JP4034567B2 - エレベーター巻上機の電磁制動装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、巻上機の停止時に制動ばねによって制動片が制動動作し、巻上機の運転時に電磁コイルの吸引力によって制動片が非制動位置に保持されるエレベーター巻上機の電磁制動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来のエレベーター巻上機の電磁制動装置を概念的に示す断面図である。図において、1は巻上機(図示しない)のフレームからなる固定部2に設けられた固定鉄心、3は固定鉄心1の中心に突出して設けられたガイドピン、4はガイドピン3に摺動可能に嵌合されて固定鉄心1と対面して配置された可動鉄心、5は制動シューで、調整ボルト6によって可動鉄心4に装着されて巻上機の制動輪(図示しない)の制動面7に対向して配置されている。
【0003】
なお、制動シュー5は可動鉄心4に対する位置が調整ボルト6によって調整されて、制動面7に対して所定位置に配置される。
8は制動ばねで、固定鉄心1に装備されて両端にばね座9が設けられ、可動鉄心4を押圧して制動シュー5を制動方向に変位させる。10は押圧ボルトで、固定鉄心1にねじ込まれてばね座9を介して制動ばね8を押圧して制動ばね8のばね力を調整する。
【0004】
11は電磁コイルで、固定鉄心1に設けられて可動鉄心4に対向して配置され、付勢されて可動鉄心4を制動ばね8の押圧力に抗して吸引する。12は粘弾性材製の緩衝片で、可動鉄心4の凹所に一側が嵌合され他部は可動鉄心4の固定鉄心1との対向面から突出して配置され、可動鉄心4が電磁コイル11に吸引された状態において固定鉄心1及び可動鉄心4の両者の間に図10に示す微小な隙間g1を形成する。
【0005】
従来のエレベーター巻上機の電磁制動装置は上記のように構成されて、巻上機の電動機(図示しない)の付勢時、すなわち巻上機の運転時に、電磁コイル11が付勢されて可動鉄心4を制動ばね8の押圧力に抗して吸引する。これにより、制動シュー5が巻上機の制動輪の制動面7から離れた位置、すなわち、非制動位置に保持される。また、巻上機の電動機の消勢時、すなわち巻上機の停止時には電磁コイル11が消勢されて可動鉄心4が制動ばね8の押圧力によって押圧される。
【0006】
これにより、制動シュー5が制動面7を押圧する制動位置に変位して巻上機の制動輪が制動される。
また、制動シュー5の制動動作を解除するときの電磁コイル11の付勢により、吸引された可動鉄心4が固定鉄心1に衝突する。しかし、この衝突が緩衝片12によって緩衝されて衝突音が減少する。これによって、電磁制動装置の制動動作を解除時の動作音が少なくなり、エレベーターが設置された建物のエレベーター運転時における環境を静穏化するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来のエレベーター巻上機の電磁制動装置では、緩衝片12の製作誤差により、また緩衝片12の長期間使用による劣化によって可動鉄心4からの突出寸法が少なくなる。この場合には、所要の緩衝作用が達成されずエレベーターが設置された建物における騒音が増すという問題点があった。また、緩衝片12の製作誤差等により可動鉄心4からの突出寸法が増加したときには、電磁コイル11による可動鉄心4の吸引が不十分になり、制動シュー5が制動面7に接触した状態で巻上機が運転される不具合が発生することになる。
【0008】
この発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、緩衝片が装備された部材における緩衝片の突出寸法を適宜に設定することができるエレベーター巻上機の電磁制動装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るエレベーター巻上機の電磁制動装置は、巻上機の固定部に設けられた固定鉄心と、上記固定鉄心に保持された可動鉄心と、上記可動鉄心に装着されて上記巻上機の制動面を押圧する制動シューと、上記固定鉄心に設けられると共に、上記可動鉄心に対向して配置されて上記制動シューを制動方向に押圧する制動ばねと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの押圧力に抗して上記可動鉄心を吸引し、上記制動シューを上記制動面方向と反対方向に変位させる電磁コイルと、上記可動鉄心に設けられて上記制動ばねにおける上記可動鉄心側のばね座に対向して配置された押圧ボルトと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの中心に挿入状態に配置されて、上記可動鉄心側の端部に上記ばね座に対向した緩衝片が装着された変位機構と、を備えたものである。
【0011】
また、この発明に係るエレベーター巻上機の電磁制動装置は、巻上機の固定部に設けられた固定鉄心と、上記固定鉄心に保持された可動鉄心と、上記可動鉄心に装着されて上記巻上機の制動面を押圧する制動シューと、上記固定鉄心に設けられると共に、上記可動鉄心に対向して配置されて上記制動シューを制動方向に押圧する制動ばねと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの押圧力に抗して上記可動鉄心を吸引し、上記制動シューを上記制動面方向と反対方向に変位させる電磁コイルと、上記可動鉄心に設けられて上記制動ばねにおける上記可動鉄心側のばね座に対向して配置された押圧ボルトと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの中心に挿入状態に配置されて、上記可動鉄心側の端部に上記ばね座に対向した緩衝片が装着された変位機構と、を備えたエレベーター巻上機の電磁制動装置において、上記電磁コイルに接続されて制動・解除動作の制動動作時における上記緩衝片による緩衝作用に伴う電流を測定する電流測定器と、上記電流測定器により測定した電流値を微分する電流微分器と、上記電流微分器による微分値がゼロとなる時点での電流値を出力する比較器と、上記微分値がゼロとなる時点での電流値が所定の電流値の範囲内に入っているかを判定する判定器と、を含む緩衝特性調整判定システムを備えたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態の一例を示す図で、図1は概念的に示す断面図、図2は図1のA−A線断面図である。図において、1は巻上機(図示しない)のフレームからなる固定部2に設けられた固定鉄心、3は固定鉄心1の中心に突出して設けられたガイドピン、4はガイドピン3に摺動可能に嵌合されて固定鉄心1と対面して配置された可動鉄心、5は制動シューで、調整ボルト6によって可動鉄心4に装着されて巻上機の制動輪(図示しない)の制動面7に対向して配置されている。
【0013】
なお、制動シュー5は可動鉄心4に対する位置が調整ボルト6によって調整されて、制動面7に対して所定位置に配置される。
8は制動ばねで、固定鉄心1に装備されて両端にばね座9が設けられ、可動鉄心4を押圧して制動シュー5を制動方向に変位させる。10は押圧ボルトで、固定鉄心1にねじ込まれてばね座9を介して制動ばね8を押圧して制動ばね8のばね力を調整する。
【0014】
11は電磁コイルで、固定鉄心1に設けられて可動鉄心4に対向して配置され、付勢されて可動鉄心4を制動ばね8の押圧力に抗して吸引する。13は粘弾性材製の緩衝片で、円筒状をなし可動鉄心4の凹所に一側が嵌合され他部は可動鉄心4の固定鉄心1との対向面から突出して配置され、可動鉄心4が電磁コイル11に吸引された状態において固定鉄心1及び可動鉄心4の両者の間に図1に示す微小な隙間g1を形成する。
【0015】
14は緩衝片13に設けられて可動鉄心4の凹所側に配置された座板、15は変位機構で、反固定鉄心1側から可動鉄心4にねじ込まれて先端が座板14に対向して配置されたボルト16及びボルト16にねじ込まれて可動鉄心4の反固定鉄心1側に配置されてボルト16の回動を固定する止めナット17によって構成されている。
【0016】
上記のように構成されたエレベーター巻上機の電磁制動装置において、巻上機の電動機(図示しない)の付勢時、すなわち巻上機の運転時に、電磁コイル11が付勢されて可動鉄心4を制動ばね8の押圧力に抗して吸引する。これにより、制動シュー5が巻上機の制動輪の制動面7から離れた位置、すなわち、非制動位置に保持される。また、巻上機の電動機の消勢時、すなわち巻上機の停止時には電磁コイル11が消勢されて可動鉄心4が制動ばね8の押圧力によって押圧される。
【0017】
これにより、制動シュー5が制動面7を押圧する制動位置に変位して巻上機の制動輪が制動される。
また、制動シュー5の制動動作を解除するときの電磁コイル11の付勢により、吸引された可動鉄心4が固定鉄心1に衝突する。しかし、この衝突が緩衝片13によって緩衝されて衝突音が減少する。これによって、電磁制動装置の制動動作を解除時の動作音が少なくなり、エレベーターが設置された建物のエレベーター運転時における環境を静穏化する。
【0018】
そして、緩衝片13の製作誤差により、また緩衝片13の長期間使用による劣化によって可動鉄心4からの突出寸法が少なくなる。この場合には、所要の緩衝作用が達成されずエレベーターが設置された建物の騒音が増す。しかし、このときに変位機構15のボルト16を回動することによって、緩衝片13の可動鉄心4に対する位置を進退させることができるので、緩衝片13を突出させて緩衝片13の可動鉄心4からの突出寸法を所定値に容易に調整することができる。
【0019】
また、緩衝片13の製作誤差等により可動鉄心4からの突出寸法が増加した場合には、電磁コイル11による可動鉄心4の吸引が不十分になり、制動シュー5が制動面7に接触した状態で巻上機が運転される不具合が発生することになる。しかし、このときには変位機構15のボルト16を回動することによって緩衝片13を引退させて緩衝片13の可動鉄心4からの突出寸法を所定値に容易に調整することができる。
【0020】
したがって、変位機構15によって緩衝片13の可動鉄心4に対する位置を適正に配置することによって、緩衝片13による所要の緩衝作用が得られてエレベーターが設置された建物の環境を静穏化することができる。また、緩衝片13を適正配置することによって、電磁コイル11による可動鉄心4の吸引が不十分になり、制動シュー5が制動面7に接触した状態で巻上機が運転される不具合の発生を未然に防止することができる。したがって、電磁制動装置の組立、保守作業を簡略化することができ、組立、保守費を低減することができる。
【0021】
実施の形態2.
図3〜図5は、この発明の他の実施の形態の一例を示す図で、図3は前述の図1におけるB部拡大図に相当する図、図4は図3の側面図、図5は図3における緩衝片の状態を概念的に説明する図3相当図である。なお、図3〜図5の他は前述の図1及び図2と同様にエレベーター巻上機の電磁制動装置が構成されている。図において、図1及び図2と同符号は相当部分を示す。
【0022】
18は可動鉄心4の凹所に配置された巻回具で、帯状板が緩衝片13の外周に巻回されて、一側に帯状板の両端部が互いに空隙を構成し対向して配置されてなる締付け部19が形成されている。20は締付けボルトで、可動鉄心4の外側から可動鉄心4及び巻回具18の締付け部19に挿通されている。
【0023】
21は締付けボルト20の先端にねじ込まれた締付けナット、22は締付けボルト20にねじ込まれて可動鉄心4の外側面に接して配置された止めナット、23は巻回具18、締付けボルト20及び締付けナット21によって構成された変位機構である。
【0024】
上記のように構成されたエレベーター巻上機の電磁制動装置においても、電磁コイル11の付勢によって吸引された可動鉄心4が固定鉄心1に衝突するときの衝突が緩衝片13によって緩衝される。また、変位機構23の締付けボルト20を締め込むことによって緩衝片13が半径方向に圧搾される。
【0025】
これにより、緩衝片13の可動鉄心4からの突出寸法を図5に示すd1からd2に増加することができる。また、締付けボルト20を緩めて巻回具18の内径を広げ、緩衝片13の可動鉄心4からの突出寸法を少なくすることができる。したがって、詳細な説明を省略するが図3〜図5の実施の形態においても図1及び図2の実施の形態と同様な作用が得られる。
【0026】
実施の形態3.
図6及び図7も、この発明の他の実施の形態の一例を示す図で、図6は概念的に示す断面図、図7は図6のC−C線断面図である。図において、前述の図1及び図2と同符号は相当部分を示し、24は可動鉄心4寄りに設けられた制動ばね8のばね座、25は可動鉄心4に反固定鉄心1側からねじ込まれて先端がばね座24と対向した押圧ボルト、251は押圧ボルト25にねじ込まれて可動鉄心4の反固定鉄心1側に配置された止めナットである。
【0027】
26は頭部が制動ばね8内に配置されて固定鉄心1にねじ込まれて反可動鉄心4側に挿通された支持ボルト、27は支持ボルト26にねじ込まれて固定鉄心1の反可動鉄心4側に配置された止めナット、28は支持ボルト26及び止めナット27によって構成された変位機構である。29は粘弾性材製の緩衝片で、支持ボルト26の頭部に装着されてばね座24の反調整ボルト25側と対面して配置される。
【0028】
なお、電磁コイル11が消勢され制動ばね8によって制動シュー5が巻上機の制動輪の制動面7を押圧した状態において、ばね座24と緩衝片29の間には図6に示す微小な隙間g1を形成し、また固定鉄心1と可動鉄心4の間には隙間g1よりも広い図6に示す隙間g2が形成される。
【0029】
上記のように構成されたエレベーター巻上機の電磁制動装置において、押圧ボルト25を回動してばね座24を介して制動ばね8を押圧することによって、制動ばね8のばね力が調整される。そして、電磁コイル11の付勢によって吸引された可動鉄心4が固定鉄心1方向に移動する動作が緩衝片29によって緩衝されて支持される。
【0030】
また、変位機構28の支持ボルト26を回動することによって、緩衝片29のばね座24に対する位置を進退させて調整し、緩衝片29を容易に所定の位置に配置することができる。したがって、詳細な説明を省略するが図6及び図7の実施の形態においても図1及び図2の実施の形態と同様な作用が得られる。
【0031】
また、固定鉄心1と可動鉄心4の間に余計な部品を配置した構成では電磁コイル11による磁路断面積が小さくなる。このため、必要とする磁路断面積を得るために固定鉄心1、可動鉄心4を大きくすることになるが、この場合には省スペース化には不利である。しかし、図6及び図7の実施の形態では、緩衝片29が制動ばね8内に配置されているので、所要の磁路断面積が容易に得られて固定鉄心1等の大形化を要しない。したがって、小形であって省スペース化でき、安価なエレベーター巻上機の電磁制動装置を実現することができる。
【0032】
実施の形態4.
図8及び図9も、この発明の他の実施の形態の一例を示す図で、図8は機器の配置を概念的に示す回路図、図9は図8の電流測定器の電流値、電流微分器の電流微分値を示すグラフである。なお、図8及び図9の他は前述の図1及び図2と同様にエレベーター巻上機の電磁制動装置が構成されている。図において、図1及び図2と同符号は相当部分を示す。
【0033】
30は電磁コイル11に接続されて制動・解除動作の制動動作時における電流を測定する電流測定器、31は測定した電流値を微分する電流微分器、32は微分値がゼロとなる時点での電流値i1を出力する比較器、33は電流値i1が所定の電流値の範囲内(i2<i1<i3)に入っているかを判定する判定器である。
【0034】
34は緩衝片13の制動・解除動作の制動動作時における緩衝特性調整判定システムで、電流測定器30、電流微分器31、比較器32、判定器33によって構成されている。また、図9に示すD点は制動シュー5の制動・解除動作の制動動作時の電磁コイル11における電流値i1である。即ち、このD点は、制動指令を受けることにより、電磁コイル11への電流が断たれ、これにより電磁コイル11の電磁力が制動ばね8のばね力と緩衝片13の反力の合計値よりも小となり、可動鉄心4が制動面側に移動を開始した時点の電磁コイル11に流れる電流値i1を示している。電磁コイル11への電流が断たれることによって可動鉄心4が制動側に移動すると逆起電力が生じ、電磁コイル11には一時的に電流が流れてD点から一旦上昇し、可動鉄心4が制動側で停止するとまた下降する。このように、電磁コイル11への電流が断たれてからゼロになる時の時定数と、電磁コイル11に生じる逆起電力により図9に示すように、電流測定器30で測定される電流はD点付近で変動する。これを電流微分器31により微分し、その値がゼロとなる時点、即ちD点での電流値を比較器32で検出し、その検出値が所定の範囲内にあるか否かを判定器33で判定する判定システムを採用している。
【0035】
上記のように構成されたエレベーター巻上機の電磁制動装置において、緩衝特性調整判定システム34によって緩衝片13による緩衝特性が調整される。すなわち、制動ばね8のばね力が一定で、また電磁コイル11の抵抗がほぼ一定である場合には、制動シュー5の制動・解除動作の制動動作時の電磁コイル11における電流値は緩衝片13の緩衝特性における緩衝力によって変化する。
【0036】
すなわち、緩衝力を大きくすると制動・解除動作の制動動作時における電流値は高く、逆に緩衝力を小さくすると制動・解除動作の制動動作時における電流値は低くなる。そして、予め制動シュー5の制動・解除動作の動作音が小さくなるようにi2を把握し、かつ保持電流切替時における可動鉄心4の微小変位分につき制動・解除動作における制動動作をしないようなi3を把握しておき、このi2〜i3の値を判定器33の判定電流範囲とする。
【0037】
また、制動・解除動作の制動動作時に可動鉄心4が変位し始める際の制動動作時電流・電流微分値の波形は図9に示すようになる。そして、このときの制動動作時の電流値i1が判定器33に出力され、緩衝片13の緩衝特性における緩衝力が所定範囲内にあるかが判定される。
【0038】
このような、緩衝特性調整の判定システム34により、組立作業者や保守員は判定器33の出力を見ながら変位機構15のボルト16等を締め又は緩めて変位機構15の変位位置を調整する。したがって、緩衝片13における緩衝力を実測することなく、またダイヤルゲージ等の測定器によってボルト16の回動による変位を実測することなく、変位機構15を適正位置に容易に設定することができる。
【0039】
これにより、電磁制動装置の組立、保守作業を簡略化することができ、組立、保守費を低減することができる。
なお、制動・解除動作時における動作音は、例えば昼間であって周囲の暗騒音が大きい場合には気にならない程度のことがある。しかし、夜間になって周囲の暗騒音が小さくなったときには可動鉄心4の動作音が顕在化して騒音となる。このため、このような現象を考慮して判定器33の判定電流範囲を設定する必要がある。
【0042】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように、巻上機の固定部に設けられた固定鉄心と、上記固定鉄心に保持された可動鉄心と、上記可動鉄心に装着されて上記巻上機の制動面を押圧する制動シューと、上記固定鉄心に設けられると共に、上記可動鉄心に対向して配置されて上記制動シューを制動方向に押圧する制動ばねと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの押圧力に抗して上記可動鉄心を吸引し、上記制動シューを上記制動面方向と反対方向に変位させる電磁コイルと、上記可動鉄心に設けられて上記制動ばねにおける上記可動鉄心側のばね座に対向して配置された押圧ボルトと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの中心に挿入状態に配置されて、上記可動鉄心側の端部に上記ばね座に対向した緩衝片が装着された変位機構と、を備えたものである。
【0043】
これによって、制動面を押圧した制動シューの制動動作を解除するときの、電磁コイルの吸引により可動鉄心が固定鉄心に衝突する動作が緩衝片によって緩衝されて衝突音が減少する。このため、電磁制動装置の制動・解除動作の動作時の騒音が少なくなりエレベーター運転時の環境が静穏化される。また、緩衝片の製作誤差、劣化等によって制動動作時の緩衝片とばね座との隙間が所定範囲外となった場合に、変位機構によって制動動作時の緩衝片とばね座との隙間を所定範囲内に容易に調整することができ、制動・解除動作の動作時の騒音増大、電磁コイルによる可動鉄心の吸引不十分に起因して生じる不具合の発生を未然に防止することができる。このように、制動動作時の緩衝片とばね座との隙間を所定範囲内に容易に設定することができるので、電磁制動装置の組立、保守作業を簡略化することができ、組立、保守費を低減する効果がある。また、緩衝片が制動ばね内に配置されているので、電磁コイルによる磁路断面積が減少することがなく、所要の磁路断面積を容易に得ることができて固定鉄心等の大形化を要しない。したがって、小形であって省スペース化できて安価に製造することができる電磁制動装置を実現する効果がある。
【0044】
また、この発明は以上説明したように、巻上機の固定部に設けられた固定鉄心と、上記固定鉄心に保持された可動鉄心と、上記可動鉄心に装着されて上記巻上機の制動面を押圧する制動シューと、上記固定鉄心に設けられると共に、上記可動鉄心に対向して配置されて上記制動シューを制動方向に押圧する制動ばねと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの押圧力に抗して上記可動鉄心を吸引し、上記制動シューを上記制動面方向と反対方向に変位させる電磁コイルと、上記可動鉄心に設けられて上記制動ばねにおける上記可動鉄心側のばね座に対向して配置された押圧ボルトと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの中心に挿入状態に配置されて、上記可動鉄心側の端部に上記ばね座に対向した緩衝片が装着された変位機構と、を備えたエレベーター巻上機の電磁制動装置において、上記電磁コイルに接続されて制動・解除動作の制動動作時における上記緩衝片による緩衝作用に伴う電流を測定する電流測定器と、上記電流測定器により測定した電流値を微分する電流微分器と、上記電流微分器による微分値がゼロとなる時点での電流値を出力する比較器と、上記微分値がゼロとなる時点での電流値が所定の電流値の範囲内に入っているかを判定する判定器と、を含む緩衝特性調整判定システムを備えたものである。
【0045】
これによって、制動面を押圧した制動シューの制動動作を解除するときの、電磁コイルの吸引により可動鉄心が固定鉄心に衝突する動作が緩衝片によって緩衝されて衝突音が減少する。このため、電磁制動装置の制動動作解除時の騒音が少なくなりエレベーター運転時の環境が静穏化される。また、緩衝片の製作誤差、劣化等によって制動動作時の緩衝片とばね座との隙間が所定範囲外となった場合に、変位機構によって制動動作時の緩衝片とばね座との隙間を所定範囲内に容易に調整することができ、制動動作解除時の騒音増大、電磁コイルによる可動鉄心の吸引不十分に起因して生じる不具合の発生を未然に防止することができる。このように、制動動作時の緩衝片とばね座との隙間を所定範囲内に容易に設定することができるので、電磁制動装置の組立、保守作業を簡略化することができ、組立、保守費を低減する効果がある。また、緩衝片が制動ばね内に配置されているので、電磁コイルによる磁路断面積が減少することがなく、所要の磁路断面積を容易に得ることができて固定鉄心等の大形化を要しない。したがって、小形であって省スペース化できて安価に製造することができる電磁制動装置を実現する効果がある。
更に、緩衝特性調整判定システムにより組立作業者や保守員は判定器の表示を見ながら変位機構により緩衝片の位置を調整する。したがって、緩衝片における緩衝力を実測することなく、またダイヤルゲージ等の測定器によって変位機構による緩衝片の位置を実測することなく変位機構によって緩衝片を適正な位置に容易に設定することができる。このため、電磁制動装置の組立、保守作業を簡略化することができ、組立、保守費を低減する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す概念的断面図。
【図2】 図1のA−A線断面図。
【図3】 この発明の実施の形態2を示す図で、前述の図1におけるB部拡大図に相当する図。
【図4】 図3の側面図。
【図5】 図3における緩衝片の状態を概念的に説明する図3相当図。
【図6】 この発明の実施の形態3を示す概念的断面図。
【図7】 図6のC−C線断面図。
【図8】 この発明の実施の形態4を示す図で、機器の配置を概念的に示す回路図。
【図9】 図8の電流測定器の電流値、電流微分器の電流微分値を示すグラフ。
【図10】 従来のエレベーター巻上機の電磁制動装置を概念的に示す断面図。
【符号の説明】
1 固定鉄心、 2 固定部、 4 可動鉄心、 5 制動シュー、 7 制動面、 8 制動ばね、 11 電磁コイル、 13 緩衝片、 15 変位機構、 23 変位機構、 24 ばね座、 25 押圧ボルト、 28 変位機構、 29 緩衝片、 30 電流測定器、 31 電流微分器、 32 比較器、 33 判定器、 34 緩衝特性調整判定システム。
Claims (2)
- 巻上機の固定部に設けられた固定鉄心と、上記固定鉄心に保持された可動鉄心と、上記可動鉄心に装着されて上記巻上機の制動面を押圧する制動シューと、上記固定鉄心に設けられると共に、上記可動鉄心に対向して配置されて上記制動シューを制動方向に押圧する制動ばねと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの押圧力に抗して上記可動鉄心を吸引し、上記制動シューを上記制動面方向と反対方向に変位させる電磁コイルと、上記可動鉄心に設けられて上記制動ばねにおける上記可動鉄心側のばね座に対向して配置された押圧ボルトと、上記固定鉄心に設けられて上記制動ばねの中心に挿入状態に配置されて、上記可動鉄心側の端部に上記ばね座に対向した緩衝片が装着された変位機構と、を備えたエレベーター巻上機の電磁制動装置。
- 電磁コイルに接続されて制動・解除動作の制動動作時における緩衝片による緩衝作用に伴う電流を測定する電流測定器と、この電流測定器により測定した電流値を微分する電流微分器と、この電流微分器による微分値がゼロとなる時点での電流値を出力する比較器と、上記微分値がゼロとなる時点での電流値が所定の電流値の範囲内に入っているかを判定する判定器と、を含む緩衝特性調整判定システムを備えた請求項1に記載のエレベーター巻上機の電磁制動装置。
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