JP4045229B2 - 無灰炭の製造方法 - Google Patents

無灰炭の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4045229B2
JP4045229B2 JP2003355421A JP2003355421A JP4045229B2 JP 4045229 B2 JP4045229 B2 JP 4045229B2 JP 2003355421 A JP2003355421 A JP 2003355421A JP 2003355421 A JP2003355421 A JP 2003355421A JP 4045229 B2 JP4045229 B2 JP 4045229B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coal
solvent
slurry
ashless
boiling point
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2003355421A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005120185A (ja
Inventor
憲幸 奥山
卓夫 重久
哲也 出口
信行 小松
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2003355421A priority Critical patent/JP4045229B2/ja
Publication of JP2005120185A publication Critical patent/JP2005120185A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4045229B2 publication Critical patent/JP4045229B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Solid Fuels And Fuel-Associated Substances (AREA)

Description

本発明は、無灰炭の製造方法に関する技術分野に属し、詳細には、石炭から無灰炭を得る無灰炭の製造方法に関する技術分野に属するものである。
石炭は、火力発電やボイラーの燃料、または、化学品の原料として幅広く利用されており、環境対策の一つとして石炭中の灰分を効率的に除去する技術の開発が強く望まれている。また、ガスタービン燃焼による高効率複合発電システムでは、LNG 等の液体燃料に替わる燃料として、無灰炭を得る技術の確立が重要な課題となっている。
このため、従来より無灰炭の製造方法が種々提案されている。その代表的な無灰炭の製造方法としては、石炭を溶剤と混合してスラリー状混合体とし、これに水素ガスおよび触媒を添加して高温高圧下で液体化または可溶化した後、遠心分離機や濾過装置などを用いて灰分を含む固体を分離する方法が挙げられる(例えば特開平10−298556号公報参照)。更に、石炭と水素供与性溶剤を混合して加熱することにより石炭の一部を液化または可溶化した後、灰分および未転化石炭固形物を除去する方法、あるいは、溶剤としてNMP (N-メチルピロリドン)やピリジンのような強力な極性溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出する方法があげられる(例えば特開2001−26791号公報参照)。
特開平10−298556号公報 特開2001−26791号公報
石炭から灰分を除去して無灰炭を製造するには、溶剤を用いて石炭を液化または可溶化する必要がある。従来の無灰炭の製造方法においては、高価な水素や触媒、あるいは、水素供与性溶剤を用いて高温、高圧で石炭を液化するために、水素の消費量が多く無灰炭の製造コストが高くなるという問題点がある。また、水素を添加せずに強力な極性溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出する方法では、使用した溶剤が石炭と強固な結合を形成するため、溶剤の回収が困難となり、ひいては無灰炭の製造コストが高くなるという問題点がある。
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出し、これを分離して無灰炭を得るに際し、従来のNMP やピリジンのような特殊な強力極性溶剤を用いる場合よりも、容易に溶剤を回収することができて循環使用することができる無灰炭の製造方法を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を行なった結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、無灰炭の製造方法に係わり、特許請求の範囲の請求項1〜4記載の無灰炭の製造方法(第1〜4発明に係る無灰炭の製造方法)であり、それは次のような構成としたものである。
すなわち、請求項1記載の無灰炭の製造方法は、溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記スラリー調製工程で得られたスラリーを不活性ガスの存在下、300 〜420 ℃の温度で加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られたスラリーから溶剤に不溶な石炭成分を分離する分離工程と、前記分離工程で分離された溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーから溶剤を回収して溶剤に不溶な石炭成分を得る工程と、前記分離工程で得られた溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液から溶剤を回収して無灰炭を得る工程と、前記回収された溶剤を前記スラリー調製工程へ循環する工程とを有する無灰炭の製造方法であって、前記スラリー調製工程での溶剤として、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を用いることを特徴とする無灰炭の製造方法である〔第1発明〕。
また、請求項2記載の無灰炭の製造方法は、前記石炭由来の油分の平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 ℃以上300 ℃以下にある請求項1記載の無灰炭の製造方法である〔第2発明〕。
請求項3記載の無灰炭の製造方法は、前記無灰炭を得る工程での溶剤を回収して無灰炭を得る方法として噴霧乾燥法を用い、無灰炭中の有機物と無機物を分離する請求項1または2記載の無灰炭の製造方法である〔第3発明〕。
請求項4記載の無灰炭の製造方法は、前記スラリー調製工程において溶剤と混合される石炭の水分量が15質量%以上であり、この石炭を乾燥することなく溶剤と混合し、得られたスラリーを前記抽出工程の前に脱水処理する請求項1〜3のいずれかに記載の無灰炭の製造方法である〔第4発明〕。
本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、溶剤を用いて石炭から溶剤可溶な成分を抽出し、これを分離して無灰炭を得るに際し、従来のNMP やピリジンのような特殊な強力極性溶剤を用いる場合よりも、容易に溶剤を回収することができて循環使用することができるようになる。
本発明は無灰炭の製造方法に係わり、例えば次のようにして実施する。
沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を溶剤として準備する。この油分(溶剤)と石炭とを混合してスラリー即ちスラリー状混合体を得る〔スラリー調製工程〕。次に、このスラリー状混合体を不活性ガスの存在下、300 〜420 ℃の温度で加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する〔抽出工程〕。これにより得られたスラリーから溶剤に不溶な石炭成分を重力沈降法などにより分離する〔分離工程〕。なお、この分離された溶剤に不溶な石炭成分には溶剤が混ざっており、これは全体としてはスラリー状のもの、即ち、溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーである。一方、上記溶剤に不溶な石炭成分を分離した後の残りは、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液、即ち、この石炭成分が溶剤に溶解した状態の溶液である。従って、上記分離工程により、かかるスラリーと溶液とが得られることになる。
上記分離工程により得られた溶液(溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液)から溶剤を回収して無灰炭を得る〔溶剤回収・無灰炭取得工程〕。即ち、この溶液から溶剤を分離することにより、溶剤に可溶な石炭成分が析出して固体状のものとなって得られる。この固体状のものが無灰炭である。
一方、上記分離工程により得られたスラリー(溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリー)から溶剤を回収して溶剤に不溶な石炭成分を得る。即ち、このスラリーから溶剤と溶剤に不溶な石炭成分(以下、残炭ともいう)とを分離して得る〔溶剤回収・残炭取得工程〕。なお、この残炭には通常は灰分も混ざっている。
上記溶剤回収・無灰炭取得工程および溶剤回収・残炭取得工程で回収された溶剤を前記スラリー調製工程へ循環する〔溶剤循環工程〕。この循環された溶剤はスラリー調製工程での溶剤として用いられる。この溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製する〔スラリー調製工程〕。以降、このスラリー調製工程に続いて、前記と同様の抽出工程、分離工程、溶剤回収・残炭取得工程、溶剤回収・無灰炭取得工程、溶剤循環工程を繰り返して行う。
なお、石炭由来の油分とは、石炭から生まれた油分のことである。この油分としては、例えば、石炭を乾留してコークスを製造する際の副生油の蒸留油であるメチルナフタリン油、ナフタリン油、タール軽油、及び、これらの混合物等を挙げることができる。
沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である油分とは、180 ℃以上200 ℃以下の中の沸点をA、300 ℃以上330 ℃以下の中の沸点をBとした場合、A〜Bの沸点を有する油分のことである。即ち、沸点Aの油分と沸点Bの油分とからなるもの、あるいは、沸点Aの油分と沸点がA〜Bの間の温度である油分(単数もしくは複数)と沸点Bの油分とからなる油分のことである。
本発明において溶剤の選択は重要であり、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分が溶剤として有利に用いられる。即ち、石炭の溶解性を高める上では、石炭と親和性の高い石炭由来の油分(溶剤)が必要となり、この石炭由来の溶剤の沸点が180 ℃より低い場合には、溶剤を回収する工程で揮発による損失が大きくなり、溶剤の回収率が低下し、また、抽出工程での抽出率が低下する。一方、溶剤の沸点が330 ℃を越える場合には、石炭と溶剤との分離が困難となり、溶剤の回収率が低下する。かかる点から、本発明においては、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を溶剤として用いる。
更に、上記沸点範囲の石炭由来の油分の平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 ℃以上300 ℃以下にあることが望ましい。この場合、より確実に(高い水準で)、溶剤を回収する工程での揮発による損失が小さくて溶剤の回収率が高く、また、石炭と溶剤との分離が容易であって溶剤の回収率が高くなり、更には、抽出工程での抽出率が高くなる。なお、平均沸点(Tb50:50%留出温度)は、Tb50(Tb50%留出温度)での沸点のことであり、より詳細には、蒸留等により油分全体の50%を留出させた時点での温度(沸点)のことである。
なお、上記の沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分や、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点であると共に、平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 ℃以上300 ℃以下にある石炭由来の油分は、例えば、石炭を乾留してコークスを製造する際の副生油などを蒸留操作により沸点範囲を調節することによって容易に入手できる。
抽出工程でのスラリーの加熱温度は、300 〜420 ℃であることが必要である。300 ℃より低い温度では、石炭を構成する分子間の結合を弱めるには不充分であり、溶剤に可溶な石炭成分の割合(以下、抽出率ともいう)が低くなる。一方、420 ℃より高い温度では、石炭の熱分解反応が活発になり、生成した熱分解ラジカルの再結合が起こるため抽出率は低下する。一方、300 〜420 ℃では、石炭を構成する分子間の結合が緩み、穏和な熱分解が起こり抽出率は最も高くなる。この際、石炭の穏和な熱分解により、主に平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 〜300 ℃にある芳香族が豊富な成分が生成し、好適に溶剤の一部として利用することができる。
抽出工程での不活性ガスとしては、安価な窒素が適当であるが、特に限定されるものではない。抽出工程での圧力は抽出の際の温度や用いる溶剤の沸点にもよるが、0.8 〜1.2MPaの範囲が適当である。
分離工程での溶剤に不溶な石炭成分を分離する方法としては、特に限定されるものではないが、重力沈降法が好適に用いられ、重力沈降法では一般的には沈降槽が採用される。この場合、沈降槽の上部(以下、オーバーフローともいう)からは溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液が得られ、沈降槽の下部(以下、アンダーフローともいう)からは溶剤に不溶な石炭成分(灰分を含む石炭すなわち残炭)を含むスラリーを得ることができる。
沈降槽のオーバーフローおよびアンダーフローから溶剤を回収する方法は、一般的な蒸留法や蒸発法を用いることができ、回収された溶剤は石炭スラリー調製槽へ循環されて繰り返し使用される。溶剤回収により、アンダーフローからは灰分が濃縮された残炭が得られ、オーバーフローからは実質的に灰分を含まない無灰炭を得ることができる。
従って、従来のNMP やピリジンのような強力な極性溶剤を用いる場合よりも、溶剤を回収して循環使用することが容易である。また、高価な水素や触媒などを用いるものではない。このため、安価なコストで石炭を可溶化して無灰炭を得ることができ、経済性の向上がはかれる。
以上のことからもわかるように、本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出し、これを分離して無灰炭を得るに際し、従来のNMP やピリジンのような特殊な強力極性溶剤を用いる場合よりも、容易に溶剤を回収することができて溶剤の循環使用が可能となる。また、高価な水素や触媒等を用いるものではない。従って、安価なコストで石炭を可溶化して無灰炭を得ることができ、経済性の向上がはかれる。
この詳細を以下説明する。
本発明者らは、石炭と溶剤の相互作用および溶剤への石炭の抽出率、ならびに、溶剤の回収方法等について詳細に鋭意検討した。その結果、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分(溶剤)が石炭との親和性が高く、また、加熱条件下でも安定であること、抽出工程での300 〜420 ℃の加熱温度で抽出率が高くて石炭から多くの成分が抽出されること、抽出工程での300 〜420 ℃では石炭の穏和な熱分解が起こり、この穏和な熱分解により石炭から主に平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 〜300 ℃にある油分が生成すること、石炭から生成した成分により溶剤の一部が補填されること、及び、上記の溶剤の回収が容易であり、また、循環使用しても石炭の抽出率に影響を与えないこと等の多くの新規知見を得た。
そして、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を溶剤として用いることにより、外部からの補充無しに溶剤の循環使用が可能となり、ひいては安価なコストで無灰炭が製造できることを見出した。
以上のような知見に基づいて本発明は完成されたものであり、前述のような構成の無灰炭の製造方法としている。このようにして完成された本発明は、溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記スラリー調製工程で得られたスラリーを不活性ガスの存在下、300 〜420 ℃の温度で加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られたスラリーから溶剤に不溶な石炭成分を分離する分離工程と、前記分離工程で分離された溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーから溶剤を回収して溶剤に不溶な石炭成分を得る工程と、前記分離工程で得られた溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液から溶剤を回収して無灰炭を得る工程と、前記回収された溶剤を前記スラリー調製工程へ循環する工程とを有する無灰炭の製造方法であって、前記スラリー調製工程での溶剤として、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を用いることを特徴とする無灰炭の製造方法である。
故に、本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出し、これを分離して無灰炭を得るに際し、従来のNMP やピリジンのような特殊な強力極性溶剤を用いる場合よりも、容易に溶剤を回収することができて溶剤の循環使用が可能となる。また、高価な水素や触媒等を用いるものではない。従って、安価なコストで石炭を可溶化して無灰炭を得ることができ、経済性の向上がはかれる。
本発明において、溶剤は前述の如き重要な役割を果たすものであり、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を溶剤として用いる必要がある。これは、次の理由による。
一般的に溶剤として用いられるベンゼン、トルエン、キシレンなどの一環芳香族化合物は、石炭の抽出率が小さく、また沸点が低すぎて溶剤回収時の損失が大きくなる。また、N-メチルピロリドン(NMP )やピリジンなどの極性溶剤を用いた場合には、石炭の抽出率は高いが、使用した溶剤が石炭と強力に結合し、溶剤の完全回収が困難になるという問題点がある。アントラセンなどの三環以上の芳香族化合物では、沸点が高すぎるために無灰炭と溶剤の分離が困難となる。更に、石炭の液化方法等で用いられるテトラリンなどの水素供与性溶剤は、石炭を可溶化または液化して高い抽出率を示すが、溶剤中の水素は石炭分子へ移動するために失われ、最終的に溶剤の水素化が必要となる。
これに対して、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分(溶剤)は、石炭との親和性に優れ、また、加熱状態でも安定で石炭の抽出率が高く、蒸留等の方法で容易に回収可能であり、石炭の穏和な熱分解によって溶剤の一部が常に補填され、外部から補充されることなく、溶剤の循環使用を経済的に有利に行うことができる。
前述の沸点範囲(180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点)である石炭由来の油分(溶剤)の平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 ℃以上300 ℃以下にあることが望ましい〔第2発明〕。この場合、前述のように、より確実に(高い水準で)、溶剤を回収する工程での揮発による損失が小さくて溶剤の回収率が高く、また、石炭と溶剤との分離が容易であって溶剤の回収率が高くなり、更には、抽出工程での抽出率が高くなる。
溶剤に対する石炭濃度は、原料となる石炭の種類にもよるが、乾燥炭基準で20〜50質量%の範囲が適当である。石炭濃度は高いほど好ましいが、50質量%より高い場合にはスラリー混合体の粘度が高くなり好ましくない。
抽出工程での不活性ガスとしては、安価な窒素が適当であるが、特に限定されるものではない。抽出工程での圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、0.8 〜1.2MPaが好適に用いられる。圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が飛散しやすく、溶剤の損失を防ぐには溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。
抽出の際の処理時間は、10〜80分程度が適当である。処理温度は、高いほど処理時間は短くて良いが、360 ℃で60分程度の処理が好ましい。
分離工程での溶剤に不溶な石炭成分を分離する方法としては、特に限定されるものではないが、重力沈降法が好適に用いられる。この理由を以下説明する。
溶剤に不溶な石炭成分を分離する方法としては、各種の濾過方法や遠心分離による方法が一般的に知られている。しかしながら、濾過による方法では濾過助剤の頻繁な交換が必要であり、また、遠心分離による方法では未溶解石炭成分による閉塞が起こりやすく、これらの方法を工業的に実施するのは困難である。従って、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法が好適に用いられる。これにより、沈降槽のオーバーフローからは溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を、沈降槽のアンダーフローからは溶剤に不溶な石炭成分(灰分を含む石炭すなわち残炭)を含むスラリーを得ることができる。
沈降槽の温度および圧力は抽出工程と同じであることが好ましく、300 〜420 ℃の温度範囲、0.8 〜2.0MPaの圧力範囲が適当である。また、沈降槽の数を増やすことにより、アンダーフローに同伴した溶剤に可溶な成分を回収することができるが、効率的に回収するには沈降槽を二段に配置するのが適当である。
本発明において分離工程での溶剤に不溶な石炭成分を分離する方法として重力沈降法を用いた場合、沈降槽のオーバーフローからは溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を、沈降槽のアンダーフローからは溶剤に不溶な石炭成分(灰分を含む石炭すなわち残炭)を含むスラリーを連続的に得ることができる。
沈降槽のオーバーフロー流体およびアンダーフロー流体から溶剤を回収する方法としては、特に限定されるものでなく、一般的な蒸留法や蒸発法を用いることができ、回収された溶剤は石炭スラリー調製槽へ循環されて繰り返し使用される。溶剤回収により、アンダーフローからは灰分が濃縮された残炭が得られ、オーバーフローからは実質的に灰分を含まない無灰炭を得ることができる。
沈降槽の温度、圧力を例えば300 〜420 ℃の温度、0.8 〜2.0MPaの圧力とした場合、この沈降槽のオーバーフロー流体およびアンダーフロー流体は、300 〜420 ℃の温度と0.8 〜2.0MPaの圧力を保持している。そこで、本発明者らは、このような流体の持つエネルギーをそのまま利用して溶剤を効率的に回収する方法、及び、無灰炭中の金属成分の存在形態について鋭意検討を行った。その結果、溶剤に可溶な石炭成分を含むオーバーフロー液を直接不活性ガス中に噴霧する(噴霧乾燥処理する)ようにすると、少ないエネルギーで経済的に有利に溶剤を回収することができ、更に、かかる噴霧乾燥処理により有機物と無機物が分離して析出し、オーバーフロー中に少量混入した微細な無機物や溶剤中に溶けた金属成分を簡単な方法で除去できることを見出した。
かかる点より、無灰炭を得る工程での溶剤を回収して無灰炭を得る方法として噴霧乾燥法を用い、無灰炭中の有機物と無機物を分離することが望ましい〔第3発明〕。
噴霧乾燥処理において、有機物と無機物が分離して析出する理由は次のように考えられる。
噴霧処理後に得られた無灰炭試料を走査型二次電子顕微鏡(SEM )で観察すると、粒子径が数μm の球形粒子と1μm 以下の不定形粒子が混在して認められる。このうち、球形の粒子は、前記オーバーフローの溶剤に可溶な石炭成分中に含まれる有機物が、噴霧乾燥処理により球形に成長して得られたものと考えられる。一方、オーバーフロー中に少量混入した微細な無機物や溶剤中に溶けた金属成分は、噴霧乾燥処理においても、元の形態を維持しながら1μm 以下の不定形な超微粒子として存在し、より大きな球形の粒子に成長することはない。このように、噴霧乾燥処理では、溶剤が急速に除去されることにより、溶剤中に溶解した有機成分のみが球形の粒子に成長し、有機物と無機物が分離して析出するため、無灰炭中の有機物と無機物を分離することが容易になる。
無灰炭中の有機物と無機物を分離する方法としては、特に限定されないが、一般的に、粒子径や比重の違いなどを利用して分離する方法が挙げられる。また、無灰炭中に残存する金属としては鉄の量が多いことから、磁気分離等による方法も好適に用いることができる。
このように、噴霧乾燥処理により有機物と無機物が分離して析出し、オーバーフロー中に少量混入した微細な無機物や溶剤中に溶けた金属成分の除去が容易となる。かかる点から、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を加熱した不活性ガス中に噴霧して無灰炭を得ると共に溶剤を回収する方法が望ましい。このような方法によれば、安価なコストで灰分量が200ppm以下の高品質の無灰炭を製造することができる。
本発明に用いられる石炭としては、特に限定されるものでないが、製造された無灰炭を燃焼用に用いる場合には、発熱量が大きい瀝青炭あるいは亜瀝青炭などを用いることができる。また、溶剤と混合してスラリー混合体を形成する場合、石炭を5mm以下に粉砕して用いるのが適当である。
ところで、石炭中には水分が含まれており、石炭を原料とする場合には乾燥して使用するのが一般的である。本発明者らは、石炭の乾燥方法と溶剤への抽出率との関係について鋭意検討した。その結果、15質量%以上の水分を含む石炭を乾燥せずに用いて溶剤とスラリー混合体を形成し、例えば130 〜200 ℃の温度で石炭の脱水を行うことにより、溶剤への抽出率が向上することを見出した。
このように石炭の脱水により抽出率が向上するのは、脱水時に溶剤が存在することにより、石炭細孔内にある水が抜けると同時に溶剤が細孔内に進入するため、乾燥による石炭細孔の収縮が妨げられて抽出率が向上するものと考えられる。
かかる点より、スラリー調製工程において溶剤と混合される石炭の水分量が15質量%以上の場合、この石炭を乾燥することなく溶剤と混合し、得られたスラリーを前記抽出工程の前に脱水処理することが望ましい〔第4発明〕。そうすると、溶剤への抽出率が向上する。
本発明において溶剤の回収と循環使用は重要である。一般に、プロセスから完全に溶剤を回収するのは困難であり、少なからず溶剤の損失が起こるために外部から溶剤の補充が必要となる。しかしながら、この欠点は、本発明に係る沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を溶剤として用いることによって容易に克服される。即ち、抽出工程で石炭からは主に平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 〜300 ℃の範囲にある芳香族が豊富な油分が生成し、これを好適に溶剤の一部として利用することができる。これにより、本発明では外部から溶剤を補充することなく溶剤の循環使用が可能となり、ひいては経済的に有利に無灰炭を製造できる。
本発明に係る無灰炭の製造方法は、より具体的には、例えば図1に示す装置およびプロセスフローにより行われる。その詳細を、図1を用いて以下に説明する。
先ず、石炭スラリー調製槽(1) にて石炭と循環溶剤とを混合し、スラリー調製してスラリーを得る。このスラリーは予熱器(2) で加熱され、所定温度にて抽出槽(3) で所定時間抽出され、固液分離装置(沈降槽)(4) で清澄化された抽出液と灰分などの非抽出成分が分離される。このとき、循環溶剤は、溶剤回収装置(噴霧乾燥機)(5) および(6) から回収された溶剤であり、熱回収器にて凝縮潜熱を与えた後でも溶剤の平均沸点である200 ℃程度の高温状態で石炭と混合される。よって、石炭スラリー調製槽(1) で調製された石炭スラリーは、150 ℃以上の温度となっているため、石炭スラリー調製槽(1) の保持圧力を0.2 〜0.5MPa程度とすることによって、石炭中の水分が蒸発し、系外へ除去水として抜き出される。このように、熱回収器を組入れた場合は、スラリー調製とスラリー脱水の工程は1基の槽内で同時に行うことができる。なお、循環溶剤は溶剤回収装置(噴霧乾燥機)(5) および(6) から回収されて得られるものであり、プロセスの初期段階においては得られないので、プロセスの初期段階においては循環溶剤ではなく、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を用いる。
本発明の実施例および比較例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
〔例1〕溶剤の沸点範囲、溶剤の由来と石炭抽出率、溶剤回収性との関係
石炭に対し溶剤をその4倍量仕込み、0.5MPaの窒素で加圧してオートクレーブ中360 ℃で1時間抽出し、そのままの温度で急速濾過し、そのときの濾残量より石炭の抽出率を求め、濾液から溶剤の沸点留分を蒸留法で回収したときの溶剤の回収率を求めた。また、抽出中の圧力上昇値を測定した。
このとき、石炭としては、表1に示す瀝青炭Dを用いた。
溶剤としては、下記(1) 〜(4) の溶剤のいずれかを用いた。
(1) 本発明に係る溶剤(沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分)の沸点範囲よりも低い沸点範囲にある石炭乾留油-A、
(2) 本発明に係る溶剤の一例に相当する石炭乾留油-B、
(3) 本発明に係る溶剤の沸点範囲にあるが、石炭由来ではなく、石油由来の灯油(市販品)、
(4) 本発明に係る溶剤の沸点範囲よりも高い沸点範囲にある石炭乾留油-C
上記の結果(石炭の抽出率、溶剤の回収率、抽出中の圧力上昇値)を表2に示す。表2からわかるように、溶剤として(2) の溶剤(本発明に係る溶剤の一例に相当する石炭乾留油-B)を用いた場合、石炭の抽出率は68%、溶剤の回収率(溶剤留分の回収率)は100.5 %、抽出中の圧力上昇値(抽出槽圧力増加)は1MPa 程度であった。なお、溶剤の回収率が100 %を超えたのは、石炭抽出温度で石炭から油分が生成したためである。
これに対して、(1) の溶剤(石炭乾留油-A)を用いた場合、石炭の抽出率は45%程度と低い上、抽出中の圧力上昇値が5.5MPa程度に達した。
(4) の溶剤(石炭乾留油-C)を用いた場合、石炭の抽出率は前記(2) の溶剤(石炭乾留油-B)を用いた場合とほぼ同等であるが、溶剤の一部が石炭と強固に結合し、溶剤の回収率が低下したため、溶剤循環は困難となることがわかった。
(3) の溶剤(石油由来の灯油)を用いた場合、その沸点範囲は本発明に係る溶剤の沸点範囲にあるものの、石炭との親和性が低いため、石炭の抽出率は53%であり、不十分な結果となった。
従って、溶剤として(1) の溶剤や(3) 〜(4) の溶剤を用いた場合には、石炭の抽出率、溶剤の回収率、抽出中の圧力上昇値のいずれかもしくはそれ以上の点において具合が悪いが、(2) の溶剤(本発明に係る溶剤の一例に相当する石炭乾留油-B)を用いた場合には、石炭の抽出率が高く、溶剤留分を完全回収でき、溶剤の回収率が高くて溶剤循環が可能であり、更に、抽出中の圧力上昇値が1MPa 程度であって実用的な圧力で操作可能であり、石炭の抽出率、溶剤の回収率、抽出中の圧力上昇値の全ての点において具合が良い。
なお、上記石炭の抽出率は、用いられた石炭の無水無灰炭基準での質量に対する抽出された石炭(溶剤に可溶な石炭成分)の質量の割合〔質量%(重量%)〕である(以下、同様)。上記石炭の無水無灰炭基準での質量とは、石炭を無水無灰炭の状態としたときの石炭の質量、即ち、石炭の質量から石炭に含まれている水分および灰分の質量を差し引いたときの質量のことである(以下、同様)。
上記溶剤の回収率(溶剤留分の回収率)は、用いられた溶剤の質量に対する回収された溶剤(回収までの抽出過程などで石炭から生成した溶剤留分を含む)の質量の割合〔質量%(重量%)〕である(以下、同様)。
〔例2〕単体溶剤の評価
溶剤として、下記(5) 〜(7) の溶剤のいずれかを用い、前記例1の場合と同様の方法により抽出、急速濾過を行い、石炭の抽出率、溶剤の回収率、抽出条件下での油分収率および水素消費量を求めた。その結果を表3に示す。
(5) 本発明に係る溶剤の沸点範囲よりも低い沸点(180 ℃未満)をもつトルエン、
(6) 極性溶剤であるN-メチルピロリジノン(NMP)(但し、本発明に係る溶剤の沸点範囲にある。)
(7) 水素供与性溶剤であるテトラリン
溶剤としてNMP を用いた場合は、NMP が石炭と強固に結びつき、蒸留による溶剤の完全回収ができなかった。トルエンを用いた場合は、石炭の抽出率が低く、また、抽出中の圧力上昇もはなはなだしくて実用的ではないことがわかった。テトラリンを用いた場合は、石炭の抽出率は高いものの、テトラリンの一部がナフタレンに変化しており、テトラリンによる石炭の水素化反応が起き、結果としてテトラリンが減少する。従って、ナフタレンを水素化してテトラリンにもどす必要が生じ、高コストな水素化工程が必要となるため、工業化は困難となる。
〔例3〕抽出温度の影響
表4に示す組成、性状の石炭D,E,Fについて、前記(2) の溶剤(本発明に係る溶剤の一例に相当する石炭乾留油-B)中で1時間抽出し、石炭抽出率を求めた。このとき、抽出温度をパラメータとして変化させ、抽出温度と石炭抽出率の関係を求めた。この結果を図2に示す。
石炭は200 ℃程度の加熱で溶け出し、抽出温度が高くなるに伴い抽出率が高くなるが、ある温度以上になると逆に減少する。これは、石炭の熱分解が激しくなり、熱分解した分子同士の重合反応等で、もとの分子よりも巨大化するためであり、むやみに加熱すれば良いということではなく、石炭毎に最適温度が存在する。
多くの石炭を用いて試験した結果として、加熱処理温度は300 〜420 ℃程度が好ましいことがわかった。
〔例4〕溶剤循環の影響
石炭乾留油-Bを出発溶剤とし、石炭Eの抽出で溶剤を回収しながら循環使用したときの循環回数と、石炭抽出率の関係を図3に示す。図示されるように、循環回数の増加に従い抽出率が増加する傾向が見られる。これは、抽出時に生成する石炭E自身を由来とする溶剤留分が初期溶剤に加わりながらその濃度が高まっていき、石炭Eとの親和性が向上する効果によるものと考えられる。循環を繰り返した末、最終的には全ての溶剤が石炭E由来の溶剤留分で置き換わるので、初期溶剤として石炭乾留油-Aや石炭乾留油-Cなどを用いてもプロセス上最適な溶剤性状に変化し、高い抽出率が維持される。
〔例5〕噴霧乾燥法による溶剤回収と生成した無灰炭の形状および無灰炭中の有機物と無機物の分離
前記例3の抽出工程で得られた石炭Eの抽出(360 ℃、1MPa)スラリーを重力沈降法で抽出液と非抽出成分とに分け、この抽出液を加熱した窒素気流中で噴霧した。即ち、噴霧乾燥法による溶剤回収を行った。その結果、溶剤は完全に蒸発し回収することができた。この溶剤の回収と共に粉末状の抽出炭(無灰炭)が得られる。この抽出炭には0.05%の灰分が残存していた。
上記噴霧乾燥法で得られた粉末状の抽出炭を顕微鏡で観察したところ、数ミクロンから数十ミクロンの球形粒子が見られた。このような球形粒子に混じり、更に微細で不定形な塵状の物質も存在することがわかった。図4に上記抽出炭の顕微鏡観察の結果を示す。図4の(A) は球形粒子を示すものであり、図4の(B) は塵状の物質を示すものである。
上記粉末状の抽出炭を篩を用いて球形粒子と塵状粒子に分け、それぞれをSEM で分析した。球形粒子についてのSEM 像とEDX による構成元素の強度を図5に示す。図5の(A) はSEM 像を示すものであり、図5の(B) は構成元素の強度を示すものである。塵状粒子についてのSEM 像とEDX による構成元素の強度を図6に示す。図6の(A) はSEM 像を示すものであり、図6の(B) は構成元素の強度を示すものである。これらより、球形粒子からは炭素、酸素、硫黄といった石炭有機成分の構成元素以外の元素は検出されていないが、塵状の物質は主に鉄などの金属元素から成っていることがわかった。
これらの結果から、噴霧乾燥法により、石炭抽出液中の溶解有機成分と石炭抽出液中に無機金属成分が分かれて生成されることがわかった。抽出液中の残存灰分から完全に分離された球状の抽出炭と、無機成分が濃縮された塵状物質は、分級法や浮選法あるいは磁気分離法で分けることができ、より精製された完全無灰炭を製造することが可能となる。
〔例6〕スラリーの脱水の効果
表5に示す組成、性状の石炭G,H,Iを気流乾燥した後、前記(2) の溶剤(本発明に係る溶剤の一例に相当する石炭乾留油-B)と混合してスラリーを得、表6に示す抽出温度に加熱して抽出し、抽出率を求めた。また、上記石炭G,H,Iをそのまま(乾燥することなく)前記(2) の溶剤と混合してスラリーを得、このスラリーを150 ℃,圧力0.5MPaに保持して蒸発した水分を除去(脱水処理)した後、上記と同様の抽出温度に加熱して抽出し、抽出率を求めた。
この結果(抽出率)を表6に示す。3種類の石炭(石炭G,H,I)とも、後者のスラリーを脱水処理した場合は、前者の石炭を気流乾燥した場合に比べて、抽出率が高い。即ち、スラリーの脱水処理による抽出率の向上の効果が認められた。特に、水分濃度15%を超える石炭Gおよび石炭Hの場合に、スラリーの脱水処理による抽出率の向上の効果が大きい。
このようにスラリーを脱水処理した場合の方が抽出率が高いのは、次のような理由によるものと考えられる。即ち、石炭を気流乾燥した場合は、石炭の細孔内部に存在する水分が蒸発した際に石炭の細孔が収縮し、溶剤が石炭細孔内部に浸透できなくなるのに対し、スラリーを脱水処理した場合は、脱水時に溶剤が存在するため、石炭細孔内の水分が抜けると同時に溶剤が細孔内に進入して石炭細孔内部への溶剤のスムースな浸透が成されるためであると考えられる。
本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、溶剤を用いて石炭から溶剤可溶な成分を抽出し、これを分離して無灰炭を得るに際し、従来のNMP やピリジンのような特殊な強力極性溶剤を用いる場合よりも、容易に溶剤を回収することができて溶剤の循環使用が可能となり、また、高価な水素や触媒等を用いるものではなく、このため、安価なコストで石炭を可溶化して無灰炭を得ることができ、経済性の向上がはかれる。従って、石炭から無灰炭を得る際の方法として好適に用いることができる。特には、石炭を火力発電やボイラーの燃料や化学品の原料として利用する際に環境対策の一環として必要な石炭中の灰分を除去する方法や、ガスタービン燃焼による高効率複合発電システムでの液体燃料に替わる燃料として用いる際に必要な無灰炭を得る方法として好適に用いることができる。
本発明に係る無灰炭の製造方法の一例の概要を示す模式図である。 本発明の実施例に係る石炭抽出温度と石炭抽出率の関係を示す図である。 本発明の実施例に係る溶剤の循環回数と石炭抽出率との関係を示す図である。 本発明の実施例に係る噴霧乾燥法で得られた粉末状の抽出炭を示す図であって、図4の(A) は球形粒子状のもの、図4の(B) は塵状のものを示す図である。 本発明の実施例に係る噴霧乾燥法で得られた粉末状の抽出炭の中の球形粒子状のものについてのSEM 像とEDX による構成元素の強度を示す図であって、図5の(A) はSEM 像、図5の(B) は構成元素の強度を示す図である。 本発明の実施例に係る噴霧乾燥法で得られた粉末状の抽出炭の中の塵状のものについてのSEM 像とEDX による構成元素の強度を示す図であって、図6の(A) はSEM 像、図6の(B) は構成元素の強度を示す図である。
符号の説明
(1) --石炭スラリー調製槽、(2) --予熱器、(3) --抽出槽、(4) --固液分離装置(沈降槽)、(5) --溶剤回収装置(噴霧乾燥機)、(6) --溶剤回収装置(噴霧乾燥機)。

Claims (4)

  1. 溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記スラリー調製工程で得られたスラリーを不活性ガスの存在下、300 〜420 ℃の温度で加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られたスラリーから溶剤に不溶な石炭成分を分離する分離工程と、前記分離工程で分離された溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーから溶剤を回収して溶剤に不溶な石炭成分を得る工程と、前記分離工程で得られた溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液から溶剤を回収して無灰炭を得る工程と、前記回収された溶剤を前記スラリー調製工程へ循環する工程とを有する無灰炭の製造方法であって、
    前記スラリー調製工程での溶剤として、沸点範囲が180 ℃以上200 ℃以下から選択される沸点〜300 ℃以上330 ℃以下から選択される沸点である石炭由来の油分を用いることを特徴とする無灰炭の製造方法。
  2. 前記石炭由来の油分の平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200 ℃以上300 ℃以下にある請求項1記載の無灰炭の製造方法。
  3. 前記無灰炭を得る工程での溶剤を回収して無灰炭を得る方法として噴霧乾燥法を用い、無灰炭中の有機物と無機物を分離する請求項1または2記載の無灰炭の製造方法。
  4. 前記スラリー調製工程において溶剤と混合される石炭の水分量が15質量%以上であり、この石炭を乾燥することなく溶剤と混合し、得られたスラリーを前記抽出工程の前に脱水処理する請求項1〜3のいずれかに記載の無灰炭の製造方法。
JP2003355421A 2003-10-15 2003-10-15 無灰炭の製造方法 Expired - Lifetime JP4045229B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003355421A JP4045229B2 (ja) 2003-10-15 2003-10-15 無灰炭の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003355421A JP4045229B2 (ja) 2003-10-15 2003-10-15 無灰炭の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005120185A JP2005120185A (ja) 2005-05-12
JP4045229B2 true JP4045229B2 (ja) 2008-02-13

Family

ID=34613022

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003355421A Expired - Lifetime JP4045229B2 (ja) 2003-10-15 2003-10-15 無灰炭の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4045229B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014007184A1 (ja) 2012-07-06 2014-01-09 株式会社神戸製鋼所 コークスおよびその製造方法
CN111140842A (zh) * 2018-11-06 2020-05-12 中国科学院工程热物理研究所 返混自预热燃烧的锅炉系统、煤粉自预热燃烧方法

Families Citing this family (37)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4537268B2 (ja) * 2005-06-22 2010-09-01 株式会社神戸製鋼所 重力沈降槽
JP4667215B2 (ja) * 2005-11-18 2011-04-06 国立大学法人群馬大学 電気二重層キャパシタ用炭素材と製造方法
JP4950527B2 (ja) * 2006-03-15 2012-06-13 株式会社神戸製鋼所 コークスの製造方法、及び、銑鉄の製造方法
JP4061351B1 (ja) * 2006-10-12 2008-03-19 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP4971955B2 (ja) * 2007-11-22 2012-07-11 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP4939466B2 (ja) * 2008-03-10 2012-05-23 株式会社神戸製鋼所 固液分離装置、固液分離方法および無灰炭の製造方法
JP5259216B2 (ja) * 2008-03-10 2013-08-07 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP5314299B2 (ja) * 2008-03-12 2013-10-16 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP5426832B2 (ja) * 2008-03-19 2014-02-26 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP2009286959A (ja) * 2008-05-30 2009-12-10 Kobe Steel Ltd 固形燃料の製造方法および製造装置
WO2010029563A1 (en) * 2008-09-12 2010-03-18 Tata Steel Limited Development of a techno-economic process for organo refining of coal
JP4708463B2 (ja) * 2008-09-29 2011-06-22 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP5042249B2 (ja) * 2009-01-29 2012-10-03 株式会社神戸製鋼所 改質石炭
WO2010134651A1 (ko) * 2009-05-19 2010-11-25 한국에너지기술연구원 용매의 열적추출에 의한 청정석탄의 제조 방법 및 그 장치
KR20110007400A (ko) * 2009-07-16 2011-01-24 한국에너지기술연구원 석탄의 용매추출공정용 황화합물 흡착제, 및 이를 이용한 황화합물 흡착방법과 석탄정제방법
JP5521499B2 (ja) * 2009-11-06 2014-06-11 新日鐵住金株式会社 石炭の改質方法、コークス及び焼結鉱の製造方法並びに高炉の操業方法
JP5530292B2 (ja) * 2010-07-28 2014-06-25 株式会社神戸製鋼所 製鉄用コークスの製造方法
JP2013006907A (ja) * 2011-06-22 2013-01-10 Kobe Steel Ltd 無灰炭製造方法
JP2013136691A (ja) * 2011-12-28 2013-07-11 Kobe Steel Ltd 無灰炭の製造方法
WO2013099665A1 (ja) * 2011-12-28 2013-07-04 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP2013136692A (ja) * 2011-12-28 2013-07-11 Kobe Steel Ltd 無灰炭の製造方法
JP5722208B2 (ja) * 2011-12-28 2015-05-20 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
US9334457B2 (en) 2011-12-28 2016-05-10 Kobe Steel, Ltd. Ash-free coal production method
JP5839567B2 (ja) * 2012-02-01 2016-01-06 株式会社神戸製鋼所 溶剤分離方法
JP5998373B2 (ja) * 2013-02-13 2016-09-28 株式会社神戸製鋼所 副生炭の製造方法
JP6035559B2 (ja) * 2013-03-28 2016-11-30 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造装置および無灰炭の製造方法
JP6062320B2 (ja) * 2013-06-03 2017-01-18 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP5990505B2 (ja) * 2013-12-25 2016-09-14 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP5982666B2 (ja) * 2013-12-25 2016-08-31 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP6203690B2 (ja) * 2014-08-28 2017-09-27 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造装置および無灰炭の製造方法
JP6203692B2 (ja) * 2014-09-09 2017-09-27 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置
JP6203698B2 (ja) * 2014-09-30 2017-09-27 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP2017125118A (ja) 2016-01-13 2017-07-20 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法
JP2018024732A (ja) 2016-08-08 2018-02-15 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置
JP2018140883A (ja) * 2017-02-24 2018-09-13 株式会社神戸製鋼所 多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子
JP6827884B2 (ja) 2017-05-24 2021-02-10 株式会社神戸製鋼所 無灰炭の製造方法及び無灰炭の製造装置
CN107510955B (zh) * 2017-08-31 2019-05-14 华中科技大学 一种低阶煤热溶剂萃取提质方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014007184A1 (ja) 2012-07-06 2014-01-09 株式会社神戸製鋼所 コークスおよびその製造方法
CN111140842A (zh) * 2018-11-06 2020-05-12 中国科学院工程热物理研究所 返混自预热燃烧的锅炉系统、煤粉自预热燃烧方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005120185A (ja) 2005-05-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4045229B2 (ja) 無灰炭の製造方法
JP5334433B2 (ja) 無灰炭の製造方法
CN103998585B (zh) 无灰煤的制造方法
CN102165049B (zh) 无灰炭的制造方法
AU2010278595B2 (en) Method for extracting lignite wax
US20070062103A1 (en) Method and apparatus for manufacturing solid fuel from raw material coal
CN108342212B (zh) 处理含渣煤焦油的方法和系统
CN109294285A (zh) 一种导电用炭黑生产方法
JP5255303B2 (ja) 無灰炭の製造方法
AU2011374348B2 (en) Method for manufacturing clean fuel, and reactor for extracting and separating organic components therefor
JP4971955B2 (ja) 無灰炭の製造方法
JP5639402B2 (ja) 無灰炭の製造方法
WO2013114920A1 (ja) 溶剤分離方法
JP5328180B2 (ja) 無灰炭の製造方法
CN103748196A (zh) 用于高灰分煤的预处理以生产根据本发明的洗精煤的方法流程图
KR101016873B1 (ko) 석탄용 코팅제, 개질 석탄, 석탄용 코팅제의 제조 방법 및개질 석탄의 제조 방법
JP3920899B1 (ja) 改質石炭の製造方法
CN105073959A (zh) 无灰煤的制造方法
KR101355013B1 (ko) 저급 탄소원의 개질장치 및 그를 이용한 개질방법
JP5722208B2 (ja) 無灰炭の製造方法
WO2012176896A1 (ja) 無灰炭製造方法
JP6062320B2 (ja) 無灰炭の製造方法
JP5998373B2 (ja) 副生炭の製造方法
KR102078216B1 (ko) 무회탄의 제조 방법
JP5118388B2 (ja) カーボンブラックの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050922

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20071102

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20071113

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20071119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4045229

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101122

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111122

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121122

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131122

Year of fee payment: 6

EXPY Cancellation because of completion of term