JP2016108473A - コークスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高純度のコークスが得られるコークスの製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のコークスの製造方法は、石油精製プロセスで得られる残渣、及び石炭の溶剤抽出処理により得られる無灰炭を混合する工程と、この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程とを備える。上記混合工程前に、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する工程をさらに備えるとよい。また、混合工程で混合する無灰炭として、抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを用いてもよい。また、無灰炭製造工程の抽出処理溶剤として、混合工程の残渣を用いるとよい。また、抽出処理溶剤として用いる残渣の量を混合工程で混合する残渣全量とし、上記混合工程を無灰炭製造工程で行ってもよい。混合工程における無灰炭に対する残渣の混合割合としては、100質量%以上1000質量%以下が好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、コークスの製造方法に関する。
燃料油は、原油を原料として複雑な石油精製プロセスを経て製造される。石油精製プロセスは、燃料油の得率を上げるために、一般に常圧蒸留、減圧蒸留、水素化分解、接触分解、コーカー処理、異性化などの様々な工程で構成される。これらの工程の中のコーカー処理工程では、常圧蒸留残渣(以下、「AR(atmospheric residue)」ともいう)、減圧蒸留残渣(以下、「VR(vacuum residue)」ともいう)、各種の熱分解や接触分解プロセスで生成する分解残油などの残渣を熱分解し、さらに燃料油分を得る。コーカー処理工程においてARやVRを400℃以上500℃以下の高温で加熱処理することにより、燃料油と生コークスとが生成される。
このようにして生成された生コークスの一部は、さらに1200℃以上の高温処理によりカルサインコークスに転換され、アルミニウム精錬用の炭素陽極の原料として用いられる。アルミニウム精錬用の炭素陽極に用いるカルサインコークスとしては、硫黄含有率が低い高純度のものが要求される。
一方、上記コーカー処理において、デカントオイルに石炭を混合してディレードコーカーに装入するコークスの製造方法が提案されている(国際公開第2008/130746号参照)。このコークスの製造方法は、石炭中の油分を利用してジェット燃料などの燃料油を生成すると共にコークスを生成する。
しかし、上記文献で提案されているコークスの製造方法では、高品質の燃料油が得られるが、同時に高純度のコークスを得ることはできない。つまり、このコークスの製造方法で得られるコークスは無機成分が一定量含まれるため、高純度が要求されるアルミニウム精錬用の炭素陽極などには使用できない。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高純度のコークスが得られるコークスの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、石油精製プロセスで得られる残渣、及び石炭の溶剤抽出処理により得られる無灰炭を混合する工程と、この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程とを備えるコークスの製造方法である。
当該コークスの製造方法は、無機成分が少ない無灰炭と残渣とを混合して加熱するので、無機成分の含有量の少ない高純度のコークスが得られる。また、当該コークスの製造方法は、上記下限以上の温度で残渣と無灰炭との混合物を加熱するので、上記残渣の熱分解が促進され、効率よく高純度のコークスが得られる。なお、無灰炭のみを加熱処理した場合、炭素化過程の400℃以上500℃以下の高粘度の状態で気体成分が発泡するため、スポンジ状の炭素となる。しかし、当該コークスの製造方法は、無灰炭と残渣とを混合して加熱するので、炭素化過程における発泡を抑制でき、高密度のコークスが得られる。ここで、「無灰炭」とは、石炭を改質して灰分含有率を大幅に低減させた改質炭であるが、本発明では、特に灰分含有率が1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、かつ硫黄含有率(d.a.f.)が2質量%以下、より好ましくは1質量%以下であるものをいう。なお、「灰分」は、JIS−M8812(2004)に準拠して測定される値を意味し、硫黄含有率は、JIS−M8813(2004)に準拠して測定される値を意味する。
上記混合工程前に、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する工程をさらに備えるとよい。このように、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する工程を混合工程前に備えることで、無灰炭の搬送経路を短くでき、無灰炭の移送コストを低減できる。
上記混合工程で混合する無灰炭として、抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを用いるとよい。このように、無灰炭製造工程における抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを混合工程で混合することで、無灰炭製造の工程を削減できる。また、無灰炭が残渣と混合し易くなり、無灰炭と残渣との混合に要する時間を短縮できる。
上記無灰炭製造工程の抽出処理溶剤として、上記混合工程の残渣を用いるとよい。このように、無灰炭製造工程の抽出処理溶剤として混合工程の残渣を用いることで、無灰炭の製造工程で用いる抽出処理溶剤の使用量を削減できる。
上記抽出処理溶剤として用いる残渣の量を上記混合工程で混合する残渣全量とし、上記混合工程を無灰炭製造工程で行うとよい。このように、混合工程で混合する残渣全量を無灰炭の抽出処理溶剤として用いることで、残渣と無灰炭とを混合する工程を無灰炭製造と同時に行える。また、無灰炭製造装置とは別に残渣を混合する設備を設けなくてもよく、コークス製造設備を簡略化及び小型化でき、設備コストを低減できる。
上記混合工程における無灰炭に対する残渣の混合割合としては、100質量%以上1000質量%以下が好ましい。このように、混合工程における無灰炭に対する残渣の混合割合を上記範囲内とすることで、加熱時の発泡を確実に抑制し、より確実にコークスの純度を高めることができる。
上記加熱工程をディレードコーカーで行うとよい。このように、加熱工程をディレードコーカーで行うことにより、複数のドラムを切り替えながら各ドラム内で熱分解を進行させるので、高純度のコークスの生産効率を高められる。
以上説明したように、本発明のコークスの製造方法によれば、高純度のコークスが得られる。
以下、本発明に係るコークスの製造方法の実施形態について説明する。
〔第一実施形態〕
図1に示す当該コークスの製造方法は、石油精製プロセスで得られる残渣、及び石炭の溶剤抽出処理により得られる無灰炭を混合する工程(混合工程:ステップS2)と、この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程(加熱工程:ステップS3)とを主に備える。また、当該コークスの製造方法は、ステップS2の混合工程前に、溶剤抽出処理により石炭から上記無灰炭を製造する工程(無灰炭製造工程:ステップS1)をさらに備える。
図1に示す当該コークスの製造方法は、石油精製プロセスで得られる残渣、及び石炭の溶剤抽出処理により得られる無灰炭を混合する工程(混合工程:ステップS2)と、この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程(加熱工程:ステップS3)とを主に備える。また、当該コークスの製造方法は、ステップS2の混合工程前に、溶剤抽出処理により石炭から上記無灰炭を製造する工程(無灰炭製造工程:ステップS1)をさらに備える。
<無灰炭製造工程>
ステップS1の無灰炭製造工程において、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する。具体的には、図2に示す無灰炭製造部1で石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合した後、石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合したスラリーから石炭Bの可溶成分を抽出して無灰炭Cを得る。
ステップS1の無灰炭製造工程において、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する。具体的には、図2に示す無灰炭製造部1で石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合した後、石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合したスラリーから石炭Bの可溶成分を抽出して無灰炭Cを得る。
ステップS1の無灰炭製造工程は、各種公知の製造方法を用いることができ、例えばスラリー加熱工程(ステップS11)、分離工程(ステップS12)、及び無灰炭回収工程(ステップS13)を備える製造方法を用いることができる。
(スラリー加熱工程)
ステップS11のスラリー加熱工程では、石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合してスラリーを調製し、加熱処理して石炭Bの可溶成分を抽出処理溶剤Gに抽出する。無灰炭Cの原料の石炭Bの種類は特に限定されず、例えば瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭等の各種公知の石炭を使用できる。これらの中でも、経済性の観点から、亜瀝青炭、褐炭、亜炭等の低品位炭が好ましい。
ステップS11のスラリー加熱工程では、石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合してスラリーを調製し、加熱処理して石炭Bの可溶成分を抽出処理溶剤Gに抽出する。無灰炭Cの原料の石炭Bの種類は特に限定されず、例えば瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭等の各種公知の石炭を使用できる。これらの中でも、経済性の観点から、亜瀝青炭、褐炭、亜炭等の低品位炭が好ましい。
上記抽出処理溶剤Gとしては、石炭の可溶成分の抽出に用いられる溶剤であれば特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの単環芳香族化合物や、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレンなどの2環芳香族化合物等を用いることができる。ここで、上記2環芳香族化合物には、脂肪族鎖を有するナフタレン類や長鎖脂肪族鎖を有するビフェニル類が含まれる。なお、上記抽出処理溶剤Gに、石油精製プロセスで得られる残渣は含まない。
上記抽出処理溶剤Gの中でも、石炭乾留生成物から精製した石炭誘導体である2環芳香族化合物が好ましい。石炭誘導体の2環芳香族化合物は、加熱状態でも安定しており、石炭Bとの親和性に優れている。そのため、抽出処理溶剤Gとしてこのような2環芳香族化合物を用いることで、抽出処理溶剤Gに抽出される石炭成分の割合(以下、「抽出率」ともいう)を高めることができると共に、蒸留等の方法で容易に抽出処理溶剤Gを回収し循環使用することができる。
抽出処理溶剤Gの沸点の下限としては、180℃が好ましい。一方、抽出処理溶剤Gの沸点の上限としては、330℃が好ましい。抽出処理溶剤Gの沸点が上記下限未満の場合、加熱抽出の際に抽出率が低下すると共に、必要圧力が高くなるおそれがある。また、後述の分離工程でも必要圧力が高くなるほか、抽出処理溶剤Gを回収する工程で揮発による損失が増大し、抽出処理溶剤Gの回収率が低下するおそれがある。逆に、抽出処理溶剤Gの沸点が上記上限を超える場合、分離工程での液体成分又は固体成分からの抽出処理溶剤Gの分離が困難となり、抽出処理溶剤Gの回収率が低下する。
スラリー中の抽出処理溶剤Gに対する石炭Bの混合割合の下限としては、乾燥炭基準で、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。一方、上記混合割合の上限としては、50質量%が好ましく、35質量%がより好ましい。上記混合割合が上記下限未満の場合、抽出処理溶剤Gの量に対し抽出される石炭成分が少なくなるため経済的ではない。逆に、上記混合割合が上記上限を超える場合、スラリーの粘度が高くなり、スラリーの移動や分離工程での液体成分と固体成分との分離が困難となるおそれがある。
スラリーの加熱温度(抽出温度)の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましい。一方、スラリーの加熱温度の上限としては、470℃が好ましく、450℃がより好ましい。スラリーの加熱温度が上記下限未満の場合、十分な無灰炭Cの収率が得られず経済的ではない。逆に、スラリーの加熱温度が上記上限を超える場合、石炭Bの熱分解反応が非常に活発になり生成した熱分解ラジカルの再結合が起こるため、抽出率が低下するおそれがある。
スラリーの加熱時間(抽出時間)の下限としては、10分が好ましい。一方、スラリーの加熱時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。スラリーの加熱時間が上記下限未満の場合、石炭Bの可溶性分の抽出が不十分となるおそれがある。逆に、スラリーの加熱時間が上記上限を超える場合、石炭Bの熱分解反応が進行しすぎてラジカル重合反応が進むことで抽出率が低下するおそれがある。
スラリーを加熱した後、熱分解反応を抑制するためにスラリーを冷却することが好ましい。スラリーの冷却温度の下限としては、300℃が好ましい。一方、スラリーの冷却温度の上限としては、370℃が好ましい。スラリーの冷却温度が上記下限未満の場合、抽出処理溶剤Gの溶解力が低下して、一旦抽出された石炭成分の再析出が起き、無灰炭Cの収率が低下するおそれがある。逆に、スラリーの冷却温度が上記上限を超える場合、熱分解反応を十分に抑制できないおそれがある。
なお、スラリーの加熱抽出は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。具体的には、スラリーの加熱抽出を窒素等の不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。窒素等の不活性ガスを用いることで、加熱抽出の際にスラリーが酸素に接触して発火することを低コストで防止できる。
スラリーの加熱抽出時の圧力は加熱温度や用いる抽出処理溶剤Gの蒸気圧にもよるが、スラリーの加熱抽出時の圧力の下限としては、例えば1MPaが好ましい。一方、スラリーの加熱抽出時の圧力の上限としては、例えば2MPaが好ましい。スラリーの加熱抽出時の圧力が上記下限未満であると、抽出処理溶剤Gが揮発して石炭Bの可溶性分を液相に閉じ込められず、可溶性分を抽出できないおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超える場合、設備コスト及び運転コストが増加するおそれがある。
(分離工程)
ステップS12の分離工程では、上記ステップS11のスラリー加熱工程で加熱処理されたスラリーを液体成分と固体成分とに分離する。スラリーの液体成分とは、抽出処理溶剤Gに抽出された石炭成分を含む溶液部分である。スラリーの固体成分とは、抽出処理溶剤Gに不溶な灰分と石炭成分とを含む部分である。
ステップS12の分離工程では、上記ステップS11のスラリー加熱工程で加熱処理されたスラリーを液体成分と固体成分とに分離する。スラリーの液体成分とは、抽出処理溶剤Gに抽出された石炭成分を含む溶液部分である。スラリーの固体成分とは、抽出処理溶剤Gに不溶な灰分と石炭成分とを含む部分である。
スラリーを液体成分と固体成分とに分離する方法としては、特に限定されず、濾過法、遠心分離法、重力沈降法等の公知の分離方法を採用できる。これらの中でも、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法が好ましい。重力沈降法では、重力沈降槽の上部に抽出処理溶剤Gに抽出された石炭成分を含む液体成分である上澄み液が分離され、重力沈降槽の下部に固体成分として抽出処理溶剤Gに不溶な灰分と石炭成分とを含む固形分濃縮液が分離される。
(無灰炭回収工程)
ステップS13の無灰炭回収工程では、上記ステップS12の分離工程で得たスラリーの液体成分から抽出処理溶剤Gを分離して灰分の極めて低い無灰炭Cを回収する。
ステップS13の無灰炭回収工程では、上記ステップS12の分離工程で得たスラリーの液体成分から抽出処理溶剤Gを分離して灰分の極めて低い無灰炭Cを回収する。
スラリーの液体成分から抽出処理溶剤Gを分離する方法は特に限定されず、一般的な蒸留法やスプレードライ法などの蒸発法等を用いることができる。抽出処理溶剤Gの分離により、上記液体成分から無灰炭Cが得られる。また、分離回収された抽出処理溶剤Gは、再度ステップS11のスラリー加熱工程で使用でき、ステップS1の無灰炭製造工程で循環使用することができる。
無灰炭Cは、このように抽出処理溶剤Gを用いて石炭Bから灰分と非溶解性成分とを可能な限り除去した改質炭である。無灰炭Cの灰分含有率の上限としては、1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。また、無灰炭Cは、水分含有量が概ね0.5質量%以下と微小であり、原料石炭Bよりも高い熱流動性を示す。
残渣と混合する際の無灰炭Cの粒径は特に限定されないが、無灰炭Cのメディアン径の下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、無灰炭Cのメディアン径の上限としては、5mmが好ましく、2mmがより好ましい。無灰炭Cのメディアン径が上記下限未満の場合、取扱い性が低下するおそれがある。逆に、無灰炭Cのメディアン径が上記上限を超える場合、残渣と混合し難くなり、無灰炭Cと残渣とを混合する時間が長くなるため、コークスの製造時間が長くなるおそれがある。無灰炭Cのメディアン径が上記上限を超える場合、残渣と混合する前に、メディアン径が上記範囲内となるよう無灰炭Cを粉砕することが好ましい。なお、「メディアン径」とは、レーザー回折散乱法によって求めた粒度分布において体積積算値50%となる粒径を意味する。
なお、ステップS1の無灰炭製造工程では、必要に応じて各種処理工程を付加してもよい。具体的には、上記ステップS11、ステップS12及びステップS13の各工程に悪影響を与えない範囲において、上記各工程間又は前後に、例えば原料石炭を粉砕する工程、異物等を除去する工程、得られた無灰炭を乾燥させる工程等の工程を含めてもよい。
また、必要に応じてスラリーの固体成分から抽出処理溶剤Gを分離して灰分が濃縮された副生炭を製造してもよい。固体成分から抽出処理溶剤Gを分離する方法は、上述した液体成分から無灰炭Cを取得する方法と同様、一般的な蒸留法や蒸発法を用いることができる。
<混合工程>
ステップS2の混合工程において、石油精製プロセスで得られる残渣と、ステップS1の無灰炭製造工程で製造される無灰炭Cとを混合する。具体的には、図2に示す混合部2で残渣Aと石炭Bの溶剤抽出処理により得られる無灰炭Cとを混合し、残渣Aと無灰炭Cとの混合物Dを得る。
ステップS2の混合工程において、石油精製プロセスで得られる残渣と、ステップS1の無灰炭製造工程で製造される無灰炭Cとを混合する。具体的には、図2に示す混合部2で残渣Aと石炭Bの溶剤抽出処理により得られる無灰炭Cとを混合し、残渣Aと無灰炭Cとの混合物Dを得る。
混合部2として、例えば撹拌手段を有する通常のミキサーを用いることができる。混合部2において、例えば残渣Aを先に仕込み、残渣Aを所定温度まで加熱した後に無灰炭Cを装入すると、無灰炭Cと残渣Aとが混合し易い。このとき、無灰炭Cの装入直前の残渣Aの加熱温度の下限としては、80℃が好ましく、100℃がより好ましい。一方、上記残渣Aの加熱温度の上限としては、400℃が好ましく、300℃がより好ましい。上記残渣Aの加熱温度が上記下限未満の場合、無灰炭Cと残渣Aとを混合する時間が長くなり、コークスの製造時間が長くなるおそれがある。逆に、上記残渣Aの加熱温度が上記上限を超える場合、残渣Aの加熱に要するエネルギーが大きくなり、製造コストが増加するおそれがある。
残渣Aは、石油精製プロセスで得られるものであり、例えば常圧蒸留で得られるARや減圧蒸留で得られるVR、あるいは各種の熱分解や接触分解プロセスで生成する分解残油などである。
ステップS2の混合工程における無灰炭Cに対する残渣Aの混合割合の下限としては、100質量%が好ましく、200質量%がより好ましい。一方、上記残渣Aの混合割合の上限としては、1000質量%が好ましく、500質量%がより好ましく、300質量%がさらに好ましい。上記残渣Aの混合割合が上記下限未満の場合、無灰炭Cの発泡抑制効果が十分に得られないおそれがあると共に、混合物Dの溶融粘度が高くなり、取扱い難くなるおそれがある。逆に、上記残渣Aの混合割合が上記上限を超える場合、後述するステップS3の加熱工程で得られる燃料油及びコークスの品質及び得率を十分に向上できないおそれがある。
<加熱工程>
ステップS3の加熱工程において、上記ステップS2の混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する。具体的には、図2に示す加熱部3で、残渣Aと無灰炭Cとの混合物Dを400℃以上に加熱し、燃料油EとコークスFとを得る。なお、ステップS3の加熱工程では、燃料油E及びコークスFと共に、ブタン、エタン、エチレン等のガスも発生する。
ステップS3の加熱工程において、上記ステップS2の混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する。具体的には、図2に示す加熱部3で、残渣Aと無灰炭Cとの混合物Dを400℃以上に加熱し、燃料油EとコークスFとを得る。なお、ステップS3の加熱工程では、燃料油E及びコークスFと共に、ブタン、エタン、エチレン等のガスも発生する。
加熱部3で、混合物Dを400℃以上に加熱することにより、混合物Dに含まれる残渣A及び無灰炭Cが熱分解し、燃料油EとコークスFとが生成される。加熱部3で混合物Dが熱分解すると、時間の経過と共に分解反応と重縮合反応とが進行し、ガスとコークスFとに分離する。蒸発分離したこのガスから燃料油Eが得られる。燃料油Eには、灯油、軽油、ガソリンなどの原料が含まれる。ここで得られるコークスFは高純度のものが得られるので、例えばアルミニウム精錬用の炭素陽極の原料として用いることができる。
加熱部3として、例えば石油精製で使用するコーカー装置を用いることができる。
コーカー装置の中でも、ディレードコーカーが好ましい。ステップS3の加熱工程をディレードコーカーで行うことにより、複数のドラムを切り替えながら各ドラム内で熱分解を進行させるので、効率よく高純度のコークスFを製造できる。
コーカー装置の中でも、ディレードコーカーが好ましい。ステップS3の加熱工程をディレードコーカーで行うことにより、複数のドラムを切り替えながら各ドラム内で熱分解を進行させるので、効率よく高純度のコークスFを製造できる。
ステップS3の加熱工程における混合物Dの加熱温度の下限としては、400℃であり、430℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、500℃が好ましく、470℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満の場合、熱分解が進行せず、高純度のコークスが得られない。なお、無灰炭Cと残渣Aとの混合物Dではなく石炭Bと残渣Aとを混合させた混合物を用いた場合には、石炭Bは無灰炭Cに比べて残渣Aと混合し難いので、上述した温度よりもさらに高い温度としなければ熱分解が進行しない。逆に、上記加熱温度が上記上限を超える場合、コーキングの促進により制御が困難となり、油分の収率が低下するおそれがある。
ステップS3の加熱工程における混合物Dの加熱時間の下限としては、1時間が好ましく、3時間がより好ましい。一方、上記加熱時間の上限としては、10時間が好ましく、7時間がより好ましい。上記加熱時間が上記下限未満の場合、コーキングが不十分となり、コークスFの品質及び得率が低下するおそれがある。逆に、上記加熱時間が上記上限を超える場合、燃料油E及びコークスFの品質及び得率のさらなる向上は得られず、コークス製造工程全体におけるコークスFの製造時間が長くなるおそれがある。
また、ステップS3の加熱工程における混合物Dの加熱は、加圧下で行うことが好ましい。混合物Dを加熱する際の圧力の下限としては、0.2MPaが好ましく、0.4MPaがより好ましい。一方、上記圧力の上限としては、0.7MPaが好ましく、0.6MPaがより好ましい。上記圧力が上記下限未満であると、無灰炭Cが発泡し易くなるおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超えると、設備コスト及び運転コストが増加するおそれがある。
<利点>
当該コークスの製造方法は、無機成分が少ない無灰炭と残渣とを混合して加熱するので、無機成分の含有量の少ない高純度のコークスが得られる。また、当該コークスの製造方法は、400℃以上で残渣及び無灰炭の混合物を加熱するので、残渣の熱分解が促進され、効率よく高純度のコークスが得られる。
当該コークスの製造方法は、無機成分が少ない無灰炭と残渣とを混合して加熱するので、無機成分の含有量の少ない高純度のコークスが得られる。また、当該コークスの製造方法は、400℃以上で残渣及び無灰炭の混合物を加熱するので、残渣の熱分解が促進され、効率よく高純度のコークスが得られる。
また、当該コークスの製造方法は、無灰炭と残渣とを混合して加熱するので、炭素化過程における発泡を抑制でき、高密度のコークスが得られる。
また、無灰炭におけるニッケル、バナジウム、硫黄などの不可避的に含まれる元素の含有率は残渣におけるそれらの含有率よりも低いので、当該コークスの製造方法は、残渣のみを原料として製造するコークスに比べて純度の高いコークスを製造できる。
〔第二実施形態〕
図3に示す当該コークスの製造方法は、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する工程(無灰炭製造工程:ステップS101)と、石油精製プロセスで得られる残渣及び上記無灰炭を混合する工程(混合工程:ステップS2)と、この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程(加熱工程:ステップS3)とを備える。ステップS2の混合工程では、ステップS101の無灰炭製造工程で抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを上記無灰炭として用いる。
図3に示す当該コークスの製造方法は、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する工程(無灰炭製造工程:ステップS101)と、石油精製プロセスで得られる残渣及び上記無灰炭を混合する工程(混合工程:ステップS2)と、この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程(加熱工程:ステップS3)とを備える。ステップS2の混合工程では、ステップS101の無灰炭製造工程で抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを上記無灰炭として用いる。
図3に示す当該コークスの製造方法は、第一実施形態のコークスの製造方法の混合工程で無灰炭Cを混合するのに対し、無灰炭として抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを混合する点が異なる。図3に示す当該コークスの製造方法は、この点以外は第一実施形態のコークスの製造方法と同様の構成であるため、この点以外の構成及び手順については説明を省略する。
<無灰炭製造工程>
ステップS101の無灰炭製造工程において、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する。具体的には、図4に示す無灰炭製造部11で石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合し、溶剤抽出処理を行う。無灰炭製造部11は、図2の無灰炭製造部1と同様の方法で溶剤抽出処理を行い、抽出処理溶剤Gを蒸発分離する前の状態のもの(無灰炭含有スラリーH)を混合部2へ供給する。つまり、無灰炭含有スラリーHは、ステップS12の分離工程後に得られるスラリーであり、無灰炭製造部11は、このスラリーの液体成分から抽出処理溶剤Gを分離せずに、このスラリーを無灰炭として混合部2へ供給する。
ステップS101の無灰炭製造工程において、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する。具体的には、図4に示す無灰炭製造部11で石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合し、溶剤抽出処理を行う。無灰炭製造部11は、図2の無灰炭製造部1と同様の方法で溶剤抽出処理を行い、抽出処理溶剤Gを蒸発分離する前の状態のもの(無灰炭含有スラリーH)を混合部2へ供給する。つまり、無灰炭含有スラリーHは、ステップS12の分離工程後に得られるスラリーであり、無灰炭製造部11は、このスラリーの液体成分から抽出処理溶剤Gを分離せずに、このスラリーを無灰炭として混合部2へ供給する。
ステップS11のスラリー加熱工程で、石炭Bと抽出処理溶剤Gとを混合してスラリーを調製し、加熱処理して石炭Bの可溶成分を抽出処理溶剤Gに抽出する。そして、ステップS12の分離工程で、上記ステップS11のスラリー加熱工程で加熱処理されたスラリーを無灰炭を溶解させた液体成分と石炭B由来の不溶解固体成分を含有するスラリーXとに分離する。このスラリーの液体成分が無灰炭含有スラリーHであり、混合部2へ供給される。
なお、ステップS101の無灰炭製造工程は、抽出処理溶剤Gを蒸発分離する前の無灰炭含有スラリーHを混合部2へ供給するので、蒸発分離を行う必要がなく、図3に示すように無灰炭含有スラリーHの液体成分から抽出処理溶剤Gを分離する工程を備えていない。従って、当該コークスの製造方法は、無灰炭製造の工程を削減できる。
無灰炭含有スラリーHにおける無灰炭の含有量の下限としては、乾燥炭基準で、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。一方、無灰炭の含有量の上限としては、乾燥炭基準で、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。無灰炭の含有量が上記下限未満の場合、無灰炭含有スラリーHに対して得られるコークスFの量が少なくなり、生産効率が低下する。逆に、無灰炭の含有量が上記上限を超える場合、無灰炭含有スラリーHの粘度が高くなり、混合部2への無灰炭含有スラリーHの移動及び装入が困難となるおそれがある。
<混合工程>
ステップS2の混合工程において、石油精製プロセスで得られる残渣と、ステップS101の無灰炭製造工程から供給される蒸発分離前の状態の無灰炭含有スラリーHとを混合する。具体的には、図4に示す混合部2で、石炭Bの溶剤抽出処理により得られる無灰炭含有スラリーHと残渣Aとを混合し、残渣Aと無灰炭含有スラリーHとの混合物Dを得る。無灰炭含有スラリーHは、無灰炭Cよりも残渣Aと混合し易いので、第一実施形態に比べて無灰炭と残渣との混合に要する時間を短縮できる。
ステップS2の混合工程において、石油精製プロセスで得られる残渣と、ステップS101の無灰炭製造工程から供給される蒸発分離前の状態の無灰炭含有スラリーHとを混合する。具体的には、図4に示す混合部2で、石炭Bの溶剤抽出処理により得られる無灰炭含有スラリーHと残渣Aとを混合し、残渣Aと無灰炭含有スラリーHとの混合物Dを得る。無灰炭含有スラリーHは、無灰炭Cよりも残渣Aと混合し易いので、第一実施形態に比べて無灰炭と残渣との混合に要する時間を短縮できる。
<加熱工程>
ステップS3の加熱工程において、上記ステップS2の混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する。具体的には、図4に示す加熱部3で、残渣Aと無灰炭含有スラリーHとの混合物Dを400℃以上に加熱し、燃料油EとコークスFとを得る。また、混合物Dに含まれる抽出処理溶剤Gを加熱部3で分離回収し、この抽出処理溶剤GをステップS101の無灰炭製造工程で循環使用することができる。
ステップS3の加熱工程において、上記ステップS2の混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する。具体的には、図4に示す加熱部3で、残渣Aと無灰炭含有スラリーHとの混合物Dを400℃以上に加熱し、燃料油EとコークスFとを得る。また、混合物Dに含まれる抽出処理溶剤Gを加熱部3で分離回収し、この抽出処理溶剤GをステップS101の無灰炭製造工程で循環使用することができる。
ステップS3の加熱工程で無灰炭として供給される無灰炭含有スラリーHは、ステップS11のスラリー加熱工程で加熱されるため、常温よりも高い温度を有している。そのため、当該コークスの製造方法は、第一実施形態のコークスの製造方法に比べて、ステップS3の加熱工程での加熱に要するエネルギーを低減できる。
<利点>
当該コークスの製造方法は、混合工程で混合する無灰炭として、抽出処理溶剤Gを蒸発分離する前の状態のものを用いるので、無灰炭製造における無灰炭回収工程を削減できる。また、無灰炭含有スラリーHは残渣Aと混合し易いので、無灰炭と残渣との混合に要する時間を短縮できる。
当該コークスの製造方法は、混合工程で混合する無灰炭として、抽出処理溶剤Gを蒸発分離する前の状態のものを用いるので、無灰炭製造における無灰炭回収工程を削減できる。また、無灰炭含有スラリーHは残渣Aと混合し易いので、無灰炭と残渣との混合に要する時間を短縮できる。
〔第三実施形態〕
図5に示す当該コークスの製造方法は、石油精製プロセスで得られる残渣を抽出処理溶剤として用い、溶剤抽出処理により抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態の無灰炭を石炭から製造する工程(無灰炭製造工程:ステップS201)と、上記残渣及び無灰炭の混合物を400℃以上に加熱する工程(加熱工程:ステップS3)とを備える。ステップS201の無灰炭製造工程では、抽出処理溶剤として用いる残渣の量を第一実施形態の混合工程で混合する残渣全量とする。
図5に示す当該コークスの製造方法は、石油精製プロセスで得られる残渣を抽出処理溶剤として用い、溶剤抽出処理により抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態の無灰炭を石炭から製造する工程(無灰炭製造工程:ステップS201)と、上記残渣及び無灰炭の混合物を400℃以上に加熱する工程(加熱工程:ステップS3)とを備える。ステップS201の無灰炭製造工程では、抽出処理溶剤として用いる残渣の量を第一実施形態の混合工程で混合する残渣全量とする。
第二実施形態のコークスの製造方法の無灰炭製造工程では石炭と抽出処理溶剤とを混合するのに対し、図5に示す当該コークスの製造方法は、抽出処理溶剤として残渣を用い、石炭と残渣とを混合する点が異なる。図5に示す当該コークスの製造方法は、この点以外は第二実施形態のコークスの製造方法と同様の構成であるため、この点以外の構成及び手順については説明を省略する。
<無灰炭製造工程>
ステップS201の無灰炭製造工程において、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する。具体的には、図6に示す無灰炭製造部11で石炭Bと抽出処理溶剤とを混合し、溶剤抽出処理を行う。無灰炭製造部11は、抽出処理溶剤として残渣Aを用いる。そして、無灰炭製造部11は、図4の無灰炭製造部11と同様の方法で溶剤抽出処理を行い、抽出処理溶剤を蒸発分離する前の無灰炭含有スラリーHを加熱部3へ供給する。
ステップS201の無灰炭製造工程において、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する。具体的には、図6に示す無灰炭製造部11で石炭Bと抽出処理溶剤とを混合し、溶剤抽出処理を行う。無灰炭製造部11は、抽出処理溶剤として残渣Aを用いる。そして、無灰炭製造部11は、図4の無灰炭製造部11と同様の方法で溶剤抽出処理を行い、抽出処理溶剤を蒸発分離する前の無灰炭含有スラリーHを加熱部3へ供給する。
ステップS211のスラリー加熱工程で、石炭Bと抽出処理溶剤として用いる残渣Aとを混合してスラリーを調製し、加熱処理して石炭Bの可溶成分を残渣Aに抽出する。ここで混合する残渣Aの量は、ステップS3の加熱工程でコークスFを得るために必要な残渣Aの全量とする。そして、ステップS12の分離工程において、上記ステップS211のスラリー加熱工程で加熱処理されたスラリーを無灰炭を溶解させた液体成分と石炭B由来の不溶解固体成分を含有するスラリーXとに分離する。このスラリーの液体成分が無灰炭含有スラリーHであり、加熱部3へ供給される。
<加熱工程>
ステップS3の加熱工程において、上記ステップS201の無灰炭製造工程で得られる無灰炭含有スラリーHを400℃以上に加熱する。具体的には、図6に示す加熱部3で、無灰炭含有スラリーHを400℃以上に加熱し、燃料油EとコークスFとを得る。
ステップS3の加熱工程において、上記ステップS201の無灰炭製造工程で得られる無灰炭含有スラリーHを400℃以上に加熱する。具体的には、図6に示す加熱部3で、無灰炭含有スラリーHを400℃以上に加熱し、燃料油EとコークスFとを得る。
当該コークスの製造方法は、ステップS201の無灰炭製造工程において、ステップS211のスラリー加熱工程で残渣Aの全量と石炭Bとを混合してスラリーを調製し、加熱処理により石炭Bの可溶成分を抽出する。従って、ステップS211のスラリー加熱工程で加熱処理後のスラリーには残渣Aと無灰炭とが含まれている。つまり、ステップS211のスラリー加熱工程で、残渣Aと石炭Bの溶剤抽出処理により得られる無灰炭とを混合する工程を行っている。
当該コークスの製造方法は、このようにステップS3の加熱工程でコークスFを得るために必要な残渣Aの全量の残渣Aを無灰炭製造部11の抽出処理溶剤として用いるので、無灰炭製造部11で得られる無灰炭含有スラリーHに、コークスFを得るために必要な量の残渣Aが含まれる。そのため、無灰炭製造部11で得られる無灰炭含有スラリーHにさらに残渣Aを追加する必要がない。
加熱部3に供給する無灰炭含有スラリーHにおける無灰炭の含有量の下限としては、乾燥炭基準で、9質量%が好ましく、17質量%がより好ましく、25質量%がさらに好ましい。一方、上記無灰炭の含有量の上限としては、乾燥炭基準で、50質量%が好ましく、33質量%がより好ましい。上記無灰炭の含有量が上記下限未満の場合、ステップS3の加熱工程で得られる燃料油E及びコークスFの品質及び得率を十分に向上できないおそれがある。逆に、上記無灰炭の含有量が上記上限を超える場合、無灰炭の発泡抑制効果が十分に得られないおそれがあると共に、無灰炭含有スラリーHの溶融粘度が高くなり、取扱い難くなるおそれがある。
<利点>
当該コークスの製造方法は、上記混合工程で混合する残渣全量分の残渣を抽出処理溶剤として用いるので、残渣と無灰炭とを混合する工程を無灰炭製造と同時に行える。また、無灰炭製造装置とは別に残渣を混合する設備を設けなくてもよく、コークス製造設備を簡略化及び小型化でき、設備コストを低減できる。
当該コークスの製造方法は、上記混合工程で混合する残渣全量分の残渣を抽出処理溶剤として用いるので、残渣と無灰炭とを混合する工程を無灰炭製造と同時に行える。また、無灰炭製造装置とは別に残渣を混合する設備を設けなくてもよく、コークス製造設備を簡略化及び小型化でき、設備コストを低減できる。
〔その他の実施形態〕
なお、本発明のコークスの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明のコークスの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
つまり、上記実施形態では、無灰炭製造部で製造した無灰炭を用いることとしたが、他の場所で製造した無灰炭や購入した無灰炭を使用してもよい。すなわち、当該コークスの製造方法は、無灰炭製造工程を備えていなくてもよい。他の場所で製造した無灰炭や購入した無灰炭を使用する場合、輸送し易さの点において、蒸発分離後の状態の無灰炭を用いることが好ましい。
また、上記第三実施形態では、スラリー加熱工程で抽出処理溶剤として残渣を用いることとしたが、残渣と共に一般的に石炭の可溶成分の抽出用に用いられる抽出処理溶剤を用いてもよい。
また、上記第三実施形態では、抽出処理溶剤として用いる残渣の量を加熱工程でコークスを得るために必要な残渣の全量としたが、抽出処理溶剤として用いる残渣の量を上記全量とせず、不足分の残渣を後で追加するようにしてもよい。
また、当該コークスの製造方法は、上記実施形態に加えて、コークスFの揮発分を除去してカルサインコークスとする炭素化工程を備えてもよい。炭素化工程を備えることにより、得られたカルサインコークスをアルミニウム精錬用の炭素陽極として使用できる。上記炭素化工程は、非酸化性又は弱酸化性雰囲気下で加熱することによって行なう。具体的には、上記実施形態で得たコークスを電気炉やロータリーキルン等の任意の加熱装置へ装入し、加熱する。加熱によって上記コークスは、揮発分含有率の低いカルサインコークスに変換される。
炭素化工程における加熱温度はカルサインコークスに求められる特性により適宜設定すればよく、特に制限されないが、加熱温度の下限としては、1000℃が好ましく、1200℃がより好ましい。一方、加熱温度の上限としては、1500℃が好ましく、1300℃がより好ましい。加熱温度が上記下限未満の場合、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱温度が上記上限を超える場合、設備の耐熱性向上や燃料消費量の観点から製造コストが上昇するおそれがある。また、昇温速度としては、例えば1℃/min以上10℃/min以下とすることができる。
炭素化工程における加熱時間もカルサインコークスに求められる特性により適宜設定すればよく、特に制限されないが、加熱時間の下限としては、0.5時間が好ましい。一方、加熱時間の上限としては、10時間が好ましい。加熱温度が上記下限未満の場合、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱時間が上記上限を超える場合、カルサインコークスの生産効率が低下するおそれがある。
上記非酸化性ガスとしては、コークスの酸化を抑えられるものであれば特に限定されないが、不活性ガスが好ましく、不活性ガスの中でも経済的観点から窒素ガスがより好ましい。
炭素化工程で用いる熱処理炉は、特に限定されず公知のものを用いることができる。このような熱処理炉としては、例えばポット炉、リードハンマー炉、キルン、ロータリーキルン、シャフト炉、室炉等を挙げることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<無灰炭の製造>
以下の方法により無灰炭を製造した。まず、ボイラー用一般炭(瀝青炭)を無灰炭の原料石炭とし、乾燥炭換算質量で5kgのこの原料石炭と、抽出用溶剤として4倍量の20kgの1−メチルナフタレン(新日鉄住金化学株式会社製)とを混合して、スラリーを調製した。このスラリーを内容積30Lのバッチ式オートクレーブ中に入れ窒素を導入して1.2MPaに加圧し、400℃で1時間加熱した。このスラリーを上述の温度及び圧力を維持した重力沈降槽内で上澄液と固形分濃縮液とに分離し、上澄液から蒸留法で溶剤を分離及び回収して、2.7kgの無灰炭を得た。原料石炭に対する無灰炭の製品収率は48質量%であった。また、この無灰炭のJIS−M8801(2004)のギーセラープラストメータ法に準拠して測定した軟化開始温度は245℃であった。上記原料石炭、及び無灰炭の分析値を表1に示す。
以下の方法により無灰炭を製造した。まず、ボイラー用一般炭(瀝青炭)を無灰炭の原料石炭とし、乾燥炭換算質量で5kgのこの原料石炭と、抽出用溶剤として4倍量の20kgの1−メチルナフタレン(新日鉄住金化学株式会社製)とを混合して、スラリーを調製した。このスラリーを内容積30Lのバッチ式オートクレーブ中に入れ窒素を導入して1.2MPaに加圧し、400℃で1時間加熱した。このスラリーを上述の温度及び圧力を維持した重力沈降槽内で上澄液と固形分濃縮液とに分離し、上澄液から蒸留法で溶剤を分離及び回収して、2.7kgの無灰炭を得た。原料石炭に対する無灰炭の製品収率は48質量%であった。また、この無灰炭のJIS−M8801(2004)のギーセラープラストメータ法に準拠して測定した軟化開始温度は245℃であった。上記原料石炭、及び無灰炭の分析値を表1に示す。
<コーカー処理>
上記無灰炭とVRとを合せて1000gの原料を内容量5Lのオートクレーブの容器内に仕込み、0.5MPaの加圧下で、450℃で6時間加熱処理した。表2のように無灰炭及びVRの異なる仕込み量でこのコーカー処理を実施し、それぞれ実施例1〜3及び比較例1とした。そして、上記コーカー処理で発生するガス及び油分を容器外に抜き出し、捕集した後、コークス、油分及びガスを秤量した。その結果を表2に示す。また、上記コーカー処理に用いたVRの分析値を表1に示す。
上記無灰炭とVRとを合せて1000gの原料を内容量5Lのオートクレーブの容器内に仕込み、0.5MPaの加圧下で、450℃で6時間加熱処理した。表2のように無灰炭及びVRの異なる仕込み量でこのコーカー処理を実施し、それぞれ実施例1〜3及び比較例1とした。そして、上記コーカー処理で発生するガス及び油分を容器外に抜き出し、捕集した後、コークス、油分及びガスを秤量した。その結果を表2に示す。また、上記コーカー処理に用いたVRの分析値を表1に示す。
<評価結果>
表2の結果より、VRに無灰炭を添加することで、コークス中の硫黄含有率を低減できることがわかる。
表2の結果より、VRに無灰炭を添加することで、コークス中の硫黄含有率を低減できることがわかる。
また、表2の結果より、無灰炭に対するVRの混合割合が小さいほど、コークスの収率が大きくなっていることがわかる。
また、実施例1〜実施例3で得られたコークスは、いずれも粒状であり、発泡は認められなかった。また、実施例1〜実施例3で得られたコークスは、硫黄含有率が4質量%以下であるため、アルミニウム精錬用の炭素陽極の原料として好適に使用できるといえる。
以上説明したように、当該コークスの製造方法は、高純度のコークスが得られるので、例えばアルミニウム精錬用の炭素陽極などの炭素材料として好適に用いることができる。
1、11 無灰炭製造部
2 混合部
3 加熱部
A 残渣
B 石炭
C 無灰炭
D 混合物
E 燃料油
F コークス
G 抽出処理溶剤
H 無灰炭含有スラリー
X 不溶解固体成分含有スラリー
S1、S101、S201 無灰炭製造工程
S2 混合工程
S3 加熱工程
S11、S211 スラリー加熱工程
S12 分離工程
S13 無灰炭回収工程
2 混合部
3 加熱部
A 残渣
B 石炭
C 無灰炭
D 混合物
E 燃料油
F コークス
G 抽出処理溶剤
H 無灰炭含有スラリー
X 不溶解固体成分含有スラリー
S1、S101、S201 無灰炭製造工程
S2 混合工程
S3 加熱工程
S11、S211 スラリー加熱工程
S12 分離工程
S13 無灰炭回収工程
Claims (7)
- 石油精製プロセスで得られる残渣、及び石炭の溶剤抽出処理により得られる無灰炭を混合する工程と、
この混合工程で得られる混合物を400℃以上に加熱する工程と
を備えるコークスの製造方法。 - 上記混合工程前に、溶剤抽出処理により石炭から無灰炭を製造する工程をさらに備える請求項1に記載のコークスの製造方法。
- 上記混合工程で混合する無灰炭として、抽出処理溶剤を蒸発分離する前の状態のものを用いる請求項2に記載のコークスの製造方法。
- 上記無灰炭製造工程の抽出処理溶剤として、上記混合工程の残渣を用いる請求項3に記載のコークスの製造方法。
- 上記抽出処理溶剤として用いる残渣の量を上記混合工程で混合する残渣全量とし、上記混合工程を無灰炭製造工程で行う請求項4に記載のコークスの製造方法。
- 上記混合工程における無灰炭に対する残渣の混合割合が、100質量%以上1000質量%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコークスの製造方法。
- 上記加熱工程をディレードコーカーで行う請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコークスの製造方法。
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