JP5426832B2 - 無灰炭の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、石炭から無灰炭を製造する無灰炭の製造方法に関する。
従来、炭素材料は、耐熱性や化学的安定性に優れ、しかも電気伝導性があるため、構造材料や電気材料として広く利用されている。また、炭素は高温で多くの金属酸化物を還元する作用を示すので、シリコンやチタン等の精錬における還元剤としても使用される。炭素材料に求められる特性はその用途により様々であるが、炭素材料の特性を劣化させないため、灰分濃度が低く、熱流動性に優れる等の高品質な特性が要求される。そこで、炭素材料の原料炭として、石炭から溶剤に可溶な成分を抽出し、原料石炭よりも高品質な抽出炭を得る試みがなされている。
例えば、原料石炭を、溶剤である液化油と混合してスラリーとし、このスラリーを高温・高圧下で触媒を用いて水添、液化し、最終的に生成されるSRC(溶剤精製炭)を分離抽出して、これを炭素材料の原料炭として利用することが行われている。
しかし、このようにして得られた原料炭では、得られるSRC中に、灰分や使用済みの触媒が残存しており、炭素材料の原料炭として用いるには、品質が十分であるとはいえなかった。また、このSRCは、その製法の面においても、高価な水素や触媒を必要とし、且つ高温・高圧の条件で行わなければならないため、製造、設備コストが膨大となり、経済的ではないという問題もあった。
そこで、低灰分の原料炭という観点から、いわゆる無灰炭(ハイパーコール)の開発が、近年、活発に進められている。ここで、無灰炭とは、石炭を溶剤で抽出処理し、この溶剤に溶ける成分だけを分離して、その後、溶剤を除去することによって、製造されたものである。この無灰炭は、石炭中の灰分が溶剤に溶けないため、実質的に灰分を含まないことから、ガスタービン直噴燃料用途への利用を始めとして、燃焼効率の向上や石炭灰の低減等、環境負荷低減型の石炭利用技術に関して注目を集めている。また、この無灰炭は、加熱下で高い軟化溶融性を示し、熱流動性に優れることから、コークス原料としての適用が期待される等、様々な用途への適用性の検討が行われている。
このような石炭中の灰分を効率的に除去した無灰炭の製造方法として、例えば、非水素供与性溶剤を用いて石炭から石炭成分を加熱抽出し、灰分濃度を0.1質量%以下にした抽出炭を得る方法が開示されており、この抽出炭をコークス原料等に使用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
このような無灰炭の製造方法では、非水素供与性溶剤を用いるため、水素を用いることがなく、経済的である。また、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)のような強力な極性溶剤を用いないため、溶剤が石炭と強固な結合を形成することがなく、溶剤の回収が容易であり、無灰炭の製造コストを抑えることができる。
特開2005−120185号公報
しかしながら、従来の無灰炭の製造方法では、以下に示す問題がある。
特許文献1に記載の無灰炭の製造方法は、前記したように、非水素供与性溶剤を用いるものであるが、溶剤として非水素供与性溶剤を用いると、高い無灰炭収率が得られるものの、原料として用いる石炭の銘柄(あるいは石炭の種類(石炭種))によっては、溶剤に溶けにくいものがある。このような銘柄(石炭種)においては、溶剤に溶けやすい銘柄(石炭種)と比較して、高い無灰炭収率を得られない場合がある。そのため、原料石炭の銘柄(石炭種)に関わらず、無灰炭の収率を向上させるための技術の開発が望まれている。
言い換えれば、非水素供与性溶剤を用いた場合に、高い無灰炭収率(60質量%daf以上)が得られる石炭は、瀝青炭または亜瀝青炭の一部に限られており、より広い銘柄(石炭種)から高い無灰炭収率を得ることが課題となっている。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、原料石炭の銘柄(石炭種)に関わらず、高い無灰炭収率を得ることができる無灰炭の製造方法を提供することにある。
本発明に係る無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程と、スラリー加熱工程と、分離工程と、無灰炭取得工程と、を含み、前記無灰炭取得工程で除去した溶剤を、コークス炉ガスと接触させて、320〜370℃の温度で再度水素化処理し、この再度水素化処理した溶剤を、前記スラリー調製工程に供給し、循環して使用(循環利用)することを特徴とする。
このような製造方法によれば、スラリー調製工程において、石炭と水素化された溶剤とが混合されてスラリーが調製され、スラリー加熱工程において、石炭と溶剤とを混合したスラリーが加熱処理される。また、分離工程において、加熱処理されたスラリーが、石炭が溶解した液体成分と、灰分および不溶石炭を含む固体成分と、に分離され、無灰炭取得工程において、前記液体成分から前記溶剤が除去され、無灰炭が製造される。そして、無灰炭取得工程で除去された前記溶剤がコークス炉ガス(Coke Oven Gas:COG)と接触して再度水素化処理されることで、溶剤成分における2環芳香族化合物の一部の芳香環が部分的に水素化され、水素供与性を有する溶剤として改質される。これにより、石炭の抽出率が向上する。さらに、溶剤を循環利用することで、無灰炭の製造コストが削減される。
本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、原料石炭の銘柄(石炭種)に関わらず、無灰炭収率を向上させることができる。また、石炭の抽出に用いる溶剤を循環して使用することで、無灰炭の製造コストの削減を図ることができる。
次に、図面を参照して本発明に係る無灰炭の製造方法ついて詳細に説明する。なお、参照する図面において、図1は、無灰炭の製造方法の工程を説明するフローチャート、図2は、無灰炭の製造方法における重力沈降法を用いた場合の概略図である。
≪無灰炭の製造方法≫
図1に示すように、無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程(S1)と、スラリー加熱工程(S2)と、分離工程(S3)と、無灰炭取得工程(S4)と、を含むものである。そして、無灰炭の製造方法は、石炭成分を抽出するための溶剤を循環して使用するものである。
以下、各工程について説明する。
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程(S1)は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製する工程である。
[石炭]
原料となる石炭(以下、「原料石炭」ともいう)は、軟化溶融性をほとんど持たない非微粘結炭や、一般炭、低品位炭である褐炭、亜瀝青炭等の劣質炭を使用することが好ましい。これらのような安価な石炭を使用することで、無灰炭を安価に製造することができるため、経済性の向上を図ることができる。しかし、用いる石炭は、これら劣質炭に限るものではなく、瀝青炭を使用してもよい。
なお、ここでの劣質炭とは、非微粘結炭、一般炭、低品位炭等の石炭をいう。また、低品位炭とは、20質量%以上の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭のことである。このような低品位炭には、例えば、褐炭、亜炭、亜瀝青炭がある。例えば、褐炭には、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等があり、亜瀝青炭には、西バンコ炭、ビヌンガン炭、サマランガウ炭等がある。低品位炭は前記例示のものに限定されず、多量の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭は、いずれも本発明のいう低品位炭に含まれる。
[溶剤]
石炭を溶解する溶剤としては、後記するように、コークス炉ガス(COG)と接触させて水素化処理した溶剤を用いる。この溶剤は、無灰炭の製造において、循環利用するものであり、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン、エチルナフタレン等、脂肪族側鎖を有する2環芳香族化合物の一部の芳香環が、部分的に水素化された、部分水素化芳香族化合物であり、これは高い水素供与性を有するものである。なお、2環芳香族化合物には、その他脂肪族側鎖をもつナフタレン類、また、これにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖をもつアルキルベンゼンが含まれる。また、循環させる前の元になる溶剤としては、コークス炉から製造された乾留油のうち、沸点が200〜300℃程度の物を蒸留等の方法で分離し、これを水素化処理したものを用いてもよい。さらに、溶剤が不足した場合には、コークス炉から製造された乾留油を水素化処理して補填する。
水素化処理された溶剤は、加熱状態で、石炭の一部の分子が熱分解して生成するラジカルフラグメントに水素を与えて安定化させ、重縮合反応を抑えることにより、結果として溶剤に抽出される比較的低分子量な石炭成分の量を増やすことができる。そのため、溶剤に抽出される石炭成分の割合(以下、「抽出率」ともいう)が高くなる。また、この水素化処理された溶剤は、蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。そして、この回収した溶剤は、後記するように、再度水素化処理した後、スラリー調製工程(S1)に供給し、循環して繰り返し使用する。
溶剤は、沸点が200〜300℃のものが好ましい。沸点が200℃未満では、加熱抽出の際、または、後記する分離工程(S3)での必要圧力が高くなり、また、溶剤を回収する工程で揮発による損失が大きくなり、溶剤の回収率が低下する。さらに、加熱抽出での抽出率が低下する。一方、300℃を超えると、後記する液体成分および固体成分からの溶剤の分離が困難となり、溶剤の回収率が低下する。
溶剤と石炭を混合したスラリー中の石炭濃度は、原料石炭の種類にもよるが、乾燥炭基準で10〜50質量%の範囲が好ましく、20〜35質量%の範囲がより好ましい。溶剤に対する石炭濃度が10質量%未満では、溶剤の量に対し、溶剤に抽出する石炭成分の割合が少なくなり、経済的ではない。一方、石炭濃度は高いほど好ましいが、50質量%を超えると、スラリーの粘度が高くなり、スラリーの移動や分離工程(S3)での液体成分と固体成分との分離が困難となりやすい。
<スラリー加熱工程(S2)>
スラリー加熱工程(S2)は、前記スラリー調製工程(S1)で得られたスラリーを加熱処理する工程である。そして、スラリーを加熱処理することによって、石炭成分が溶剤に加熱抽出される。
スラリー加熱工程(S2)でのスラリーの加熱処理(加熱抽出)は、加熱温度を300〜420℃の範囲とするのが好ましい。加熱温度をこの範囲とすることにより、石炭を構成する分子間の結合が緩み、緩和な熱分解が起こり、抽出率が最も高くなる。また、溶剤中の移動性水素が、加熱処理で生ずる熱分解ラジカルに水素を与えてキャッピングして安定化させるため、石炭分子のラジカル重縮合反応が抑制される。これにより、石炭の抽出率が飛躍的に増加し、無灰炭の収率が増加する。加熱温度が300℃未満では、石炭を構成する分子間の結合を弱めるのに不十分であり、抽出率が低下する。一方、420℃を超えると、石炭の熱分解反応が非常に活発になり、生成した熱分解ラジカルの再結合が起こるため、抽出率が低下する。
加熱時間(抽出時間)は、一概には言えないが、通常は、予熱器を通過して、所定の抽出温度に到達後、10〜60分程度である。加熱時間が10分未満では、石炭成分の抽出が不十分となりやすく、一方、60分を超えても、それ以上抽出が進行しないため、経済的ではない。
また、分離工程(S3)へ移行する前に、この加熱したスラリーを冷却処理により、石炭から溶出した成分が再析出しない程度の温度、例えば200〜350℃程度まで冷却してもよい。スラリーを冷却することで、過度な熱分解の進行を抑える事ができ、結果として溶剤中の移動性水素の消耗や、溶解した石炭分子の熱分解による重合反応あるいは重縮合反応を抑えることができ、効率的である。その他、沈降槽の圧力を下げたり、バルブ等の仕様の水準を下げたりすることができる。
なお、この加熱抽出の際、石炭の熱分解により、主に平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200〜300℃にある芳香族に豊富な成分が生成し、好適に溶剤の一部として利用することができる。
加熱抽出は、非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。具体的には、不活性ガスの存在下で行う。加熱抽出の際、酸素に接触すると、発火する恐れがあるため危険であり、また、水素を用いた場合には、コストが高くなるためである。ただし、溶剤の水素化に用いたCOGを、あえて不活性ガスに置換する必要はなく、酸素が存在しなければ、COG雰囲気下で行うことも可能である。
加熱抽出で用いる不活性ガスとしては、安価な窒素を用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。前記のとおり、COGをそのまま用いてもよい。また、加熱抽出での圧力は、加熱抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
<分離工程(S3)>
分離工程(S3)は、前記スラリー加熱工程(S2)で加熱処理されたスラリーを、液体成分と固体成分とに分離する工程である。
ここで、液体成分とは、石炭が溶解した溶液、すなわち、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液をいい、固体成分とは、溶剤に不溶な灰分および不溶石炭を含むスラリーをいう。
分離工程(S3)でスラリーを液体成分と固体成分とに分離する方法としては、特に限定されるものではないが、重力沈降法を用いることが好ましい(重力沈降法については、後記する)。
スラリーを液体成分と固体成分とに分離する方法としては、各種の濾過方法や遠心分離による方法が一般的に知られている。しかしながら、濾過による方法ではフィルターの頻繁な交換が必要であり、また、遠心分離による方法では未溶解石炭成分による閉塞や機械的なトラブルが起こりやすく、これらの方法を工業的に実施するのは容易ではない。従って、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法を用いることが好ましい。これにより、重力沈降槽の上部からは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液である液体成分(以下、「上澄み液」ともいう)を、重力沈降槽の下部からは溶剤に不溶な灰分と不溶石炭を含むスラリーである固体成分(以下、「固形分濃縮液」ともいう)を得ることができる。なお、重力沈降法は、選択肢の一つであり、他の方法を用いても構わない。
<無灰炭取得工程(S4)>
無灰炭取得工程(S4)は、前記液体成分から溶剤を除去して無灰炭を取得する工程である。
液体成分(上澄み液)から溶剤を分離して除去する方法は、一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)等を用いることができ、分離して回収された溶剤は、後記するように、水素化処理した後、スラリー調製工程(S1)へ供給し、循環して繰り返し使用する。溶剤の分離・回収により、上澄み液からは、灰分濃度が極めて低い無灰炭を得ることができる。この無灰炭は、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、原料石炭よりも遥かに優れた性能(軟化溶融性)を示す。
なお、必要に応じて、前記無灰炭取得工程(S4)において、改質炭である無灰炭を得ることに加え、前記分離工程(S3)で分離された固体成分から溶剤を除去して改質炭である副生炭を製造してもよい(副生炭取得工程)。
この副生炭は、含酸素官能基が脱離されており、また、灰分が含まれるものの水分が皆無であり、発熱量も十分に有している。従って、この副生炭は、各種の燃料用等として利用することが可能である。
固体成分(固形分濃縮液)から溶剤を分離して除去する方法は、前記した液体成分から無灰炭を取得する無灰炭取得工程(S4)と同様に、一般的な蒸留法や蒸発法を用いることができ、分離して回収された溶剤は、後記するように、水素化処理した後、スラリー調製工程(S1)へ供給し、循環して繰り返し使用することができる。溶剤の分離・回収により、固形分濃縮液からは、灰分が濃縮された副生炭を得ることができる。
なお、分離工程(S3)で分離された液体成分から灰分のない無灰炭のみを製造し、固体成分からは溶剤のみ回収し、灰分の濃縮された副生炭は、廃棄してもよい。
また、前記した無灰炭および副生炭の取得における固液分離は、同じ装置を用いて、順次行うことができるが、それぞれ別の装置を用いて行ってもよい。また、無灰炭および副生炭の取得においては、同時に取得されるようにしてもよく、どちらか一方を先に取得するようにしてもよい。
前記無灰炭取得工程(S4)で除去した溶剤は、コークス炉ガス(COG)と接触させて水素化処理する(水素化処理工程)。そして、この水素化処理した溶剤は、前記スラリー調製工程(S1)に供給し、循環して使用する。
水素化処理は、COGに溶剤を接触させて加圧し、触媒存在下、所定の温度で反応させ、COGを水素元として溶剤を水素化するものである。
具体的には、所謂石油精製プラントにあるような水素化反応塔である、NiMoやCoMo等を充填した固定床触媒反応塔を用い、循環する溶剤にCOGを混合した後、例えば、昇圧ポンプを用いて5〜10MPaの圧力を保持する固定床触媒反応塔に送液し、320〜370℃程度の温度で反応させる。
この水素化処理により、2環芳香族化合物の一部(片方)の芳香環が部分的に水素化され(2環芳香族化合物が部分的に水素化され)、水素供与性を有する溶剤として改質される。そして、溶剤が水素供与性を有することで、抽出温度下で熱分解して生成したラジカルを安定化させ、石炭の熱分解による重縮合反応を抑え、石炭の抽出率が増加する。これにより、石炭の性状や石炭種に対応して、所期する無灰炭製造量を安定的に得ることができる。
COGは、石炭を乾留してコークスを作る際に発生する、コークス炉から排出される副生ガスである。このCOGには、通常、50〜70質量%の水素が含まれ、その他メタン、一酸化炭素、アンモニアが含まれる。
なお、コークス炉から排出されたCOGは800℃程度であり、この顕熱を利用して、接触させた溶剤を昇温させることで、水素化処理での加熱負荷を抑えることもできる。
水素化処理の温度は、320〜370℃で行うのが好ましい。これは、触媒存在下、効率的に部分水素化芳香族を製造する、すなわち、芳香環をナフテン化する反応として一般的な温度のためである。320〜370℃で水素化処理を行うことで、溶剤成分における2環芳香族化合物の一部の芳香環が部分的に水素化されやすくなり、水素供与性を有する溶剤として改質されやすくなる。また、水素化処理の圧力は、5〜10MPaが好ましく、LHSV(プロピレン基準)は、1hr−1程度が好ましい。
水素化処理で用いる触媒は、一般的な石油精製プロセスで用いられる触媒と同様の物でよく、NiMo/Al触媒や、CoMo/Al触媒を用いればよい。
このようにして、無灰炭取得工程(S4)で除去・回収した溶剤は、水素化処理を施した後、スラリー調製工程(S1)に供給し、石炭と混合してスラリーを調製する。そして、このスラリーを、スラリー加熱工程(S2)で加熱処理し、石炭成分を溶剤に加熱抽出する。その後、分離工程(S3)、無灰炭取得工程(S4)を経て、再び溶剤が除去・回収される。そして、回収した溶剤は再度水素化処理して、スラリー調製工程(S1)に供給する。これを繰り返すことで、溶剤は循環して使用される。
なお、溶剤の循環を繰り返すうちに、スラリーを調整するための溶剤が不足した場合には、コークス炉から製造された乾留油を水素化処理して補填する。また、循環させる前の元になる溶剤としても、このコークス炉から製造された乾留油を水素化処理したものを用いてもよい。
次に、無灰炭の製造方法において、重力沈降法を用いた場合の一例について、図1、2を参照して説明する。
図2に示すように、重力沈降法では、固液分離装置100において、まず、石炭スラリー調製槽1で、無灰炭の原料である粉体の石炭と溶剤とを混合し、スラリーを調製する(スラリー調製工程(S1))。次に、ポンプ2によって、石炭スラリー調製槽1からスラリーを予熱器3に所定量供給し、スラリーを300〜420℃まで加温する。そして、加温したスラリーを抽出槽4に所定量供給し、攪拌機10で攪拌しながら300〜420℃で所定時間加熱した後、必要に応じて、冷却器7により、所定温度に冷却する(スラリー加熱工程(S2))。なお、スラリーを冷却するために、抽出槽4に冷却機構を設けておいてもよい。そして、この抽出処理を行ったスラリーを、重力沈降槽5へ供給して、スラリーを上澄み液と固形分濃縮液とに分離し(分離工程(S3))、重力沈降槽5の下部に沈降した固形分濃縮液を固形分濃縮液受器6に排出するとともに、上部の上澄み液をフィルターユニット8へ所定量排出する。
ここで、重力沈降槽5内は、原料の石炭から溶出した成分の再析出を防止するため、スラリーを加熱した温度、スラリーを加熱した後に冷却した場合は、加熱後に冷却した温度に維持することが好ましく、また、圧力は、1.0〜2.0MPaの範囲とすることが好ましい。また、重力沈降槽5内において、所定の温度で維持する時間は、スラリーを上澄み液と固形分濃縮液とに分離するのに必要な時間であり、一般的に60〜120分であるが、特に限定されるものではない。
そして、以下に説明するように、この上澄み液(液体成分)および固形分濃縮液(固体成分)から蒸留法等を用いて溶剤を分離・回収し、液体成分からは改質炭である灰分濃度が極めて低い無灰炭を得る(無灰炭取得工程(S4))。また、必要に応じて、固体成分からは、改質炭である灰分の濃縮された副生炭を得ることができる。
そして、分離・回収された溶剤は、COGと混合し(接触させ)、昇圧ポンプ11で5〜10MPaの圧力で加圧した後、溶剤加熱装置12で320〜370℃に昇温し、触媒を充填した水素化処理装置(水素化反応塔)13に流通させて水素化処理する。その後、減圧弁14により減圧して、石炭スラリー調製槽1に供給する。
なお、COGとの混合や、温度、圧力の制御等は、水素化処理装置13に供給する前後に行ってもよいが、水素化処理装置13内で行ってもよい。
本発明は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、原料石炭を粉砕する石炭粉砕工程や、ごみ等の不要物を除去する除去工程や、液体成分を濾過する濾過工程や、得られた無灰炭を乾燥させる乾燥工程等、他の工程を含めてもよい。
次に、本発明に係る無灰炭の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[第1実施例]
第1実施例では、性状の異なる2種の原料石炭について、水素供与性を有しない2環芳香族溶剤を用いた場合の抽出率を調べた(実験例1)。
本実施例では、図3に示すような石炭抽出濾過装置を用いた。
表1に示す工業分析値および元素分析値である石炭銘柄A(石炭A)(中国産ナントン炭(瀝青炭))、石炭銘柄B(石炭B)(中国産エンシュウ炭(瀝青炭と亜瀝青炭の境界))を原料石炭とし、それぞれの原料石炭10gに対し、40gの溶剤(1−メチルナフタレンを主成分とする、商品名、メチナフ−H(シーケム社製))(S0)を混合して、石炭濃度20質量%のスラリーを調製した。このスラリーを1.2MPaの窒素で加圧した、内容積200mLオートクレーブ(抽出槽)中380℃、1時間の条件で抽出し、このスラリーを、同一温度を維持した状態で、オートクレーブ下部に設置した濾過器へ通し、高温濾過した。濾過終了後、フィルター上部に残る濾過後の固形分を乾燥した濾残秤量値により、石炭の抽出率を算出した。具体的には、(原料石炭−濾過後の固形分)/原料石炭×100の式により求めた。なお、原料石炭、濾過後の固形分は、いずれも無水無灰炭ベースの質量である。
Figure 0005426832
石炭Aおよび石炭Bの抽出率を図4に示す。図4に示すように、石炭Aでは、無水無灰炭ベースで43.2質量%であったのに対し、石炭Bでは、65.7質量%であった。このように、水素供与性を有しない2環芳香族溶剤への石炭の抽出率は、石炭銘柄(石炭種)によって大きく異なることがわかる。
[第2実施例]
第2実施例では、抽出率の低かった石炭Aについて、第1実施例で用いた溶剤(S0)を水素化処理して用いた場合の抽出率を調べた(実験例2)。
溶剤S0を、COGと同様の水素分率(水素分率70質量%、その他メタン、一酸化炭素、アンモニアを混合)で調製した混合ガスとともに、温度を300〜350℃で変化させ、圧力8MPa、LHSV=1hr−1として、触媒(NiMo/Al)を充填した水素化処理装置に流通させ、水素化処理した。
水素化処理(水素化反応)の結果、溶剤S1〜S5を得た。ここで、溶剤S0の水素/炭素(H/C)原子比は、0.909であるが、水素化処理(水素化反応)の結果、この0.909であった溶剤S0のH/C原子比が、溶剤S1では、0.916、S2では、0.925、S3では、0.939、S4では、0.968、S5では、1.200となった。そして、溶剤S1〜S5を用い、第1実施例と同様の方法で石炭Aを抽出し、抽出率を算出した。抽出率は、S1:44.1質量%、S2:49.2質量%、S3:57.9質量%、S4:64.9質量%、S5:68.7質量%であった。
溶剤のH/C原子比と、抽出率の関係を図5に示す。
図5に示すように、溶剤のH/C比が1程度にいたるまで、H/C比が大きくなるほど抽出率が増加し、43.2質量%であった溶剤S0の抽出率を、68.7質量%(溶剤S5)まで増加させることができた。
よって、COGと接触させて水素化処理した溶剤を用いることにより、水素化処理していない溶剤中では十分な抽出率が得られなかった石炭Aでも、石炭Bと同様に、65質量%以上の高い抽出率が得られ、結果として無灰炭の収率を増加させることができることがわかった。よって、本発明に係る無灰炭の製造方法によれば、石炭の性状変化や石炭銘柄(石炭種)に対応して、COGによる溶剤の水素化処理によって、所期する無灰炭製造量を安定的に得ることができる。
以上、本発明に係る無灰炭の製造方法について最良の実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。
本発明に係る無灰炭の製造方法の工程を説明するフローチャートである。 本発明に係る無灰炭の製造方法における重力沈降法を用いた場合の概略図である。 実施例で使用する石炭抽出濾過装置の概略図である。 実施例における石炭Aおよび石炭Bの抽出率を示すグラフである。 溶剤の水素/炭素(H/C)原子比と、抽出率の関係を示すグラフである。
符号の説明
S1 スラリー調製工程
S2 スラリー加熱工程
S3 分離工程
S4 無灰炭取得工程
1 石炭スラリー調製槽
2 ポンプ
3 予熱器
4 抽出槽
5 重力沈降槽
6 固形分濃縮液受器
7 冷却器
8 フィルターユニット
9 上澄み液受器
10 攪拌機
11 昇圧ポンプ
12 溶剤加熱装置
13 水素化処理装置(水素化反応塔)
14 減圧弁
100 固液分離装置

Claims (1)

  1. 石炭と水素化された溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
    前記スラリー調製工程で得られたスラリーを加熱処理するスラリー加熱工程と、
    前記スラリー加熱工程で加熱処理されたスラリーを、石炭が溶解した液体成分と、灰分および不溶石炭を含む固体成分と、に分離する分離工程と、
    前記液体成分から前記溶剤を除去して、無灰炭を取得する無灰炭取得工程と、
    を含み、
    前記無灰炭取得工程で除去した前記溶剤を、コークス炉ガスと接触させて、320〜370℃の温度で再度水素化処理し、この再度水素化処理した溶剤を、前記スラリー調製工程に供給し、循環して使用することを特徴とする無灰炭の製造方法。
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