JP3997400B2 - 制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一部の制御領域に制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域(以下「不感帯」という)を有する非線形の制御特性の制御対象を制御する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両に搭載される内燃機関においては、出力向上、燃費節減、排気エミッション低減等を目的として、吸気バルブや排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等を可変する可変バルブ装置を採用したものが増加しつつある。例えば、バルブタイミングを可変制御する可変バルブタイミング装置(特開平7−19073号公報、特開平8−74530号公報、特開平8−109840号公報参照)では、エンジン制御回路で目標バルブタイミングと実バルブタイミングとの偏差に基づいて制御信号であるデューティ値(電流値)を算出し、そのデューティ値によって油圧制御弁を駆動して可変バルブタイミング装置の進角室や遅角室に供給する作動油の流量(油圧)を変化させることで、バルブタイミングを進角又は遅角させるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、図26(a)に示すように、油圧制御弁の作動油供給流量特性には、作動油供給流量がほぼ0となるデューティ値(現在のバルブタイミングを保持する保持デューティ値)付近に、デューティ値の変化に対する作動油供給流量の応答性が極端に遅いか又はほとんど応答しない不感帯が存在する。このため、図26(b)に示すように、可変バルブタイミング装置のバルブタイミング変化速度特性にも、現在のバルブタイミングを保持する保持デューティ値Dh付近に、デューティ値の変化に対するバルブタイミングの応答性が極端に遅いか又はほとんど応答しない不感帯が存在する。
【0004】
このため、実バルブタイミングが一定に保持されている状態で目標バルブタイミングが変化したときに、それに応じてデューティ値を保持デューティ値Dhから進角方向又は遅角方向に変化させても、保持デューティ値Dh付近に存在する不感帯を抜けるまでは実バルブタイミングの動きが鈍くなり、これがバルブタイミング制御の応答性を遅くする要因となっている。更に、このバルブタイミングの応答遅れを補正するためにフィードバック制御によってデューティ値を大きく補正した状態で不感帯を抜けると、その近くに目標バルブタイミングが存在する場合は、実バルブタイミングが目標バルブタイミングを通り越して過剰に進角又は遅角されてしまうおそれもある。このため、目標バルブタイミングの変化に追従して実バルブタイミングを目標バルブタイミングに応答良く収束させることができず、ドライバビリティや排気エミッションが悪化するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、制御信号が不感帯領域で変化するときの制御対象の応答性を向上させることができる制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の基本的な技術思想は、一部の制御領域に制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域(以下「不感帯」という)を有する非線形の制御特性の制御対象を制御する際に、制御手段によって制御信号を所定の振幅で振動させるようにしたものである。このように、制御信号を所定の振幅で振動させれば、制御信号が不感帯領域で変化するときに、制御信号の振動範囲を不感帯の内側と外側の両方の領域に跨がらせながら制御信号を変化させることができると共に、制御信号の変化に応じて不感帯の外側の応答性の良い領域への制御信号のはみ出し量を変化させて応答性を確保することができる。これにより、制御信号が不感帯領域で変化するときでも、不感帯の影響をあまり受けずに、制御信号の変化に対して制御対象の制御状態を応答良く変化させることができ、制御対象の応答性を向上させることができる。
【0007】
この場合、制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅よりも小さいと、制御信号の振動中心値が不感帯の中心付近にあるときに、制御信号の振動範囲全体が不感帯内に入ってしまい、制御信号の振動範囲が不感帯の外側の応答性の良い領域へはみ出さないため、不感帯の中心付近で制御対象の応答性が低下する。
【0008】
この対策として、制御信号を不感帯の幅の半分以上の振幅で振動させると良い。このようにすれば、制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅以上となるので、制御信号の振動中心値が不感帯の中心付近にあるときでも、制御信号の振動範囲を不感帯の外側の応答性の良い領域へはみ出させることができ、不感帯の中心付近でも制御対象の応答性を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、本発明は、制御信号の振幅を不感帯の幅の半分より小さくしても良く、この場合でも、従来と比較すれば、制御対象の応答性を向上させることができる。
【0010】
一般に、内燃機関の吸気バルブや排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変制御する油圧駆動式の可変バルブ装置では、図26に示すように、可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁の作動油供給流量特性に不感帯が存在するため、可変バルブ装置の制御特性にも不感帯が存在する。
【0011】
そこで、請求項のように、可変バルブ装置の駆動油圧を油圧制御弁で制御するシステムにおいては、油圧制御弁を制御する制御信号を所定の振幅で振動させるようにしても良い。このようにすれば、油圧制御弁の制御信号が不感帯領域で変化するときでも、制御信号の変化に対する油圧制御弁の作動油供給流量の応答性を確保して、バルブ可変制御の応答性を向上させることができる。その結果、バルブタイミング等のバルブ可変量を目標値に応答良く収束させることが可能となり、不感帯に起因するドライバビリティ低下や排気エミッション悪化を防止することができる。
【0013】
ところで、図26に示すように、油温が高くなると、作動油の粘度が低くなる(流動性が良くなる)ため、不感帯の幅が小さくなる。このような特性を考慮して、請求項5のように、不感帯と相関関係のあるパラメータに応じて制御信号の振幅を可変するようにしても良い。このようにすれば、不感帯の幅が変化するのに対応して、制御信号の振幅を必要最小限の値に設定することができ、制御信号の振幅が必要以上に大きくなってバルブ可変量が振動することを防止することができる。
【0014】
ここで、不感帯と相関関係のあるパラメータとしては、油温又は機関温度又はそれらと相関関係のあるパラメータ(例えば冷却水温、始動後経過時間等)を用いたり、或は、油圧又は油圧を変化させる機関回転速度又はそれらと相関関係のあるパラメータを用いても良い。これらのパラメータは、いずれも不感帯の幅を変化させる要因となる。
【0015】
また、請求項のように、制御信号の振動中心値に応じて制御信号の振幅を可変するようにしても良い。例えば、制御信号の振動中心値が不感帯領域にあるときには制御信号の振幅を大きくして不感帯の影響を効果的に抑えるようにしたり、更に、請求項のように、制御信号の振動中心値が不感帯から離れるほど、制御信号の振幅を小さくするようにしても良い。不感帯の外側の領域は、本来的に応答性の良い制御領域であるため、制御信号を振動させなくても、バルブ可変制御の応答性を十分に確保できるためである。また、不感帯の外側の応答性の良い領域で制御信号の振幅が大きくなりすぎると、バルブ可変量が振動するおそれがあり、これを避けるために、不感帯の外側の応答性の良い領域で制御信号の振幅を小さくするものである。
【0016】
或は、請求項のように、不感帯を含む所定の制御領域内に制御信号の振動中心値が存在するときに該制御信号を振動させ、それ以外の制御領域で、該制御信号の振動を停止させるようにしても良い。このようにすれば、制御信号を振動させなくても応答性を確保できる制御領域では、制御信号を振動させずに済み、制御信号の処理を簡単にすることができると共に、不感帯の外側の応答性の良い領域で制御信号の振動によってバルブ可変量が振動することを防止することができる。
【0017】
ところで、バルブタイミング等のバルブ可変量が目標値に保持されているときには、制御信号の振動中心値が不感帯の中心付近に設定されるが、このとき、制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅と比較して大きくなりすぎると、制御信号の振動に伴ってバルブ可変量が目標値付近で振動するおそれがある。
【0018】
そこで、請求項のように、バルブ可変量の目標値が変化しないときに、該バルブ可変量を該目標値に収束させるように制御信号の振幅を補正するようにしても良い。このようにすれば、バルブ可変量が目標値付近で振動することを防止でき、目標値への収束性を向上できる。
【0019】
この場合、請求項のように、制御信号の振動に伴ってバルブ可変量が目標値を中心に振動している状態で該制御信号の振幅を徐々に小さくして該バルブ可変量の振動が停止したときの該制御信号の振幅、又は、バルブ可変量が目標値で振動せずに保持されている状態で制御信号の振幅を徐々に大きくして該バルブ可変量が振動し始めたときの該制御信号の振幅に基づいて、不感帯を不感帯学習手段で学習するようにしても良い。
【0020】
つまり、制御信号の振動に伴ってバルブ可変量が目標値を中心に振動している状態で、制御信号の振幅を徐々に小さくしていくと、制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅とほぼ一致したときにバルブ可変量の振動が停止するので、バルブ可変量の振動が停止したときの制御信号の振動中心値±振幅を、不感帯の上限値、下限値と見なして学習することによって、不感帯を学習することができる。
【0021】
また、バルブ可変量が目標値で振動せずに保持されている状態で制御信号の振幅を徐々に大きくすると、制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅よりも大きくなったときに、バルブ可変量が振動し始めるので、バルブ可変量が振動し始めたときの制御信号の振動中心値±振幅を、不感帯の上限値、下限値と見なして学習することによって、不感帯を学習することができる。このようにして、不感帯を学習すれば、油圧制御弁の製造ばらつきや経時変化、油温等の変化によって不感帯が変化しても、その変化を学習して実際の不感帯に応じた高精度のバルブ可変制御を行うことができる。
【0022】
一方、バルブ可変量の目標値が変化したときには、制御信号の振動中心値を不感帯の中心から変化させるが、このとき、制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅よりも小さいと、制御信号の振動範囲が不感帯の外側領域へはみ出さず、バルブ可変量が変化しない場合がある。
【0023】
そこで、請求項のように、バルブ可変量の目標値が変化したときには、該バルブ可変量が該目標値に向かって所定値以上変化するように制御信号の振幅を補正するようにしても良い。このようにすれば、バルブ可変量の目標値が変化したときにも、制御信号の振動範囲の幅を大きくして制御信号の振動範囲を不感帯の外側領域に広げることができ、バルブ可変制御の応答性を向上させることができる。
【0024】
この際、請求項のように、バルブ可変量の目標値が変化したときに、バルブ可変量が目標値に向かって変化するときの制御信号の振幅と振動中心値とに基づいて不感帯を学習するようにしても良い。このようにしても、バルブ可変量が目標値に向かって変化し始めたときの制御信号の振幅と振動中心値とに基づいて不感帯を検出して学習することができる。
【0025】
ところで、油温が低いときは作動油の粘度が高い(流動性が悪い)ため、制御信号の振動周波数が高くなりすぎると、制御信号の振動に油圧制御弁内の作動油の流れが追従できなくなり、応答性が低下するおそれがある。かといって、制御信号の振動周波数が低くなりすぎると、制御信号の振動に伴ってバルブ可変量が振動してしまうおそれがある。
【0026】
そこで、請求項7,21のように、油温又は機関温度又はそれらと相関関係のあるパラメータ(例えば冷却水温、始動後経過時間等)に応じて制御信号の振動周波数を可変するようにしたり、或は、油圧又は油圧を変化させる機関回転速度又はそれらと相関関係のあるパラメータに応じて制御信号の振動周波数を可変するようにしても良い。一般に、油圧が変化すると、作動油の流量が変化して油温や機関温度が変化したときと同様の影響が生じるため、油温、機関温度、油圧、油圧を変化させる機関回転速度のうちの少なくとも1つ又はそれと相関関係のあるパラメータに応じて制御信号の振動周波数を可変するようにすれば、油温や油圧に応じて作動油の粘度(流動性)や流量が変化するのに対応して、制御信号の振動周波数を適正値に設定することができ、油温や油圧の変化の影響を受けずに、応答性とバルブ可変量の振動防止とを両立させた安定したバルブ可変制御が可能となる。
【0027】
また、請求項のように、バルブ可変量が目標値に収束した状態になっているときに制御信号の振動を停止させるようにしても良い。このようにすれば、バルブ可変量が目標値に収束した状態から目標値が変化したときに、制御信号の振動方向と目標値の変化方向とが反対になることを回避することができ、目標値変化時に制御信号の振動方向と目標値の変化方向とが反対になることによる応答性の低下の可能性を無くすことができる。
【0033】
一般に、油圧式の可変バルブ装置においては、バルブ可変量がほぼ目標値に保持されているとき(つまりバルブ可変量の変化速度がほぼ0になっているとき)の制御信号の値を保持制御値(保持デューティ値)として学習する機能を備えており、この保持制御値の学習値を基準にしてバルブ可変量を制御するようにしている。保持制御値は、バルブ可変量の変化速度がほぼ0になっているときの制御信号の値であるが、図27(a)に示すように、不感帯が存在する場合は、不感帯の領域でバルブ可変量の変化速度(バルブタイミング変化速度)がほぼ0になるため、この領域のどこを学習するのか不明である。換言すれば、不感帯の領域で保持制御値を学習すると、保持制御値の学習値が不感帯の幅に相当する大きな学習誤差を持ってしまい、保持制御値を精度良く学習することができない。そのため、従来の可変バルブ制御システム(制御信号の振動制御を行わないシステム)では、バルブ可変量の変化速度がほぼ0になる不感帯の幅が大きくなるとき(例えば油温が低いとき)に、保持制御値の学習を禁止することで、学習精度の低下を防止するようにしていた。そのため、保持制御値の学習頻度が少なくなるという欠点があった。
【0034】
これに対し、前述した請求項に係る発明のように、可変バルブ制御の制御信号を適正な振幅で振動させる振動制御を行うと、図27(b)に示すように、不感帯を無くすことが可能となり、バルブ可変量の変化速度が0になる領域が1点となって、保持制御値の学習が可能となる。
【0035】
そこで、可変バルブ制御の制御信号を振動制御する場合は、請求項のように、保持制御値を学習するための所定の学習条件が成立したときに、保持制御値学習手段によって制御信号の振動制御を継続しながら保持制御値を学習するようにすると良い。このようにすれば、従来システムにおいて、不感帯の存在を考慮して保持制御値の学習を禁止していた条件下(例えば低油温時等)においても、制御信号の振動制御によって不感帯をほとんど無くしながら保持制御値を精度良く学習することができて、保持制御値の学習頻度を従来よりも多くすることができる。
【0036】
尚、通常の可変バルブ制御中に制御信号の振動制御を行わない場合でも、請求項10のように、所定の学習条件が成立したときに制御信号の振動制御を行いながら保持制御値を学習するようにしても良い。このようにすれば、通常の可変バルブ制御で不感帯が存在しても、保持制御値学習時に制御信号の振動制御によって不感帯をほとんど無くすことができ、保持制御値を精度良く学習することができる。
【0037】
この場合、請求項11のように、保持制御値の学習終了後に所定期間が経過するまで該保持制御値の学習を学習禁止手段により禁止するようにしても良い。つまり、バルブ可変量をその目標値に保持する保持制御中に、保持制御値が適正値からずれていると、図40に示すように、実際のバルブ可変量が目標値からずれた状態で保持されるため、そのずれ分を修正するように保持制御値の学習値が更新され、それに応じて制御信号が変化してバルブ可変量が目標値に向かって変化するが、制御信号の変化が実際にバルブ可変量の変化として現れるまでに可変バルブ装置の応答遅れがあるため、保持制御値の学習終了後に学習禁止期間を設けないと、学習終了後にバルブ可変量が応答遅れを持って変化する直前に、再び学習条件が成立して保持制御値の学習が開始される可能性がある。その結果、保持制御値の学習終了後にバルブ可変量が応答遅れを持って目標値に向かって変化する期間に再び保持制御値の学習が行われる可能性があり、それによって保持制御値の学習精度が低下する可能性がある。
【0038】
この対策として、請求項11のように、保持制御値の学習終了後に所定期間が経過するまで該保持制御値の学習を禁止するようにすれば、保持制御値の学習終了後にバルブ可変量が応答遅れを持って目標値に向かって変化する期間に保持制御値の学習が行われることを防止できて、保持制御値の学習精度低下を回避することができる。
【0039】
また、請求項12,22のように、不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定すると共に、保持制御値学習時の制御信号の振幅をその時点の制御信号の値によらず一定値とするようにしても良い。つまり、保持制御値学習時の制御信号の振幅をその時点の制御信号の値に応じて変化させると、保持制御値学習時の制御信号の値によっては、保持制御値学習時の制御信号の振幅が小さくなって制御信号の振動範囲が不感帯の領域を十分にカバーできなくなってしまう可能性があり、それによって、不感帯の一部が取り除かれずに残って、保持制御値の学習精度が低下する可能性がある。そこで、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲がその時点の制御信号の値によらず不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定して、この振幅をその時点の制御信号の値によらず一定値とすれば、保持制御値学習時の制御信号がどのような値であっても、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、不感帯全体を確実に取り除くことができて、保持制御値の学習精度低下を回避することができる。
【0040】
また、請求項13,23のように、不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定すると共に、保持制御値学習時の制御信号の振幅を不感帯と相関関係のあるパラメータ(例えば油温、機関温度、油圧、機関回転速度等)によらず一定値とするようにしても良い。この際、不感帯の幅が最も大きくなる条件下で、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定しておけば、低油温時等のように、不感帯の幅が大きくなる条件下でも、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、保持制御値の学習精度低下を回避することができる。
【0041】
或は、請求項14,24のように、保持制御値学習時の制御信号の振幅を不感帯と相関関係のあるパラメータに基づいて推定した該不感帯の幅に応じて設定するようにしても良い。このようにすれば、油温等により不感帯の幅が変化しても、それに応じて保持制御値学習時の制御信号の振動範囲を変化させて、制御信号の振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、保持制御値の学習精度低下を回避することができる。
【0042】
更に、請求項15,25のように、保持制御値学習時の制御信号の振幅を不感帯の幅の半分以上の振幅に設定するようにすると良い。このようにすれば、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲の幅が不感帯の幅以上となるので、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになる。
【0043】
また、請求項16ように、保持制御値の学習値のばらつきが大きいときに、保持制御値学習時の制御信号の振幅を大きくするように振幅補正手段により補正するようにしても良い。つまり、保持制御値の学習値のばらつきが大きいときは、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲が不感帯の領域を十分にカバーできない状態になっていると判断して、制御信号の振幅を大きくするように補正するものである。これにより、保持制御値学習時の制御信号の振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、保持制御値の学習値のばらつきを小さくすることができる。
【0044】
また、請求項17のように、バルブ可変量の変化速度が所定値以下になるときの制御信号の値を保持制御値として学習するようにすると良い。つまり、本来的には、保持制御値は、バルブ可変量の変化速度がほぼ0になっているときの制御信号の値であるが、実際の車両では、バルブ可変量をその目標値に保持する保持制御中でも、バルブ可変量が目標値付近で非常にゆっくりと動く傾向があるため、バルブ可変量の変化速度が所定値以下になるときの制御信号の値を保持制御値として学習するようにすれば、保持制御中にバルブ可変量の変化速度が完全に0にならなくても、保持制御値を学習することができる。
【0045】
この際、請求項18のように、バルブ可変量の変化速度が所定値以下であるか否かを判定する判定時間を、作動油の粘度又はこれと相関関係のあるパラメータ(例えば油温)に応じて設定するようにしても良い。つまり、作動油の粘度によってバルブ可変量の変化速度が遅くなったり速くなったりするため、バルブ可変量の変化速度が所定値以下であるか否かを判定する判定時間を作動油の粘度に応じて設定すれば、作動油の粘度によるバルブ可変量の変化速度のばらつきを考慮して判定時間を予め長めの時間に設定しておく必要がなくなり、その時点の作動油の粘度に応じて判定時間を必要最小限の時間に設定することができる。これにより、保持制御値の学習を比較的短い時間で行うことができ、保持制御値の学習頻度を多くすることができる。
【0046】
また、請求項19のように、保持制御値として制御信号の振動中心値又は該振動中心値に相当するパラメータを学習するようにすれば良い。このようにすれば、保持制御値を簡単に学習することができる。尚、保持制御値の学習値を更新する際に、学習値をなまし処理するようにしても良い。
【0047】
また、請求項20のように、バルブ可変量がその制御可能範囲の限界値に突き当たる可能性のある領域に存在するときに、保持制御値の学習を禁止するようにしても良い。つまり、バルブ可変量がその制御可能範囲の限界値に突き当たった状態になると、バルブ可変量の変化速度が0になるため、この状態を保持制御値による保持状態と誤判定して、保持制御値を誤学習する可能性がある。この対策として、バルブ可変量がその制御可能範囲の限界値に突き当たる可能性のある領域に存在するときに、保持制御値の学習を禁止すれば、バルブ可変量が制御可能範囲の限界値に突き当たった状態を保持制御値による保持状態と誤判定することを未然に防止できて、保持制御値の誤学習を未然に防止することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明を内燃機関の可変バルブタイミング制御装置に適用した実施形態(1)を図1乃至図9に基づいて説明する。まず、図1に基づいてシステム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11は、クランク軸12からの動力がタイミングチェーン13(又はタイミングベルト)により各スプロケット14,15を介して吸気側カム軸16と排気側カム軸17とに伝達されるようになっている。但し、吸気側カム軸16には、クランク軸12に対する吸気側カム軸16の回転位相(カム軸位相)を変化させて吸気バルブ(図示せず)のバルブタイミング(バルブ可変量)を可変する可変バルブタイミング装置18が設けられている。この可変バルブタイミング装置18の油圧回路には、オイルパン19内の作動油がオイルポンプ20により供給され、その油圧を油圧制御弁21で制御することで、吸気バルブのバルブタイミングが制御される。
【0049】
また、吸気側カム軸16の外周側には、気筒判別のために複数のカム角でカム角信号を出力するカム角センサ22が設置され、一方、クランク軸12の外周側には、所定クランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサ23が設置されている。これらカム角センサ22及びクランク角センサ23の出力信号は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)24に入力され、このECU24によって吸気バルブの実バルブタイミングが演算されると共に、クランク角センサ23の出力パルスの周波数からエンジン回転速度が演算される。
【0050】
また、図示しない各種センサ(スロットルセンサ、吸気管圧力センサ、冷却水温センサ等)の出力信号もECU24に入力される。このECU24は、これら各種の入力信号に基づいて燃料噴射制御や点火制御を行うと共に、バルブタイミング制御を行い、吸気バルブの実バルブタイミング(吸気側カム軸16の実カム軸位相)を目標バルブタイミング(吸気側カム軸16の目標カム軸位相)に一致させるように可変バルブタイミング装置18(油圧制御弁21)をフィードバック制御する。
【0051】
次に、図1及び図2に基づいて可変バルブタイミング装置18の構成を説明する。図2に示すように、可変バルブタイミング装置18のハウジング25は、吸気側カム軸16の外周に回動自在に支持されたスプロケット14にボルト26で締め付け固定されている。これにより、クランク軸12の回転がタイミングチェーン13を介してスプロケット14とハウジング25に伝達され、スプロケット14とハウジング25がクランク軸12と同期して回転する。一方、吸気側カム軸16の一端部には、ロータ27がストッパ28を介してボルト29で締め付け固定されている。このロータ27は、ハウジング25内に相対回動自在に収納されている。
【0052】
図1に示すように、ハウジング25の内部には、複数の流体室30が形成され、各流体室30が、ロータ27の外周部に形成されたベーン31によって進角室32と遅角室33とに区画されている。
【0053】
また、図2に示すように、エンジン11の動力でオイルポンプ20が駆動されることにより、オイルパン19から汲み上げた作動油が油圧制御弁21を介して吸気側カム軸14の進角溝34や遅角溝35に供給される。進角溝34に接続された進角油路36は、各進角室32に連通している。一方、遅角溝35に接続された遅角油路37は、各遅角室33に連通している。
【0054】
進角室32と遅角室33に所定圧以上の油圧が供給された状態では、進角室32と遅角室33の油圧でベーン31が固定されて、クランク軸12の回転によるハウジング25の回転が作動油を介してロータ27(ベーン31)に伝達され、ロータ27と一体的に吸気側カム軸16が回転駆動される。
【0055】
油圧制御弁21は、リニアソレノイド38に供給される電流に応じて弁体39を駆動して各油圧ポートの開度を連続的に変えることによって、各進角室32及び各遅角室33に供給する作動油量を増減する。これにより、ハウジング25とロータ27(ベーン31)とを相対回動させることで、クランク軸12に対する吸気側カム軸16の回転位相(カム軸位相)を変化させて吸気バルブのバルブタイミングを可変する。
【0056】
エンジン運転中、ECU24は、吸気バルブの実バルブタイミングVT(吸気側カム軸16の実カム軸位相)を目標バルブタイミングVTtg(吸気側カム軸16の目標カム軸位相)に一致させるように、次のようにして可変バルブタイミング装置18の油圧制御弁21をフィードバック制御する。
【0057】
まず、吸気バルブの目標バルブタイミングVTtgと実バルブタイミングVTとの偏差Errorに基づいてPD制御等によってフィードバック補正値Dfを算出し、このフィードバック補正値Dfを保持デューティ値Dh(現在のバルブタイミングを保持するデューティ値)に加算して、制御信号であるデューティ値Dutyを求める(Duty=Df+Dh)。そして、このデューティ値Dutyに対応する電流を油圧制御弁21のリニアソレノイド38に供給する。これにより、進角室32と遅角室33に供給する作動油量を制御して、カム軸位相を変化させて吸気バルブの実バルブタイミングVTを目標バルブタイミングVTtgに一致させる。
【0058】
一般に、図26(a)に示すように、油圧制御弁21の作動油供給流量特性には、作動油供給流量がほぼ0となるデューティ値(電流値)付近に、デューティ値Dutyの変化に対する作動油供給流量の応答性が極端に遅いか又はほとんど応答しない不感帯が存在する。このため、図26(b)に示すように、可変バルブタイミング装置18のバルブタイミング変化速度特性にも、現在のバルブタイミングを保持する保持デューティ値Dh付近に、デューティ値Dutyの変化に対するバルブタイミング制御の応答性が極端に遅いか又はほとんど応答しない不感帯が存在する。
【0059】
そこで、ECU24は、不感帯の影響を小さくするために、図3に示すように、デューティ値Dutyを所定のデューティ振幅d(好ましくは不感帯の幅の半分以上のデューティ振幅)で振動させる。これにより、デューティ値Dutyが不感帯領域で変化するときに、デューティ値Dutyの振動範囲を不感帯の内側と外側の両方の領域に跨がらせながらデューティ値Dutyを変化させることができると共に、デューティ値Dutyの変化に応じて不感帯外側の応答性の良い領域へのデューティ値Dutyのはみ出し量を変化させて応答性を確保することができる。これにより、デューティ値Dutyが不感帯領域で変化するときでも、不感帯の影響をあまり受けずに、デューティ値Dutyの変化に対して油圧制御弁21の作動油供給流量を応答良く変化さることができ、図4に示すように、デューティ値Dutyの変化に対して可変バルブタイミング装置18のバルブタイミング変化速度を応答良く直線的に変化させることができる。
【0060】
以上説明したバルブタイミング制御は、ECU24によって図5及び図6の各プログラムに従って実行される。以下、これら各プログラムの処理内容を説明する。図5のバルブタイミング制御プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。
【0061】
本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、各種センサの出力信号を取り込んだ後、ステップ102に進み、現在の吸気バルブの実バルブタイミングVTを算出する。尚、後述するデューティ値振動制御によってバルブタイミングを振動させるときには、その振動中心値を実バルブタイミングVTとして算出する。この後、ステップ103に進み、運転状態に基づいて吸気バルブの目標バルブタイミングVTtgを算出し、次のステップ104で、目標バルブタイミングVTtgと実バルブタイミングVTとの偏差Error(=VTtg−VT)を算出する。
【0062】
この後、ステップ105に進み、目標バルブタイミングVTtgと実バルブタイミングVTとの偏差Errorに基づいてPD制御演算を行うことによりフィードバック補正値Dfを次式により算出する。
Df=Kp ・Error+Kd ・d(Error)/dt
ここで、d(Error)/dt=[Error(i) −Error(i-1) ]/dtであり、dtは検出周期、Kp は比例項、Kd は積分項である。
【0063】
この後、ステップ106に進み、フィードバック補正値Dfに保持デューティ値Dhを加算して、デューティ値Dutyを求める。
Duty=Df+Dh
【0064】
デューティ値Dutyの算出後、ステップ107に進み、デューティ値Dutyを振動させる際のデューティ振幅dを算出する。このデューティ振幅dは、不感帯の幅の半分以上の値に設定され、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅以上となるようになっている。
【0065】
この場合、デューティ振幅dは、演算処理の簡略化のために、予め設定した固定値としても良いが、図8に示すデューティ振幅のマップを検索して、現在の油温に応じたデューティ振幅dを算出するようにしても良い。
【0066】
一般に、図7に示すように、油温が高くなると、作動油の粘度が低くなる(流動性が良くなる)ため、可変バルブタイミング装置18(油圧制御弁21)の不感帯の幅が小さくなる。このような特性を考慮して、図8のデューティ振幅dのマップは、油温が高くなるほどデューティ振幅dが小さくなるように設定されている。これにより、デューティ値Dutyの振動範囲の幅を不感帯の幅以上に設定しながら、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が必要以上に大きくなることを回避するようにしている。
【0067】
尚、油温は、油温センサで検出しても良いが、運転状態等から推定するようにしても良い。また、油温の代わりに、機関温度、冷却水温、始動後経過時間等の油温と相関関係のあるパラメータに応じてデューティ振幅dを算出するようにしても良い。
【0068】
デューティ振幅dの算出後、ステップ108に進み、デューティ値振動制御を実施して、デューティ値Dutyを、上記ステップ106で算出したデューティ値Dutyを中心にして、デューティ振幅d、所定振動周期で振動させる。
Duty=Duty±d
【0069】
これにより、油圧制御弁21のリニアソレノイド38には、デューティ値Dutyに応じた電流が供給され、且つ、その供給電流がデューティ値Dutyの振動に伴って振動する。
【0070】
この後、ステップ109に進み、スタータ信号がオンか否か、つまり始動時であるか否かを判断し、始動時であれば、後述する学習処理を行なうことなく、ステップ111に進んで、今回の保持デュ−ティ値Dh(i) として、前回走行時の保持デュ−ティ値Dhを用いてバルブタイミング制御を継続する。
【0071】
一方、始動時でなければ、ステップ110に進んで、油温(又は水温)が所定温度T(℃)以上であるか否かを判断し、油温(又は水温)が所定温度T(℃)よりも低ければ、上述した始動時の場合と同じく、後述する学習処理は行わず、ステップ111に進み、今回の保持デュ−ティ値Dh(i) として、前回走行時の保持デュ−ティ値Dhを用いてバルブタイミング制御を継続する。
【0072】
これ以外の場合、つまり、始動時でなく、且つ油温(又は水温)が所定温度T(℃)以上である場合は、ステップ112に進み、後述する図6の保持デューティ値学習プログラムを実行して保持デューティ値Dhを学習した後、本プログラムを終了する。
【0073】
一方、図5のステップ112で実行される図6の保持デューティ値学習プログラムでは、まず、ステップ201で、基準設定の有無、つまり後述する基準設定フラグのオン/オフを判断し、基準設定がなければ、ステップ202に進んで、学習条件成立判定用の基準値(目標バルブタイミング基準値BVTtg、実バルブタイミング基準値BVT)を次のようにして設定する。
【0074】
▲1▼目標バルブタイミングVTtgを目標バルブタイミング基準値BVTtgに入力する。
▲2▼実バルブタイミングVTを実バルブタイミング基準値BVTに入力する。
▲3▼基準設定フラグをオンに設定する。
【0075】
このようにして学習条件成立判定用の基準値BVTtg、BVTを設定した後、ステップ203に進み、連続時間カウンタC1に“0”を入力する(リセットする)。この後、ステップ204に進み、学習条件成立判定用の学習中フラグをオフすると共に、デューティ値Dutyの記憶値を消去する。
【0076】
基準設定フラグのオン後は、ステップ201で、基準設定有りと判定されて、ステップ205に進み、学習中フラグがオンか否か、つまり学習条件が成立しているか否かを判定し、学習条件が成立していなければ、ステップ206に進んで、目標バルブタイミングVTtgがほぼ一定であるか否か、つまり目標バルブタイミング基準値BVTtgに対する目標バルブタイミングVTtgの変動幅が微小範囲ΔVTtg内であるか否かを次式により判定する。
|VTtg−BVTtg|≦ΔVTtg
もし、目標バルブタイミングVTtgがほぼ一定でなければ、前述したステップ202に進んで、学習条件成立判定用の基準値BVTtg、BVTを設定する。
【0077】
これに対し、目標バルブタイミングVTtgがほぼ一定と判定されれば、ステップ207に進んで、実バルブタイミングVTがほぼ一定であるか否か、つまり実バルブタイミング基準値BVTに対する実バルブタイミングVTの変動幅が微小範囲ΔVTであるか否かを次式により判定する。
|VT−BVT|≦ΔVT
【0078】
もし、実バルブタイミングVTがほぼ一定でなければ、前述したステップ202に進んで、学習条件成立判定用の基準値BVTtg、BVTを設定する。従って、目標バルブタイミングVTtgと実バルブタイミングVTのいずれか一方でもほぼ一定でなければ、学習条件成立判定用の基準値BVTtg、BVTを設定することになる。
【0079】
これに対し、ステップ206、207において、目標バルブタイミングVTtg及び実バルブタイミングVTが、いずれもほぼ一定であると判定された場合は、以下のステップに従って保持デュ−ティ値Dhの学習を実行して、目標バルブタイミングVTtg及び実バルブタイミングVTの値が、所定時間ほぼ一定であるときに、その時のデューティ値Dutyを新しい保持デュ−ティ値Dhとして学習する。
【0080】
この保持デュ−ティ値Dhの学習は、まず、ステップ208で、目標バルブタイミングVTtg及び実バルブタイミングVTの双方がほぼ一定値を維持する継続時間M1を連続時間カウンタC1により計測し、この連続時間カウンタC1の値(継続時間M1)が所定時間t1に到達している場合にのみ目標バルブタイミングVTtg及び実バルブタイミングVTの定常状態が判定可能として学習中フラグをオンし(ステップ209)、学習処理を開始する(ステップ210)。一方、継続時間M1が所定時間t1に達していない場合には学習処理を行わずに本プログラムを終了する。
【0081】
学習処理は、まず、定常状態の判定が可能になったときに、その時点のデューティ値Dutyを記憶し(ステップ209、210)、連続時間カウンタC2に“0”を入力する(ステップ211)。この後、実バルブタイミングVTがほぼ一定値を維持する継続時間M2を連続時間カウンタC2により計測し、この連続時間カウンタC2の値(継続時間M2)が所定時間t2に到達すると、ステップ213の判定が「Yes」となり、前記ステップ210で記憶したデューティ値Dutyで実バルブタイミングVTが変わらないことが確認できたとして、ステップ214に進み、前記ステップ210で記憶したデューティ値Dutyを新たな保持デューティ値Dhとして学習する。
【0082】
尚、上述したステップ213で判断する所定時間t2は、出力されたデューティ値Dutyに対する実バルブタイミングVTの応答遅れ時間以上の時間とする。上述したステップ214で新しい学習値Dhの算出を終了すると、ステップ215に進み、基準設定フラグをオフに設定して学習処理を終了する。
【0083】
この学習処理は、バルブタイミング制御中に行うため、学習処理開始後に、実バルブタイミング基準値BVTに対する実バルブタイミングVTの変動幅がΔVTよりも大きくなることがあり、学習条件を外れることもある。このような場合には、ステップ212の判定が「No」となり、学習処理を中止して、最初の学習処理を開始する条件の設定(ステップ202)から再開する。
【0084】
以上説明した本実施形態(1)のバルブタイミング制御では、デューティ値Dutyを所定のデューティ振幅dで振動させるようにしたので、デューティ値Dutyが不感帯領域で変化するときでも、デューティ値Dutyの変化に対して油圧制御弁21の作動油供給流量を応答良く変化さることができ、図4に示すように、デューティ値Dutyの変化に対して可変バルブタイミング装置18のバルブタイミング変化速度を応答良く直線的に変化させることができる。これにより、図9に示すように、目標バルブタイミングの変化時に、デューティ値Dutyを保持デューティ値Dh(不感帯の中心付近)から進角方向又は遅角方向に変化させたときに、実バルブタイミングを目標バルブタイミングの変化に応答良く追従させて変化させることができ、ドライバビリティや排気エミッションを向上することができる。
【0085】
この場合、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅よりも小さいと、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯の中心付近にあるときに、デューティ値Dutyの振動範囲全体が不感帯内に入ってしまい、デューティ値Dutyの振動が不感帯の外側の応答性の良い領域へはみ出さないため、不感帯の中心付近でバルブタイミングの応答性が低下する。
【0086】
その点、本実施形態(1)では、デューティ値Dutyを不感帯の幅の半分以上のデューティ振幅dで振動させるようにしているので、デューティ値Dutyの振動範囲の幅を不感帯の幅以上とすることができ、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯の中心付近にあるときでも、デューティ値Dutyの振動範囲を不感帯の外側の応答性の良い領域へはみ出させることができ、バルブタイミング制御の応答性を確保することができる。
【0087】
しかしながら、本発明は、デューティ値Dutyの振幅を不感帯の幅の半分より小さくしても良く、この場合でも、従来と比較すれば、バルブタイミングの応答性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態(1)では、油温が高くなるほど可変バルブタイミング装置18(油圧制御弁21)の不感帯の幅が小さくなることを考慮して、油温が高くなるほどデューティ値Dutyのデューティ振幅dを小さく設定するようにしたので、デューティ値Dutyの振動範囲の幅を不感帯の幅以上に設定しながら、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が必要以上に大きくなることを回避することができ、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が必要以上に大きくなってバルブタイミングを振動させてしまう事態を回避することができる。
【0089】
[実施形態(2)]
次に、本発明の実施形態(2)を図10及び図11を用いて説明する。上記実施形態(1)では、デューティ値Dutyの振動中心値が変化してもデューティ振幅dを変化させなかったが、本実施形態(2)では、図10に示すマップによってデューティ値Dutyの振動中心値に応じてデューティ振幅dを変化させるようにしている。図10のマップは、デューティ値Dutyの振動中心値が保持デューティ値Dh付近(不感帯の中心付近)のときにデューティ振幅dが最大値(好ましくは不感帯の幅の半分以上)となり、デューティ値Dutyの振動中心値が保持デューティ値Dh付近(不感帯の中心付近)から遠ざかるほどデューティ振幅dが小さくなるように設定されている。不感帯の外側の領域は、本来的に応答性の良い制御領域であるため、デューティ値Dutyを振動させなくても、バルブタイミング制御の応答性を十分に確保できるためである。また、不感帯の外側の応答性の良い領域でデューティ振幅dが大きくなりすぎると、実バルブタイミングが振動するおそれがあり、これを避けるために、不感帯の外側の応答性の良い領域でデューティ振幅dを小さくするものである。
【0090】
更に、バルブタイミングの変化速度を最大とするデューティ値Dutyがデューティ振幅dの大きさにより変化するため、従来と同じデューティ値Dutyで最大速度を出すためには、最大速度領域でデューティ振幅d=0とする必要がある。
【0091】
本実施形態(2)によれば、図11に示すように、デューティ値Dutyの振動中心値が、保持デューティ値Dh付近(不感帯の中心付近)にあるときには、デューティ振幅dを大きくしてデューティ値Dutyを大きく振動させるので、不感帯の影響を効果的に抑えることができる。そして、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯から遠ざかるに従ってデューティ振幅dを小さくするので、不感帯の外側の応答性の良い領域でデューティ振幅dが適度に小さくなり、実バルブタイミングの振動を抑えることができる。
【0092】
更に、最大速度領域でデューティ振幅d=0とすることで、従来と同じデューティ値Dutyで最大速度を出すことができる。
【0093】
[実施形態(3)]
上記実施形態(2)では、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯から遠ざかるほどデューティ振幅dを小さくするようにしたが、本発明の実施形態(3)では、図12に示すように、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯内のときにデューティ値Dutyを所定のデューティ振幅d(好ましくは不感帯の幅の半分以上のデューティ振幅)で振動させ、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯の外側の応答性の良い領域に存在するときに、デューティ振幅dを0にしてデューティ値Dutyの振動を停止させるようにしている。
【0094】
このようにすれば、デューティ値Dutyを振動させなくても応答性を確保できる制御領域では、制御信号を振動させずに済み、制御信号の処理を簡単にすることができると共に、不感帯の外側の応答性の良い領域でデューティ振幅dが大きくなりすぎて実バルブタイミングを振動させてしまう事態を回避することができる。
【0095】
尚、本実施形態(3)では、デューティ値Dutyを振動させる領域を不感帯のみに限定したが、不感帯のばらつきや経時変化等を考慮して、デューティ値Dutyを振動させる領域を不感帯の外側にも少し広げるようにしても良い。
【0096】
[実施形態(4)]
油温が低いときは作動油の粘度が高い(流動性が悪い)ため、低油温時にデューティ値Dutyの振動周波数が高くなりすぎると、デューティ値Dutyの振動に油圧制御弁21内の作動油の流れが追従できなくなり、応答性が低下するおそれがある。反対に、作動油の流動性が良くなる高油温時に、デューティ値Dutyの振動周波数が低くなりすぎると、デューティ値Dutyの振動に伴って実バルブタイミングが振動してしまうおそれがある。
【0097】
そこで、本発明の実施形態(4)では、図13に示すマップによって油温に応じてデューティ値Dutyの振動周波数を可変するようにしている。図13のマップは、油温が低くなるほどデューティ値Dutyの振動周波数が低くなるように設定されている。
【0098】
本実施形態(4)によれば、図14(a)に示すように、油温が低いときには、それによって作動油の粘度が高くなるのに応じてデューティ値Dutyの振動周波数を低くすることができるので、低油温時でも、応答性を確保することができる。しかも、図14(b)に示すように、油温が高いときには、それによって作動油の粘度が低くなるのに応じてデューティ値Dutyの振動周波数を高くすることができるので、デューティ値Dutyの振動に伴ってバルブタイミングが振動してしまうことを防止することができる。これにより、油温(作動油の粘度)の変化の影響を受けずに、応答性とバルブタイミングの振動防止とを両立させた安定したバルブタイミング制御が可能となる。
【0099】
尚、油温は、油温センサで検出しても良いが、運転状態等から推定するようにしても良い。また、油温の代わりに、機関温度、冷却水温、始動後経過時間等の油温を変化させるパラメータに応じてデューティ値Dutyの振動周波数を算出するようにしても良い。
【0100】
[実施形態(5)]
次に、本発明の実施形態(5)を図15乃至図17を用いて説明する。
実バルブタイミングが目標バルブタイミングに保持されているときには、デューティ値Duty(振動中心値)が、現在のバルブタイミングを保持する保持デューティ値Dh(不感帯の中心付近)に設定されるが、このとき、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅と比較して大きくなりすぎると、デューティ値Dutyの振動に伴って実バルブタイミングが目標バルブタイミング付近で振動するおそれがある。
【0101】
そこで、ECU24は、図15の振幅補正プログラムを実行することで、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束しているときには(つまり目標バルブタイミングが変化せずに安定しているときには)、図16に示すように、実バルブタイミングが振動していれば、その振動が停止するまでデューティ振幅dを徐々に減少させ、実バルブタイミングの振動が停止した時点で、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅と一致したと判断して、その時点のデューティ値Dutyの振動中心値(保持デューティ値Dh)±デューティ振幅dを、不感帯の上限値、下限値と見なして学習する。
【0102】
一方、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束していないときには(つまり目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束するまでの期間には)、デューティ値Duty(振動中心値)を保持デューティ値Dhから目標バルブタイミングの方向に変化させるが、このとき、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅よりも小さいと、デューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の外側領域へはみ出さず、実バルブタイミングが変化しない場合があり得る。
【0103】
そこで、ECU24は、図15の振幅補正プログラムを実行することで、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束していないときには(つまり目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束するまでの期間には)、図17に示すように、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって所定値以上変化するまでデューティ振幅dを増大させて、実バルブタイミングを目標バルブタイミングへ向けて速やかに変化させる。
【0104】
以下、図15の振幅補正プログラムの処理内容を説明する。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行され、まず、ステップ301で、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束しているか否か(つまり目標バルブタイミングが変化せずに安定しているか否か)を判定し、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束していれば、ステップ302に進み、デューティ値Dutyの振動に伴って実バルブタイミングが目標バルブタイミング付近で振動しているか否かを判定する。
【0105】
その結果、実バルブタイミングが振動していると判定されれば、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅よりも大きいと判断して、ステップ303に進み、デューティ振幅dを所定量だけ減少させる。この後は、実バルブタイミングの振動が停止するまで、デューティ振幅dを所定量ずつ減少させる処理を繰り返す。
【0106】
その後、実バルブタイミングの振動が停止すると、ステップ302で「No」と判定され、ステップ304に進み、実バルブタイミングの振動が停止した直後であるか否か(つまり不感帯の学習タイミングであるか否か)を判定する。このステップ304で「Yes」と判定されれば、ステップ305に進み、実バルブタイミングの振動が停止したときのデューティ値Dutyの振動中心値(保持デューティ値Dh)±デューティ振幅dを、不感帯の上限値、下限値と見なして学習する。このステップ305の処理が特許請求の範囲でいう不感帯学習手段に相当する役割を果たす。
【0107】
一方、ステップ301で、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束していない(つまり目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束するまでの期間)と判定された場合には、ステップ306に進み、目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって所定値以上変化したか否かを判定し、所定値以上変化していなければ、ステップ307に進み、デューティ振幅dを所定量だけ増大させる。この後は、実バルブタイミングが所定値以上変化するまでデューティ振幅dを所定量ずつ増大させる処理を繰り返す。
【0108】
その後、実バルブタイミングが所定値以上変化すれば、その後のバルブタイミング制御の応答性を確保できると判断してデューティ振幅dの増大補正を終了する。
【0109】
以上説明した本実施形態(5)によれば、目標バルブタイミングが変化せずに安定しているときに(実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束しているときに)、実バルブタイミングの振動が停止するまでデューティ振幅dを減少させるようにしたので、実バルブタイミングが目標バルブタイミング付近で振動することを防止でき、実バルブタイミングの目標バルブタイミングへの収束性を向上できる。しかも、実バルブタイミングの振動が停止したときのデューティ値Dutyの振動中心値(保持デューティ値Dh)±デューティ振幅dを不感帯の上限値、下限値と見なして学習するようにしたので、エンジン運転中に目標バルブタイミングが変化しない状態が暫く続く毎に、不感帯を学習することができる。このようにして、エンジン運転中に不感帯を学習すれば、油圧制御弁21の製造ばらつきや経時変化、油温等の変化によって不感帯が変化しても、その変化を学習して実際の不感帯に応じた高精度の制御を行うことができる。
【0110】
更に、本実施形態(5)では、目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束するまでの期間に、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって所定値以上変化するまでデューティ振幅dを増大させるようにしたので、目標バルブタイミングの変化時にも不感帯を学習することができる。
【0111】
尚、本実施形態(5)では、目標バルブタイミングが変化せずに安定しているときに(実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束しているときに)、デューティ値Dutyの振動に伴って実バルブタイミングが目標バルブタイミングを中心に振動している状態で、該デューティ値Dutyのデューティ振幅dを徐々に小さくして実バルブタイミングの振動が停止したときのデューティ値Dutyの振動中心値(保持デューティ値Dh)±デューティ振幅dを、不感帯の上限値、下限値と見なして学習するようにしたが、実バルブタイミングバルブが目標バルブタイミングで振動せずに保持されている状態で、デューティ値Dutyのデューティ振幅dを徐々に大きくして実バルブタイミングが振動し始めたときのデューティ値Dutyの振動中心値(保持デューティ値Dh)±デューティ振幅dを、不感帯の上限値、下限値と見なして学習するようにしても良い。
【0112】
[実施形態(6)]
図18(a)に示すように、油圧制御弁21の電流−作動油供給流量特性には、作動油供給流量がほぼ0となる電流値付近に、電流値の変化に対する作動油供給流量の応答性が極端に遅くなる不感帯が存在する。従来の可変バルブタイミング制御システムでは、図18(b)に破線で示すように、不感帯を含む全制御領域において、デューティ値Dutyに比例した電流値を油圧制御弁21に供給するようにしていたので、図18(c)に破線で示すように、油圧制御弁21のデューティ値Duty−作動油供給流量特性にも、電流−作動油供給流量特性の非線形特性がそのまま反映されて、作動油供給流量がほぼ0となるデューティ値Duty(保持デューティ値Dh)付近に、デューティ値Dutyの変化に対する作動油供給流量の応答性が極端に遅くなる不感帯が存在するようになる。
【0113】
そこで、本発明の実施形態(6)では、ECU24は、デューティ値Dutyを電流値に変換する際に、図18(b)に実線で示すマップによってデューティ値Dutyに応じた電流値を算出する。このマップは、不感帯に相当する電流値領域(作動油供給流量がほぼ0となる電流値付近)で、デューティ値Dutyに対する電流値の変化率(制御ゲイン)が大きくなり、不感帯の外側に相当する電流値領域で、デューティ値Dutyに対する電流値の変化率が小さくなるように設定されている。図18(b)のマップによりデューティ値Dutyに対する電流値の変化率(制御ゲイン)を補正する機能が、特許請求の範囲でいう制御手段に相当する役割を果たす。
【0114】
このようにすれば、図18(c)に実線で示すように、作動油供給流量がほぼ0となるデューティ値Duty(保持デューティ値Dh)付近で、デューティ値Dutyが変化するときでも、デューティ値Dutyの変化に対する油圧制御弁21の不感帯領域の流量応答性を向上させることができ、デューティ値Dutyの変化に対するバルブタイミング制御の応答性を向上させることができる。
【0115】
図19に示すように、デューティ値Dutyに応じた電流値のマップを油温毎に設定して、油温に応じてデューティ値Dutyに対する電流値の変化率の補正量を可変するようにしても良い。このようにすれば、油温に応じて作動油供給流量(バルブタイミング)の応答性が変化するのに対応して、デューティ値Dutyに対する電流値の変化率を適正値に設定することができ、油温の変化の影響を受けない安定したバルブタイミング制御が可能となる。
【0116】
尚、油温の代わりに、機関温度、冷却水温、始動後経過時間等の油温と相関関係のあるパラメータに応じてデューティ値Dutyに対する電流値の変化率の補正量を可変するようにしても良い。
【0117】
[実施形態(7)]
上記実施形態(1)〜(6)は、少なくとも不感帯領域でデューティ値Dutyを振動させるようにしたが、図20乃至図22に示す本発明の実施形態(7)では、目標バルブタイミングが変化したときに、デューティ値Dutyを不感帯の上限値又は下限値までオフセットすることで、バルブタイミング制御の応答性を向上させる。従って、本実施形態(7)では、デューティ値Dutyを振動させる必要がない。
【0118】
また、本実施形態(7)のように、デューティ値Dutyを振動させない場合は、デューティ値Dutyが不感帯の上限値や下限値を通過するときに、バルブタイミング制御の応答性が急変するので、エンジン運転中にバルブタイミング制御の応答性を検出して、その応答性が急変したときのデューティ値Dutyに基づいて不感帯を学習する。そして、目標バルブタイミングの変化時に、デューティ値Dutyをオフセットさせるオフセット量を、不感帯の学習値に基づいて設定する。
【0119】
以下、本実施形態(7)の具体的な処理内容を説明する。
エンジン運転中に、所定の学習期間に不感帯の学習を行うが、この不感帯の学習期間中は、目標バルブタイミングの変化時でもデューティ値Dutyをオフセットさせない。そして、この学習期間中に、実バルブタイミングバルブVTが目標バルブタイミングVTtgで保持されているときに、図20に示すように、目標バルブタイミングVTtgが変化して、それに応じてデューティ値Dutyを保持デューティ値Dh付近から進角方向(又は遅角方向)に変化させたときに、目標バルブタイミングVTtgと実バルブタイミングVTの偏差Errorの変動量d(Error)/dtを監視してバルブタイミング制御の応答性を検出する。この機能が特許請求の範囲でいう応答性検出手段に相当する。
ここで、d(Error)/dt=[Error(i) −Error(i-1) ]/dtであり、Error(i) は今回の偏差、Error(i-1) は前回の偏差、dtは検出周期である。
【0120】
偏差Errorの変動量d(Error)/dtが0付近の所定範囲内であるか否を、−α<d(Error)/dt<αか否かによって判定し、偏差Errorの変動量d(Error)/dtが所定範囲以下となった時点で、デューティ値Dutyが不感帯の上限値又は下限値を通過して実バルブタイミングVTが止まった(バルブタイミング制御の応答性が急変した)と判断して、その時点のデューティ値Dutyを不感帯の上限値Dg1又は下限値Dg2と見なす。
【0121】
そして、図21に示すように、不感帯の上限値Dg1と保持デューティ値Dhとの差を進角側の学習値G1(=Dg1−Dh)として学習する。この進角側の学習値G1は、目標バルブタイミングVTtgが進角方向に変化したときに、デューティ値Dutyを進角方向にオフセットさせるオフセット量として用いる。また、保持デューティ値Dhと不感帯の下限値Dg2との差は、遅角側の学習値G2(=Dh−Dg2)として学習する。この遅角側の学習値G2は、目標バルブタイミングVTtgが遅角方向に変化したときに、デューティ値Dutyを遅角方向にオフセットさせるオフセット量として用いる。尚、この学習値G1,G2を学習する機能が特許請求の範囲でいう不感帯学習手段に相当する。
【0122】
図22に示すように、学習期間終了後、ECU24は、目標バルブタイミングVTtgが進角方向に変化したときに、それに応じてデューティ値Dutyを進角方向に変化させる際には、目標バルブタイミングVTtgと実バルブタイミングVTとの偏差Errorに応じて算出されたフィードバック補正値Dfと保持デューティ値Dhと進角側の学習値G1とを用いて、次式によりデューティ値Dutyを進角側の学習値G1だけ進角方向にオフセットさせる。
Duty=Df+Dh+G1
【0123】
ここで、保持デューティ値Dhは、前記実施形態(1)と同じ方法で学習するようにしても良いが、予め実験データや設計データ等から求めた保持デューティ値Dhを用いるようにしても良い。
【0124】
一方、目標バルブタイミングVTtgが遅角方向に変化したときに、それに応じてデューティ値Dutyを遅角方向に変化させる際には、フィードバック補正値Dfと保持デューティ値Dhと遅角側の学習値G2とを用いて、次式によりデューティ値Dutyを、遅角側の学習値G2だけ遅角方向にオフセットさせる。
Duty=Df+Dh−G2
【0125】
このようにして、目標バルブタイミングVTtgの変化時にデューティ値Dutyを不感帯の学習値G1,G2だけオフセットさせる機能が特許請求の範囲でいう制御手段に相当する。
【0126】
以上の処理により、目標バルブタイミングが変化したときに、直ちにデューティ値Dutyを不感帯の外側領域にオフセットして、実バルブタイミングを応答良くフィードバック制御することができる。これにより、実バルブタイミングを目標バルブタイミングの変化に応答良く追従させて変化させることができ、実バブルタイミングを目標バルブタイミングに速やかに収束させることができる。
【0127】
尚、本実施形態(7)では、エンジン運転中に目標バルブタイミングが変化してデューティ値Dutyを進角方向又は遅角方向に変化させたときに、不感帯(学習値G1,G2)を学習するようにしたが、目標バルブタイミングが変化していないときに、エンジン運転状態に悪影響を及ぼさない範囲で、一時的にデューティ値Dutyを進角方向(又は遅角方向)に変化させて、不感帯(学習値G1,G2)を学習するようにしても良い。
【0128】
或は、デューティ値Dutyを不感帯の外側から内側に変化させるときに、バルブタイミング制御の応答性を監視して、実バルブタイミングの動きが止まった点を、デューティ値Dutyを不感帯の上限値Dg1又は下限値Dg2と見なして学習するようにしても良い。
【0129】
尚、不感帯の学習方法は、適宜変更しても良く、例えば、不感帯学習期間中にデューティ値Dutyを振動させて、前記実施形態(5)と同様の方法で不感帯を学習するようにしても良い。
【0130】
或は、不感帯を学習する手段を省いたシステムでは、予め実験データや設計データ等から求めた不感帯を用いて、目標バルブタイミングが変化したときに、該不感帯の幅に応じてデューティ値Dutyをオフセットするようにしても良い。この場合、不感帯を学習する場合よりも不感帯の精度が低下するが、目標バルブタイミングが変化したときに、デューティ値Dutyを該不感帯の幅に応じてオフセットすれば、従来よりもバルブタイミングを応答良く変化させることができる。
【0131】
[実施形態(8)]
前述した各実施形態(1)〜(6)は、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束している場合でも、デューティ値Dutyを振動させるようにしたが、図23及び図24に示す本発明の実施形態(8)では、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束したと判断したときに、デューティ値Dutyの振動を停止させるようにしている。以下、本実施形態(8)で実行する図23の振幅補正プログラムの処理内容を説明する。
【0132】
本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行され、まず、ステップ301で、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束しているか否か(つまり目標バルブタイミングが変化せずに安定しているか否か)を判定する。その結果、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束していない(つまり目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束するまでの期間)と判定された場合には、ステップ301aに進み、デューティ値振動制御を実施する。そして、次のステップ306で、目標バルブタイミングが変化してから実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって所定値以上変化したか否かを判定し、所定値以上変化していなければ、ステップ307に進み、デューティ振幅dを所定量だけ増大させる。この後は、実バルブタイミングが所定値以上変化するまでデューティ振幅dを所定量ずつ増大させる処理を繰り返し、実バルブタイミングが所定値以上変化した時点で、デューティ振幅dの増大補正を終了する。
【0133】
一方、ステップ301で、実バルブタイミングが目標バルブタイミングにほぼ収束していると判定された場合には、ステップ302に進み、デューティ値Dutyの振動に伴って実バルブタイミングが目標バルブタイミング付近で振動しているか否かを判定する。その結果、実バルブタイミングが振動していると判定されれば、デューティ値Dutyの振動範囲の幅が不感帯の幅よりも大きいと判断して、ステップ303に進み、デューティ振幅dを所定量だけ減少させる。この後は、実バルブタイミングの振動が停止するまで、デューティ振幅dを所定量ずつ減少させる処理を繰り返す。
【0134】
その後、実バルブタイミングの振動が停止すると、ステップ302で「No」と判定され、ステップ308に進み、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに完全に収束したと判断して、デューティ値Dutyの振動を停止させる。
【0135】
尚、実バルブタイミングの振動が停止した直後に前記実施形態(5)と同様の方法で不感帯を学習した後に、デューティ値Dutyの振動を停止させるようにしても良い。
【0136】
以上説明した本実施形態(8)のように、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束した状態になっているときにデューティ値Dutyの振動を停止させるようにすれば、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束した状態から目標バルブタイミングが変化したときに、デューティ値Dutyの振動方向と目標バルブタイミングの変化方向とが反対になることを回避することができ、目標バルブタイミングの変化時にデューティ値Dutyの振動方向と目標バルブタイミングの変化方向とが反対になることによる応答性の低下の可能性を無くすことができる。
【0137】
[実施形態(9)]
図25に示す本発明の実施形態(9)では、デューティ値Dutyをデューティ振幅dで振動させると共に、目標バルブタイミングが変化してデューティ値Dutyを進角方向又は遅角方向に変化させる際に、デューティ値Dutyの振動中心値が不感帯領域に入っているときに、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束するまで、制御ゲインを増大させるようにしている。このようにすれば、不感帯領域で制御ゲインを増大させない場合と比較して、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束するまでの時間を短くすることができる。
【0138】
[実施形態(10)]
一般に、油圧式の可変バルブタイミング装置においては、実バルブタイミングがほぼ目標値に保持されているとき、つまり実バルブタイミングの変化速度がほぼ0になっているときのデューティ値Dutyを保持デューティ値Dhとして学習する機能を備えており、この保持デューティ値Dhの学習値を基準にして実バルブタイミング(デューティ値Duty)を制御するようにしている。保持デューティ値Dhは、実バルブタイミングの変化速度がほぼ0になっているときのデューティ値Dutyであるが、図27(a)に示すように、不感帯が存在する場合は、不感帯の領域で実バルブタイミングの変化速度がほぼ0になるため、この領域のどこを学習するのか不明である。換言すれば、不感帯の領域で保持デューティ値Dhを学習すると、保持デューティ値Dhの学習値が不感帯の幅に相当する大きな学習誤差を持ってしまい、保持デューティ値Dhを精度良く学習することができない。そのため、従来の可変バルブタイミング制御システム(デューティ値Dutyの振動制御を行わないシステム)では、実バルブタイミングの変化速度がほぼ0になる不感帯の幅が大きくなるとき(例えば油温が低いとき)に、保持デューティ値Dhの学習を禁止することで、学習精度の低下を防止するようにしていた。そのため、保持デューティ値Dhの学習頻度が少なくなるという欠点があった。
【0139】
前述した実施形態(1)〜(6)、(8)、(9)のように、デューティ値Dutyを適正な振幅で振動させる振動制御を行うと、図27(b)に示すように不感帯を無くすことが可能となり、実バルブタイミングの変化速度が0になる領域が1点となり、保持デューティ値Dhの学習が可能となる。
【0140】
そこで、本発明の実施形態(10)では、ECU24によって図28乃至図31に示す各プログラムを実行することで、通常のバルブタイミング制御中にデューティ値Dutyを適正な振幅で振動させる振動制御を行うと共に、保持デューティ値Dhを学習するための所定の学習条件が成立したときに、デューティ値Dutyの振動制御を継続して不感帯を無くしながら保持デューティ値Dhを学習する。このECU24の学習機能が特許請求の範囲でいう保持制御値学習手段としての役割を果たす。以下、これら各プログラムの処理内容を説明する。
【0141】
本実施形態(10)で実行する図28のバルブタイミング制御プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図5のバルブタイミング制御プログラムのステップ110の処理を省略し、ステップ107(107a)とステップ112(112a)の処理を部分的に変更したものであり、その他の各ステップの処理は図5のプログラムと同じである。
【0142】
図28のバルブタイミング制御プログラムが起動されると、ステップ101〜106の処理によって、フィードバック補正値Dfに保持デューティ値Dhの学習値を加算して、デューティ値Dutyを求める。
Duty=Df+Dh
【0143】
この後、ステップ107aに進み、図29のデューティ振幅d算出プログラムを実行する。このデューティ振幅d算出プログラムが起動されると、まず、ステップ401で、保持デューティ値学習中であるか否かを判定し、保持デューティ値学習中でなければ、ステップ402に進み、前記各実施形態と同様の方法で、通常制御時のデューティ振幅dを算出する。
【0144】
これに対し、上記ステップ401で、保持デューティ値学習中であると判定された場合は、ステップ403に進み、学習時のデューティ振幅dを次の▲1▼〜▲4▼のいずれかの方法で算出する。
【0145】
《デューティ振幅dの算出法▲1▼》
学習時のデューティ振幅dをその時点のデューティ値Dutyによらず一定値とする。この際、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲がその時点のデューティ値Dutyによらず不感帯の領域全体をカバーできるように、予め学習時のデューティ振幅dを設定して、ECU24のROMに記憶しておけば良い。この場合、デューティ振幅dは、最大の不感帯の幅の半分以上の値に設定することが好ましい。このようにすれば、学習時のデューティ値Dutyがどのような値であっても、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、不感帯全体を確実に取り除くことができて、保持制御値の学習精度低下を回避することができる。
【0146】
《デューティ振幅dの算出法▲2▼》
図32に示すように、学習時のデューティ振幅dを不感帯と相関関係のあるパラメータ(例えば油温、エンジン温度、油圧、エンジン回転速度等)によらず一定値とする。この際、不感帯の幅が最も大きくなる条件下で、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるように、予め学習時のデューティ振幅dを設定して、ECU24のROMに記憶しておけば良い。この場合も、デューティ振幅dは、最大の不感帯の幅の半分以上の値に設定することが好ましい。このようにすれば、低油温時等のように、不感帯の幅が大きくなる条件下でも、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、保持デューティ値の学習精度低下を回避することができる。
【0147】
《デューティ振幅dの算出法▲3▼》
図33に示すように、学習時のデューティ振幅dを不感帯と相関関係のあるパラメータ(例えば油温、エンジン温度、油圧、エンジン回転速度等)に基づいて推定した不感帯の幅に応じて設定する。この場合も、デューティ振幅dは、不感帯の幅の半分以上の値に設定することが好ましい。このようにすれば、油温等により不感帯の幅が変化しても、それに応じて学習時のデューティ値Dutyの振動範囲を変化させて、デューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになる。
【0148】
《デューティ振幅dの算出法▲4▼》
保持デューティ値Dhの学習値のばらつきが大きいときに、学習時のデューティ振幅dを大きくするように補正する。例えば、図34に示すように、保持デューティ値Dhの学習値のばらつきが許容範囲内で否かを判定し、保持デューティ値Dhの学習値のばらつきが許容範囲より大きい状態が所定時間以上連続したときに、学習時のデューティ振幅dを所定量大きくするように補正する。つまり、保持デューティ値Dhの学習値のばらつきが大きいときは、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域を十分にカバーできない状態になっていると判断して、デューティ振幅dを大きくするように補正するものである。これにより、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域全体をカバーできるようになり、保持デューティ値Dhの学習値のばらつきを小さくすることができる。
【0149】
以上説明した図29のデューティ振幅d算出プログラムで、通常制御時のデューティ振幅d又は学習時のデューティ振幅dを算出した後、図28のステップ108に戻り、デューティ値振動制御を実施して、デューティ値Dutyを、ステップ106で算出したデューティ値Dutyを中心にして、デューティ振幅d、所定振動周期で振動させる。
Duty=Duty±d
【0150】
これにより、油圧制御弁21のリニアソレノイド38には、デューティ値Dutyに応じた電流が供給され、且つ、その供給電流がデューティ値Dutyの振動に伴って振動する。
【0151】
この後、ステップ109に進み、スタータ信号がオンか否か、つまり始動時であるか否かを判断し、始動時であれば、後述する学習処理を行なうことなく、ステップ111に進んで、今回の保持デュ−ティ値Dh(i) として、前回走行時の保持デュ−ティ値Dhを用いてバルブタイミング制御を継続する。
【0152】
一方、始動時でなければ、ステップ112aに進み、図30の保持デューティ値学習プログラムを実行して、保持デューティ値Dhを次のようにして学習する。図30の保持デューティ値学習プログラムが起動されると、まず、ステップ411で、現在、デューティ値Dutyの振動制御中であるか否か(デューティ振幅d>0であるか否か)を判定し、振動制御が停止されている場合(デューティ振幅d=0の場合)は、ステップ412に進み、前記実施形態(1)で説明した図6の保持デューティ値学習プログラムと同じ処理によって、振動制御停止時の保持デューティ値Dhを学習する。
【0153】
これに対し、上記ステップ411で、振動制御中と判定された場合は、ステップ413に進み、図31の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムを実行する。この図31の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムは、図6の保持デューティ値学習プログラムのステップ210とステップ214の処理を変更したものであり、それ以外の処理は図6のプログラムと同じである。
【0154】
図31の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムが起動されると、ステップ206〜208で、所定の学習条件が成立しているか否かを判定する。この学習条件は、目標バルブタイミングVTtg及び実バルブタイミングVTの双方がほぼ一定値を維持する継続時間が所定の判定時間t1以上であることである。この判定時間t1は、演算処理の簡略化のために、予め設定した固定値としても良いが、作動油の粘度又はこれと相関関係のあるパラメータ(例えば油温)に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0155】
つまり、作動油の粘度によって実バルブタイミングVTの変化速度が遅くなったり速くなったりするため、実バルブタイミングVTがほぼ一定値を維持しているか否か(実バルブタイミングVTの変化速度が所定値以下であるか否か)を判定する判定時間t1を作動油の粘度に応じて設定すれば、作動油の粘度による実バルブタイミングVTの変化速度のばらつきを考慮して判定時間t1を予め長めの時間に設定しておく必要がなくなり、その時点の作動油の粘度に応じて判定時間t1を必要最小限の時間に設定することができる。これにより、保持デューティ値Dhの学習を比較的短い時間で行うことができ、保持デューティ値Dhの学習頻度を多くすることができる。
【0156】
上記学習条件が成立すれば、ステップ209に進み、学習中フラグをオンし、次のステップ210aで、学習処理を実行する。この学習処理では、その時点のデューティ値Dutyの振動中心値、すなわち、図28のステップ106で算出したデューティ値Duty(デューティ振幅dを加減算する前のデューティ値Duty)を記憶する。
【0157】
このデューティ値Dutyの振動中心値を記憶した後、実バルブタイミングVTがほぼ一定値を維持する継続時間M2を計測する連続時間カウンタC2をリセットスタートし(ステップ211)、この連続時間カウンタC2の値(継続時間M2)が所定の判定時間t2に達したか否かを判定する(ステップ213)。この判定時間t2も、前記判定時間t1と同じく、作動油の粘度又はこれと相関関係のあるパラメータ(例えば油温)に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良く、勿論、予め設定した固定値としても良い。
【0158】
そして、実バルブタイミングVTがほぼ一定値を維持する継続時間M2が所定の判定時間t2に達した時点で、前記ステップ210aで記憶したデューティ値Dutyの振動中心値で実バルブタイミングVTが変わらないことが確認できたとして、ステップ214aに進み、前記ステップ210aで記憶したデューティ値Dutyの振動中心値を新たな保持デューティ値Dhとして学習する。その他の処理は、図6のプログラムと同じである。
【0159】
以上説明した本実施形態(10)の制御例を図35のタイムチャートを用いて説明する。図35のタイムチャートは、目標バルブタイミングの変化に追従して実バルブタイミングが変化する過程で、保持デューティ値Dhの学習値を更新するときの制御例を示している。この制御例では、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束する前に、実バルブタイミングの動きがほぼ停止した状態(実バルブタイミングの変化速度が所定値以下の状態)となる。この停止状態が所定の判定時間t1だけ継続した時点で、デューティ値Dutyの振動中心値を記憶し、更に、この時点から停止状態が所定の判定時間t2だけ継続した時点で、それまでに記憶されたデューティ値Dutyの振動中心値を新たな保持デューティ値Dhとして学習する。この学習期間中(停止期間中)も、デューティ値Dutyの振動制御を継続することで、不感帯を無くした状態で保持デューティ値Dhを学習する。
【0160】
保持デューティ値の学習後は、デューティ値Dutyが保持デューティ値Dhの学習補正量分だけ変化するため、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって再び動き始め、最終的に、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束した状態となる。
【0161】
以上説明した本実施形態(10)では、保持デューティ値Dhの学習期間中も、デューティ値Dutyの振動制御を継続して不感帯を無くしながら保持デューティ値Dhを学習するようにしたので、従来システムにおいて、不感帯の存在を考慮して保持デューティ値Dhの学習を禁止していた条件下(例えば低油温時等)においても、デューティ値Dutyの振動制御によって不感帯を無くしながら保持デューティ値Dhを精度良く学習することができ、保持デューティ値Dhの学習頻度を従来よりも多くすることができる。
【0162】
ところで、通常のバルブタイミング制御中(通常制御中)のデューティ振幅dは、前記実施形態(1)と同じように一定値としても良いが、図36(a)に示すように、デューティ値Dutyの振動中心値に応じてデューティ振幅dを変化させるようにしても良い。この場合、デューティ値Dutyの振動中心値が保持デューティ値Dh付近(不感帯の中心付近)のときにデューティ振幅dが最大値(好ましくは不感帯の幅の半分以上)となり、デューティ値Dutyの振動中心値が保持デューティ値Dh付近(不感帯の中心付近)から遠ざかるほどデューティ振幅dが小さくなるように設定すると良い。不感帯の外側の領域は、本来的に応答性の良い制御領域であるため、デューティ値Dutyを振動させなくても、バルブタイミング制御の応答性を十分に確保できるためである。また、応答性の良い制御領域で、デューティ振幅dを大きくすると、図37(b)に示すように、応答性の良い制御領域で、バルブタイミング制御の制御特性が却って悪くなってしまう。
【0163】
図36(a)に示すように、デューティ値Dutyの振動中心値に応じてデューティ振幅dを変化させる場合は、図37(a)に示すように、学習時のデューティ振幅dを、その時点のデューティ値Dutyによらず一定値とすると良い。この際、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲がその時点のデューティ値Dutyによらず不感帯の領域全体をカバーできるように、学習時のデューティ振幅dを、通常制御時のデューティ振幅dの最大値と同程度(好ましくは不感帯の幅の半分以上)に設定すると良い。このようにすれば、学習時のデューティ値Dutyがどのような値であっても、学習時のデューティ値Dutyの振動範囲が不感帯の領域全体を確実にカバーできるようになり、不感帯全体を確実に取り除くことができて、保持制御値の学習精度低下を回避することができる。
【0164】
[実施形態(11)]
ところで、目標バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値(制御可能範囲の限界値)又はそれに近い領域に設定されているときには、実バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値に突き当たった状態になることがあり、それによって、バルブタイミング変化速度が0になることがある。従って、目標バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値又はそれに近い領域に設定されているときに、保持デューティ値Dhの学習を行うと、実バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値に突き当たった状態を保持デューティ値Dhによる保持状態と誤判定して、保持デューティ値Dhを誤学習する可能性がある。
【0165】
そこで、図38及び図39に示す本発明の実施形態(11)では、目標バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値又はそれに近い領域に設定されて、実バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値に突き当たる可能性のある領域を学習禁止領域に設定し(図38参照)、目標バルブタイミングが学習禁止領域に設定されているときには、保持デューティ値Dhの学習を禁止して、保持デューティ値Dhの誤学習を未然に防止するようにしている。この学習制御は、図39の保持デューティ値学習プログラムによって次のようにして実現される。本プログラムが起動されると、まずステップ410で、目標バルブタイミングが保持デューティ値学習の許可範囲内であるか否かを判定し、目標バルブタイミングが保持デューティ値学習の許可範囲内でない場合、つまり目標バルブタイミングが学習禁止領域である場合は、ステップ411以降の保持デューティ値Dhの学習を行わずに本プログラムを終了する。
【0166】
これに対して、上記ステップ410で、目標バルブタイミングが保持デューティ値学習の許可範囲内であると判定された場合は、ステップ411以降の保持デューティ値Dhの学習を実行する。この保持デューティ値Dhの学習方法は、前記実施形態(10)で説明した図30の保持デューティ値学習プログラムと同じである。
【0167】
以上説明した本実施形態(11)では、図38に示すように、実バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値に突き当たる可能性のある領域を学習禁止領域に設定し、目標バルブタイミングが学習禁止領域に設定されているときに、保持デューティ値Dhの学習を禁止するようにしたので、実バルブタイミングが進角側/遅角側の限界値に突き当たった状態を保持デューティ値Dhによる保持状態と誤判定することを未然に防止できて、保持デューティ値Dhの誤学習を未然に防止することができる。
【0168】
[実施形態(12)]
ところで、実バルブタイミングをその目標値付近に保持する保持制御中に、保持デューティ値Dhが適正値からずれていると、図40に示すように、実バルブタイミングが目標バルブタイミングからずれた状態で保持されるため、そのずれ分を修正するように保持デューティ値Dhの学習値が更新され、それに応じてデューティ値Dutyが変化して実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって変化するが、デューティ値Dutyの変化が実バルブタイミングの変化として現れるまでに可変バルブタイミング装置18の応答遅れがあるため、保持デューティ値Dhの学習終了後に学習禁止期間を設けないと、学習終了後に実バルブタイミングが応答遅れを持って変化する直前に、再び学習条件が成立して、保持デューティ値Dhの学習が開始される可能性がある。その結果、保持デューティ値Dhの学習終了後に実バルブタイミングが応答遅れを持って目標バルブタイミングに向かって変化する期間に再び保持デューティ値Dhの学習が行われる可能性があり、それによって、保持デューティ値Dhの学習精度が低下する可能性がある。
【0169】
そこで、本発明の実施形態(12)では、図41の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムを実行することで、前回の保持デューティ値Dhの学習終了から所定時間が経過したか否かを判定し(ステップ200)、前回の保持デューティ値Dhの学習終了から所定時間が経過するまで保持デューティ値Dhの学習を禁止するようにしている。この場合、学習禁止期間は、保持デューティ値Dhの学習終了時から実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束するまでの時間よりも少し長い時間に設定されている。このようにすれば、保持デューティ値Dhの学習終了後に実バルブタイミングが応答遅れを持って目標バルブタイミングに向かって変化する期間に保持デューティ値Dhの学習が行われることを防止できて、保持デューティ値Dhの学習精度低下を回避することができる。
【0170】
尚、図41の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムのステップ200の処理が特許請求の範囲でいう学習禁止手段としての役割を果たし、それ以外の処理は、前記実施形態(10)で説明した図31の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムの処理と同じである。
【0171】
[実施形態(13)]
前記実施形態(10)〜(12)は、通常のバルブタイミング制御中及び学習期間中にデューティ値Dutyの振動制御を行うことで不感帯を無くすようにしたが、通常のバルブタイミング制御中にデューティ値Dutyの振動制御を行わない場合でも、学習期間中にデューティ値Dutyの振動制御を行って不感帯を無くしながら保持デューティ値Dhを学習するようにしても良い。
【0172】
以下、これを具体化した本発明の実施形態(13)を図42〜図45を用いて説明する。
本実施形態(13)で実行する図42のバルブタイミング制御プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図5のバルブタイミング制御プログラムのステップ106以降の処理を変更したものである。図42のバルブタイミング制御プログラムが起動されると、前記実施形態(1)と同様の方法で、デューティ値Dutyを算出する(ステップ101〜106)。この後、ステップ108aに進み、図43の不感帯対策制御プログラムを実行して、次のようにしてデューティ値Dutyを不感帯の外側へオフセットさせる。
【0173】
図43の不感帯対策制御プログラムが起動されると、まずステップ501で、目標バルブタイミングが進角方向であるか否かを判定し、進角方向であれば、ステップ502に進み、目標バルブタイミングと実バルブタイミングとの偏差に応じて算出されたフィードバック補正値Dfと保持デューティ値Dhと進角側のオフセット量G1(図21参照)とを用いて、次式によりデューティ値Dutyを進角側のオフセット量G1だけ進角方向にオフセットさせる。
Duty=Df+Dh+G1
【0174】
一方、目標バルブタイミングが遅角方向であれば、ステップ503に進み、フィードバック補正値Dfと保持デューティ値Dhと遅角側のオフセット量G2(図21参照)とを用いて、次式によりデューティ値Dutyを、遅角側のオフセット量G2だけ遅角方向にオフセットさせる。
Duty=Df+Dh−G2
【0175】
以上のようにして、デューティ値Dutyを不感帯の外側へオフセットさせると、図43の不感帯対策制御プログラムが終了し、図42のバルブタイミング制御プログラムのステップ109に戻り、スタータ信号がオンか否か、つまり始動時であるか否かを判断し、始動時であれば、後述する学習処理を行なうことなく、ステップ111に進んで、今回の保持デュ−ティ値Dh(i) として、前回走行時の保持デュ−ティ値Dhを用いてバルブタイミング制御を継続する。
【0176】
一方、始動時でなければ、ステップ112bに進み、図44の保持デューティ値学習プログラムを実行する。本プログラムでは、まずステップ511で、所定の学習条件が成立しているか否かを判定する。ここで、学習条件としては、例えば、▲1▼目標バルブタイミング及び実バルブタイミングの双方がほぼ一定値を維持する継続時間が所定時間以上であること、▲2▼前回の保持デューティ値Dhの学習終了から所定時間が経過していること等であり、これらの条件を全て満たしたときに学習条件が成立し、1つでも満たさない条件があれば学習条件が不成立となる。もし、学習条件が不成立であれば、後述するデューティ値Dutyの振動制御が実行されない。尚、デューティ値Dutyの振動制御の実行中(学習期間中)に学習条件が不成立となれば、その時点で、デューティ値Dutyの振動制御を終了する(ステップ515)。
【0177】
これに対し、上記ステップ511で学習条件が成立していると判定されれば、ステップ511aに進み、図42のステップ108aで実行される不感帯対策制御をキャンセルした後、ステップ512に進み、デューティ値Dutyの振動制御を実行する。このデューティ値Dutyの振動制御は、前記実施形態(10)〜(12)と同様の方法で実行すれば良い。
【0178】
そして、次のステップ513で、目標バルブタイミング及び実バルブタイミングの双方がほぼ一定値を維持する継続時間が所定の判定時間に達したか否かを判定し、所定の判定時間に達した時点で、ステップ514に進み、その時点のデューティ値Dutyの振動中心値を新たな保持デューティ値Dhとして学習する。この後、ステップ515に進み、デューティ値Dutyの振動制御(学習)を終了して、本プログラムを終了する。
【0179】
以上説明した本実施形態(13)の制御例を図45のタイムチャートを用いて説明する。図45のタイムチャートは、目標バルブタイミングの変化に追従して実バルブタイミングが変化する過程で、保持デューティ値Dhの学習値を更新するときの制御例を示している。この制御例では、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束する前に、実バルブタイミングの動きがほぼ停止した状態(実バルブタイミングの変化速度が所定値以下の状態)となる。この停止状態が所定時間継続すると、学習条件が成立して、デューティ値Dutyの振動制御を開始する。そして、目標バルブタイミング及び実バルブタイミングの双方がほぼ一定値を維持する継続時間が所定の判定時間に達した時点で、その時点のデューティ値Dutyの振動中心値を新たな保持デューティ値Dhとして学習し、デューティ値Dutyの振動制御(学習)を終了する。
【0180】
保持デューティ値の学習後は、デューティ値Dutyが保持デューティ値Dhの学習補正量分だけ変化するため、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに向かって再び動き始め、最終的に、実バルブタイミングが目標バルブタイミングに収束した状態となる。
【0181】
以上説明した本実施形態(13)では、保持デューティ値Dhの学習期間中にデューティ値Dutyの振動制御を実行して不感帯を無くしながら保持デューティ値Dhを学習するようにしたので、従来システムにおいて、不感帯の存在を考慮して保持デューティ値Dhの学習を禁止していた条件下(例えば低油温時等)においても、保持デューティ値Dhを精度良く学習することができて、保持デューティ値Dhの学習頻度を従来よりも多くすることができる。
【0182】
尚、前記各実施形態(1)〜(13)は、本発明を、吸気バルブのバルブタイミングを可変する可変バルブタイミング装置に適用した実施形態であるが、本発明を、排気バルブのバルブタイミングを可変する可変バルブタイミング装置に適用しても良いことは言うまでもない。また、本発明は、吸気バルブや排気バルブのリフト量、作用角等を可変する可変バルブ装置に適用しても良い。
【0183】
更に、本発明は、内燃機関の可変バルブ装置に限定されず、一部の制御領域に不感帯を有する非線形の制御特性の制御対象を制御する制御装置に広く適用して実施することができる。
【0184】
その他、本発明は、前記各実施形態(1)〜(13)を適宜組み合わせて実施しても良い等、種々変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態(1)における可変バルブタイミング制御システムを概略的に示す図
【図2】実施形態(1)の可変バルブタイミング装置の縦断面図
【図3】実施形態(1)のデューティ値振動制御を説明するための図
【図4】実施形態(1)のデューティ値振動制御を実施したときの可変バルブタイミング装置のバルブタイミング変化速度特性図
【図5】実施形態(1)のバルブタイミング制御プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図6】実施形態(1)の保持デューティ値学習プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図7】油温と不感帯の幅との関係を示す図
【図8】実施形態(1)において、油温に応じてデューティ振幅dを算出するマップの一例を示す図
【図9】実施形態(1)の制御例を示すタイムチャート
【図10】実施形態(2)において、デューティ値Dutyの振動中心値に応じてデューティ振幅dを算出するマップの一例を示す図
【図11】実施形態(2)の制御例を示すタイムチャート
【図12】実施形態(3)の制御例を示すタイムチャート
【図13】実施形態(4)において、油温に応じてデューティ値Dutyの振動周波数を算出するマップの一例を示す図
【図14】(a)は実施形態(4)の低油温時の制御例を示すタイムチャート、(b)は実施形態(4)の高油温時の制御例を示すタイムチャート
【図15】実施形態(5)の振幅補正プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図16】実施形態(5)において目標バルブタイミングが変化しないときの制御例を示すタイムチャート
【図17】実施形態(5)において目標バルブタイミングが変化したときの制御例を示すタイムチャート
【図18】(a)〜(c)は実施形態(6)のバルブタイミング制御を説明するための図
【図19】実施形態(6)において、デューティ値Dutyに対する電流値の変化率の補正量を油温に応じて可変するマップの一例を示す図
【図20】実施形態(7)の不感帯学習を説明するための図(その1)
【図21】実施形態(7)の不感帯学習を説明するための図(その2)
【図22】実施形態(7)のバルブタイミング制御の実行例を示すタイムチャート
【図23】実施形態(8)の振幅補正プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図24】実施形態(8)において目標バルブタイミングが変化したときの制御例を示すタイムチャート
【図25】実施形態(9)の制御例を示すタイムチャート
【図26】(a)は油圧制御弁の作動油供給流量特性図、(b)は従来の可変バルブタイミング装置のバルブタイミング変化速度特性図
【図27】(a)は従来のバルブタイミング制御特性を示す図、(b)は実施形態(10)バルブタイミング制御特性を示す図
【図28】実施形態(10)のバルブタイミング制御プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図29】実施形態(10)のデューティ振幅d算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図30】実施形態(10)の保持デューティ値学習プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図31】実施形態(10)の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図32】実施形態(10)の学習時のデューティ振幅dの設定例を示す図(その1)
【図33】実施形態(10)の学習時のデューティ振幅dの設定例を示す図(その2)
【図34】実施形態(10)の学習時のデューティ振幅dの補正例を示す図
【図35】実施形態(10)の制御例を示すタイムチャート
【図36】(a)は実施形態(10)の通常制御時のデューティ振幅の設定例を示す図、(b)は実施形態(10)の通常制御時の制御特性の一例を示す図
【図37】(a)は実施形態(10)の学習時のデューティ振幅の設定例を示す図、(b)は実施形態(10)の学習時の制御特性の一例を示す図
【図38】実施形態(11)の保持デューティ値Dhの学習許可範囲と学習禁止領域を説明する図
【図39】実施形態(11)の保持デューティ値学習プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図40】実施形態(12)の制御例を示すタイムチャート
【図41】実施形態(12)の振動制御時の保持デューティ値学習プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図42】実施形態(13)のバルブタイミング制御プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図43】実施形態(13)の不感帯対策制御プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図44】実施形態(13)の保持デューティ値学習プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図45】実施形態(13)の制御例を示すタイムチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、16…吸気側カム軸、17…排気側カム軸、18…可変バルブタイミング装置(可変バルブ装置)、20…オイルポンプ、21…油圧制御弁、22…カム角センサ、23…クランク角センサ、24…ECU(制御手段,不感帯学習手段,応答性検出手段,保持制御値学習手段,学習禁止手段)、25…ハウジング、27…ロータ、31…ベーン、32…進角室、33…遅角室。

Claims (25)

  1. 内燃機関の吸気バルブ及び/又は排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変する可変バルブ装置と、
    前記可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁と、
    前記油圧制御弁を制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、
    前記油圧制御弁は、一部の制御領域に前記制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域(以下「不感帯」という)を有する非線形の制御特性を持ち、
    前記制御手段は、前記制御信号を所定の振幅で振動させる手段と、前記制御信号の振動中心値に応じて該制御信号の振幅を可変する手段とを有し、前記制御信号の振動中心値が前記不感帯から離れるほど該制御信号の振幅を小さくすることを特徴とする制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記不感帯を含む所定の制御領域内に前記制御信号の振動中心値が存在するときに該制御信号を振動させ、それ以外の制御領域で、該制御信号の振動を停止させることを特徴とする請求項に記載の制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記バルブ可変量の目標値が変化しないときに、該バルブ可変量を該目標値に収束させるように前記制御信号の振幅を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
  4. 前記制御信号の振動に伴って前記バルブ可変量が前記目標値を中心に振動している状態で該制御信号の振幅を徐々に小さくして該バルブ可変量の振動が停止したときの該制御信号の振幅、又は、該バルブ可変量が該目標値で振動せずに保持されている状態で該制御信号の振幅を徐々に大きくして該バルブ可変量が振動し始めたときの該制御信号の振幅に基づいて、前記不感帯を学習する不感帯学習手段を備えていることを特徴とする請求項に記載の制御装置。
  5. 前記制御手段は、前記バルブ可変量の目標値が変化したときに、該バルブ可変量が該目標値に向かって所定値以上変化するように前記制御信号の振幅を補正することを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の制御装置。
  6. 前記バルブ可変量の目標値が変化したときに、該バルブ可変量が該目標値に向かって変化し始めたときの前記制御信号の振幅と振動中心値とに基づいて前記不感帯を学習する不感帯学習手段を備えていることを特徴とする請求項乃至5のいずれかに記載の制御装置。
  7. 前記制御手段は、油温、機関温度、油圧、機関回転速度のうちの少なくとも1つ又はそれと相関関係のあるパラメータに応じて前記制御信号の振動周波数を可変することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
  8. 前記制御手段は、前記バルブ可変量が目標値に収束した状態になっているときに前記制御信号の振動を停止させることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の制御装置。
  9. 前記バルブ可変量をその目標値に保持するときの制御信号の値(以下「保持制御値」という)を学習するための所定の学習条件が成立したときに前記制御信号の振動制御を継続しながら前記保持制御値を学習する保持制御値学習手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の制御装置。
  10. 記バルブ可変量をその目標値に保持するときの制御信号の値(以下「保持制御値」という)を学習するための所定の学習条件が成立したときに前記制御信号を所定の振幅で振動させながら前記保持制御値を学習する保持制御値学習手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の制御装置。
  11. 前記保持制御値学習手段による保持制御値の学習終了後に所定期間が経過するまで該保持制御値の学習を禁止する学習禁止手段を備えていることを特徴とする請求項又は10に記載の制御装置。
  12. 前記保持制御値学習手段は、前記不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定すると共に、保持制御値学習時の制御信号の振幅をその時点の制御信号の値によらず一定値とすることを特徴とする請求項乃至11のいずれかに記載の制御装置。
  13. 前記保持制御値学習手段は、前記不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定すると共に、保持制御値学習時の制御信号の振幅を前記不感帯と相関関係のあるパラメータによらず一定値とすることを特徴とする請求項乃至11のいずれかに記載の制御装置。
  14. 前記保持制御値学習手段は、保持制御値学習時の制御信号の振幅を前記不感帯と相関関係のあるパラメータに基づいて推定した該不感帯の幅に応じて設定することを特徴とする請求項乃至12のいずれかに記載の制御装置。
  15. 前記保持制御値学習手段は、保持制御値学習時の制御信号の振幅を前記不感帯の幅の半分以上の振幅に設定することを特徴とする請求項乃至14のいずれかに記載の制御装置。
  16. 前記保持制御値学習手段は、前記保持制御値の学習値のばらつきが大きいときに保持制御値学習時の制御信号の振幅を大きくするように補正する振幅補正手段を有することを特徴とする請求項乃至15のいずれかに記載の制御装置。
  17. 前記保持制御値学習手段は、前記バルブ可変量の変化速度が所定値以下になるときの制御信号の値を保持制御値として学習することを特徴とする請求項乃至16のいずれかに記載の制御装置。
  18. 前記保持制御値学習手段は、前記バルブ可変量の変化速度が所定値以下であるか否かを判定する判定時間を作動油の粘度又はこれと相関関係のあるパラメータに応じて設定することを特徴とする請求項17に記載の制御装置。
  19. 前記保持制御値学習手段は、前記保持制御値として前記制御信号の振動中心値又は該振動中心値に相当するパラメータを学習することを特徴とする請求項乃至18のいずれかに記載の制御装置。
  20. 前記保持制御値学習手段は、前記バルブ可変量がその制御可能範囲の限界値に突き当たる可能性のある領域に存在するときに前記保持制御値の学習を禁止する手段を備えていることを特徴とする請求項乃至19のいずれかに記載の制御装置。
  21. 内燃機関の吸気バルブ及び/又は排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変する可変バルブ装置と、
    前記可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁と、
    前記油圧制御弁を制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、
    前記油圧制御弁は、一部の制御領域に前記制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域を有する非線形の制御特性を持ち、
    前記制御手段は、前記制御信号を所定の振幅で振動させる手段を有し、油温、機関温度、油圧、機関回転速度のうちの少なくとも1つ又はそれと相関関係のあるパラメータに応じて前記制御信号の振動周波数を可変することを特徴とする制御装置。
  22. 内燃機関の吸気バルブ及び/又は排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変する可変バルブ装置と、
    前記可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁と、
    前記油圧制御弁を制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、
    前記油圧制御弁は、一部の制御領域に前記制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域を有する非線形の制御特性を持ち、
    前記バルブ可変量をその目標値に保持するときの制御信号の値(以下「保持制御値」という)を学習するための所定の学習条件が成立したときに前記制御信号を所定の振幅で振動させながら前記保持制御値を学習する保持制御値学習手段を備え
    前記保持制御値学習手段は、前記不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定すると共に、保持制御値学習時の制御信号の振幅をその時点の制御信号の値によらず一定値とすることを特徴とする制御装置。
  23. 内燃機関の吸気バルブ及び/又は排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変する可変バルブ装置と、
    前記可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁と、
    前記油圧制御弁を制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、
    前記油圧制御弁は、一部の制御領域に前記制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域(以下「不感帯」という)を有する非線形の制御特性を持ち、
    前記バルブ可変量をその目標値に保持するときの制御信号の値(以下「保持制御値」という)を学習するための所定の学習条件が成立したときに前記制御信号を所定の振幅で振動させながら前記保持制御値を学習する保持制御値学習手段を備え、
    前記保持制御値学習手段は、前記不感帯の領域全体をカバーできるように、予め保持制御値学習時の制御信号の振幅を設定すると共に、保持制御値学習時の制御信号の振幅を前記不感帯と相関関係のあるパラメータによらず一定値とすることを特徴とする制御装置。
  24. 内燃機関の吸気バルブ及び/又は排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変する可変バルブ装置と、
    前記可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁と、
    前記油圧制御弁を制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、
    前記油圧制御弁は、一部の制御領域に前記制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域(以下「不感帯」という)を有する非線形の制御特性を持ち、
    前記バルブ可変量をその目標値に保持するときの制御信号の値(以下「保持制御値」という)を学習するための所定の学習条件が成立したときに前記制御信号を所定の振幅で振動させながら前記保持制御値を学習する保持制御値学習手段を備え、
    前記保持制御値学習手段は、保持制御値学習時の制御信号の振幅を前記不感帯と相関関係のあるパラメータに基づいて推定した該不感帯の幅に応じて設定することを特徴とする制御装置。
  25. 内燃機関の吸気バルブ及び/又は排気バルブのバルブタイミング、リフト量、作用角等の少なくとも1つ(以下「バルブ可変量」という)を可変する可変バルブ装置と、
    前記可変バルブ装置の駆動油圧を制御する油圧制御弁と、
    前記油圧制御弁を制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、
    前記油圧制御弁は、一部の制御領域に前記制御信号の変化に対して応答性が遅いか又はほとんど応答しない制御領域(以下「不感帯」という)を有する非線形の制御特性を持ち、
    前記バルブ可変量をその目標値に保持するときの制御信号の値(以下「保持制御値」という)を学習するための所定の学習条件が成立したときに前記制御信号を所定の振幅で振動させながら前記保持制御値を学習する保持制御値学習手段を備え、
    前記保持制御値学習手段は、保持制御値学習時の制御信号の振幅を前記不感帯の幅の半分以上の振幅に設定することを特徴とする制御装置。
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