JP4971955B2 - 無灰炭の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、石炭から無灰炭を製造する無灰炭の製造方法に関する。
石炭は、火力発電やボイラーの燃料、または、化学品の原料として幅広く利用されている。この石炭中には、灰分が含まれているが、近年においては、環境対策の一つとして、石炭中の灰分を効率的に除去する技術の開発が強く望まれている。また、ガスタービン燃焼による高効率複合発電システムでは、LNG(Liquefied Natural Gas)等の液体燃料に替わる燃料として、無灰炭を使用する試みがなされており、この無灰炭を得る技術の確立が重要な課題となっている。
このため、従来から、無灰炭の製造方法が種々提案されている。無灰炭の製造においては、石炭と溶剤を混合し、これを加熱して液化または可溶化した後、溶剤に可溶な石炭成分を含む液部と、灰分である溶剤に不溶な石炭成分(未溶解成分)を含む非液部とを分離(固液分離)する方法が挙げられる。
このような石炭を液化する方法として、例えば、特許文献1には、石炭を溶剤と混合した後、触媒を添加してスラリー状混合体とし、これに水素ガスを添加して高温高圧下で液体化または可溶化する石炭の液化方法が開示されている。また、特許文献2には、溶剤としてNMP(N−メチルピロリドン)やピリジンのような強力な極性溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出する無灰炭の製造方法が開示されている。さらに、石炭と水素供与性溶剤を混合して加熱することにより石炭の一部を液化または可溶化した後、灰分および未転化石炭固形物を除去する方法等も行なわれている。
特開平10−298556号公報 特開2001−26791号公報
しかしながら、従来の無灰炭を製造する方法では、以下に示す問題があった。
無灰炭の製造方法においては、石炭成分を抽出する工程(抽出工程)で得られた石炭抽出スラリーから、未溶解成分を分離する。この分離工程においては、遠心分離機や濾過装置等が用いられているが、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法が多く用いられるようになってきている。
しかし、抽出工程で得られた石炭抽出スラリーから、重力沈降法により未溶解成分を分離する工程において、未溶解成分の沈降速度は、対象となる石炭によっては、著しく遅く、重力沈降槽上部における清澄化速度が遅い場合がある。このような場合、液部(沈降槽上部清澄層)から灰分を除去する性能(脱灰性能)が劣ることとなり、固液分離に時間がかかることとなる。このような問題を解決するには、より体積の大きな沈降槽を用いて、一度に多量のスラリーを収容することで固形分の沈降時間を十分長くし、沈降槽上部清澄層中の固形分濃度を下げる方法が考えられる。しかし、このような大型の沈降槽の製作は、技術的に困難であるという問題や、設備コストが増加するという問題があった。
また、溶剤として水素供与性溶剤を用いた場合、非水素供与性溶剤に比べ、溶剤に抽出される石炭成分の割合(抽出率)が劣るため、無灰炭の製造効率の向上を図りにくいという問題があった。さらに、NMPのような強力な極性溶剤を用いて石炭から溶剤可溶成分を抽出する場合は、溶剤が石炭と強固な結合を形成するため、溶剤の回収が容易ではなく、結果として、無灰炭の製造コストが高くなるという問題もあった。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、灰分等の溶剤に不溶な成分の沈降速度が遅い石炭においても、高効率かつ、安価であると共に、脱灰性能を向上させることができる無灰炭の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、無灰炭の製造方法に関し鋭意研究を重ねた結果、石炭から誘導される2環芳香族を中心とする非水素供与性溶剤と、脂肪族化合物とを混合した溶剤を用いることにより、溶剤に不溶な成分(未溶解成分)の沈降速度を速め、脱灰性能(固液分離性能)を向上させることができることを見出し、本発明に到達するに至った。
すなわち、本発明に係る無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程と、抽出工程と、分離工程と、改質炭取得工程と、を含み、スラリー調整工程で用いる溶剤が、石炭から誘導される2環芳香族を中心とする沸点範囲180〜300℃の非水素供与性溶剤と、この非水素供与性溶剤と同沸点範囲にある脂肪族化合物とからなり、前記非水素供与性溶剤に前記脂肪族化合物を、前記溶剤全体に対し、5〜10質量%の割合で混合したものであることを特徴とする。
このような製造方法によれば、スラリー調製工程において、溶剤と、無灰炭の原料である石炭とが混合され、スラリーが調製される。また、抽出工程において、スラリー調製工程で得られたスラリーを所定の温度で熱処理することで、溶剤に可溶な石炭成分が、溶剤中に高効率で抽出される。さらに、分離工程において、抽出工程で得られたスラリーが、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液である液部と、溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーである非液部とに分離される。そして、改質炭取得工程において、分離工程で分離された液部から溶剤が分離され、無灰炭が製造される。また、溶剤として、非水素供与性溶剤に、脂肪族化合物を所定量混合したものを使用することで、未溶解成分の沈殿速度が高まり、固液分離速度が向上する。
本発明に係る無灰炭の製造方法は、前記改質炭取得工程において、無灰炭を得ることに加え、前記分離工程で分離された非液部から前記溶剤を分離して改質炭である副生炭を得ることを特徴とする。
このような製造方法によれば、改質炭取得工程において、無灰炭が製造されることに加え、分離工程で分離された非液部から溶剤が分離され、副生炭が製造される。
本発明に係る無灰炭の製造方法は、前記改質炭取得工程で、前記液部から分離された前記溶剤および/または前記非液部から分離された前記溶剤を、前記スラリー調製工程へ循環して使用することを特徴とする。
このような製造方法によれば、分離・回収された溶剤が循環使用されることで、経済性が向上する。
本発明に係る無灰炭の製造方法は、前記石炭が劣質炭であることを特徴とする。
このような製造方法によれば、無灰炭の原料である石炭として、安価な劣質炭を使用することで、無灰炭を安価に製造することができる。
本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、溶剤に不溶な成分の沈降速度が遅い石炭においても、溶剤に抽出される石炭成分の割合(抽出率)を低下させることなく、脱灰性能を向上させることができる。そのため、固液分離の性能が向上し、固液分離の速度が向上する。また、本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、無灰炭に加え、副生炭も高効率に製造することができる。さらに、分離・回収された溶剤を循環使用することや、石炭として劣質炭を使用することで、経済性の向上を図ることができる。
次に、図面を参照して本発明に係る無灰炭の製造方法ついて詳細に説明する。なお、参照する図面において、図1は、無灰炭の製造方法の工程を説明するフローチャート、図2は、重力沈降法を行うための固液分離装置を示す模式図である。
≪無灰炭の製造方法≫
図1に示すように、無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程(S1)と、抽出工程(S2)と、分離工程(S3)と、改質炭取得工程(S4)と、を含むものである。
以下、各工程について説明する。
<スラリー調製工程(S1)>
スラリー調製工程(S1)は、溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製する工程である。
石炭を溶解する溶剤としては、一般的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の1環芳香族化合物や、N−メチルピロリドン(NMP)やピリジン等の極性溶剤等が用いられるが、本発明においては、溶剤は、石炭から誘導される2環芳香族を中心とする沸点範囲180〜300℃の非水素供与性溶剤と、この非水素供与性溶剤と同沸点範囲にある脂肪族化合物とからなり、前記非水素供与性溶剤に前記脂肪族化合物を、石炭を溶解する溶剤全体に対し、5〜10質量%の割合で混合したものを用いる。
非水素供与性溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した、2環芳香族を主とする溶剤である石炭誘導体である。この非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、石炭との親和性に優れているため、溶剤に抽出される石炭成分の割合(以下、「抽出率」ともいう)が高く、また、蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。そして、この回収した溶剤は、経済性の向上を図るため、循環して繰り返し使用することもできる(溶剤循環工程)。非水素供与性溶剤の主たる成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他脂肪族側鎖をもつナフタレン類、また、これにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖をもつアルキルベンゼンが含まれる。
非水素供与性溶剤は、沸点範囲が180〜300℃のものを用いる。沸点が180℃未満では、抽出工程(S2)、分離工程(S3)での必要圧力が高くなり、また、溶剤を回収する工程で揮発による損失が大きくなり、溶剤の回収率が低下する。さらに、抽出工程(S2)での抽出率が低下する。一方、300℃を超えると、後記する液部および非液部からの溶剤の分離が困難となり、溶剤の回収率が低下する。
非水素供与性溶剤を使用して加熱抽出することにより、石炭の抽出率を高めることができる。また、極性溶剤とは違い、容易に溶剤を分離・回収することができ、また、溶剤を循環使用しやすい。さらに、高価な水素や触媒等を用いる必要がないため、安価なコストで石炭を可溶化して無灰炭を得ることができ、経済性の向上を図ることができる。
ここで、非水素供与性溶剤には、脂肪族化合物を混合する。脂肪族化合物を非水素供与性溶剤と混合することで、未溶解成分の沈殿速度が高まり、固液分離速度が向上する。
脂肪族化合物としては、例えば、デカン(C1022)、ドデカン(C1224)等、炭素数10〜14程度のパラフィン炭化水素が挙げられるが、工業的には、石油系の灯油留分がこれに代替できる。
ここで、脂肪族化合物の添加量としては、石炭を溶解する溶剤全体に対し、5〜10質量%とする。添加量が5質量%未満では、未溶解成分の凝集を進行させる効果が弱く、固液分離速度の向上を図ることができない。一方、脂肪族化合物は、2環芳香族化合物に比べ、石炭の溶解力が低いので、多量に混ぜると石炭の抽出率が低下するため、抽出率の低下をきたさない程度である10質量%以下の添加とする。
また、溶剤は、蒸留法等により蒸発させて分離・回収し、必要に応じて循環使用するため、混合する脂肪族化合物の沸点範囲も、主溶剤である2環芳香族溶剤の沸点範囲(180〜300℃)に収まることが重要である。
無灰炭の原料とする石炭(以下、「原料石炭」ともいう)としては、劣質炭を使用することが好ましい。安価な劣質炭を使用することにより、無灰炭をさらに安価に製造することができるため、さらに経済性の向上を図ることができる。しかし、用いる石炭は、劣質炭に限るものではなく、必要に応じて、粘結炭を使用しても良い。
なお、ここでいう劣質炭とは、非微粘結炭、一般炭、低品位炭(褐炭、亜瀝青炭等)等の石炭をいう。また、低品位炭とは、20質量%以上の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭のことである。このような低品位炭には、例えば、褐炭、亜炭、亜瀝青炭等がある。例えば、褐炭には、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等があり、亜瀝青炭には、西バンコ炭、ビヌンガン炭、サマランガウ炭等がある。低品位炭は上記例示のものに限定されず、多量の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭は、いずれも本発明のいう低品位炭に含まれる。
溶剤に対する石炭濃度は、原料石炭の種類にもよるが、乾燥炭基準で10〜50質量%の範囲が好ましく、20〜35質量%の範囲がより好ましい。溶剤に対する石炭濃度が10質量%未満では、溶剤の量に対し、溶剤に抽出する石炭成分の割合が少なくなり、経済的ではない。一方、石炭濃度は高いほど好ましいが、50質量%を超えると、調製したスラリーの粘度が高くなり、スラリーの移動や分離工程(S3)での液部と非液部との分離が困難となりやすい。
<抽出工程(S2)>
抽出工程(S2)は、前記スラリー調製工程(S1)で得られたスラリーを、300〜420℃の温度で加熱して、溶剤に可溶な石炭成分を抽出する工程である。
抽出工程(S2)でのスラリーの加熱温度は、300〜420℃の範囲とする。加熱温度をこの範囲とすることにより、石炭を構成する分子間の結合が緩み、緩和な熱分解が起こり、抽出率が最も高くなる。加熱温度が300℃未満では、石炭を構成する分子間の結合を弱めるのに不十分であり、抽出率が低下する。一方、420℃を超えると、石炭の熱分解反応が非常に活発になり、生成した熱分解ラジカルの再結合が起こるため、抽出率が低下する。
加熱時間(抽出時間)は、予熱器を通過して、所定の抽出温度に到達後、5〜60分が好ましい。加熱時間が5分未満では、石炭成分の抽出が不十分となりやすく、一方、60分を超えると、それ以上抽出が進行しないため、経済的ではない。また、分離工程(S3)へ移行する前に、この加熱したスラリーを冷却処理により、石炭から溶出した溶質が再析出しない程度の温度、例えば200〜360℃程度まで冷却してもよい。抽出工程(S2)後のスラリーは、300〜420℃の高温にあるため、このスラリーを冷却することで、その後の取り扱いが容易となり、また、過度な熱分解を避けることができる。その他、沈降槽の圧力を下げたり、バルブ等の仕様の水準を下げたりすることができる。
なお、この抽出工程(S2)における抽出の際、石炭の熱分解により、主に平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200〜300℃にある芳香族に豊富な成分が生成し、好適に溶剤の一部として利用することができる。
抽出工程(S2)は、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。
抽出工程(S2)で酸素に接触すると、発火する恐れがあるため危険であり、また、水素を用いた場合には、コストが高くなるためである。
抽出工程(S2)で用いる不活性ガスとしては、安価な窒素を用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、抽出工程(S2)での圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
<分離工程(S3)>
分離工程(S3)は、前記抽出工程(S2)で得られたスラリーを、液部と非液部とに分離する工程である。
ここで、液部とは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液をいい、非液部とは、溶剤に不溶な石炭成分(灰分を含む石炭すなわち灰炭)を含むスラリーをいう。
分離工程(S3)でスラリーを液部と非液部とに分離する方法としては、重力沈降法を用いることが好ましい。
スラリーを液部と非液部とに分離する方法としては、各種の濾過方法や遠心分離による方法が一般的に知られている。しかしながら、濾過による方法ではフィルタの頻繁な交換が必要であり、また、遠心分離による方法では未溶解石炭成分による閉塞が起こりやすく、これらの方法を工業的に実施するのは困難である。従って、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法を用いることが好ましい。これにより、重力沈降槽の上部からは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液である液部(以下、「上澄み液」ともいう)を、重力沈降槽の下部からは溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーである非液部(以下、「固形分濃縮液」ともいう)を得ることができる。
なお、前記したように、石炭を混合する溶剤として、非水素供与性溶剤に、脂肪族化合物を所定量混合したものを使用することで、未溶解成分の沈殿速度が高まり、固液分離速度が向上する。そのため、重力沈降槽上部における上澄み液の清澄化速度が向上する。
以下、重力沈降法について、図1、図2を参照して説明する。
図2に示すように、重力沈降法では、固液分離装置100において、まず、石炭スラリー調製槽1で、無灰炭の原料である粉体の石炭と溶剤とを混合し、スラリーを調製する(スラリー調製工程(S1))。次に、ポンプ2によって、石炭スラリー調製槽1からスラリーを予熱器3に所定量供給し、スラリーを300〜420℃まで加温する。そして、加温したスラリーを抽出槽4に所定量供給し、攪拌機10で攪拌しながら300〜420℃で所定時間加熱した後、必要に応じて、冷却器7により、所定温度に冷却する(抽出工程(S2))。なお、スラリーを冷却するために、抽出槽4に冷却機構を設けておいてもよい。そして、この抽出処理を行ったスラリーを、重力沈降槽5へ供給して、スラリーを上澄み液と固形分濃縮液とに分離し(分離工程(S3))、重力沈降槽5の下部に沈降した固形分濃縮液を固形分濃縮液受器6に排出するとともに、上部の上澄み液をフィルターユニット8へ所定量排出する。
ここで、重力沈降槽5内は、原料の石炭から溶出した溶質の再析出を防止するため、スラリーを加熱した後に冷却した温度に維持することが好ましく、また、圧力は、1.0〜2.0MPaの圧力範囲とすることが好ましい。
また、重力沈降槽5内において、冷却した温度で維持する時間は、スラリーを上澄み液と固形分濃縮液とに分離するのに必要な時間であり、一般的に60〜120分であるが、特に限定されるものではない。なお、前記のとおり、本発明では、非水素供与性溶剤に、脂肪族化合物を所定量混合した溶剤を用いることで、この時間の短縮を図ることができる。
なお、重力沈降槽5の数を増やすことにより、固形分濃縮液に同伴した溶剤に可溶な成分を回収することができるが、効率的に回収するには、重力沈降槽5を二段に配置するのが適当である。
そして、重力沈降槽5内から排出された上澄み液は、必要に応じて、フィルターユニット8によってろ過され、上澄み液受器9に回収される。
そして、以下に説明するように、この液部および非液部から蒸留法等を用いて溶剤を分離・回収し、液部からは改質炭である灰分のない無灰炭を得る(改質炭取得工程(S4))。また、必要に応じて、非液部からは、改質炭である灰分の濃縮された副生炭を得ることができる。そして、固形分濃縮液受器6に排出された固形分濃縮液から分離・回収された溶剤および上澄み液受器9に回収された上澄み液から分離・回収された溶剤は、必要に応じて、石炭スラリー調製槽1へ循環する(便宜上、図2の点線部分で示す)。
<改質炭取得工程(S4)>
改質炭取得工程(S4)は、前記分離工程(S3)で分離された液部から溶剤を分離して改質炭である無灰炭を得る工程である(無灰炭取得工程)。
上澄み液(液部)から溶剤を分離する方法は、一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)等を用いることができ、分離して回収された溶剤はスラリー調製工程(S1)へ循環して繰り返し使用することができる(溶剤循環工程)。溶剤の分離・回収により、上澄み液からは、実質的に灰分を含まない無灰炭を得ることができる。
この無灰炭は、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、また原料石炭よりも高い発熱量を示す。従って、この無灰炭は、高効率複合発電システムの燃料として使用することができる。また、副生炭と混合することによって、配合炭として使用することもできる。
なお、必要に応じて、前記改質炭取得工程(S4)において、無灰炭を得ることに加え、前記分離工程(S3)で分離された非液部から溶剤を分離して改質炭である副生炭を製造してもよい(副生炭取得工程)。
固形分濃縮液(非液部)から溶剤を分離する方法は、前記した無灰炭取得工程と同様に、一般的な蒸留法や蒸発法を用いることができ、分離して回収された溶剤は、スラリー調製工程(S1)へ循環して繰り返し使用することができる(溶剤循環工程)。溶剤の分離・回収により、固形分濃縮液からは灰分が濃縮された副生炭を得ることができる。
この副生炭は、含酸素官能基が脱離されており、また、灰分が含まれるものの水分が皆無であり、発熱量も十分に有している。従って、この副生炭は、通常の非微粘結炭と同様に、高効率複合発電システムの燃料の配合炭の一部として使用することができ、また、その他、各種の燃料用として利用することも可能である。
なお、液部より灰分のない無灰炭のみを製造し、非液部からは溶剤のみ回収し、灰分の濃縮された副生炭は、回収せずに廃棄しても良い。
本発明は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、原料石炭を粉砕する石炭粉砕工程や、ごみ等の不要物を除去する除去工程や、得られた無灰炭を乾燥させる乾燥工程等、他の工程を含めてもよい。
次に、本発明に係る無灰炭の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[第1実施例]
第1実施例では、溶剤として、脂肪族化合物を含まないものを使用した場合の3種の石炭における抽出率および脱灰率について調べた(実験例1)。
表1に示す工業分析値および元素分析値である石炭A、B、Cを原料石炭とし、それぞれの原料石炭50gに対し、4倍量(200g)の溶剤(1−メチルナフタレン(新日鉄化学社製))を混合してスラリーを調製した。なお、この溶剤の沸点は、245℃程度である。このスラリーを1.2MPaの窒素で加圧して、内容積0.3Lのオートクレーブ中380℃、1時間の条件で加熱・抽出した。このスラリーを同じ温度(380℃)の状態で、ろ過処理し、溶剤への抽出率を調べた。
なお、石炭の抽出率は、ろ過で分離した固形分副生炭の量から求めた。
具体的には、(原料石炭−副生炭)/原料石炭×100の式により求めた。なお、原料石炭、副生炭は、無水無灰炭ベースである。この抽出率を表1に示す。
Figure 0004971955
また、このようなスラリー(ろ過処理していないもの)を、内容量3L、高さ1mの重力沈降槽に移し、360℃で1時間静置して、重力沈降槽上部より上澄み液を採取、液中の灰分濃度Cを得た。当初のスラリー中の灰分濃度Cとの比であるC/Cを、重力沈降槽上部での脱灰率(沈降槽上部脱灰率)として求めた。この結果を図3に示す。
図3に示すように、石炭B、Cでは、C/Cが0.02程度、すなわち、脱灰率として98%程度だった。一方、石炭Aでは、C/Cが0.07程度で、脱灰率は93%程度となり、石炭Aの未溶解成分の沈降性能が悪いことがわかった。これにより、同じ条件で沈降処理しても、石炭種により脱灰性能(固液分離性能)が悪化することが確認された。
[第2実施例]
第2実施例では、沈降性能の悪かった前記石炭Aについて、溶剤として、脂肪族化合物を含むものを使用した場合の脱灰率について調べた(実験例2)。
主溶剤である1−メチルナフタレン(新日鉄化学社製)に、市販の灯油(出光興産社製)を、溶剤全体に対し、3質量%、5質量%、10質量%、20質量%の割合で混合した溶剤、および、1−メチルナフタレン(新日鉄化学社製)に、デカン(ジャパンエナジー社製)を20質量%、ドデカン(ジャパンエナジー社製)を20質量%混合した5種の溶剤を調整し、前記第1実施例で脱灰性能が劣っていた石炭Aの脱灰率を第1実施例と同様に調べた。その結果を図4に示す。
図4に示すように、灯油添加3質量%の場合は、無添加の時と脱灰率に大差がないが、灯油添加5質量%以上、またデカンやドデカンを20質量%混合した溶剤を用いると、C/Cが0.02〜0.03程度まで低下し、所期の脱灰性能が得られることがわかった。
[第3実施例]
第3実施例では、前記石炭Aについて、溶剤として、脂肪族化合物を含むものを使用した場合の抽出率について調べた(実験例3)。なお、ここでは、脂肪族化合物として、工業的に用いられる灯油を代表として使用した。
主溶剤である1−メチルナフタレン(新日鉄化学社製)に、市販の灯油(出光興産社製)を、溶剤全体に対し、3質量%、5質量%、10質量%、20質量%の割合で混合した溶剤の石炭Aに対する抽出率を第1実施例と同様に調べた。この結果を図5に示す。
図5に示すように、灯油添加10質量%程度以下であれば、石炭Aの抽出率は、無添加の場合の抽出率53.5質量%(表1参照)に対して大きな変化は見られないが、10質量%程度を超えて20質量%まで添加すると、40質量%程度まで抽出率が低下した。
なお、一般的に、抽出率が約50質量%以上であれば、抽出率が高いといえる。
これら実施例から、溶剤として、非水素供与性溶剤と脂肪族化合物を混合したものを用いることにより、重力沈降による脱灰性能の悪い石炭においても、脱灰性能を向上させることができることがわかった。また、当該脂肪族化合物の添加割合を5〜10質量%の範囲とすることで、石炭抽出率を悪化させずに、脱灰性能を向上させることができることがわかった。
以上、本発明に係る無灰炭の製造方法について最良の実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。
無灰炭の製造方法の工程を説明するフローチャートである。 重力沈降法を行うための固液分離装置を示す模式図である。 第1実施例における脱灰率を示すグラフである。 第2実施例における脱灰率を示すグラフである。 第3実施例における抽出率を示すグラフである。
符号の説明
S1 スラリー調製工程
S2 抽出工程
S3 分離工程
S4 改質炭取得工程
1 石炭スラリー調製槽
2 ポンプ
3 予熱器
4 抽出槽
5 重力沈降槽
6 固形分濃縮液受器
7 冷却器
8 フィルターユニット
9 上澄み液受器
10 攪拌機
100 固液分離装置

Claims (4)

  1. 溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
    前記スラリー調製工程で得られたスラリーを、300〜420℃の温度で加熱して、溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程で得られたスラリーを、液部と非液部とに分離する分離工程と、
    前記分離工程で分離された液部から前記溶剤を分離して改質炭である無灰炭を得る改質炭取得工程と、
    を含み、
    前記溶剤が、石炭から誘導される2環芳香族を中心とする沸点範囲180〜300℃の非水素供与性溶剤と、この非水素供与性溶剤と同沸点範囲にある脂肪族化合物とからなり、前記非水素供与性溶剤に前記脂肪族化合物を、前記溶剤全体に対し、5〜10質量%の割合で混合したものであることを特徴とする無灰炭の製造方法。
  2. 前記改質炭取得工程において、無灰炭を得ることに加え、前記分離工程で分離された非液部から前記溶剤を分離して改質炭である副生炭を得ることを特徴とする請求項1に記載の無灰炭の製造方法。
  3. 前記改質炭取得工程で、前記液部から分離された前記溶剤および/または前記非液部から分離された前記溶剤を、前記スラリー調製工程へ循環して使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無灰炭の製造方法。
  4. 前記石炭が劣質炭であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の無灰炭の製造方法。
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