JP6767918B2 - 電界紡糸用組成物及び多孔質炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
当該電界紡糸用組成物は、無灰炭及び溶媒を含み、多孔質炭素繊維を電界紡糸により製造するために用いられる。なお、当該電界紡糸用組成物は液体である。
無灰炭(HPC)は、灰分が5質量%以下、好ましくは3質量%以下であり、灰分をほとんど含まず、水分が皆無の石炭である。無灰炭は、例えば図1に示すように混合工程S1と、溶出工程S2と、固液分離工程S3と、蒸発分離工程S4とを備える製造方法により製造することができる。以下、各工程について説明する。
混合工程S1では、石炭及び溶媒を混合する。この混合工程S1は、例えば石炭供給部、溶媒供給部、及び混合部により行える。
石炭供給部は、石炭を混合部へ供給する。石炭供給部としては、常圧状態で使用される常圧ホッパー、常圧状態及び加圧状態で使用される加圧ホッパー等の公知の石炭ホッパーを用いることができる。
溶媒供給部は、溶媒を混合部へ供給する。上記溶媒供給部は、溶媒を貯留する溶媒タンクを有し、この溶媒タンクから溶媒を混合部へ供給する。上記溶媒供給部から供給する溶媒は、石炭供給部から供給する石炭と混合部で混合される。
混合部は、石炭供給部から供給する石炭及び溶媒供給部から供給する溶媒を混合する。
溶出工程S2では、上記混合工程S1で得られたスラリー中の石炭から上記溶媒に可溶な石炭成分を溶出させる。溶出工程S2は、例えば昇温部及び溶出部により行うことができる。
昇温部は、上記混合工程S1で得られたスラリーを昇温する。
溶出部は、上記混合部で得られ、上記昇温部で昇温されたスラリー中の石炭から溶媒に可溶な石炭成分を溶出させる。
固液分離工程S3では、上記溶出工程S2で溶出後の上記スラリーを、溶媒可溶成分を含む液体分及び溶媒不溶成分に分離する。この固液分離工程S3は、分離部により行うことができる。なお、溶媒不溶成分は、抽出用溶媒に不溶な灰分と不溶石炭とを主として含み、これらに加え抽出用溶媒をさらに含む抽出残分をいう。
分離部における上記液体分及び溶媒不溶成分を分離する方法としては、例えば重力沈降法、濾過法、遠心分離法を用いることができ、それぞれ沈降槽、濾過器、遠心分離器が使用される。
蒸発分離工程S4では、上記固液分離工程S3で分離した液体分から溶媒を蒸発させる。この溶媒の蒸発分離により無灰炭が得られる。
当該電界紡糸用組成物に含まれる溶媒としては、上記無灰炭の製造方法で説明した溶媒を用いてもよいが、酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物を主成分とする溶媒を用いることが好ましい。酸素原子又は窒素原子を含む有機化合物を主成分とする溶媒には無灰炭を高濃度に溶解することができる。従って、上記溶媒を用いることで、炭素繊維の製造効率が高められる。
当該多孔質炭素繊維の製造方法は、図3に示すように堆積工程S5と加熱工程S6とを備える。
堆積工程S5では、当該電界紡糸用組成物を用いて電界紡糸を行うことで、基板表面に微細繊維を堆積する。
加熱工程S6では、上記堆積工程S5で得られた微細繊維を加熱する。この加熱工程S6は、加熱部により行うことができる。
加熱部は、加熱により上記微細繊維を炭素化する。
当該電界紡糸用組成物は無灰炭を炭素原料とする。無灰炭は比較的安価で優れた電界紡糸性を有し、炭素以外の物質を必要としない。また、無灰炭の優れた黒鉛化性に基づいて、成型等の処理を施すことなく電界紡糸により高比表面積で微細繊維状の多孔質炭素繊維が容易に得られる。また、電界紡糸を安定して行うことができる電界紡糸用組成物には適度な粘性が必要であり、無灰炭の含有量が一定以上であることが必要となる。この必要な無灰炭の含有量は溶媒との相互作用に依存し、必要な量の無灰炭を含む電界紡糸用組成物では、溶媒の分子が無灰炭分子と強く相互作用し、溶媒が固体としての融解現象を示さない。従って、溶媒の含有率から算出される上記溶媒の融解熱に対する示差走査熱量計で測定される溶媒起因の融解熱の比率を上記範囲内とすることで、電界紡糸が安定して効率的に行える。以上から、当該電界紡糸用組成物を用いることで、電界紡糸により安定して効率的に多孔質炭素繊維が製造できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
瀝青炭の溶媒抽出により製造された無灰炭を炭素原料として準備した。この無灰炭の元素分析値を表1に示す。また、この無灰炭の炭素収率は55質量%であった。
上記融解熱の比率Cが表3に示す値となるように無灰炭を溶解して電界紡糸用組成物を得た以外は実施例1と同様して、実施例2及び比較例1〜3の多孔質炭素繊維を製造した。なお、電界紡糸用組成物における無灰炭の含有量は表3に示すとおりである。
溶媒として大気圧における沸点が202℃であるN−メチルピロリドン(NMP)を準備した。NMPは、窒素及び酸素を含有する有機化合物である。この溶媒に上記融解熱の比率Cが表3に示す値となるように無灰炭を溶解して電界紡糸用組成物を得た以外は実施例1と同様して、実施例3、4及び比較例4〜6の多孔質炭素繊維を製造した。なお、電界紡糸用組成物における無灰炭の含有量は表3に示すとおりである。
上記実施例1〜4及び比較例1〜6について、以下の測定を行った。
電界紡糸における紡糸性について以下の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
A:繊維径が均一に制御され糸切れの少ない電界紡糸が可能である。
B:噴出される溶液流が液滴状となり、均一な繊維径で電界紡糸ができない。
C:噴出される溶液流が霧状となり、電界紡糸により繊維が得られない。
炭素繊維の平均径(平均繊維径)を光学顕微鏡により測定した。測定は、光学顕微鏡の視野内の任意の10本の繊維径を計測し、その平均を求めた。測定結果を表3に示す。
多孔質炭素繊維の比表面積を窒素吸着(BET法)により測定した。測定結果を表3に示す。
S2 溶出工程
S3 固液分離工程
S4 蒸発分離工程
S5 堆積工程
S6 加熱工程
1 シリンジ
1a ノズル
2 基板
3 溶液流
4 微細繊維
E 電圧
Claims (3)
- 多孔質炭素繊維を電界紡糸により製造するために用いる電界紡糸用組成物であって、
無灰炭及び溶媒を含み、
溶媒の含有率から算出される上記溶媒の融解熱に対する示差走査熱量計で測定される溶媒起因の融解熱の比率が0以上0.1以下である電界紡糸用組成物。 - 上記溶媒が、酸素原子又は窒素原子を含み、かつ大気圧における沸点が50℃以上250℃未満である有機化合物を主成分とする請求項1に記載の電界紡糸用組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載の電界紡糸用組成物の電界紡糸により、基板表面に微細繊維を堆積する工程と、
上記堆積工程で得られた微細繊維を加熱する工程と
を備える多孔質炭素繊維の製造方法。
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