JP4086936B2 - ダミーウェハ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集積回路等の製造でのシリコンウェハに対する熱拡散、熱酸化、及び気相成長等の処理工程において、炉内温度や気体濃度等の均一性の評価、汚染物質の除去及び各種処理条件の決定等のために用いられるウェハ(以下、ダミーウェハという)に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSI等の半導体製造プロセスにおいては、ウェハ表面を酸化する工程、リンやホウ素等のドープ元素をシリコン中に拡散させる工程、ウェハ表面にCVD(化学的気相蒸着法)やPVD(物理的気相蒸着法)により各種被膜を形成させる工程が重要な位置を占めており、これらの工程において如何に処理条件を一定に保つかが製品の歩留り向上やより高集積なデバイスを製造する上で重要なポイントになる。
【0003】
上記の工程では、一般に、ウェハ100枚以上が装填されたボートをヒーターを備えた反応炉に入れて各処理を行うバッチ処理が採られているが、このような処理では、反応炉の位置によって温度差があったり、原料ガスの濃度が不均一になる等の問題がある。このため、温度や原料ガスの濃度等の処理条件が反応炉内の他の箇所の処理条件と異なるおそれのある箇所に、製品ウェハとしては用いないダミーウェハを設置して、各ダミーウェハ上に積層された薄膜の厚みや成分等が同じであるか否かによって、処理条件の均一性を評価している。また、このダミーウェハは、エッチング処理装置におけるプラズマ処理条件を検討したり、装置内に発生したパーティクルを除去したりするためにも使用される。このような目的で用いられるダミーウェハは、高温下で反復して使用されたり、また、ダミーウェハ上に形成された被膜を除去することによって反復使用を可能にするために酸で繰り返し処理される。
【0004】
そして、従来、ダミーウェハの材料として、通常の製品ウェハの材料と同じシリコンや石英等が使用されている。しかし、シリコンで形成されたダミーウェハの場合、耐熱性があまり良好でないため、形状が経時的に変化しやすく、また酸への耐久性が低いため、溶解により表面が荒れてしまい、パーティクルが発生しやすいという問題があり、ダミーウェハとしての寿命が短い。一方、石英の場合は、耐熱性及び耐酸性が十分でなく、また、導電性でないためにエッチング処理等に使用することができない。このため、シリコンや石英に代わり、耐熱性に優れたカーボン材料、耐酸性に優れたセラミックス材料がダミーウェハの材料として期待されており、中でも、構成元素が製品である半導体デバイスに無害であることから、炭化ケイ素焼結体が最も期待されている。
【0005】
ところが、炭化ケイ素は焼結が困難な材料であるため、焼結を容易にするための助剤として炭化ボロンやアルミナ等を炭化ケイ素に少量添加することが一般的であり、これらの添加物が不純物となるため、従来の炭化ケイ素は前述のダミーウェハの材料としては不適切であった。
【0006】
従って、前述のような有害な助剤を用いない炭化ケイ素焼結法及び焼結体が望まれており、例えば、ケイ素及び炭素を含むガスや溶液を原料として、i)気相成長により微細な粉末を形成し、形成された粉末を材料として焼結体を作製する方法、ii)気相成長により直接板状の成形体(焼結体)を作製する方法が提案されている。
【0007】
しかし、これらの方法は、生産性が非常に悪く、コストが高いという欠点を有しており、さらに、上記i)の方法は、粉末が微細すぎて焼結後もパーティクルが発生し易い等という欠点を有し、ii)の方法は、肉厚の成形体を作製し難いという欠点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、耐熱性及び耐酸性に優れ、汚染性の少ないダミーウェハを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の製造方法により得られた炭化ケイ素の焼結体をダミーウェハとして使用したときに、非常に優れた特性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明のダミーウェハは、密度が2.9g/cm3以上であり、且つ、炭化ケイ素粉末と、炭化ケイ素粉末に対して10重量%以下の非金属系焼結助剤とのみを均質に混合した混合物を焼結することにより得られた、前記炭化ケイ素に由来する炭素原子及び前記非金属系焼結助剤に由来する炭素原子の合計が30重量%を超え、40重量%以下である炭化ケイ素焼結体で形成されたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記非金属系焼結助剤が、加熱により炭素を生成する有機化合物であることが好ましく、この非金属系焼結助剤は、炭化ケイ素粉末表面を被覆している状態で存在することができる。
【0012】
炭化ケイ素焼結体は、前記混合物を非酸化性雰囲気下でホットプレスすることにより得ることができる。
【0013】
また、前記炭化ケイ素粉末は、少なくとも1種以上の液状のケイ素化合物を含むケイ素源と、加熱により炭素を生成する少なくとも1種以上の液状の有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒とを混合して得られた混合物を固化して固形物を得る固化工程と、得られた固形物を、温度2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm 2 、非酸化性雰囲気下で成形金型中に配置し、ホットプレスする焼成工程とを含む製造方法により製造することができる。
【0014】
前記炭化ケイ素焼結体に含まれる不純物元素の総含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、炭化ケイ素粉末を焼結するに当たり、焼結助剤としてホウ素、アルミニウム、ベリリウム等の金属やその化合物である金属系焼結助剤と、カーボンブラック、グラファイト等の炭素系焼結助剤との二種類を組み合わせたもの等は用いずに、後述の非金属系焼結助剤のみを用いるため、焼結体の純度が高く、また結晶粒界での異物が少なく、且つ炭化ケイ素本来の性質として炭素材料に比し耐熱性、耐酸性及び耐汚染性に優れたダミーウェハが提供される。
【0016】
また、炭化ケイ素粉末として、請求項5記載の製造方法により得られた粉末を用いれば、さらに純度が高い焼結体が得られ、不純物元素の総含有量を1ppm以下にすることが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明の炭化ケイ素製ダミーウェハの原料として用いられる炭化ケイ素粉末は、α型、β型、非晶質或いはこれらの混合物等が挙げられるが、特に、焼結体の熱膨張率の点から、β型炭化ケイ素粉末が好適に使用される。このβ型炭化ケイ素粉末のグレードには特に制限はなく、例えば、一般に市販されているβ型炭化ケイ素粉末を用いることができる。この炭化ケイ素粉末の粒径は、高密度化の観点からは小さいことが好ましく、0.01〜5μm程度、さらには、0.05〜3μm程度であることが好ましい。粒径が0.01μm未満であると、計量、混合などの処理工程における取扱が困難となり、5μmを超えると比表面積が小さく、即ち、隣接する粉体との接触面積が小さくなり、高密度化が困難となるため、好ましくない。
【0019】
好適な炭化ケイ素原料粉体の態様としては、粒径が0.05〜1μm、比表面積が5m2 /g以上、遊離炭素1%以下、酸素含有量1%以下のものが好適に用いられる。また、用いられる炭化ケイ素粉末の粒度分布は特に制限されず、炭化ケイ素焼結体の製造時において、粉体の充填密度を向上させること及び炭化ケイ素の反応性の観点から、2つ以上の極大値を有するものも使用しうる。
【0020】
ダミーウェハに用いる炭化ケイ素焼結体は高純度であることが好ましく、高純度の炭化ケイ素焼結体を得るためには、原料の炭化ケイ素粉末として、高純度の炭化ケイ素粉体を用いればよい。
【0021】
高純度の炭化ケイ素粉末は、例えば、少なくとも1種以上の液状のケイ素化合物を含むケイ素源と、加熱により炭素を生成する少なくとも1種以上の液状の有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒と、を均質に混合して得られた固形物を非酸化性雰囲気下で焼成する焼成工程とを含む製造方法により得ることができる。
【0022】
高純度の炭化ケイ素粉末の製造に用いられるケイ素化合物(以下、適宜、ケイ素源と称する)としては、液状のものと固体のものとを併用することができるが、少なくとも一種は液状のものから選ばれなくてはならない。液状のものとしては、アルコキシシラン(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)及びテトラアルコキシシランの重合体が用いられる。アルコキシシランの中ではテトラアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられるが、ハンドリングの点からはエトキシシランが好ましい。また、テトラアルコキシシランの重合体としては、重合度が2〜15程度の低分子重量合体(オリゴマー)及びさらに重合度が高いケイ酸ポリマーで液状のものが挙げられる。これらと併用可能な固体状のものとしては、酸化ケイ素が挙げられる。本発明において酸化ケイ素とは、SiOの他、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シリカゲル、微細シリカ、石英粉体)等を含む。
【0023】
これらケイ素源のなかでも、均質性やハンドリング性が良好な観点から、テトラエトキシシランのオリゴマー及びテトラエトキシシランのオリゴマーと微粉体シリカとの混合物等が好適である。また、これらのケイ素源は高純度の物質が用いられ、初期の不純物含有量が20ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
また、高純度炭化ケイ素粉末の製造に使用される加熱により炭素を生成する有機化合物としては、液状のもの他、液状のものと固体のものとを併用することができ、残炭率が高く、且つ触媒若しくは加熱により重合又は架橋する有機化合物、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール等の樹脂のモノマーやプレポリマーが好ましく、その他、セルロース、しょ糖、ピッチ、タール等の液状物も用いられ、特にレゾール型フェノール樹脂が好ましい。また、その純度は目的により適宜制御選択が可能であるが、特に高純度の炭化ケイ素粉末が必要な場合には、各金属を5ppm以上含有していない有機化合物を用いることが望ましい。
【0025】
本発明に使用される原料粉体である高純度炭化ケイ素粉体を製造するにあたっての、炭素とケイ素の比(以下、C/Si比と略記)は、混合物を1000℃にて炭化して得られる炭化物中間体を、元素分析することにより定義される。化学量論的には、C/Si比が3.0の時に生成炭化ケイ素中の遊離炭素が0%となるはずであるが、実際には同時に生成するSiOガスの揮散により低C/Si比において遊離炭素が発生する。この生成炭化ケイ素粉体中の遊離炭素量が焼結体等の製造用途に適当でない量にならないように予め配合を決定することが重要である。通常、1気圧近傍で1600℃以上での焼成では、C/Si比を2.0〜2.5にすると遊離炭素を抑制することができ、この範囲を好適に用いることができる。C/Si比を2.5以上にすると遊離炭素が顕著に増加するが、この遊離炭素は粒成長を抑制する効果を持つため、粒子形成の目的に応じて適宜選択しても良い。但し、雰囲気の圧力を低圧又は高圧で焼成する場合は、純粋な炭化ケイ素を得るためのC/Si比は変動するので、この場合は必ずしも前記C/Si比の範囲に限定するものではない。
【0026】
なお、遊離炭素の焼結の際の作用は、本発明で用いられる炭化ケイ素粉体の表面に被覆された非金属系焼結助剤に由来する炭素によるものに比較して非常に弱いため、基本的には無視することができる。
【0027】
また、本発明においてケイ素源と加熱により炭素を生成する有機化合物とを均質に混合した固形物を得るために、ケイ素源と該有機化合物の混合物を硬化させて固形物とすることも必要に応じて行われる。硬化の方法としては、加熱により架橋する方法、硬化触媒により硬化する方法、電子線や放射線による方法が挙げられる。硬化触媒としては、炭素源に応じて適宜選択できるが、フェノール樹脂やフラン樹脂の場合には、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、しゅう酸、塩酸、硫酸等の酸類、ヘキサミン等のアミン類等を用いる。
【0028】
この原料混合固形物は必要に応じ加熱炭化される。これは窒素又はアルゴン等の非酸化性雰囲気中800℃〜1000℃にて30分〜120分間該固形物を加熱することにより行われる。
【0029】
さらに、この炭化物をアルゴン等の非酸化性雰囲気中1350℃以上2000℃以下で加熱することにより炭化ケイ素が生成する。焼成温度と時間は希望する粒径等の特性に応じて適宜選択できるが、より効率的な生成のためには1600℃〜1900℃での焼成が望ましい。
【0030】
また、より高純度の粉体を必要とする時には、前述の焼成時に2000〜2100℃にて5〜20分間加熱処理を施すことにより不純物をさらに除去できる。
【0031】
以上より、特に高純度の炭化ケイ素粉末を得る方法としては、本願出願人が先に特願平7−241856号として出願した単結晶の製造方法に記載された原料粉体の製造方法、即ち、高純度のテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン重合体、酸化ケイ素から選択される1種以上をケイ素源とし、加熱により炭素を生成する高純度有機化合物を炭素源とし、これらを均質に混合して得られた混合物を非酸化性雰囲気下において加熱焼成して炭化ケイ素粉体を得る炭化ケイ素生成工程と、得られた炭化ケイ素粉体を、1700℃以上2000℃未満の温度に保持し、該温度の保持中に、2000℃〜2100℃の温度において5〜20分間にわたり加熱する処理を少なくとも1回行う後処理工程とを含み、前記2工程を行うことにより、各不純物元素の含有量が0.5ppm以下である炭化ケイ素粉体を得ること、を特徴とする高純度炭化ケイ素粉末の製造方法等を利用することができる。
【0032】
本発明のウェハに好適に使用し得る炭化ケイ素焼結体を製造するにあたって、前記炭化ケイ素粉末と混合されて用いられる非金属系焼結助剤としては、加熱により炭素を生成する、所謂炭素源と称される物質が用いられ、加熱により炭素を生成する有機化合物又はこれらで表面を被覆された炭化ケイ素粉末(粒径:0.01〜1μm程度)が挙げられ、効果の観点からは前者が好ましい。
【0033】
また、本発明において、前記炭化ケイ素粉末と混合される、加熱により炭素を生成する有機化合物(以下、適宜、炭素源と称する)として用いられる物質は、従来の焼結助剤に代えて、非金属系焼結助剤として添加されることにより反応を促進させる機能を有する物質であり、具体的には、残炭率の高いコールタールピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂やグルコース等の単糖類、蔗糖等の少糖類、セルロース、デンプン等の多糖類などの等の各種糖類が挙げられる。これらは炭化ケイ素粉末と均質に混合するという目的から、常温で液状のもの、溶媒に溶解するもの、熱可塑性或いは熱融解性のように加熱することにより軟化するもの或いは液状となるものが好適に用いられるが、なかでも、得られる成形体の強度が高いフェノール樹脂、特に、レゾール型フェノール樹脂が好適である。
【0034】
この有機化合物は加熱されると粒子表面(近傍)においてカーボンブラックやグラファイトの如き無機炭素系化合物を生成し、焼結中に炭化ケイ素の表面酸化膜を効率的に除去する焼結助剤として有効に作用すると考えられる。なお、カーボンブラックやグラファイト粉末等従来より炭素系焼結助剤として知られているものを焼結助剤として添加しても、前記非金属系焼結助剤を添加して得られるような本発明の効果を達成することはできない。
【0035】
本発明において、炭化ケイ素粉末と非金属系焼結助剤との混合物を得る際に、非金属系焼結助剤を溶媒に溶解又は分散させて混合することが好ましい。溶媒は、非金属系焼結助剤として使用する化合物に対して好適なもの、具体的には、好適な加熱により炭素を生成する有機化合物であるフェノール樹脂に対しては、エチルアルコール等の低級アルコール類やエチルエーテル、アセトン等を選択することができる。また、この非金属系焼結助剤及び溶媒についても不純物の含有量が低いものを使用することが好ましい。
【0036】
炭化ケイ素粉末と混合される非金属系焼結助剤の添加量は少なすぎると焼結体の密度が上がらず、多過ぎると焼結体に含まれる遊離炭素が増加するため高密度化を阻害する虞があるため、使用する非金属系焼結助剤の種類にもよるが、一般的には、10重量%以下、好ましくは2〜5重量%となるように添加量を調整することが好ましい。この量は、予め炭化ケイ素粉末の表面のシリカ(酸化ケイ素)量をフッ酸を用いて定量し、化学量論的にその還元に充分な量を計算することにより決定することができる。
【0037】
なお、ここでいう炭素としての添加量とは、上記の方法により定量されたシリカが非金属系焼結助剤に由来する炭素で、下記の化学反応式により還元されるものとし、非金属系焼結助剤の熱分解後の残炭率(非金属系焼結助剤中で炭素を生成する割合)などを考慮して得られる値である。
【0038】
【化1】
SiO2 + 3C → SiC + 2CO
また、本発明に係る炭化ケイ素焼結体においては、炭化ケイ素焼結体中に含まれる炭化ケイ素に由来する炭素原子及び非金属系焼結助剤に由来する炭素原子の合計が30重量%を超え、40重量%以下であることが好ましい。含有量が30重量%以下であると、焼結体中に含まれる不純物の割合が多くなり、40重量%を超えると炭素含有量が多くなり得られる焼結体の密度が低下し、焼結体の強度、耐酸化性等の諸特性が悪化するため好ましくない。
【0039】
本発明に係わる炭化ケイ素焼結体を製造するにあたって、まず、炭化ケイ素粉末と、非金属系焼結助剤とを均質に混合するが、前述の如く、非金属系焼結助剤であるフェノール樹脂をエチルアルコールなどの溶媒に溶解し、炭化ケイ素粉末と十分に混合する。混合は公知の混合手段、例えば、ミキサー、遊星ボールミルなどによって行うことができる。混合は、10〜30時間、特に、16〜24時間にわたって行うことが好ましい。十分に混合した後は、溶媒の物性に適合する温度、例えば、先に挙げたエチルアルコールの場合には50〜60℃の温度、で溶媒を除去し、混合物を蒸発乾固させたのち、篩にかけて混合物の原料粉体を得る。なお、高純度化の観点からは、ボールミル容器及びボールの材質を金属をなるべく含まない合成樹脂にする必要がある。また、乾燥にあたっては、スプレードライヤーなどの造粒装置を用いてもよい。
【0040】
本発明のダミーウェハを製造する製造方法において必須の工程である焼結工程は、粉体の混合物又は後記の成形工程により得られた粉体の混合物の成形体を、温度2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm2 、非酸化性雰囲気下で成形金型中に配置し、ホットプレスする工程である。
【0041】
ここで使用する成形金型は、得られる焼結体の純度の観点から、成形体と金型の金属部とが直接接触しないように、型の一部又は全部に黒鉛製等の材料を使用するか、金型内にテフロンシート等を介在させることが好ましい。
【0042】
本発明においてホットプレスの圧力は300〜700kgf/cm2 の条件で加圧ことができるが、特に、400kgf/cm2 以上の加圧した場合には、ここで使用するホットプレス部品、例えば、ダイス、パンチ等は耐圧性の良好なものを選択する必要がある。
【0043】
ここで、焼結工程を詳細に説明するが、焼結体を製造するためのホットプレス工程の前に以下の条件で加熱、昇温を行って不純物を十分に除去し、炭素源の炭化を完全に行わせしめた後、前記条件のホットプレス加工を行うことが好ましい。
【0044】
即ち、以下の2段階の昇温工程を行うことが好ましい。まず、炉内を真空下、室温から700℃に至るまで、緩やかに加熱する。ここで、高温炉の温度制御が困難な場合には、700℃まで昇温を連続的に行ってもよいが、好ましくは、炉内を10-4torrにして、室温から200℃まで緩やかに昇温し、該温度において一定時間保持する。その後、さらに緩やかに昇温を続け、700℃まで加熱する。さらに700℃前後の温度にて一定時間保持する。この第1の昇温工程において、吸着水分や結合剤の分解が行われ、炭素源の熱分解による炭化が行われる。200℃前後或いは700℃前後の温度に保持する時間は結合剤の種類、焼結体のサイズによって好適な範囲が選択される。保持時間が十分であるか否かは真空度の低下がある程度少なくなる時点をめやすにすることができる。この段階で急激な加熱を行うと、不純物の除去や炭素源の炭化が十分に行われず、成形体に亀裂や空孔を生じさせる虞があるため好ましくない。
【0045】
一例を挙げれば、5〜10g程度の試料に関しては、10-4torrにして、室温から200℃まで緩やかに昇温し、該温度において約30分間保持し、その後、さらに緩やかに昇温を続け、700℃まで加熱するが、室温から700℃に至るまでの時間は6〜10時間程度、好ましくは8時間前後である。さらに700℃前後の温度にて2〜5時間程度保持することが好ましい。
【0046】
真空中で、さらに700℃から1500℃に至るまで、前記の条件であれば6〜9時間ほどかけて昇温し、1500℃の温度で1〜5時間ほど保持する。この工程では二酸化ケイ素、酸化ケイ素の還元反応が行われると考えられる。ケイ素と結合した酸素を除去するため、この還元反応を十分に完結させることが重要であり、1500℃の温度における保持時間は、この還元反応による副生物である一酸化炭素の発生が完了するまで、即ち、真空度の低下が少なくなり、還元反応開始前の温度である1300℃付近における真空度に回復するまで、行うことが必要である。この第2の昇温工程における還元反応により、炭化ケイ素粉体表面に付着して緻密化を阻害し、大粒成長の原因となる二酸化ケイ素が除去される。この還元反応中に発生するSiO、COを含む気体は不純物元素を伴っているが、真空ポンプによりこれらの発生気体が反応炉へ絶えず排出され、除去されるため、高純度化の観点からもこの温度保持を十分に行うことが好ましい。
【0047】
これらの昇温工程が終了した後に、高圧ホットプレスを行うことが好ましい。温度が1500℃より高温に上昇すると焼結が開始するが、その際、異常粒成長を押さえるために300〜700kgf/cm2 程度までをめやすとして加圧を開始する。その後、炉内を非酸化性雰囲気とするために不活性ガスを導入する。この不活性ガスとしては、窒素あるいは、アルゴンなどを用いるが、高温においても非反応性であることから、アルゴンガスを用いることが望ましい。
【0048】
炉内を非酸化性雰囲気とした後、温度を2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm2 となるように加熱、加圧をおこなう。プレス時の圧力は原料粉体の粒径によって選択することができ、原料粉体の粒径が小さいものは加圧時の圧力が比較的小さくても好適な焼結体が得られる。また、ここで1500℃から最高温度である2000〜2400℃までへの昇温は2〜4時間かけて行うが、焼結は1850〜1900℃で急速に進行する。さらに、この最高温度で1〜3時間保持し、焼結を完了する。
【0049】
ここで最高温度が2000℃未満であると高密度化が不十分となり、2400℃を超えると成形体原料が昇華(分解)する虞があるため好ましくない。また、加圧条件が500kgf/cm2 未満であると高密度化が不十分となり、700kgf/cm2 を超えると黒鉛型などの成形型の破損の原因となり、製造の効率から好ましくない。
【0050】
この焼結工程においても、得られる焼結体の純度保持の観点から、ここで用いられる黒鉛型や加熱炉の断熱材等は、高純度の黒鉛原料を用いることが好ましく、黒鉛原料は高純度処理されたものが用いられるが、具体的には、2500℃以上の温度で予め十分ベーキングされ、焼結温度で不純物の発生がないものが望ましい。さらに、使用する不活性ガスについても、不純物が少ない高純度品を使用することが好ましい。
【0051】
本発明では、前記焼結工程を行うことにより優れた特性を有する炭化ケイ素焼結体が得られるが、最終的に得られる焼結体の高密度化の観点から、この焼結工程に先立って以下に述べる成形工程を実施してもよい。以下にこの焼結工程に先立って行うことができる成形工程について説明する。ここで、成形工程とは、炭化ケイ素粉末と、炭素源とを均質に混合して得られた原料粉体を成形金型内に配置し、80〜300℃の温度範囲で、5〜60分間にわたり加熱、加圧して予め成形体を調整する工程である。ここで、原料粉体の金型への充填は極力密に行うことが、最終的な焼結体の高密度化の観点から好ましい。この成形工程を行うと、ホットプレスのために試料を充填する際に嵩のある粉体を予めコンパクトになしうるので、繰り返しにより高密度の成形体や厚みの大きい成形体を製造し易くなる。
【0052】
加熱温度は、80〜300℃、好ましくは120〜140℃の範囲、圧力60〜100kgf/cm2 の範囲で、充填された原料粉体の密度を1.5g/cm3 以上、好ましくは、1.9g/cm3 以上とするようにプレスして、加圧状態で5〜60分間、好ましくは20〜40分間保持して原料粉体からなる成形体を得る。ここで成形体の密度は、粉体の平均粒径が小さくなる程高密度にしにくくなり、高密度化するためには成形金型内に配置する際に振動充填等の方法をとることが好ましい。具体的には、平均粒径が1μm程度の粉体では密度が1.8g/cm3 以上、平均粒径が0.5μm程度の粉体では密度が1.5g/cm3 以上であることがより好ましい。それぞれの粒径において密度が1.5g/cm3 又は1.8g/cm3 未満であると、最終的に得られる焼結体の高密度化が困難となる。
【0053】
この成形体は、次の焼結工程に付す前に、予め用いるホットプレス型に適合するように切削加工を行うことができる。この成形体を前記の温度2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm2 、非酸化性雰囲気下で成形金型中に配置し、ホットプレスする工程即ち焼成工程に付して、高密度、高純度の炭化ケイ素焼結体を得るものである。
【0054】
以上により生成した炭化ケイ素焼結体は、十分に高密度化されており、密度は2.9g/cm3 以上である。得られた焼結体の密度が2.9g/cm3 未満であると、曲げ強度、破壊強度などの力学的特性や電気的な物性が低下し、さらに、パーティクルが増大し、汚染性が悪化するため好ましくない。炭化ケイ素焼結体の密度は、3.0g/cm3 以上であることがより好ましい。
【0055】
また、得られた焼結体が多孔質体であると、耐熱性、耐酸化性、耐薬品性や機械強度に劣る、洗浄が困難である、微小割れが生じて微小片が汚染物質となる、ガス透過性を有する等の物性的に劣る点を有することになり、用途が限定されるなどの問題点も生じてくる。
【0056】
本発明で得られる炭化ケイ素焼結体の不純物元素の総含有量は、5ppm以下、好ましくは3ppm以下、より好ましくは1ppm以下であるが、半導体工業分野への適用の観点からは、これらの化学的な分析による不純物含有量は参考値としての意味を有するに過ぎない。実用的には、不純物が均一に分布しているか、局所的に偏在しているかによっても、評価が異なってくる。従って、当業者は一般的に実用装置を用いて所定の加熱条件のもとで不純物がどの程度ウェハを汚染するかを種々の手段により評価している。なお、液状のケイ素化合物と、加熱により炭素を生成する液状の有機化合物と、重合又は架橋触媒と、を均質に混合して得られた固形物を非酸化性雰囲気下で加熱炭化した後、さらに、非酸化性雰囲気下で焼成する焼成工程とを含む製造方法によれば、炭化ケイ素焼結体に含まれる不純物元素の総含有量を1ppm以下にすることができる。また、その際、上記原料は得られる炭化ケイ素焼結体の所望の純度に応じ、適当な純度の物質を選択する必要がある。ここで不純物元素とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から16族元素に属し、且つ、原子番号3以上であり、原子番号6〜8及び同14の元素を除く元素をいう。
【0057】
その他、本発明で得られる炭化ケイ素焼結体の好ましい物性について検討するに、例えば、室温における曲げ強度は50.0〜65.0kgf/mm2 、1500℃における曲げ強度は55.0〜80.0kgf/mm2 、ヤング率は3.5×104 〜4.5×104 、ビッカース硬度は2000kgf/mm2 以上、ポアソン比は0.14〜0.21、熱膨張係数は3.8×10-6〜4.2×10-6(℃-1)、熱伝導率は150W/m・k以上、比熱は0.15〜0.18cal/g・℃、耐熱衝撃性は500〜700ΔT℃、比抵抗は1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0058】
上記の製造方法により得られた焼結体は、必要に応じて、加工、研磨、洗浄等の処理を行なわれる。本発明のダミーウェハは、ホットプレス等により円柱状試料(焼結体)を形成させ、これを径方向にスライス加工することによって製造することができ、その加工方法として、放電加工が好適に用いられる。
【0059】
本発明では、一例として、直径が100〜400mm、厚みが0.5〜1.0mmのダミーウェハを製造することができ、また、ウェハの表面粗さとして、研磨により用途に応じて、中心線平均粗さ(Ra)を0.01〜10μmの範囲で調製することができる。
【0060】
上記の製造方法においては、前記加熱条件を満たしうるものであれば、特に製造装置等に制限はなく、焼結用の型の耐圧性を考慮すれば、公知の加熱炉内や反応装置を使用することができる。
【0061】
本発明の原料粉体である炭化ケイ素粉体及び原料粉体を製造するためのケイ素源と炭素源、さらに、非酸化性雰囲気とするために用いられる不活性ガス、それぞれの純度は、各不純物元素含有量5ppm以下であることが好ましいが、加熱、焼結工程における純化の許容範囲内であれば必ずしもこれに限定するものではない。また、ここで不純物元素とは、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から16族元素に属し、且つ、原子番号3以上であり、原子番号6〜8及び同14の元素を除く元素をいう。
【0062】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の主旨を超えない限り本実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
成形体の製造
市販のβ型炭化ケイ素粉体(Grade B−HP、H.C.シュタルク社製、平均粒径2μm)141gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂9gをエタノール200gに溶解したものとを、遊星ボールミルで18時間攪拌し、十分に混合した。その後、50〜60℃に加温してエタノールを蒸発乾固させ、500μmの篩にかけて均質な炭化ケイ素原料粉体を得た。この原料粉体15gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度2.2g/cm3 、外径約200mm、厚み約100mmの円柱状の成形体を得た。
【0064】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに、500kgf/cm2 の圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
得られた焼結体の密度は3.18g/cm3 、ビッカース硬度は2500kgf/mm2 、電気比抵抗は0.3Ω・cmであった。得られた焼結体を酸による加熱処理で熱分解した後ICP−質量分析及びフレームレス原子吸光法で評価した結果を表1に示す。
【0065】
ダミーウェハの製造
上記のように得られた焼結体を放電加工機で裁断加工し、さらに切断面を研磨機で研磨することにより直径200mm、厚み0.6mmのダミーウェハを得た。
【0066】
(実施例2)
高純度炭化ケイ素粉末の製造
シリカ含有率40%の高純度エチルシリケートオリゴマー680gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂305gを混合し、触媒として高純度トルエンスルホン酸28%水溶液137gを加えて硬化乾燥し、均質な樹脂状固形物を得た。これを窒素雰囲気下900℃で1時間炭化させた。得られた炭化物のC/Siは元素分析の結果2.4であった。この炭化物400gを炭素製容器に入れ、アルゴン雰囲気下で1850℃まで昇温し10分間保持した後2050℃まで昇温して5分間保持してから降温して平均粒径1.3μmの粉末を得た。不純物含有量は各元素0.5ppm以下となった。
【0067】
成形体の製造
上記方法により得られた高純度炭化ケイ素粉末141gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂9gをエタノール200gに溶解したものとを、遊星ボールミルで18時間攪拌し、十分に混合した。その後、50〜60℃に加温してエタノールを蒸発乾固させ、500μmの篩にかけて均質な炭化ケイ素原料粉体を得た。この原料粉体15gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度2.1g/cm3 、外径約200mm、厚み約100mmの円柱状の成形体を得た。
【0068】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに500kgf/cm2 の圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
得られた焼結体の密度は3.15g/cm3 、ビッカース硬度は2600kgf/mm2 、電気比抵抗は0.2Ω・cmであった。なお、不純物濃度を下記表1に示す。
【0069】
また、実施例2による得られた焼結体について物性を詳細に測定した結果、前記以外の特性として、室温における曲げ強度は50.0kgf/mm2 、1500℃における曲げ強度は50.0kgf/mm2 、ヤング率は4.1×104 、ポアソン比は0.15、熱膨張係数は3.9×10-6℃-1、熱伝導率は200W/m・k以上、比熱は0.16cal/g・℃、耐熱衝撃性は530ΔT℃であり、前記の好ましい物性を全て満たしていることが確認された。
【0070】
ダミーウェハの製造
上記のように得られた焼結体を放電加工機で裁断加工し、さらに切断面を研磨機で研磨することにより直径200mm、厚み0.6mmのダミーウェハを得た。
【0071】
(比較例1)
成形体の製造
市販のβ型炭化ケイ素粉体(Grade B−HP、H.C.シュタルク社製、平均粒径2μm)141gと炭化ホウ素(B4 C)1.1gと含水率20%の高純度液体レゾール型フェノール樹脂9gをエタノール200gに溶解したものを、遊星ボールミルで18時間攪拌し、十分に混合した。その後、50〜60℃に加温してエタノールを除去、蒸発乾固させ、500μmの篩にかけて均質な炭化ケイ素原料粉体を得た。この原料粉体15gを金型に充填し130℃で20分間プレスして、密度2.2g/cm3 、外径約200mm、厚み約100mmの円柱状の成形体を得た。
【0072】
焼結体の製造
この成形体を黒鉛製型に入れ、以下の条件でホットプレスを行った。ホットプレス装置としては、高周波誘導加熱式100tホットプレスを用いた。
(焼結工程の条件)
10-5〜10-4torrの真空条件下で、室温から700℃まで6時間かけて昇温し、5時間その温度に保持した。(第1の昇温工程)
真空条件下で、700℃〜1200℃まで3時間で昇温し、さらに、1200℃〜1500℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(第2の昇温工程)
さらに、150kgf/cm2 の圧力で加圧し、アルゴン雰囲気下にて1500℃〜2200℃まで3時間で昇温し、1時間その温度に保持した。(ホットプレス工程)
得られた焼結体の密度は3.18g/cm3 、ビッカース硬度は2400kgf/mm2 、電気比抵抗は108 Ω・cmであった。不純物濃度を下記表1に示す。
【0073】
ダミーウェハの製造
上記のように得られた焼結体を放電加工機で裁断加工し、さらに切断面を研磨機で研磨することにより直径200mm、厚み0.6mmのダミーウェハを得た。
【0074】
(比較例2)
市販の高純度黒鉛製ダミーウェハ(密度1.65g/cm3 、ビッカース硬度350kgf/mm2 、電気比抵抗2.4×10-3Ω・cm)を使用した。
【0075】
これらの不純物濃度を下記表1に示す。
(比較例3)
市販のシリコンウェハ(密度2.33g/cm3 、ビッカース硬度550kgf/mm2 、電気比抵抗1.3×10-2Ω・cm)を使用した。
【0076】
これらの不純物濃度を下記表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
上記実施例及び比較例のダミーウェハについて耐熱性、汚染性及び耐酸性を評価した。各評価法は以下のとおりである。
【0079】
耐熱性
ウェハボートに実施例及び比較例のダミーウェハをそれぞれ5枚ずつ載置し、次いでこのウェハボートをバッチ処理可能な拡散装置に装着して、内部温度を1250℃まで昇温し、この温度を10時間保持した後に、室温まで冷却した。このサイクルを10回繰り返した後のダミーウェハの変形度(%)[(試験後のダミーウェハの面内うねり量)/(試験前のダミーウェハの面内うねり量)×100]を求めた。ここで、面内うねり量は、ウェハの中心を通る第一の線(半径)に沿ってウェハをその幅方向に切断したと想定した場合の第一の仮想切断面の最も高い部分と最も低い部分の高低差を求め、同様にウェハの中心を通り且つ第一の線と直交する第二の線(半径)に沿ってウェハをその幅方向に切断したと想定した場合の第二の仮想切断面の最も高い部分と最も低い部分の高低差を求めたときの、両者の平均値として求めた。
【0080】
汚染性
ウェハボートに実施例及び比較例のダミーウェハ2枚を、シリコンウェハを挟持する形で載置し、次いでこのウェハボートをバッチ処理可能な拡散装置に装着して、内部温度を1250℃まで昇温し、この温度を10時間保持した後に、室温まで冷却した。そして、ダミーウェハに挟持されたシリコンウェハの表面より1μm以内での鉄の原子数を確認した。
【0081】
耐酸性
ウェハボートに実施例及び比較例のダミーウェハをそれぞれ5枚ずつ載置し、次いでこのウェハボートをバッチ処理可能なCVD成膜装置に装着して、内部温度を800℃まで昇温すると共に、モノシランガス及び酸素を装置内に導入し、約10時間の被膜形成処理を行った後、各ダミーウェハを取出し、フッ酸をベースとする強酸で酸化シリコン被膜を溶解させる洗浄処理を行った。この作業を10回実施した後のダミーウェハの重量損失(%)[1−(試験後のダミーウェハの重量)/(試験前のダミーウェハの重量)×100]を求めた。
【0082】
評価結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
前記の各実施例及び比較例に明らかなように、本発明の方法により得られた実施例の炭化ケイ素焼結体は、十分な密度を有し、不純物含有率も極めて低く、耐熱性及び耐酸性に優れるものであった。また、実施例の炭化ケイ素焼結体はウェハに対する汚染も少ないものであった。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性及び耐酸性に優れ、汚染性の少ないダミーウェハを提供することができる。
Claims (6)
- 密度が2.9g/cm3以上であり、且つ、炭化ケイ素粉末と、炭化ケイ素粉末に対して10重量%以下の非金属系焼結助剤とのみを均質に混合した混合物を焼結することにより得られた、前記炭化ケイ素に由来する炭素原子及び前記非金属系焼結助剤に由来する炭素原子の合計が30重量%を超え、40重量%以下である炭化ケイ素焼結体で形成されたことを特徴とするダミーウェハ。
- 前記非金属系焼結助剤が、加熱により炭素を生成する有機化合物であること、を特徴とする請求項1に記載のダミーウェハ。
- 前記非金属系焼結助剤が、炭化ケイ素粉末表面を被覆していること、を特徴とする請求項1又は2に記載のダミーウェハ。
- 前記炭化ケイ素焼結体は前記混合物を非酸化性雰囲気下でホットプレスすることにより得られたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダミーウェハ。
- 前記炭化ケイ素粉末が、少なくとも1種以上の液状のケイ素化合物を含むケイ素源と、加熱により炭素を生成する少なくとも1種以上の液状の有機化合物を含む炭素源と、重合又は架橋触媒とを混合して得られた混合物を固化して固形物を得る固化工程と、得られた固形物を、温度2000〜2400℃、圧力300〜700kgf/cm 2 、非酸化性雰囲気下で成形金型中に配置し、ホットプレスする焼成工程とを含む製造方法により得られたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダミーウェハ。
- 前記炭化ケイ素焼結体に含まれる不純物元素の総含有量が1ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダミーウェハ。
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