JP2013136691A - 無灰炭の製造方法 - Google Patents

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康爾 堺
Noriyuki Okuyama
憲幸 奥山
Shigeru Kinoshita
繁 木下
Takuya Yoshida
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Abstract

【課題】無灰炭を一旦液体に戻して成形する必要のない無灰炭の製造方法を提供すること。
【解決手段】石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、抽出工程で得られたスラリーから溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を分離する分離工程と、分離工程で分離された溶液から溶剤を蒸発分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程と、を備える無灰炭の製造方法である。この無灰炭の製造方法は、無灰炭取得工程で、溶液から溶剤を蒸発分離させて液体の無灰炭とし、得られた液体の無灰炭を固化手段(例えば、水)に接触させることによって所定の形状に固化させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、石炭から灰分を除去した無灰炭を得るための無灰炭の製造方法に関する。
無灰炭の製造方法として、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の無灰炭の製造方法は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製し、得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出し、石炭成分が抽出されたスラリーから溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を分離した後、分離された溶液から溶剤を回収して無灰炭を得る、というものである。溶剤を回収して無灰炭を得る方法として噴霧乾燥法という方法が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の噴霧乾燥法によると、無灰炭中の有機物と無機物とが分離して析出し、溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液中に少量混入した微細な無機物、および溶剤中に溶けた金属成分の除去が容易となる。
特開2005−120185号公報
溶剤を回収して無灰炭を得る方法として噴霧乾燥法を用いると上記したような利点があるが、一方で、次のような欠点がある。噴霧乾燥法も用いて得られる無灰炭は「粉状」となる。そのため、無灰炭を製品として出荷する場合、例えばブリケット状、フレーク状などに粉状の無灰炭を別途、成形しなければならない。この場合、ブリケット状に成型するには成型装置が必要になり、フレーク状に成形するには粉状の無灰炭を加熱して一旦液体に戻した後、成形することになり、この成形工程分、無灰炭の製造コストが上がってしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、無灰炭を一旦液体に戻して成形する必要のない無灰炭の製造方法を提供することである。
本発明は、石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られたスラリーから溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を分離する分離工程と、前記分離工程で分離された溶液から溶剤を蒸発分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程と、を備える無灰炭の製造方法である。この無灰炭の製造方法は、前記無灰炭取得工程で、前記溶液から溶剤を蒸発分離させて液体の無灰炭とし、得られた液体の無灰炭を固化手段に接触させることによって所定の形状に固化させることを特徴とする。
本発明によれば、一旦液体に戻すことなく無灰炭を成形することができる。
本発明の第1実施形態に係る無灰炭の製造方法を説明するための無灰炭製造設備を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る無灰炭の製造方法を説明するための無灰炭製造設備を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態に係る無灰炭の製造方法を説明するための無灰炭製造設備を示すブロック図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、無灰炭製造設備100は、無灰炭(HPC)製造工程の上流側から順に、石炭ホッパ1・溶剤タンク2、スラリー調製槽3、移送ポンプ4、予熱器5、抽出槽6、重力沈降槽7、フィルターユニット8、薄膜蒸留槽9、および水槽11を備えている。また、重量沈降槽7の下流側には、当該重量沈降槽7で分離された溶剤不溶成分濃縮液(固形分濃縮液)から溶剤を蒸発分離して副生炭を得るための(固形分濃縮液から溶剤を分離・回収するための)溶剤分離器10が配置されている。
ここで、本実施形態の無灰炭の製造方法は、抽出工程、分離工程、および無灰炭取得工程を有する。以下、各工程について説明する。なお、本製造方法において原料とする石炭に、特に制限はなく、抽出率(無灰炭回収率)の高い瀝青炭を用いてもよいし、より安価な劣質炭(亜瀝青炭、褐炭)を用いてもよい。また、無灰炭とは、灰分が5重量%以下、好ましくは3重量%以下のもののことをいう。
(抽出工程)
抽出工程は、石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する工程である。本実施形態において、この抽出工程は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリー調製工程で調製されたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する溶剤可溶成分抽出工程とに分かれている。
石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出するにあたっては、石炭に対して大きな溶解力を持つ溶媒、多くの場合、芳香族溶剤(水素供与性あるいは非水素供与性の溶剤)と石炭とを混合して、それを加熱し、石炭中の有機成分を抽出することになる。
非水素供与性溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した、2環芳香族を主とする溶剤である石炭誘導体である。この非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、石炭との親和性に優れているため、溶剤に抽出される可溶成分(ここでは石炭成分)の割合(以下、抽出率ともいう)が高く、また、蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。非水素供与性溶剤の主な成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他の非水素供与性溶剤の成分として、脂肪族側鎖を有するナフタレン類、アントラセン類、フルオレン類、また、これらにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖を有するアルキルベンゼンが含まれる。
なお、上記の説明では非水素供与性化合物を溶剤として用いる場合について述べたが、テトラリンを代表とする水素供与性の化合物(石炭液化油を含む)を溶剤として用いてもよいことは勿論である。水素供与性溶剤を用いた場合、無灰炭の収率が向上する。
また、溶剤の沸点は特に制限されるものではない。抽出工程および分離工程での圧力低減、抽出工程での抽出率、無灰炭取得工程などでの溶剤回収率などの観点から、例えば、180〜300℃、特に240〜280℃の沸点の溶剤が好ましく使用される。
<スラリー調製工程>
スラリー調製工程は、図1中、スラリー調製槽3で実施される。原料である石炭が石炭ホッパ1からスラリー調製槽3に投入されるとともに、溶剤タンク2からスラリー調製槽3に溶剤が投入される。スラリー調製槽3に投入された石炭および溶剤は、攪拌機3aで混合されて石炭と溶剤とからなるスラリーとなる。
溶剤に対する石炭の混合比率は、例えば、乾燥炭基準で10〜50重量%であり、より好ましくは、20〜35重量%である。
<溶剤可溶成分抽出工程>
溶剤可溶成分抽出工程は、図1中、予熱器5および抽出槽6で実施される。スラリー調製槽3にて調製されたスラリーは、移送ポンプ4によって、一旦、予熱器5に供給されて所定温度まで加熱された後、抽出槽6に供給され、攪拌機6aで攪拌されながら所定温度で保持されて抽出が行われる。
溶剤可溶成分抽出工程でのスラリーの加熱温度は、溶剤可溶成分が溶解され得る限り特に制限されず、溶剤可溶成分の十分な溶解と抽出率の向上の観点から、例えば、300〜420℃であり、より好ましくは、360〜400℃である。
また、加熱時間(抽出時間)もまた特に制限されるものではないが、十分な溶解と抽出率の向上の観点から、例えば、10〜60分間である。加熱時間は、図1中、予熱器5および抽出槽6での加熱時間を合計したものである。
なお、溶剤可溶成分抽出工程は、窒素などの不活性ガスの存在下で行う。抽出槽6内の圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。抽出槽6内の圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
なお、本実施形態のように、石炭と溶剤とを混合した後に、得られたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出するのではなく、溶剤のみを先に加熱し、加熱された高温(例えば380℃)の溶剤中に石炭を供給(乾燥状態のまま供給)して、石炭を混合・加熱し、石炭中の溶剤可溶成分を溶剤で抽出するようにしてもよい。
溶剤のみを先に加熱し、加熱された高温(例えば380℃)の溶剤中に石炭を供給する(乾燥状態のまま供給する)方法としては、例えば次のような方法がある。移送ポンプ4の上流側には石炭ホッパ1を配置せず、予熱器5と抽出槽6とを接続する管24の中に、または抽出槽6内に、石炭を直接供給できるように石炭ホッパ1を配置する。このとき、例えば、管24または抽出槽6と、石炭ホッパ1との接続部を窒素などの不活性ガスで加圧して、溶剤などが石炭ホッパ1内へ逆流してこないようにする。なお、この方法によると、溶剤などが石炭ホッパ1内へ逆流してこないように、管24または抽出槽6と、石炭ホッパ1との接続部を窒素などの不活性ガスで加圧する必要があるが、スラリー調製槽3を省略できる。
(分離工程)
分離工程は、抽出工程で得られたスラリーから、溶剤に溶解している石炭成分を含む溶液を分離する工程である。換言すれば、分離工程は、抽出工程で得られたスラリーを、溶剤に溶解している石炭成分を含む溶液と、溶剤不溶成分濃縮液(固形分濃縮液)とに分離する工程である。この分離工程は、図1中、重力沈降槽7で実施される。抽出工程で得られたスラリーは、重力沈降槽7内で、重力にて、溶液としての上澄み液と、固形分濃縮液とに分離される(重力沈降法)。重力沈降槽7の上部の上澄み液は、必要に応じてフィルターユニット8を経て、薄膜蒸留槽9へ排出されるとともに、重力沈降槽7の下部に沈降した固形分濃縮液は溶剤分離器10へ排出される。
重力沈降法は、スラリーを槽内に保持することにより、重力を利用して溶剤不溶成分を沈降・分離させる方法である。スラリーを槽内に連続的に供給しながら、上澄み液を上部から、固形分濃縮液を下部から連続的に排出することにより、連続的な分離処理が可能である。
重力沈降槽7内は、石炭から溶出した溶剤可溶成分の再析出を防止するため、保温または加熱したり、加圧したりしておくことが好ましい。加熱温度は、例えば、300〜380℃であり、槽内圧力は、例えば、1.0〜3.0MPaとされる。
なお、抽出工程で得られたスラリーから、溶剤に溶解している石炭成分を含む溶液を分離する方法として、重力沈降法以外に、濾過法、遠心分離法などがある。
(無灰炭取得工程)
無灰炭取得工程は、上記した分離工程で分離された溶液(上澄み液)から溶剤を蒸発分離して無灰炭(HPC)を得る工程である。この無灰炭取得工程は、重力沈降槽7で分離された溶液から溶剤を蒸発分離させて液体の無灰炭を得る溶剤分離工程と、得られた液体の無灰炭を固化手段に接触させることで冷却して所定の形状の固体の無灰炭とする固化工程とに分かれている。溶剤分離工程は、図1中、薄膜蒸留槽9で実施され、固化工程は、図1中、水槽11で実施される。
<溶剤分離工程>
溶液(上澄み液)から溶剤を蒸発分離する溶剤分離工程に、本実施形態では薄膜蒸留法が用いられている。薄膜蒸留法とは、スクレーパ9b(ワイパーともいう)を収容した薄膜蒸留槽9の上部から薄膜蒸留槽9内に蒸留対象(本発明では分離工程で分離された溶液)を導入し、薄膜蒸留槽9の内壁にスクレーパ9bにて蒸留対象の薄膜を形成させ連続蒸留を行うという蒸留法である。薄膜蒸留槽9の周囲には加熱器9aが取り付けられ、薄膜蒸留槽9の内壁が所望の温度となるように、薄膜蒸留槽9は加熱器9aにて外部から加熱される。
重力沈降槽7で分離された溶液(上澄み液)は、フィルターユニット8で濾過された後、薄膜蒸留槽9に供給され、加熱器9aにて加熱されることで当該溶液に含まれる溶剤は蒸発分離される。
薄膜蒸留槽9内の圧力は、0.1MPa(常圧)とされたり、0.1MPa(常圧)以下とされたりする。加熱温度(薄膜蒸留槽9の内壁の温度)は、溶剤が蒸発除去されてなる液体の無灰炭が液体の状態を維持する(無灰炭が溶融性を示す)温度とされ、例えば、200〜450℃とされる。
なお、溶液(上澄み液)から溶剤を分離する方法は薄膜蒸留法に限られない。例えば、槽内に溶液を噴霧させて溶剤を蒸発分離するフラッシュ蒸留法を用いてもよい。フラッシュ蒸留法の場合、溶剤は蒸発するが、溶剤分離後の無灰炭は液体の状態を維持するように、フラッシュ蒸留槽内の圧力を、例えば、0.5MPaとしたり、フラッシュ蒸留槽を加熱して槽内の温度を、例えば、200〜450℃としたりする。なお、溶剤の蒸発を促進する観点から、圧力ではなく加熱により、無灰炭が液体の状態を維持させることが好ましい。
この溶剤分離工程にて分離して回収された溶剤はスラリー調製槽3へ循環して繰り返し使用することができる。
<固化工程>
液体の無灰炭を固化させる固化手段として、本実施形態では液体の水を用いている。薄膜蒸留槽9にて得られた液体の無灰炭は、薄膜蒸留槽9から引き抜かれて、そのまま(噴霧状ではなく、ある程度の体積を有する液体で)水が張られた水槽11内に入れられ(例えば落下)、水との接触により冷却され固化する。所定の大きさの塊に固化した無灰炭は、ベルトコンベヤなどの搬送手段で水槽11内から取り出され、自然乾燥などにより乾燥されて、所定の場所で貯留される。
水槽11内の水の温度は、無灰炭が流動性を示す温度よりも低い温度とされる(後述する他の固化手段についても同様)。例えば、0〜60℃とされる。なお、無灰炭の製造コストの観点からは、加熱も冷却もしない常温の水を使用して、液体の無灰炭を急冷する。また、1つの水槽で無灰炭を冷却するのではなく、水温の異なる水が張られた水槽を複数、配置し、温度の高い水が張られた水槽から、温度の低い水が張られた水槽へ、順次、無灰炭を入れて、冷却速度を微調整してもよい。
ここで、無灰炭の固化工程は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。本実施形態の場合、具体的には、薄膜蒸留槽9から引き抜かれた液体の無灰炭が空気に触れないまま水槽11の水に入るように、例えば、薄膜蒸留槽9と水槽11とを管で接続し、管内に不活性ガスを吹き込む。そして、液体の無灰炭をこの管内を流下させて水槽11に導く。
上記した溶剤分離工程および固化工程により、溶液(上澄み液)から、実質的に灰分を含まない(例えば、灰分が3重量%以下)固体の無灰炭を得ることができる。この無灰炭は、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、原料石炭よりも高い発熱量を示す。さらに、製鉄用コークスの原料として特に重要な品質である軟化溶融性が大幅に改善され、原料石炭が軟化溶融性を有しなくとも、得られた無灰炭は良好な軟化溶融性を有する。したがって、無灰炭は、例えばコークス原料の配合炭として使用することができる。
(副生炭取得工程)
副生炭取得工程は、重力沈降槽7で分離された溶剤不溶成分濃縮液(固形分濃縮液)から溶剤を蒸発分離して副生炭を得る工程である。この副生炭取得工程は、固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離して回収するための工程でもあり、図1中、溶剤分離器10で実施される。なお、副生炭取得工程は、必須の工程ではない。
固形分濃縮液から溶剤を分離する方法は、一般的な蒸留法や蒸発法を用いることができ、例えば、前記したフラッシュ蒸留法が用いられる。分離して回収された溶剤は、スラリー調製槽3へ循環して繰り返し使用することができる。溶剤の分離・回収により、固形分濃縮液からは灰分などを含む溶剤不溶成分が濃縮された副生炭(RC、残渣炭ともいう)を得ることができる。副生炭は、灰分が含まれるものの水分が皆無であり、発熱量も十分に有している。副生炭は軟化溶融性を示さないが、含酸素官能基が脱離されているため、配合炭として用いた場合に、この配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害するようなものではない。したがって、この副生炭は、通常の非微粘結炭と同様に、コークス原料の配合炭の一部として使用することができ、また、コークス原料炭とせずに、各種の燃料用として使用することも可能である。なお、副生炭は、回収せずに廃棄してもよい。
(実施例)
実験として、無灰炭の濃度が30重量%の溶液(溶剤に不溶な固形分が除去された無灰炭と溶剤とからなる溶液)を160℃に加熱して、内壁を300℃に加熱した薄膜蒸留槽に14kg/hという流量で流した。そして、薄膜蒸留槽の底部から流出してきた液体の無灰炭(溶剤が蒸発分離したもの)を、ステンレス製の容器で受けた。なお、この容器は常温である。そうすると、液体の無灰炭は、ステンレス製の容器内で即座に固化した。この実験により、液体の無灰炭は冷却されると直ぐに固化するという性質を有するものであることが判明した。
(作用・効果)
無灰炭が高温状態であれば優れた流動性を示す。本発明は、この性質と、液体の無灰炭は冷却されると直ぐに固化するという、このたび究明できた性質とを利用している。本発明の無灰炭の製造方法では、無灰炭取得工程において、溶液から溶剤を蒸発分離させて液体の無灰炭とし、得られた液体の無灰炭を固化手段(例えば、前記した水)に接触させることによって所定の形状に固化させる。本発明によると、抽出工程、分離工程、および無灰炭取得工程という、一連の製造工程で、無灰炭は、所定の形状を有する固体まで成形される。さらには、上記の無灰炭取得工程により、液体の無灰炭は、所定の形状(例えば、塊、フレーク状(薄片状)など)に容易に成形される。すなわち、本発明によると、一旦液体に戻すことなく無灰炭を成形することができ、無灰炭を製品として出荷する場合に、別途、成形する必要がない。なお、本発明において、固化手段による無灰炭の固化は、連続で行われてもよいし、非連続で行われてもよい。
また、前記無灰炭取得工程の途中で得られる液体の無灰炭が液体の状態を維持するように、圧力調整ではなく加熱により、溶液から溶剤を蒸発分離させることで、溶剤の蒸発を好適に維持しつつ、無灰炭が液体の状態を維持させることができる。
また、薄膜蒸留法を用いることで、薄膜蒸留槽の内壁に形成された薄膜層をスクレーパ(ワイパー)で確実に掻き落とすことができ、例えば、流動性が低い(粘度の高い)無灰炭であっても確実に固化工程に導くことができる。
固化工程に関しては、固化手段の温度を、無灰炭が流動性を示す温度よりも低い温度とすることで、確実に、液体の無灰炭を固化させることができる。なお、固化手段の温度は、0〜150℃とされることがより好ましい。
また、固化手段として水を用いることで、設備費を抑制することができる。
また、無灰炭取得工程で、不活性ガスの存在下で固化手段に液体の無灰炭を接触させることによって当該液体の無灰炭を固化させることで、無灰炭の酸化を防止することができ、その結果、高温状態における無灰炭の流動性を高く維持することができる。なお、無灰炭は、酸化するとその流動性が低下する。
(第2実施形態)
図2を参照しつつ、第2実施形態に係る無灰炭の製造方法について説明する。第1実施形態では、液体の無灰炭を固化させる固化手段として水を用いているのに対して、本実施形態では、金属製の無端ベルトを用いている。設備構成としては、本実施形態の無灰炭製造設備101では、薄膜蒸留槽9にベルトコンベヤ12を付帯させている。ベルトコンベヤ12は、一対のローラ間に掛け渡された金属製の無端ベルト12aを具備してなるものである。
薄膜蒸留槽9にて得られた液体の無灰炭は、薄膜蒸留槽9から引き抜かれて、そのまま(噴霧状ではなく、ある程度の体積を有する液体で)金属製の無端ベルト12aの上に落下させられ、無端ベルト12aとの接触および無端ベルト12a周辺のガス(例えば、空気、窒素)により冷却され固化する。固化した無灰炭は、フレーク状(薄片状)となり、当該ベルトコンベヤ12などで搬送され所定の場所で貯留される。
無端ベルト12aの温度および無端ベルト12a周辺のガスの温度は、例えば、20〜150℃とされる。なお、無灰炭の製造コストの観点からは、加熱も冷却もしない常温の無端ベルト12aを使用し、常温、常圧下で液体の無灰炭を固化させる。無端ベルト12aの材質としては、鉄、ステンレス、樹脂などを挙げることができる。樹脂製の無端ベルトを用いる場合、液体の無灰炭よりも十分に融点が高い樹脂を用いる。様々な温度の液体の無灰炭に柔軟に対応することができる、熱伝導性が良い、との観点から、鉄、ステンレスなどの金属製の無端ベルトを用いることが好ましい。
ここで、第1実施形態と同様に、本実施形態においても、無灰炭の固化工程は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。例えば、無端ベルト12aの周囲が鋼板などで覆われたベルトコンベヤ12を用い、ベルトコンベヤ12内に不活性ガスを吹き込むことで不活性ガス雰囲気を形成し、不活性ガスの存在下で固化工程を実施する。
(作用・効果)
固化手段としてベルトコンベヤのベルトを用いることで、無灰炭の固化および搬送を、例えば1つのベルトコンベヤで行うことができ、設備費を抑制することができる。
(第3実施形態)
図3を参照しつつ、第3実施形態に係る無灰炭の製造方法について説明する。第1実施形態では、液体の無灰炭を固化させる固化手段として水を用いているのに対して、本実施形態では、所定の形状の中空部を有す成型用の型13を用いている。設備構成としては、本実施形態の無灰炭製造設備102では、薄膜蒸留槽9の下流側に成型用の型13を配置している。なお、型13の中空部は、液体の無灰炭を例えばブリケット状に成型するための形状にされる。
薄膜蒸留槽9にて得られた液体の無灰炭は、薄膜蒸留槽9から引き抜かれて、そのまま(噴霧状ではなく、ある程度の体積を有する液体で)型13に流し込まれ、型13内で固化する。固化した無灰炭は、例えば、ブリケット状となり、ベルトコンベヤなどの搬送手段で搬送され所定の場所で貯留される。
型13の温度(成型温度)は、例えば、0〜150℃とされる。なお、無灰炭の製造コストの観点からは、加熱も冷却もしない常温の型13を使用する。型13は、例えば、鉄、ステンレスなどの金属からなる金型とされる。
ここで、第1実施形態と同様に、本実施形態においても、無灰炭の固化工程は、窒素などの不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。例えば、薄膜蒸留槽9から引き抜かれた液体の無灰炭が空気に触れないまま型13に流し込まれるように、例えば、薄膜蒸留槽9と型13とを管で接続し、管内に不活性ガスを吹き込む。そして、液体の無灰炭をこの管内を流下させて型13に流し込む。
(作用・効果)
固化手段として所定の形状の中空部を有す成型用の型を用いることで、所望の形状に無灰炭を確実に成形することができる。また、例えば型の変更により様々な形状の無灰炭を容易に成形することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
1:石炭ホッパ
2:溶剤タンク
3:スラリー調製槽
4:移送ポンプ
5:予熱器
6:抽出槽
7:重力沈降槽
8:フィルターユニット
9:薄膜蒸留槽
10:溶剤分離器
11:水槽
100:無灰炭製造設備

Claims (8)

  1. 石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程で得られたスラリーから溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液を分離する分離工程と、
    前記分離工程で分離された溶液から溶剤を蒸発分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程と、
    を備える、無灰炭の製造方法において、
    前記無灰炭取得工程で、前記溶液から溶剤を蒸発分離させて液体の無灰炭とし、得られた液体の無灰炭を固化手段に接触させることによって所定の形状に固化させることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  2. 請求項1に記載の無灰炭の製造方法において、
    前記無灰炭取得工程で、液体の無灰炭が液体の状態を維持するように前記溶液を加熱しながら当該溶液から溶剤を蒸発分離させることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の無灰炭の製造方法において、
    前記無灰炭取得工程における溶剤の蒸発分離に薄膜蒸留法を用いることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の無灰炭の製造方法において、
    前記固化手段は、無灰炭が流動性を示す温度よりも低い温度とされていることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の無灰炭の製造方法において、
    前記無灰炭取得工程で、不活性ガスの存在下で前記固化手段に液体の無灰炭を接触させることによって、当該液体の無灰炭を固化させることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の無灰炭の製造方法において、
    前記固化手段は水であり、
    前記無灰炭取得工程で、液体の無灰炭を水の中に入れることによって、当該液体の無灰炭を固化させることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の無灰炭の製造方法において、
    前記固化手段は、ベルトコンベヤのベルトであり、
    前記無灰炭取得工程で、前記ベルトに液体の無灰炭を接触させることによって、当該液体の無灰炭を固化させることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の無灰炭の製造方法において、
    前記固化手段は、所定の形状の中空部を有す成型用の型であり、
    前記無灰炭取得工程で、前記型の中空部に液体の無灰炭を流し込むことによって、当該液体の無灰炭を固化させることを特徴とする、無灰炭の製造方法。
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