JP4006989B2 - インクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法に関し、より詳細には、印刷時の走行安定性に優れ、長尺物の印刷に好適に使用されるインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法に関する。本発明で得られる記録ロール体は、大型インクジェットプリンターによる印刷に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式によるプリンターは、フルカラー化が容易なこと、印字騒音が低いこと、小型化が容易なこと、安価であることからパーソナル分野で普及している。インクジェット方式は、ヘッドと言われる部品に存在するノズルから記録材料に向けてインク液滴を高速で射出するものであり、このヘッドの移動距離を大きくすることにより、容易に大型化が可能である。近年、印刷幅が610mmから1800mmの大型インクジェットプリンターが産業分野で急速に普及しつつある。さらに、ヘッドに搭載するノズルの数を増やして高速印刷が可能になりつつある。
【0003】
大型インクジェットプリンターで使用される記録材料としては、長尺物の印刷やロール交換の手間を省くために、枚葉ではなく、5mから100mの長さに記録材料が巻き取られたロール体を使用するのが通常である。しかし、近年の大型インクジェットプリンターの高速化に伴うヘッド幅の拡張により、ロール体から送り出された記録材料に、印刷すべき側の面を内側にしたカールや凹凸がわずかでも存在する場合、ヘッドと記録材料とが接触するトラブルが多発するようになった。そのため、高速印刷が可能になったにも関わらず、印刷時の走行安定性が不十分であり、長時間を要する長尺物の印刷は困難となった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、印刷時の走行安定性に優れ、長時間を要する長尺物の印刷に好適に使用されるインクジェットプリンター用記録ロール体を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、記録材料をロール状に巻き取ることにより発生する巻きグセを利用し、印刷すべき側の面を外側にした適度な巻きグセを意図的に発生させることにより、印刷すべき側の面を内側にした好ましくないカールや凹凸の発生を防止して、上記目的を達成できることを見いだし、本発明に至った。
【0006】
本発明は、40μm以上200μm以下の厚みを有する長尺の基材の片面にインク受容層用塗剤を塗布、乾燥して、少なくとも1層のインク受容層を基材上に形成して長さ500m以上10000m以下の記録材料を作成し、
作成された記録材料をインク受容層面が外側になるようにロール状に巻き取り、
巻き取られた記録材料を繰り出し、繰り出された記録材料をその長手方向と平行にスリットし、
スリットされた記録材料を、5m以上100m以下の長さに切断すると共にインク受容層面が外側になるように巻芯に巻き取ることを含む、インクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法である。
【0007】
本発明におけるインクジェットプリンタ−用記録ロール体とは、長さ500m〜10000m程度の長尺の記録材料を、幅500mm以上2000mm以下、長さ5m以上100m以下に加工し、巻芯に巻き付けた小巻ロール状のものである。記録ロール体は、この形態のままインクジェットプリンターに取り付けられ、インクジェット記録に使用可能である。
【0008】
本発明は、巻芯が紙管であって、紙管の肉厚が2mm以上8mm以下、外径が40mm以上100mm以下である、前記のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法である。
【0009】
本発明は、基材がポリエステルフィルムである、前記のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法である。
本発明は、ポリエステルフィルムが内部に空洞を含有する、前記のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
図1は、本発明で製造される記録ロール体を構成する記録材料の層構成の一例を示す断面図である。図1において、記録材料は、基材(1) の片面にインク受容層(2) を有する。
【0011】
本発明における基材(1) は特に限定されるものではなく、例えばポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロン、ポリカーボネート、ノルボルネン、ビニロン、アクリル等のプラスチックフィルム又はシートや、これらの材料に無機顔料、発泡剤等を混合した不透明樹脂フィルム、ポリエステル系布、ポリエステル/綿混合布、綿布、不織布、パルプ、樹脂含浸紙、キャストコート紙、レジンコート紙及びこれらの任意の2種類以上のものを貼り合わせたものが挙げられる。これらのうち、強度、剛度、耐熱性、コストの面で優れるポリエステルフィルムが好ましい。
【0012】
ポリエステルフィルムを用いることにより、強度、剛度の優れた記録材料を得ることができ、印刷時の記録材料の搬送性に優れる記録ロール体を製造することが可能となる。ポリエステルフィルムは剛度に優れるために、ロール状に巻いた状態で保管すると巻きグセが発生しやすい。本発明では、ポリエステルフィルムの欠点であった巻きグセによる印刷安定性の不良を改善し、さらには巻きグセを有効に活用することにより、長時間を要する長尺物の印刷を安定的に達成することができる。
【0013】
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとを重縮合させて製造される樹脂である。
【0014】
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる方法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させるか、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によっても製造することができる。このようなポリエステルの代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート等が挙げられる。ポリエステルはホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。また、上記のジカルボン酸やグリコールと共重合可能な第3成分を共重合化したものであってもよい。本発明においては、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位又はエチレン−2、6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含有されているポリエステルが好ましい。
【0015】
ポリエステルフィルムとしては、OHP用途や電飾用途に用いる場合には透明なものが好ましく、ポスターや野外看板等の用途に用いる場合には不透明なものが好ましい。
【0016】
不透明なポリエステルフィルムとしては、例えば、内部に白色顔料を混合した白色ポリエステルフィルムや、内部に空洞を含有させた空洞含有ポリエステルフィルムが挙げられる。これらのうち、柔軟性、軽量性、クッション性に優れる空洞含有ポリエステルフィルムが好ましい。
【0017】
空洞を含有させる方法は特に限定されるものではないが、ポリエステルに該ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を混合、溶融、押出したフィルムを少なくとも1軸方向に延伸することにより、フィルム内部に微細な空洞を多数含有させる方法が好ましい。
【0018】
ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂は、上述のポリエステルに非相溶性のものでなければならない。具体例としては、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0019】
ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂とを混合させた重合体混合物は、例えば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後、押出して固化する方法や、予め混練機によって各樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出して固化する方法や、ポリエステルの重合工程においてポリエステルに該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、撹拌分散して得たチップを溶融押出して固化する方法などによって得られる。固化して得られた重合体(未延伸シート)は、通常、無配向もしくは弱い配向状態のものである。また、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂は、ポリエステル中に、球状、楕円球状もしくは糸状など様々な形状で分散した形態をとって存在する。
【0020】
ポリエステルに混合される該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の量は、目的とする空洞の量によって異なるが、重合体混合物全体に対して3重量%〜39重量%が好ましく、6〜35重量%が特に好ましい。3重量%未満では、空洞の生成量を多くすることに限界があり、目的の柔軟性、軽量性、クッション性が得られない傾向にある。逆に、39重量%を超えると、ポリエステルフィルムの持つ耐熱性や強度、特に腰の強さが損なわれる傾向にある。
【0021】
重合体混合物には、必要に応じて、ポリエステルフィルムの不透明性、すなわち隠ぺい性や、描画性を向上させるために無機粒子を含有させることができる。このための無機粒子としては、二酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、カオリン、タルク等が挙げられるが特に限定されるものではない。
重合体混合物には、用途に応じて、着色材、耐光剤、蛍光剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することも可能である。
【0022】
本発明においては、表層と中心層を積層したいわゆる複合フィルムを用いてもよい。その積層方法は特に限定されるものではない。しかし生産性を考慮すると、表層と中心層の原料は別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸に配向させる、いわゆる共押出法による積層が最も好ましい。
【0023】
基材(1) の厚みは、40μm以上200μm以下である。40μm未満では、剛度が劣るために、印刷時に記録材料の搬送不良が発生しやすくなる。逆に、200μmを超える場合には、腰が強すぎるために、若干の斜めにプリンターにセットした場合でも補正ができなくなり、長尺物の印刷が困難になる。
【0024】
本発明においては、基材(1) 上にインク受容層(2) を形成し記録材料を作成するが、インク受容層(2) と基材(1) との密着性の向上、耐水性の向上を目的に、基材(1) のインク受容層(2) を形成すべき側の面にプライマー層(図1において図示は省略されている)を設けることが好ましい。
【0025】
プライマー層は樹脂を主体として構成される層である。プライマー層用の樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びそれらのブレンド等が適用可能である。基材がポリエステルの場合には、密着性の観点から共重合ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
本発明においては、プライマー層に架橋剤を含有させることもできる。架橋剤を含有させることにより、プライマー層の耐水性や、インク受容層と基材との密着性を向上させるばかりか、インク受容層とプライマー層との間で架橋反応が起こり、インク受容層の耐水性を向上させることが可能となる。プライマー層の架橋剤としては、例えば、メラミン、尿素ホルマリン、イソシアネート、エポキシ等が挙げられる。
【0027】
プライマー層中には、滑り性の改善、表面凹凸形成によるインク受容層との密着力向上を目的として、各種の粒子を添加することが好ましい。例えば、シリカ微粒子、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、等の無機粒子、アクリル、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物等の有機粒子が挙げられる。
更に、プライマー層には各種の目的で、界面活性剤、帯電防止剤、蛍光染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加しても良い。
【0028】
プライマー層は、0.01g/m2 以上10g/m2 以下の重量となるように設けることが好ましい。0.01g/m2 より少ない場合には、基材上に均一な層を形成することが難しく、インク受容層と基材との密着力を上げる効果が得られにくい。10g/m2 よりも多い場合には、密着力を上げる効果は問題ないが、コストが高くなるばかりか、基材の風合い、カール等の問題が発生することがある。
【0029】
プライマー層を設ける方法は特に限定されないが、樹脂、架橋剤や粒子等を溶解あるいは分散させた塗工液を基材上に塗布し、熱風乾燥、赤外線加熱等により加熱乾燥することが好ましい。塗工液の塗布後、紫外線硬化してもよい。
【0030】
塗布方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる。基材フィルムの成膜工程でプライマー層を設けるインラインコート方式、あるいは基材フィルムの成膜後にプライマー層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。
【0031】
プライマー層を設ける前に、プライマー層形成時の塗工性、プライマー層と基材との密着性向上のために、各種の処理を基材面に実施しても良い。具体的な処理としては、例えば、コロナ放電処理、不活性ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理が挙げられる。
【0032】
本発明において、プライマー層は、単層であることがコスト面から好ましいが、基材とインク受容層との密着力が不足する場合には、組成の異なる層を2層以上設けてプライマー層としても良い。
【0033】
本発明においては、上記基材(1) 上に、あるいは上記基材(1) 上に設けられたプライマー層上に、インク受容層用塗剤を塗布、乾燥して、インク受容層(2) を形成し、記録材料を作成する。
【0034】
本発明において、インク受容層とは、インクジェットプリンターから噴射されたインクを吸収し、定着する層のことである。インク受容層としては、公知のものが使用可能である。具体的には、例えば、膨潤型のインク受容層や毛管型のインク受容層が挙げられる。
【0035】
膨潤型のインク受容層としては、例えば、インクを吸収する水溶性樹脂を主体とするものが挙げられる。インクを吸収する水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カゼイン、アイオノマー、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の樹脂、及びそれらの変性物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で用いても良いし、これらの2種以上を併用しても良い。
【0036】
毛管型のインク受容層は、毛管現象によりインクを吸収するものである。毛管型のインク受容層としては、例えば、粒子と結着剤とを主体とする多孔質構造を形成しているものが挙げられる。
【0037】
毛管型で用いられる粒子としては、例えば、シリカ微粒子、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子等が挙げられる。これらのうちの1種を単独で用いても良いし、これらの2種以上を併用しても良い。
【0038】
毛管型で用いられる結着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、デンプン、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カゼイン、アイオノマー、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、スチレン−ブタジエンゴム等の樹脂が挙げられる。これらのうちの1種を単独で用いても良いし、これらの2種以上を併用しても良い。
【0039】
インク受容層用塗剤には、染料インクの定着性を向上させるために、カチオン性物質を添加することが好ましい。カチオン性物質としては公知のものが使用できる。例えば、カチオン変性したポリビニルアルコール、カチオン変性ポリエステル、カチオン変性ポリアミド、ジアリルアミン重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、カチオン変性界面活性剤などが挙げられる。例示したポリマーや界面活性剤以外であっても、カチオン変性したものであれば限定されずに使用できる。
【0040】
インク受容層用塗剤には、インク受容層の耐水性を向上させるために、各種の架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤を添加することにより、高温高湿度下あるいは低温低湿度下でのインク受容層の収縮あるいは伸張が抑えれ、高温高湿度下あるいは低温低湿度下での印刷時でも優れた印刷安定性を保つことができる。架橋剤としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート基含有樹脂、グリオキザール、イソバン、ほう砂などが挙げられる。
さらに、目的に応じて、滑剤、蛍光増白剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、界面活性剤などを好適に添加可能である。
【0041】
インク受容層用塗剤を塗布する方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップ方式など通常用いられている方法が適用できる。
【0042】
塗布されたインク受容層用塗剤を乾燥する場合には、注意が必要である。急速に乾燥するとインク受容層内部に歪が残り、場合によってはインク受容層面を内側にしたカールが発生しやすくなる。乾燥方法としては、一定の乾燥条件でなく、恒率乾燥の期間では低温・低風量で緩やかに溶剤を蒸発させ、減率乾燥の期間では、高温・高風量で乾燥することが好ましい。更に、乾燥後には、冷却ゾーンを設け、基材を平面状態に保持したまま、基材のガラス転移温度以下まで冷却することが好ましい。基材を平面状態に保持せずにガラス転移温度以下まで冷却すると、記録材料に冷却時の熱的なクセが付き、場合によっては、インク受容層面を内側にしたカールが発生しやすくなることがあり、印刷時にヘッドと記録材料とが接触する問題が発生することがある。
【0043】
インク受容層用塗剤の塗布量は、特に限定されるものではないが、乾燥後で5g/m2 以上50g/m2 以下が好ましい。塗布量が5g/m2 未満の場合には、インク吸収速度が遅く、にじみが大きくなる傾向にある。50g/m2 を超える場合には、受容層の強度が弱く、且つ印字濃度が低くなる傾向にある。
【0044】
本発明においては、インク受容層を単層として形成してもよく、目的に応じて、2層以上の複数層として形成してもよい。
【0045】
本発明において、インク受容層(2) を形成しない側の基材(1) 面に、粘着層を形成し、粘着層上に離型紙あるいは離型フィルムを積層しても良い。
【0046】
粘着層で用いる粘着剤は特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム、合成ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム、ウレタンゴム、酢酸ビニル及びその共重合体、アクリル酸及びその共重合体等の溶剤型接着剤、天然ゴムラテックス、クロロプレンラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル及びその共重合体、アクリル酸及びその共重合体等のエマルジョン型接着剤、ポリビニルアルコール、デンプン、ニカワ等の水溶性接着剤、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、尿素及びメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、アスファルト、樹脂ワックス混合剤等の熱溶融型接着剤、ポリエチレン、不飽和ポリエステル等が挙げられる。また、粘着層には、各種の目的で顔料、粘着調節剤、帯電防止剤等の添加剤を添加しても良い。
【0047】
離型紙あるいは離型フィルムとしては、紙やプラスチックフィルム上にシリコン等の離型層を設けたもので、公知のものが好適に使用可能である。
【0048】
本発明においては、上記で説明した記録材料の作成後、巻き取り長さが500m〜10000m程度の製造工程における第1次ロールを作成し、続いて、巻き取り長さが5m以上100m以下の製造工程における第2次ロールを作成する。この第2次ロールが、製品形態の小巻ロール、すなわちインクジェットプリンター用記録ロール体である。以後の説明において、便宜上、製造工程における第1次ロールをジャンボロールというものとする。
【0049】
ジャンボロールの作成に際し、上記で説明した記録材料を、インク受容層(2) 面が外側になるようにロール状に巻き取る。本発明では、上述したようにインク受容層(2) を形成しない側の基材(1) 面に粘着層を形成し、粘着層上に離型紙あるいは離型フィルムを積層する場合においても、粘着加工を施した後の記録材料を、インク受容層(2) 面が外側になるようにロール状に巻き取る必要がある。
【0050】
巻き取られた記録材料をジャンボロールから繰り出し、繰り出された記録材料をその長手方向と平行にスリットし、記録材料の幅方向両端部を除去する。両端部を除去することにより、幅方向両端まで印刷できる記録材料が得られる。また、スリット工程の際に、前記両端部を除去すると共に、記録材料を、所定幅の複数の記録材料が得られるように加工しても良い。
【0051】
記録材料のスリット工程はジャンボロールの作成前に行うことも可能であるが、コスト面から、ジャンボロールの作成後、後述する小巻ロールの作成直前に行うことが好ましい。
【0052】
スリットされた記録材料を、5m以上100m以下の長さに切断すると共に、インク受容層(2) 面が外側になるように巻芯に巻き取り、小巻ロールを作成する。
【0053】
本発明のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法では、上述したように、ジャンボロールと小巻ロールとのいずれにおいても、記録材料を、インク受容層(2) 面が外側になるようにロール状に巻き取る。このため、記録材料には、インク受容層(2) 面を外側にした巻きグセが付き、インク受容層(2) 面を外側にしたカールが発生する。本発明で得られる記録ロール体をインクジェット記録に使用する場合、このカールにより、インク受容層(2) 面を内側にした好ましくないカールの発生を防止できる。印刷時にヘッドと記録材料とが接触する等のトラブルが発生せず、十分な走行安定性が得られ、長時間を要する長尺物の印刷が可能となる。低温低湿度下でインク受容層(2) が収縮した場合でも、インク受容層(2) 面を内側にした好ましくないカールの発生を低減できる。
【0054】
一方、記録材料を、インク受容層(2) 面が内側になるようにロール状に巻き取った場合には、記録材料にインク受容層(2) 面を内側にした巻きグセによる好ましくないカールが発生する。この好ましくないカールがわずかでも存在する記録材料をインクジェット記録に使用する場合、ヘッドと記録材料とが接触するトラブルが多発しやすい。インク受容層(2) 面を内側にしたカールが一旦発生すると、インク受容層(2) 面を外側にした巻きグセによるカールを発生させるには時間がかかる。また、インク受容層(2) 面を内側にしたカールを完全になくすことは難しい。このため、本発明の製造方法では、ジャンボロールと小巻ロールとのいずれにおいても、記録材料を、インク受容層(2) 面が外側になるように巻き取る必要がある。
【0055】
本発明において、記録材料を、5m以上100m以下の長さに切断する必要がある。5m未満の場合には、使用時に頻繁にロールを交換する必要があるため効率が悪い。100mを超える場合には、重量が大きくなり、1人作業でプリンターにセットすることが困難となるばかりか、プリンターの給紙搬送を行うゴム状のローラに負荷が掛かり、記録材料を安定的に搬送することが困難となる。記録材料の切断は、巻芯へ巻き取り始める前に行ってもよく、巻芯へ巻き取る工程中に行ってもよく、巻芯にほぼ巻き取り終わった後に行ってもよい。
【0056】
巻芯は特に限定されるものではなく、例えば、硬質紙管原紙を巻回し円筒状に加工した後、所望の長さに切断した紙管が挙げられる。紙管としては、必要に応じて、表面を研磨仕上げ、あるいはウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等で吹付け塗装後研磨仕上げしたもを用いるとよい。紙管原紙の巻回・成形方法は特に限定されるものではなく、該原紙を所望の大きさに切断後、樹脂等を含浸させて数回平巻きにし、熱プレス等の方法により表面を硬化させる方法や、断面を台形状、平行四辺形状に加工した帯状の紙管原紙に樹脂等を含浸させた後、切断加工面を重ね合わせながら螺旋状に巻き上げ、熱プレス等の方法により表面を硬化させる方法等が用いられる。
【0057】
巻芯の外径は、40mm以上100mm以下であることが好ましい。40mm未満の場合には、記録材料に発生させる巻きグセが強くなりすぎることがあり、場合によっては印刷しにくくなる。100mmを超える場合には、適度な巻きグセによるカールが発生しにくくなる。低温低湿度下でインク受容層(2) 面を内側にした好ましくないカールが発生することがあり、印刷時にヘッドと記録材料とが接触するトラブルが発生することがある。
【0058】
巻芯として紙管を用いる場合、紙管の肉厚は、2mm以上8mm以下であることが好ましい。2mm未満の場合には、小巻ロール作成時や記録ロール体の運搬時に紙管が潰れ、トラブルが発生しやすくなる。8mmを超える場合には、記録ロール体が重くなり、プリンターへのセット、運搬が困難になる傾向にある。
【0059】
巻芯の長さは、巻芯に巻き取られる記録材料の幅と同等か、あるいは該記録材料の幅よりも1mmから2mm程度長くすることが好ましい。巻芯の長さが記録材料の幅よりも短い場合には、記録材料の幅方向の端部の平面性が悪くなり、印刷時にトラブルが発生する可能性がある。長すぎる場合にはコスト的に不利となる。
【0060】
本発明において、巻芯に記録材料を巻き付け始める際には、両面粘着テープ等を用いて、巻芯と記録材料の始端部とを接着することが好ましい。巻芯と記録材料の始端部とを接着することにより、記録ロール体運搬中の巻芯抜け等のトラブルを防止できる。
【0061】
両面粘着テープとしては、一般に販売されているものを好適に使用可能であるが、表裏で粘着力の異なる両面粘着テープを用い、強粘着面を巻芯側に貼り付けることが好ましい。強粘着面を巻芯側に貼り付けることにより、記録ロール体を最後まで使用する場合でも粘着テープが巻芯側に残るので、記録材料と共に粘着テープがプリンター内部に搬送されることを防止できる。粘着テープがプリンター内部に搬送されると、プリンターを汚すのみならず機械の故障等の各種のトラブルが発生することがある。
【0062】
本発明において、記録材料を巻き取る巻取機の方式は、特に限定されるものではないが、ゴムロール等のタッチロールを記録材料に押し当てながら巻取りドラムを駆動させる方式が、蛇行等を防止する観点から好ましい。
【0063】
本発明において、巻き取り時の張力は特に限定されるものではないが、2kg/m以上20kg/m以下であることが好ましい。2kg/m未満の場合には、記録ロール体の運搬中に巻きズレ等が発生することがある。20kg/mを超える場合には、記録材料表面の突起等が転写されるだけでなく、インク受容層が変形し印刷特性の不良を引き起こす場合がある。また、巻き取り時の張力は、巻芯に近い内周部から外周部にかけて同一であっても良いが、徐々に強くすることも巻きズレ防止と転写防止とを両立するのに有効である。
【0064】
上述した本発明の形態とは異なるが、インク受容層(2) を基材(1) 上に塗布形成した後、ジャンボロールを作成せずに直ちに小巻ロール状に加工することも考えられる。この場合、巻き長が短いためにインク受容層(2) の塗工を中断することが多くなり、本発明の製造方法に比べて生産効率が低くなる。このため、本発明では、上述したように、一旦ジャンボロールを作成した後に、小巻ロールを作成する。
【0065】
本発明の製造方法により得られるインクジェットプリンター用記録ロール体から送り出される記録材料は、インク受容層(2) 面を外側にしたカールを有し、更には低温低湿度下でインク受容層の収縮力が働いてもインク受容層(2) 面を外側にしたカール状態を保つため、印刷時の走行安定性に優れ、長時間を要する長尺物を印刷することが可能である。
【0066】
【実施例】
次に本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(インク受容層用塗剤)
水 51.5重量部
ポリビニルアルコール 30.0重量部
(クラレ(株)製、RS−117、10%溶解液)
架橋剤 6.0重量部
(住友化学工業(株)製、スミレーズレジンSR5004、固形分40%)
カチオン性樹脂 0.5重量部
(センカ(株)製、パピオゲンP105、固形分60%)
界面活性剤 0.5重量部
(大日本インキ(株)製、メガファックF−1405)
平均粒子径5μmのシリカ 5.0重量部
(富士シリシア製、サイリシア450)
平均粒子径12μmのシリカ 5.0重量部
(富士シリシア製、サイリシア470)
【0068】
[実施例1]
上記組成物を混合し、インク受容層用塗剤を調製した。長さ2000m、幅1350mm、厚さ100μmの易接着層を有する空洞含有ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、クリスパーK2323)の易接着層面に、インク受容層用塗剤を、リップ方式により乾燥後の重量で20g/m2 になるように塗工した。温度80℃で風量5m/secの乾燥炉を20秒かけて通過させた後、温度160℃で風量20m/secの乾燥炉を20秒かけて通過させて乾燥し、次いで、温度20℃で20m/secの乾燥炉を10秒かけて通過させて乾燥・冷却し、記録材料を得た。その後、得られた記録材料を、インク受容層面が外側になるように2000m長さで巻き取り、記録材料のジャンボロールを作成した。ジャンボロールから記録材料を繰り出し、1270mm幅に記録材料をスリットして、記録材料の幅方向両端部を取り除いた。スリットされた記録材料を、長さ30mに切断すると共に、長さ1272mm、外径58.8mm、肉厚4mmの紙管にインク受容層面が外側になるように巻き取り、インクジェットプリンター用記録ロール体を製造した。尚、紙管へ巻き取り始める際、表裏で粘着力の異なる両面粘着テープを2cmX5cmのサイズに加工し、両面粘着テープの強粘着面側を紙管側に5箇所貼り付け、記録材料の始端部を紙管に接着した。66本の記録ロール体を製造した。
【0069】
得られた記録ロール体を1日放置した後に、大型インクジェットプリンター(ローランド・ディー・ジー製、FJ−50)に取り付け、長さ30m、幅1270mmの長尺物の印刷を行った。高温高湿度(温度40℃、湿度75%)下、低温低湿度(温度10℃、湿度20%)下、共に安定に印刷することができた。
【0070】
[実施例2]
ポリエステルフィルムの厚みを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェットプリンター用記録ロール体を得た。高温高湿度下、低温低湿度下、共に実施例1の場合と同様に、安定に長尺物の印刷を行うことができた。
【0071】
[実施例3]
ポリエステルフィルムの厚みを188μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェットプリンター用記録ロール体を得た。高温高湿度下、低温低湿度下、共に実施例1の場合と同様に、安定に長尺物の印刷を行うことができた。
【0072】
[比較例1]
ポリエステルフィルムの厚みを38μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェットプリンター用記録ロール体を得た。高温高湿度下、低温低湿度下、共に印刷時に走行不良が発生し、長尺物の印刷ができなかった。
【0073】
[比較例2]
ジャンボロールにおいて、インク受容層面を内側にして記録材料を巻き取ったこと以外は実施例1と同様にして、インクジェットプリンター用記録ロール体を得た。高温高湿度下、低温低湿度下、共に印刷開始直後に、ヘッドと記録材料とが接触するトラブルが発生した。
【0074】
[比較例3]
紙管に、インク受容層面を内側にして記録材料を巻き取ったこと以外は実施例1と同様にして、インクジェットプリンター用記録ロール体を得た。高温高湿度下、低温低湿度下、共に印刷開始直後に、ヘッドと記録材料とが接触するトラブルが発生した。
【0075】
[実施例4]
紙管の外径を160mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェットプリンター用記録ロール体を得た。高温高湿度下では、実施例1の場合と同様に、安定に長尺物の印刷を行うことができた。低温低湿度下では、インク受容層面を内側としたカールが発生する傾向にあり、実施例1の場合に比べて長尺物への印刷安定性は劣っていた。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、印刷時の走行安定性に優れ、長時間を要する長尺物の印刷に好適に使用されるインクジェットプリンター用記録ロール体を製造することができる。得られた記録ロール体は、大型インクジェットプリンターに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で製造される記録ロール体を構成する記録材料の層構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
(1) :基材
(2) :インク受容層
Claims (4)
- 40μm以上200μm以下の厚みを有する長尺の基材の片面にインク受容層用塗剤を塗布、乾燥して、少なくとも1層のインク受容層を基材上に形成して長さ500m以上10000m以下の記録材料を作成し、
作成された記録材料をインク受容層面が外側になるようにロール状に巻き取り、
巻き取られた記録材料を繰り出し、繰り出された記録材料をその長手方向と平行にスリットし、
スリットされた記録材料を、5m以上100m以下の長さに切断すると共にインク受容層面が外側になるように巻芯に巻き取ることを含む、インクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法。 - 巻芯が紙管であって、紙管の肉厚が2mm以上8mm以下、外径が40mm以上100mm以下である、請求項1に記載のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法。
- 基材がポリエステルフィルムである、請求項1又は2に記載のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法。
- ポリエステルフィルムが内部に空洞を含有する、請求項3に記載のインクジェットプリンター用記録ロール体の製造方法。
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