JP4027584B2 - シリンダ錠 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリンダ錠に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
一般に自動車のドア、あるいはトランクリッド等のロック機構は、パネル側に固定されたシリンダ錠への操作力をロック装置に伝達し、該ロック装置を操作するように構成される。図４はトランクリッドにおけるロック機構を例示するもので、シリンダ錠Ａのロータ２にはレバー３が装着される。一方、レバー３の回転方向と同一平面上にロック装置Ｂが配置されない場合や、ストローク調整が必要なときには、トランクリッドパネルにはベルクランク５が回転自在に軸支され、シリンダ錠への回転操作力はレバー３に伝達された後、ベルクランク５により中継されることによりレバー３側の変位方向をロック装置Ｂ側の操作方向に一致するように変換されてロック装置Ｂ側に伝達される。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来例は、シリンダ錠Ａ、およびロック装置Ｂのトランクリッドパネルへの装着作業に加えてベルクランク５のパネルへの装着作業を要するために、組み付け作業性が劣る上に、寸法精度も高くできないという問題がある。また、レバー３側とロック装置側のストロークが誤差により設定値から外れると、ベルクランク５とロッド８との連結部、あるいはレバー３とベルクランク５との接触部が無負荷状態となり、走行中にびびり音等の低級音が発生するという問題がある。
【０００４】
本発明は、以上の欠点解消すべくなされたものであって、パネルへの組み付け作業性が良好なシリンダ錠の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、走行中等における低級音の発生を防止できるシリンダ錠の提供にある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば上記目的は、
シリンダケース１内にロータ２を回転自在に挿入してなり、ロータ２終端に固定されたレバー３の動作方向をベルクランク５によりトランクリッドロック装置４の動作方向に変換して該トランクリッドロック装置４を操作するシリンダ錠であって、
前記レバー３の回転動作面はトランクリッドロック装置４の操作部の動作面に対して傾斜し、
前記ベルクランク５は、ロータ２を保持するシリンダケース１の筒部１ａの中間部からトランクリッドパネル１２のシリンダ取り付け面１２ａに沿うように側方に張り出されて該シリンダ取り付け面１２ａに固定される固定フランジ１ｂをトランクリッドロック装置４側にさらに延設して形成されるクランク支持片１１に軸支され、トランクリッドロック装置４の操作部の動作面とほぼ同一面上で動作するようにクランク支持片１１に回転自在に装着され、
かつ、前記ベルクランク５は、先端部が曲成されてレバー３の回転動作面に対してほぼ直交方向に延びるレバー対応部１０を有し、レバー３の回転により該レバー３のクランク操作片９に圧接しているレバー対応部１０を押されてトランクリッドロック装置４の操作部の動作面とほぼ同一面上を回転自在なシリンダ錠を提供することにより達成される。
【０００６】
本発明によれば、ベルクランク５が予めシリンダケース１に装着されているため、パネル１２にベルクランク５を別途装着する必要がなくなり、パネル１２への組み付け作業性が向上する。また、ベルクランク５とレバー３との位置関係の精度は、ベルクランク５を別途離れた位置に装着する場合に比して、高くすることができるために、ストローク設定等を正確に行うことができる。
【０００７】
また、前記レバー３はベルクランク５に接触して回転力を伝達するとともに、ベルクランク５には、レバー３を初期回転位置側に付勢するリターンスプリング６が装着されるシリンダ錠を構成した場合には、ベルクランク５とレバー３とは常に圧接状態に維持されて無負荷状態が解消されるために、走行中の低級音の発生が防止できる上に、シリンダ錠にリターンスプリング６を装着する必要がなくなるために、部品点数を減少させることができる。
【０００８】
さらに、前記レバー３には、施錠状態においてベルクランク５の空転を禁止するベルクランクストッパ７が形成されるシリンダ錠を構成した場合には、施錠状態においてロッド８を不正操作して操作対象部品４を操作することを防止できるために防盗性能を向上させることができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図１ないし３に自動車のトランクリッドロック装置を操作するためのシリンダ錠として構成された本発明の実施の形態を示す。シリンダ錠Ａはシリンダケース１内にロータ２を回転操作可能に挿入して形成され、ロータ２を回転操作することにより、ロータ２の端部に装着されたレバー３をロータ２の回転中心に直交する面内で回転させることができる。
【００１０】
レバー３はクランク操作片９と、ベルクランクストッパ７とを有してフォーク形状に形成される。ベルクランクストッパ７はクランク操作片９に対して、ロータ２のロック位置からアンロック位置への回転方向に偏位し、後述するベルクランク５のレバー対応部１０をクランク操作片９とともに挟み付ける位置に配置される。クランク操作片９には樹脂被覆９ａが施される。
【００１１】
シリンダケース１は上記ロータ２を保持する筒部１ａと、筒部１ａの中間部から側方に張り出す固定フランジ１ｂとを有する。固定フランジ１ｂはトランクリッドロック装置（操作対象部品４）側に延設されてクランク支持片１１とされ、該クランク支持片１１にベルクランク５が装着される。
【００１２】
ベルクランク５は後述するシリンダ錠Ａの取り付け姿勢において、トランクリッドロック装置４の操作部の作動面（図１におけるＡ４面）とほぼ同一面上で動作するようにクランク支持片１１に回転自在に軸支される。筒部１ａ、固定フランジ１ｂ、およびクランク支持片１１がダイカスト成型により一体で形成されるこの実施の形態において、クランク支持片１１にはクランク支軸１１ａが成型時に形成され、ベルクランク５は該クランク支軸１１ａに例えばスぺーサ１３ａを介してＥ形止め輪１３等を使用して装着される。
【００１３】
上記ベルクランク５は、レバー３のクランク操作片９の回転領域まで延びるレバー対応部１０を有する。ベルクランク５はクランク支軸１１ａ周りに装着されるトーションスプリングからなるリターンスプリング６によりレバー対応部１０がクランク操作片９に圧接する方向に付勢される。レバー対応部１０とクランク操作片９との摺接音をなくし、さらに、良好な操作感を与えるために、レバー対応部１０には合成樹脂被覆１０ａが施される。また、ベルクランク５は上記レバー対応部１０と反対方向に延びるロック対応部１４を備え、ロッドホルダ１４ａに連結されるロッド８を介してトランクリッドロック装置４の操作部に連結される。
【００１４】
また、シリンダ錠Ａは、シリンダケース１の筒部１ａ先端に露出するロータ２を覆い隠すためのキャップ１５を備える。キャップ１５は合成樹脂材により形成され、シリンダケース１の筒部１ａ前端部を覆う筒部対応部１５ａと、固定フランジ１ｂの正面壁に沿うフランジ部１５ｂとを有し、筒部対応部１５ａをシリンダケース１の筒部１ａ前端部に弾発係止させてシリンダケース１との分離が防止される。キャップ１５の筒部対応部１５ａ端面には、ロータ２のキー挿入孔を外部に露出させるためのキー挿入開口１５ｃが開設される。
【００１５】
この実施の形態において、シリンダ錠Ａは、車体外方から上記キー挿入開口１５ｃが目立たないように、該キー挿入開口１５ｃを斜め下方に向けてトランクリッドパネル１２に固定される。上記姿勢でシリンダ錠Ａを固定するために、トランクリッドパネル１２は、表面が斜め下方を向くシリンダ取り付け面１２ａを有し、シリンダ錠Ａは、キャップ１５をシリンダ取り付け面１２ａのシリンダ挿通孔１２ｂに挿通させた後、シリンダケース１の固定フランジ１ｂをシリンダ取り付け面１２ａにボルト等を使用して固定される。トランクリッドパネル１２への固定状態において、キャップ１５のフランジ部１５ｂはシリンダ取り付け面１２ａと固定フランジ１ｂとの間に介装され、メタルコンタクトを防止するパッキンとして機能する。
【００１６】
トランクリッドパネル１２への固定状態においてロータ２をロック状態からアンロック方向に回転操作すると、レバー３がロータ２に追随して回転する。レバー３の回転により該レバー３のクランク操作片９に圧接しているレバー対応部１０が押されてベルクランク５が回転する。ベルクランク５の回転動作面はトランクリッドロック装置４の操作部の動作面にほぼ一致しており、該ベルクランク５により動作方向が変換されたレバー３への回転操作力はロッド８を介して上記操作部に伝達され、トランクリッドロック装置４を作動させる。この後、ロータ２への回転操作力を解除すると、リターンスプリング６の弾性復元力によりベルクランク５はレバー３を押しやりながら初期回転位置まで復帰し、レバー３、およびロータ２が初期回転位置まで復帰する。
【００１７】
さらに、ロック状態でロータ２の回転は禁止されており、レバー３も回転することができない。このため、ベルクランク５のロック装置解除方向の回転（図３における矢印Ｂ３方向）はレバー３のベルクランクストッパ７により規制されることとなり、ロッド８のみを不正操作してロック装置４を解除操作することはできない。
【００１８】
したがってこの実施の形態において、ベルクランク５による操作力の変換方向、およびストローク長の調整はシリンダ錠Ａの製造時に完了しているために、別途パネル１２にベルクランク５を装着する必要がなく、取り付け作業性を向上させることができる上に、寸法精度も高めることができる。また、ベルクランク５を付勢するリターンスプリング６によりレバー３とベルクランク５との圧接状態が常に保証されるために、走行中の低級音の発生を確実に防止することができる。さらに、ベルクランク５とレバー３の接触部には、合成樹脂被覆が施されて摺動抵抗を低減させているために、シリンダ錠Ａ操作時の異音の発生が防止されるとともに、円滑な操作感を得ることができる。加えて、ロッド８のみを不正に操作してもロック装置を操作できないために、防盗性を向上させることができる。
【００１９】
なお、以上においては、クランク支持片１１はシリンダケース１に一体に形成される場合を示したが、別体に形成したものを連結したものであってもよい。
【００２０】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ベルクランクが予めシリンダケースに装着されているため、パネルにベルクランクを別途装着する必要がなくなり、パネルへの組み付け作業性が向上する。
【００２１】
また、ベルクランクとレバーとの位置関係の精度は、ベルクランクを別途離れた位置に装着する場合に比して、高くすることができるために、ストローク設定等を正確に行うことができる。
【００２２】
さらに、前記レバーはベルクランクに接触して回転力を伝達するとともに、ベルクランクには、レバーを初期回転位置側に付勢するリターンスプリングが装着されるシリンダ錠を構成した場合には、ベルクランクとレバーとは常に圧接状態に維持されて無負荷状態が解消されるために、走行中の低級音の発生が防止できる上に、シリンダ錠にリターンスプリングを装着する必要がなくなるために、部品点数を減少させることができる。
【００２３】
加えて、前記レバーには、施錠状態においてベルクランクの空転を禁止するベルクランクストッパが形成されるシリンダ錠を構成した場合には、施錠状態においてロッドを不正操作して操作対象部品を操作することを防止できるために防盗性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】シリンダ錠のパネルへの固定状態を示す側面図である。
【図２】シリンダ錠を示す図で、（ａ）は図１の２Ａ方向矢視図、（ｂ）は図１に対応する断面図である。
【図３】図１の３Ａ方向矢視図である。
【図４】従来例を示す図である。
【符号の説明】
１ シリンダケース
２ ロータ
３ レバー
４ 操作対象部品
５ ベルクランク
６ リターンスプリング
７ ベルクランクストッパ

Claims (3)

1. シリンダケース内にロータを回転自在に挿入してなり、ロータ終端に固定されたレバーの動作方向をベルクランクによりトランクリッドロック装置の動作方向に変換して該トランクリッドロック装置を操作するシリンダ錠であって、
   前記レバーの回転動作面はトランクリッドロック装置の操作部の動作面に対して傾斜し、
   前記ベルクランクは、ロータを保持するシリンダケースの筒部の中間部からトランクリッドパネルのシリンダ取り付け面に沿うように側方に張り出されて該シリンダ取り付け面に固定される固定フランジをトランクリッドロック装置側にさらに延設して形成されるクランク支持片に軸支され、トランクリッドロック装置の操作部の動作面とほぼ同一面上で動作するようにクランク支持片に回転自在に装着され、
   かつ、前記ベルクランクは、先端部が曲成されてレバーの回転動作面に対してほぼ直交方向に延びるレバー対応部を有し、レバーの回転により該レバーのクランク操作片に圧接しているレバー対応部を押されてトランクリッドロック装置の操作部の動作面とほぼ同一面上を回転自在なシリンダ錠。
2. 前記レバーはベルクランクストッパを有してフォーク形状に形成され、クランク操作片とベルクランクストッパとがレバー対応部を挟み付ける位置に配置される請求項１記載のシリンダ錠。
3. 前記ベルクランクには、レバーを初期回転位置側に付勢するリターンスプリングが装着される請求項１または２記載のシリンダ錠。

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