抗による電圧降下を示した図である。
【0060】
図2に示すように、データ電極X1〜Xnに流れる電流は、有機薄膜EL素子1画素分の電流(電流値I)で、データ電極の配線抵抗Rx(=△Rx*l)による電圧降下VRxは、図2に示すとおりVRx=△Rx*l*Iとなり、その最大値はVRxmax=△Rx*m*Iである。
【0061】
一方、走査電極Ylに流れる電流は、走査電極上で順に加算されるので、画素間の配線抵抗△Ryに対して流れる電流が図2の左から順に電流値Iずつ増えていく。
【0062】
したがって、走査電極Yl上の有機薄膜EL素子EL(X1〜Xn,Yl)を同時に駆動した場合、走査電極Ylの配線抵抗により発生する電圧VRyは、画素間の配線抵抗△Ryと各画素間を流れる電流の積の総和となり、その最大値は図2に示すとおりVRymax=△Ry*(n−1)*n/2*Iとなる。
【0063】
以上のように、走査電極には各有機薄膜EL素子の電流が共通に流れるが、データ電極には1画素分の有機薄膜EL素子の電流しか流れない。配線抵抗による電圧降下(VRxmax+VRymax)は、表示装置のアスペクト比(縦の画素数:横の画素数)をα(=m/n)とすると、配線抵抗による電圧降下(VRxmax+VRymax)は、式(1)で示される。
【0064】
Figure 0004059537
一般的にアスペクト比αは9/16、3/4、1/1の値であり、映像表示装置の場合、横の画素数nは最低でも200以上必要であるから、上記式(1)において走査電極の配線抵抗△Ryの係数(n−1)/2の方がデータ電極の配線抵抗△Rxの係数αより大きな値となる。
【0065】
このように、X−Yマトリックス型有機EL表示装置の配線電極の抵抗値と当該配線電極に流れる電流に注目し、配線抵抗による電圧降下が低くなるようにデータ電極と走査電極を配設する。
【0066】
すなわち、有機薄膜EL表示装置において、配線抵抗による電圧降下を低く抑えるためには、高抵抗側電極をデータ電極用配線に低抵抗側電極を走査電極用配線に配設する必要があり、上述のように本実施の形態では、高抵抗側電極である透明電極をデータ電極用配線に、低抵抗側電極である金属電極を走査電極用配線に配設して、配線抵抗による電圧降下を低く抑えることが可能である。
【0067】
図3上記PWM変換器17の構成を示す回路図である。
【0068】
図において、101〜103はフリップフロップ、104はラッチ、105はカウンタ、106,107はANDゲート、108はインバータである。
【0069】
上記フリップフロップ101,102及びANDゲート106は、水平同期信号HDの立ち下がりのタイミングを検出する回路であり、またカウンタ105はaビットシフトレジスタ15(i)の出力データを保持するものである。
【0070】
以下、上述のように構成された有機薄膜EL表示装置の駆動方法について説明する。
【0071】
図4は、前記図1の走査線選択切替部13のシフトレジスタ11(1)〜(n)の動作波形を示した波形図である。
【0072】
本実施の形態では、全ての走査電極Y1〜Ymから1本の走査電極を選択する場合の例であるので、走査線選択信号は0番目の水平同期区間のみHレベルとなる信号である。走査線選択信号は、シフトレジスタ11(1)に入力され、その出力信号は1番目の水平同期信号HDの立ち上がりのタイミングでHレベルに変化し、2番目の水平同期信号の立ち上がりのタイミングでLレベルに変化する。すなわち、シフトレジスタ11(1)の出力信号は、1番目の水平同期信号区間のみHレベルとなり、走査線選択信号を1水平同期時間だけシフトし、次のシフトレジスタ11(2)に入力する。シフトレジスタ11(2)〜(n)においても同様にして、走査線選択信号を1水平同期時間だけ順次シフトするので、l番目の水平同期区間の時だけl番目のシフトレジスタ11(l)の出力がHレベルになる。
【0073】
各シフトレジスタ11(1)〜11(n)の出力は、MOSFET12(1)〜12(m)のゲート端子に接続されているので、シフトレジスタの出力信号がHレベルの時、走査電極はアースに接続される。すなわち、走査線選択切替部13により走査電極Y1〜Ymが順次選択切替され、アースに接続される。
【0074】
また、前記図1に示すように、映像信号はADC14に入力され、ADC14によりaビットのディジタルデータに変換され、その出力ディジタルデータを、aビットシフトレジスタ15(n)に入力する。
【0075】
図5は上記aビットシフトレジスタ15(1)〜(n)の動作を示すタイミングチャートである。
【0076】
図に示すように、aビットシフトレジスタ15(n)は、ADC14の出力データを動作クロックCLK(DOT)の1周期時間分遅延させ、動作クロックCLK(DOT)の1周期時間前のADC14の出力データを出力する。また、その出力データを次のaビットシフトレジスタ15(n-1)とPWM変換器17(n)に入力する。
【0077】
次のaビットシフトレジスタ15(n-1)は、aビットシフトレジスタ15(n)の出力データを動作クロックCLK(DOT)の1周期時間分さらに遅延させ、動作クロックCLK(DOT)の2周期時間前のADC14の出力データを出力し、その出力データは次のaビットシフトレジスタ15(n-2)とPWM変換器16(n-1)に入力する。
【0078】
このようにして、aビットシフトレジスタ15(n)〜(1)は、ADC14の出力データを動作クロックCLK(DOT)の1周期時間分ずつ順次遅延させ、最後のaビットシフトレジスタ15(1)は、動作クロックCLK(DOT)のn周期時間前のADC14の出力データを出力し、その出力データをPWM変換器16(1)に入力する。
【0079】
図6は上記PWM変換器17(1)〜(n)の動作を示すタイミングチャートである。
【0080】
図3及び図6において、PWM変換器17(i)は、水平同期信号HDの立ち上がりのタイミングでaビットシフトレジスタ15(i)の出力データ、すなわち水平同期信号のHDの立ち下がりのタイミングから動作クロックCLK(DOT)の(n+1)周期時間前のADC14の出力データiを内部で保持する。PWM変換器(i)は、PWM変換用クロックCLK(PWM)の1周期と保持データの積である時間のパルス幅を出力する。
【0081】
前記図1に戻って、電流源18(1)〜(n)は、一方の端子を駆動電圧VCCの電圧源19に、他方の端子をデータ電極X1〜Xnを介して有機薄膜EL素子に接続し、PWM変換器17(1)〜(n)の出力信号によりその信号のパルス幅の時間だけ一定の電流(電流値I)が出力されるように制御される。
【0082】
以下この動作をより詳細に説明するが、説明の簡略化のために、まず、電流源18(1)〜(n)のうち1つの電流源18(i)が動作している場合について述べる。
【0083】
図7は、電流源18(i)から供給された電流が、データ電極Xiを介して有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)に流れ、走査線選択切替部13により選択切替された走査電極Ylを介してアースに流れる電流の経路を示した図である。
【0084】
有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)の発光量は、この電流値Iで制御することができる。この時、電流源18(i)が正しく電流値Iを出力するために必要な動作電圧は、電流源18(i)が理想電流源であれば0であるが、実際には図8に示すようなカレントミラー回路によって電流源が構成されるため、トランジスタのエミッタ−コレクタ間電圧Vceとエミッタ抵抗による電圧VEの和以上の動作電圧VICC(≧Vce+VE)が必要とされる。
【0085】
また、電流値Iの電流が、データ電極Xi、有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)、走査電極Yl、走査線選択切替部13のMOSFET12(i)に流れることで発生する電圧をそれぞれ次の電圧とする。すなわち、有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)の陽極2と陰極4間に発生する電圧をVEL、データ電極Xiの配線抵抗Rxによる電圧をVRx(=△Rx*I)、走査電極Ylの配線抵抗による電圧をVRy(=△Ry*I)、走査線選択切替部13のMOSFET12(i)のドレイン端子−ソース端子間の飽和電圧をVswとする。
【0086】
ここで、有機薄膜EL素子の電圧VELは、例えば図9〜図11に示すような有機薄膜EL素子の電流−発光輝度特性及び電流−電圧特性から決まる電圧である。なお、図9〜図11は、月刊ディスプレイ 96年7月号 44頁の図8、図9に示されている特性図を定性的に表したものである。
【0087】
図12は、有機薄膜EL素子の電圧を図9〜図11のような特性から決定される過程を説明するために、さらに上記電流経路のうち駆動電圧VCCの電圧源19、電流源18(i)、有機薄膜EL素子EL(Xi,Yl)部分だけを抜き出し簡略化した図である。
【0088】
図において、電流源18(i)は説明の簡略化のため理想電流源とする。図9のように、駆動電圧VCCが電流−電圧特性から求められる電流値Iの時のEL電圧VEL(I)より高い場合、すなわちVCC≧VEL(I)の時、有機薄膜EL素子は電流源18(i)による定電流駆動状態となる。このとき、有機薄膜EL素子の電圧は、VEL(I)で、電流源18(i)の電圧VICCは駆動電圧との差、すなわちVICC=VCC−VEL(I)である。
【0089】
一方、図10のように、駆動電圧VCCが電流−電圧特性から求められる電流値Iの時のEL電圧VEL(I)より低い場合、すなわちVCC≦VEL(I)の時、有機薄膜EL素子は電圧源19による定電圧駆動状態となる。このとき、電流は電流源18(i)の電流値Iより低い、駆動電圧VCC時の電流I(VCC)(<I)しか流れない。
【0090】
以上のように、有機薄膜EL素子の発光輝度を制御するために定電流駆動するためには、電流値Iの時のEL電圧VEL(I)以上の電圧で駆動することが必要である。また、実際の電流経路を考えた場合、駆動電圧VCCからデータ電極Xi、走査電極Ylの配線抵抗による電圧VRx、VRyと、電流源18(i)が動作するために必要な電圧VICC及び走査線選択切替部13のMOSFET12(i)のドレイン端子−ソース端子間の飽和電圧Vswを考慮する必要がある。
【0091】
したがって、有機薄膜EL素子の発光輝度を制御するために定電流駆動する場合には、駆動電圧VCCから上記の電流経路での電圧降下の和を差し引いた電圧が電流値I時のEL電圧VEL(I)以上、すなわち(VCC−VRx−VRy−Vsw)≧VEL(I)であることが必要である。
【0092】
データ電極Xi、走査電極Ylの配線抵抗による電圧VRx、VRyは、配線長が最も長くなる有機薄膜EL素子EL(X1、Ym)を選択した場合が最大で、その電圧はそれぞれ、VRxmax=△Rx*m、VRymax=△Ry*nである。
【0093】
以上、電流源18(1)〜(n)のうち1つの電流源18(i)が動作している場合について説明したが、実際には、前記図2のように全ての電流源18(1)〜(n)が同時に動作している場合について考える必要がある。
【0094】
前述のとおり、電流源18(1)〜(n)からの電流は走査電極Yl上で順に加算されていくので、画素間の配線抵抗△Ryに対して流れる電流が図2の左から順に電流値Iずつ増えていく。したがって、走査電極Yl上の有機薄膜EL素子EL(X1〜Xn,Yl)を同時に駆動した場合、走査電極Ylの配線抵抗により発生する電圧の最大値VRymaxは、画素間の配線抵抗△Ryと各画素間を流れる電流の積の総和となるので、図2に示すようにVRymax=△Ry*(n−1)*n/2*Iである。
【0095】
ここで、電圧源19の駆動電圧VCCが、上記電圧(VRx、VRyについては最大値)の総和以下の場合、すなわちVCC≦(VICC+VRxmax+VEL(I)+VRymax+Vsw)となる場合は、画素の位置によっては配線抵抗値の違いにより電流源18(i)が定電流動作するために必要な駆動電圧に達せず、電圧源19による定電圧駆動状態となる画素が発生する。その結果、画面の位置により有機薄膜EL素子EL(Xi、Yl)に流れる電流値がバラつくことになるので、その発光輝度がばらつき、有機薄膜EL表示装置の画面内の輝度ばらつきが発生する。
【0096】
しかし、本実施の形態では、電圧源19の駆動電圧VCCを上記電圧(VRx、VRyについては最大値)の総和以上、すなわちVCC≧(VICC+VRxmax+VEL(I)+VRymax+Vsw)となる特定の電圧に設定するようにしているので、画素の位置により配線抵抗値に違いがあっても常に電流源18(i)により定電流駆動され、有機薄膜EL素子EL(Xi、Yl)の発光輝度を電流源(i)の電流値で制御することが可能である。したがって、画面の位置によらず有機薄膜EL素子EL(Xi、Yl)の発光輝度のばらつきが発生することなく、有機薄膜EL表示装置の画面内で輝度ばらつきを生じることがない。
【0097】
さらに、上記の条件下で定電流動作している電流源18(i)の出力を、PWM変換器17(i)の出力パルスで制御すると、その出力電流は図7に示すように電流値が一定でPWM変換器17(i)の出力パルス幅と同じパルス幅のパルス電流となる。電流源18(i)から出力されたパルス電流は、図7に示すようにデータ電極の配線抵抗Rx、有機薄膜EL素子EL(Xi、Yl)、走査電極の配線抵抗Ry、MOSFET12(l)と一本の電流経路で流れている。
【0098】
従来例では、表示輝度をパルス幅で制御するためのパルス電圧波形が配線抵抗と有機薄膜EL素子の時定数により波形なまりが発生していたが、本実施の形態では配線抵抗があっても電流源18(i)が定電流動作しているので有機薄膜EL素子(Xi、Yl)に流れる電流は電流源18(i)から出力されるパルス電流と同じ波形になる。つまり、電流源18(i)の出力は図7に示すように一本の電流経路で流れ、さらに電流源18(i)が定電流動作をしており、出力波形はなまることがないので、有機薄膜EL素子の発光輝度階調をPWM変換器17(i)の出力パルス幅で制御することが可能となる。
【0099】
以上のように、一方の端子を駆動電圧VCCの電圧源に19に接続された電流源18(1)〜(n)をX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置のデータ電極X1〜Xnに接続し、その出力電流を選択している走査電極上の画素の輝度階調に対応したパルス幅のパルス電流として、さらに駆動電圧VCCが電流源18(1)〜(n)が必ず定電流動作するような特定の電圧以上になるようにX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置を駆動すると、画素の位置によるばらつきなく表示画像の輝度階調を表示することができる。
【0100】
以上説明したように、実施の形態1に係る有機薄膜EL表示装置は、X−Yマトリックス型有機EL表示装置の配線電極の抵抗値と当該配線電極に流れる電流に注目し、データ電極を低抵抗側配線に、走査電極を高抵抗側配線に配設するように構成したので、配線抵抗による電圧降下を低く抑えることができる。また、X−Yマトリックス型有機EL表示装置を、駆動電圧VCCの電圧源に接続された電流源で駆動する駆動方法とし、この時の駆動電圧VCCを画素の位置による配線抵抗のばらつきがあっても電流源が必ず定電流動作する条件を満足する特定の電圧以上としたため、画素の位置による表示輝度がばらつくことを抑制することができる。
【0101】
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2に係る有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。第2の実施の形態では、図1に示す第1の実施の形態のPWM変換器17(1)〜(n)がDA変換器20(1)〜(n)に変更され、DA変換器20(1)〜(n)はaビットシフトレジスタ15(1)〜(n)の出力データに相当する電圧を出力し、電流源18(1)〜(n)はDA変換器20(1)〜(n)の出力電圧に比例した一定値の電流を出力する。それ以外の各部の構成及び動作は、第1の実施の形態と同じであり重複部分の説明を省略する。
【0102】
以上の構成において、電流源18(1)〜(n)が定電流動作をするための条件は、第1の実施の形態と同じく電圧源19の駆動電圧VCCをVCC≧(VICC+VRxmax+VEL(I)+VRymax+Vsw)となる特定の電圧に設定することである。この条件下では第1の実施の形態と同じく画素の位置により配線抵抗値に違いがあっても常に電流源18(1)〜(n)により定電流駆動されるので、有機薄膜EL素子EL(X1〜Xn、Yl)の発光輝度を電流源18(1)〜(n)の各電流値で制御することが可能である。
【0103】
したがって、第2の実施の形態の方法によってX−Yマトリックス型の有機薄膜EL表示装置を駆動しても、画素の位置によるばらつきなく表示画像の輝度階調を表示することができる。
【0104】
以上説明したように、実施の形態2に係る有機薄膜EL表示装置は、X−Yマトリックス型有機EL表示装置を、駆動電圧VCCの電圧源に接続された電流源で駆動する駆動方法とし、この時の駆動電圧VCCを画素の位置による配線抵抗のばらつきがあっても電流源が必ず定電流動作する条件を満足する特定の電圧以上として、この定電流動作する電流源の動作をパルス幅で動作を制御する、あるいは定電流動作の電流値を変化させて輝度階調を制御するように駆動したため、正確な階調表示及び高階調化が可能となる。
【0105】
上述した実施の形態1及び実施の形態2では、電流源18(1)〜(n)の駆動電圧VCCを電流源18(1)〜(n)が定電流動作する特定の一定電圧としているが、電圧源19は電圧値を可変できる可変電圧源を用いてもよくこの例を実施の形態3で説明する。
【0106】
実施の形態3.
図14はこの発明の実施の形態3に係る有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。なお、実施の形態3である有機薄膜EL表示装置の説明にあたり前記図1に示す有機薄膜EL表示装置と同一構成部分には同一符号を付して重複部分の説明を省略する。
【0107】
図において、電流源18(1)〜(n)に駆動電圧VCCを供給する電圧源を、電圧値を可変できる可変電圧源19’に変更し、さらにこの可変電圧源19’を制御する必要駆動電圧計算手段21が設置された構成となっている。
【0108】
上記可変電圧源19’及び必要駆動電圧計算手段21は、全体として走査電極毎に駆動電圧VCCを調整する調整手段を構成する。
【0109】
電流源18(1)〜(n)が定電流動作するための駆動電圧VCCの条件は、前述のとおり選択している走査電極までのデータ電極の配線抵抗や、表示している画像の最大輝度すなわち電流源18(1)〜(n)の電流値で決定され、第1及び第2の実施の形態では、駆動電圧VCCをその最大値以上の特定の電圧としていたので、配線抵抗による電圧降下が低い場合は配線抵抗による電圧降下の最大値との電圧差が電流源18(1)〜(n)の電圧となり、電流源18(1)〜(n)でその電力を損失していた。
【0110】
しかし、図14に示すように、電圧源19’を可変電圧源として、走査電極毎に選択している走査電極までのデータ電極による配線抵抗や、電流源18(1)〜(n)の電流値から必要駆動電圧計算手段21により可変電圧源19’を制御して、電流源18(1)〜(n)が定電流動作するために必要な駆動電圧VCCとなるようにすれば、電流源18(1)〜(n)での電力損失を低く抑えることが可能となる。
【0111】
ところで、各走査電極の駆動電圧VCCは、VICC+VRx+VEL+VRy+Vsw<VCCとなればよい。ここで、VRx=△Rx*l*Iとなり、選択される走査電極の位置によりlが変化し、さらに選択された走査電極上にあるそれぞれの画素の輝度により走査電極を流れる電流の合計も変化するので、これらの変化に合わせて各走査電極ごとに適した駆動電圧VCCを求めることができる。
【0112】
なお、図14では、実施の形態1の電圧源19を可変電圧源19’に変更した例を示しているが、実施の形態2において電圧源19を可変電圧源19’に変更しても同様な効果を得ることができるのは明らかである。
【0113】
以上説明したように、実施の形態3に係る有機薄膜EL表示装置は、X−Yマトリックス型有機EL表示装置を、駆動電圧VCCの電圧源に接続された電流源で駆動する駆動方法とし、この時の駆動電圧VCCを画素の位置による配線抵抗のばらつきがあっても電流源が必ず定電流動作する条件を満足する特定の電圧以上とするとともに、駆動電圧VCCの電圧を調整する調整手段を設けて、走査電極毎に駆動電圧VCCを画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値としたため、配線抵抗による電圧降下が小さい画素を駆動するときに発生する電流源などの駆動回路で発生する損失を低く抑えることができる。
【0114】
実施の形態4.
図15はこの発明の実施の形態4に係る有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。なお、実施の形態4である有機薄膜EL表示装置の説明にあたり前記図14に示す有機薄膜EL表示装置と同一構成部分には同一符号を付して重複部分の説明を省略する。
【0115】
図において、可変電流源18’(1)〜(n)、可変電流源18’(1)〜(n)の両端の電圧を測定する電圧測定手段22(モニタ手段)、測定済みの有機薄膜EL素子の特性変化データ(後述する図16及び図17に示すようなデータ)を格納する特性テーブル23、特性テーブル23に格納された特性変化データに基づいて駆動電流を補正する駆動電流補正手段24、及び特性テーブル23に格納された特性変化データに基づいて駆動電圧を補正する駆動電圧補正手段25が設置された構成となっている。
【0116】
上記特性テーブル23、駆動電流補正手段24及び駆動電圧補正手段25は、全体として輝度特性や色バランスなどの表示特性の変化を調整する補正手段を構成する。
【0117】
すなわち、実施の形態4では、電圧測定手段22で可変電流源18’(1)〜(n)の両端の電圧を測定し、その電圧の経時変化から電圧−電流(V−I)特性の経時変化を測定する電圧測定手段22を設け、すでに測定済みの有機薄膜EL素子の特性テーブル23から特性変化データを読み出して、読み出した特性変化データを駆動電流補正手段24及び駆動電圧補正手段25により補正し、この補正信号で、それぞれ可変電流源19’(1)〜(n)と可変電圧源19’を制御して、有機薄膜EL素子の発光輝度を補正することが可能である。
【0118】
上記補正信号の算出方法は、以下のようなものである。
【0119】
図16及び図17は、『有機EL素子の開発戦略』(サイエンスフォーラム社1992年刊)の85頁、86頁に示されている有機薄膜EL素子の特性変化を定性的に表した図であり、図16はその電流−電圧特性の経時変化を示す図、図17はその電流−輝度特性の経時変化を示す図である。
【0120】
図16及び図17に示すように、有機薄膜EL素子は通電時間経過に伴い、駆動電流が一定電流Iの時有機薄膜EL素子の電圧VEL(I)が高くなり、また発光輝度L(I)が低くなる傾向がある。
【0121】
図15に戻って、第1の実施の形態と同じく、一定電流値を出力している可変電流源18’(1)〜(n)が定電流動作するような駆動電圧VCCで有機薄膜EL表示装置を駆動している場合、有機薄膜EL素子の電圧変化△VELは、電流源動作であるから図16に示すように可変電流源18’(i)の両端の電圧変化△VICCで測定することができる。
【0122】
この有機薄膜EL素子の電圧変化△VELとすでに測定済みの有機薄膜EL素子の経時変化特性テーブル23から、例えば図18に示す有機薄膜EL素子の経時変化補正フローチャートに従い、駆動電流補正24で可変電流源18’(1)〜(n)の電流値が大きくなるように制御して、有機薄膜EL素子の発光輝度の低下を補正することが可能となる。
【0123】
図18は有機薄膜EL素子の経時変化補正フローチャートであり、図18の左辺はフローの各ステップSTを示し、図18の右辺は該当ステップSTの詳細処理を示す。
【0124】
まず、ステップST1で初期駆動電流Iと初期輝度Lを設定し、電圧−電流特性の経時変化データテーブル(ステップST3)及び電圧−輝度流特性の経時変化データテーブル(ステップST4)に出力する。また、ステップST2では、有機薄膜EL素子の電圧変化△VEL(可変電流源18’(i)の両端の電圧変化△VICC)を測定し、電圧−電流特性の経時変化データテーブル(ステップST3)に出力する。
【0125】
ステップST3で、通電経過時間による電圧−電流特性を示す電圧−電流特性の経時変化データテーブルを用いて、電圧−電流特性の経時変化データと有機薄膜EL素子の初期駆動電流と電圧変化△VELから通電経過時間tを求め、ステップST4で、電流−輝度特性の経時変化データと通電経過時間tから輝度変化△Lを求め、輝度変化を補正するための必要補正電流△Iを算出する。
【0126】
ステップST5で、電圧−電流特性の経時変化データ、輝度変化を補正するための必要補正電流△I及び通電経過時間tから有機薄膜EL素子の電圧VEL’を算出し、ステップST6で駆動電流補正制御を行う。この駆動電流補正制御は、可変電流源18’(i)の補正出力電流I’が初期電流Iと輝度変化を補正するための必要補正電流△Iの和I+△Iとなるように可変電流源18’(i)を制御する(ステップST8)。
【0127】
ステップST7で、輝度補正後の有機薄膜EL素子の電圧VEL’と駆動電流補正制御出力から可変電流源18’(i)が電流源動作するために必要な駆動電圧VCC’を算出し、可変電圧源18’を制御する(ステップST9)。
【0128】
上述したように、可変電流源18’(1)〜(n)の電流値補正及び有機薄膜EL素子の電圧変化すなわち電流値増加に対しても、常に電流源動作するように駆動電圧VCCについても補正する必要があり、同様にして測定済みの有機薄膜EL素子の経時変化特性テーブル23から、駆動電圧補正25で可変電圧源19’を制御する。
【0129】
また、実施の形態4に対して実施の形態3のように走査電極毎に、駆動電圧VCCを最適値とすることで、有機薄膜EL表示装置の通電経時変化に対して補正を行いかつ電力損失を抑えることが可能となる。
【0130】
また、経時変化に伴って、補正を行うが、この補正は、装置のON,OFFの回数によって行ったり、装置の使用時間(トータルの使用時間)に応じて行う、あるいは常に行うようにすることができる。
【0131】
以上説明したように、実施の形態4に係る有機薄膜EL表示装置は、X−Yマトリックス型有機EL表示装置を、駆動電圧VCCの電圧源に接続された電流源で駆動する駆動方法とし、この時の駆動電圧VCCを画素の位置による配線抵抗のばらつきがあっても電流源が必ず定電流動作する条件を満足する特定の電圧以上とするとともに、表示装置内の発光素子の電圧−電流(V−I)特性をモニタするモニタ手段を設け、該モニタ手段からの情報を基に定電流動作の電流源の電流値を制御するようにしたので、発光素子の発光特性の変化を補正することができる。
【0132】
なお、上記各実施の形態は、駆動電圧VCCの電圧源に接続された電流源で駆動するX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置及び駆動方法に適用しているが、有機薄膜EL表示素子を備えた装置及びその駆動方法であれば、どのような電極構造や駆動方法のものにも適用可能であることは言うまでもない。
【0133】
また、上記有機薄膜EL表示装置を構成する例えば有機物からなる発光層や、発光層を有する表示装置の種類、電極の接続状態などは前述した実施の形態に限られないことは勿論である。
【0139】
【発明の効果】
請求項1に記載の有機薄膜EL表示装置によれば、駆動電圧VCCの電圧源に接続されたカレントミラー回路で構成される複数の電流源を前記複数のデータ電極に各々接続して駆動するとともに、駆動電圧VCCを調整する調整手段を備え、調整手段により走査電極毎に駆動電圧VCCを調整し、画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値とするように構成したので、配線抵抗による電圧降下が小さい画素を駆動するときに発生する電流源などの駆動回路で発生する損失を低く抑えることができる。
【0148】
請求項2に記載の有機薄膜EL表示装置の駆動方法によれば、駆動電圧VCCの電圧源に接続されたカレントミラー回路で構成される複数の電流源を前記複数のデータ電極に各々接続して手段を備え、調整手段により走査電極毎に駆動電圧VCCを調整し、画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値とするようにしたので、配線抵抗による電圧降下が小さい画素を駆動するときに発生する電流源などの駆動回路で発生する損失を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の走査電極を選択して走査電極上の有機薄膜EL素子EL全てに電流値が流れている場合の配線抵抗による電圧降下を示した図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置のPWM変換器の構成を示す回路図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の走査線選択切替部のシフトレジスタの動作波形を示す波形図である。
【図5】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置のaビットシフトレジスタの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置のPWM変換器の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子ELに流れる電流の経路を説明するための図である。
【図8】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の電流源をカレントミラー回路で構成した場合の例を示す図である。
【図9】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子の電流−電圧特性を定性的に示す図である。
【図10】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子の電流−電圧特性を定性的に示す図である。
【図11】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子の電流−発光輝度特性を定性的に示す図である。
【図12】 この発明の実施の形態1による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子ELの要部を抽出し簡略化して示す図である。
【図13】 この発明の実施の形態2による有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【図14】 この発明の実施の形態3による有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【図15】 この発明の実施の形態4による有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【図16】 この発明の実施の形態4による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子の経時変化特性を定性的に示す図である。
【図17】 この発明の実施の形態4による有機薄膜EL表示装置の有機薄膜EL素子の経時変化特性を定性的に示す図である。
【図18】 この発明の実施の形態4による有機薄膜EL表示装置の経時変化補正のフローチャートである。
【図19】 従来の有機薄膜EL素子の構成を示す断面図である。
【図20】 従来の有機薄膜EL素子の陽極と陰極とがストライプ状に形成され、かつ互いに交差するように配置したX−Yマトリックス有機薄膜EL表示装置の構造を示す図である。
【図21】 従来の有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動の等価回路を示す図である。
【図22】 従来の有機薄膜EL素子の発光時間と輝度の関係を示す図である。
【図23】 従来の有機薄膜EL表示装置におけるマトリックス駆動回路の電圧波形を示した図である。
【符号の説明】
11(1)〜11(m) シフトレジスタ、 12(1)〜12(m) MOSFET、 13 走査電極選択切替部、 14 ADコンバータ(ADC)、 15(1)〜15(n) aビットシフトレジスタ15(1)〜15(n)、 16 aビットラインメモリ、 17(1)〜17(n) PWM変換器、 18(1)〜18(n) 電流源、 18’ 可変電流源、 19 電圧源、 19’ 可変電圧源、 20(1)〜(n)DA変換器、 21 必要駆動電圧計算手段、 22 電圧測定手段、 23特性テーブル、 24 駆動電流補正手段、 25 駆動電圧補正手段、 EL(Xi,Yl) 有機薄膜EL素子、 Y1〜Ym 走査電極、 X1〜Xn データ電極、VCC 駆動電圧。

Claims (2)

  1. 少なくとも有機物からなる発光層を有し、複数のストライプ状のデータ電極と複数のストライプ状の走査電極で構成されるX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置において、
    駆動電圧VCCの電圧源に接続されたカレントミラー回路で構成される複数の電流源を前記複数のデータ電極に各々接続して駆動するとともに、前記駆動電圧VCCを調整する調整手段を備え、
    前記調整手段により走査電極毎に駆動電圧VCCを調整し、画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値とすることを特徴とする有機薄膜EL表示装置。
  2. 少なくとも有機物からなる発光層を有し、複数のストライプ状のデータ電極と複数のストライプ状の走査電極で構成されるX−Yマトリックス型有機薄膜EL表示装置を
    駆動電圧VCCの電圧源に接続されたカレントミラー回路で構成される複数の電流源を前記複数のデータ電極に各々接続して駆動する有機薄膜EL表示装置の駆動方法において、
    前記駆動電圧VCCを調整する調整手段を備え、
    前記調整手段により走査電極毎に駆動電圧VCCを調整し、画素の位置による配線抵抗のばらつきを補正した異なる電圧値とすることを特徴とする有機薄膜EL表示装置の駆動方法。
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