JP5998373B2 - 副生炭の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、石炭から灰分を除去した無灰炭を得る際に、副生物として生成される副生炭の製造方法に関する。
特許文献1には、無灰炭の製造方法が開示されている。この製造方法では、一般炭に粘結炭を混合した石炭原料と溶剤とを混合してスラリーを調製し、得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出し、石炭成分を抽出したスラリーから、重力沈降法により、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液と、溶剤に不溶な石炭成分を含む固形分濃縮液とを分離し、分離された溶液から溶剤を分離して無灰炭を得ている。
ところで、無灰炭の製造プロセスでは、最終製品である無灰炭の他に、副生物として副生炭が製造される。
副生炭は、固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで得られる。そのプロセスとして、まず、固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで、副生炭に溶剤が残存してなる副生炭混合物を得る。そして、この副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することで、副生炭を得ている。
しかしながら、大量の副生炭混合物を乾燥させて副生炭を得る場合、副生炭混合物の温度を溶剤の沸点(240℃程度)以上にすることができる乾燥手段がないという問題がある。乾燥手段の一つとしてスチームチューブドライヤがあるが、スチーム温度はせいぜい220℃であるため、滞留時間を長くする必要があり、コストの増加を招く。
本発明の目的は、副生炭混合物を乾燥させる装置を簡略化し、副生炭混合物の乾燥に係るコストを低減させることが可能な副生炭の製造方法を提供することである。
本発明における副生炭の製造方法は、石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られたスラリーを、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する分離工程と、前記分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る副生炭取得工程と、を備え、前記副生炭取得工程は、前記分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで、副生炭に溶剤が残存してなる副生炭混合物を得る副生炭混合物取得工程と、前記副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離して副生炭を得る副生炭乾燥工程と、を有し、前記副生炭乾燥工程において、前記副生炭混合物自体が有する熱を用いて前記副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することを特徴とする。
本発明の副生炭の製造方法によると、副生炭混合物を乾燥させる装置を簡略化し、副生炭混合物の乾燥に係るコストを低減させることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(無灰炭の製造方法)
本実施形態による副生炭の製造方法は、無灰炭の製造方法に用いられる無灰炭製造設備100において実施される。無灰炭製造設備100は、図1に示すように、無灰炭(HPC)製造工程の上流側から順に、石炭ホッパ1・溶剤タンク2、スラリー調製槽3、移送ポンプ4、予熱器5、抽出槽6、重力沈降槽7、フィルターユニット8、溶剤分離器9・10、および、ドライヤ11を備えている。
本実施形態による副生炭の製造方法は、無灰炭の製造方法に用いられる無灰炭製造設備100において実施される。無灰炭製造設備100は、図1に示すように、無灰炭(HPC)製造工程の上流側から順に、石炭ホッパ1・溶剤タンク2、スラリー調製槽3、移送ポンプ4、予熱器5、抽出槽6、重力沈降槽7、フィルターユニット8、溶剤分離器9・10、および、ドライヤ11を備えている。
無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程、抽出工程、分離工程、無灰炭取得工程、および、副生炭取得工程を有する。本実施形態の副生炭の製造方法は、上述の工程のうち、スラリー調製工程、抽出工程、分離工程、および、副生炭取得工程を有する。以下、各工程について説明する。なお、本製造方法において原料とする石炭に、特に制限はなく、抽出率の高い瀝青炭を用いてもよいし、より安価な劣質炭(亜瀝青炭、褐炭)を用いてもよい。また、無灰炭とは、灰分が5重量%以下、好ましくは3重量%以下のもののことをいう。
(スラリー調製工程)
スラリー調製工程は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製する工程である。このスラリー調製工程は、図1中、スラリー調製槽3で実施される。原料である石炭が石炭ホッパ1からスラリー調製槽3に投入されるとともに、溶剤タンク2からスラリー調製槽3に溶剤が投入される。スラリー調製槽3に投入された石炭および溶剤は、攪拌機3aで混合されて石炭と溶剤とからなるスラリーとなる。
スラリー調製工程は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製する工程である。このスラリー調製工程は、図1中、スラリー調製槽3で実施される。原料である石炭が石炭ホッパ1からスラリー調製槽3に投入されるとともに、溶剤タンク2からスラリー調製槽3に溶剤が投入される。スラリー調製槽3に投入された石炭および溶剤は、攪拌機3aで混合されて石炭と溶剤とからなるスラリーとなる。
溶剤に対する石炭の混合比率は、例えば、乾燥炭基準で10〜50重量%であり、より好ましくは、20〜35重量%である。
(抽出工程)
抽出工程は、スラリー調製工程で得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する(溶剤に溶解させる)工程である。この抽出工程は、図1中、予熱器5および抽出槽6で実施される。スラリー調製槽3にて調製されたスラリーは、移送ポンプ4によって、予熱器5に供給されて所定温度まで加熱された後、抽出槽6に供給され、攪拌機6aで攪拌されながら所定温度で保持されて抽出が行われる。
抽出工程は、スラリー調製工程で得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する(溶剤に溶解させる)工程である。この抽出工程は、図1中、予熱器5および抽出槽6で実施される。スラリー調製槽3にて調製されたスラリーは、移送ポンプ4によって、予熱器5に供給されて所定温度まで加熱された後、抽出槽6に供給され、攪拌機6aで攪拌されながら所定温度で保持されて抽出が行われる。
石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出するにあたっては、石炭に対して大きな溶解力を持つ溶媒、多くの場合、芳香族溶剤(水素供与性あるいは非水素供与性の溶剤)と石炭とを混合して、それを加熱し、石炭中の有機成分を抽出することになる。
非水素供与性溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した、2環芳香族を主とする溶剤である石炭誘導体である。この非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、石炭との親和性に優れているため、溶剤に抽出される可溶成分(ここでは石炭成分)の割合(以下、抽出率ともいう)が高く、また、蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。非水素供与性溶剤の主な成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他の非水素供与性溶剤の成分として、脂肪族側鎖を有するナフタレン類、アントラセン類、フルオレン類、また、これらにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖を有するアルキルベンゼンが含まれる。
なお、上記の説明では非水素供与性化合物を溶剤として用いる場合について述べたが、テトラリンを代表とする水素供与性の化合物(石炭液化油を含む)を溶剤として用いてもよいことは勿論である。水素供与性溶剤を用いた場合、無灰炭の収率が向上する。
また、溶剤の沸点は特に制限されるものではない。抽出工程および分離工程での圧力低減、抽出工程での抽出率、無灰炭取得工程などでの溶剤回収率などの観点から、例えば、180〜300℃、特に240〜280℃の沸点の溶剤が好ましく使用される。本実施形態において、溶剤の沸点は240℃程度である。
抽出工程でのスラリーの加熱温度は、溶剤可溶成分が溶解され得る限り特に制限されず、溶剤可溶成分の十分な溶解と抽出率の向上の観点から、例えば、300〜420℃であり、より好ましくは、360〜400℃である。本実施形態においては、予熱器5がスラリーを加熱することで、後述するように、ドライヤ11に供給される副生炭混合物が、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を有するように、溶剤分離器10に供給される固形分濃縮液の温度が調整される。
また、加熱時間(抽出時間)もまた特に制限されるものではないが、十分な溶解と抽出率の向上の観点から、例えば、10〜60分間である。加熱時間は、図1中、予熱器5および抽出槽6での加熱時間を合計したものである。
なお、抽出工程は、窒素などの不活性ガスの存在下で行う。抽出槽6内の圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。抽出槽6内の圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
(分離工程)
分離工程は、抽出工程で得られたスラリーを、重力沈降法により、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分(溶剤不溶成分、例えば灰分)が濃縮した固形分濃縮液(溶剤不溶成分濃縮液)とに分離する工程である。この分離工程は、図1中、重力沈降槽7で実施される。抽出工程で得られたスラリーは、重力沈降槽7内で、重力にて、溶液としての上澄み液と、固形分濃縮液とに分離される。重力沈降槽7の上部の上澄み液は、必要に応じてフィルターユニット8を経て、溶剤分離器9へ排出されるとともに、重力沈降槽7の下部に沈降した固形分濃縮液は溶剤分離器10へ排出される。
分離工程は、抽出工程で得られたスラリーを、重力沈降法により、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分(溶剤不溶成分、例えば灰分)が濃縮した固形分濃縮液(溶剤不溶成分濃縮液)とに分離する工程である。この分離工程は、図1中、重力沈降槽7で実施される。抽出工程で得られたスラリーは、重力沈降槽7内で、重力にて、溶液としての上澄み液と、固形分濃縮液とに分離される。重力沈降槽7の上部の上澄み液は、必要に応じてフィルターユニット8を経て、溶剤分離器9へ排出されるとともに、重力沈降槽7の下部に沈降した固形分濃縮液は溶剤分離器10へ排出される。
重力沈降法は、スラリーを槽内に保持することにより、重力を利用して溶剤不溶成分を沈降・分離させる方法である。溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液よりも比重が大きい、溶剤不溶成分(例えば灰分)は重力沈降槽7の下部に重力により沈降する。スラリーを槽内に連続的に供給しながら、上澄み液を上部から、固形分濃縮液を下部から連続的に排出することにより、連続的な分離処理が可能である。
重力沈降槽7内は、石炭から溶出した溶剤可溶成分の再析出を防止するため、保温(または加熱)したり、加圧したりしておくことが好ましい。保温(加熱)温度は、例えば、300〜380℃であり、槽内圧力は、例えば、1.0〜3.0MPaとされる。
なお、抽出工程で得られたスラリーから、溶剤に溶解している石炭成分を含む溶液を分離する方法として、重力沈降法以外に、濾過法、遠心分離法などがある。
(無灰炭取得工程)
無灰炭取得工程は、分離工程で分離された溶液(上澄み液)から溶剤を蒸発分離して無灰炭(HPC)を得る工程である。この無灰炭取得工程は、図1中、溶剤分離器9で実施される。重力沈降槽7で分離された溶液は、フィルターユニット8で濾過された後、溶剤分離器9に供給され、溶剤分離器9内で上澄み液から溶剤が蒸発分離される。ここで、溶液からの溶剤の蒸発分離は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態においては、溶剤分離器9内に導入した窒素ガス中で溶液から溶剤を蒸発分離している。
無灰炭取得工程は、分離工程で分離された溶液(上澄み液)から溶剤を蒸発分離して無灰炭(HPC)を得る工程である。この無灰炭取得工程は、図1中、溶剤分離器9で実施される。重力沈降槽7で分離された溶液は、フィルターユニット8で濾過された後、溶剤分離器9に供給され、溶剤分離器9内で上澄み液から溶剤が蒸発分離される。ここで、溶液からの溶剤の蒸発分離は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態においては、溶剤分離器9内に導入した窒素ガス中で溶液から溶剤を蒸発分離している。
溶液(上澄み液)から溶剤を分離する方法は、一般的な蒸留法、蒸発法などを用いることができる。溶剤分離器9にて分離された溶剤は、溶剤タンク2に戻されて、循環して繰り返し使用される。なお、溶剤を循環使用することは好ましいが必須ではない(後述する副生炭取得工程においても同様)。上澄み液から溶剤を分離することで、実質的に灰分を含まない無灰炭(HPC)を得ることができる。
無灰炭は、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、原料石炭よりも高い発熱量を示す。さらに、製鉄用コークスの原料として特に重要な品質である軟化溶融性(流動性)が大幅に改善され、原料石炭が軟化溶融性を有しなくとも、得られた無灰炭(HPC)は良好な軟化溶融性を有する。したがって、無灰炭は、例えばコークス原料の配合炭として使用することができる。また、灰分をほとんど含まない無灰炭は、燃焼効率が高く且つ石炭灰の発生を低減できるので、ガスタービン燃焼による高効率複合発電システムのガスタービン直噴燃料としての用途も注目されている。
(副生炭取得工程)
副生炭取得工程は、分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程である。この副生炭取得工程は、副生炭混合物取得工程と、副生炭乾燥工程とを有している。
副生炭取得工程は、分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程である。この副生炭取得工程は、副生炭混合物取得工程と、副生炭乾燥工程とを有している。
<副生炭混合物取得工程>
副生炭混合物取得工程は、分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで、副生炭に溶剤が残存してなる副生炭混合物を得る工程である。この副生炭混合物取得工程は、図1中、溶剤分離器10で実施される。重力沈降槽7で分離された固形分濃縮液は溶剤分離器10に供給され、溶剤分離器10内で固形分濃縮液から溶剤が蒸発分離される。ここで、固形分濃縮液からの溶剤の蒸発分離は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態において、溶剤分離器10は、フラッシュ蒸留法に用いられるフラッシュ蒸留槽である。フラッシュ蒸留法は、窒素ガス雰囲気にされた槽内に固形分濃縮液を噴霧して溶剤を蒸発分離するものである。
副生炭混合物取得工程は、分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで、副生炭に溶剤が残存してなる副生炭混合物を得る工程である。この副生炭混合物取得工程は、図1中、溶剤分離器10で実施される。重力沈降槽7で分離された固形分濃縮液は溶剤分離器10に供給され、溶剤分離器10内で固形分濃縮液から溶剤が蒸発分離される。ここで、固形分濃縮液からの溶剤の蒸発分離は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態において、溶剤分離器10は、フラッシュ蒸留法に用いられるフラッシュ蒸留槽である。フラッシュ蒸留法は、窒素ガス雰囲気にされた槽内に固形分濃縮液を噴霧して溶剤を蒸発分離するものである。
固形分濃縮液から溶剤を分離する方法は、フラッシュ蒸留法に限定されず、前記した無灰炭取得工程と同様に、一般的な蒸留法、蒸発法を用いることができる。溶剤分離器10にて分離された溶剤は、溶剤タンク2に戻されて、循環して繰り返し使用される。固形分濃縮液から溶剤を分離することで、副生炭に溶剤が5〜10重量%の割合で残存してなる副生炭混合物を得ることができる。
ここで、重力沈降槽7で分離された固形分濃縮液は、溶剤が蒸発分離しない高温高圧状態にされている。このような固形分濃縮液が、内部が常圧にされた溶剤分離器10内に噴射されることで、固形分濃縮液の圧力が開放される。これにより、溶剤の沸点が下がり、高温の固形分濃縮液から溶剤が一気に蒸発分離する。このとき、後にドライヤ11に供給される副生炭混合物が、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を有するように、溶剤分離器10に供給される固形分濃縮液の温度が調整されている。この温度調整は、上述したように、スラリー調製槽3にて調製されたスラリーを加熱する予熱器5により行われる。なお、この温度調整は、重力沈降槽7で分離されて溶剤分離器10に供給される前の固形分濃縮液を加熱することで行ってもよい。また、この温度調整は、スラリー調製槽3にて調製されたスラリー、および、重力沈降槽7で分離された固形分濃縮液をそれぞれ加熱することで行ってもよい。
<副生炭乾燥工程>
副生炭乾燥工程は、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程である。この副生炭乾燥工程は、図1中、ドライヤ11で実施される。溶剤分離器10で得られた副生炭混合物は、ドライヤ11に供給され、ドライヤ11内で副生炭混合物から残存する溶剤が蒸発分離される。副生炭混合物からの溶剤の蒸発分離は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態において、ドライヤ11は、キャリアガスとしての窒素ガスを内部に流通させながら副生炭混合物を滞留・攪拌するロータリドライヤである。副生炭混合物から残存する溶剤を分離することで、灰分などを含む溶剤不溶成分が濃縮された副生炭(RC、残渣炭ともいう)を得ることができる。
副生炭乾燥工程は、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程である。この副生炭乾燥工程は、図1中、ドライヤ11で実施される。溶剤分離器10で得られた副生炭混合物は、ドライヤ11に供給され、ドライヤ11内で副生炭混合物から残存する溶剤が蒸発分離される。副生炭混合物からの溶剤の蒸発分離は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態において、ドライヤ11は、キャリアガスとしての窒素ガスを内部に流通させながら副生炭混合物を滞留・攪拌するロータリドライヤである。副生炭混合物から残存する溶剤を分離することで、灰分などを含む溶剤不溶成分が濃縮された副生炭(RC、残渣炭ともいう)を得ることができる。
副生炭は、灰分が含まれるものの水分が皆無であり、発熱量も十分に有している。副生炭は軟化溶融性を示さないが、含酸素官能基が脱離されているため、配合炭として用いた場合に、この配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害するようなものではない。したがって、この副生炭は、通常の非微粘結炭と同様に、コークス原料の配合炭の一部として使用することができ、また、コークス原料炭とせずに、各種の燃料用として使用することも可能である。
ここで、本実施形態においては、ドライヤ11内において、副生炭と溶剤とを含む混合物である副生炭混合物自体が有する熱を用いて副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離している。即ち、ドライヤ11は、副生炭混合物を滞留させて攪拌しているだけであって、副生炭混合物に熱を一切与えていない。なお、副生炭混合物自体が有する熱とは、固形分濃縮液から溶剤を分離して得られた副生炭混合物が帯びている(持っている)熱を意味し、化学反応により副生炭混合物から発生する熱のことではない。副生炭混合物自体が熱を有することで、副生炭混合物は所定の熱量を有している。副生炭混合物が有する熱量は、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な量である。溶剤の主成分がメチルナフタレンであれば、単位量の溶剤を蒸発分離するのに必要な熱量は330キロジュール/キログラム(kJ/kg)(溶剤1kgを蒸発させるために必要な熱量)である。上述したように、溶剤分離器10に供給される固形分濃縮液の温度を調整することで、ドライヤ11に供給される副生炭混合物がこのような熱量を有するようにされている。
通常、粉体を乾燥させるためには、粉体に熱を与える装置が必要となる。しかし、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)で得られる副生炭混合物は、それ自体がかなりの熱を有している。そこで、副生炭混合物自体が有する熱を利用して副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することで、副生炭混合物に熱を与える必要がなくなる。これにより、副生炭混合物を乾燥させる装置を簡略化し、副生炭混合物の乾燥に係るコストを低減させることができる。
また、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)に供給される固形分濃縮液の温度を調整することで、副生炭乾燥工程(ドライヤ11)に供給される副生炭混合物が、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を有するようにする。一般に、固体に熱を与えるよりも、液体に熱を与える方が、効率が良い。よって、ある程度固化した副生炭混合物よりも、液体である固形分濃縮液の方が、温度を調整し易い。そこで、副生炭乾燥工程(ドライヤ11)に供給される副生炭混合物の温度を調整するのではなく、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)に供給される固形分濃縮液の温度を調整する。これにより、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を副生炭混合物に好適に与えることができる。
また、スラリー調製槽3にて調製されたスラリー、および、重力沈降槽7で分離された固形分濃縮液の少なくとも一方を加熱することで、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)に供給される固形分濃縮液の温度を調整する。スラリーや固形分濃縮液は液体であるので、熱を効率良く与えることができる。よって、スラリーや固形分濃縮液を加熱することで、副生炭混合物取得工程に供給される固形分濃縮液の温度を好適に調整することができる。
(乾燥時間評価)
次に、乾燥温度を異ならせて副生炭の乾燥に要する時間を評価した。評価には管状の炉を使用した。評価の手順として、まず、炉内に窒素ガスを流通させながら、炉内温度が所定の乾燥温度となるように昇温を行った。次に、熱電対を付けた磁製皿に、溶剤を28重量%含んだ副生炭混合物からなる試料を乗せて炉内に入れた。その後、試料の温度が所定の乾燥温度に達したところで乾燥時間の計測を開始した。そして、所定時間経過後に試料を取り出して溶剤含有率を調べた。この手順による評価を、乾燥温度を210℃、250℃、270℃と異ならせて行った。評価結果を図2に示す。
次に、乾燥温度を異ならせて副生炭の乾燥に要する時間を評価した。評価には管状の炉を使用した。評価の手順として、まず、炉内に窒素ガスを流通させながら、炉内温度が所定の乾燥温度となるように昇温を行った。次に、熱電対を付けた磁製皿に、溶剤を28重量%含んだ副生炭混合物からなる試料を乗せて炉内に入れた。その後、試料の温度が所定の乾燥温度に達したところで乾燥時間の計測を開始した。そして、所定時間経過後に試料を取り出して溶剤含有率を調べた。この手順による評価を、乾燥温度を210℃、250℃、270℃と異ならせて行った。評価結果を図2に示す。
試料の溶剤含有率が2重量%まで低下するのに要した時間は、乾燥温度が210℃の場合で約30分、250℃の場合で約15分、270℃の場合で約10分であった。乾燥温度が、スチームチューブドライヤのスチーム温度に相当する210℃の場合に比べて、乾燥温度が250℃の場合には、乾燥時間を約半分に短縮することができることがわかった。また、乾燥温度が210℃の場合に比べて、乾燥温度が270℃の場合には、乾燥時間を約1/3に短縮することができることがわかった。
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る副生炭の製造方法によると、副生炭乾燥工程(ドライヤ11)において、副生炭混合物自体が有する熱を用いて副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離する。通常、粉体を乾燥させるためには、粉体に熱を与える装置が必要となる。しかし、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)で得られる副生炭混合物は、それ自体がかなりの熱を有している。そこで、副生炭混合物自体が有する熱を利用して副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することで、副生炭混合物に熱を与える必要がなくなる。これにより、副生炭混合物を乾燥させる装置を簡略化し、副生炭混合物の乾燥に係るコストを低減させることができる。
以上に述べたように、本実施形態に係る副生炭の製造方法によると、副生炭乾燥工程(ドライヤ11)において、副生炭混合物自体が有する熱を用いて副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離する。通常、粉体を乾燥させるためには、粉体に熱を与える装置が必要となる。しかし、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)で得られる副生炭混合物は、それ自体がかなりの熱を有している。そこで、副生炭混合物自体が有する熱を利用して副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することで、副生炭混合物に熱を与える必要がなくなる。これにより、副生炭混合物を乾燥させる装置を簡略化し、副生炭混合物の乾燥に係るコストを低減させることができる。
また、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)に供給される固形分濃縮液の温度を調整することで、副生炭乾燥工程(ドライヤ11)に供給される副生炭混合物が、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を有するようにする。一般に、固体に熱を与えるよりも、液体に熱を与える方が、効率が良い。よって、ある程度固化した副生炭混合物よりも、液体である固形分濃縮液の方が、温度を調整し易い。そこで、副生炭乾燥工程に供給される副生炭混合物の温度を調整するのではなく、副生炭混合物取得工程に供給される固形分濃縮液の温度を調整する。これにより、副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を副生炭混合物に好適に与えることができる。
また、スラリーおよび固形分濃縮液の少なくとも一方を加熱することで、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)に供給される固形分濃縮液の温度を調整する。スラリーや固形分濃縮液は液体であるので、熱を効率良く与えることができる。よって、スラリーや固形分濃縮液を加熱することで、副生炭混合物取得工程に供給される固形分濃縮液の温度を好適に調整することができる。
また、副生炭混合物取得工程(溶剤分離器10)において、溶剤が蒸発分離しない高温高圧状態にされた固形分濃縮液を常圧の容器内に噴射することで、固形分濃縮液の圧力が開放される。これにより、溶剤の沸点が下がり、高温の固形分濃縮液から溶剤が一気に蒸発分離するので、固形分濃縮液から溶剤を好適に蒸発分離することができる。
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
1 石炭ホッパ
2 溶剤タンク
3 スラリー調製槽
3a 攪拌機
4 移送ポンプ
5 予熱器
6 抽出槽
6a 攪拌機
7 重力沈降槽
8 フィルターユニット
9,10 溶剤分離器
11 ドライヤ
100 無灰炭製造設備
2 溶剤タンク
3 スラリー調製槽
3a 攪拌機
4 移送ポンプ
5 予熱器
6 抽出槽
6a 攪拌機
7 重力沈降槽
8 フィルターユニット
9,10 溶剤分離器
11 ドライヤ
100 無灰炭製造設備
Claims (4)
- 石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で得られたスラリーを、溶剤に可溶な石炭成分が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る副生炭取得工程と、
を備え、
前記副生炭取得工程は、
前記分離工程で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで、副生炭に溶剤が残存してなる副生炭混合物を得る副生炭混合物取得工程と、
前記副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離して副生炭を得る副生炭乾燥工程と、
を有し、
前記副生炭乾燥工程において、前記副生炭混合物自体が有する熱を用いて前記副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することを特徴とする副生炭の製造方法。 - 前記副生炭乾燥工程に供給される前記副生炭混合物が、前記副生炭混合物から残存する溶剤を蒸発分離することが可能な熱量を有するように、前記副生炭混合物取得工程に供給される固形分濃縮液の温度を調整することを特徴とする請求項1に記載の副生炭の製造方法。
- 前記分離工程に供給されるスラリー、および、前記副生炭混合物取得工程に供給される固形分濃縮液の少なくとも一方を加熱することで、前記副生炭混合物取得工程に供給される固形分濃縮液の温度を調整することを特徴とする請求項2に記載の副生炭の製造方法。
- 前記分離工程は加圧状況下で行われ、
前記副生炭混合物取得工程において、溶剤が蒸発分離しない高温高圧状態にされた固形分濃縮液を常圧の容器内に噴射することで、固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の副生炭の製造方法。
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