JP5803860B2 - バイオマスの改質方法、バイオマス及び褐炭の改質方法、コークス及び焼結鉱の製造方法並びに高炉の操業方法 - Google Patents

バイオマスの改質方法、バイオマス及び褐炭の改質方法、コークス及び焼結鉱の製造方法並びに高炉の操業方法 Download PDF

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Description

本発明は、製鉄プロセスにおけるコークス製造用原料、焼結鉱製造用固体燃料、高炉羽口吹込み用還元材として使用される原料の改質技術に関する。
従来、コークス用の原料としては、瀝青炭などの高品位の粘結炭が主として使用されているが、粘結炭は高価であり、産出量も限られている。そのため、粘結炭に比べて粘結性の低い非微粘結炭などの低品位の石炭を改質して粘結炭に配合し混合することにより、コークスの原料として使用されている。
例えば、特許文献1は、石炭と溶剤とを混合して石炭の溶剤への可溶成分を抽出し、当該抽出した抽出液に抽出残分を混合し、その混合物から溶剤を除去することにより、軟化溶融性等の性質の局在化が抑えられた均質な改質石炭を製造する製造方法を開示する。
一般的に鉄鉱石の焼結工程では、鉄鉱石などに固体燃料としての粉コークスを混合して、この混合物を焼結することにより焼結鉱を製造している。また、高炉の操業においては、高炉の羽口から熱風とともに還元材としての微粉炭を吹き込みことにより高炉の操業性を向上させている。従来の石炭改質方法により得られた改質炭は、主としてコークス製造用原料として使用されており、焼結鉱製造用固体燃料および高炉羽口吹込み用還元材としての利用は検討されていない。
特開2007−161955号公報
コークスの配合炭中の非微粘結炭などの低品位炭の配合比を増加し、粘結炭などの高品位炭の配合比を更に減じるためには、安価な改質対象物からコークス強度の向上効果が高い改質物を製造する必要がある。
また、焼結鉱の生産率をさらに向上させるためには、従来の固体燃料である粉コークスよりも燃焼性能の高い燃焼材固体燃料を使用する必要がある。また、高炉の操業性及び生産率をさらに高めるためには、従来の微粉炭よりも燃焼性能の高い還元材を用いる必要がある。
そこで、本発明は、コークス強度の向上効果に優れた改質物を得ることを第1の目的とする。また、本発明は、燃焼性能に優れた改質物を得ることを第2の目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その発明の要旨とするところは以下のとおりである。
バイオマスと非水素供与性溶剤を混合し、この混合物を加圧加熱して、前記バイオマスの不溶解成分と、前記バイオマスの可溶成分が前記非水素供与性溶剤に溶解した第1の液相成分とを生成し、これらの前記不溶解成分と前記第1の液相成分とを分離し、さらに、前記第1の液相成分を冷却することにより、前記バイオマスの可溶成分の一部を前記非水素供与性溶剤から抽出した第1の固相成分と残部の第2の液相成分とを生成して、分離し、該第2の液相成分から前記非水素供与性溶剤を分離することにより第2の固相成分を生成することを特徴とするバイオマスの改質方法。()の構成によれば、上記第1及び第2の目的を達成することができる。
)前記第1の液相成分を20〜50℃の温度に冷却することを特徴とする()に記載のバイオマスの改質方法。()の構成によれば、第1の固相成分及び第2の固相成分の抽出率を高めることができる。
)上記()に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分及び前記第2の固相成分のうち1種又は2種を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。()の構成によれば、低コストでコークス強度を高めることができる。
)上記()に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第2の固相成分及び前記不溶解成分が混合した混合物を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。()の構成によれば、低コストでコークス強度を高めることができる。
)上記()に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。()の構成によれば、低コストで焼結鉱の生産効率を向上させることができる。
)上記()に記載のバイオマス改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。()の構成によれば、低コストで焼結鉱の生産効率を向上させることができる。
)上記()に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。()の構成によれば、低コストで高炉の操業性を向上させることができる。
)上記()に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。()の構成によれば、低コストで高炉の操業性を向上させることができる。
JIS M8801の膨張性試験において評価される全膨張率が0%の低品位炭、バイオマス及び非水素供与性溶剤を混合し、この混合物を加圧加熱して、前記低品位炭及び前記バイオマスの不溶解成分と、前記低品位炭及び前記バイオマスの可溶成分が前記非水素供与性溶剤に溶解した第1の液相成分とを生成し、これらの前記不溶解成分と前記第1の液相成分とを分離し、さらに、前記第1の液相成分を冷却することにより、前記低品位炭及び前記バイオマスの可溶成分の一部を前記非水素供与性溶剤から抽出した第1の固相成分と残部の第2の液相成分とを生成して、分離し、該第2の液相成分から前記非水素供与性溶剤を分離することにより第2の固相成分を生成することを特徴とする低品位炭及びバイオマスの改質方法。()の構成によれば、上記第1及び第2の目的を達成することができる。
10)前記第1の液相成分を20〜50℃の温度に冷却することを特徴とする()に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法。(10)の構成によれば、第1の固相成分及び第2の固相成分の抽出率を高めることができる。
11)上記()に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分及び前記第2の固相成分のうち1種又は2種を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。(11)の構成によれば、低コストでコークス強度を高めることができる。
12)上記()に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第2の固相成分及び前記不溶解成分が混合した混合物を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。(12)の構成によれば、低コストでコークス強度を高めることができる。
13)上記()に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。(13)の構成によれば、低コストで焼結鉱の生産効率を向上させることができる。
14)上記()に記載の低品位炭及びバイオマス改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。(14)の構成によれば、低コストで焼結鉱の生産効率を向上させることができる。
15)上記()に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。(15)の構成によれば、低コストで高炉の操業性を向上させることができる。
16)上記()に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。(16)の構成によれば、低コストで高炉の操業性を向上させることができる。




本発明によれば、コークス強度の向上効果が高い改質物を得ることができる。
バイオマスの改質工程を図示した工程図である。 各種固相成分の用途を示す図である。 バイオマス及び低品位炭の改質工程を図示した工程図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1を参照して、本実施形態に係るバイオマスの改質方法について説明する。図1は、バイオマスの改質工程を示す工程図である。混合工程13では、バイオマス槽11から供給されるバイオマスと、溶剤槽12から供給される溶剤とを混合する。加圧加熱工程14では、混合工程13で得られたバイオマスと溶剤とからなる混合物を加圧加熱して、バイオマスの可溶成分を溶剤に溶解させる。バイオマスの可溶成分が溶解した溶剤を第1の液相成分Xといい、溶剤に不溶解であったバイオマスの不溶解成分を固相成分Rと定義する。第1分離工程15では、これらの第1の液相成分X及び固相成分Rを固液分離する。
冷却工程16では、第1の液相成分Xを冷却して、バイオマスの可溶成分の一部である抽出固相成分D(第1の固相成分)と、残部の第2の液相成分Yとを得る。第2分離工程17では、冷却工程16で得られた第2の液相成分Y及び抽出固相成分Dを固液分離する。第3分離工程18では、第2分離工程17で分離された第2の液相成分Yから溶剤を除き、その残部である抽出固相成分S(第2の固相成分)を得る。つまり、バイオマスと溶剤とを混合した混合物から三種類の異なる固相成分(固相成分R、抽出固相成分D及び抽出固相成分S)を得ることができる。改質工程の各部について詳細に説明する。
(バイオマス槽11について)
バイオマス槽11には、バイオマスが貯留されている。バイオマスは、好ましくは原子量比として、1.42≦H/C≦1.78、0.66≦O/C≦0.95である。後述するように、バイオマスから製鉄プロセス用原料である、コークス製造用原料、焼結鉱製造用固体燃料、および、高炉羽口吹込み用還元材として有用な原料を得ることにより、原料コストの低減及び環境保全を図ることができる。
(溶剤槽12について)
溶剤槽12には、バイオマス槽11に貯留されたバイオマスの可溶成分を溶解するための溶剤が貯留されている。溶剤には、2環芳香族を主とする非水素供与性溶剤を用いることができる。非水素供与性溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した、2環芳香族を主とする溶剤である。この非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、バイオマスとの親和性に優れているため、溶剤に抽出される固相成分の割合(以下、「抽出率」ともいう)が高く、また、バイオマスから各種固相成分を抽出した後、溶剤を蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。さらに、回収した溶剤を再利用することもできる。
非水素供与性溶剤の主たる成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他脂肪族側鎖をもつナフタレン類、また、これにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖をもつアルキルベンゼンが含まれる。
非水素供与性溶剤の沸点は、好ましくは180〜330℃である。沸点が180℃未満であると、加圧加熱工程14での必要圧力が高くなり、また、溶剤を回収する工程で揮発による損失が大きくなり、溶剤の回収率が低下する。さらに、抽出固相成分の抽出率が低下する。一方、330℃を超えると、後述する溶剤の分離が困難となり、溶剤の回収率が低下する。
このように、非水素供与性溶剤を使用して固相成分の加熱抽出をすることにより、固相成分の抽出率を高めることができる。また、非水素供与性溶剤は、高価な水素や触媒等を用いる必要がないため、安価なコストでバイオマスを可溶化して、経済性の向上を図ることができる。非水素供与性溶剤の主たる成分は、上記の通りであるが、石炭の液化方法等で用いられるテトラリンなどの水素供与性溶剤や、水素化したクレオソート油、水素化したアントラセン油、およびその混合物などを含んでいてもよい。
(混合工程13について)
混合工程13では、溶剤槽12から供給される溶剤と、バイオマス槽11から供給されるバイオマスとを混合する。バイオマス及び溶剤の混合物は、バイオマスの粒子が溶剤中に分散したスラリー状態で存在する。以下、この混合物をスラリーというものとする。
(加圧加熱工程14について)
加圧加熱工程14では、所定の抽出温度までバイオマスと溶剤のスラリーを加熱する。この加熱処理は、スラリー中の溶剤が沸点に達しないように、加圧状態で行う。具体的には、ゲージ圧力値を0.8〜2.5MPaに設定することにより、溶剤の沸騰を防止し、固相成分の抽出率を高めることができる。この圧力条件でスラリーの温度(より具体的にはスラリーの液温)が固相成分の可溶成分が十分に抽出される温度(以下、該温度を抽出温度と称す)に達すると、バイオマスの固相成分が溶剤に溶解する。
この抽出温度は、好ましくは300〜420℃である。300℃よりも温度が低い場合には、バイオマス構成分子間の結合力を十分に低下させることができないため、固相成分の抽出率が低下する。一方、420℃よりも温度が高い場合には、バイオマスの熱分解反応で生成されたラジカルの再結合が起こり、固相成分の抽出率が低下する。また、バイオマスと溶剤のスラリーの加圧加熱処理は、非酸化性ガスの雰囲気内で行うのが好ましい。非酸化性ガスには、窒素ガスを用いることが好適である。抽出処理時間は、例えば、20〜30分に設定することができる。
したがって、加圧加熱工程14におけるバイオマスと溶剤のスラリーの加圧加熱処理により、バイオマスの可溶成分が溶剤に溶解した第1の液相成分Xと溶剤に不溶解であったバイオマスの不溶解成分である固相成分Rとを生成することができる。これらの生成物は第1分離工程15に送られる。
第1分離工程15では、第1の液相成分X及び固相成分Rを固液分離する。固液分離方法には、重力沈下法を用いることができる。ここで分離して得られた固相成分Rの用途については後述する。
第1分離工程15で分離された第1の液相成分Xは、冷却工程16に送液するか、或いはそのままコークス原料として使用することができる。冷却工程16に送液された第1の液相成分Xは冷却される。冷却温度は、好ましくは20〜50℃である。ここで、冷却温度が50℃よりも高いと、抽出固相成分S及び抽出固相成分Dの抽出率が低下する。
他方、冷却温度を20℃より低くしても、前記抽出率が顕著に向上することはなく、却って冷却時間が長くなる。なお、冷却工程16は、第1の液相成分Xを冷却することによりバイオマスを改質し、製鉄プロセス用原料であるコークス製造用原料、焼結鉱製造用固体燃料および高炉羽口吹込み用還元材として有用な抽出固相成分S及び抽出固相成分Dを抽出することを目的としている。
したがって、上記冷却温度は、抽出固相成分S及び抽出固相成分Dの抽出率を向上する際の好ましい範囲を示すものであり、抽出固相成分S及び抽出固相成分Dが抽出可能であれば上記冷却温度に限定されるものではない。なお、上記冷却工程16における冷却手段は、空冷或いは冷却温度や冷却速度などの冷却条件を制御できる冷却装置であってもよい。
冷却工程16で得られた第2の液相成分Y及び抽出固相成分Dは、第2分離工程17で固液分離される。第2分離工程17での固液分離方法には、重力沈下法を用いることができる。ここで分離して得られた抽出固相成分Dの用途については後述する。
第2分離工程17で分離された第2の液相成分Yは、第3分離工程18に送液される。第3分離工程18では、第2の液相成分Yに含まれる溶剤が除去される。溶剤の除去方法には、蒸発乾固法やスプレードライ法を用いることができる。これにより、第2の液相成分Yに含まれる抽出固相成分Sを固相状態で抽出することができる。
次に、抽出固相成分S、第1の液相成分X、抽出固相成分D及び固相成分Rの用途について詳細に説明する。図2は、抽出固相成分S、第1の液相成分X、抽出固相成分D及び固相成分Rの用途を説明するための図である。まず、第3分離工程18で抽出された抽出固相成分Sの用途について説明する。安価なバイオマスを改質して得られた抽出固相成分Sは、コークス製造プロセスの原料炭として用いることで原料コスト低減およびコークス強度の向上を図ることができる。
したがって、抽出固相成分Sは、例えばコークス製造用の配合炭として用いることができる。さらに、抽出固相成分S単体に比べてコークス強度向上効果は低くなるが、抽出固相成分Sを抽出固相成分D又は固相成分Rと混合した混合固相成分S+D、混合固相成分S+Rをコークス製造用の配合炭として用いることもできる。第1分離工程で得られる第1の液相成分Xは、抽出固相成分S及び抽出固相成分Dを成分として含んでいるため、そのままコークス製造用の配合炭として用いることもできる。
また、第2分離工程17で得られた抽出固相成分Dは、ミクロな気孔構造を備えており燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、燃焼性能に優れている。また、抽出固相成分Dを乾留し炭化することにより、ミクロな気孔構造がさらに発達する。したがって、図2に図示するように、抽出固相成分D、抽出固相成分Dを炭化処理部で炭化させた炭化抽出固相成分Dcは、焼結鉱製造プロセスの固体燃料、高炉の羽口から熱風とともに吹き込む還元材として用いることができる。
後述する実施例に示すように、抽出固相成分D、炭化抽出固相成分Dcは、鉄鉱石焼結用の固体燃料として現在使用されている粉コークスよりも、燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、燃焼性能が優れている。さらに、抽出固相成分D、炭化抽出固相成分Dcは、高炉の羽口から熱風とともに吹き込まれる還元材として現在使用されている微粉炭よりも、燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、燃焼性能に優れている。さらにまた、抽出固相成分S単体に比べてコークス強度向上効果は低くなるが、抽出固相成分Dも同様にコークス強度向上効果を有しており、コークス製造用の配合炭として用いることもできる。
第1分離工程15で得られた固相成分Rは、よりミクロな気孔構造を備えており、燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、燃焼性能に優れている。また、固相成分Rを炭化させることにより、ミクロな気孔構造がさらに発達する。したがって、図2に図示するように、抽出固相成分D及び固相成分Rの混合固相成分D+R、この混合固相成分D+Rを炭化させた炭化混合固相成分(D+R)cを、焼結鉱製造プロセスの固体燃料、高炉の羽口から熱風とともに吹き込む還元材として用いることができる。混合固相成分D+R、炭化混合固相成分(D+R)cは、焼結鉱製造プロセスの固体燃料として現在使用されている粉コークスよりも、燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、燃焼性能が優れている。さらに、混合固相成分D+R、炭化混合固相成分(D+R)cは、高炉の羽口から熱風とともに吹き込まれる還元材として現在使用されている微粉炭よりも、燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、燃焼性能が優れている。
抽出固相成分Dなどを焼結鉱製造プロセスの固体燃料として使用する場合には、焼結鉱の原料となる粉状或いは適切な粒度に破砕調整された鉄鉱石、石灰石や蛇紋岩などの副原料などに上記抽出固相成分Dなどの固体燃料を混入して、破砕および混練して造粒する。この造粒物は、例えば、ドワイトロイド式焼結機のパレット上に所定の厚さ(たとえば500〜700mm)で層状に装入される。そして、点火炉によって、造粒物の表層に含まれる燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速い燃焼性能が優れた抽出固相成分Dなどの固体燃料に着火して、焼結処理を開始する。着火後はウインドボックスにより、下方に向けて空気を吸引しながら前記固体燃料、および前記固体燃料から放出される揮発分を燃焼させ、その燃焼熱によってパレット上の造粒物を焼結させて焼結ケーキとする。
焼結処理で得られた焼結ケーキは無端のパレットから送出された後、第1のクラッシャーにより破砕され、冷却される。続いて、第2のクラッシャーによりさらに破砕され、多段式の篩いにより、高炉用原料として所定の粒径を有する焼結鉱が得られる。
一方、抽出固相成分Dなどを高炉の羽口から熱風とともに吹き込む還元材として用いる場合は、粉砕機により粉砕された後、羽口から熱風とともに高炉に吹き込まれる。熱風により熱せられた還元材は、微粉炭よりも燃焼開始温度が低く、燃焼速度も速いため、吹き込み後直ちに一酸化炭素や水素ガスなどの還元ガスとなって、高炉内に装入される塊状鉄鉱石、焼結鉱などを還元する。これにより羽口先での燃焼性が向上し、高炉の操業性を向上させることができる。
(実施形態2)
図3を参照して、本実施形態に係るバイオマス及び低品位炭の改質方法について説明する。図3は、バイオマス及び低品位炭の改質工程を示した工程図である。混合工程13では、バイオマス槽11Aから供給されるバイオマスと、石炭層11Bから供給される低品位炭と、溶剤槽12から供給される溶剤とを混合する。ここで、低品位炭は、JIS M8801の膨張性試験において評価される全膨張率が0%の石炭であり、例えば、褐炭、亜瀝青炭、一般炭が該当する。
加圧加熱工程14では、混合工程13で得られたバイオマス、低品位炭及び溶剤からなる混合物を加圧加熱して、バイオマス及び低品位炭の可溶成分を溶剤に溶解させる。バイオマス及び低品位炭の可溶成分が溶解した溶剤を第1の液相成分XBといい、溶剤に不溶解であったバイオマス及び低品位炭の不溶解成分を固相成分RBと定義する。第1分離工程15では、これらの第1の液相成分XB及び固相成分RBを固液分離する。
冷却工程16では、第1の液相成分XBを冷却して、バイオマス及び低品位炭の可溶成分の一部である抽出固相成分DBと、残部の第2の液相成分YBとを得る。第2分離工程17では、冷却工程16で得られた第2の液相成分YB及び抽出固相成分DBを固液分離する。第3分離工程18では、第2分離工程17で分離された第2の液相成分YBから溶剤を除き、その残部である抽出固相成分SBを得る。つまり、バイオマス、低品位炭及び溶剤を混合した混合物から三種類の異なる固相成分(固相成分RB、抽出固相成分DB及び抽出固相成分SB)を得ることができる。改質工程における各部の詳細は、実施形態1と同様であるため説明を繰り返さない。
次に、以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1では、表1の発明例、参考例及び比較例についてコークス強度向上効果を評価した。
Figure 0005803860
発明例1では、改質対象物をバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB1から抽出した抽出固相成分Sを10質量%の配合割合で配合した配合炭を試験コークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。コークスは、配合炭を0.75g/cm3の充填嵩密度で試験コークス炉に装入し、炉温1000℃で乾留することで製造した。ここで、バイオマスB1の組成は、質量%でC:49.5%、H:5.9%、N:0.8%、O:43.9%であり、O/C(−)は0.66であり、H/C(−)は1.42である。ベース混合炭は、強粘結炭と非微粘結炭を1:1の質量比で配合した配合炭である(以下、同様である)。 溶剤には、メチルナフタレンを使用した。改質処理は、まず、改質対象物と溶剤を質量比で1:10の比率で混合し、加圧加熱工程における加熱温度を370℃、圧力を2MPa、加圧加熱時間を1時間に設定した。重力沈下法により固相成分Rを分離させた後に、第1の液相成分Xを25℃まで冷却した。重力沈下法により抽出固相成分Dを分離させた後に、第2の液相成分Y中の溶剤を蒸発法により除去し抽出固相成分Sを抽出した。コークス強度の評価は、回転強度試験方法のドラム強度に基づき測定、評価を行った。抽出方法については、以下の発明例及び参考例も同様であるため、説明を繰り返さない。
発明例2では、改質対象物をバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB2から抽出した抽出固相成分Sを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。ここで、バイオマスB2の組成は、質量%で、C:45.7%、H:5.9%、N:0.9%、O:47.5%であり、O/C(−)は0.78であり、H/C(−)は1.56である。
発明例3では、改質対象物をバイオマスB3とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB3から抽出した抽出固相成分Sを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。ここで、バイオマスB3の組成は、質量%で、C:41.2%、H:6.1%、N:0.3%、O:52.4%であり、O/C(−)は0.95であり、H/C(−)は1.78である。
発明例4では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB1の混合物から抽出した抽出固相成分SBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。褐炭Mの組成は、質量%で、C:66.4%、H:3.9%、N:1.9%、O:27.8%であり、O/C(−)は0.31であり、H/C(−)は0.71である。
発明例5では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB2の混合物から抽出した抽出固相成分SBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。
発明例6では、改質対象物をバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB1から抽出した抽出固相成分D及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例7では、改質対象物をバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB2から抽出した抽出固相成分D及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例8では、改質対象物をバイオマスB3とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB3から抽出した抽出固相成分D及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例9では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB1の混合物から抽出した抽出固相成分DB及びSBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。
発明例10では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB2の混合物から抽出した抽出固相成分DB及びSBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB2は質量比で1:1の割合で混合した。
発明例11では、改質対象物をバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB1から抽出した抽出固相成分R及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例12では、改質対象物をバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB2から抽出した抽出した抽出固相成分R及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例13では、改質対象物をバイオマスB3とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB3から抽出した抽出した抽出固相成分R及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例14では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB1の混合物から抽出した抽出固相成分RB及びSBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB2は質量比で1:1の割合で混合した。
発明例15では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB2の混合物から抽出した抽出固相成分RB及びSBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。
発明例16では、改質対象物をバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB1から抽出した抽出固相成分Dを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例17では、改質対象物をバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB2から抽出した抽出した抽出固相成分Dを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例18では、改質対象物をバイオマスB3とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB3から抽出した抽出した抽出固相成分Dを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例19では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB1から抽出した抽出した抽出固相成分DBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB2は質量比で1:1の割合で混合した。
発明例20では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB2から抽出した抽出した抽出固相成分DBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。
参考例1では、改質対象物を褐炭Mとした。ベース混合炭を90質量%、褐炭Mから抽出した抽出固相成分Sを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例2では、改質対象物を褐炭Mとした。ベース混合炭を90質量%、褐炭Mから抽出した抽出固相成分D及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例3では、改質対象物を褐炭Mとした。ベース混合炭を90質量%、褐炭Mから抽出した抽出固相成分R及びSを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例4では、改質対象物を褐炭Mとした。ベース混合炭を90質量%、褐炭Mから抽出した抽出固相成分Dを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例5では、改質対象物を褐炭Mとした。ベース混合炭を90質量%、褐炭Mから抽出した抽出固相成分Rを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例6では、改質対象物をバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB1から抽出した抽出固相成分Rを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例7では、改質対象物をバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB2から抽出した抽出固相成分Rを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例8では、改質対象物をバイオマスB3とした。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB3から抽出した抽出固相成分Rを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
参考例9では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB1とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB1の混合物から抽出した抽出固相成分RBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。
参考例10では、改質対象物を褐炭M及びバイオマスB2とした。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB2の混合物から抽出した抽出固相成分RBを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB2は質量比で1:1の割合で混合した。
比較例1では、褐炭Mを未改質の状態で配合炭として使用した。ベース混合炭を90質量%、褐炭Mを10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
比較例2では、バイオマスB1を未改質の状態で配合炭として使用した。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB1を10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
比較例3では、バイオマスB2を未改質の状態で配合炭として使用した。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB2を10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
比較例4では、バイオマスB3を未改質の状態で配合炭として使用した。ベース混合炭を90質量%、バイオマスB3を10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
比較例5では、褐炭M及びバイオマスB1を未改質の状態で配合炭として使用した。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB1の混合物を10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB1は質量比で1:1の割合で混合した。
比較例6では、褐炭M及びバイオマスB2を未改質の状態で配合炭として使用した。ベース混合炭を90質量%、褐炭M及びバイオマスB2の混合物を10質量%の配合割合で配合した配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。褐炭M及びバイオマスB2は質量比で1:1の割合で混合した。
比較例7では、ベース混合炭のみからなる配合炭をコークス炉で乾留してコークスを製造し、コークス強度を測定した。
発明例1及び比較例7を比較参照して、バイオマスB1を改質することにより得られる抽出固相成分Sをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例2及び比較例7を比較参照して、バイオマスB2を改質することにより得られる抽出固相成分Sをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例3及び比較例7を比較参照して、バイオマスB3を改質することにより得られる抽出固相成分Sをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。
発明例4及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB1からなる混合物を改質することにより得られる抽出固相成分SBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例5及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB1からなる混合物を改質することにより得られる抽出固相成分SBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。したがって、抽出固相成分SBは、コークス製造用の配合炭として極めて有用であることが証明された。
発明例6及び比較例7を比較参照して、バイオマスB1を改質することにより得られる混合固相成分S+Dをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例7及び比較例7を比較参照して、バイオマスB2を改質することにより得られる混合固相成分S+Dをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例8及び比較例7を比較参照して、バイオマスB3を改質することにより得られる混合固相成分S+Dをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。
発明例9及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB1の混合物を改質することにより得られる混合固相成分SB+DBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例10及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB2の混合物を改質することにより得られる混合固相成分SB+DBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。したがって、混合固相成分SB+DBは、コークス製造用の配合炭として極めて有用であることが証明された。
発明例11及び比較例7を比較参照して、バイオマスB1を改質することにより得られる混合固相成分S+Rをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例12及び比較例7を比較参照して、バイオマスB2を改質することにより得られる混合固相成分S+Rをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例13及び比較例7を比較参照して、バイオマスB3を改質することにより得られる混合固相成分S+Rをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。
発明例14及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB1の混合物を改質することにより得られる混合固相成分SB+RBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例15及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB2の混合物を改質することにより得られる混合固相成分SB+RBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。したがって、混合固相成分SB+RBは、コークス製造用の配合炭として極めて有用であることが証明された。
発明例16及び比較例7を比較参照して、バイオマスB1を改質することにより得られる抽出固相成分Dをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合と同様のコークス強度が得られることがわかった。発明例17及び比較例7を比較参照して、バイオマスB2を改質することにより得られる抽出固相成分Dをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例18及び比較例7を比較参照して、バイオマスB3を改質することにより得られる抽出固相成分Dをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合のコークス強度に近いレベルのコークス強度が得られることがわかった。
発明例19及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB1からなる混合物を改質することにより得られる抽出固相成分DBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合よりもコークス強度が向上することがわかった。発明例20及び比較例7を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB2からなる混合物を改質することにより得られる抽出固相成分DBをベース混合炭に添加することにより、配合炭の全てをベース混合炭とした場合と同等のコークス強度が得られることがわかった。したがって、抽出固相成分DBは、コークス製造用の配合炭として極めて有用であることが証明された。
このように、安価なバイオマス、バイオマス及び褐炭からなる混合物を本実施例の方法で改質し、強粘結炭及び非微粘結炭の一部と置換することにより、高強度のコークスが得られることがわかった。
発明例1、発明例6、発明例11、発明例16及び比較例2を比較参照して、バイオマスB1をそのまま添加するよりも、改質したほうがよりコークス強度が向上することがわかった。発明例2、発明例7、発明例12、発明例17及び比較例3を比較参照して、バイオマスB2をそのまま添加するよりも、改質したほうがよりコークス強度が向上することがわかった。発明例3、発明例8、発明例13、発明例18及び比較例4を比較参照して、バイオマスB3をそのまま添加するよりも、改質したほうがよりコークス強度が向上することがわかった。
発明例4、発明例9、発明例14、発明例19及び比較例5を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB1の混合物をそのまま添加するよりも、改質したほうがよりコークス強度が向上することがわかった。発明例5、発明例10、発明例15、発明例20及び比較例6を比較参照して、褐炭M及びバイオマスB2の混合物をそのまま添加するよりも、改質したほうがよりコークス強度が向上することがわかった。
ここで、参考例1乃至5に示すように、褐炭Mを上記実施形態に示す改質方法で改質することにより、コークス強度向上効果に優れる抽出固相成分Sを得ることができる。褐炭Mから抽出される抽出固相成分Sのコークス強度向上効果は、バイオマスB1、バイオマスB2、バイオマスB3、褐炭M+バイオマスB1、褐炭M+バイオマスB2からそれぞれ得られる抽出固相成分S、SBのそれとほぼ同様である。
しかしながら、本発明者は、改質対象物を褐炭からバイオマス、バイオマス+褐炭に変更することにより、コークス強度向上効果に優れた良質成分である抽出固相成分Sの抽出率が向上することを発見した。その理由は、バイオマスは褐炭と比べて、高分子高次構造が未発達であるため、加熱溶剤処理により、分子構造が容易に緩和されて、軽質成分が抽出されやすいためだと考えられる。
表2は、褐炭M、バイオマスB1、バイオマスB2、バイオマスB3、褐炭M+バイオマスB1、褐炭M+バイオマスB2をそれぞれ乾燥させ、その後改質することにより得られる固相成分S、SB、D、DB、R、RBの各抽出率を示している。褐炭+バイオマス(計算)は、褐炭及びバイオマスをそれぞれ単独処理した場合の抽出率を質量比で加重平均したときの回収率を示している。なお、表2の数値の単位は質量%である。
Figure 0005803860
表2を参照して、改質対象物を褐炭MからバイオマスB1〜B3に変更することにより、抽出固相成分Sの抽出率が大幅に上昇した。改質対象物を褐炭Mからバイオマス+褐炭に変更することにより、抽出固相成分SBの抽出率が大幅に上昇した。バイオマスB1と褐炭Mとを混合して抽出処理をすることにより、固相成分SBの回収率(28質量%)は加重平均から計算される抽出率(22質量%)よりも高くなった。バイオマスB2と褐炭Mとを混合して抽出処理をすることにより、固相成分SBの回収率(28質量%)は加重平均から計算される抽出率(23質量%)よりも高くなった。計算値に比べて固相成分RBの回収率が低下し、その他(ガス、タール、水)の回収率が上昇していることから、バイオマスと褐炭とを混合して抽出処理することにより、低分子化(軽質化)が促進されていると考えられる。これは、バイオマスの加熱溶剤処理により抽出された低分子成分が褐炭と相互作用を起こし、褐炭の高分子高次構造の緩和を促進したためと考えられる。
(実施例2)
実施例2では、表1に示す抽出固相成分D、抽出固相成分DBの燃焼性について評価を行った。抽出固相成分D、抽出固相成分DBは実施例1と同様の方法でバイオマスB1、バイオマスB2、バイオマスB3、褐炭MおよびバイオマスB1の混合物、褐炭MおよびバイオマスB2の混合物から抽出した。また、抽出固相成分D、抽出固相成分DBをそれぞれ炭化した炭化抽出固相成分Dc、炭化抽出固相成分DBcについても燃焼性の評価を行った。炭化は、キルンを用いて750℃で処理を行った。比較例として、褐炭Mから抽出された抽出石炭D、抽出石炭Dを炭化した炭化抽出石炭Dcを使用した。
(i)熱天秤を用いた反応開始温度、及び、反応速度最大温度の評価試験
まず、熱天秤に、所定の粒度(0.15−0.25mm)に調整した上記各試料を、所定の質量(10−20mg)入れ、空気雰囲気中で昇温して、質量減少を測定した。そして、質量減少率が安定して0.002(1/min)を超える温度を反応開始温度と定義して評価した。
また、質量減少曲線の傾きが最大となる温度(単位時間あたりの質量減少が最大となる温度)を、反応速度最大温度と定義して評価した。
(ii)焼結鍋試験評価(焼結プロセスにおける生産率、歩留まりの評価試験)
直径30cm、層高60cmの焼結試験装置を用いて、所定の配合原料で焼結鉱を製造する試験を実施した。上記各試料は、原料鉄鉱石に対してそれぞれ4質量%となるように配合して配合原料とした。この配合原料を焼結試験装置内に60cm高さまで装入したのち、原料層の表層の固体燃料にプロパンガスバーナーで90秒間点火する操作を行った。その後、15kPaの一定負圧で下方へ空気を吸引しながら焼結反応を行った。一連の焼結処理が完了した焼結体を、十分に冷却した後、2m高さから4回落下させて破砕し、5mm以上の粒度を有するものを焼結鉱として回収した。このマテリアルバランスから焼結鉱の生産率および歩留まりを測定した。ここで生産率は、焼結体の質量を試験装置面積と焼成時間で除して求め、単位時間単位面積あたりの焼結体量としてt/d/m2で表す。また、歩留まりは、装入質量に対する回収焼結鉱(+5mm)の割合により定義した。
評価は、生産率、製品歩留まりで行い、褐炭単独の改質物(比較例)の生産率及び歩留まりを基準とし、比較例より優れている場合を○で評価し、比較例より非常に優れている場合を◎で評価した。評価試験結果を表3に示す。
Figure 0005803860
表3に示すように、バイオマス単独の抽出固相成分D、バイオマス+褐炭混合物の抽出固相成分DBは、粉コークスに比べて反応開始温度が低く、反応速度最大温度が低く、優れた燃焼性能を有していることがわかった。また、バイオマス単独の炭化抽出固相成分Dc、バイオマス+褐炭混合物の炭化抽出固相成分DBcも、粉コークスに比べて反応開始温度が低く、反応速度最大温度が低く、優れた燃焼性能を有していることがわかった。
さらに、混合固相成分D+R、混合固相成分DB+R、炭化混合固相成分(D+R)c、炭化混合固相成分(DB+R)cも、粉コークスに比べて反応開始温度が低く、反応速度最大温度が低く、優れた燃焼性能を有していることがわかった。ちなみに、混合固相成分D+R、混合固相成分DB+R、炭化混合固相成分(D+R)c、炭化混合固相成分(DB+R)cのいずれも、混合物の質量比は1:1である。
また、混合固相成分DB+RB、炭化混合固相成分(DB+RB)cは、燃焼性に優れた抽出固相成分DB、炭化抽出固相成分DBcを含むため、当然に燃焼性能に優れることも、別途、確認している。
したがって、抽出固相成分D、炭化抽出固相成分Dc、抽出固相成分DB、炭化抽出固相成分DBc、混合固相成分D+R、混合固相成分DB+R、炭化混合固相成分(D+R)c、炭化混合固相成分(DB+R)c、混合固相成分DB+RB、炭化混合固相成分(DB+RB)cは、焼結鉱製造用固体燃料および高炉羽口吹込み用還元材として好適に用いることができる。
また、焼結鍋試験から、固体燃料として、抽出固相成分D、抽出固相成分DB、混合固相成分D+R、混合固相成分DB+Rを用いることで、粉コークスと比べて生産率及び成品歩留が向上することが判った。なお、混合固相成分DB+RBを用いることで、粉コークスと比べて生産率及び成品歩留が向上することも、別途、確認している。また、固体燃料として、炭化抽出固相成分Dc、炭化抽出固相成分DBc、炭化混合固相成分(D+R)c、炭化混合固相成分(DB+R)cを用いることで、粉コークスと比べてさらに生産率及び成品歩留が向上することが判った。なお、炭化混合固相成分(DB+RB)cを用いることで、粉コークスと比べて生産率及び成品歩留が向上することも、別途、確認している。
従って、抽出固相成分D、炭化抽出固相成分Dc、抽出固相成分DB及び炭化抽出固相成分DBc、混合固相成分D+R、混合固相成分DB+R、炭化混合固相成分(D+R)c、炭化混合固相成分(DB+R)c、混合固相成分DB+RB及び炭化混合固相成分(DB+RB)cを焼結鉱製造プロセスの固体燃料として使用することにより、焼結鉱の生産率を向上させることができる。
11 バイオマス槽
12 溶剤槽
13 混合工程
14 加圧加熱工程
15 第1分離工程
16 冷却工程
17 第2分離工程
18 第3分離工程

Claims (16)

  1. バイオマスと非水素供与性溶剤を混合し、この混合物を加圧加熱して、前記バイオマスの不溶解成分と、前記バイオマスの可溶成分が前記非水素供与性溶剤に溶解した第1の液相成分とを生成し、これらの前記不溶解成分と前記第1の液相成分とを分離し、さらに、前記第1の液相成分を冷却することにより、前記バイオマスの可溶成分の一部を前記非水素供与性溶剤から抽出した第1の固相成分と残部の第2の液相成分とを生成して、分離し、該第2の液相成分から前記非水素供与性溶剤を分離することにより第2の固相成分を生成することを特徴とするバイオマスの改質方法。
  2. 前記第1の液相成分を20〜50℃の温度に冷却することを特徴とする請求項に記載のバイオマスの改質方法。
  3. 請求項に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分及び前記第2の固相成分のうち1種又は2種を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。
  4. 請求項に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第2の固相成分及び前記不溶解成分が混合した混合物を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。
  5. 請求項に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  6. 請求項に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  7. 請求項に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。
  8. 請求項に記載のバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。
  9. JIS M8801の膨張性試験において評価される全膨張率が0%の低品位炭、バイオマス及び非水素供与性溶剤を混合し、この混合物を加圧加熱して、前記低品位炭及び前記バイオマスの不溶解成分と、前記低品位炭及び前記バイオマスの可溶成分が前記非水素供与性溶剤に溶解した第1の液相成分とを生成し、これらの前記不溶解成分と前記第1の液相成分とを分離し、さらに、前記第1の液相成分を冷却することにより、前記低品位炭及び前記バイオマスの可溶成分の一部を前記非水素供与性溶剤から抽出した第1の固相成分と残部の第2の液相成分とを生成して、分離し、該第2の液相成分から前記非水素供与性溶剤を分離することにより第2の固相成分を生成することを特徴とする低品位炭及びバイオマスの改質方法。
  10. 前記第1の液相成分を20〜50℃の温度に冷却することを特徴とする請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法。
  11. 請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分及び前記第2の固相成分のうち1種又は2種を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。
  12. 請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第2の固相成分及び前記不溶解成分が混合した混合物を高炉用コークス製造用原料として用いることを特徴とするコークスの製造方法。
  13. 請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  14. 請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、焼結鉱製造用固体燃料として使用することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  15. 請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記不溶解成分を前記第1の固相成分と混合した混合物、又は該混合物を炭化した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。
  16. 請求項に記載の低品位炭及びバイオマスの改質方法で得られた前記第1の固相成分又は前記第1の固相成分を炭化処理した炭化物を、高炉羽口吹き込み用還元材として使用することを特徴とする高炉の操業方法。
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