JP4012287B2 - スパッタリングターゲット盤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子デバイス部品の保護膜や機能性膜に適する薄膜、及び各種治工具等の耐久性を向上させる為に有用な表面処理薄膜等を形成する為のスパッタリング処理における炭化ケイ素製スパッタリングターゲット盤に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、基板材料上へのある種の薄膜形成は、磁性、絶縁性、誘電性等の機能を持たせたり、また高強度や高硬度等の機械的特性や耐腐食性などの化学的特性を保有させるために、例えば電子機械工業等の種々の分野において活用されている。
【0003】
この薄膜形成のための方法としては、主に非酸化性雰囲気中に各種原料ガスを導入し、反応させながら析出させる化学的気相蒸着法(CVD法)と成膜したい材料をターゲット盤とし、イオンを衝突させることにより、該材料を対向して置いて基板上に生成させる物理的気相蒸着法(スパッタリング法、又はPVD法)の二者があるが、スパッタリング法の方が、CVD法に比較して、製造コストや量産性に優れ、また基板材料の依存性も低いという点で非常に有利である。
【0004】
一方、本発明で示す炭化ケイ素材は、セラミックス材料の中でも、耐熱性、熱伝導性、また表面硬度や耐腐食性に最も優れるものであり、この材料を各種基板材料上に薄膜として生成させたものは、各種電子デバイス部品、各種部品組立用治工具や金型類などに非常に好適に用いられる。とくに電子デバイス部品においては、高硬度と高摺動性を活かし、コンピュータ周辺機器であるハードディスク装置のヘッドやディスク盤あるいは光磁気ディスク盤の保護膜として利用され、また高熱伝導性を活かし機能素子の分離膜等に用いられる。
【0005】
さてこの炭化ケイ素薄膜の生成法は、上述したように、ターゲット盤を用いたスパッタリング法にて形成するのが最適であると言えるが、その為には、高性能な炭化ケイ素製スパッタリングターゲット盤が必要とされる。
【0006】
従来薄膜形成に用いられてきたターゲット盤は、一般的に炭化ケイ素粉末を焼成して高密度の焼結体を得るために、アルミナやホウ素を焼結助剤として添加して作製した焼結体や焼結助剤を添加せず、そのまま焼結した多孔質焼結体によるものが主流であった。しかし、前者のアルミナ等金属系の焼結助剤を添加したものは、その助剤成分が不純物となり、電子部品関連用途への適用には問題があり、また後者の多孔質焼結体は、スパッタリング時のイオンスパッタに不均一性が発生し易く、偏った摩耗が進行するため寿命が短く、同時に粒子の脱落によるパーティクル発生が問題視され、また機械的強度や耐熱衝撃性が低いため、パッキングプレートとの接合時に割れが起こり易く、装置への取り付け時の破壊も散見される傾向があった。
【0007】
そのような背景のもとに、高緻密性でかつ不純物が少ない炭化ケイ素製ターゲット盤が求められており、このために、従来の金属系焼結助剤を用いず、高密度の焼結体を得ることが検討され、例えば、ケイ素及び炭素を含むガスや溶液を原料として、1)気相成長(CVD法)により微細な粉末を形成し、形成された粉末を原料とし無助剤で焼結体を作製する方法、2)気相成長(CVD法)により直接板状の成形体を作製する方法等が提案されている。
【0008】
しかし、これらの方法は生産性が非常に悪く、コストが高いという欠点を有しており、さらに上記1)の方法は、粉末が微細すぎて、精密電子部品用途に使用する場合、焼結後もパーティクルが発生し易く、2)の方法では肉厚の成形体を作製し難く、またスパッタリング法は直流スパッタリングと高周波スパッタリングの二つの方法があるが、この2)の方法によっては直流スパッタリング法に適する導電性レベルが得られ難いという欠点を保有していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、各種電子デバイス部品の保護膜や機能性膜に適する薄膜、及び各種治工具等の耐久性を向上させる為に有用な表面処理薄膜等の高純度の薄膜を形成しうるスパッタリング処理に適する、機械的特性及び電気的特性に優れ、また偏摩耗に対する耐久性が良好な、炭化ケイ素製スパッタリングターゲット盤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の製造方法により得られた炭化ケイ素の焼結体をスパッタリングターゲット盤として使用したときに、非常に優れた特性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明のスパッタリングターゲット盤は、少なくとも1種以上の液状のケイ素化合物を含むケイ素源と、加熱により炭素を生成する少なくとも1種以上の液状の有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒とを混合して得られた混合物を固化して固形物を得る固化工程と、得られた固形物を非酸化性雰囲気下で加熱炭化した後、さらに非酸化性雰囲気で焼成する焼成工程とを含む製造方法により得られた炭化ケイ素粉末と、加熱により炭素を生成する有機化合物とが均質に混合された混合物を焼結することにより得られた密度が2.9g/cm 以上の炭化ケイ素焼結体で形成されたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記加熱により炭素を生成する有機化合物は、炭化ケイ素粉末表面を被覆した状態で存在していてもよい。
【0013】
この炭化ケイ素焼結体は、前記混合物を非酸化性雰囲気下でホットプレスすることにより得られたものとすることができる。
【0015】
前記炭化ケイ素焼結体に含まれる不純物元素の総含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、炭化ケイ素粉末を焼結するに当たり、焼結助剤としてホウ素、アルミニウム、ベリリウム等の金属やその化合物である金属系焼結助剤や、カーボンブラック、グラファイト等の炭素系焼結助剤等は用いずに、加熱により炭素を生成する有機化合物(焼結助剤)のみを用いるため、焼結体の純度が高く、また結晶粒界での異物が少なく、熱伝導性に優れ、且つ炭化ケイ素本来の性質として炭素材料に比し耐汚染性、耐摩耗性に優れた、各種電子デバイス部品の保護膜や機能性膜に適する薄膜、及び各種治工具等の耐久性を向上させる為に有用な表面処理薄膜等を形成しうるスパッタリングターゲット盤が提供される。
【0017】
また、炭化ケイ素粉末として、請求項記載の製造方法により得られた粉末を用いることで、さらに純度が高い焼結体が得られ、不純物元素の総含有量を1ppm以下にすることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明の炭化ケイ素製スパッタリングターゲット盤の原料として用いられる炭化ケイ素粉末は、後述の製造方法により得られるものであり、α型、β型、非晶質或いはこれらの混合物等が挙げられるが、特に、β型炭化ケイ素粉末が好適に使用される。後述の製造方法により得られるものであれば、このβ型炭化ケイ素粉末のグレードには特に制限はない。この炭化ケイ素粉末の粒径は、高密度化の観点からは小さいことが好ましく、0.01〜5μm程度、さらには、0.05〜3μm程度であることが好ましい。粒径が0.01μm未満であると、計量、混合などの処理工程における取扱が困難となり、5μmを超えると比表面積が小さく、即ち、隣接する粉体との接触面積が小さくなり、高密度化が困難となるため、好ましくない。
【0020】
好適な炭化ケイ素原料粉体の態様としては、粒径が0.05〜1μm、比表面積が5m2 /g以上、遊離炭素1%以下、酸素含有量1%以下のものが好適に用いられる。また、用いられる炭化ケイ素粉末の粒度分布は特に制限されず、炭化ケイ素焼結体の製造時において、粉体の充填密度を向上させること及び炭化ケイ素の反応性の観点から、2つ以上の極大値を有するものも使用しうる。
【0021】
スパッタリングターゲット盤に用いる炭化ケイ素焼結体は高純度であることが好ましく、高純度の炭化ケイ素焼結体を得るためには、原料の炭化ケイ素粉末として、高純度の炭化ケイ素粉体を用いればよい。
【0022】
本発明の炭化ケイ素製スパッタリングターゲット盤の原料として用いられる炭化ケイ素粉末は、少なくとも1種以上の液状のケイ素化合物を含むケイ素源と、加熱により炭素を生成する少なくとも1種以上の液状の有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒と、を均質に混合して得られた固形物を非酸化性雰囲気下で加熱炭化した後、さらに、非酸化性雰囲気下で焼成する焼成工程とを含む製造方法により得られる。この製造方法によると、高純度の炭化ケイ素粉末を得ることができる。
【0023】
高純度の炭化ケイ素粉末の製造に用いられるケイ素化合物(以下、適宜、ケイ素源と称する)としては、液状のものと固体のものとを併用することができるが、少なくとも一種は液状のものから選ばれなくてはならない。液状のものとしては、アルコキシシラン(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)及びテトラアルコキシシランの重合体が用いられる。アルコキシシランの中ではテトラアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられるが、ハンドリングの点からはエトキシシランが好ましい。また、テトラアルコキシシランの重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子重量合体(オリゴマー)及びさらに重合度が高いケイ酸ポリマーで液状のものが挙げられる。これらと併用可能な固体状のものとしては、酸化ケイ素が挙げられる。本発明において酸化ケイ素とは、SiOの他、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉体)等を含む。
【0024】
これらケイ素源のなかでも、均質性やハンドリング性が良好な観点から、テトラエトキシシランのオリゴマー及びテトラエトキシシランのオリゴマーと微粉体シリカとの混合物等が好適である。また、これらのケイ素源は高純度の物質が用いられ、初期の不純物含有量が20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
また、炭化ケイ素粉末の製造に使用される加熱により炭素を生成する有機化合物としては、液状のものの他、液状のものと固体のものとを併用して使用することができ、残炭率が高く、且つ触媒若しくは加熱により重合又は架橋する有機化合物、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール等の樹脂のモノマーやプレポリマーが好ましく、その他、セルロース、しょ糖、ピッチ、タール等の液状物も用いられ、特にレゾール型フェノール樹脂が好ましい。また、その純度は目的により適宜制御選択が可能であるが、特に高純度の炭化ケイ素粉末が必要な場合には、各金属を5ppm以上含有していない有機化合物を用いることが望ましい。
【0026】
本発明に使用される原料粉体である炭化ケイ素粉体を製造するにあたっての、炭素とケイ素の比(以下、C/Si比と略記)は、混合物を炭化して得られる炭化物中間体を、元素分析することにより定義される。化学量論的には、C/Si比が3.0の時に生成炭化ケイ素中の遊離炭素が0%となるはずであるが、実際には同時に生成するSiOガスの揮散により低C/Si比において遊離炭素が発生する。この生成炭化ケイ素粉体中の遊離炭素量が焼結体等の製造用途に適当でない量にならないように予め配合を決定することが重要である。通常、1気圧近傍で1600℃以上での焼成では、C/Si比を2.0〜2.5にすると遊離炭素を抑制することができ、この範囲を好適に用いることができる。C/Si比を2.5以上にすると遊離炭素が顕著に増加するが、この遊離炭素は粒成長を抑制する効果を持つため、粒子形成の目的に応じて適宜選択しても良い。但し、雰囲気の圧力を低圧又は高圧で焼成する場合は、純粋な炭化ケイ素を得るためのC/Si比は変動するので、この場合は必ずしも前記C/Si比の範囲に限定するものではない。
【0027】
なお、遊離炭素の焼結の際の作用は、本発明で用いられる炭化ケイ素粉体の表面に被覆された加熱により炭素を生成する有機化合物に由来する炭素によるものに比較して非常に弱いため、基本的には無視することができる。
【0028】
また、本発明においてケイ素源と加熱により炭素を生成する有機化合物とを均質に混合した固形物を得るために、ケイ素源と該有機化合物の混合物を硬化させて固形物とすることも必要に応じて行われる。硬化の方法としては、加熱により架橋する方法、硬化触媒により硬化する方法、電子線や放射線による方法が挙げられる。硬化触媒としては、炭素源に応じて適宜選択できるが、フェノール樹脂やフラン樹脂の場合には、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、塩酸、硫酸等の酸類、ヘキサミン等のアミン類等を用いる。
【0029】
この原料混合固形物の加熱炭化は、窒素又はアルゴン等の非酸化性雰囲気中800℃〜1000℃にて30分〜120分間該固形物を加熱することにより行われる。
【0030】
さらに、この炭化物をアルゴン等の非酸化性雰囲気中1350℃以上2000℃以下で加熱することにより炭化ケイ素が生成する。焼成温度と時間は希望する粒径等の特性に応じて適宜選択できるが、より効率的な生成のためには1600℃〜1900℃での焼成が望ましい。
【0031】
また、より高純度の粉体を必要とする時には、前述の焼成時に2000〜2100℃にて5〜20分間加熱処理を施すことにより不純物をさらに除去できる。
【0032】
以上より、特に高純度の炭化ケイ素粉末を得る方法としては、本願出願人が先に特願平7−241856号として出願した単結晶の製造方法に記載された原料粉体の製造方法、即ち、高純度のテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン重合体、酸化ケイ素から選択される1種以上をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度有機化合物を炭素源とし、これらを均質に混合して得られた混合物を非酸化性雰囲気下において加熱焼成して炭化ケイ素粉体を得る炭化ケイ素生成工程と、得られた炭化ケイ素粉体を、1700℃以上2000℃未満の温度に保持し、該温度の保持中に、2000℃〜2100℃の温度において5〜20分間にわたり加熱する処理を少なくとも1回行う後処理工程とを含み、前記2工程を行うことにより、各不純物元素の含有量が0.5ppm以下である炭化ケイ素粉体を得ること、を特徴とする高純度炭化ケイ素粉末の製造方法等を利用することができる。
【0033】
また、本発明のスパッタリングターゲット盤に好適に使用し得る炭化ケイ素焼結体を製造するにあたって、前記炭化ケイ素粉末と混合されて用いられる焼結助剤は加熱により炭素を生成する有機化合物であり、加熱により炭素を生成する所謂炭素源と称される物質である。本発明における炭化ケイ素焼結体の製造に、これらで表面を被覆された炭化ケイ素粉末(粒径:0.01〜1μm程度)を用いることができる
【0034】
また、本発明において、前記炭化ケイ素粉末と混合される、加熱により炭素を生成する有機化合物(以下、適宜、炭素源と称する)は、従来の焼結助剤に代えて、添加されることにより反応を促進させる機能を有する物質であり、具体的には、残炭率の高いコールタールピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂やグルコース等の単糖類、蔗糖等の少糖類、セルロース、デンプン等の多糖類などの等の各種糖類が挙げられる。これらは炭化ケイ素粉末と均質に混合するという目的から、常温で液状のもの、溶媒に溶解するもの、熱可塑性或いは熱融解性のように加熱することにより軟化するもの或いは液状となるものが好適に用いられるが、なかでも、得られる成形体の強度が高いフェノール樹脂、特に、レゾール型フェノール樹脂が好適である。
【0035】
この有機化合物は加熱されると粒子表面(近傍)においてカーボンブラックやグラファイトの如き無機炭素系化合物を生成し、焼結中に炭化ケイ素の表面酸化被膜を効率的に除去する焼結助剤として有効に作用すると考えられる。なお、カーボンブラックやグラファイト粉末等従来より炭素系焼結助剤として知られているものを焼結助剤として添加しても、前記加熱により炭素を生成する有機化合物を添加して得られるような本発明の効果を達成することはできない。
【0036】
本発明において、炭化ケイ素粉末と加熱により炭素を生成する有機化合物との混合物を得る際に、加熱により炭素を生成する有機化合物を溶媒に溶解又は分散させて混合することが好ましい。溶媒は、加熱により炭素を生成する有機化合物として使用する化合物に対して好適なもの、具体的には、好適な加熱により炭素を生成する有機化合物であるフェノール樹脂に対しては、エチルアルコール等の低級アルコール類やエチルエーテル、アセトン等を選択することができる。また、この加熱により炭素を生成する有機化合物及び溶媒についても不純物の含有量が低いものを使用することが好ましい。
【0037】
炭化ケイ素粉末と混合される加熱により炭素を生成する有機化合物の添加量は少なすぎると焼結体の密度が上がらず、多過ぎると焼結体に含まれる遊離炭素が増加するため高密度化を阻害する虞があるため、使用する加熱により炭素を生成する有機化合物の種類にもよるが、一般的には、10重量%以下、好ましくは2〜5重量%となるように添加量を調整することが好ましい。この量は、予め炭化ケイ素粉末の表面のシリカ(酸化ケイ素)量をフッ酸を用いて定量し、化学量論的にその還元に充分な量を計算することにより決定することができる。
【0038】
なお、ここでいう炭素としての添加量とは、上記の方法により定量されたシリカが加熱により炭素を生成する有機化合物に由来する炭素で、下記の化学反応式により還元されるものとし加熱により炭素を生成する有機化合物の熱分解後の残炭率(加熱により炭素を生成する有機化合物中で炭素を生成する割合)などを考慮して得られる値である。
【0039】
【化1】
SiO + 3C → SiC + 2CO
また、本発明に係る炭化ケイ素焼結体においては、炭化ケイ素焼結体中に含まれる炭化ケイ素に由来する炭素原子及び加熱により炭素を生成する有機化合物に由来する炭素原子の合計が30重量%を超え、40重量%以下であることが好ましい。含有量が30重量%以下であると、焼結体中に含まれる不純物の割合が多くなり、40重量%を超えると炭素含有量が多くなり得られる焼結体の密度が低下し、焼結体の強度、耐酸化性等の諸特性が悪化するため好ましくない。
【0040】
本発明に係わる炭化ケイ素焼結体を製造するにあたって、まず、炭化ケイ素粉末と、加熱により炭素を生成する有機化合物とを均質に混合するが、前述の如く、加熱により炭素を生成する有機化合物であるフェノール樹脂をエチルアルコールなどの溶媒に溶解し、炭化ケイ素粉末と十分に混合する。混合は公知の混合手段、例えば、ミキサー、遊星ボールミルなどによって行うことができる。混合は、10〜30時間、特に、16〜24時間にわたって行うことが好ましい。十分に混合した後は、溶媒の物性に適合する温度、例えば、先に挙げたエチルアルコールの場合には50〜60℃の温度、で溶媒を除去し、混合物を蒸発乾固させたのち、篩にかけて混合物の原料粉体を得る。なお、高純度化の観点からは、ボールミル容器及びボールの材質を金属をなるべく含まない合成樹脂にする必要がある。また、乾燥にあたっては、スプレードライヤーなどの造粒装置を用いてもよい。
【0041】
本発明のスパッタリングターゲット盤を製造する製造方法において必須の工程である焼結工程は、粉体の混合物又は後記の成形工程により得られた粉体の混合物の成形体を、温度2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm2 、非酸化性雰囲気下で成形金型中に配置し、ホットプレスする工程である。
【0042】
ここで使用する成形金型は、得られる焼結体の純度の観点から、成形体と金型の金属部とが直接接触しないように、型の一部又は全部に黒鉛製等の材料を使用するか、金型内にテフロンシート等を介在させることが好ましい。
【0043】
本発明においてホットプレスの圧力は300〜700kgf/cm2 の条件で加圧ことができるが、特に、400kgf/cm2 以上の加圧した場合には、ここで使用するホットプレス部品、例えば、ダイス、パンチ等は耐圧性の良好なものを選択する必要がある。
【0044】
ここで、焼結工程を詳細に説明するが、焼結体を製造するためのホットプレス工程の前に以下の条件で加熱、昇温を行って不純物を十分に除去し、炭素源の炭化を完全に行わせしめた後、前記条件のホットプレス加工を行うことが好ましい。
【0045】
即ち、以下の2段階の昇温工程を行うことが好ましい。まず、炉内を真空下、室温から700℃に至るまで、緩やかに加熱する。ここで、高温炉の温度制御が困難な場合には、700℃まで昇温を連続的に行ってもよいが、好ましくは、炉内を10-4torrにして、室温から200℃まで緩やかに昇温し、該温度において一定時間保持する。その後、さらに緩やかに昇温を続け、700℃まで加熱する。さらに700℃前後の温度にて一定時間保持する。この第1の昇温工程において、吸着水分や結合剤の分解が行われ、炭素源の熱分解による炭化が行われる。200℃前後或いは700℃前後の温度に保持する時間は結合剤の種類、焼結体のサイズによって好適な範囲が選択される。保持時間が十分であるか否かは真空度の低下がある程度少なくなる時点をめやすにすることができる。この段階で急激な加熱を行うと、不純物の除去や炭素源の炭化が十分に行われず、成形体に亀裂や空孔を生じさせる虞があるため好ましくない。
【0046】
一例を挙げれば、5〜10g程度の試料に関しては、10-4torrにして、室温から200℃まで緩やかに昇温し、該温度において約30分間保持し、その後、さらに緩やかに昇温を続け、700℃まで加熱するが、室温から700℃に至るまでの時間は6〜10時間程度、好ましくは8時間前後である。さらに700℃前後の温度にて2〜5時間程度保持することが好ましい。
【0047】
真空中で、さらに700℃から1500℃に至るまで、前記の条件であれば6〜9時間ほどかけて昇温し、1500℃の温度で1〜5時間ほど保持する。この工程では二酸化ケイ素、酸化ケイ素の還元反応が行われると考えられる。ケイ素と結合した酸素を除去するため、この還元反応を十分に完結させることが重要であり、1500℃の温度における保持時間は、この還元反応による副生物である一酸化炭素の発生が完了するまで、即ち、真空度の低下が少なくなり、還元反応開始前の温度である1300℃付近における真空度に回復するまで、行うことが必要である。この第2の昇温工程における還元反応により、炭化ケイ素粉体表面に付着して緻密化を阻害し、大粒成長の原因となる二酸化ケイ素が除去される。この還元反応中に発生するSiO、COを含む気体は不純物元素を伴っているが、真空ポンプによりこれらの発生気体が反応炉へ絶えず排出され、除去されるため、高純度化の観点からもこの温度保持を十分に行うことが好ましい。
【0048】
これらの昇温工程が終了した後に、高圧ホットプレスを行うことが好ましい。温度が1500℃より高温に上昇すると焼結が開始するが、その際、異常粒成長を押さえるために300〜700kgf/cm2 程度までをめやすとして加圧を開始する。その後、炉内を非酸化性雰囲気とするために不活性ガスを導入する。この不活性ガスとしては、窒素あるいは、アルゴンなどを用いるが、高温においても非反応性であることから、アルゴンガスを用いることが望ましい。
【0049】
炉内を非酸化性雰囲気とした後、温度を2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm2 となるように加熱、加圧をおこなう。プレス時の圧力は原料粉体の粒径によって選択することができ、原料粉体の粒径が小さいものは加圧時の圧力が比較的小さくても好適な焼結体が得られる。また、ここで1500℃から最高温度である2000〜2400℃までへの昇温は2〜4時間かけて行うが、焼結は1850〜1900℃で急速に進行する。さらに、この最高温度で1〜3時間保持し、焼結を完了する。
【0050】
ここで最高温度が2000℃未満であると高密度化が不十分となり、2400℃を超えると成形体原料が昇華(分解)する虞があるため好ましくない。また、加圧条件が500kgf/cm2 未満であると高密度化が不十分となり、700kgf/cm2 を超えると黒鉛型などの成形型の破損の原因となり、製造の効率から好ましくない。
【0051】
この焼結工程においても、得られる焼結体の純度保持の観点から、ここで用いられる黒鉛型や加熱炉の断熱材等は、高純度の黒鉛原料を用いることが好ましく、黒鉛原料は高純度処理されたものが用いられるが、具体的には、2500℃以上の温度で予め十分ベーキングされ、焼結温度で不純物の発生がないものが望ましい。さらに、使用する不活性ガスについても、不純物が少ない高純度品を使用することが好ましい。
【0052】
本発明では、前記焼結工程を行うことにより優れた特性を有する炭化ケイ素焼結体が得られるが、最終的に得られる焼結体の高密度化の観点から、この焼結工程に先立って以下に述べる成形工程を実施してもよい。以下にこの焼結工程に先立って行うことができる成形工程について説明する。ここで、成形工程とは、炭化ケイ素粉末と、炭素源とを均質に混合して得られた原料粉体を成形金型内に配置し、80〜300℃の温度範囲で、5〜60分間にわたり加熱、加圧して予め成形体を調整する工程である。ここで、原料粉体の金型への充填は極力密に行うことが、最終的な焼結体の高密度化の観点から好ましい。この成形工程を行うと、ホットプレスのために試料を充填する際に嵩のある粉体を予めコンパクトになしうるので、繰り返しにより高密度の成形体や厚みの大きい成形体を製造し易くなる。
【0053】
加熱温度は、80〜300℃、好ましくは120〜140℃の範囲、圧力60〜100kgf/cm2 の範囲で、充填された原料粉体の密度を1.5g/cm3 以上、好ましくは、1.9g/cm3 以上とするようにプレスして、加圧状態で5〜60分間、好ましくは20〜40分間保持して原料粉体からなる成形体を得る。ここで成形体の密度は、粉体の平均粒径が小さくなる程高密度にしにくくなり、高密度化するためには成形金型内に配置する際に振動充填等の方法をとることが好ましい。具体的には、平均粒径が1μm程度の粉体では密度が1.8g/cm3 以上、平均粒径が0.5μm程度の粉体では密度が1.5g/cm3 以上であることがより好ましい。それぞれの粒径において密度が1.5g/cm3 又は1.8g/cm3 未満であると、最終的に得られる焼結体の高密度化が困難となる。
【0054】
この成形体は、次の焼結工程に付す前に、予め用いるホットプレス型に適合するように切削加工を行うことができる。この成形体を前記の温度2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm2 、非酸化性雰囲気下で成形金型中に配置し、ホットプレスする工程即ち焼成工程に付して、高密度、高純度の炭化ケイ素焼結体を得るものである。
【0055】
以上により生成した炭化ケイ素焼結体は、十分に高密度化されており、密度は2.9g/cm3 以上である。得られた焼結体の密度が2.9g/cm3 未満であると、曲げ強度、破壊強度などの力学的特性や電気的な物性が低下し、さらに、パーティクルが増大し、汚染性が悪化するため好ましくない。炭化ケイ素焼結体の密度は、3.0g/cm3 以上であることがより好ましい。
【0056】
また、得られた焼結体が多孔質体であると、耐熱性、耐酸化性、耐薬品性や機械強度に劣る、洗浄が困難である、微小割れが生じて微小片が汚染物質となる、ガス透過性を有する等の物性的に劣る点を有することになり、用途が限定されるなどの問題点も生じてくる。
【0057】
本発明で得られる炭化ケイ素焼結体の不純物元素の総含有量は、5ppm以下、好ましくは3ppm以下、より好ましくは1ppm以下であるが、例えば、電子部品又は半導体工業分野への適用の観点からは、これらの化学的な分析による不純物含有量は参考値としての意味を有するに過ぎない。実用的には、不純物が均一に分布しているか、局所的に偏在しているかによっても、評価が異なってくる。例えば、半導体工業での当業者は一般的に実用装置を用いて所定の加熱条件のもとで不純物がどの程度ウェハを汚染するかを種々の手段により評価している。なお、液状のケイ素化合物と、加熱により炭素を生成する液状の有機化合物と、重合又は架橋触媒と、を均質に混合して得られた固形物を非酸化性雰囲気下で加熱炭化した後、さらに、非酸化性雰囲気下で焼成する焼成工程とを含む製造方法によれば、炭化ケイ素焼結体の不純物元素の総含有量を1ppm以下にすることができる。ここで不純物元素とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から16族元素に属し、且つ、原子番号3以上であり、原子番号6〜8及び同14〜16の元素を除く元素をいう。
【0058】
その他、本発明で得られる炭化ケイ素焼結体の好ましい物性について検討するに、例えば、室温における曲げ強度は50.0〜65.0kgf/mm2 、1500℃における曲げ強度は55.0〜80.0kgf/mm2 、ヤング率は3.5×104 〜4.5×104 、ビッカース硬度は2000kgf/mm2 以上、ポアソン比は0.14〜0.21、熱膨張係数は3.8×10-6〜4.2×10-6(℃-1)、熱伝導率は150W/m・k以上、比熱は0.15〜0.18cal/g・℃、耐熱衝撃性は500〜700ΔT℃、体積抵抗率は1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0059】
上記の製造方法により得られた焼結体は、使用目的に合わせて、加工、研磨、洗浄等の処理を行なわれ、スパッタリングターゲット盤への使用に供される。
【0060】
上記の本発明のスパッタリングターゲット盤を製造する方法においては、前記加熱条件を満たしうるものであれば、特に製造装置等に制限はなく、焼結用の型の耐圧性を考慮すれば、公知の加熱炉内や反応装置を使用することができる。
【0061】
本発明の原料粉体である炭化ケイ素粉体及び原料粉体を製造するためのケイ素源と炭素源、さらに、非酸化性雰囲気とするために用いられる不活性ガス、それぞれの純度は、各不純物元素含有量5ppm以下であることが好ましいが、加熱、焼結工程における純化の許容範囲内であれば必ずしもこれに限定するものではない。また、その際、上記原料は、得られる炭化ケイ素焼結体の所望の純度に応じて、適当な純度の物質を選択する必要がある。ここで不純物元素とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から16族元素に属し、且つ、原子番号3以上であり、原子番号6〜8及び同14の元素を除く元素をいう。
【0062】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の主旨を超えない限り本実施例に限定されるものではない。
【0063】
参考例
成形体の製造
市販のβ型炭化ケイ素粉体(Grade B−HP、H.C.シュタルク社製、平均粒径2μm)1410gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂90gをエタノール2000gに溶解したものとを、遊星ボールミルで18時間攪拌し、十分に混合した。その後、50〜60℃に加温してエタノールを蒸発乾固させ、500μmの篩にかけて均質な炭化ケイ素原料粉体を得た。この原料粉体1000gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度2.2g/cmの成形体を得た。
【0064】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに、500kgf/cmの圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
(実施例
高純度炭化ケイ素粉末の製造
シリカ含有率40%の高純度エチルシリケートオリゴマー6800gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂3050gを混合し、触媒として高純度トルエンスルホン酸28%水溶液1370gを加えて硬化乾燥し、均質な樹脂状固形物を得た。これを窒素雰囲気下900℃で1時間炭化させた。得られた炭化物のC/Siは元素分析の結果2.4であった。この炭化物4000gを炭素製容器に入れ、アルゴン雰囲気下で1850℃まで昇温し10分間保持した後2050℃まで昇温して5分間保持してから降温して平均粒径1.3μmの粉末を得た。不純物含有量は各元素0.5ppm以下となった。
【0065】
成形体の製造
上記方法により得られた高純度炭化ケイ素粉末1410gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂90gをエタノール2000gに溶解したものとを、遊星ボールミルで18時間攪拌し、十分に混合した。その後、50〜60℃に加温してエタノールを蒸発乾固させ、500μmの篩にかけて均質な炭化ケイ素原料粉体を得た。この原料粉体1000gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度2.1g/cm3 の成形体を得た。
【0066】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに500kgf/cm2 の圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
(比較例1)
成形体の製造
市販のβ型炭化ケイ素粉体(Grade B−HP、H.C.シュタルク社製、平均粒径2μm)1410gと炭化ホウ素(B4 C)11gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂90gをエタノール2000gに溶解したものを、遊星ボールミルで18時間攪拌し、十分に混合した。その後、50〜60℃に加温してエタノールを除去、蒸発乾固させ、500μmの篩にかけて均質な炭化ケイ素原料粉体を得た。この原料粉体1000gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度2.2g/cm3 の成形体を得た。
【0067】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに、150kgf/cm2 の圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
(比較例2)
高純度炭化ケイ素粉末の製造
シリカ含有率40%の高純度エチルシリケートオリゴマー6800gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂3050gを混合し、触媒として高純度トルエンスルホン酸28%水溶液1370gを加えて硬化乾燥し、均質な樹脂状固形物を得た。これを窒素雰囲気下900℃で1時間炭化させた。得られた炭化物のC/Siは元素分析の結果2.4であった。この炭化物4000gを炭素製容器に入れ、アルゴン雰囲気下で1850℃まで昇温し10分間保持した後2050℃まで昇温して5分間保持してから降温して平均粒径1.3μmの粉末を得た。不純物含有量は各元素0.5ppm以下となった。
【0068】
成形体の製造
上記方法により得られた高純度炭化ケイ素粉末1000gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度1.9g/cm3 の成形体を得た。
【0069】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに500kgf/cm2 の圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
【0070】
【表1】
Figure 0004012287
【0071】
本発明の効果を確認する為に、上記参考例、実施例及び比較例の焼結体により下記サイズの炭化ケイ素製の円盤を作製し、そして所定のスパッタリング装置に合致するパッキングプレートに該円盤をインジウムを接着材として貼り付け、スパッタリングターゲット盤を作製した。そして、ターゲット素材としての適正を知るための、機械的特性及び電気特性、スパッタリング装置で運転したときの耐久寿命、及び電子部品に使用した場合を考慮して形成した薄膜の純度レベルについて、以下の方法で評価した。
【0072】
スパッタリングターゲット盤サイズ:10インチ径(250mmφ)×5mm厚
(ターゲット素材としての適応性:機械的特性・電気的特性の評価)
上記のスパッタリングターゲット盤のパッキングプレートに接着する前のターゲット素材について、焼結体密度、曲げ強度(室温下)、体積抵抗率について測定し、直流型及び高周波型のスパッタリング装置に対する適応性を評価した。
(ターゲット盤の耐久寿命の評価)
高周波型スパッタリング装置に、上記素材より成るスパッタリングターゲット盤を取り付け、アルゴンガスの導入により各材料に対し、同一印加電力の下で薄膜形成を行った。
【0073】
スパッタリング条件→アルゴンガス圧:1Pa、印加電力:1Kw
スパッタリングによるターゲット盤の摩耗状況を定期的にチェックし、偏摩耗等により最も窪んだ部分が2.5mm(初期厚みの50%)となる迄の寿命を確認し、参考例を100として指数で示した。数値が大きいほど耐久性に優れていることを示す。
(形成薄膜の純度レベルの評価)
高周波型スパッタリング装置に上記素材より成るスパッタリングターゲット盤を取り付け、薄膜形成を行い、その後薄膜表面部分について、鉄の原子数を確認した。
【0074】
これらの評価結果を下記表2に示す。
【0075】
【表2】
Figure 0004012287
【0076】
前記の参考例、実施例及び比較例に明らかなように、本発明の方法により得られた実施例の炭化珪素製スパッタリングターゲット盤は、機械的特性及び電気的特性に優れ、また偏摩耗に対する耐久寿命が長く、かつ形成された薄膜の純度も電子デバイスでも全く問題を引き起こさない結果であり、非常に優れた性能を保有するものであった。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、各種電子デバイス部品に好適な高純度の薄膜を形成しうるスパッタリング処理に適する、機械的特性及び電気的特性に優れ、また偏摩耗に対する耐久性が良好な、炭化ケイ素製スパッタリングターゲット盤を得ることができる。

Claims (4)

  1. 少なくとも1種以上の液状のケイ素化合物を含むケイ素源と、加熱により炭素を生成する少なくとも1種以上の液状の有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒とを混合して得られた混合物を固化して固形物を得る固化工程と、
    得られた固形物を非酸化性雰囲気下で加熱炭化した後、さらに非酸化性雰囲気で焼成する焼成工程と
    を含む製造方法により得られた炭化ケイ素粉末と、加熱により炭素を生成する有機化合物のみとが均質に混合された混合物を焼結することにより得られた密度が2.9g/cm 以上の炭化ケイ素焼結体で形成されたことを特徴とするスパッタリングターゲット盤。
  2. 前記加熱により炭素を生成する有機化合物が、炭化ケイ素粉末表面を被覆していること、を特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット盤。
  3. 前記炭化ケイ素焼結体は前記混合物を非酸化性雰囲気下でホットプレスすることにより得られたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスパッタリングターゲット盤。
  4. 前記炭化ケイ素焼結体に含まれる不純物元素の総含有量が1ppm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット盤。
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