JP2018140883A - 多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子 - Google Patents

多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、低い製造コストで比較的緻密な多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子の提供を目的とする。【解決手段】本発明の多孔質炭素粒子の製造方法は、無灰炭が溶媒中に溶存する溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、上記噴霧乾燥工程で得られる固形分を加熱処理する加熱工程とを備え、上記溶媒が、酸素原子又は窒素原子を含み、かつ大気圧における沸点が50℃以上250℃未満である有機化合物を主成分とし、上記溶液における無灰炭の含有量が5質量%以上50質量%以下である。本発明の多孔質炭素粒子は、炭素を主成分とし、中空部を内包する炭素層を備え、上記炭素層が複数の細孔を有し、上記細孔のうち、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.1cm3/g以上であり、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.05cm3/g未満である。【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子に関する。
表面に直径がミクロン又はナノメーターオーダーの細孔を有し、高い比表面積を有する多孔質炭素粒子は、吸着材として有用である。この多孔質炭素粒子の製造方法としては、例えば炭素原料を水蒸気やアルカリ性物質により賦活して比表面積を増大させる方法(特開2012−41199号公報)、有機質樹脂を酸化マグネシウム等の酸化物(鋳型粒子)と混合し炭素化した後、上記酸化物を取り除く方法(特開2016−41656号公報)などが挙げられる。
上記従来の多孔質炭素粒子の製造方法では、原料を炭素化する工程に加えて、アルカリ性物質による賦活処理や鋳型粒子の除去処理を行う工程が必要であり、製造コストが増大する。また、これらの処理により形成される細孔は、多孔質炭素粒子の表面に近いほど径が大きくなる傾向となる。このため、上記従来の多孔質炭素粒子は、直径2nm未満の細孔(ミクロ孔)に加えて、直径2nm以上50nm未満の細孔(メゾ孔)や直径50nm以上の細孔(マクロ孔)も比較的多く有し、比表面積に対して緻密性が低い。従って、上記従来の多孔質炭素粒子は強度が低下し易い。このため、上記従来の多孔質炭素粒子は表面が不安定となり易く、機械的又は化学的処理を施して導電性を高めることが難しい。
特開2012−41199号公報 特開2016−41656号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低い製造コストで比較的緻密な多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子の提供を目的とする。
本発明者らは、多孔質炭素粒子の製造方法について鋭意検討した結果、無灰炭を溶媒中に溶存させた溶液を噴霧乾燥させることで、賦活処理や鋳型粒子による処理を行わなくとも多孔質炭素粒子を製造できることを見出した。しかも、このようにして製造される多孔質炭素粒子の細孔は、ミクロ孔が大半であり、メゾ孔やマクロ孔が比較的少なく、多孔質炭素粒子が比表面積に比して緻密なものであることが分かった。
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、無灰炭が溶媒中に溶存する溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、上記噴霧乾燥工程で得られる固形分を加熱処理する加熱工程とを備え、上記溶媒が、酸素原子又は窒素原子を含み、かつ大気圧における沸点が50℃以上250℃未満である有機化合物を主成分とし、上記溶液における無灰炭の含有量が5質量%以上50質量%以下である多孔質炭素粒子の製造方法である。
当該多孔質炭素粒子の製造方法は、酸素原子又は窒素原子を含み、かつ大気圧における沸点が上記範囲内である有機化合物を主成分とする溶媒中に無灰炭を溶存させた溶液を噴霧乾燥する。無灰炭は石炭や石油ピッチに比べ炭素化収率が高いので、当該多孔質炭素粒子の製造方法は多孔質炭素粒子の製造効率が高い。また、上記溶媒を用い、上記溶液における無灰炭の含有量を上記範囲内とすることで、噴霧乾燥工程において無灰炭が溶存した状態から溶媒が急激に脱離するので、得られる固形分に多数のミクロ孔が誘起される。さらに、上記固形分の主成分となる無灰炭は石炭や石油ピッチに比べ酸素等のヘテロ元素の割合が高いため、加熱処理時に結晶成長し難い。このため、加熱工程においてもミクロ孔が維持され、当該多孔質炭素粒子の製造方法は、比較的緻密な多孔質炭素粒子を製造することができる。また、当該多孔質炭素粒子の製造方法は、賦活処理や鋳型粒子による処理を必要としないので製造コストを低減できる。従って、当該多孔質炭素粒子の製造方法を用いることで、低い製造コストで比較的緻密な多孔質炭素粒子が製造できる。
石炭及び上記溶媒を混合する混合工程と、上記混合工程で得られたスラリー中の上記石炭から上記溶媒に可溶な成分を溶出させる溶出工程と、上記溶出工程で溶出後の上記スラリーを、溶媒可溶成分を含む液体分及び溶媒不溶成分に分離する分離工程とをさらに備え、上記噴霧乾燥工程における上記溶液として、上記分離工程で得られる液体分を用いるとよい。上記溶出工程での石炭の溶媒抽出処理により無灰炭が溶媒に溶出できる。つまり、上記液体分は、無灰炭が溶媒中に溶存する。従って、この液体分をそのまま上記溶液として用いることで、多孔質炭素粒子の製造コストをさらに低減できる。
上記固形分の平均径が1μm以上20μm以下となるよう噴霧圧力及び送液速度を調整するとよい。このように上記固形分の平均径が1μm以上20μm以下となるよう噴霧圧力及び送液速度を調整することで、多孔質炭素粒子の比表面積をさらに大きくすることができる。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、炭素を主成分とし、中空部を内包する炭素層を備え、上記炭素層が複数の細孔を有し、上記細孔のうち、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.1cm/g以上であり、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.05cm/g未満である多孔質炭素粒子である。
当該多孔質炭素粒子は、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積を上記下限以上とし、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積を上記上限未満とするので、比較的緻密である。また、当該多孔質炭素粒子は、中空部を内包する炭素層を備えるので、中実である多孔質炭素粒子に比べて細孔が炭素層を貫通し易く、個々の細孔において径が表面からの距離によらず均一化し易い。このため、直径0.5nm以下の細孔であっても、途中で径が潰れることなく外面から比較的深い位置まで孔が維持される。従って、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が上記上限未満としても、直径0.5nm以下の細孔により比表面積を維持することができる。
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、例えば含有量が50質量%以上の成分をいい、「固形分の平均径」とは、固形分と同体積となる真球の直径を意味する。
また、ある直径における「細孔のLog微分細孔容積」は、次のようにして算出される値である。まず、HK法により細孔分布を測定する。この測定により、細孔を円筒形と仮定した場合の底面の直径Dに対する積算細孔容積分布Vが得られる。この分布を元に測定ポイント間の差分細孔容積dVを細孔直径Dの対数扱いでの差分値d(LogD)で割った値を求めることで、Log微分細孔容積が算出できる。
以上説明したように、本発明の多孔質炭素粒子の製造方法を用いることで、低い製造コストで比較的緻密な多孔質炭素粒子が得られる。また、本発明の多孔質炭素粒子は、比較的緻密であるため、表面が比較的安定しており、機械的又は化学的処理を施して導電性を高め易い。従って、当該多孔質炭素粒子は、吸着材や電子部品として好適に用いることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る多孔質炭素粒子の製造方法を示す概略フロー図である。 図2は、図1とは異なる実施形態に係る多孔質炭素粒子の製造方法を示す概略フロー図である。 図3は、実施例1の多孔質炭素粒子の細孔径分布を示すグラフである。
[第一実施形態]
以下、本発明に係る多孔質炭素粒子の製造方法及び多孔質炭素粒子の第一実施形態について説明する。
〔多孔質炭素粒子の製造方法〕
当該多孔質炭素粒子の製造方法は、図1に示すように、混合工程S1と、溶出工程S2と、分離工程S3と、噴霧乾燥工程S4と、加熱工程S5とを主に備える。
<混合工程>
混合工程S1では、石炭及び溶媒を混合する。この混合工程S1は、例えば石炭供給部、溶媒供給部、及び混合部により行える。
(石炭供給部)
石炭供給部は、石炭を混合部へ供給する。石炭供給部としては、常圧状態で使用される常圧ホッパー、常圧状態及び加圧状態で使用される加圧ホッパー等の公知の石炭ホッパーを用いることができる。
石炭供給部から供給する石炭は、無灰炭の原料となる石炭である。上記石炭としては、様々な品質の石炭を用いることができる。例えば無灰炭の抽出率の高い瀝青炭や、より安価な低品位炭(亜瀝青炭や褐炭)が好適に用いられる。また、石炭を粒度で分類すると、細かく粉砕された石炭が好適に用いられる。ここで「細かく粉砕された石炭」とは、例えば石炭全体の質量に対する粒度1mm未満の石炭の質量割合が80%以上である石炭を意味する。また、石炭供給部から供給する石炭として塊炭を用いることもできる。ここで「塊炭」とは、例えば石炭全体の質量に対する粒度5mm以上の石炭の質量割合が50%以上である石炭を意味する。塊炭は、細かく粉砕された石炭に比べて未溶解な固体の石炭の粒度が大きく保たれるため、後述する分離部での分離を効率化することができる。ここで、「粒度(粒径)」とは、JIS−Z8815:1994のふるい分け試験通則に準拠して測定した値をいう。なお、石炭の粒度による仕分けには、例えばJIS−Z8801−1:2006に規定する金属製網ふるいを用いることができる。
上記低品位炭の炭素含有率の下限としては、70質量%が好ましい。一方、上記低品位炭の炭素含有率の上限としては、85質量%が好ましく、82質量%がより好ましい。上記低品位炭の炭素含有率が上記下限未満であると、溶媒可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記低品位炭の炭素含有率が上記上限を超えると、供給する石炭のコストが高くなるおそれがある。
なお、石炭供給部から混合部へ供給する石炭として、少量の溶媒を混合してスラリー化した石炭を用いてもよい。石炭供給部からスラリー化した石炭を混合部へ供給することにより、混合部において石炭が溶媒と混合し易くなり、石炭をより早く溶解させることができる。ただし、スラリー化する際に混合する溶媒の量が多いと、後述する昇温部でスラリーを溶出温度まで昇温するための熱量が不必要に大きくなるため、製造コストが増大するおそれがある。
(溶媒供給部)
溶媒供給部は、溶媒を混合部へ供給する。上記溶媒供給部は、溶媒を貯留する溶媒タンクを有し、この溶媒タンクから溶媒を混合部へ供給する。上記溶媒供給部から供給する溶媒は、石炭供給部から供給する石炭と混合部で混合される。
溶媒供給部から供給する溶媒は、酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物を主成分とする。このように上記溶媒の主成分を酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物とすることで、溶媒と無灰炭との親和性が高まり、抽出される溶液における無灰炭の含有量を高め易い。その結果、多孔質炭素粒子の収量が増加するので、多孔質炭素粒子の製造コストが低減できる。このような溶媒としては、ピリジン(CN)、テトラヒドロフラン(CO)、ジメチルホルムアミド((CHNCHO)、N−メチルピロリドン(CNO)などが挙げられる。中でも無灰炭と親和性が高いピリジン及びテトラヒドロフランが好ましい。なお、酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物は1種類であってもよく、また2種類以上の有機化合物が混合されていてもよい。
上記溶媒の大気圧における沸点の下限値としては、50℃であり、60℃がより好ましく、65℃がさらに好ましい。一方。上記溶媒の沸点は、250℃未満であり、210℃未満がより好ましく、160℃未満がさらに好ましい。上記溶媒の沸点が上記下限未満であると、無灰炭が十分に溶解せず無灰炭の含有量を高められないおそれがある。逆に、上記溶媒の沸点が上記上限以上であると、噴霧乾燥工程S4において溶媒の脱離に伴う圧力が不足するため、多孔質炭素材料の細孔が十分に形成されないおそれがある。
(混合部)
混合部は、石炭供給部から供給する石炭及び溶媒供給部から供給する溶媒を混合する。
上記混合部としては、調製槽を用いることができる。この調製槽には、供給管を介して上記石炭及び溶媒が供給される。上記調製槽では、この供給された石炭及び溶媒が混合され、スラリーが調製される。また、上記調製槽は、攪拌機を有しており、混合したスラリーを攪拌機で攪拌しながら保持することによりスラリーの混合状態を維持する。
調製槽におけるスラリー中の無水炭基準での石炭濃度は、溶媒の種類等により適宜決定されるが、上記石炭濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記石炭濃度の上限としては、65質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。上記石炭濃度が上記下限未満であると、溶出工程S2で溶出される溶媒可溶成分の溶出量がスラリー処理量に対して少なくなるため、溶液に含まれる無灰炭の含有量が不十分となるおそれがある。逆に、上記石炭濃度が上記上限を超えると、溶媒中で上記溶媒可溶成分が飽和し易いため、上記溶媒可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。
なお、混合部の調製槽で調製されたスラリーは、溶出工程S2で処理される。
<溶出工程>
溶出工程S2では、上記混合工程S1で得られたスラリー中の石炭から溶媒に可溶な石炭成分を溶出させる。溶出工程S2は、昇温部及び溶出部により行うことができる。
(昇温部)
昇温部は、上記混合工程S1で得られたスラリーを昇温する。
昇温部としては、内部を通過するスラリーを昇温できるものであれば特に限定されないが、例えば抵抗加熱式ヒーターや誘導加熱コイルが挙げられる。また、昇温部は、熱媒を用いて昇温を行うよう構成されていてもよく、例えば内部を通過するスラリーの流路の周囲に配設される加熱管を有し、この加熱管に蒸気、油等の熱媒を供給することでスラリーを昇温可能に構成されていてもよい。
昇温部による昇温後のスラリーの温度は、使用する溶媒に応じて適宜決定されるが、例えば80℃以上120℃以下とできる。上記スラリーの温度が上記下限未満であると、溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記スラリーの温度が上記上限を超えると、溶媒が気化し過ぎるためスラリーの濃度を制御することが困難となるおそれがある。
また、昇温部の圧力としては、特に限定されないが、常圧(0.1MPa)とできる。
(溶出部)
溶出部は、上記混合部で得られ、上記昇温部で昇温されたスラリー中の石炭から溶媒に可溶な石炭成分を溶出させる。
溶出部としては、抽出槽を用いることができ、この抽出槽に上記昇温後のスラリーが供給される。上記抽出槽では、このスラリーの温度及び圧力を保持しながら溶媒に可溶な石炭成分を石炭から溶出させる。また、上記抽出槽は、攪拌機を有している。この攪拌機によりスラリーを攪拌することで上記溶出を促進できる。
なお、溶出部での溶出時間としては、特に限定されないが、溶媒可溶成分の抽出量と抽出効率との観点から10分以上70分以下が好ましい。
<分離工程>
分離工程S3では、上記溶出工程S2で溶出後の上記スラリーを、溶媒可溶成分を含む液体分及び溶媒不溶成分に分離する。この分離工程S3は、分離部により行うことができる。なお、溶媒不溶成分は、抽出用溶媒に不溶な灰分と不溶石炭とを主として含み、これらに加え抽出用溶媒をさらに含む抽出残分をいう。
(分離部)
分離部における上記液体分及び溶媒不溶成分を分離する方法としては、例えば重力沈降法、濾過法、遠心分離法を用いることができ、それぞれ沈降槽、濾過器、遠心分離器が使用される。
以下、重力沈降法を例にとり分離方法について説明する。重力沈降法とは、沈降槽内で重力を利用して溶媒不溶成分を沈降させて固液分離する分離方法である。重力沈降法により分離を行う場合、溶媒可溶成分を含む液体分は、沈降槽の上部に溜まる。この液体分は必要に応じてフィルターユニットを用いて濾過した後、後述する噴霧部に排出される。一方、溶媒不溶成分は、分離部の下部から排出される。
また、重力沈降法により分離を行う場合、スラリーを分離部内に連続的に供給しながら溶媒可溶成分を含む液体分及び溶媒不溶成分を沈降槽から排出することができる。これにより連続的な固液分離処理が可能となる。
分離部内でスラリーを維持する時間は、特に限定されないが、例えば30分以上120分以下とでき、この時間内で分離部内の沈降分離が行われる。なお、石炭として塊炭を使用する場合には、沈降分離が効率化されるので、分離部内でスラリーを維持する時間を短縮できる。
なお、分離部内の温度及び圧力としては、昇温部による昇温後のスラリーの温度及び圧力と同様とできる。
上記液体分に含まれる溶媒可溶成分の主成分は無灰炭であり、この液体分は、噴霧部で噴霧される溶液として用いることができる。なお、無灰炭は、灰分が5質量%以下又は3質量%以下であり、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、また例えば原料石炭よりも高い発熱量を示す。
上記液体分、すなわち噴霧される上記溶液における無灰炭の含有量の下限としては、5質量%であり、8質量%がより好ましい。一方、上記溶液における無灰炭の含有量の上限としては、50質量%であり、40質量%がより好ましく、25質量%がさらに好ましい。上記無灰炭の含有量が上記下限未満であると、単位量あたりの液体分から得られる多孔質炭素粒子の量が減少するので、製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記無灰炭の含有量が上記上限を超えると、相対的に溶媒の量が不足し、溶媒が脱離する勢いが不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。なお、上記無灰炭の含有量は、混合部で溶媒に加える石炭の量により調整することができる。
一方、上記溶媒不溶成分からは、溶媒を蒸発分離させて副生炭を得ることができる。副生炭は、軟化溶融性は示さないが、含酸素官能基が脱離されている。そのため、副生炭は、配合炭として用いた場合にこの配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害しない。従って、この配合炭は例えばコークス原料の配合炭の一部として使用することができる。また、副生炭は一般の石炭と同様に燃料として利用してもよい。
<噴霧乾燥工程>
噴霧乾燥工程S4では、無灰炭が溶媒中に溶存する上記液体分である溶液を噴霧乾燥する。この噴霧乾燥工程S4は、噴霧部により行うことができる。
(噴霧部)
上記噴霧部としては、噴霧器を用いることができる。この噴霧器としては、公知のフラッシュ蒸留器やサイクロンを挙げることができる。
このような噴霧器は、分離部からの供給配管を通じて噴霧部に供給される溶液に噴霧用ガスを噴射する噴霧ノズルを有する。上記噴霧ノズルは、例えば2流体ノズルや4流体ノズルに供給配管を接続した構成とすることができる。
上記噴霧器では、加熱された噴霧用ガスを噴霧ノズルにより上記溶液に衝突させることで上記溶液を微細化し分散させる。噴霧用ガスの衝突により霧状となった溶液のうち溶媒は、フラッシュ蒸留器やサイクロンの中で、自己顕熱及び加熱された噴霧用ガスからの熱量付与により蒸発する。当該多孔質炭素粒子の製造方法では、上記溶媒の大気圧における沸点が250℃未満であるので、霧状の溶液の各滴から溶媒が急激に脱離する。霧状となった溶液は、この溶媒の急激な脱離により乾燥し、無灰炭を主成分とする固形分が得られる。無灰炭に起因する炭素を主成分とする炭素層の内部に溶媒が閉じ込められた状態から溶媒が脱離してこの固形分が形成されるためと考えられるが、この固形分は、炭素を主成分とし、中空部を構成する炭素層を備える。また、上記炭素層は、溶媒の脱離により誘起される複数のミクロ孔を有する。
上記噴霧ガスとしては、不活性ガス、例えば窒素を用いることが好ましい。不活性ガスは、反応性が低いので生成される固形分の組成に与える影響が少ない。また、溶媒の沸点以下の比較的低い温度においても気体であるため、蒸発した溶媒と噴霧ガスとの分離が容易である。
溶液に衝突させる上記噴霧ガスの圧力(噴霧圧力)の下限としては、0.1MPaが好ましく、0.2MPaがより好ましい。一方、上記噴霧圧力の上限としては、1MPaが好ましく、0.5MPaがより好ましい。上記噴霧圧力が上記下限未満であると、噴霧用ガスの衝突による溶液の分散が不足し、得られる多孔質炭素粒子の径が大きくなり易い。このため、多孔質炭素粒子の比表面積が不十分となるおそれがある。逆に、上記噴霧圧力が上記上限を超えると、溶媒が気化し難く、溶媒の脱離が不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。
上記噴霧ガスの温度の下限としては、100℃が好ましく、150℃がより好ましい。一方、上記噴霧ガスの温度の上限としては、450℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記噴霧ガスの温度が上記下限未満であると、溶媒に与えられる、溶媒の脱離が不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。逆に、上記噴霧ガスの温度が上記上限を超えると、加熱のためのエネルギー消費量が不要に増大するおそれがある。
分離部からの供給配管を通じて噴霧部に供給する上記溶液の送液速度の下限としては、0.5kh/hが好ましく、0.7kh/hがより好ましい。一方、上記送液速度の上限としては、2kh/hが好ましく、1.5kh/hがより好ましい。上記送液速度が上記下限未満であると、単位時間あたりに得られる多孔質炭素粒子の量が減少するので、製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記送液速度が上記上限を超えると、上記溶液に付与される熱量が不足し、溶媒の脱離が不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。
分離部からの供給配管を通じて噴霧部に供給する上記溶液の温度の下限としては、60℃が好ましく、70℃がより好ましく、90℃がさらに好ましい。一方、上記溶液の温度の上限としては、160℃が好ましく、150℃がより好ましい。上記溶液の温度が上記下限未満であると、上記溶液に付与される熱量が不足し、溶媒の脱離が不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。逆に、上記溶液の温度が上記上限を超えると、加熱のためのエネルギー消費量が不要に増大するおそれがある。
上記溶液の温度は、溶媒の沸点より高い。上記溶液の温度と溶媒の沸点との温度差の下限としては、10℃が好ましく、20℃がより好ましい。一方、上記温度差の上限としては、50℃が好ましく、40℃がより好ましい。上記温度差が上記下限未満であると、溶媒の脱離が不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。逆に、上記温度差が上記上限を超えると、加熱のためのエネルギー消費量が不要に増大するおそれがある。
また、噴霧部で得られる固形分は噴霧部内で自然冷却され、40℃以上80℃以下の温度で排出される。
上記固形分の平均径の下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、上記固形分の平均径の上限としては、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。上記固形分の平均径は、主に噴霧乾燥工程S4で噴霧する溶液の滴の大きさにより決まる。この噴霧する溶液の滴の大きさは主に噴霧圧力及び送液速度で決まるから、固形分の平均径が上記範囲内となるように噴霧圧力及び送液速度を調整するとよい。上記固形分の平均径が上記下限未満であると、それは噴霧する溶液の滴の大きさが小さいことを意味し、溶液から脱離する溶媒の量が少ない。このためミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。逆に、上記固形分の平均径が上記上限を超えると、体積に対して表面積が小さくなるため、固形分の比表面積が不十分となるおそれがある。
<加熱工程>
加熱工程S5では、上記噴霧乾燥工程S4で得られる固形分を加熱処理する。この加熱工程S5は、加熱部により行うことができる。
(加熱部)
加熱部は、上記噴霧部で得られた固形分を炭素化する。この炭素化により多孔質炭素粒子が得られる。
上記加熱部としては、例えば公知の電気炉等を用いることができ、固形分を加熱部へ挿入し、内部を不活性ガスで置換した後、加熱部内へ不活性ガスを吹き込みながら加熱を行うことで固形分の炭素化ができる。上記不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば窒素やアルゴン等を挙げることができる。中でも安価な窒素が好ましい。
噴霧部で溶媒の急激な脱離により生じたミクロ孔は、例えば炭素原料として石炭ピッチ等を用いる場合、この加熱部での加熱処理により固形分の炭素以外の成分の揮発や、炭素の結晶化が進むため、ミクロ孔が収縮して塞がれ易く、緻密な(多孔質ではない)炭素粒子となり易い。これに対し、当該多孔質炭素粒子の製造方法では、炭素原料に無灰炭を用いる。無灰炭は、石炭や石油ピッチに比べ酸素等のヘテロ元素の割合が高いため、加熱処理時に結晶成長し難く、また炭素以外の成分の割合が少ない。従って、当該多孔質炭素粒子の製造方法では、加熱部で加熱処理を行ってもミクロ孔が維持され易く、製造される炭素粒子の多孔質性を維持し易い。
上記加熱温度の下限としては、500℃が好ましく、700℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、3000℃が好ましく、2800℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱温度が上記上限を超えると、設備の耐熱性向上や燃料消費量の観点から製造コストが上昇するおそれがある。なお、昇温速度としては、例えば0.01℃/min以上10℃/min以下とすることができる。
また、加熱時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。一方、加熱時間の上限としては、10時間が好ましく、8時間がより好ましい。加熱温度が上記下限未満であると、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱時間が上記上限を超えると、多孔質炭素粒子の製造効率が低下するおそれがある。
なお、炭化を行う前に不融化を行ってもよい。この不融化処理により固形分が互いに融着することを防止できる。不融化は、例えば公知の加熱炉を用いて酸素を含む雰囲気中で加熱することにより行う。酸素を含む雰囲気としては、一般に空気が用いられる。
不融化を行う場合の不融化処理温度の下限としては、150℃が好ましく、180℃がより好ましい。一方、上記不融化処理温度の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましい。上記不融化処理温度が上記下限未満であると、不融化が不十分となるおそれや、不融化処理時間が長くなり、非効率となるおそれがある。逆に、上記不融化処理温度が上記上限を超えると、不融化される前に固形分が溶融するおそれがある。
また、不融化処理時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。一方、上記不融化処理時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。上記不融化処理時間が上記下限未満であると、不融化が不十分となるおそれがある。逆に、上記不融化処理時間が上記上限を超えると、多孔質炭素粒子の製造コストが不必要に増大するおそれがある。
当該多孔質炭素粒子の製造方法における炭素化収率の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。上記炭素化収率が上記下限未満であると、製造コストの低減効果が不十分となるおそれや、炭素以外の揮発成分によりミクロ孔が塞がれ、製造される多孔質炭素粒子の比表面積が低下するおそれがある。当該多孔質炭素粒子の製造方法は、無灰炭を用いるので、この炭素化収率が高い。また、炭素化収率は例えば溶液中の無灰炭の含有量により調整できる。一方、炭素化収率の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよいが、無灰炭を用いる場合、通常75質量%程度である。なお、「炭素化収率」とは、加熱工程S5前の原材料中の有機物質の質量に対する加熱処理により得られる炭素物質の質量比を表し、当該多孔質炭素粒子の製造方法においては、噴霧乾燥工程S4で得られる固形分の質量に対する多孔質炭素粒子の質量比を表す。
<利点>
当該多孔質炭素粒子の製造方法は、酸素原子又は窒素原子を含み、かつ大気圧における沸点が0℃以上250℃未満である有機化合物を主成分とする溶媒中に無灰炭を溶存させた溶液を噴霧乾燥する。無灰炭は石炭や石油ピッチに比べ炭素化収率が高いので、当該多孔質炭素粒子の製造方法は多孔質炭素粒子の製造効率が高い。また、上記溶媒を用い、上記溶液における無灰炭の含有量を5質量%以上50質量%以下とすることで、噴霧乾燥工程において無灰炭が溶存した状態から溶媒が急激に脱離するので、得られる固形分に多数のミクロ孔が誘起される。さらに、上記固形分の主成分となる無灰炭は石炭や石油ピッチに比べ酸素等のヘテロ元素の割合が高いため、加熱処理時に結晶成長し難い。このため、加熱工程においてもミクロ孔が維持され、当該多孔質炭素粒子の製造方法は、比較的緻密な多孔質炭素粒子を製造することができる。また、当該多孔質炭素粒子の製造方法は、賦活処理や鋳型粒子による処理を必要としないので製造コストを低減できる。従って、当該多孔質炭素粒子の製造方法を用いることで、低い製造コストで比較的緻密な多孔質炭素粒子が製造できる。
また、当該多孔質炭素粒子の製造方法は、上記噴霧乾燥工程S4における上記溶液として、上記分離工程S3で得られる液体分を用いる。当該多孔質炭素粒子の製造方法では、上記溶出工程S2での石炭の溶媒抽出処理により無灰炭が溶媒に溶出できる。つまり、上記液体分は、無灰炭が溶媒中に溶存する。従って、この液体分をそのまま上記溶液として用いることで、多孔質炭素粒子の製造コストをさらに低減できる。
〔多孔質炭素粒子〕
当該多孔質炭素粒子は、炭素を主成分とし、中空部を内包する炭素層を備え、上記炭素層が複数の細孔を有する。当該多孔質炭素粒子は、上述の当該多孔質炭素粒子の製造方法により製造することができる。なお、当該多孔質炭素粒子の製造方法により製造される多孔質炭素粒子は、通常炭素層により中空部が内包されるが、用途に応じてこの多孔質炭素粒子を割ることで、凹部を有する炭素層を備える多孔質炭素粒子として用いることができる。
当該多孔質炭素粒子の細孔はミクロ孔が多く、メゾ孔やマクロ孔が少ない。つまり、当該多孔質炭素粒子の細孔のうち、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積は、0.1cm/g以上であり、0.15cm/g以上がより好ましい。また、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積は、0.05cm/g未満であり、0.03cm/g未満がより好ましい。直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積が上記下限未満、又は直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が上記下限以上であると、当該多孔質炭素粒子の密度が低くなり、機械的強度が低下するおそれがある。なお、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積の上限は、特に限定されないが、通常0.5cm/g程度である。また、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積の下限は、0cm/gであり、直径2nm以上4nm以下の細孔を有さなくともよい。
当該多孔質炭素粒子の細孔はミクロ孔が多いため、当該多孔質炭素粒子は緻密でありながら、比表面積が比較的高い。当該多孔質炭素粒子の比表面積の下限としては、100m/gが好ましく、150m/gがより好ましく、200m/gがさらに好ましい。上記比表面積が上記下限未満であると、多孔質材料として用いることが困難となるおそれがある。一方、上記比表面積の上限としては、特に限定されないが、通常3000m/g程度である。なお、当該多孔質炭素粒子の比表面積は例えば溶液中の無灰炭の含有量、溶剤の種類、噴霧条件等により調整できる。
<利点>
当該多孔質炭素粒子は、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積を0.1cm/g以上とし、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積を0.05cm/g未満とするので、比較的緻密である。また、当該多孔質炭素粒子は、中空部を内包する炭素層を備えるので、中実である多孔質炭素粒子に比べて細孔が炭素層を貫通し易く、個々の細孔において径が表面からの距離によらず均一化し易い。このため、直径0.5nm以下の細孔であっても、途中で径が潰れることなく外面から比較的深い位置まで孔が維持される。従って、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が上記上限未満としても、直径0.5nm以下の細孔により比表面積を維持することができる。
[第二実施形態]
以下、本発明に係る多孔質炭素粒子の製造方法の第二実施形態について説明する。
当該多孔質炭素粒子の製造方法は、図2に示すように、溶解工程S6と、噴霧乾燥工程S7と、加熱工程S8とを主に備える。
<溶解工程>
溶解工程S6では、溶媒に無灰炭を溶解する。この溶解により無灰炭が溶媒中に溶存する溶液が得られる。
この溶解には、調製槽を用いることができる。上記調整槽としては、例えば第一実施形態の混合部と同様に構成された調整槽が挙げられる。
上記溶媒は、酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物を主成分とするものであり、第一実施形態の溶媒と同様のものが挙げられる。
また、上記無灰炭は、例えば混合工程と、溶出工程と、分離工程と、蒸発工程とを備える無灰炭の製造方法により得ることができる。
(混合工程)
上記無灰炭の製造方法における混合工程は、第一実施形態の混合工程S1と同様に行える。
なお、混合工程で混合する溶媒は、酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物を主成分とするものには限定されず、石炭を溶解するものであればよい。このような溶媒としては、例えば石炭由来の2環芳香族化合物であるメチルナフタレン油、ナフタレン油等を挙げることができる。
(溶出工程)
上記無灰炭の製造方法における溶出工程は、第一実施形態の溶出工程S2と同様に行える。
上記溶出工程での昇温部による昇温後のスラリーの温度の下限としては、300℃が好ましく、360℃がより好ましい。一方、上記スラリーの温度の上限としては、420℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記スラリーの温度が上記下限未満であると、石炭を構成する分子間の結合を十分に弱められず、溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記スラリーの温度が上記上限を超えると、スラリーの温度を維持するための熱量が不必要に大きくなるため、多孔質炭素粒子の製造コストが増大するおそれがある。
また、上記昇温部の内部圧力の下限としては、1.1MPaが好ましく、1.5MPaがより好ましい。一方、上記昇温部の内部圧力の上限としては、5MPaが好ましく、4MPaがより好ましい。上記昇温部の内部圧力が上記下限未満であると、溶剤が蒸発することで減少し、石炭の溶解が不十分となるおそれがある。逆に、上記昇温部の内部圧力が上記上限を超えると、圧力を維持するためのコスト上昇に対して得られる石炭溶解の向上効果が不十分となるおそれがある。
(分離工程)
上記無灰炭の製造方法における分離工程は、第一実施形態の分離工程S3と同様に行える。
上記分離工程での分離部内は、加熱及び加圧することが好ましい。上記分離部内の加熱温度の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、420℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、溶媒可溶成分が再析出し、分離効率が低下するおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、加熱のための運転コストが高くなるおそれがある。
また、分離部内の圧力の下限としては、1MPaが好ましく、1.4MPaがより好ましい。一方、上記圧力の上限としては、3MPaが好ましく、2MPaがより好ましい。上記圧力が上記下限未満であると、溶媒可溶成分が再析出し、分離効率が低下するおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超えると、加圧のための運転コストが高くなるおそれがある。
(蒸発工程)
蒸発工程では、上記分離工程で分離した液体分から溶媒を蒸発させる。この溶媒の蒸発分離により無灰炭(HPC)が得られる。
上記溶媒を蒸発分離する方法としては、一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)を含む分離方法を用いることができる。上記液体分からの溶媒の分離により、上記液体分から実質的に灰分を含まない無灰炭を得ることができる。
無灰炭が溶媒中に溶存する上記溶液における無灰炭の含有量の下限としては、5質量%であり、8質量%がより好ましい。一方、上記溶液における無灰炭の含有量の上限としては、50質量%であり、40質量%がより好ましい。上記無灰炭の含有量が上記下限未満であると、単位量あたりの液体分から得られる多孔質炭素粒子の量が減少するので、製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記無灰炭の含有量が上記上限を超えると、相対的に溶媒の量が不足し、溶媒が脱離する勢いが不十分となるため、ミクロ孔が十分に形成されないおそれがある。
<噴霧乾燥工程>
噴霧乾燥工程S7では、上記溶液を噴霧乾燥する。この噴霧乾燥工程S7は、第一実施形態の噴霧乾燥工程S4と同様の装置を用いて同様に行うことができる。
<加熱工程>
加熱工程S8では、上記噴霧乾燥工程S4で得られる固形分を加熱処理する。この加熱工程S8は、第一実施形態の加熱工程S5と同様の装置を用い同様に行うことができる。
<利点>
多孔質炭素粒子の製造方法では、無灰炭を直接溶媒に溶解することで、無灰炭が溶媒中に溶存する溶液を得る。このため、無灰炭を抽出する際に使用する溶媒と、多孔質炭素粒子を得るための溶液に使用する溶媒との種類を変えることができる。このため、無灰炭の抽出と多孔質炭素粒子の製造とをそれぞれ最適化できるので、多孔質炭素粒子の収率を高めることができる。
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記第一実施形態では、混合工程S1の混合部が調製槽を有する構成について説明したが、この構成に限らず、溶媒と石炭との混合ができれば、調製槽を省略してもよい。例えばラインミキサーにより上記混合が完了するような場合には、調製槽を省略して供給管と分離部との間にラインミキサーを備える構成としてもよい。このように各工程で用いられる装置構成は、上記実施形態に限定されない。
上記第二実施形態では、無灰炭を溶媒抽出により製造する方法を説明したが、無灰炭の製造方法はこれに限定されず、例えば石炭と水素供与性溶剤との混合加熱により製造された無灰炭を用いることもできる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
亜瀝青炭の溶媒抽出により製造された無灰炭を準備した。この無灰炭の元素分析値を表1に示す。また、溶媒として大気圧における沸点が115℃であるピリジンを準備した。ピリジンは、窒素を含有する有機化合物(芳香族化合物)である。
この無灰炭と溶媒との混合により、無灰炭が溶媒中に溶存する溶液を、溶液における無灰炭の含有量が10.7質量%となるように調製した。
この溶液を、二流体ノズルを用いて噴霧圧力0.3MPa、溶液の送液速度1kh/hの条件でサイクロン中に噴霧し、固形分を得た。なお、上記サイクロンの入口温度は140℃、出口温度は70℃とした。
さらに、上記固形分を5℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、30分間の加熱処理(炭素化)を行い、実施例1の多孔質炭素粒子を製造した。この加熱処理による炭素化収率を表2に示す。
[実施例2]
溶媒を大気圧における沸点が66℃であるテトラヒドロフラン(THF)とし、溶液における無灰炭の含有量を10.8質量%とし、サイクロンの入口温度を100℃、出口温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の多孔質炭素粒子を製造した。なお、THFは、酸素を含有する有機化合物(極性有機化合物)である。
[実施例3]
溶液における無灰炭の含有量を35.8質量%とした以外は、実施例2と同様にして実施例3の多孔質炭素粒子を製造した。
[比較例1]
実施例1の無灰炭に代えて、製鉄コークス製造の石炭の高温乾留プロセスで副生するタールから製造された石炭ピッチを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の多孔質炭素粒子を得た。この石炭ピッチの元素分析値を表1に示す。
Figure 2018140883
なお、表1において、酸素量は、炭素、水素、窒素及び硫黄以外の成分量を意味し、100質量%から炭素、水素、窒素及び硫黄の成分量を引いたものである。
[評価方法]
上記実施例1〜3及び比較例1について、以下の測定を行った。
<粒子径>
固形分の粒子径を光学顕微鏡により測定した。測定は、光学顕微鏡の視野内の個々の粒子の粒子径を計測し、その範囲を求めた。結果を表2に示す。
<比表面積>
多孔質炭素粒子の比表面積をBET法により測定した。結果を表2に示す。
<細孔径分布>
実施例1の多孔質炭素粒子について、HK法により細孔径分布を測定した。結果を図3に示す。なお、BET法により測定した実施例1の多孔質炭素粒子の平均細孔径は2nmであった。
Figure 2018140883
表2の結果から、本発明の範囲内にある実施例1〜3の製造方法により、賦活処理や鋳型粒子による処理を行わなくとも比表面積が100m/g以上の多孔質炭素粒子が得られることが分かる。これに対し、比較例1の製造方法で得られる多孔質炭素粒子は、比表面積が100m/gより小さい。これは、原料として石炭ピッチを用いたため、加熱処理時に炭素の結晶成長が生じ易くミクロ孔が塞がったためと考えられる。
また、実施例1〜3の加熱処理時の炭素化収率は、比較例1の炭素化収率よりも大きく、特に原料以外が同条件である実施例1と比較例1とにおいてその差が顕著である。このことから、無灰炭を用いることで多孔質炭素粒子の製造効率を高められることが分かる。
また、図4から実施例1の多孔質炭素粒子は、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.1cm/g以上であり、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.05cm/g未満であることが分かる。つまり、実施例1の多孔質炭素粒子の細孔は、ミクロ孔が大半であり、メゾ孔やマクロ孔が比較的少なく、実施例1の多孔質炭素粒子が比表面積に対して緻密なものであることが分かる。
さらに実施例を詳細に見ると、噴霧する溶液における無灰炭の含有量を25質量%以下である10.8質量%とした実施例2の方が、無灰炭の含有量を25質量%超である35.8質量%とした実施例3よりも炭素化収率及び比表面積が大きい。このことから、噴霧する溶液における無灰炭の含有量を25質量%以下とするとよいことが分かる。
以上説明したように、本発明の多孔質炭素粒子の製造方法を用いることで、低い製造コストで比較的緻密な多孔質炭素粒子が得られる。また、本発明の多孔質炭素粒子は、比較的緻密であるため、表面が比較的安定しており、機械的又は化学的処理を施して導電性を高め易い。従って、当該多孔質炭素粒子は、吸着材や電子部品として好適に用いることができる。
S1 混合工程
S2 溶出工程
S3 分離工程
S4、S7 噴霧乾燥工程
S5、S8 加熱工程
S6 溶解工程

Claims (4)

  1. 無灰炭が溶媒中に溶存する溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、
    上記噴霧乾燥工程で得られる固形分を加熱処理する加熱工程と
    を備え、
    上記溶媒が、酸素原子又は窒素原子を含み、かつ大気圧における沸点が50℃以上250℃未満である有機化合物を主成分とし、
    上記溶液における無灰炭の含有量が5質量%以上50質量%以下である多孔質炭素粒子の製造方法。
  2. 石炭及び上記溶媒を混合する混合工程と、
    上記混合工程で得られたスラリー中の上記石炭から上記溶媒に可溶な成分を溶出させる溶出工程と、
    上記溶出工程で溶出後の上記スラリーを、溶媒可溶成分を含む液体分及び溶媒不溶成分に分離する分離工程と
    をさらに備え、
    上記噴霧乾燥工程における上記溶液として、上記分離工程で得られる液体分を用いる請求項1に記載の多孔質炭素粒子の製造方法。
  3. 上記固形分の平均径が1μm以上20μm以下となるよう噴霧圧力及び送液速度を調整する請求項1又は請求項2に記載の多孔質炭素粒子の製造方法。
  4. 炭素を主成分とし、中空部を内包する炭素層を備え、
    上記炭素層が複数の細孔を有し、
    上記細孔のうち、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.1cm/g以上であり、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が0.05cm/g未満である多孔質炭素粒子。
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